JP4182414B2 - 蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービンの燃焼器に水蒸気を噴射する蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガスタービンの燃焼器に水蒸気を噴射して出力の増大を図る蒸気噴射ガスタービンとして、特許文献1〜特許文献5等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特公平8−26780号公報
【特許文献2】
特開平9−125984号公報
【特許文献3】
特開平10−184393号公報
【特許文献4】
特開2002−4946号公報
【特許文献5】
特開2002−130674号公報
【0004】
特許文献1に開示された二流体サイクルは、図12に示すように、ガスタービン設備51の排熱Eで発生した水蒸気52を混合器53で圧縮空気と混合し、この混合ガスを排熱Eで加熱してガスタービンの燃焼器55に噴射することにより、余剰水蒸気52aをユーティリィティとして供給しながら、電力需要に応じて発電出力が増大できるようになっている。なおこの図で56は排熱回収ボイラ、Aは空気、Fは燃料、Wは給水である。
【0005】
特許文献2の「蒸気注入ガスタービンとその制御方法」は、図13に示すように、圧縮機62、燃焼器63及びタービン64と、燃焼器に蒸気を注入する蒸気注入手段65と、圧縮機の静翼角度を調整して圧縮機の流入空気量を調整する空気量制御手段66と、空気量制御手段の制御手段67とを備え、燃焼器63への注入蒸気量の増大に応じて流入空気量を減少させるか、または圧縮機62で圧縮された空気の圧力変動を抑制するように空気量制御手段66を制御するものである。
【0006】
特許文献3の「ガスタービン発電装置の制御方法」は、図14に示すように、エンジン制御装置71、蒸気制御装置72、出力管理装置73を備え、燃料流量から燃焼器74でのNOx発生を抑制する蒸気量を算出して調節し、電力優先の場合とプロセス蒸気優先の場合とで、それぞれタービン噴射蒸気量と燃料流量を算出するものである。
【0007】
特許文献4の「小容量のガスタービンコージェネレーションシステムの熱電比制御方法」は、図15に示すように、排熱回収ボイラ81で発生した蒸気の一部を燃焼器82へ供給する蒸気制御バルブ83を備えた蒸気供給通路84を設け、排熱回収ボイラ81の熱負荷に応じて蒸気制御バルブ83の開度を調整することにより、システム出力の熱電比を制御するものである。
【0008】
特許文献5の「二流体サイクル用の低NOx燃焼器とその運転方法」は、図16に示すように、中心部に配置された拡散燃焼式のパイロットバーナー92と、そのまわりに配置された複数の予混合燃焼式のメインバーナー94と、メインバーナーの燃料噴射弁9へ流入する空気と混合するように水蒸気を供給する蒸気噴射管96を備え、出力増加のために蒸気噴射を行う際に、噴射する蒸気の一部を蒸気噴射管96から噴射して、メイン噴射弁へ流入する空気と混合して燃料噴射弁へ供給するものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
環境保護のために、ガスタービンの燃焼排ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減することが義務付けられており、我国では、大都市(例えば東京)において例えば20ppm以下にする必要がある。
NOxの発生要因は、燃焼時の高温火炎により空気中の窒素が酸化する、いわゆるサーマルNOxが主であり、このサーマルNOxを低減するには、火炎中のホットスポットを減少させ、高温火炎の発生をなくすことが効果的である。
【0010】
このため、上述した特許文献1〜4では、水蒸気の噴射により火炎温度を低下させる手段が用いられ、燃焼器には水蒸気を噴射しても安定燃焼ができる「拡散燃焼器」が使用されていた。
しかし、拡散燃焼器に蒸気噴射する場合、水蒸気を減らしすぎるとNOx発生量が増大して規制値を超えるおそれがある。そのため、常に蒸気噴射が必要となり、その分ユーティリィティ蒸気量が減り、かつ燃料消費量が多くなる問題点があった。
【0011】
一方、低NOx化が可能な燃焼器として、上述した蒸気噴射拡散燃焼器の他に特許文献5に開示される「希薄予混合燃焼器」が知られている。この希薄予混合燃焼器は、燃料を十分な空気量と予混合して均質化し、これを希薄燃焼させるものであり、大量の空気と共に燃焼させるため、ホットスポットがなく、高温火炎の発生をなくし低NOx化を実現することができる。
【0012】
