JP4180851B2 - 板ブラシシールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸と相対変位する相対部品との間をシールする板ブラシシールの製造方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、例えば、航空機、ガスタービン等の回転軸と相対変位する相対部品との間をシールする板ブラシシールの製造方法に係わるものである。
【0003】
【従来技術】
本発明に関する関連技術には、図14に示すブラシシール装置100Aが存在する。
【0004】
図14は、回転軸120が貫通するケーシング110との間に取り付けられたブラシシール装置100Aの断面図である。このブラシシール装置100Aはケーシング110に取り付けられて回転軸120との間を剛毛101により仕切って被密封流体をシールしている。
【0005】
図14において、ブラシシール装置100Aは、リング状に形成されて、ケーシング110の取付溝部112に取り付けられる。このブラシシール装置100Aの主要な構成は、ブラシシール109と背板102と支持板103である。このブラシシール109は、剛毛101が円周に沿ってある厚さに束ねられて壁状に配列され、一端部が結合されて取付部104を形成している。又、ブラシシール109の自由端面105は回転軸120に対向して配置される。この剛毛101の線径は、一般に、0.02mmから0.2mmのものが用いられている。そして、その本数は何万、何十万本となる。
【0006】
このブラシシール109の側面には、環状に形成された背板102が側面108をブラシシール109と接触状態にして配置されおり、この背板102は被密封流体の圧力を受けて剛毛101が変形しないように支持している。
【0007】
又、ブラシシール109の他方の面には、保持板103がリング板に形成されて背板102との間でブラシシール109の取付部104側を狭持している。この保持板103は、ブラシシール109の自由端側が動きの自由度を発揮できるように径方向の幅が狭くされてブラシシール109を被密封流体側に露出させている。
【0008】
そして、背板102とブラシシール109の取付部104と保持板103とは、一端が溶接されて結合部106を成している。
【0009】
この結合部106に於いて、前述したように剛毛101は細線から形成されているから、剛毛101よる厚肉の背板部102と保持板部103との間に挟持して溶接すると、剛毛101が背板部102や保持板部103よりも早く溶けてしまうので、特殊の溶接機で溶接しなければならない。このために製造がコスト高になる。
【0010】
又、このブラシシール109は、何万本数の剛毛101がある厚さの束にされて周方向に沿って配列されている。更に、剛毛101は、回転軸120の径方向に対して回転軸120の回転する方向へ傾斜している。
【0011】
このような状態に剛毛101を配列することは剛毛101が細線で、しかも短いから、その配列が困難をきたしている。
【0012】
そして、このブラシシール109の正常状態は、図14の実線で示すように回転軸120が自由端面105に接触又は近接している。このために、ブラシシール109の自由端面105は、回転軸120に嵌合するようにワイヤ放電加工機などにより精密仕上げ加工されている。しかし、剛毛101は変形しやすいので、この加工が極めて困難になっている。
【0013】
更に、他の関連技術として、図15に示すブラシシール装置100Bが存在する。この図15は、薄板の板シール209を回転軸120の周方向に積層状態に重ねて高圧側領域P1と低圧側領域P2をシールするものである。
【0014】
この板シール209の外周部は、ろう付けされて取付部104に形成されている。そして、ろう付けされた取付部104を介してケーシング110の溝部に取り付けられる。又、板シール209の低圧側領域P2の側面には背板102が配置されていると共に、高圧領域側P1の側面には保持板103が配置されており、この両板102,103により板シール209の両側を支持している。
【0015】
しかし、この様に形成された板シール209に対し、回転軸120が偏心して圧接したときに、円弧状を成すのみの板シール209は、弾性変形が容易でないから、弾性変形に対応するバネ常数が大きくなるので、回転軸60の偏心に対して追随することが困難になる問題を惹起している。このために板シール209の自由端面とロータ120の外周面との間隔を大きくとっているので、被密封流体をシールする能力に問題が生じる。このため、製作に於ける板シール板209の厚さを設計することが困難である。
