JP4180667B2 - 耐紫外線性木材製品とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐紫外線性木材製品に関する。より詳細には、本発明は、ポリシラザンとセラミックス超微粒子を含むコーティング用組成物を木材表面又は塗装済木材表面でセラミックス化させて得られる耐紫外線性木材製品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材は、素地表面の状態(木理、肌目、杢)を生かしたり、さらに美しく見せるために、透明塗装や着色塗装が施工される。しかし、屋外施工の透明塗膜や着色塗膜は紫外線によって劣化変色し、1年とその美観を保つことができない。また、衝撃に弱いという問題がありその用途が限定されている。
木材に耐紫外線性を付与するためのコーティング組成物として、特開昭59−135261号公報に、特定のアルキド樹脂をベースにした組成物が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のアルキド樹脂は顔料を混合することでUVカットを行うものであり、透明ではなく、木材の風合いを生かせなかった。本発明の目的は、透明で木材の風合いを生かすことができ、常温で施工でき、紫外線を遮断でき、強度を付与することができる、木材の劣化防止に好適であるコーティングを付与した木材製品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、
(1)平均粒径0.005〜0.1μmのZnO及び/又はTiO2 の超微粒子を含み且つ窒素を原子百分率で0.005〜5%含むSiO2 膜を木材表面又は塗装済木材表面に有することを特徴とする耐紫外線性木材製品を提供する。
本発明はまた、
(2)主として一般式(I):
【0005】
【化2】
【0006】
(但し、R1 、R2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表わす。ただし、R1 、R2 、R3 のうち少なくとも1つは水素原子である)
で表わされる単位からなる主骨格を有する数平均分子量が100〜5万のポリシラザンを主成分とするコーティング溶液に平均粒径0.005〜0.1μmのZnO及び/又はTiO2 の超微粒子を添加したコーティング用組成物を木材表面又は塗装済木材表面に塗布し、前記組成物をセラミックス化することを特徴とする耐紫外線性木材製品の製造方法をも提供する。
【0007】
以下、本発明の好ましい態様を列挙する。
(3)ポリシラザンが、数平均分子量が200〜1万のペルヒドロポリシラザン(すなわち、上記式(I)でR1 =R2 =R3 =Hの場合)である(1)の耐紫外線性木材製品。
(4)ZnO及び/又はTiO2 の平均粒径が0.05μm以下である(1)の耐紫外線性木材製品。
【0008】
(5)ポリシラザンが、数平均分子量が200〜1万のペルヒドロポリシラザン(つまり上記式(I)でR1 =R2 =R3 =Hの場合)である(2)の製造方法。
(6)ZnO及び/又はTiO2 の平均粒径が0.05μm以下である(2)の製造方法。
【0009】
フィラーを平均粒径0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下の超微粒子にすることによって可視光線の透過が可能になり、かつセラミックスとしてZnO又はTiO2 を選択することによりポリシラザンとの相性に優れるため、目的とする緻密、硬度、透明なセラミックス膜が得られ、且つこのセラミックコーティング膜は容易に10μm程度の厚膜にすることが可能であり、また紫外線(UV)吸収性を備えているので紫外線吸収性透明セラミックス膜として利用可能である。
【0010】
使用するセラミックス超微粒子の平均粒径が小さいものは入手が困難であり、平均粒径が大きいと透明なセラミックス膜を得ることが難かしいことから、使用するセラミックス超微粒子の平均粒径の下限は0.005μmであり、好ましくは0.01μmである。上限は0.1μmであり好ましくは0.05μmである。
【0011】
本発明の効果はZnO、TiO2 のセラミックス超微粒子を使用することによって得られた。ZnO、TiO2 は混合して使用できる。
具体的には、例えば、住友セメント製ZnO分散液ZS303(粒径0.025μm,30wt%、トルエン溶液)、又は出光興産製TiO2 粉末IT−UD(粒径0.02μm、高分散化処理タイプ)が好ましい。この場合は、シラザンのキシレン溶液に添加し、適宜攪拌又は超音波分散、ボールミルによる分散を行えばよい。他に、三菱マテリアル製ZnO粉末C−30や堺工業製ZnO粉末FINEX−25、50、75を使用することができる。この場合は、凝集粒子を分散するため、ボールミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライターなどによる強力な処理が必要である。適宜分散剤を加えることもできる。
【0012】
用いるポリシラザンは、分子内に少なくともSi−H結合、あるいはN−H結合を有するポリシラザンであればよく、ポリシラザン単独は勿論のこと、ポリシラザンと他のポリマーとの共重合体やポリシラザンと他の化合物との混合物でも利用できる。
【0013】
用いるポリシラザンには、鎖状、環状、あるいは架橋構造を有するもの、あるいは分子内にこれら複数の構造を同時に有するものがあり、これら単独でもあるいは混合物でも利用できる。
