JP4179645B2 - 光ヘッド装置及びその駆動法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CD(コンパクトディスク)、CD−ROM、ビデオディスク等の光ディスク及び光磁気ディスク等の光学記録媒体に光学的情報を書き込んだり、光学的情報を読み取るための光ヘッド装置及び光ヘッド装置の駆動法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ディスク及び光磁気ディスク等の光記録媒体に光学的情報を書き込んだり、光学的情報を読み取る光ヘッド装置において、CD/CD−ROMとDVDのように異なる厚さのディスクに対して信号の読み書きを1つの光ヘッド装置で実現するために、各々のフォーマットに適合する波長を持った半導体レーザ光源を1つの光ヘッド装置内に内蔵させディスクの違いにより光源を切り替える方法や、光ヘッド装置の一部に径が可変である絞りを設けてディスクの違いにより光の開口径を変化させる方法が用いられている。
【0003】
開口径を変化させる方法は、機械的方法と電気的方法に大別される。機械的手法は、集光レンズの前後に光線を部分的に遮るような物体を機械的に出し入れすることにより光線の絞りを変化させるものであり、駆動部を設けることから、機械的信頼性、生産性、コスト等が問題である。
【0004】
一方、電気的方法には、液晶の複屈折性を利用して、電圧によって部分的に液晶の配向状態を変化させて透過光の偏光状態を変え、偏光子によりその部分の光を透過させないようにする方法や、光の径を絞りたい部分に液晶や光学結晶等を使用した偏光性回折格子を設け、ディスクの違いにより液晶の配向状態又は入射光の偏光状態を変化させて部分的に回折させ遮光効果を持たせて、光の有効径を調整する方法等がある。
【0005】
しかし、電気的方法は、いずれも部品数が増加したり、入射光の偏光状態が規定されるために偏光ビームスプリッタとの共存が困難である等の欠点がある。
【0006】
さらに、異なる厚さのディスクを1つの光ヘッド装置で読み書きするうえで、開口径を調整するだけでは不充分な場合もある。すなわち、異なる厚さのディスク上に1つの集光レンズによって、異なる焦点合わせをする必要がある。この場合、一方のディスク上に焦点合わせをするときに収差が最小になるように集光レンズを作成しても、他方のディスク上に焦点合わせをすると集光レンズの収差が大きくなる問題がある。
【0007】
また、焦点距離の異なる2つの集光レンズを切り替えることも行われているが、機械的信頼性、生産性、コスト面で課題が残る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の欠点を解消し、小型化が容易で、生産性良く製造できる液晶シャッタを組み込んだ光ヘッド装置及びその駆動法の提供を目的とする。また、偏光ホログラムや偏光ビームスプリッタ等を用いた、いわゆる偏光系でも使用できる液晶シャッタを組み込んだ光ヘッド装置及びその駆動法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光源とビームスプリッタと位相差板と液晶シャッタと光検出器とを備え、液晶シャッタがビームスプリッタと光記録媒体との間に配置されるとともに、位相差板がビームスプリッタと液晶シャッタとの間に配置される光ヘッド装置において、液晶シャッタは、2枚の基板と、ツイストしている液晶がこれらの基板間に充填されてなる液晶層とを有し、位相差板を通過した右回り円偏光に対する液晶の実効屈折率と、光記録媒体で反射した左回り円偏光に対する液晶の実効屈折率とが、実用上許容される範囲内でほぼ等しくなるように、ツイストピッチPは5μm以下にされていて、少なくとも一方の基板の内面には収差補正用の液晶レンズのための凹部及び/又は凸部が設けられてなり、両基板の屈折率は液晶の常光屈折率と異常光屈折率の平均値と等しくされてなり、基板面の中心部と中心部を囲む周辺部に対応する液晶層の中心部と周辺部にそれぞれ独立に電圧を印加しうるように、両基板に中心部用電極と周辺部用電極が形成されてなり、前記周辺部用電極に印加する電圧を、ゼロより大きくかつ電圧増加によって液晶配向がほぼ基板に垂直な方向に揃う臨界電圧Vnより小さくなるように制御することによって、フォーカルコニック状態を用いて光を部分的に散乱させ、前記中心部用電極に印加する電圧をゼロとするかまたは臨界電圧V n 以上印加することによって、光の有効径を可変とするとともに、収差補正をすることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
