JP4179693B2 - 中空ソリッドゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた飛行性能およびソフトで良好な打球感を有する中空ソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールの大きさ(直径)に関して、USGA(米国ゴルフ協会)規格ではゴルフボールの直径は1.680インチ(42.67mm)以上と定められている。一般的に、ゴルフボールの直径が大きくなると、飛行中の空気抵抗力が大きくなって飛距離が低下するので、現在市販されているゴルフボールのほとんどは、この規格値の下限にできる限り近づくように製造されている。このようなゴルフボールの直径を規格値の下限に合わせたボールを規格値ボールという。
【0003】
しかしながら、ゴルフボールの直径が大きくなると飛行中の空気抵抗力が大きくなって飛距離に対して不利ではあるものの、目標が大きいためにゴルフボールの芯を捕らえやすく、精神的な面も含めて打ち易いという利点がある。また、ゴルフボールを打撃した場合に、慣性モーメントが大きくなることにより、直進性、スピン持続性に優れているという利点があることも知られている。このような利点を得るため直径を大きくしたゴルフボール(以下、大径ゴルフボールという)が、例えば特開平4−371170号公報、特開平6−114123号公報、特開平6−312032号公報、特開平8−80360号公報、特開平10−211301号公報等に開示されている。
【0004】
特開平10−211301号公報には、直径を大きくすることに加えて、カバーの硬度および厚さを適正化したゴルフボールが記載されており、特開平4−371170号公報、特開平6−114123号公報、特開平6−312032号公報および特開平8−80360号公報には、直径を大きくすることに加えてディンプル占有率を適正化したゴルフボールが記載されている。これらのゴルフボールはカバー硬度および厚さやディンプル占有率との組合せで飛距離向上を図ったものであるが、直径を大きくすることにより空気抵抗が増大するために生じる飛距離の低下を考慮すると、その効果は不十分であり、更に改善の余地がある。即ち、既に飛距離を含めて優れた性能を有している規格値ゴルフボールの直径を単に大きくして大径ゴルフボールにすることは、空気抵抗力による飛距離の低下が目立つことになり、規格値ゴルフボールの単なる改良では満足できる性能を有する大径ゴルフボールを得るのは困難と言えるだろう。
【0005】
一方、本発明者等はこれまでに、コアの内部に中空部を有する中空ソリッドゴルフボールを開発してきた(特開平10-127815号公報等)。中空部のない、所謂ソリッドゴルフボールでは、打撃時の打球感が硬く、プロゴルファー等は敬遠しがちである。この打球感を向上させるために中実のコアを軟質化することが有効であるが、反発性の低下を招き飛距離が低下するという問題があった。この問題を解決するために、本発明者等はコアの中心に中空部を有する中空ソリッドゴルフボールを提案したのである。中空ソリッドゴルフボールは内部に中空部を有するために、
(1)打撃時に衝撃が小さくて打球感が良好であり、かつ
(2)慣性モーメントが大きくなって、打出直後のスピン量が少なく、飛行後期までスピン保持率が大きく、飛距離が向上し、
打球感および飛距離の両方に優れるものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように大径ゴルフボールを得ようとする従来の試みの多くは失敗に終わったのであるが、本発明ではコアを中空にするという中空ゴルフボールの概念を導入し、かつ慣性モーメントや圧縮変形量を調節することにより、従来のゴルフボールの有する問題点を解決し、慣性モーメントを更に増大し、優れた飛行性能およびソフトで良好な打球感を有する大径の中空ソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意検討を行った結果、コアの中心に中空部を設け、慣性モーメントおよび圧縮変形量を特定範囲内に規定することによって、優れた飛行性能およびソフトで良好な打球感を有する大径の中空ソリッドゴルフボールが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、中空部(1)を中心に有するコア(2)と該コア上に形成されたカバー(3)から成り、かつ直径42.92〜45.47mm、慣性モーメント83〜105g・cm2および初期荷重10kgを負荷した状態から終荷重130kgを負荷したときまでの圧縮変形量2.6〜4.0mmを有することを特徴とする中空ソリッドゴルフボールに関する。
【0009】
本発明の大径の中空ソリッドゴルフボールは、直径42.92〜45.47mmを有することを必要とする。中空ゴルフボールは、中空部を有することにより打撃時にコアやカバーにかかる負担(応力集中)が大きくなる傾向がある。この負担を軽減するためにゴルフボールの直径は大きく設定するのがよく、その下限は好ましくは43.18mm以上であり、より好ましくは43.50mm以上、更に好ましくは43.60以上である。直径が45.47mmより大きいと、空気抵抗力が増大して飛距離が低下し、また、市場でも受け入れられにくくなり、よってより好ましくは44.70mm以下、更に好ましくは44.20mm以下である。
【0010】
本発明の大径の中空ソリッドゴルフボールは、慣性モーメント83〜105g・cm2を有することを必要とする。前述のように、ゴルフボールが大径の場合は、飛行中の空気抵抗力が大きくなって飛距離が低下する。そこで、本発明の大径の中空ソリッドゴルフボールでは、中空部を有することにより慣性モーメントを大きくして飛距離の向上を達成することができる。従って、その下限は更に85g・cm2以上が好ましい。尚、慣性モーメントを非常に大きくするには、カバー等のボールの外側部分に多量の充填材を用いる必要があり、耐久性や生産性の低下につながりやすく、従ってその上限は、好ましくは100g・cm2以下、より好ましくは88g・cm2以下である。
【0011】
