JP4176509B2 - 配線・配管材保護具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の造営材(例えば躯体内の下地材)に取付けられて、建築物に仕上げ材を釘類により固定する際に、建築物内に配設した配線や配管材をその釘類から保護する配線・配管材保護具に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建築物の配線・配管工事は、壁、床、天井等に仕上げ材を釘類により固定する前に行われる。ここで、例えば、壁内に配線を配設するときに、壁の胴縁に配線や配管を貫通させて配設する場合がある。この場合、下地材となる胴縁に仕上げ材としての板材等を釘類により固定する際に、その釘類が胴縁に配設した配線や配管を傷つける可能性がある。よって、従来、かかる不具合を防止するための器具として、例えば、特許文献1または特許文献2に記載の技術が提案されている。
【特許文献1】
特開2002−176717号公報
【特許文献2】
実開昭58−49515号公報
【0003】
特許文献1に記載の技術は、壁内の胴縁等に取付けられて、壁内に配設される配線(ケーブル)を釘類から保護するケーブル防護具に関するものであり、そのケーブル防護具は、胴縁等に固定するための左右一対の突刺板部(固定部)が突設された防護具本体と、防護具本体にヒンジ状に一体連結された蓋体とから構成されている。また、特許文献2に記載の技術は、ケーブル防護材に関するものであり、そのケーブル防護材は、半筒状の被服体の側面の先端縁部に先鋭状の左右一対の埋設爪を設けてなるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図10は特許文献1に記載の従来技術に係るケーブル防護具を下地材に固定する場合における一対の突刺板部の下地材への打ち込み動作を示す説明図である。図11は特許文献1に記載の従来技術に係るケーブル防護具を下地材に固定する場合における一対の突刺板部の下地材への別の打ち込み動作を示す説明図である。
【0005】
特許文献1に記載の技術では、左右一対の突刺板部102が、それらの間の前板部101の左右両端から直交する方向へと、互いに平行に延びているため、胴縁等の下地材1にケーブル防護具100を固定する際に、以下の不具合が生じる可能性がある。即ち、胴縁等の下地材1にケーブル防護具100を固定するには、図10(a)に示すように、ケーブル防護具100の左右一対の突刺板部102を下地材1の所定位置に当接して配置する。次に、図10(b)に示すように、一方(図10では右側)の突刺板部102を、金槌等の工具を使用して下地材1に打ち込んで突刺す。その後、他方の突刺板部102を金槌等の工具を使用して下地材1に打ち込んで突刺す。なお、図10中の上下方向に延びる二点鎖線は、他方の突刺板部102先端の下地材に対する本来の位置(打ち込み開始位置乃至打ち込み完了位置)を示すためのものである。このとき、他方の突刺板部102の基端側には、図10(b)の下向き矢印で示すように、工具からの打撃力による先端方向への力が加わる。一方、このとき、一対の突刺板部102間の前板部101が下地材1に対して他方の突刺板部102側へ向かって下地材1から離間する方向に傾斜するため、他方の突刺板部102は、図10中に二点鎖線で示す方向に対して、先端側が外側へと逃げる方向に傾斜している。即ち、他方の突刺板部102の先端は図10中に二点鎖線で示す本来の位置に位置するものの、その基端が、図10中に二点鎖線で示す本来の位置より内側に位置する。よって、他方の突刺板部102に対する先端側への力を受けて、他方の突刺板部102は、図10(c)の左向き矢印で示すように、先端が外側へと逃げてしまう可能性がある。この場合、他方の突刺板部102が下地材1に途中までしか突き刺さらず、ケーブル防護具100の下地材1への固定力が弱くなったり、最悪の場合、他方の突刺板部102が基端で外側へと折れ曲がって、ケーブル防護具100を下地材1に固定できなくなったりする。
【0006】