【0010】
また、液晶層の上記中心部と上記周辺部をともに電圧をゼロとするか又は臨界電圧V n 以上印加することによって光の高透過状態にするか、又は、上記中心部を光の高透過状態にしかつ上記周辺部用電極に印加する電圧を、ゼロより大きくかつ電圧増加によって液晶配向がほぼ基板に垂直な方向に揃う臨界電圧V n より小さくなるように制御することによってフォーカルコニック状態として光の散乱状態とするように、中心部用電極に印加する電圧及び周辺部用電極に印加する電圧を制御することを特徴とする上記光ヘッド装置の駆動法を提供する。
【0011】
また、液晶シャッタのセルギャップをd、液晶のツイストピッチをPとするとき、P/d<0.4である上記光ヘッド装置を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の基本的な光ヘッド装置の構成を示す模式図である。
図1において、半導体レーザ等の光源1から出た光は、ビームスプリッタ2、位相差板3、液晶シャッタ4を順次通過して、集光レンズ5で集光されて光記録媒体に到達する。ここで、液晶シャッタ4に電圧を印加するか否か、又は印加する電圧を変えることにより、液晶シャッタ4の絞りを変え、また集光レンズ5の位置を調整することにより、第1の光記録媒体6又は第2の光記録媒体7に焦点を合わせる。ビームスプリッタ2には、プリズム状のもの、液晶ホログラム等の偏光ビームスプリッタが使用できる。
【0013】
この光記録媒体から反射して戻ってきた光は、再度集光レンズ5、液晶シャッタ4、位相差板3、ビームスプリッタ2を順次通過し、ビームスプリッタ2で分離された光が光検出器8に到達する。
【0014】
図2は、電圧を印加しない状態の液晶シャッタを示す断面図であり、図3は周辺部用電極に弱電圧Voを印加し、中心部用電極に臨界電圧Vn以上の電圧を印加した状態の液晶シャッタを示す断面図である。臨界電圧Vnとは、印加電圧の増加によって液晶がほぼ基板に垂直な方向を向いたときの電圧である。
【0015】
図2、図3において、11、12は基板、13は下面基板のベタの電極、14は上面基板の周辺部用電極、15は上面基板の中心部用電極である。基板11、12には、プラスチック、ガラス等の透明基板が使用できる。電極13、14、15には、通常のITO膜等の透明電極が使用できる。16は周辺のシール材、17は基板間に充填された液晶であり、図示してないが基板11又は12の液晶に対向する面には、収差補正用の液晶レンズのための凹部又は凸部が設けられている。
【0016】
18は中心部用電極のための電圧発生器(電圧がゼロ)、19は周辺部用電極のための電圧発生器(電圧がゼロ)を示す。18’は中心部用電極のための電圧発生器(Vn以上の電圧発生)、19’は周辺部用電極のための電圧発生器(Vo の電圧発生)を示す。また各々液晶の配向状態を模式的に示してある。
【0017】
基板11の電極パターンは、光軸を中心とした円形である中心部用電極15とその外側の輪帯状パターンである周辺部用電極14で構成され、各部分に異なる電圧を印加できる。周辺部用電極の外側周辺形状は円形に限らず多角形状であってもよい。これらの電極は、図2及び図3の例のように、一方の基板12はベタの電極、他方の基板11はパターニングした電極としてもよく、両方の基板の電極ともパターニングしてもよい。さらに、上下基板の電極を組み合わせて、その上下で対向しているパターンが中心部用とその周辺の輪帯状の周辺部用電極となるようにしてもよい。
【0018】