本発明の大径の中空ソリッドゴルフボールは、初期荷重10kgを負荷した状態から終荷重130kgを負荷したときまでの圧縮変形量2.6〜4.0mmを有することが必要である。また、中空ソリッドゴルフボールは中空部を有するために打球感は良好であるが、圧縮変形量が小さくなり過ぎると打球感が低下する。従って、その下限は好ましくは2.7mm以上である。尚、上記圧縮変形量が大きくなり過ぎると、反発性が低下するため、その上限は好ましくは3.8mm以下、より好ましくは3.5mm以下、更に好ましくは3.3mm以下である。
【0012】
更に、本発明を好適に実施するためには、本発明の大径の中空ソリッドゴルフボールのカバーはショアD硬度50〜64を有し、厚さ1.0〜2.1mmを有することが望ましい。上記カバー硬度が、小さくなり過ぎるとスピン量が大きくなり飛距離が低下するため、その下限としては好ましくは55、より好ましくは57以上である。また、カバー厚さが1.0mmより小さいと反発性や耐久性が低下し、2.1mmより大きいと打球感が硬くて悪くなる。
【0013】
以下、図1を用いて本発明のゴルフボールについて更に詳しく説明する。図1は、本発明のゴルフボールの1つの態様を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のゴルフボールは中心に中空部(1)を有するコア(2)と、該コアを被覆するカバー(3)とから成る。この中空部(1)の直径が大きくなるほど慣性モーメントの大きなゴルフボールを得ることができるが、コア中で反発弾性を有するゴム組成物の加硫成形物層の割合が減少するため、中空部(1)の直径は5〜20mm、好ましくは5〜15mmである。20mmより大きいと、ゴム層が薄くなり過ぎることおよびゴム層に比重調整のために充填材を多量に使用する必要があり、反発性が低下する。また、5mmより小さくなると、中空部を有することによる効果が見られなくなる。
【0014】
本発明のゴルフボールのコア(2)は、ポリブタジエン、共架橋剤、有機過酸化物、有機硫黄化合物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物の加硫成形物から成ることを必要とする。ポリブタジエンは、従来からソリッドゴルフボールのコアに用いられているものであればよいが、特にシス-1,4-結合少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するいわゆるハイシスポリブタジエンゴムが好ましく、所望により上記ポリブタジエンゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。
【0015】
共架橋剤としては、アクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸の、亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩等が挙げられるが、高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好適である。配合量はポリブタジエン100重量部に対して、10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部である。50重量部より多いと硬くなり過ぎて打球感が悪くなり、10重量部未満では、適当な硬さにするために有機過酸化物の量を増加しなければならず反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0016】
架橋剤または硬化剤として作用する有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。配合量はポリブタジエン100重量部に対して0.3〜2.0重量部、好ましくは0.4〜1.5重量部である。0.3重量部未満では軟らかくなり過ぎて反発が悪くなり飛距離が低下する。2.0重量部を越えると適切な硬さにするためにα,β-不飽和カルボン酸の金属塩の量を減少しなければならず反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0017】
中空ソリッドゴルフボールは、慣性モーメントが大きいために飛距離の向上が達成されるが、中空部を有するために反発性が低くなる傾向がある。そこで、コア中に有機硫黄化合物を配合することにより、反発性を高めることができ、慣性モーメントの増大との相乗効果により非常に大きな飛距離の向上が達成される。本発明の大径の中空ソリッドゴルフボールに用いられる有機硫黄化合物としては、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、4‐クロロチオフェノール、4‐ブロモチオフェノール、4‐フルオロチオフェノール、4‐t‐ブチル‐o‐チオフェノール、4‐t‐ブチルチオフェノール、2,3‐ジクロロチオフェノール、2,4‐ジクロロチオフェノール、2,5‐ジクロロチオフェノール、2,6‐ジクロロチオフェノール、3,4‐ジクロロチオフェノール、3,5‐ジクロロチオフェノール、2,4,5‐トリクロロチオフェノール、チオサリチル酸、メチルチオサリチル酸、o‐トルエンチオール、m‐トルエンチオール、p‐トルエンチオール、3‐アミノチオフェノール、4‐アミノチオフェノール、3‐メトキシチオフェノール、4‐メトキシチオフェノール、4‐メルカプトフェニルスルフィド、2‐ベンズアミドチオフェノール等のチオフェノール類;チオ酢酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸類;ジフェニルジスルフィド、ビス(2‐アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4‐アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4‐メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4‐t‐ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2‐ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、ジキシリルジスルフィド、ジ(o‐ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、ジモルホリノジスルフィド、ビス(4‐クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