JP4182167B2 - レジストパターンの形成方法、電極パターンの形成方法及び弾性表面波装置 - Google Patents

レジストパターンの形成方法、電極パターンの形成方法及び弾性表面波装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電基板上にフォトレジストからなるレジストパターンを形成する方法および金属からなる電極パターンを形成する方法に関し、特に弾性表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、弾性表面波フィルタの微細な電極を形成する方法として、基板上に電極膜を形成し、エッチングでパターン形成する方法に比べて、基板へのダメージの少ないリフトオフ法が好適に用いられている。
【0003】
リフトオフ法で電極を形成する際、圧電基板の上方にフォトマスクを設けて行なう露光処理において、水晶、LiTaO3、LiNbO3からなる圧電基板は透明基板であることから、フォトマスクを介してフォトレジストを透過して直進した露光光は圧電基板の裏面側で反射する。この反射した露光光が基板の表面側に戻ったとき、フォトレジストの、本来フォトマスクにより露光光が遮断される部分も露光されてしまう。その結果、本来現像されないはずであるフォトレジストの一部が現像・除去されてしまい、所望のレジストパターンが形成できないという問題が生じていた。
【0004】
この問題を回避するため、従来の方法では、有機高分子を基材とする、圧電基板の裏面で反射した光を吸収する反射防止膜を、圧電基板の裏面に設けることで、フォトレジストの不要な箇所の現像を防いでいる(特許文献1参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の反射防止膜を用いる方法では、以下のような問題が生じていた。
【0006】
第1に、反射防止膜として有機高分子材料を使用すると露光装置(ステッパー)のステージが汚れてしまい、正確な露光が困難になる。すなわち、有機高分子材料の残滓がステージに蓄積するとステージのフラットネスが悪化し、露光精度が悪化してしまうという問題があった。
【0007】
第2に、有機高分子材料からなる反射防止膜では、フォトレジストを硬化させるのに必要な温度が約100℃であるのに対して、有機高分子膜の硬化に必要なベーキング温度である約200℃であり、圧電基板がこのような高温にさらされることで、圧電基板の焦電性により、圧電基板に電荷が発生、蓄積した後ショートし、圧電基板が割れやすいという問題があった。この問題を解決するため、この有機高分子材料からなる反射防止膜の表面にさらに導伝膜を設け、温度変化によって生じる静電気を基板外に逃がすという方法があるが、導伝膜を反射防止膜表面にさらに設けることは工程が増加し、コストアップが避けられなかった。
【0008】
第3に、ウエハ裏面の反射防止膜によって基板裏面で反射する光が大幅に吸収されるため、断面形状がリフトオフ工法に適していない矩形又は順テーパー形状のレジストパターンとなる。レジストパターンが矩形又は順テーパー形状の場合、後の工程で形成される電極膜の断面形状が矩形又は逆テーパー形状となることから、レジストパターンと電極膜が接触してしまう。レジストパターンと電極膜が接触すると、レジストパターンを除去する際、剥離液がレジストパターンに接触しにくくなるため、レジスト剥離性が極めて悪くなる。更に、レジストパターンと電極膜が接触するため、レジストパターンの側面にも電極膜が形成され、これがレジストパターンの除去後に角状のバリ電極となる。また、電極にバリ電極があると、電極の重さや厚みが所望の値とずれてしまうので、特性が悪化する。更に、バリ電極によって、互いに隣接する電極同士が接触することで、電極破壊が発生することもある。特に、弾性表面波装置においては、近年の高周波化に伴い、電極指間隔が1μm以下と狭くなってきており、バリ電極による電極破壊の問題が大きなものとなっている。
【0009】
リフトオフ法で高アスペクトの電極を形成するためには、レジストパターンの断面を逆テーパー形状にすることが必要であるが、従来の異なる方法では、基板の裏面を粗面にする若しくは高反射率の露光試料台を粗面にすることで、圧電基板の裏面で反射した光を用いて、レジストパターンの断面を逆テーパー形状にしている(特許文献2参照)。
【0010】
しかしながら、この方法では、基板の裏面の粗さ及び高反射率の露光試料台の表面の粗さを制御することが困難であるため、基板の裏面で反射する光の制御は当然困難となる。その結果、反射する露光光がばらつき、所望の形状にフォトレジストを露光することが困難である。特に、屈折率が大きい、LiTaO3、LiNbO3の圧電基板を用いた場合、反射する光が多すぎるために、本来現像されないはずであるフォトレジストの一部も現像、除去されてしまい、レジスト倒れが発生してしまうことがある。