また、図示していないが、この電極上に液晶を配向させる配向処理が施されている。配向処理は両側の基板とも水平配向処理をする、片側の基板のみを水平配向処理する、片側の基板を水平配向処理し他方の基板を垂直配向処理する、両側の基板とも垂直配向処理をする等の配向処理が可能である。
【0019】
垂直配向処理法は有機シラン、レシチン、界面活性剤等で電極基板表面を処理する方法で行えばよい。また水平配向処理は電極、基板又はその有機、無機のオーバーコート材を布等で一方向にこするラビング法や、シリカ等の斜方蒸着法等を使用すればよく、両側とも水平配向処理の場合、ラビング方向は両側で互いに平行しても直交してもよく、また任意の角度をとってもよい。
【0020】
こうして形成された2枚の基板を電極側が対向するように配置し、周辺のシール材16で接着して、内部に液晶17を充填する。この液晶としては、通常のネマチック液晶が用いられ、この液晶にカイラル液晶を加えて、液晶をツイストさせる。
【0021】
次いで光ヘッド装置の動作を説明する。
図1において光源1から出た光が直線に偏光されP偏光とすると、S偏光で回折しP偏光では回折しない特徴を有するビームスプリッタ2では光線は回折せずに通過する。位相差板3を通過後、右回り円偏光になり、液晶シャッタ4を通過後、集光レンズ5により第1の光記録媒体6において集光される。第1の光記録媒体6で反射した光は左回り円偏光となって、集光レンズ5、液晶シャッタ4を順次通過し、位相差板3でS偏光になり、ビームスプリッタ2で回折され光検出器8に到達する。図1は第1の光記録媒体6に焦点合わせが行われている場合を示しており、第2の光記録媒体7は模式的にのみ示してある。
【0022】
以下の説明は、参考として基板11、12の屈折率が液晶17の常光屈折率に等しい場合も、本発明の常光屈折率と異常光屈折率の平均値に略等しい場合にも適応できる。その場合、第1の光記録媒体6に焦点合わせをするときは、基板11、12と液晶17の屈折率を一致させているため、集光レンズ5を動かさず行い、第2の光記録媒体7に焦点合わせをするときには、基板11、12と液晶17の屈折率を一致させておらず、集光レンズ5を光軸方向に微動させて行う。
【0023】
まず、光を透過する状態を実現するために、電圧を印加しない場合を説明する。第1の光記録媒体から情報を読み書きするときで、開口径を絞る必要がない場合は、図2のように電極13、14間、及び13、15間には電圧を印加しない。その場合、液晶はらせん軸が基板に垂直な(図の上下方向)ツイスト配向になり、全体が透明化し高い透過率を有するので、光の開口径は絞られない。ここでは、光が集光レンズ5により第1の光記録媒体6に集光するように集光レンズ5を配置しているとする。
【0024】
次に、第2の光記録媒体7に情報を読み書きする場合、図3のように周辺部用のみの電極13、14間に弱電圧Voを印加する。Voは液晶17が液晶のらせん軸が乱れたフォーカルコニック状態になるような電圧であり、液晶配向方向が電場方向を向く臨界電圧Vnよりも小さい。フォーカルコニック状態ではらせん軸が乱れるために発生するドメインにより、光は強く散乱させる。そのため、弱電圧Voを印加した周辺部のみ光は散乱され透過率が低下し、結果的に開口径が絞られた状態になる。開口径が絞られ、集光レンズと光記録媒体との距離を適当に調整することで、第2の光記録媒体7に集光できる。
【0025】
上述の説明では、光が透過する状態として電圧を印加せず液晶がらせん構造を採る場合を述べたが、臨界電圧Vn以上に電圧を印加し液晶配向を電場方向に揃えて光が透過する状態を実現してもよい。この場合、第1の光記録媒体を読み書きする場合には電極13、14間、及び電極13、15間に臨界電圧Vn以上の電圧を印加して開口径を絞らず、集光レンズ5を微動させなくても第1の光記録媒体6に集光されている。次に第2の光記録媒体を読み書きする場合には図3のように電極13、15間には臨界電圧Vn以上の電圧を印加し、電極13、14には弱電圧Voを印加すればよい。これによって、開口径が絞られて、集光レンズと光記録媒体との距離を適当に調整することで、第2の光記録媒体7に集光できる。