5‐ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5‐ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5‐トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2‐シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(2‐ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4‐ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4‐ジニトロフェニル)ジスルフィド、2,2‐ジチオジ安息香酸、5,5‐ジチオビス(2‐ニトロ安息香酸)、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジ‐t‐ドデシルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジフルリルジスルフィド、2,2'‐ジベンゾチアゾリルジスルフィド、ビス(2‐ナフチル)ジスルフィド、ビス(4‐メルカプトフェニル)スルフィド、4‐(2‐ベンゾチアゾリルジチオ)モルホリン、2,2‐ジピリジニルジスルフィド、2,2‐ジチオビス(5‐ニトロピリジン)、2,2‐ジチオジアニリン、4,4‐ジチオジアニリン、2,4‐ジニトロフェニルスルフェニルクロリド、ジチオジグリコール酸、4,4'‐ジチオモルホリン、L‐シスチン等のジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N'‐ジメチル‐N,N'‐ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム類;2‐メルカプトベンゾチアゾール、2‐メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、2‐メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2‐メルカプトベンゾチアゾールジシクロヘキシルアミン塩、2‐(N,N‐ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2‐(4'‐モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2,5‐ジメルカプト‐1,3,4‐チアジアゾール、ビスムチオールI、ビスムチオールII、2‐アミノ‐5‐メルカプト‐1,3,4‐チアジアゾール、トリチオシアヌル酸等のチアゾール類;スルフェンアミド類;チオ尿素類;ジチオカルバメート類等;が挙げられるが、反発性向上の効果が高く、かつ安価であるという観点から、ジスルフィド類、特にジフェニルジスルフィドが好ましい。配合量は、ポリブタジエンゴム100重量部に対して、0.2〜3.0重量部、好ましくは0.3〜1.5重量部、より好ましくは0.4〜1.2重量部である。0.2重量部未満では配合量が少な過ぎて、反発性を向上するという有機硫黄化合物の効果が発揮できず、3.0重量部を越えると加硫速度が小さくなり過ぎて加硫時間が長くなる。
【0018】
充填材としては、ソリッドゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、例えば無機充填材、具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、高比重金属充填材、例えばタングステン粉末、モリブデン粉末等およびそれらの混合物と併用してもよい。配合量は、それぞれポリブタジエン100重量部に対して3〜30重量部、好ましくは3〜20重量部である。3重量部未満では重量調整が難しくなったり加硫が不完全になったりしやすく、25重量部を越えるとゴムの重量分率が小さくなり反発が低くなり過ぎる。
【0019】
更に本発明のゴルフボールのコアには、老化防止剤、その他ソリッドゴルフボールのコアの製造に通常使用し得る成分を適宜配合してもよい。配合量は、ポリブタジエン100重量部に対して、老化防止剤は0.1〜1.0重量部であることが好ましい。
【0020】
本発明のゴルフボールに用いられるコア(2)の製造方法を、図2〜図3を用いて説明する。図2は、本発明のゴルフボールに用いられるコア用の半加硫半球殻状成形物用金型の1つの態様の概略断面図である。図3は、本発明のゴルフボールに用いられるコア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。まず、上記コア用ゴム組成物を混合し、混練し、中子部分の外径が中空部(1)の直径に等しい図2に示すような金型(4、5)内で、120〜160℃で10秒間〜10分間加熱プレスすることによって、コア用の半加硫半球殻状成形物(6)を作製する。上記のように作製したコア用の半加硫半球殻状成形物(6)2個を、図3に示すような金型(7)内で、140〜170℃で10〜50分間加熱プレスすることによって加硫し、球状のア(2)を作製する。次いで、上記コア(2)上にはカバー(3)を被覆する。
【0021】
本発明のカバー(3)は熱可塑性樹脂、特に通常ゴルフボールのカバーに用いられるアイオノマー樹脂を基材樹脂として含有する。上記アイオノマー樹脂としては、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである。上記のα,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステル金属塩としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中や、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、錫、ジルコニウム、カドミウムイオン等が挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等からよく用いられ好ましい。