【0011】
本発明は、レジスト倒れが発生することなく、断面が逆テーパー形状で剥離性の良いレジストパターンを形成することを目的とする。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−233641号公報
【特許文献2】
特開平5−37275号公報
【0013】
【課題を解決するための手段】
図3は、基板の屈折率と、基板/空気界面の反射率(r1)の関係を示している。屈折率は空気を1としている。なお、基板/空気界面の反射率(r1)が高くなるほど、基板の裏面で反射する光の量が大きくなる。図3から、屈折率が大きいほど、基板/空気界面の反射率(r1)が高くなる、つまり、基板の裏面で反射する光の量が多くなることが分かる。発明者等は、基板に塗布されたポジレジストを感光するために必要な露光量を求める実験とシュミレーションの結果から、基板/空気界面の反射率(r1)が0.04<r1<0.08の範囲にあるとき、特にr1=0.06のとき、レジスト倒れが起こることなく、剥離性の良い、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られることを見出した。
【0014】
基板/空気界面の反射率(r1)が0.06となる基板の屈折率は、約1.6である。よって、基板の屈折率が約1.6よりも小さいと、形成されるレジストパターンの断面は順テーパー形状若しくは矩形となり、基板の屈折率が約1.6よりも大きいと、形成されるレジストパターンの断面は基板と接する部分が狭く、レジスト倒れが起こりやすい逆テーパー形状となる。
【0015】
ここで、LiTaO3の屈折率は2.3で反射率は0.15であり、LiNbO3の屈折率は2.0で反射率は0.11であり、基板/空気界面の反射率が理想的な逆テーパー形状のレジストパターンが得られる反射率である0.04<r1<0.08の範囲よりも大きい。よって、LiTaO3、LiNbO3からなる基板において、特に基板に何も行なわずに露光すると、基板の裏面で反射する光の量が多く、形成されるレジストパターンの断面は基板と接する部分が狭く、レジスト倒れが起こりやすい逆テーパー形状となってしまう。
【0016】
一方、水晶の屈折率は1.53で反射率は0.04であり、基板/空気界面の反射率が理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる反射率である0.04<r1<0.08の範囲よりも小さい。よって、水晶からなる基板において、特に基板に何も行なわずに露光すると、基板の裏面で反射する光の量が少なく、形成されるレジストパターンの断面は、バリ電極が形成されやすく、リフトオフしにくい矩形若しくは順テーパー形状となってしまう。
【0017】
そこで、発明者等は、基板の裏面に、ある特定の屈折率を有する反射制御膜を設けることで、レジスト倒れが発生することなく、逆テーパー形状で剥離性の良いレジストパターンを理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる反射率を実現した。
【0018】
詳細には、本発明のレジストパターンの形成方法は、水晶からなる圧電基板表面にフォトレジストからなるレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、圧電基板裏面に屈折率nが0.8<n<1.0又は2.3<n<2.7である反射制御膜を形成する工程と、前記圧電基板表面にフォトレジストを形成する工程と、所望のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して露光光で前記フォトレジストを露光する工程と、現像することにより、不要なフォトレジストを除去することで、レジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
これにより、基板の裏面で反射する光の量が少ない水晶からなる圧電基板を用いた場合に、基板の裏面で反射した光を圧電基板裏面に形成した反射制御膜でより多く反射するように制御することで、基板の裏面で反射した光を利用してリフトオフ法で高アスペクトの電極を形成するために好ましい逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成することができる。
【0020】
前記反射制御膜が、Al、Ag、Au、Cuのいずれかからなることが好ましい。