【0026】
本発明では、液晶のツイストピッチPと液晶シャッタのセルギャップdとの比P/dの値は、液晶が低い電圧の印加でフォーカルコニックによる光の散乱を生じる範囲であれば使用できる。このフォーカルコニック状態による光透過率は、ほぼP/dに比例する。したがって、できるだけP/dが小さい方が望ましい。特に、0.02<P/d<0.4にすることが光の散乱を増加させ、透過率を30%程度に抑えるために好ましい。
【0027】
また、このP/dに対するこの条件下で電極13、14に印加する弱電圧Vo としては2〜9Vp-p程度であり、用いる液晶で実験的に最適な値を選択すればよい。
【0028】
また本発明では、上述したように、図2及び図3における液晶シャッタの基板11、12のいずれか一方の中心部用電極と同一な領域に凹部又は凸部を形成しレンズ効果を与えることで収差を補正する。この凹部又は凸部は基板自体に形成する。また、基板表面に有機又は無機の透明膜を所定の形状に形成してもよい。この加工は、基板自体に形成する場合には、機械的に削ったり、プレス成形したり、エッチングして形成すればよい。
【0029】
基板表面に有機又は無機の透明膜を形成する場合には、透明膜を全面に形成後、基板自体の場合と同様に削ったり、エッチングして形成してもよく、直接所定のパターンに堆積させたり、印刷して形成してもよい。また、場合によっては同様の手法によりフレネル型にしてもよい。
【0030】
図2、図3において基板12の中心部に、基板11に施された中心部用電極15と同様の領域に、凸状のレンズを成形したとする。内部に充填する液晶として常光屈折率no、異常光屈折率neである正の誘電異方性のネマチック液晶を用い、基板12の屈折率を(ne+no)/2に等しくしたものを用いる。
【0031】
この場合、液晶が右ねじれでツイストピッチP(360°ツイストするピッチ)でツイストしているとすると、右回り円偏光及び左回り円偏光の光に対する液晶の実効的な屈折率は近似的に式1及び式2のように表される。
【0032】
【数1】
【0033】
第1の光記録媒体を読み書きする場合には、開口径制御もレンズ効果による収差補正も必要ないので、電極13、14間、電極13、15間には電圧を印加しない。そのとき、往路の場合では右回り円偏光が入射するから(ne+no)/2に比して(ne−no)2P/(8λ)が充分小さいとすると、液晶の実効的な屈折率は近似的に(ne+no)/2にほぼ等しくなる。
【0034】
このため、光源1から出た光は、基板の屈折率(液晶の常光屈折率と異常光屈折率との平均値)とツイストした液晶の屈折率はほぼ一致することになり、屈折率が等しいので光は屈折せずにほぼ直進しレンズ効果は生じない。復路の場合では、光記録媒体で反射された結果、左回り円偏光が入射するが、往路と同様に(ne+no)/2に比して(ne−no)2P/(8λ)が充分小さいとすると、液晶の実効的な屈折率は近似的に(ne+no)/2にほぼ等しくなり、レンズ効果は生じない。
【0035】
第2の光記録媒体に読み書きする場合は、上述のように周辺部用電極13、14間には開口径制御するため弱電圧Voを印加し、中心部用電極13、15間には臨界電圧Vn以上の電圧を印加する。すると中心部では液晶は電界方向に整列し、基板にほぼ垂直に(紙面の上下方向)に配向する。このため、液晶の実効屈折率は常光屈折率no にほぼ等しくなる。
【0036】
ここで基板の屈折率(液晶の常光屈折率と異常光屈折率の平均値)と液晶の屈折率(常光屈折率)とは一致しないことになり、中心の凸部は凸レンズとして機能することになり光は屈折する。この状態で集光レンズの収差が小さくなるようにレンズの形状が形成されていれば、収差は補正され第2の光記録媒体に読み書きができる。
【0037】
また、本発明では、右回り円偏光に対する液晶の実効屈折率と、左回り円偏光に対する液晶の実効屈折率とが、実用上許容される範囲内でほぼ等しいことが重要になる。そのためには、ツイストピッチPはあまり大きくないことが好ましい。具体的には、ツイストピッチPは5μm以下にされる。特に3μm以下にすることが好ましい。