【0016】
しかも、板シール209は、0.02から0.2mmのような薄板を方形に加工すると共に、円弧状に曲げなければならないので、この円弧状にした曲げ加工が困難である。更に、回転軸120の周面に積層するので何十万枚も積層しなければならない上に、積層した環状の外周側が内径より大径になる寸法だけ各板シール209の積層間にスペーサを設けなければならない。これらの加工と組立作業が困難を来すことになる。
【0017】
更に、被密封流体の圧力が作用する方向に接合して重ねられた板シール209は、単なる平板のみであるために、その平板の接合面間方向に作用する被密封流体の圧力が容易に平板の接合隙間から流出し、被密封流体の漏れを防止するシール能力に問題が生じてくる。このため、板シール209の積層や組立が問題となる。
【0018】
更に又、可撓性が阻害される構成の積層構造は、板シール209の自由端面105を早期に摩耗させる結果となっている。このため、板シール209の回転軸120に対する組立が問題である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その技術的課題は、板ブラシシールを安価に製造することにある。
【0020】
更に、板ブラシシールの材料の歩留まりを向上させることにある。更に又、板ブラシシールの組立を容易にして組立コストを低減することにある。
【0021】
そして、回転軸からの押圧力に対する板ブラシシールの弾性変形能力を向上させ、板ブラシシールが回転軸により摩耗させられるのを低減することにある。
【0022】
又、板ブラシシールの回転軸との接触力と変動に対応する追随性を良好にし動力のエネルギーの低減を図ると共に、変動に対してもシール能力を向上させることにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述のような課題を解決するために成されたものであって、その課題を解決するための技術的手段は以下のように構成されている。
【0024】
請求項1に係わる本発明の板ブラシシールの製造方法は、間隙を有して相対移動する部品間の前記一方の部品に取付けられて前記他方の部品との間をシールする板ブラシシールの製造方法であって、
シールする側にブラシ部分とスリットとを交互に有すると共に取付側に基部を有する半ブラシシール単板の形状を金属薄板にエッチングレジストし、前記エッチングレジストした金属薄板をエッチング加工して前記金属薄板から一対の第1半ブラシシール単板と第2半ブラシシール単板とを切り出して、前記第1半ブラシシール単板と前記第2半ブラシシール単板とを重ねると共に互いの前記ブラシ部分と前記スリットとを噛み合わせて板ブラシシール分割片を形成し、前記各板ブラシシール分割片の連結する一方の分割面と隣接する板ブラシシール分割片の他方の分割面とを互いに結合して板ブラシシール単板を形成し、しかる後に、単数枚の板ブラシシール単板の基部を、または複数枚板ブラシシール単板を重ね合わせた基部を取付部に形成するものである。
【0025】
この請求項1に係わる本発明の板ブラシシールの製造方法では、金属薄板からエッチング加工によりシールする側にブラシ部分とスリットとを交互に形成して可撓性を有する板ブラシ部に形成するので、基部によりブラシ部分が保持されているから、ブラシ部分の配列取付が極めて容易になり、製作コストを低減することが可能になる。
【0026】
更に、被密封流体の作用方向へ板状に仕切るので、部品点数を従来に比較して大きく低減することが可能になる。
【0027】
又、金属薄板から多数の半ブラシシール単板を切り出せるから、材料の歩留まりが向上する。しかも、金属薄板をエッチング加工して形成するので、薄板を加工することが容易になり、且つ寸法精度も向上し、更に、製作コストも飛躍的に低減することが可能になる。
【0028】
請求項2に係わる本発明の板ブラシシールの製造方法は、前記第1半ブラシシール単板と前記第2半ブラシシール単板の基部とを前記半ブラシシール単板に加工する金属薄板の厚さより薄肉にエッチング加工して前記ブラシ部分を前記薄肉にされた基部より突出させた形状にし、且つ一対の前記半ブラシシール単板が互いに噛み合う形の前記ブラシ部分と前記スリットとに加工するものである。
【0029】