【0021】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、LiTaO3からなる圧電基板表面にフォトレジストからなるレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、圧電基板裏面に屈折率nが1.2<n<1.5又は3.4<n<4.1である反射制御膜を形成する工程と、前記圧電基板表面にフォトレジストを形成する工程と、所望のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して露光光で前記フォトレジストを露光する工程と、現像することにより、不要なフォトレジストを除去することで、レジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、LiNbO3からなる圧電基板表面にフォトレジストからなるレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、圧電基板裏面に屈折率nが1.1<n<1.3又は3.0<n<3.5である反射制御膜を形成する工程と、前記圧電基板表面にフォトレジストを形成する工程と、所望のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して露光光で前記フォトレジストを露光する工程と、現像することにより、不要なフォトレジストを除去することで、レジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
これにより、基板の裏面で反射する光の量が多いLiTaO3やLiNbO3からなる圧電基板を用いた場合に、裏面で反射した光を圧電基板裏面に形成した反射制御膜で制御することで、レジスト倒れの発生をなくすことが出来ると共に、裏面で反射した光を利用して、リフトオフ法で高アスペクトの電極を形成するために好ましい逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成することができる。
【0024】
前記反射制御膜が、Ni、Ti、Cr、NiCr、Coのいずれか1つの金属材料からなることが好ましい。
【0025】
また、前記フォトレジストが、ポジレジストであることが好ましい。
【0026】
ネガレジストを用いた場合に比べて、より逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成しやすくなる。
【0027】
また、前記露光光が、g線、h線、i線のいずれか、又はこれらの混合光であることが好ましい。
【0028】
これらの線の波長は、それぞれ、g線が436nm、h線が405nm、i線が365nmである。波長がこれらよりも短くなると、フォトマスクを介してフォトレジストを透過して直進した露光光は反射することなく、LiTaO3、LiNbO3、水晶などからなる基板に吸収されてしまい、反射する光を用いて逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成することが出来なくなる。特に、LiTaO3からなる基板においては波長が320nm以下、LiNbO3からなる基板においては波長が270nm以下の露光光を用いると、基板に露光光がほとんど吸収されてしまう。
【0029】
本発明の別の発明である電極パターンの形成方法は、上記発明のレジストパターンの形成方法を用いて、レジストパターンを形成する工程と、部分的に露出した圧電基板の表面と、レジストパターン上とに、金属を成膜する工程と、前記レジストパターンを、その上に成膜された金属と共に一括して除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の電極パターンの形成方法によれば、微細なレジストパターンを形成しても、レジスト倒れなどの不具合が起こらないため、微細で、かつ、信頼性の高い電極パターンを形成することができる。特に、逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンを用いるので、レジスト剥離性を劣化させることなく、バリのない微細且つ高アスペクトの電極が形成することができる。
【0031】
本発明の更に別の発明である弾性表面波装置の形成方法は、上記の電極パターンの形成方法を用いて形成した電極パターンを有することを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のレジストパターンの形成方法を、図を用いて説明する。
図1は本発明のレジストパターンの形成方法を用いた電極パターンの形成方法を示す工程図であり、図2は本発明のレジストパターンの形成方法を用いて形成された電極パターンを有する弾性表面波装置の平面図であり、図3は基板の屈折率と基板/空気界面の反射率(r1)の関係を示す図であり、図4は反射制御膜の屈折率と基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の関係を示す図である。本発明は、透明であるために、フォトマスクを介してフォトレジストを透過して直進した露光光が、基板の裏面で反射する、水晶、LiTaO3、LiNbO3などの圧電基板上にレジストパターンを形成する際に、圧電基板の裏面に、反射する光の量を制御する反射制御膜を形成した上で、露光、現像するレジストパターンの形成方法である。フォトマスクを介してフォトレジストを透過して直進した露光光は、光の一部が反射制御膜に吸収されたり、光が反射制御膜によってより大きく反射するなど、反射制御膜によって圧電基板裏面で反射する光の量が制御されるため、リフトオフ法で高アスペクトの電極を形成するために好ましい逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成されると共に、レジスト倒れの発生がなくなる。