【0038】
また、液晶のツイスト角が大きい場合、電圧の非印加時に液晶ツイスト軸の乱れたフォーカルコニック状態による光散乱のため、実質的ターンオフ時間が増大する問題が生じやすい。このため、液晶の粘性を低くすること、基板界面付近の液晶配向ベクトルと基板面とのなす角度、すなわちプレチルト角を大きくすること、が好ましい。
【0039】
なお、上記例では、基板12が凸部を有する基板を用いたが、同じ構成で基板12が凹部を有する基板を用いれば、上述のように中心部用電極13、15間には臨界電圧Vn以上の電圧を印加すると、凹レンズとして機能することになる。このとき、開口径制御をするために周辺部用電極13、14間には弱電圧Voを印加する。
【0040】
また、参考として基板12の屈折率を液晶の常光屈折率noと一致させ、基板12が凹部を有する基板を用いた場合には電圧の非印加時に、凸レンズとして機能し、凸部を有する基板を用いた場合には凹レンズとして機能する。この場合、周辺部用電極14、13間及び中心部用電極15、13間に臨界電圧Vn以上の電圧を印加して、レンズ効果を消失させ第1の光記録媒体に読み書きする。さらに周辺部用電極14、13間には弱電圧Vo を印加し光の散乱を起こさせ、中心部用電極15、13間に電圧を印加せずレンズ効果を持たせ、開口径を制御して第2の光記録媒体に読み書きする。これらいずれの場合にも集光レンズ5を光は通過してそれぞれの光記録媒体の表面上に焦点を結ぶ。
【0041】
したがって、参考として液晶シャッタ基板の屈折率が液晶の常光屈折率に等しい場合と、本発明の常光屈折率と異常光屈折率の平均値に略等しい場合には、基板の中心部に凹部を設けても凸部を設けても、液晶シャッタの駆動方法は次のようになる。
【0042】
液晶シャッタ基板の屈折率が参考として液晶の常光屈折率に等しいか、又は本発明の常光屈折率と異常光屈折率の平均値に略等しいかに応じて、基板の中心部と周辺部をともに光の高透過状態にする場合は、前者の基板では中心部用と周辺部用との両電極には臨界電圧以上の電圧を印加し、後者では電圧を印加せず、基板の中心部を光の高透過状態にしかつ周辺部を光の散乱状態にする場合は、前者では中心部用電極には電圧を印加せず、後者では臨界電圧以上の電圧を印加し、周辺部用電極にはいずれの基板でも弱電圧を印加する。
【0043】
以上、シャッタ基板の中心部のみに凹部又は凸部を設けて、第2の記録媒体を読み書きする場合に収差の補正を行うことについて記載した。他方、第1の記録媒体を読み書きする場合、集光レンズの収差補正を行うために、基板12の周辺部が中心部同様、レンズ形状を有するようにしてもよい。
すなわち、周辺部と中心部に凹部及び/又は凸部が設けられている場合の駆動法は次のようになる。
【0044】
液晶シャッタ基板の屈折率が液晶の参考として常光屈折率に等しいか、又は本発明の常光屈折率と異常光屈折率の平均値に略等しいかに応じて、基板の中心部と周辺部をともに光の高透過状態にする場合は、前者の基板では中心部用と周辺部用との両電極には電圧を印加せず、後者では臨界電圧以上の電圧を印加し、基板の中心部を光の高透過状態にしかつ周辺部を光の散乱状態にする場合は、前者では中心部用電極には臨界電圧以上の電圧を印加し、後者では電圧を印加せず、周辺部用電極にはいずれの基板でも弱電圧を印加する。
【0045】
なお、本発明で使用する光源1は、通常の光ヘッド装置に使用される光源が使用できる。具体的には、半導体レーザによる光源が最も一般的であるが、他のレーザや波長変換素子を組み合わせた光源も使用できる。
【0046】
ビームスプリッタ2は、特定の偏光方向の光のみ回折させるものであり、往路の光源からの光はそのまま通過し、復路の光は回折又は反射して、光検出器8に光を到達させうるものであればよい。具体的には、回折格子、液晶を用いた回折格子、複合プリズム等が使用できる。特に、特定の偏光方向の光のみ回折させる液晶を用いた回折格子が好適である。
【0047】