この請求項2に係わる本発明の板ブラシシールの製造方法では、基部をエッチングにより薄肉に加工してブラシ部分を側面へ基部より突出させて一対の半ブラシシール単板のブラシ部分とスリットとを互いに噛み合わせることを可能にする。この加工は金属薄板からエッチング加工により形成できるから、噛み合わせの精度が向上すると共に、製作コストを低減することが可能になる。しかも、金属薄板から多数の半ブラシシール単板を切り出せるから、材料歩留まりが向上する。更に、基部がブラシ部分を保持する構造で、被密封流体の作用方向へ板状に仕切るので、部品点数が低減できると共に、組立が極めて容易になる。
【0030】
請求項3に係わる本発明の板ブラシシールの製造方法は、金属薄板がニッケル基合金材製にしたものである。この金属薄板の材料として、この他に銅、アルミニウム、ステンレススチール等が使用できる。
【0031】
この請求項3に係わる本発明の板ブラシシールの製造方法では、被密封流体の高温、耐液体、耐気体性に優れ、耐久性を発揮することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる実施の形態についての板ブラシシールの製造方法を図面に基づいて詳述する。尚、以下の図面は、設計に基づく図面である。
【0033】
先ず、本発明の板ブラシシール2を組み立てた板ブラシシール2の構成を説明する。
【0034】
図1は、ガスタービンのケーシング50の孔にロータ60が嵌通した両部品間の間隙を高圧P1側と低圧P2側とに仕切るように組み立てた板ブラシシール装置1の半断面図である。又、図2は、図1に示す板ブラシシール2の平面図である。更に、図3は、図2の板ブラシシール2を構成する板ブラシシール単板3の平面図である。更に又、図4は、図3の板ブラシシール単板3を等配に分割した第1実施例に係わる板ブラシシール分割片4である。
【0035】
図1において、1は板ブラシシール装置である。この板ブラシシール装置1は、板ブラシシール2をケーシング50に組み立てた全体の構造を言う。板ブラシシール装置1の固定部20は、一方の部品であるケーシング50の内周面に設けられた段部51にスナップリング12を介して取り付けられている。尚、固定部20はケーシング50の部品を組み合わせて形成した溝部に取り付けることもできる。又、板ブラシシール2の内周側の自由端部5は他方の部品であるロータ60の外周面と対向して接面又は近接した状態に配置されている。そして、板ブラシシール2により高圧P1側の被密封流体をシールする。
【0036】
図2に於いて、板ブラシシール2は、板ブラシシール2のみから成る場合と、板ブラシシール2に背板部6と保持部10とを取り付けた構成から成る場合とがある。この背板部6及び保持部10は板ブラシシール2の補助部品である。
【0037】
この板ブラシシール2は一般に複数枚の板ブラシール単板3の積層構造であるが、シール構造によって被密封流体の圧力が小さいときは、板ブラシール単板の1枚構造でも機能する。
【0038】
この板ブラシシール2は、図2に示すように、複数枚のリング状の板ブラシシール単板3を積層状態に配置し、所定の厚さの環状体に形成されている。そして、板ブラシシール単板3の環状を成す内周側がロータ60の回転方向へ傾斜した列状の細梁により板ブラシ部3Aに形成されている。又、板ブラシシール2の内周側は、この板ブラシ部3Aの噛み合い積層構造である。更に、板ブラシシール単板3の積層基部3Bの積層構造が、背板部6等を取り付けて板ブラシシール2の取付部2Aとなる。この取付部2Aは溶接又はピン止め等により一体化される。ピン止めとは、積層した取付部2Aに軸方向へ貫通したピン用孔を設けピンを打ち込んで固着するものである。
【0039】
板ブラシシール単板3の板ブラシ部3Aは、環状の薄板の内径が細梁状に形成したもので、その細梁の断面が長方形状又は正方形状の方形にした第1及び第2ブラシ部分4A1、4B1と対向するスリット4A2、4B2を互いに噛み合わせて列状に配列したものである。又、外周の積層基部3Bは第1基部4A3と第2基部4B3とを重ねた積層体から構成されている。
【0040】
図2に示す板ブラシシール2は、図3に示す板ブラシシール単板3が複数枚に積層されて環状体を成している。この板ブラシシール単板3は、図3又は図4に示すように、円弧状を成す板ブラシシール分割片4を環状に連結して形成されている。この板ブラシシール分割片4は一対の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bから形成されている。そして、分割した板ブラシシール分割片4に形成する効果は、薄板からの材料取りの歩留まりを向上させるためである。
【0041】