一方、上記不具合を防止しようと、図11(a)に示すように、ケーブル防護具100の左右一対の突刺板部102を下地材1の所定位置に当接して配置し、一方の突刺板部102を下地材1に突刺して固定した後、図11(b)に示すように、他方の突刺板部102を図11中に二点鎖線で示す方向に向くよう強制的に曲げて下地材1に当接配置すると、前板部101全体が下地材1に接近する方向へと湾曲して撓む。なお、図11中の上下方向に延びる二点鎖線は、他方の突刺板部102先端の下地材1に対する本来の位置(打ち込み開始位置乃至打ち込み完了位置)を示すためのものである。この状態で、他方の突刺板部102を金槌等の工具を使用して下地材1に打ち込んで突刺すと、他方の突刺板部102には、図11(b)の下向き矢印で示すように、工具からの打撃力による先端側への力が加わる。すると、前記一方の突刺板部102には、湾曲する前板部101の弾性反発作用により、図11(b)の上向き矢印で示す方向の力が加わる。よって、他方の突刺板部102を下地材1に打ち込んで突刺すと、既に下地材1に突刺した一方の突刺板部102が、図11(c)に示すように、下地材1から浮き上がり、最悪の場合、下地材1から抜けてしまう可能性がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術でも、左右一対の埋設爪が、それらの間の部分の左右両端直交する方向へと、互いに平行に延びているため、胴縁等の下地材にケーブル防護材を固定する際に、上記と同様の不具合が生じる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、突刺部を造営材に確実かつ円滑に打ち込んで差し込むことができ、造営材に対する固定力を十分に確保することができると共に、突刺部の造営材からの抜けを効果的に防止することができる配線・配管材保護具の提供を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る配線・配管材保護具は、構造物内に配設される配線及び/または配管材を保護する配線・配管材保護具であって、前記配線及び/または配管材を保護する保護部と、前記保護部から突出して前記構造物内の造営材に突刺自在とされた相対向する一対の突刺部とを備え、前記突刺部は、保護部の長さ方向両端において形成され、前記一対の突刺部のうちの少なくとも一方の突刺部は、先端側が他方の突刺部に近接するよう基端側から傾斜して延びるよう設け、前記保護部の幅方向一端において、前記一対の突刺部の近傍に、それぞれ、前記保護部及び/または前記突刺部のねじれを防止するためのねじれ防止部を一体的に設けると共に、前記ねじれ防止部が、前記保護部からその面方向と略直交する方向に突出して延びるようにし、更に、前記ねじれ防止部の先端部を下地材の上端面に載置すると、前記突刺部の先端が当該下地材の側面に略当接状態となるように、前記ねじれ防止部を前記突刺部より長く形成している。
【0010】
請求項2に係る配線・配管材保護具は、請求項1の構成において、前記一対の突刺部が、それぞれ、先端側が互いに近接するよう基端側から傾斜して延びている。
【0011】
請求項3に係る配線・配管材保護具は、請求項1または2の構成において、前記傾斜して延びる突刺部が、前記保護部の端縁から内側に向かって傾斜すると共に、前記保護部の長さを考慮して、前記下地材への前記一方の突刺部の打ち込み時に前記他方の突刺部が前記下地材に対して少なくとも直交する方向或いは内側へと向かう方向に配置されるよう、前記突刺部の長さや傾斜角度を設定している。
【0012】
請求項4に係る配線・配管材保護具は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記保護部が、横長長方形状の平板をなすと共に、下地材に形成する切欠き溝の長さより大きな長さとされ、その長さ方向両端部が前記下地材における切欠き溝の長さ方向両端側部分に重なるよう、前記下地材に対して取付けられて前記切欠き溝の全体を覆うことにより、前記下地材の切欠き溝と共に配線・配管材を収容するための収容空間を形成するようになっており、前記一対の突刺部は前記横長長方形状の保護部の長さ方向両端の中央付近にそれぞれ一体形成される。