従って従来の希薄予混合燃焼器を蒸気噴射ガスタービンに適用することにより、蒸気噴射をなくしても、NOx発生量を規制値内に抑えることができ、蒸気噴射を必要に応じてなくし、その分ユーティリィティ蒸気量を増やしかつ燃料消費量を低減することができる。
【0013】
しかし、この希薄予混合燃焼器は、低NOx化のために蒸気を必要としない反面、燃焼が不安定になりやすい問題点があった。このため、希薄予混合燃焼器に水蒸気を単に噴射すると火炎温度が下がり過ぎて安定燃焼が困難となり失火してしまったり、燃焼の安定化のために燃料を増加させると燃料領域で燃料が過剰となり、本来の希薄燃焼ができず、NOx発生量が増大したり燃焼効率が低下する、等の問題点があった。
【0014】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、電力需要が大きいときには大量の水蒸気を燃焼器に噴射してガスタービンの出力を増大させることができ、電力需要が小さく水蒸気の需要が大きいときには、水蒸気噴射を完全になくすことができ、かつ常にNOxの発生を抑制しながら高い燃焼効率を維持することができる蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、中心部に配置された拡散燃焼式のパイロットバーナーと、そのまわりに配置された複数の予混合燃焼式のメインバーナーと、前記パイロットバーナー及びメインバーナーへの流入空気に混合する水蒸気を供給する蒸気噴射管とを備え、
パイロットバーナー及び/又はメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持し、
蒸気噴射量の増加に応じてメインバーナーの使用本数を漸次減少させ、使用するメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持する、ことを特徴とする蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法が提供される。
【0016】
上述した本発明によれば、パイロットバーナー及び/又はメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持するので、常に安定燃焼を実現でき、燃焼効率の低下を防ぎ、低NOx化を達成することができる。従ってこの燃焼制御方法により、振動燃焼、燃焼効率の低下、振れ等の不安定現象を解消することができる。
一般的に低NOx燃焼器の複数の予混合燃焼式のメインバーナー(マルチ噴射弁)は、予混合管にて空気と燃料を空気過剰状態にて希薄混合させて希薄燃焼を可能にしているが、蒸気噴射量が増加するとさらに希薄状態となり燃焼効率が低下する。
上述した本発明によれば、蒸気噴射量の増加に応じてメインバーナーの使用本数を変化させ、使用する1つのマルチ噴射弁当たりの燃料流量を増加して、使用するメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持するので、燃焼効率の低下を防ぎ、低NOx化を達成することができる。
すなわち、蒸気噴射量に応じたマルチ噴射弁の最適使用本数を決めることにより、燃焼効率の減少を抑え、エンジン固有の蒸気噴射量まで燃焼器の条件に左右されることなく蒸気噴射できることになる。
【0017】
本発明の好ましい実施例によれば、蒸気噴射量の増加に応じてパイロットバーナーへの燃料流量を増加させ、パイロットバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持する。
【0018】
一般的に低NOx燃焼器では中央に位置するパイロットバーナーの火力によりその周りのメインバーナーの希薄燃焼を可能にしているが、蒸気噴射量が増加するとパイロットバーナーの燃焼が弱くなり、メインバーナーも不安定となる。
上述した本発明によれば、蒸気噴射量の増加に応じて火種となるパイロットバーナーへの燃料流量を連続的、あるいは段階的に増加させるので、パイロットバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持することができ、パイロットバーナー及びメインバーナーの安定燃焼を実現し、燃焼効率の低下を防ぎ、低NOx化を達成することができる。
【0021】
上述した本発明の燃焼制御方法によれば、蒸気噴射ガスタービンにおいて、出力増加のための蒸気噴射を行わない運用状態では、低NOx燃焼器は、従来の希薄予混合燃焼器として作動し、蒸気噴射をなくしても、NOx発生量を規制値内に抑えることができ、その分ユーティリィティ蒸気量を増やすことができる。
【0022】
また、出力増加のために蒸気噴射を行う際は、噴射する蒸気を蒸気噴射管から噴射させ、パイロットバーナー及びメインバーナーへの流入空気に混合するので、蒸気と空気を十分に均一に混合して導入することができる。従って、燃焼的に比較的不安定な予混合燃焼に蒸気を噴射しても、安定した燃焼が可能となる。