図4の板ブラシシール分割片4は、第1実施例に係わるもので、図5に示すように第1半ブラシシール単板4Aと第2半ブラシシール単板4Bとを切り出して互いに積層した状態の構造に成されている。尚、図4に示す板ブラシシール分割片4には、各基部4A、4Bにピン止め用の4個のピン用孔及び凹部12A、凸部12Bが設けられているが、図3の板ブラシシール分割片4のようにピン用孔等を設けなくとも機能する。更に、第1半ブラシシール単板4Aは、内径となる側がブラシ部分4A1とスリット4A2とが交互に形成されている。
【0042】
又、他方の第2半ブラシシール単板4Bも、一方の第1半ブラシシール単板4Aのブラシ部分4A1とスリット4A2とに積層したときに交互に噛み合うように、ブラシ部分4B1とスリット4B2とが交互に形成されている。
【0043】
このブラシ部分4A1、4B1の側面の凸部は、各第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの第1及び第2基部4A3、4B3を各ブラシ部分4A1、4B1の厚さより薄い寸法に加工することにより形成される。この各基部4A3、4B3の厚さは、ブラシ部分4A1、4B1の厚さの1/2の厚さに研削やエッチングして形成されているが、ブラシ部分4A1、4B1の厚さよりも2/3とか1/4とか設計に応じて設定される。尚、以下の各実施例に於いても、第1及び第2基部4A3、4B3の厚さは、そのブラシ部分4A1、4B1の厚さの1/2の厚さ寸法にされているが、2/3とか1/3とか1/4とか設計に応じてこの厚さが設定されている。
【0044】
この図4の板ブラシシール分割片4は環状に形成される内径が小さいので、一方の第1半ブラシシール単板4Aのスリット4A2が台形状に形成されている。又、他方の第2半ブラシシール単板4Bのブラシ部分4B1は、対応する第1半ブラシシール単板4Aのスリット4A2に積層したとき側面から噛み合う台形状に形成されている。この噛み合う台形は第1及び第2基部4A3、4B3側が内周側より大径になる寸法だけ大きくなる。しかし、内外径の寸法差が少ない場合には(全体が大径の場合、又は全体が平行な場合)この台形状は長方形状にすることもできる。
【0045】
この板ブラシシール単板3は周方向に沿って略等配に分割され板ブラシシール分割片4が組み合わされている。板ブラシシール分割片4に於ける積層基部3Bの一方の分割面11には、円形状に内設された凹部12Aが形成されている。又、積層基部3Bの他方の分割面11には円形状に突出する凸部12Bが形成されている。この凹部12Aと凸部11Bは、互いに填め合うように形成されており、この凹部12Aと凸部11Bが結合して一対の係合部12を構成する。
【0046】
次に、この板ブラシシール分割片4を構成する半ブラシシール単板4Aの製造方法を説明する。
【0047】
図5は、本発明の半ブラシシール単板の製造方法の第1実施の形態に係わるもので、図4に示す一対の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bを金属薄板Pから化学的エッチング加工により多数の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bに加工したものである。
【0048】
この製造方法の1例は、次のようになる。先ず、ニッケル基合金、ステンレス鋼、鋼板等の金属薄板Pに第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの形状をレジストによりパターン形成する。このパターン形成は、0.005mmから0.5mmの厚さの金属薄板Pの表面をクリーニングし、その後に金属薄板Pの表面にスクリーン印刷法、ドライフイルム/写真法、液体レジスト/写真法によりパターンのエッチングレジストする。
【0049】
次に、薄板金属Pの第1及び第2基部4A3、4B3になる面を、例えば1/2の厚さになるように削り込みのエッチングする。このエッチングは、レーザルーチング、プラズマエッチング、化学エッチング、ショットブラスト、微細研剤等の技術を利用して行う。第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの加工精度は、上記の加工技術で十分な寸法精度が保証できる。
【0050】
又、ピン孔等は、ガイドホール、パンチング、ルーチング加工等で行うことも可能である。これらの精密加工は、現在開発されたエッチング加工技術で行うことができる。
【0051】