位相差板3は、直線偏光で入射した光を円偏光に変換するλ/4板等の公知の位相差板が使用できる。
集光レンズ5は、第1の光記録媒体又は第2の光記録媒体のいずれかに光を集光させるためのレンズである。液晶シャッタ4が電圧の印加状態と非印加状態とでいずれもある程度レンズとして収差補正機能を有する場合でも、その使用状態のいずれかの状態で第1の光記録媒体又は第2の光記録媒体のいずれかに光を集光させうるようにする。
【0048】
【実施例】
図2及び図3に示すように、基板11、12として厚さ0.5mmで、大きさが10×10mmで、屈折率が1.58のガラス基板を用い、基板12の中心にはプレスにより非球面凸レンズを形成した。この非球面レンズは、直径2.5mm、中心の高さは5μmとした。
【0049】
基板12の表面にはITO膜のベタの電極13を、基板11の表面には中心部に直径2.5mm、周辺部に直径4.0mm、中心部と周辺部の間隔30μmのITO膜のパターニングによる電極14、15をエッチングにより作製した後、基板11を水平配向処理、基板12を垂直配向処理した。水平配向膜はポリイミドの膜を塗布して焼成した後ラビングを行う通常の手法で処理した。垂直配向膜は有機シラン系の溶剤を塗布した後、焼成して作製した。
【0050】
この2枚の基板11、12を対向させ、周辺をシールして、レンズ中心部で間隙が3μm、周辺部で間隙が8μmの空セルを形成した。基板11、12の外面には夫々反射防止膜を形成した。この空セルに、液晶17として常光屈折率が1.52、常光屈折率と異常光屈折率の差Δnが0.12、ツイストピッチPが3μmの正の誘電異方性のネマチック液晶組成物を注入し、注入口を封止して液晶シャッタを製造した。
【0051】
図1に示すように、この液晶シャッタ4を配置して、波長650nmの右回り及び左回りの円偏光の透過率を測定したところ、右回りの円偏光(光ヘッド装置での往路)では95%、左回りの円偏光(光ヘッド装置での復路)でも95%の効率であり、往復で90%の効率(95%×95%)が得られた。
【0052】
まず、第1の光記録媒体6に焦点を合わせる場合には、図2のように、液晶シャッタ4の上下の基板11、12の電極13、14間、及び13、15間に電圧を印加しないようにした。この場合、光源1から出たP偏光(紙面に平行な偏光方向)の光は、偏光系のビームスプリッタ2を通過し、位相差板3で右回りの円偏光となった光は、液晶シャッタ4でほとんど屈折されずに通過し、第1の光記録媒体6に焦点が合った。
【0053】
この第1の光記録媒体6で反射した光は左回りの円偏光になり、再度液晶シャッタ4をほぼそのまま通過し、位相差板3で直線偏光に戻され、S偏光(紙面に垂直な偏光方向)の光になって、偏光系のビームスプリッタ2に入射する。S偏光の光はビームスプリッタ2で回折されて、光検出器8に到達した。
【0054】
一方、第2の光記録媒体7に焦点を合わせる場合には、図3のように液晶シャッタ4の上下の基板11、12の電極13、14間に100Hz、4Vp-pの電圧を印加し、電極13、15間には100Hz、14Vp-pの電圧を印加した。
【0055】
波長650nmの右回り及び左回りの円偏光の透過率を測定したところ、電極15を透過する光に関しては、右回りの円偏光(光ヘッド装置での往路)で95%、左回りの円偏光(光ヘッド装置での復路)でも95%であったが、電極14を透過する光に関しては、電極13、14間の液晶がフォーカルコニック状態となるためドメインにより光散乱され、実質的透過率は右回り円偏光で30%、左回り円偏光でも30%であった。
【0056】
光源1から出たP偏光(紙面に平行な偏光方向)の光は、偏光系のビームスプリッタ2を通過し、位相差板3で右回りの円偏光になった光は、液晶シャッタ4に入射するが、電極13、14間の液晶のフォーカルコニック状態によって透過率が低いため、液晶シャッタを通過する光の大部分は電極13、15間を透過した光となった。
【0057】