用いるポリシラザンの代表例としては下記のようなものがあるが、これらに限定されるものではない。セラミックス膜の硬度の点からはペルヒドロポリシラザンが好ましい。
【0014】
一般式(I)でR1 、R2 及びR3 に水素原子を有するものは、ペルヒドロポリシラザンであり、その製造法は例えば特公昭63−16325号公報、D. Seyferth らCommunication of Am. Cer. Soc., C-13, January 1983. に報告されている。これらの方法で得られるものは、種々の構造を有するポリマーの混合物であるが、基本的には分子内に鎖状部分と環状部分を含み、
【0015】
【化3】
【0016】
の化学式で表わすことができる。ペルヒドロポリシラザンの構造の一例を示すと下記の如くである。
【0017】
【化4】
【0018】
一般式(I)でR1 及びR2 に水素原子、R3 にメチル基を有するポリシラザンの製造方法は、D. Seyferth らPolym. Prepr., Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem., 25, 10(1984)に報告されている。この方法により得られるポリシラザンは、繰り返し単位が−(SiH2 NCH3 )−の鎖状ポリマーと環状ポリマーであり、いずれも架橋構造をもたない。
【0019】
一般式(I)でR1 及びR3 に水素原子、R2 に有機基を有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの製造法は、D. Seyferth らPolym. Prepr., Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem., 25, 10(1984)、特開昭61−89230号公報、同62−156135号公報に報告されている。これらの方法により得られるポリシラザンには、−(R2 SiHNH)−を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するものや
(R3 SiHNH)X 〔(R2 SiH)1.5 N〕1-X (0.4<x<1)の化学式で示せる分子内に鎖状構造と環状構造を同時に有するものがある。
【0020】
一般式(I)でR1 に水素原子、R2 及びR3 に有機基を有するポリシラザン、またR1 及びR2 に有機基、R3 に水素原子を有するものは
−(R1 R2 SiNR3 )−を繰り返し単位として、主に重合度が3〜5の環状構造を有している。
用いるポリシラザンは、上記の如く一般式(I)で表わされる単位からなる主骨格を有するが、一般式(I)で表わされる単位は、上記にも明らかな如く環状化することがあり、その場合にはその環状部分が末端基となり、このような環状化がされない場合には、主骨格の末端はR1 、R2 、R3 と同様の基又は水素であることができる。
【0021】
ポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの中には、D. Seyferth らCommunication of Am. Cer. Soc., C-132, July 1984. が報告されている様な分子内に架橋構造を有するものもある。一例を示すと下記の如くである。
【0022】
【化5】
【0023】
また、特開昭49−69717号に報告されている様なR1 SiX3 (X:ハロゲン)のアンモニア分解によって得られる架橋構造を有するポリシラザン(R1 Si(NH)X )、あるいはR1 SiX3 及びR2 2SiX2 の共アンモニア分解によって得られる下記の構造を有するポリシラザンも出発材料として用いることができる。
【0024】
【化6】
【0025】
さらに、下記の構造(式中、側鎖の金属原子であるMは架橋をなしていてもよい)の如く金属原子を含むポリメタロシラザンも出発材料として用いることができる。
【0026】
【化7】
【0027】
その他、特開昭62−195024号に報告されているような繰り返し単位が〔(SiH2 )n (NH)m 〕及び〔(SiH2 )r O〕(これらの式中、n,m,rはそれぞれ1,2または3である)で表わされるポリシロキサザン、特開平2−84437号に報告されているようなポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造する耐熱性に優れたポリボロシラザン、特開昭63−81122号、同63−191832号、特開平2−77427号に報告されているようなポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン、特開平1−138108号、同1−138107号、同1−203429号、同1−203430号、同4−63833号、同3−320167号に報告されているような分子量を増加させたり(上記公報の前4者)、耐加水分解性を向上させた(後2者)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、特開平2−175726号、同5−86200号、同5−331293号、同3−31326号に報告されているようなポリシラザンに有機成分を導入した厚膜化に有利な共重合シラザン、特開平5−238827号、特願平4−272020号、同5−93275号、同5−214268号、同5−30750号、同5−338524号に報告されているようなポリシラザンにセラミック化を促進するための触媒的化合物を付加または添加したプラスチックスやアルミニウムなどの金属への施工が可能で、より低温でセラミックス化する低温硬化タイプポリシラザンなども同様に使用できる。