次に、エッチングレジストの第1及び第2基部4A3、4B3の積層となる面を1/2の厚さに彫り込みエッチングするが、この彫り込みエッチングは、第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bに加工した後にも行うことも可能である。この第1及び第2基部4A3、4B3の彫り込み加工した状態の斜視図は、図10に示すようになる。この第1及び第2基部4A3、4B3を薄肉に加工した後に、金属薄板Pから第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの形にエッチングにより外形加工と切断とを行う。
【0052】
このようにして、図4に示すように、ブラシ部分4A1、4B1とスリット4A2、4B2を形成した第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bに製作される。
【0053】
板ブラシシール分割片4は、図7に示すようにして一対の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの接合面を対向し、ブラシ部分4A1、4B1とスリット4A2、4B2とを噛み合わせて各ブラシ部分4A1、4B1が1枚の厚さになるように組み合わせる。尚、図5では、図4のピン孔を省略している。
【0054】
この板ブラシシール分割片4は、環状になるように両端の分割面11、11を結合して図3に示すような板ブラシール単板3に組み立てられる。
【0055】
図5に示す金属薄板Pでは、この1枚の金属薄板Pから50個の半ブラシシール単板4A、4Bを切り出すことが可能となり、材料の歩留まりが大きく向上する。
【0056】
次に、本発明の板ブラシシール2の製造方法に係わる板ブラシシール2について説明する。
【0057】
図6は、第2実施例を示す半ブラシシール単板4A、4Bを組み合わせる状態の斜視図である。つまり、図4に示す板ブラシシール分割片4に組み立てる前工程の組み合わせ状態である。
【0058】
一対を成す一方の半ブラシシール単板4Aは、取付部2A側(図1参照)に第1基部4A3が形成されている。この第1基部4A3の反対側はブラシ部分4A1とスリット4A2に形成されている。そして、第1基部4A3は金属薄板Pの1/2の厚さにエッチング等により研削されている。このためにブラシ部分4A1は側面に1/2の高さに突出しいる。
【0059】
又、他方の半ブラシシール単板4Bも、取付部2A側に第2基部4B3が形成されている。この第2基部4B3の反対側はブラシ部分4B1とスリット4B2に形成されている。そして、第2基部4B3は金属薄板Pの1/2の厚さにエッチング等により研削されている。このためにブラシ部分4B1は側面に第2基部4B3より1/2の高さに突出しいる。
【0060】
図7は、一対の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bを図6の状態から互いに組み合わせて一対の組み合わせから成る板ブラシシール分割片4に形成した斜視図である。
【0061】
この板ブラシシール分割片4は、組み合わせることにより図7に示すように金属薄板Pと同じ厚さの平板状に形成される。そして、又、第1半ブラシシール単板4Aのブラシ部分4A1と第2半ブラシシール単板4Bのスリット4B2が噛み合うことになる。又、第2半ブラシシール単板4Bのブラシ部分4B1と第1半ブラシシール単板4Aのスリット4A2が噛み合うことになる。そして、図7に示すように一体に結合される。このために各ブラシ部分4A1、4B1間は隙間が微小に形成できる。
【0062】
この板ブラシシール分割片4の分割面11、11は対応する第1基部4A3の端の段部と第2基部4B3の段部とを接合することにより、図3に示すような、板ブラシシール単板3が容易に形成される。
【0063】
次に、この板ブラシシール分割片4の第2実施の形態に係わる製造方法について述べる。
【0064】
図8は、板ブラシシール分割片4の第2実施例に係わるものであって、ニッケル基合金、ステンレス鋼、鋼板等の金属薄板Pに第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの形状をレジストによりパターン形成したものである。このパターン形成は、0.005から0.5の厚さの金属薄板Pの表面をクリーニングし、その後に金属薄板Pの表面にスクリーン印刷法、ドライフイルム/写真法、液体レジスト/写真法によりパターンのエッチングレジストする。
【0065】
次に、薄板金属Pの第1及び第2基部4A3、4B3になる面を、例えば1/2の厚さになるように彫り込みエッチングする。このエッチングは、レーザルーチング、プラズマエッチング、化学エッチング、ショットブラスト等の技術を利用して行う。