【0023】
更に、蒸気と燃料の割合は、燃料の増加量に応じて、蒸気噴射量を増加することにより、NOxの発生を抑えながら燃焼量を増大させ、ガスタービンの出力を高めることができる。なお、残りの蒸気に関しては、燃焼器ライナの希薄孔など、比較的燃焼に関与しない位置に噴射するのがよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の燃焼制御方法を適用する蒸気噴射ガスタービンの全体構成図である。この図に示すように、この蒸気噴射ガスタービンは、空気圧縮機1、ガスタービン2、燃焼器3、減速機4、発電機5、排熱ボイラ6、ミストセパレータ7、等を備え、タービン2の排熱Eで発生した水蒸気Sを燃焼器3に噴射することにより、余剰水蒸気をユーティリィティとして供給しながら、電力需要に応じて発電出力が増大できるようになっている。なおこの図で、Aは空気、Fは燃料、Wは給水である。
【0026】
図2は、本発明の蒸気噴射ガスタービンの熱電出力特性の具体例である。この図において、横軸はユーティリィティとして外部に供給できる送気蒸気量、縦軸は発電端出力である。また、図中のAは、燃焼器に水蒸気を噴射しないドライ運用ライン、Bは燃焼器に水蒸気を噴射して出力を最大にする最大出力ラインである。
この図から、この蒸気噴射ガスタービンでは、燃焼器に水蒸気を噴射することなく、約2000kWの発電端出力を得ることができ、その時点で最大約6000kg/hの水蒸気をユーティリィティとして外部に供給できる。また、その水蒸気の一部を燃焼器に噴射することにより最大約2500kWの発電端出力を得ることができることがわかる。
【0027】
図3は、本発明を適用する低NOx燃焼器の全体構成図である。この図に示すように、この低NOx燃焼器3は、中央部に配置されたパイロットバーナー12と、そのまわりに配置された複数(この例では6つ)のメインバーナー14とを備える。なお、この図において、21はスクロール、22は燃焼器ライナ、23はケーシング、24は点火栓(イグナイタ)であり、空気圧縮機1で圧縮した空気Aがケーシング23とライナ22の間を流れてバーナー12、14に達し、このバーナーとその他の部分を通ってライナ22内に流入して火炎27a,27bを形成し、発生した燃焼ガスがスクロール部(図示せず)を通って図示しないガスタービン2に導かれ、これを駆動するようになっている。
【0028】
図3において、パイロットバーナー12は、燃料Fを燃焼室11内で拡散燃焼させる拡散燃焼バーナーである。
メインバーナー14は、互いに同軸に配置された主噴射弁14aと予混合管14bとからなる。主噴射弁14aには、低NOx燃焼器3のケーシング23を通して外部から燃料Fが供給される。この燃料には、例えばガス燃料を用いる。予混合管14bは、この図で下端部が開口した円筒形の筒であり、内部で燃料と空気が互いに混合しやすくなっている。すなわち、メインバーナー14は、主噴射弁14aと予混合管14bで構成された予混合希薄バーナーである。
この構成により、主噴射弁14aにより予混合管14b内に燃料Fを噴射し、予混合管14b内で燃料Fを十分な空気量と予混合しこれを希薄燃焼させることができる。
【0029】
本発明を適用する低NOx燃焼器3は、更に、メインバーナー14の燃料噴射弁(主噴射弁14a)へ流入する空気と混合するように水蒸気を供給する蒸気噴射管16を備える。
この蒸気噴射管16は、低NOx燃焼器3のケーシング3aの周囲に複数(例えば6本)取り付けられ、パイロットバーナー12及びメインバーナー14へ流入する空気に混合される水蒸気を供給するようになっている。
【0030】
本発明において、複数の蒸気噴射管16から供給される水蒸気量は常にほぼ均等であり、その総量のみが図示しない蒸気流量調節弁で可変に制御される。さらに、燃焼器内に蒸気噴射管16から噴射された水蒸気は、できる限り完全に空気と混合してパイロットバーナー12及びメインバーナー14に供給される。
また、中央部に配置されたパイロットバーナー12に供給される燃料流量(以下、パイロット燃料流量と呼ぶ)も、図示しない蒸気流量調節弁で可変に制御される。
さらに、複数(この例では6つ)のメインバーナー14に供給される燃料流量(以下、メイン燃料流量と呼ぶ)も、その総量は図示しない蒸気流量調節弁で可変に制御される。
なお、複数のメインバーナー14にはそれぞれ独立した開閉弁が設けられており、メインバーナーの使用本数を自由に変化させることができるようになっている。この場合、すべてのメインバーナー14に空気と水蒸気の混合ガスがほぼ均等に流れ、使用するメインバーナーのみに燃料が追加して供給される。