【0013】
請求項5に係る配線・配管材保護具は、請求項4の構成において、前記保護部の長さ方向両端における幅方向一端部には切欠き部が形成され、その切欠き部以外の部分が位置合わせ部とされると共に、前記位置合わせ部の幅は下地材の幅と同一とされ、当該位置合わせ部の一端または両端を前記下地材の幅方向一端または両端に合致させることにより、当該位置合わせ部が、前記下地材の切欠き溝を外側から完全に覆うと共に、前記切欠き部の全体が、前記下地材及び前記切欠き溝から突出するようになっている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0015】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に取付けた状態を示す斜視図である。図2は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具の平面図である。図3は図2のA−A線断面図である。図4は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具の側面図である。図5は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に取付け、仕上材をその上から取付けた状態を示す横断面図である。
【0016】
実施の形態1に係る配線・配管材保護具は、構造物としての建築物内(例えば建築物の躯体内)に配設される配線及び/または配管材を保護するものである。なお、実施の形態1の配線・配管材保護具は、建築物内であれば、躯体内に限らず任意の箇所に適用することができる。また、躯体とは、一般に、壁、天井または床等の構造体をいう。ここで、実施の形態1の配線・配管材保護具は、かかる躯体として建築物の壁を想定している。また、配線や配管材を壁内に配設するには、例えば、壁の内部に配置される胴縁等の下地材に配線・配管材配設用の切欠き溝を形成し、その切欠き溝内に、配線や配管材を下地材と略直交する方向に延びるよう配設する。なお、実施の形態1の配線・配管材保護具は、建築物の造営材であれば、下地材に限らず任意の造営材に固定して本来の用途に使用することができる。図1は、壁内に左右方向(水平方向)に延びるよう固定される胴縁等の下地材1を示している。そして、実施の形態1の配線・配管材保護具は、下地材1の切欠き溝1aを外側から覆うよう、下地材1に取付けて固定される。詳細には、配線・配管材保護具10は、図1〜図4に示すように、保護部11と、一対の突刺部12とを備える。
【0017】
保護部11は、仕上材5を貫通して下地材1に進入する釘類(釘、ねじ釘等)から、配線Wや配管材Pを保護するためのものである。保護部11は、実施の形態1では、左右に延びる横長長方形の平板状をなしている。また、保護部11の長さ(図2中の左右方向寸法)は、配線・配管材保護具10を固定する下地材1(例えば胴縁)に形成する切欠き溝1aの長さ(図5の左右方向寸法)より大きくされている。そして、配線・配管材保護具10は、その長さ方向両端部(左右両端部)が下地材1における切欠き溝1aの左右両端側部分に重なるよう、下地材1に対して取付けられて切欠き溝1aの全体を覆うようになっている。これにより、保護部11は、前記下地材1の切欠き溝1aと共に配線Wや配管材Pを収容するための収容空間Sを形成する。ここで、保護部11は、前記収容空間S内に複数の配線Wや配管材Pを並列状態で挿通して収容できるような長さを有する。なお、保護部11の長さは、任意の長さとすることができるが、実施の形態1では、その幅の約4倍程度とされている。
【0018】