【0066】
第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの加工精度は、上記の加工技術で十分な寸法精度が保証できる。
【0067】
又、ピン孔等は、ガイドホール、パンチング、ルーチング加工等で行うことも可能である。これらの精密加工は、現在開発されたエッチング加工技術で行うことができる。
【0068】
図9は、図8のエッチングレジストの基部4A3、4B3の積層される面を1/2の厚さに切り込みエッチングをした平面図である。この彫り込みエッチングは、第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bに加工した後にも行うことが可能である。その第1及び第2基部4A3、4B3の彫り込み加工した状態の拡大図した斜視図は、図10に示すようになる。この第1及び第2基部4A3、4B3を薄肉に加工した後に、金属薄板Pから第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの形になるように外形加工と切断とを行う。
【0069】
そして、図11に示すように、ブラシ部分4A1、4B1とスリット4A2、4B2を形成した第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bに製作できる。
【0070】
尚、図11では、図4のピン孔と凹部12A、凸部12Bを省略している。この図11のような第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bに形成して図3に示すような板ブラシール単板3に組み立てることも可能である。この場合は取付部2Aがピン止め、溶接等の方法で固着される。
【0071】
又、このような製造方法では、図9に示すように1枚の金属薄板Pから40個の半ブラシシール単板4A、4Bを切り出すことも可能になる。そして、この第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bを組み立てることにより大型の板ブラシール単板3を容易に製作できるから、従来の高価な金属薄板Pから1個しか取り出せない板ブラシール単板3に比較して本発明の第1及び第2半ブラシール単板4A、4Bの材料コストを大きく低減することが可能になる。
【0072】
又、図12は、半ブラシシール単板4A、4Bの第3実施例である。この第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bは、製造方法として図9に示す金属薄板Pからプラズマエッチング加工をして金属薄板Pの厚さのままの切出モジュール板4Cに加工する。
【0073】
この金属薄板Pである切出モジュール板の第1及び第2基部4A3、4B3の厚さは、金属薄板Pの厚さと同じで半ブラシシール単板4A、4Bに製作する。
【0074】
この一対の対向する第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの各ブラシ部分4A1、4B1と各スリット4B2、4A2を互いに対向して合わせて内周側を噛み合わせる。そして、図7に示すように板ブラシシール分割片4に組み立てる。
【0075】
この第1半ブラシシール単板4Aのブラシ部分4A1の形状とスリット4A2の形状とが略同一形状にし、この一対の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bを積層に組み合わせると、各ブラシ部分4A1、4B1と各スリット4A2、4B2とが同一幅で側面から少し噛み合い重なることになる。
【0076】
この組み合わされた板ブラシシール分割片4は、図3に示すように、各分割面11、11、11・・を接合することにより板ブラシシール単板3に組み立てられる。
【0077】
上述した各実施例は、ブラシ部分4A1、4B1の断面が方形状(長方形又は正方形)に形成される。そして、その実施例1は、ブラシ部分4A1、4B1の断面寸法の幅各辺が、0.5〜0.005×0.5〜0.005mm、好ましくは0.20〜0.008×0.2〜0.018mmである。又、各ブラシ部分4A1、4B1が側面から噛み合う各スリット4A2、4B2の各辺の寸法も同様に形成されている。更に、長さはこの実施例では5〜50mmの範囲を採用した。
【0078】