【0028】
本発明では、さらに以下のような低温セラミックス化ポリシラザンを使用することができる。例えば、本願出願人による特願平4−39595号明細書に記載されているケイ素アルコキシド付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンと、下記一般式(II):
Si(OR4 )4 (II)
(式中、R4 は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはアリール基を表し、少なくとも1個のR4 は上記アルキル基またはアリール基である)で表されるケイ素アルコキシドを加熱反応させて得られる、アルコキシド由来ケイ素/ポリシラザン由来ケイ素原子比が0.001〜3の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のケイ素アルコキシド付加ポリシラザンである。
【0029】
低温セラミックス化ポリシラザンの別の例として、本出願人による特開平6−122852号公報に記載されているグリシドール付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンとグリシドールを反応させて得られる、グリシドール/ポリシラザン重量比が0.001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のグリシドール付加ポリシラザンである。
【0030】
低温セラミックス化ポリシラザンのさらに別の例として、本願出願人による特願平5−35604号明細書に記載されているアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンと、金属としてニッケル、白金、パラジウム又はアルミニウムを含むアセチルアセトナト錯体を反応させて得られる、アセチルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比が0.000001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンである。上記の金属を含むアセチルアセトナト錯体は、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンacac- が金属原子に配位した錯体であり、一般に式(CH3 COCHCOCH3 )n M〔式中、Mはn価の金属を表す〕で表される。
【0031】
好適な低温セラミック化ポリシラザンのさらに別の例として、本願出願人による特開平6−299118号公報に記載されている金属カルボン酸塩付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンと、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム及びアルミニウムから成る群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む金属カルボン酸塩を反応させて得られる、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比が0.000001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万の金属カルボン酸塩付加ポリシラザンである。この金属カルボン酸塩は、式(RCOO)n Mで表される化合物であって、式中、Rは炭素原子数1〜22の脂肪族基又は脂環基を表し、Mは上記金属を表す。
【0032】
用いるポリシラザンの分子量が小さすぎると、焼成時の収率が低く、実用的でない。一方分子量が大きすぎると溶液の安定性が低く、健全な膜が得られない。これらの理由から、用いるポリシラザンの分子量は数平均分子量で下限は100であり好ましくは500である。上限は5万であり、好ましくは10,000である。
【0033】
セラミックス超微粒子の添加量が少ないと効果がなく、セラミックス超微粒子の添加量の下限は5重量部であり、好ましくは15重量部である。一方、多すぎると膜中に空隙が形成されることから、上限は95重量部であり、好ましくは85重量部である。但し、ここでポリシラザンとセラミックス超微粒子の合計重量100重量部とする。
【0034】
セラミックス超微粒子はポリシラザンコーティング溶液に均一に分散させるべきである。均一に分散させる方法としては、高分散タイプ(ZS−303,IT−UDなど)の場合は、適宜攪拌、超音波分散、ボールミルによる分散を行なえば十分であるが、一般のセラミックス超微粒子(C−30,F1NEX−29,50,75など)の場合には必要に応じ予め市販の分散剤を添加したシラザン溶液中でボールミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライターなどによる強力な分散処理を行なって均一なコーティング液とする必要がある。
【0035】
溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素の炭化水素溶媒、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ケトン類、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類、及びエステル類が使用できる。好ましい溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、1,2−ジオキシエタン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエーテル類、ペンタンヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、酢酸i−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸フェニル等の酢酸エステル類、同様のプロピオン酸エステル類、酪酸エステル類、吉草酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マロン酸ジメチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、等である。
【0036】
これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために、2種類以上の溶剤を混合してもよい。
溶剤の使用量(割合)は採用するコーティング方法により作業性がよくなるように、また必要な膜厚により選択され、またポリシラザンの平均分子量、分子量分布、その構造によって異なるので、コーティング用組成物中溶剤は99重量%程度まで混合することができ、好ましくは固形分濃度が3〜50重量%の範囲で混合することができる。
【0037】
コーティング用組成物には、必要に応じてフィラーの分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、pH調整剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進剤、流れ止め剤を加えてもよい。
上記の如きコーティング用組成物は木材に1回又は2回以上繰り返し塗布した後、珪素−窒素−酸素系又は珪素−窒素−酸素−炭素系セラミックスから成る被覆膜を形成させる。
【0038】
コーティング組成物を塗布する木材は、特に限定されず、合板、チップボード、ソフトボード、ハードボード、等を包含する。本発明により塗布される木材は、透明塗装や着色塗装を施工されたものであっても、未施工のものであってもよい。また、これら木材の形状にも何ら制限はなく、板状、方形状、中空状、その他複雑な形状をとることができる。当業者であれば、以下に記載するような塗布方法の中から木材の形状に合った方法を適宜選択することができる。
【0039】
コーティングとしての塗布手段としては、通常の塗布方法、つまりスピンコート、浸漬、ロール塗り、バー塗り、刷毛塗り、スプレー塗り、フロー塗り等が用いられる。又、塗布前の木材の素地調整等は、従来の塗装と同様に、乾燥−付着汚染物の除去−研磨−節止め−穴埋め、等を十分に行う。
【0040】
このような方法でコーティングし、乾燥させた後、セラミックス化を促進させるか又は十分にエージングすることによって、セラミックス超微粒子含有ポリシラザンは架橋、縮合、酸化、加水分解して硬化し、強靱な被覆を形成する。
【0041】
セラミックス化促進条件は、木材の場合施工温度に限度があるので、より低温でセラミックス化するタイプのポリシラザンを使用する。
施工温度は常温〜180℃とすることができる。雰囲気は酸素中、空気中又は不活性ガス等のいずれであってもよいが、空気中がより好ましい。低温セラミックス化タイプのポリシラザンは、上記のような低い温度でSi−O結合あるいはSi−N結合を主体とする強靱な被覆の形成が可能となる。このSiO2 膜はポリシラザンに由来するため窒素を原子百分率で0.005〜5%含有する。
【0042】
低温セラミックス化ポリシラザンを使用した場合には、上記のような方法でコーティングした後、木材を損なわない温度、好ましくは150℃以下で加熱処理を施す。一般に、加熱処理を150℃以上で行うと、木材が変形したり、その強度が劣化するなど、その性質が損なわれる。この加熱処理温度は、木材の種類によって当業者が適宜設定することができる。加熱雰囲気は酸素中、空気中のいずれであってもよい。
【0043】
上記の温度での熱処理においてはSi−O、Si−N、Si−H、N−Hが存在する膜が形成される。この膜はまだセラミックスへの転化が不完全である。この膜を、次に述べる2つの方法▲1▼及び▲2▼のいずれか一方又は両方によって、セラミックスに転化させることが可能である。
【0044】
▲1▼加湿雰囲気中での処理(エージング)
圧力は特に限定されるものではないが、1〜3気圧が現実的に適当である。相対湿度は特に限定されるものではないが、30〜100%RHが好ましい。温度は室温以上で効果的であるが室温〜120℃が好ましい。エージング時間は特に限定されるものではないが10分〜30日が現実的に適当である。