【0033】
ここで、圧電基板の裏面で反射する光の量は反射制御膜によって制御されるものの、反射する光の量が多いとレジスト倒れが発生し、反射する量が少ないとレジストパターンの断面が逆テーパー形状にならず、順テーパー形状若しくは矩形になり、バリ電極が発生してしまう。圧電基板の裏面で反射する光の量を適正にすることが重要である。
【0034】
圧電基板の裏面からの適正な反射量を実現する反射防止膜の条件について、以下に説明する。
【0035】
図4は、水晶、LiTaO3、LiNbO3のそれぞれからなる圧電基板の裏面に、直接反射制御膜を付加したときの、反射制御膜の屈折率と基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の関係を示している。図3は、基板の裏面で反射するため、基板/空気界面の反射率(r1)を示したが、圧電基板の裏面に反射制御膜を付加したときは、反射制御膜の表面で反射するため、基板裏面/反射制御膜界面の反射率を(r2)示している。よって、レジスト倒れが起こることなく、剥離性の良い、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)は、図3と同様、0.04<R2<0.08の範囲にあること、特に0.06のときとなる。
【0036】
また、反射制御膜の屈折率が1の場合は、反射制御膜が形成されていない状態と同じであり、そのときの基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)は、基板/空気界面の反射率(r1)と同じとなる。つまり、反射制御膜の屈折率が1のとき、LiTaO3の基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)は0.15、LiNbO3の基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)は0.11、水晶の基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)は0.04である。
【0037】
また、図4から明らかなように、基板の屈折率と反射制御膜の屈折率が近づくほど反射率(r2)は小さくなり、基板の屈折率と反射制御膜の屈折率が同じである場合は、反射率(r2)は0となる。
【0038】
ここで、図3に示すように、基板の屈折率が大きいために基板/空気界面の反射率(r1)が理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる反射率の0.04<r1<0.08よりも大きくなってしまう、LiTaO3(屈折率は2.3)及びLiNbO3(屈折率は2.0)では、基板裏面/反射制御膜界面(r2)の反射率が小さくなるように、基板の屈折率と近い屈折率を有する反射制御膜を付加すれば良いことが分かる。
【0039】
図4から、LiTaO3においては、屈折率nが1.2<n<1.5又は3.4<n<4.1である反射制御膜を、LiNbO3においては、屈折率nが1.1<n<1.3又は3.0<n<3.5である反射制御膜を基板の裏面に直接形成すれば、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の0.04<r2<0.08を満たすことが出来ることが分かる。LiTaO3、LiNbO3に好適な屈折率を有する反射制御膜の材料としては、Ni、Ti、Cr、NiCr、Coがある。
【0040】
一方、図3に示すように、基板の屈折率が小さいために基板/空気界面の反射率(r1)が理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる反射率の0.04<r1<0.08よりも小さくなってしまう、水晶(屈折率は1.53)では、基板裏面/反射制御膜界面(r2)の反射率が大きくなるように、基板の屈折率と大きく異なる屈折率を有する反射制御膜を付加すれば良いことが分かる。
【0041】
図4から、屈折率が0.8<n<1.0又は2.3<n<2.7である反射制御膜を基板の裏面に直接形成すれば、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の0.04<r2<0.08を満たすことが出来ることが分かる。水晶に好適な屈折率を有する反射制御膜の材料としては、Al、Ag、Au、Cuがある。