図4に示す板ブラシシール分割片4は、両分割面11、11に設けられた凹部12Aと凸部12Bを係合させた係合部12により結合して環状に形成する。
【0079】
又は、図7に示すように分割面11、11に凹凸部を設けることなく分割面11、11を接合した係合部により円環状に形成することもできる。
【0080】
このようにして形成された板ブラシシール2は、各ブラシ部分4A1、4B1の各接合面が互いに接合又は微小な間隙を有して噛み合っているのでシール能力が飛躍的に向上する。
【0081】
しかも、板ブラシシール単板3を用いることにより板ブラシ部3Aの弾性変形により可撓性が発揮される。更に、ブラシ部分4A1、4B1を側面に突出させた板ブラシシール2の積層基部3Bは、ブラシ部分4A1、4B1とスリット4B2、4A2が噛み合うので、積層基部3Bの結合力が強くなり、溶接することなくピン等で固着することも可能になる。
【0082】
上述した各実施例の板ブラシシール単板3の積層厚さは0.1〜5mmの範囲に積層されているが、この積層厚さは、被密封流体の圧力により決められるものである。
【0083】
更に、板ブラシシール単板3の材質は、鋼、ステンレス、ニッケル基の合金、セラミック材等が用いられる。
【0084】
図13は、板ブラシシール単板3の円周が4等配に分割されたものである。この板ブラシシール分割片4の分割面11を結合した板ブラシシール単板3が第4実施例である。この一対にされた板ブラシシール単板3を積層するときに分割面11は円周方向を互いに同一位置に配置しても良いが、互いに位置を周方向へ変えて接合するとシール能力の点で優れる効果を発揮する。
【0085】
このブラシ部分4A1とスリット4A2の形状は、図3と略同様な形状に形成されている。この第1及び第2基部4A3、4B3は薄肉に加工されないまま又は薄肉に加工されて積層される各例である。この第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bの製造方法も上述と同様に金属薄板Pから多数切り出して製作する。そして、上述と同様にして組み立てる。この第3実施例は半ブラシシール単板4A、4Bを形成する材料の歩留まりに優れる。又、製作コストも低減できる。
【0086】
この第1実施例から第4実施例の板ブラシシール単板3は、積層して板ブラシシール2に形成される。そして、この板ブラシシール2を図1と同様にケーシング60に組み立てられて板ブラシシール装置1に構成される。
【0087】
このように形成された板ブラシシール2は、本発明の製造方法により高精度に加工できるので、板ブラシ部3Aのスリット4A2をほとんど隙間がなく密集させて結合されている。このために、シール能力が飛躍的に向上する。
【0088】
一方、最新の加工方法でも、従来のように薄板にスリット4A2、4B2を加工する場合は、薄板の厚さより小さな隙間寸法のスリット4A2、4B2を形成することが不可能である。このため、各ブラシ部分4A1、4B1間に間隙が生じるため、これらの板ブラシシール2では、シール能力を向上させることが困難である。
【0089】
しかし、本発明の一対の第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bを積層して組み合わせることにより、板ブラシシール2はシール能力を向上させることが可能になる。しかも、板ブラシ部3Aは、多数の細梁が組み合わされているだけであるから、可撓性を有し、板ブラシシール2のブラシ部分4A1、4B1に回転軸60が当接しても摩擦を和らげるように弾性変形し、この回転軸60との当接によって生じる摩耗が効果的に防止できる。
【0090】
この第1及び第2半ブラシシール単板4A、4Bは種々のエッチング加工、更には、ワイヤー放電加工、プレス加工などの微細加工により容易に形成される。
【0091】
【発明の効果】
本発明に係わる板ブラシシールの製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
【0092】
本発明の板ブラシシールの製造方法は、1枚の金属薄板からから多数の半ブラシシール単板が切り出せるから、材料歩留まりが向上する。このために、板ブラシシールのコストを飛躍的に低減する効果を奏する。
【0093】
更に、積層基部に互いに接合できる薄肉に形成して一対の半ブラシシール単板をブラシ部分とスリットとを噛み合わせて結合するので、積層基部の装着が極めて容易になる効果を奏する。このために、組立コストを低減する効果を奏する。
【0094】