加湿雰囲気中での熱処理により、低温セラミックス化ポリシラザンの酸化または水蒸気との加水分解が進行するので、上記のような低いエージング温度で、実質的にSiO2 からなる緻密な膜の形成が可能となる。但し、このSiO2 膜はポリシラザンに由来するため窒素を原子百分率で0.005〜5%含有する。この窒素含有量が5%よりも多いと膜のセラミックス化が不十分となり所期の効果(例えば紫外線防止性や硬度)が得られない。一方、窒素含有量を0.005%よりも少なくすることは困難である。好ましい窒素含有量は原子百分率で0.1〜3%である。
【0045】
▲2▼触媒を含有した蒸留水中に浸す。
触媒としては、酸、塩基が好ましく、その種類については特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−エキシルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、グアニジン、ピグアニン、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ−〔2,2,2〕−オクタン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、アンモニア水等のアルカリ類;リン酸等の無機酸類;氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸のような低級モノカルボン酸、又はその無水物、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸のような低級ジカルボン酸又はその無水物、トリクロロ酢酸等の有機酸類;過塩素酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素及びその電気供与体との錯体、等;SnCl4 、ZnCl2 、FeCl3 、AlCl3 、SbCl3 、TiCl4 などのルイス酸及びその錯体等を使用することができる。好ましい触媒は塩酸である。触媒の含有割合としては0.01〜50重量%、好ましくは1〜10重量%である。保持温度としては室温から沸点までの温度にわたって有効である。保持時間としては特に限定されるものではないが10分〜30日が現実的に適当である。
【0046】
触媒を含有した蒸留水中に浸すことにより、低温セラミックス化ポリシラザンの酸化あるいは水との加水分解が、触媒の存在により更に加速され、上記のような低い加熱温度で、実質的にSiO2 からなる緻密な膜の形成が可能となる。但し、先に記載したように、このSiO2 膜はポリシラザンに由来するため窒素を同様に原子百分率で0.005〜5%含有する。
【0047】
本発明では、本願出願人による特願平6−236881号明細書に記載されているセラミック化法を採用することもできる。この方法によれば、ポリシラザン含有組成物を木材に塗布し、十分に乾燥した後、その塗膜にアルコキシシランと水を含む混合溶液を(例えば、浸漬法や噴霧法により)接触させるだけで常温においてもポリシラザンがセラミック化し、実質的にSiO2 からなる緻密な膜が得られる。
この特願平6−236881号明細書に記載されている方法に用いられるアルコキシシランは、ゾル−ゲル法によるSiO2 系セラミック被膜の形成に一般に用いられるアルコキシシランの中から任意に選ぶことができる。
【0048】
好適なアルコキシシランは、Si(OR)4 〔式中、Rは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基またはアルキルシリル基を表す〕で示されるアルコキシシランである。好ましいRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びイソプロペニル基である。中でも特に好ましいアルコキシシランは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランである。
【0049】
この方法では、上記のアルコキシシランの他、R’n Si(OR)4-n 〔式中、Rは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基またはアルキルシリル基を表し、R’は、各々独立に、上記Rの他、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基またはメルカプト基を表し、そしてnは1〜2の整数である〕で表される有機アルコキシシラン、又はR’n (RO)3-n Si−R”−Si(OR)3-m R’m 〔式中、Rは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基またはアルキルシリル基を表し、R’は、各々独立に、上記Rの他、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基またはメルカプト基を表し、R”は、2価の有機結合基または−O−を表し、nは0〜3、mは0〜3の整数を表すが、但し、n+mは4以下である〕で表されるアルコキシジシランを使用してもよい。このような有機基R’及びR”は、得られる最終のセラミックス膜が所望の膜質(例えば、対湿分遮断性、対酸素遮断性)を示すように、当業者であれば適宜選択することができる。
【0050】
反応性の混合溶液に用いられる水(H2 O)には、通常のイオン交換水、工業用水、濾過水、等が使用できる。しかしながら、得られる最終セラミック被膜の膜質等を考慮した場合、純水を使用することが好ましい。また、水の代わりに過酸化水素水を使用することは可能である。