【0042】
なお、反射制御膜を裏面に形成した基板に露光光を照射すると、照射した露光光のうち、ごく僅かではあるが一部は基板の表面で反射し、一部は基板の裏面と反射制御膜界面で反射し、残りは反射制御膜に吸収される。このうち、基板の表面で反射する光の量は基板の材料によって決まるが、基板の裏面と反射制御膜界面で反射する光の量と、反射制御膜に吸収される光の量は、基板と反射制御膜の材料だけではなく、反射制御膜の膜厚に左右される。
【0043】
反射制御膜の膜厚が薄いと反射制御膜に吸収される光の量が多くなり、基板の裏面と反射制御膜界面で反射する光の量は少なくなる。一方、反射制御膜の膜厚が厚いと反射制御膜に吸収される光の量が少なくなり、基板の裏面と反射制御膜界面で反射する光の量は多くなると共に、ある膜厚以上になると、反射制御膜に吸収される光の量はゼロ若しくはゼロに近い値に一定となる。
【0044】
つまり、上記のような範囲の屈折率nを有する反射制御膜を基板の裏面に形成することで、好ましい基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)である0.04<r2<0.08を実現するには、反射制御膜が、反射制御膜に吸収される光の量がゼロ若しくはゼロに近い値に一定となるような十分な膜厚を有する、という条件を満たすことが必要である。
【0045】
(実施例1)上記の好適な基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)を満たす反射制御膜を用いたレジストパターンの形成方法及び弾性表面波装置の電極膜の形成方法の具体例を下記に示す。
【0046】
4インチのLiTaO3の圧電基板1を用意する。圧電基板1の厚みは、0.35mmであり、その裏面は弾性表面波装置における不要波(バルク波)に対応するため、Ra=0.3±0.1μmとなるように粗面化されている。
【0047】
まず、図1(a)に示すように、圧電基板1の裏面に蒸着法によって、Niからなる反射制御膜2を厚さ30nmで形成する。この反射制御膜2は、基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)が、約0.06である。反射制御膜2の成膜後、圧電基板1は表面洗浄を行なう。続けて、圧電基板1の表面にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理後、ポジレジストのを塗布、ベークし、フォトレジスト3を形成する。
【0048】
次に、図1(b)に示すように、ライン・アンド・スペースが0.40μmとなるパターンの開口部を有するフォトマスク10を用意し、露光光波長が365nmであるi線を用いて、露光する。このとき、フォトマスク10を介してフォトレジスト3を透過して直進した露光光は、圧電基板1の裏面と反射制御膜の表面の界面で反射する。反射する光の量は反射制御膜2によって減少するものの、光は、フォトレジスト3の一部を露光する。
【0049】
本実施例では、露光光波長が365nmであるi線を用いて、露光したが、本発明はこれに限らず、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を用いることが好ましい。波長がこれらよりも短くなると、フォトマスクを介してフォトレジストを透過して直進した露光光は、反射することなく圧電基板に吸収されてしまい、反射する光を用いて逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成することが出来なくなる。特に、LiTaO3からなる基板においては波長が320nm以下、LiNbO3からなる基板においては波長が270nm以下の露光光を用いると、基板に露光光がほとんど吸収されてしまう。
【0050】
そして、図1(c)に示すように、露光後、アルカリ系現像液を用いて現像すると、逆テーパー形状の断面を有するレジストパターン4が得られる。
【0051】
続けて、図1(d)に示すように、蒸着法によって、Alからなる金属膜5を厚さ400nmで形成する。本実施例では、金属膜5の形成にAlを用いたが、本発明はこれに限らず、Ta、W、Au、Ag、Cuなど、弾性表面波装置に好適に用いられる電極材料であればよい。
【0052】
最後に、図1(e)に示すように、レジスト剥離液を用いて、レジストパターン4を、その上に形成された金属膜5と共に除去(リフトオフ)し、電極パターン6を形成する。
【0053】
こうして得られた電極パターンを有する弾性表面波装置の一例を、図2に示す。圧電基板1上に、電極パッド25、配線26、そしてくし型電極部(IDT)22、該くし型電極部22を挟むように形成された反射器23などの電極パターンを有する弾性表面波共振子24が2つ形成されている。2つの弾性表面波共振子24はL字型に構成されたラダー型フィルタを形成している。本発明は、このようなラダー型フィルタに限らず、縦結合共振子型フィルタなど、その他の弾性表面波フィルタの電極パターンの形成に好適に用いることが出来る。
