JP4180976B2 - ゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、さらに詳しくは、空気入りタイヤのユニフォミティーの向上に優れた効果を奏するゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニールアルコール繊維或いは全芳香族ポリアミド繊維は、高強度、高弾性の特性を有しており、寸法安定性にも優れていることから、種々の産業用補強材、とくにタイヤ、ベルトおよびホースなどのゴム補強用繊維として広く使用されている。
【0003】
この際、上記の補強用繊維は、例えばポリエステル繊維を例にとると、特開2000−328387号公報、或いは特開2000−103204号公報に開示される如く、1670dtex或いは1100dtexの繊度を有するマルチフィラメント糸に下撚及び上撚を施して撚糸コードとし、この撚糸コードを経糸として1000〜1500本整経して並べ、これら経糸がばらけないように、綿やレーヨン等の紡績糸或いは合成繊維糸などからなる緯糸を打ち込んで緯糸密度が3〜5本/5cmとなるように製織して得られる、いわゆるすだれ織物の形で、タイヤ、ベルト及びホースなどのゴム補強用途に使用されている。
【0004】
上記のすだれ織物は、接着剤を付与され、乾燥、熱処理工程を経た後に、各種ゴム中に埋め込まれるが、その際、特に空気入りタイヤの補強に使用する場合は、成型されたタイヤの形状を安定させる、即ち、ユニフォミティーを向上させるため、経糸であるコードが一定の間隔になるように配列する必要がある。
【0005】
しかしながら、すだれ織物の端部に位置する経糸は、製織時の緯糸の張力によって、織物の中央部と比較して高密度になり易く、このようなすだれ織物を用いた場合には、タイヤ成型工程において円環状に成型する際、経糸間の空間の増加とともに緯糸が均一に伸張することができなくなり、タイヤのユニフォミティーが低下するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−328387号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−103204号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、タイヤ成型工程において円環状に成型する際、経糸間の空間の増加とともに緯糸が均一に伸張することが可能で、空気入りタイヤのユニフォミティーの向上に優れた効果を奏するゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、すだれ織物の両端部の緯糸クリンプ量を中央部の緯糸クリンプ量より多くするとき、所望のすだれ織物が得られることを究明し、本発明に到達した。
【0010】
かくして本発明によれば、下撚及び上撚を施された合成繊維からなる経糸と、緯糸とがすだれ織りされたすだれ織物であって、該緯糸のクリンプ量が、該すだれ織物の緯糸方向において、織物中央部から織物両端部に向かって漸増されていることを特徴とするゴム補強用合成繊維すだれ織物が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記の合成繊維すだれ織物を補強材として用いてなることを特徴とする空気入りタイヤが提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する合成繊維は、ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、及びポリビニルアルコールからなるポリマーを常法により紡糸、延伸することにより得られる繊維である。
【0013】
上記の合成繊維は、高強力化を図るために、高粘度のポリマを用い、高延伸倍率で延伸されたものであることが望ましい。
【0014】
そして、本発明のすだれ織物を得るには、先ず上記の合成繊維に、下撚および上撚を施し、これを経糸として、この経糸を1000本〜1500本並べ、これらの経糸がばらけないように緯糸で製織することにより得ることができる。また、該すだれ織物の幅は140〜160cmで、長さは800〜2500mであり、緯糸は2.0〜5.0本/5cm間隔で打ち込まれていることが好ましい。
【0015】
製織の際に使用される緯糸としては、綿やレーヨン等の紡績糸或いは合成繊維糸条など、従来公知の糸条が例示される。
【0016】
本発明においては、上記のすだれ織物の緯糸方向において、緯糸のクリンプ量が、織物中央部から織物両端部に向かって漸増されていることが肝要である。このように織物両端部のクリンプ量が中央部に比べて増加されていることにより、たとえ織物の両端部に位置する経糸の密度が中央部に比べて高くなっていたとしても、タイヤ成型工程において円環状に成型する際、経糸間の空間の増加とともに緯糸が均一に伸張されるので、タイヤのユニフォミティーを向上させることができる。
【0017】
上記のような、クリンプ量が両端部と中央部とで異なる緯糸を得る方法には特に限定はなく、従来公知の方法が任意に採用できるが、例えば、緯糸として、加熱すると伸張する糸を使用して製織し、該すだれ織物を熱処理するに際し、織物両端部近傍の熱処理温度を中央部に比べて高くなるように設定することにより、得ることができる。
【0018】
尚、ここで言うクリンプ量とは、織物の緯方向の単位長さあたりに含まれる緯糸の全長から該単位長さを引いた値を指す。
【0019】