【0031】
上述した本発明の構成により、パイロットバーナー12により拡散燃焼を行いメインバーナー14の保炎源を形成できる。また、メインバーナー14の予混合管15における予混合燃焼によりNOxの発生を抑制することができる。
【0032】
【実施例】
以下、上述した低NOx燃焼器3を備えた蒸気噴射ガスタービンの実施例を説明する。
【0033】
図4は、図1〜図3に示した蒸気噴射ガスタービンの発電端出力と燃料流量の関係図である。この図において、横軸は発電端出力、縦軸は燃料流量、図中の記号◆は、安定燃焼が得られた実施条件を示している。
この図から、発電端出力の増大にほぼ比例させて燃料流量を増大させることにより、安定燃焼ができることがわかる。
【0034】
図5は、同一条件における発電端出力と蒸気流量の関係図である。この図において、横軸は発電端出力、縦軸は蒸気流量、図中の記号◆は、安定燃焼が得られた実施条件である。
この図から、図2に示したように、この蒸気噴射ガスタービンでは、燃焼器に水蒸気を噴射しないドライ条件でも約1500kW以上の発電端出力を得ることができ、さらに水蒸気の噴射を行うことにより最大約2500kWの発電端出力を得ることができることがわかる。
【0035】
図6は、発電端出力とパイロット燃料流量の関係図である。この図において、横軸は発電端出力、縦軸は燃料流量、図中の記号■と○は、安定燃焼が得られた実施条件を示している。なお■は6本のメインバーナーを全て使用した場合(N=6)、○は6本のうち4本のみを使用した場合(N=4)である。
この図からN=6とN=4のどちらの場合でも、発電端出力の増加に応じて、ほぼ一次に比例させてパイロットバーナーへの燃料流量(パイロット燃料流量)を増加させることにより、安定燃焼ができることがわかる。
【0036】
図7は、蒸気噴射量とパイロット燃料流量の関係図である。この図において、横軸は蒸気噴射量、縦軸は燃料流量、■は6本のメインバーナーを全て使用した場合(N=6)、○は6本のうち4本のみを使用した場合(N=4)である。
また図中の各記号は、安定燃焼が得られた実施条件を示しており、かつ後述するように低NOx化と高い燃焼効率が得られる実施条件である。
【0037】
この図から、N=6とN=4のどちらの場合でも、蒸気噴射量の増加に応じて、ほぼ一次に比例させてパイロットバーナーへの燃料流量(パイロット燃料流量)を増加させることにより、安定燃焼と低NOx化及び高い燃焼効率が得られることがわかる。また、パイロット燃料流量の増加は連続的でも、段階的(ステップ状)でもよい。
すなわち、蒸気噴射量の増加に応じて火種となるパイロットバーナーへの燃料流量を連続的、あるいは段階的に増加させることにより、パイロットバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持することができ、安定燃焼を実現し、燃焼効率の低下を防ぎ、低NOx化を達成することができる。
【0038】
図8は、6本使用時の発電端出力とメイン燃料流量の関係図であり、図9は、4本使用時の発電端出力とメイン燃料流量の関係図である。これらの図において、横軸は発電端出力、縦軸はメイン燃料流量である。また、図中の各記号は、安定燃焼が得られた実施条件を示しており、かつ後述するように低NOx化と高い燃焼効率が得られる実施条件である。
【0039】
この図から、蒸気噴射を行う発電端出力1500kW以上の領域において、6本のメインバーナーを全て使用した場合(N=6)には、6本のうち4本のみを使用した場合(N=4)に比べて、メインバーナー1本当たりのメイン燃料流量が相対的に少なくなることがわかる。これは、使用メインバーナーの燃料流量×本数の総量は変わらないが、上述したように、すべてのメインバーナー14に空気と水蒸気の混合ガスがほぼ均等に流れ、使用するメインバーナーのみに燃料が供給されることによる。
【0040】
図10は、発電端出力とNOx量の関係図であり、図11は、発電端出力と燃焼効率の関係図である。これらの図において、横軸は発電端出力、縦軸はNOx量又は燃焼効率、■は6本のメインバーナーを全て使用した場合(N=6)、○は6本のうち4本のみを使用した場合(N=4)である。
【0041】
この図から、パイロットバーナーの比率(S+A)/Fの制御で、低NOx性の確保と燃焼効率の維持ができ、蒸気噴射量増加、出力増加時に、メインバーナーを6本から4本に変更することで、燃焼効率が回復することがわかる。
【0042】
上述した実施例はすべて、同一の蒸気噴射ガスタービンの実施例に基づくものである。図8〜図11の結果から、蒸気噴射を行う発電端出力1500kW以上の領域、特にメイン燃料流量が低下する2200kW以上の領域では、6本すべてを使用せず、そのうち4本のみを使用した場合の方が低NOx化と燃焼効率の両方において優れていることがわかる。