【0054】
本実施例では、厚さ30nmのNiからなる膜を反射制御膜として用いたが、本発明はこの膜厚・材料に限らず、厚さ50nmのTiからなる膜など、基板に屈折率が大きいLiTaO3を用いているため、基板裏面/反射制御膜界面(r2)の反射率が小さくなるように、屈折率nが1.2<n<1.5又は3.4<n<4.1である反射制御膜を用いれば、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の0.04<r2<0.08を満たすことが出来る。
【0055】
また、圧電基板として、LiNbO3を用いた場合においても、基板裏面/反射制御膜界面(r2)の反射率が小さくなるように、屈折率が1.1<n<1.3又は3.0<n<3.5である反射制御膜を用いれば、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の0.04<r2<0.08を満たすことが出来る。
【0056】
(実施例2)実施例2では、圧電基板1として、LiTaO3に変えて、水晶を用い、それに合わせて、反射制御膜2の材料及び膜厚を変えた以外は、実施例1と同様である。よって、同様の番号を用いて説明する。
【0057】
4インチの水晶の圧電基板1を用意する。圧電基板1の厚みは、0.40mmであり、その裏面は弾性表面波装置における不要波(バルク波)に対応するため、Ra=2.5±1.5μmとなるように粗面化されている。
【0058】
まず、図1(a)に示すように、圧電基板1の裏面に蒸着法によって、Alからなる反射制御膜2を厚さ50nmで形成する。この反射制御膜2は、基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)が、約0.06である。反射制御膜2の成膜後、圧電基板1は表面洗浄を行なう。続けて、圧電基板1の表面にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理後、ポジレジストのを塗布、ベークし、フォトレジスト3を形成する。
【0059】
次に、図1(b)に示すように、ライン・アンド・スペースが0.50μmとなるパターンの開口部を有するフォトマスク10を用意し、露光光波長が365nmであるi線を用いて、露光する。このとき、フォトマスク10を介してフォトレジスト3を透過して直進した露光光は、圧電基板1の裏面と反射制御膜の表面の界面で反射する。反射する光の量は反射制御膜2によって大きくなり、光は、フォトレジスト3の一部を露光する。
【0060】
本実施例では、露光光波長が365nmであるi線を用いて、露光したが、本発明はこれに限らず、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を用いることが好ましい。波長がこれらよりも短くなると、フォトマスクを介してフォトレジストを透過して直進した露光光は、反射することなく圧電基板に吸収されてしまい、反射する光を用いて逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが形成することが出来なくなる。
【0061】
そして、図1(c)に示すように、露光後、アルカリ系現像液を用いて現像すると、逆テーパー形状のレジストパターン4が得られる。
【0062】
続けて、図1(d)に示すように、蒸着法によって、Alからなる金属膜5を厚さ400nmで形成する。本実施例では、金属膜5の形成にAlを用いたが、本発明はこれに限らず、Ta、W、Au、Ag、Cuなど、弾性表面波装置に好適に用いられる電極材料であればよい。
【0063】
最後に、図1(e)に示すように、レジスト剥離液を用いて、レジストパターン4を、その上に形成された金属膜5と共に除去(リフトオフ)し、電極パターン6を形成する。
【0064】
本実施例では、厚さ50nmのAlからなる膜を反射制御膜として用いたが、本発明はこの膜厚・材料に限らず、基板の屈折率が小さい水晶を用いているため、基板裏面/反射制御膜界面(r2)の反射率が大きくなるように、屈折率が0.8<n<1.0又は2.3<n<2.7である反射制御膜を用いれば、理想的な逆テーパー形状の断面を有するレジストパターンが得られる基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の0.04<r2<0.08を満たすことが出来る。
【0065】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明のレジストパターンの形成方法によれば、マスクのパターン外の露光及び現像やレジスト倒れが発生することなく、逆テーパー形状で剥離性の良いレジストパターンを形成することができる。