また、電極13、15間には臨界電圧以上の電圧が印加されているため液晶の実効屈折率は常光屈折率になり、基板との間で屈折率差が生じるため、基板12に形成された非球面レンズで屈折し、集光レンズの収差を補正するように作用した。そして、集光レンズ5の収差を補正して、液晶シャッタ4を通過した光は、集光レンズ5により第2の光記録媒体7に焦点が合うようにした。
【0058】
この第2の光記録媒体7で反射した光は左回りの円偏光になり、再度液晶シャッタ4で屈折され、位相差板3で直線偏光に戻され、S偏光(紙面に垂直な偏光方向)の光になって、偏光系のビームスプリッタ2に入射する。S偏光の光はビームスプリッタ2で回折されて、光検出器8に到達した。
【0059】
【発明の効果】
本発明の光ヘッド装置では、電圧印加により開口径を制御可能であり、また液晶がツイストした液晶シャッタを用いているので、外部からの電圧印加によって収差補正ができ、利用効率の高い光ヘッド装置が得られる。本発明は、その効果を損しない範囲内で、種々の応用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的な光ヘッド装置の構成を示す模式図。
【図2】電圧を印加しない状態の液晶シャッタを示す断面図。
【図3】電圧を印加した状態の液晶シャッタを示す断面図。
【符号の説明】
1:光源
2:ビームスプリッタ
3:位相差板
4:液晶シャッタ
5:集光レンズ
6:第1の光記録媒体
7:第2の光記録媒体
8:光検出器
11、12:基板
13、14、15:電極
16:シール材
17:液晶
18:電圧発生器(電圧がゼロ)
18’:電圧発生器(Vn 以上の電圧発生)
19:電圧発生器(電圧がゼロ)
19’:電圧発生器(Vo の電圧発生)
Claims (5)
- 光源とビームスプリッタと位相差板と液晶シャッタと光検出器とを備え、液晶シャッタがビームスプリッタと光記録媒体との間に配置されるとともに、位相差板がビームスプリッタと液晶シャッタとの間に配置される光ヘッド装置において、
液晶シャッタは、2枚の基板と、ツイストしている液晶がこれらの基板間に充填されてなる液晶層とを有し、位相差板を通過した右回り円偏光に対する液晶の実効屈折率と、光記録媒体で反射した左回り円偏光に対する液晶の実効屈折率とが、実用上許容される範囲内でほぼ等しくなるように、ツイストピッチPは5μm以下にされていて、
少なくとも一方の基板の内面には収差補正用の液晶レンズのための凹部及び/又は凸部が設けられてなり、
両基板の屈折率は液晶の常光屈折率と異常光屈折率の平均値と等しくされてなり、
基板面の中心部と中心部を囲む周辺部に対応する液晶層の中心部と周辺部にそれぞれ独立に電圧を印加しうるように、両基板に中心部用電極と周辺部用電極が形成されてなり、
前記周辺部用電極に印加する電圧を、ゼロより大きくかつ電圧増加によって液晶配向がほぼ基板に垂直な方向に揃う臨界電圧Vnより小さくなるように制御することによって、フォーカルコニック状態を用いて光を部分的に散乱させ、前記中心部用電極に印加する電圧をゼロとするかまたは臨界電圧V n 以上印加することによって、光の有効径を可変とするとともに、収差補正をすることを特徴とする光ヘッド装置。 - 液晶シャッタのセルギャップをd、液晶のツイストピッチをPとするとき、P/d<0.4である請求項1記載の光ヘッド装置。
- 液晶層の上記中心部と上記周辺部をともに電圧をゼロとするかまたは臨界電圧Vn以上印加することによって光の高透過状態にするか、又は、上記中心部を光の高透過状態にしかつ上記周辺部用電極に印加する電圧を、ゼロより大きくかつ電圧増加によって液晶配向がほぼ基板に垂直な方向に揃う臨界電圧Vnより小さくなるように制御することによってフォーカルコニック状態として光の散乱状態とするように、中心部用電極に印加する電圧及び周辺部用電極に印加する電圧を制御する請求項1記載の光ヘッド装置の駆動法。
- 中心部用電極は円形であり、周辺部用電極は輪帯状パターンである請求項1又は2に記載の光ヘッド装置。
- 基板の内面中心には凸部が設けられ、凸部が非球面凸レンズである請求項1又は2に記載の光ヘッド装置。
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