【0022】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリンAD8511、サーリンAD8512、サーリンAD8542(デュポン社製)、IOTEK 7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマーは、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0023】
更に、本発明のカバー(3)の好ましい材料の例としては、上記のようなアイオノマー樹脂のみであってもよいが、アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の1種以上とを組合せて用いてもよい。上記熱可塑性エラストマーの具体例として、例えば東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)ポリアミド系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、武田バーディシュ(株)から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0024】
上記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水添ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水添ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐t‐ブチルスチレン、1,1‐ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えばダイセル化学工業(株)から商品名「エポフレンド」市販されているもの(例えば、「エポフレンドA1010」)が挙げられる。
【0025】
上記の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の配合量は、カバー用の基材樹脂100重量部に対して、5〜40重量部、好ましくは10〜30である。5重量部より少ないとそれらを配合することによる打球感の向上等の効果が不十分となり、40重量部より多いとカバーが軟らかくなり過ぎて反発性が低下したり、またアイオノマーとの相溶性が悪くなって耐久性が低下しやすくなる。
【0026】
本発明に用いられるカバーには、上記樹脂以外に必要に応じて、コアに用いたものと同様の充填材や、種々の添加剤、例えば二酸化チタン等の顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加してもよい。
【0027】
上記カバー(3)を被覆する方法についても、特に限定されるものではなく、通常のカバーを被覆する方法で行うことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。そして、カバー成形時に、必要に応じて、ボール表面にディンプルを形成し、また、カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0028】
本発明では、慣性モーメントを増大することにより、優れた飛行性能およびソフトで良好な打球感を有する大径の中空ソリッドゴルフボールを提供する。
【0029】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
(i)コア用半加硫半球殻状成形物の作製
以下の表1(実施例)および表2(比較例)に示した配合のコア用ゴム組成物を混合し、混練し、中子部分の外径が表3(実施例)および表4(比較例)に示した中空部の直径に等しい図2に示すような金型(4、5)内で、140℃で5分間加熱プレスすることによって、コア用の半加硫半球殻状成形物(6)を作製した。
【0031】
(ii)中空コアの作製
上記(i)で作製した2つのコア用の半加硫半球殻状成形物(6)を、図3に示すような金型(7)内で、以下の表1(実施例)および表2(比較例)に示した加硫条件で加熱プレスすることによって、表3(実施例)および表4(比較例)に示した直径を有する中空コア(2)を作製した。
【0032】
(iii)カバー用組成物の調製
以下の表1(実施例)および表2(比較例)に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は押出機のダイの位置で150〜260℃に加熱された。
【0033】
【表1】
Figure 0004179693
【0034】
【表2】
Figure 0004179693
【0035】
(注1)JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
(注2)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注3)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注4)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注5)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注6)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸-アクリル酸イソブチル三元共重合体系アイオノマー樹脂
(注7)デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注8)デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注9)デュポン社製のマグネシウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注10)東レ(株)製のポリアミド系熱可塑性エラストマー
(注11)ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=67、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約1.5〜1.7重量%
【0036】
(実施例1〜5および比較例1〜4)