保護部11の幅(図2中の上下方向寸法)は、その保護機能を充分に発揮し、或いは、その保護範囲を増大するよう、配線・配管材保護具10を固定する下地材1(例えば胴縁)の幅(図2中の上下方向寸法)と略同一或いはそれ以上とすることが好ましい。保護部11の幅が下地材1の幅未満であると、保護部11が下地材1の切欠き溝1aの全体を覆うことができず、切欠き溝1aの一部から露出する配線Wや配管材Pが、仕上材5を貫通して下地材1に進入する釘類により損傷する可能性がある。一方、保護部11の幅を下地材1の幅より大きくすると、保護部11が下地材1の切欠き溝1aを超える部分まで外側から覆うことになり、釘類が下地材1より上側または下側にそれて仕上材5を貫通する場合に、その釘類による配線Wや配管材Pの損傷を防止することができる。
【0019】
ここで、保護部11の長さ方向(図2中の左右方向)両端の一端部(図2中の下端部)には切欠き部11aが形成され、その切欠き部11a以外の部分(切欠き部11aより上側の部分)が位置合わせ部11bとされている。位置合わせ部11bの幅は、配線・配管材保護具10の位置合わせ機能の点から、下地材1の幅と同一とすることが好ましい。ここで、壁の下地材1として一般的な胴縁の幅は40mmであり、位置合わせ部11bの幅もこれと同一の40mmとすることが好ましい。この場合、配線・配管材保護具10は、位置合わせ部11bの一端または両端を下地材1の幅方向一端または両端に合致させることにより、下地材1に対して正確に合致して位置することができる。こうすると、位置合わせ部11bが、下地材1の切欠き溝1aを外側から完全に覆うようになっている。このとき、前記切欠き部11aの全体が、位置合わせ部11aの下側で下地材1及び切欠き溝1aの下端から下方に突出するようになっている。これにより、釘類が下地材1より上側または下側にそれて仕上材5を貫通する場合に、その釘類による配線Wや配管材Pの損傷を切欠き部11aが防止するようになっている。
【0020】
前記一対の突刺部12は、保護部11の長さ方向両端において、前記位置合わせ部11bの中央付近にそれぞれ一体形成されている。各突刺部12は、保護部11からその面方向と交差する方向に突出して延びる平板状をなす。また、各突刺部12は、前記下地材1に突刺し自在となるよう、先端部が三角形状となって先鋭化されている。詳細には、図3および図5に示すように、一対の突刺部12は、それぞれ、先端側が互いに近接するよう基端側から傾斜して延びる。より詳細には、前記一対の突刺部12は、保護部11の長さ方向両端縁から内側に向かって傾斜して延びる。ここで、突刺部12の傾斜角度は、保護部11の内側に傾斜する限りにおいて任意の角度とすることができる。しかし、突刺部12を下地材1に確実かつ円滑に打ち込んで差し込み、かつ、突刺部12の下地材1からの抜けを効果的に防止する観点から、突刺部12の傾斜角度は、保護部11の面方向に対して約60度〜80度の範囲内(即ち、保護部11両端において保護部11の面方向と直交する方向から内側に約10度〜30度の範囲内)とすることが好ましく、更に、約70度とすることが一層好ましい。
【0021】
図4に示すように、各突刺部12の幅方向両端(図4中上下両端)における中央部には、それぞれ、小切欠き12aが形成されている。突刺部12の小切欠き12aは、例えば、突刺部12を下地材1に突刺したときに、突刺部12の抜け止め手段として機能する。各突刺部12の基端の幅方向両側には、それぞれ、小切欠き12bが形成されている。突刺部12の小切欠き12bは、例えば、突刺部12を保護部11に対して内側に傾斜する方向に折り曲げる際の折り曲げ作業を容易化する。
【0022】
一対の突刺部12の近傍には、それぞれ、保護部11及び/または突刺部12のねじれを防止するためのねじれ防止部13が一体的に設けられている。具体的には、保護部11の幅方向一端(図2中上端)の両端部に、それぞれ、ねじれ防止部13が一体形成されている。各ねじれ防止部13は、保護部11からその面方向と略直交する方向に突出して延びる平板状をなす。また、各ねじれ防止部13は、前記下地材1に突刺し自在となるよう、先端部が三角形状となって先鋭化されている。更に、各ねじれ防止部13は、先端の三角形状の先鋭部分に略対応する長さだけ、突刺部12より長く形成されている。一方、前記一対の突刺部12の近傍における保護部11には、それぞれ、釘類7の軸部を挿通するための挿通孔14が形成されている。具体的には、挿通孔14は、保護部11の長さ方向両端部において、それぞれ、上下一対となるよう形成されている。上下一対の挿通孔14は、前記突刺部12を間に挟むような位置に形成されている。