次いで、上記の織物には、接着剤が付与される。付与される接着剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ハロゲン化フェノール化合物及びレゾシンポリサルファイド化合物などを含む接着剤が挙げられ、具体的には、第1処理液としてエポキシ化合物、ブロックイソシアネ−ト、ラテックスの混合液を付与し、熱処理後に第2処理液としてレゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物およびゴムラテックスからなる液(RFL液)を付与し、さらに熱処理する方法が好ましく例示される。
【0020】
接着剤が付与された織物の乾燥加熱条件は、例えばナイロン6繊維の場合は170〜215℃で30〜90秒、好ましくは190〜210℃で50〜70秒、ナイロン66繊維の場合は200〜240℃、30〜90秒、好ましくは210〜230℃で50〜70秒がよい。また、ポリエテルの場合は200〜250℃で30〜150秒、好ましくは210〜230℃で処理される。いずれの場合にも約3%延伸が施される。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の構成および効果をさらに詳細に説明する。尚、実施例における各物性は下記方法により求めたものである。
【0022】
(1)緯糸のクリンプ量
接着処理後のすだれ織物の緯方向に沿って、織物の中央部及び両端部を10cm幅で切り出し、緯糸を取り出して、その緯糸の長さを測定した。クリンプ量は、中央部の緯糸長をA(cm)、一方端部の緯糸長をB1(cm)、他方端部の緯糸長をB2(cm)とした際のB1/A及びB2/Aの比で表した。
【0023】
(2)経糸密度の均一性
接着処理後のすだれ織物の経糸密度をC(本/inch)とし、一方端部の経糸密度をD1(本/inch)、他方端部の経糸密度をD2(本/inch)とした際のD1/C及びD2/Cの比(単位%)で表した。この数値が100に近いほど均一性に優れていると言える。
【0024】
(3)タイヤのユニフォミティー
JASOC607(自動車用タイヤのユニフォミティー試験方法)に準拠して、リム(16×6.5JJ)、内圧(200kPa)、荷重(5.50kN)の条件下における試供タイヤのRFV(ラテラルフォースバリエーション)を測定し、比較例1のタイヤを100とした場合の指数で相対評価した。数値が小なほどユニフォミティーに優れていると言える。
【0025】
[実施例1]
極限粘度0.95のポリエチレンテレフタレートを常法により溶融紡糸し、延伸倍率5.5倍に延伸することにより得られた、1670デシテックス/250フィラメントのマルチフィラメント2本を、下撚数40回/10cm、上撚数40回/10cmの撚数で撚糸してコードを得た。
【0026】
該コードをそれぞれ1500本引揃えて経糸とし、これに常法により溶融紡糸し、3000m/分で巻き取った後、延伸することなく200℃で熱処理することにより得られた270デシテックス72フィラメントの緯糸を4本/5cmの間隔で打ち込んですだれ織物を得た。
【0027】
次いで、上記のすだれ織物を、エポキシ化合物、ブロックイソシアネ−ト化合物およびゴムラテックスからなる混合液(第1浴処理液)に浸漬した後、130℃で100秒間乾燥し、続いて240℃で45秒間延伸熱処理した。
【0028】
さらに、上記第1処理浴で処理したすだれ織物を、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)からなる第2処理液に浸漬した後、100℃で100秒間乾燥し、続いて240℃で60秒間延伸熱処理を施した。この際、すだれ織物両端部近傍の熱処理温度を250℃と中央部に比べて高くなるように設定しゴム補強用合成繊維すだれ織物を製造するとともに、このすだれ織物を補強材として用いて、常法により空気入りタイヤ(タイヤサイズ225/60R16)を製造した。
【0029】
得られたすだれ織物における緯糸のクリンプ量、経糸密度の均一性及びタイヤのユニフォミティーを測定した結果を表1に示す。
【0030】
[実施例2]
実施例1において、両端部近傍の熱処理温度を245℃と中央部に比べて高くなるように設定した以外は実施例1と同様に実施した。
【0031】
得られたすだれ織物における緯糸のクリンプ量、経糸密度の均一性及びタイヤのユニフォミティーを測定した結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
実施例1において、両端部と中央部の熱処理温度を同じに設定した以外は実施例1と同様に実施した。
【0033】
得られたすだれ織物における緯糸のクリンプ量、経糸密度の均一性及びタイヤのユニフォミティーを測定した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004180976

Claims (3)

  1. 下撚及び上撚を施された合成繊維からなる経糸と、緯糸とがすだれ織りされたすだれ織物であって、該緯糸のクリンプ量が、該すだれ織物の緯糸方向において、織物中央部から織物両端部に向かって漸増されていることを特徴とするゴム補強用合成繊維すだれ織物。
  2. 合成繊維が、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維又はポリビニルアルコ−ル繊維である請求項1記載のゴム補強用合成繊維すだれ織物。
  3. 合成繊維すだれ織物を補強材として用いてなる空気入りタイヤであって、該合成繊維すだれ織物が請求項1記載のゴム補強用合成繊維すだれ織物であることを特徴とする空気入りタイヤ。
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