上記(iii)で調製したカバー用組成物を、上記(ii)で得られたコア(2)上に直接射出成形することにより、表3(実施例)および表4(比較例)に示した厚さを有するカバー層(3)を形成し、表面にペイントを塗装して、同表に示した直径を有する中空ソリッドゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールの圧縮変形量、慣性モーメント、飛行性能(打出角、初期スピン量、キャリーおよび直進性)および打球感を測定または評価し、その結果を表3および表4に示した。試験方法は後述の通り行った。
【0037】
(比較例5および6)
(a)中実コアの作製
表2(比較例)に示した配合のコア用ゴム組成物を混合し、混練し、半球状キャビティーを有する上下金型内で同表に示した加硫条件で加熱プレスすることによって、同表に示した直径を有する中実のコアを作製した。
(b)上記のように、中空コアの代わりに中実コアを用いた以外は、実施例1〜5および比較例1〜4と同様の方法で表4に示した直径を有する中実のソリッドゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールの圧縮変形量、慣性モーメント、飛行性能(打出角、初期スピン量、キャリーおよび直進性)および打球感を測定または評価し、その結果を表4に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0038】
(試験方法)
▲1▼カバー硬度
コアの周りにカバーを被覆形成したゴルフボールの外表面の硬度を測定して、カバー硬度とした。ASTM-D2240-68に規定するスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定した。
【0039】
▲2▼慣性モーメント
INERTIA DYNAMICS社製のINERTIA DYNAMICS モデルMOI-005-002を用いて測定した。
【0040】
▲3▼飛行性能
ツルーテンパー社製スイングロボットにドライバー(W#1)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃し、センサーにより打出角(打ち出し直後のゴルフボールの発射角度)、飛距離としてキャリー(落下点までの距離)を測定し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって打ち出し直後の初期スピン量を求めた。
【0041】
▲4▼直進性
ツルーテンパー社製スイングロボットにドライバー(W#1)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で、サイドスピンがスライス回転で500rpmかかるようにクラブフェースを開いて打撃し、落下点の目標方向からの左右ズレ距離を測定し、直進性を決定した。数値が小さいほど、直進性が優れることを表す。
【0042】
▲5▼打球感
トッププロゴルファー10人によりドライバーで実打して評価する。評価基準は下記の通りである。尚、表中に示した「〇〜△」とは、10人中に〇と評価したゴルファーと、△と評価したゴルファーがいたことを表す。
評価基準
○ … ソフトで良好
△ … 普通
× … 硬くて悪い
【0043】
(試験結果)
【表3】
Figure 0004179693
【0044】
【表4】
Figure 0004179693
【0045】
上記表3および表4の結果から明らかなように、コアの中心に中空部を設け、ボール直径、慣性モーメントおよび圧縮変形量を特定範囲内に規定した本発明の実施例1〜5のゴルフボールは、比較例1〜6のゴルフボールに比べて、飛距離、直進性および打球感に優れることがわかった。実施例5のゴルフボールは、コア中に有機硫黄化合物を使用していないため反発性が低下しており、実施例の中では飛距離が若干小さい。
【0046】
これに対して、比較例1のゴルフボールは、カバー厚さが大きいため、打球感が硬くて悪い。比較例2のゴルフボールは、カバー硬度が高いため、打球感が硬くて悪い。比較例3のゴルフボールは、ボールの圧縮変形量が小さいため、打球感が硬くて悪い。比較例4のゴルフボールは、ボール直径が小さいため、中空部の効果により慣性モーメントはあまり低下していないものの、直進性が非常に悪い。比較例5のゴルフボールは、中空部を有していないため、打球感が硬くて悪い。比較例6のゴルフボールは、中空部を有していないため打球感が硬くて悪く、ボール直径が小さいため直進性が非常に悪く、慣性モーメントが小さいため打撃時の初期スピン量が大きくなり飛距離が非常に小さい。
【0047】
【発明の効果】
コアの中心に中空部を設け、慣性モーメントおよび圧縮変形量を特定範囲内に規定することによって、優れた飛行性能およびソフトで良好な打球感を有する大径の中空ソリッドゴルフボールが得られる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴルフボールの1つの態様の概略断面図である。
【図2】 本発明のゴルフボールのコア用の半球殻状成形物用金型の1つの態様の概略断面図である。
【図3】 本発明のゴルフボールのコア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。
【符号の説明】
1、8 … 中空部
2 … コア
3 … カバー
4 … 半球状金型
5 … 中子金型
6 … 半加硫半球殻状成形物
7 … コア成形用金型

Claims (4)

  1. 中空部(1)を中心に有するコア(2)と該コア上に形成されたカバー(3)から成り、かつ直径43.18〜45.47mm、慣性モーメント83〜105g・cmおよび初期荷重10kgを負荷した状態から終荷重130kgを負荷したときまでの圧縮変形量2.6〜4.0mmを有することを特徴とする中空ソリッドゴルフボール。
  2. 慣性モーメント85〜88g・cmを有する請求項1記載の中空ソリッドゴルフボール。
  3. 前記カバー(3)が厚さ1.0〜2.1mmおよびショアD硬度50〜64を有する請求項1記載の中空ソリッドゴルフボール。
  4. 前記コア(2)が、ポリブタジエン、共架橋剤、、有機過酸化物、有機硫黄化合物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物の加硫成形物から成り、該有機硫黄化合物の配合量が該ポリブタジエン100重量部に対して0.2〜3.0重量部である請求項1記載の中空ソリッドゴルフボール。
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