混合溶液中のアルコキシシランと水の存在比率は、体積基準でアルコキシシラン/水=0.01〜100、より好ましくは0.1〜10の範囲が好ましい。この比率が0.01よりも小さいと、水による反応が主体となり、得られるセラミックスの膜質が悪くなる。一方、100よりも大きいと、アルコキシシランの加水分解速度が遅くなる。また、この比率を変更することによって混合溶液の反応性を制御することができる。
【0051】
1回の適用で得られるSiO2 膜の厚さは、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜2μmの範囲である。膜厚が5μmよりも厚いと熱処理時に割れが入ることが多く、また曇りが生じることによりヘイズ率(透明被膜としては3%以下が好ましい)が増加してしまう。反対に、膜厚が1μmよりも薄いと所期の効果、例えば所望の紫外線防止性や硬度が得られない。この膜厚は、コーティング用組成物の濃度を変更することによって制御することができる。すなわち、膜厚を増加するためにはコーティング用組成物の固形分濃度を高くする(溶剤濃度を低くする)ことができる。また、コーティング用組成物を複数回適用することによって膜厚をさらに増加させることもできる。
【0052】
こうして、本発明のコーティング組成物を焼成すると、硬度2H以上、さらには4H以上(鉛筆硬度)の高硬度でかつ緻密なセラミックス膜が得られ、その可視光透過率は80%以上、さらには95%以上にすることができる。
【0053】
比較例1
十分に素地調整したナラ単板(100×100×8)上に木材保護着色剤(和信化学製、ガードラックG−8メープル)を塗布、室温(22℃)にて3日間乾燥したものを比較サンプル−1とした。
実施例1
(A)東燃製低温タイプペルヒドロポリシラザンPHPS−1(Mn≒800)20wt%キシレン溶液。
(B)住友セメント製ZnO分散液ZS−303 30wt%トルエン溶液。
(A)と(B)を混合し、スターラーで3時間攪拌し、均一なコーティング液とした。混合比は、全固形分(ポリシラザン+ZnO)中のZnOの割合で0wt%、60wt%、80wt%とした。また、全固形分の濃度は20wt%になるようキシレンで調整した。
【0054】
得られたコーティング液の光学性能及び硬度を測定するために、PETフィルム(75μm厚)に流し塗り法で塗布、ZnO 0wt%のものを(1−1)、ZnO 60wt%のものを(3−1)、ZnO 80wt%のものを(4−1)とした。また、木材サンプルでの耐久テスト用として比較サンプル−1上に刷毛塗り法で塗布、ZnO 0wt%のものを(1−2)、ZnO 60wt%のものを(3−2)、ZnO 80wt%のものを(4−2)とした。そして各々塗布後室温(21〜25℃、湿度60〜80%)で1週間エージングした。得られたセラミックス膜厚はいずれも約2μmであった。これらの光学性能及び硬度の結果を表−1に、耐久テストの結果を表−2に示す。
【0055】
実施例2
上記コーティング液中、ZnO 0wt%のものをPETフィルム(75μm)に流し塗り法で塗布し、これを120℃で1時間乾燥後、さらに95℃/80%RHで3時間加湿処理したものを(2)とした。得られたセラミックス膜厚は約2μmであった。その光学性能及び硬度を表−1に示す。
実施例3
(D)出光興産製 TiO2 粉末IT−UD
(A)に(D)の粉末を添加し、20分間超音波分散し均一なコーティング液とした。全固形分中のTiO2 の割合は25%とした。また、全固形分中の濃度は20%になるようにキシレンで調整した。得られたコーティング液を流し塗り法でPETフィルム(75μm)に塗布、そしてこれを室温(21〜25℃、湿度60〜80%)で1週間エージングしたものを(5)とした。得られたセラミックス膜厚は約2μmであった。その光学性能及び硬度を表−1に示す。
【0056】
なお、光学性能及び硬度の測定は下記の装置を使用した。
UVカット能測定:日立製作所(株)製U−4000型自記分光光度計
透明度測定:日本電色工業(株)製300A型ヘイズメーター
スーパーUVテスター:大日本プラスチックス(株)製SUV−W13型
磨耗性テスト:テーバー式磨耗試験機、テスター産業(株)製AB−101型磨耗輪CS−10、荷重500g
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
本発明によれるセラミックス膜は、実質的に透明で木材の風合いを生かすことができ、常温で施工でき、UVカット能力にも優れているため、木材の劣化保護に非常に有用である。
Claims (2)
- 平均粒径0.005〜0.1μmのZnO及び/又はTiO2の超微粒子を含み且つ窒素を原子百分率で0.005〜5%含むSiO2膜であって、ポリシラザンを主成分とするコーティング溶液を塗布した後に該ポリシラザンをセラミックス化することにより得られたものを木材表面又は塗装済木材表面に有することを特徴とする耐紫外線性木材製品。
- 主として一般式(I):
で表わされる単位からなる主骨格を有する数平均分子量が100〜5万のポリシラザンを主成分とするコーティング溶液に平均粒径0.005〜0.1μmのZnO及び/又はTiO2の超微粒子を添加したコーティング用組成物を木材表面又は塗装済木材表面に塗布し、前記組成物をセラミックス化することを特徴とする耐紫外線性木材製品の製造方法。
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