又、本発明の板ブラシシールを構成する板ブラシシール単板は一対の半ブラシシール単板をブラシ部分とスリットとを噛み合わせて結合するので、間隙が少なくなりシール能力を飛躍的に向上させることが可能になる。
【0095】
しかも、板ブラシシール単板を積層するときに隣接するブラシ部分とスリットとの接合面間を積層方向に連通しないようにずらして積層することもでき、板ブラシシールは、更に、シール能力が向上する。
【0096】
その上、板ブラシシールは、板ブラシール単板を板状にして被密封流体を仕切るので、板ブラシール単板の枚数が少なくなり、部品点数が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の図4に係わる板ブラシシール分割片4を組み合わせた板ブラシシール装置の半断面図である。
【図2】図1に示す軸方向の板ブラシシールの正面図である。
【図3】図1の板ブラシシール単板の平面図である。
【図4】図3の板ブラシール単板の第1実施例に係わる板ブラシシール分割片の平面図である。
【図5】図4に示す半ブラシシール単板を金属薄板からプラズマエッチングにより多数切り出す第1実施の形態に係わるブラシシール単板の平面図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す半ブラシシール単板を組み合わせる状態の斜視図である。
【図7】図6に示す一対の半ブラシシール単板を組み合わせた状態の板ブラシシール分割片の斜視図である。
【図8】金属薄板に多数の半ブラシシール単板をパターン印刷した本発明に係わる第1実施の形態を示す平面図である。
【図9】図7の各半ブラシシール単板の基部となる面に、基部を薄肉にするためにエッチング加工した第1実施例に係わる平面図である。
【図10】図8の基部の彫り込み面を拡大した斜視図である。
【図11】図9から半ブラシシール単板を切り出した1個の斜視図である。
【図12】本発明の第3実施例を示す半ブラシシール単板の拡大した斜視図である。
【図13】本発明の第4実施例を示す板ブラシシール単板の平面図である。
【図14】関連技術のブラシシール装置の半断面図である。
【図15】関連技術の他のブラシシール装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 板ブラシシール装置
2 板ブラシシール
2A 取付部
3 板ブラシシール単板
3A 板ブラシ部
3B 積層基部
4 板ブラシシール分割片
4A 第1半ブラシシール単板
4A1 ブラシ部分
4A2 スリット
4A3 第1基部
4B 第2半ブラシシール単板
4B1 ブラシ部分
4B2 スリット
4B3 第2基部
5 自由端部
6 背板部
10 保持部
11 分割面
12 係合部
12A 凹部
12B 凸部
20 固定部
50 一方の部品(ケーシング)
51 段部
60 他方の部品(ロータ)
P 金属薄板
Claims (3)
- 間隙を有して相対移動する部品間の前記一方の部品に取付けられて前記他方の部品との間をシールする板ブラシシールの製造方法であって、
シールする側にブラシ部分とスリットとを交互に有すると共に取付側に基部を有する半ブラシシール単板の形状を金属薄板にエッチングレジストし、
前記エッチングレジストした金属薄板をエッチング加工して前記金属薄板から一対の第1半ブラシシール単板と第2半ブラシシール単板とを切り出して、
前記第1半ブラシシール単板と前記第2半ブラシシール単板とを重ねると共に互いの前記ブラシ部分と前記スリットとを噛み合わせて板ブラシシール分割片を形成し、
前記各板ブラシシール分割片の連結する一方の分割面と隣接する前記板ブラシシール分割片の他方の分割面とを互いに結合して板ブラシシール単板を形成し、
しかる後に、単数枚の板ブラシシール単板の基部を、または板ブラシシール単板を複数枚に重ね合わせた基部を取付部に形成することを特徴とする板ブラシシールの製造方法。 - 前記第1半ブラシシール単板と前記第2半ブラシシール単板の基部とを前記半ブラシシール単板に加工する金属薄板の厚さより薄肉にエッチング加工して前記ブラシ部分を前記薄肉にされた基部より突出させた形状にし、
且つ一対の前記半ブラシシール単板が互いに噛み合う形の前記ブラシ部分と前記スリットとに加工することを特徴とする請求項1に記載の板ブラシシールの製造方法。 - 前記金属薄板がニッケル基合金又はステンレス鋼材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板ブラシシールの製造方法。
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