従って、この例では蒸気噴射をしない発電端出力が低い領域では、発電端出力にほぼ比例させてメインバーナーを例えば1本、2本、・・・4本・・・6本と増やし、蒸気噴射を行う発電端出力1500kW以上の領域では逆に発電端出力にほぼ逆比例させて6本・・・4本と減らすのがよい。
すなわち、蒸気噴射量の増加に応じてメインバーナーの使用本数を変化させ、使用するメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持することで、安定燃焼と低NOx化、及ぶ高い燃焼効率を同時に達成することが可能となる。
【0043】
なお本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
【発明の効果】
上述した本発明によれば、パイロットバーナー及び/又はメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持するので、常に安定燃焼を実現でき、燃焼効率の低下を防ぎ、低NOx化を達成することができる。従ってこの燃焼制御方法により、振動燃焼、燃焼効率の低下、振れ等の不安定現象を解消することができる。
【0045】
従って、本発明の蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法は、電力需要が大きいときには大量の水蒸気を燃焼器に噴射してガスタービンの出力を増大させることができ、電力需要が小さく水蒸気の需要が大きいときには、水蒸気噴射を完全になくすことができ、かつ常にNOxの発生を抑制しながら高い燃焼効率を維持することができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃焼制御方法を適用する蒸気噴射ガスタービンの全体構成図である。
【図2】本発明の蒸気噴射ガスタービンの熱電出力特性の例である。
【図3】本発明における燃焼器の全体構成図である。
【図4】発電端出力と燃料流量の関係図である。
【図5】発電端出力と蒸気流量の関係図である。
【図6】発電端出力とパイロット燃料流量の関係図である。
【図7】蒸気噴射量とパイロット燃料流量の関係図である。
【図8】6本使用時の発電端出力とメイン燃料流量の関係図である。
【図9】4本使用時の発電端出力とメイン燃料流量の関係図である。
【図10】発電端出力とNOx量の関係図である。
【図11】発電端出力と燃焼効率の関係図である。
【図12】従来の蒸気噴射ガスタービンの構成図である。
【図13】従来の別の蒸気噴射ガスタービンの構成図である。
【図14】従来の別の蒸気噴射ガスタービンの構成図である。
【図15】従来の別の蒸気噴射ガスタービンの構成図である。
【図16】従来の別の蒸気噴射ガスタービンの構成図である。
【符号の説明】
1 空気圧縮機、2 タービン、3 燃焼器(低NOx燃焼器)、4 減速機、
5 発電機、6 排熱ボイラ、7 ミストセパレータ、
12 パイロットバーナー(拡散燃焼バーナー)、
14 メインバーナー(予混合希薄バーナー)、
14a 主噴射弁、14b 予混合管、
16 蒸気噴射管、21 スクロール、22 燃焼器ライナ、
23 ケーシング、24 点火栓(イグナイタ)、
27a,27b 火炎、
A 空気、E 排熱、F 燃料、W 給水、S 水蒸気
Claims (2)
- 中心部に配置された拡散燃焼式のパイロットバーナーと、そのまわりに配置された複数の予混合燃焼式のメインバーナーと、前記パイロットバーナー及びメインバーナーへの流入空気に混合する水蒸気を供給する蒸気噴射管とを備え、
パイロットバーナー及び/又はメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持し、
蒸気噴射量の増加に応じてメインバーナーの使用本数を漸次減少させ、使用するメインバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持する、ことを特徴とする蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法。 - 蒸気噴射量の増加に応じてパイロットバーナーへの燃料流量を増加させ、パイロットバーナーにおける蒸気Sと空気Aの和と燃料Fとの比率(S+A)/Fを燃焼安定範囲に保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気噴射ガスタービンの燃焼制御方法。
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