【0066】
また、本発明の電極パターンの形成方法によれば、微細なレジストパターンを形成しても、レジスト倒れなどの不具合が起こらないため、微細で、かつ、信頼性の高い電極パターンを形成することができる。
【0067】
特に、弾性表面波装置においては、本発明のの電極パターンの形成方法を用いて電極を形成することで、電極破壊が発生させるバリ電極のない、微細な電極を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレジストパターンの形成方法を用いた電極パターンの形成方法を示す工程図である。
【図2】本発明のレジストパターンの形成方法を用いて形成された電極パターンを有する弾性表面波装置の平面図である。
【図3】基板の屈折率と基板/空気界面の反射率(r1)の関係を示す図である。
【図4】反射制御膜の屈折率と基板裏面/反射制御膜界面の反射率(r2)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 圧電基板
2 反応制御膜
3 フォトレジスト
4 レジストパターン
5 金属膜
6 電極パターン
10 フォトマスク

Claims (8)

  1. 水晶からなる圧電基板表面にフォトレジストからなるレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、
    圧電基板裏面に直接接して屈折率nが0.8<n<1.0又は2.3<n<2.7である反射制御膜を形成する工程と、
    前記圧電基板表面にフォトレジストを形成する工程と、
    所望のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して露光光で前記フォトレジストを露光する工程と、
    現像することにより、不要なフォトレジストを除去することで、レジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
  2. 前記反射制御膜が、Al、Ag、Au、Cuのいずれかからなることを特徴とする、請求項1に記載のレジストパターンの形成方法。
  3. LiTaO3からなる圧電基板表面にフォトレジストからなるレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、
    圧電基板裏面に直接接して屈折率nが1.2<n<1.5又は3.4<n<4.1である反射制御膜を形成する工程と、
    前記圧電基板表面にフォトレジストを形成する工程と、
    所望のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して露光光で前記フォトレジストを露光する工程と、
    現像することにより、不要なフォトレジストを除去することで、レジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
  4. LiNbO3からなる圧電基板表面にフォトレジストからなるレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、
    圧電基板裏面に直接接して屈折率nが1.1<n<1.3又は3.0<n<3.5である反射制御膜を形成する工程と、
    前記圧電基板表面にフォトレジストを形成する工程と、
    所望のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して露光光で前記フォトレジストを露光する工程と、
    現像することにより、不要なフォトレジストを除去することで、レジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
  5. 前記反射制御膜が、Ni、Ti、Cr、NiCr、Coのいずれか1つの金属材料からなることを特徴とする、請求項3ないし4に記載のレジストパターンの形成方法。
  6. 前記フォトレジストが、ポジレジストであることを特徴とする、請求項1ないし5に記載のレジストパターンの形成方法。
  7. 前記露光光が、g線、h線、i線のいずれか、又はこれらの混合光であることを特徴とする、請求項1ないし6に記載のレジストパターンの形成方法。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法を用いてレジストパターンを形成する工程と、
    部分的に露出した圧電基板表面と、レジストパターン上とに、金属を成膜する工程と、
    レジストパターンを、その上に成膜された金属と一括して除去する工程と、を含むことを特徴とする電極パターンの形成方法。
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