【0023】
実施の形態1に係る配線・配管材保護具10を製造するには、例えば、前記保護部11、突刺部12及びねじれ防止部13を平面に展開した形状となるよう、金属板材をプレスにより打ち抜く。その後、各突刺部12を保護部11に対して内側に所定角度で傾斜するよう折り曲げ、また、各ねじれ防止部13を保護部11に対して略直交するよう折り曲げる。
【0024】
このように製造した配線・配管材保護具10は、例えば、以下に示す方法で、下地材1の切欠き溝1aの全体を外側から覆うよう下地材1に固定される。まず、保護部11の左右両端部が下地材1における切欠き溝1aの左右両端側部分に重なるよう、保護部11を切欠き溝1aに対向配置する。次に、この状態で、左右一対のねじれ防止部13の先端部(三角形状の先鋭部分)を、下地材1の上端面において切欠き溝1aの左右両端側部分に載置する。このとき、保護部11の位置合わせ部11bの下端(切欠き部11aの上端)が、下地材1の下端に略合致する。また、このとき、突刺部12の先端は、下地材1の側面に略当接状態となる。そして、この状態から、図6に示すように、金槌等の工具を使用して、一方の突刺部12を下地材1に打ち込んで突刺していく。
【0025】
図6は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に固定する場合における一対の突刺部の下地材への打ち込み動作の一例を示す説明図である。 まず、図6(a)に示す状態から、一方(図6中右側)の突刺部12の基端側を工具により打撃し、図6(b)に示すように、その一方の突刺部12を下地材1に打ち込んで突刺していく。このとき、一方の突刺部12は、保護部11に対する傾斜角度と略同一角度で下地材1の内部に進入していく。図6(b)に示すように、一方の突刺部12を下地材1に完全に打ち込んだら、次に、他方(図6中左側)の突刺部12の基端側を工具により打撃し、図6(c)〜(f)に示すように、その他方の突刺部12を下地材1に打ち込んで突刺していく。このとき、他方の突刺部12は、保護部11に対する傾斜角度と略同一角度で下地材1の内部に進入していく。そして、図6(f)に示すように、他方の突刺部12も下地材1に完全に打ち込むと、配線・配管材保護具10の下地材1への固定作業が終了する。
【0026】
次に、上記突刺部12の下地材1への打ち込み動作を、図10及び図11に示す従来例との比較で説明する。図7は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に固定する場合における一対の突刺部の下地材への打ち込み動作の一例を従来例との比較で示す説明図である。
【0027】
実施の形態1の配線・配管材保護具10を下地材1に固定するには、まず、図7(a)に示すように、一対の突刺部12を下地材1の所定位置に当接して配置する。次に、図7(b)に示すように、一方(図7では右側)の突刺部12を、工具を使用して下地材1に打ち込んで突刺す。その後、他方の突刺部12を工具を使用して下地材1に打ち込んで突刺す。なお、図7中の上下方向に延びる二点鎖線は、他方の突刺部12先端の下地材1に対する本来の位置(打ち込み開始位置乃至打ち込み完了位置)を示すためのものである。このとき、他方の突刺部12の基端側には、図7(b)の下向き矢印で示すように、工具からの打撃力による先端方向への力が加わる。一方、このとき、一対の突刺部12間の保護部11が下地材1に対して他方の突刺部12側へ向かって下地材1から離間する方向に傾斜する。しかし、他方の突刺部12は、保護部11に対して所定角度で内側に傾斜しているため、他方の突刺部12は、図7中に二点鎖線で示す方向に対して略平行となり、図10に示す従来例のように、先端側が外側へと逃げる方向に傾斜することはない。よって、他方の突刺部12に対する先端側への力を受けて、他方の突刺部12の先端が外側へと逃げてしまうことはなく、他方の突刺部12を下地材1に確実かつ円滑に打込むことができる。更に、図11に示す従来例のように、他方の突刺部12を図7中に二点鎖線で示す方向に向くよう強制的に曲げて下地材1に当接配置する必要もない。なお、このとき、他方の突刺部12の先端は、図7中に二点鎖線で示す本来の位置より外側に位置するものの、下地材1への打ち込み動作に伴い、徐々に保護部11の内側へと傾斜して進入し、最終的には、その基端は、図7中に二点鎖線で示す本来の位置に位置する。ここで、保護部11の長さを考慮して、下地材1への打ち込み時に前記他方の突刺部12が下地材1に対して少なくとも直交する方向或いは内側へと向かう方向に配置されるよう、突刺部12の長さや傾斜角度を適宜設定することが好ましい。
【0028】
上記のようにして、一対の突刺部12を下地材1に打ち込む作業が完了したら、前記挿通孔14に釘類7の軸部を挿通し、挿通孔14を介して下地材1に打ち込んでもよい。こうすると、下地材1に対する配線・配管材保護具10の固定強度を一層増大することができる。
【0029】
上記のように、実施の形態1に係る配線・配管材保護具10は、突刺部12を下地材1に確実かつ円滑に打ち込んで差し込むことができ、下地材1に対する固定力を十分に確保することができると共に、突刺部12の下地材1からの抜けを効果的に防止することができる。また、配線・配管材保護具10は、保護部11の長さを複数の配線Wや配管材Pを配設できるような長さとしたため、配線Wや配管材Pを集中して配設する場合に好適である。更に、例えば、突刺部12が折れたりして使用できず、配線・配管材保護具10を下地材1に釘類7により固定する場合に、位置合わせ部11bの上端または下端を下地材1の上端または下端に位置合わせすることにより、保護部11を下地材1に対して正確に位置決めした状態で釘類7により固定することができる。更にまた、一対のねじれ防止部13は、下地材1の上端面に載置することにより、特に、突刺部12を下地材1に打ち込むときに、突刺部12が本来の位置から位置ずれしたり、ねじれた状態で下地材1に打ち込まれたりするのを効果的に防止することができる。また、一対のねじれ防止部13は、保護部11自体のねじれを防止するという効果も期待できる。加えて、一対のねじれ防止部13の先端部(三角形状部分)のみを下地材1の上端面に載置することにより、突刺部12の先端を下地材1に対して本来の打ち込み位置に容易に配置することができる。
【0030】
実施の形態2
図8は本発明の実施の形態2に係る配線・配管材保護具の平面図である。
実施の形態2の配線・配管材保護具20は、実施の形態1の配線・配管材保護具10より幅広としたものである。詳細には、配線・配管材保護具20は、実施の形態1の配線・配管材保護具10の保護部11と同様の保護部21を有する。一方、保護部21は、保護部11と同様、位置合わせ部11bを有すると共に、その下端部の切欠き部11aのみならず、上端部にも、切欠き部11aと同様の切欠き部21aを設けている。
【0031】
実施の形態2の配線・配管材保護具20は、実施の形態と同様にして、ねじれ防止部13を下地材1の上端面に載置し、突刺部12を下地材1に打ち込んで固定することができる。この場合、下側の切欠き部11aのみならず、位置合わせ部11bの下端部も、下地材1及び切欠き溝1aの下端から下方に突出する。これにより、釘類が下地材1より下側にそれて仕上材5を貫通する場合に、その釘類による配線Wや配管材Pの損傷を、切欠き部11aのみならず位置合わせ部11bの下端部が効果的に防止する。或いは、実施の形態2の配線・配管材保護具20は、位置合わせ部11aを下地材1に合致させた状態で、突刺部12または釘類7を使用して、下地材1に固定することもできる。このとき、ねじれ防止部13は、下地材1の上端面から上方に浮き上がった位置に配置される。この場合、下側の切欠き部11aが下地材1及び切欠き溝1aの下端から下方に突出すると共に、上側の切欠き部21aが下地材1及び切欠き溝1aの上端から上方に突出する。これにより、釘類が下地材1より上側または下側にそれて仕上材5を貫通する場合に、その釘類による配線Wや配管材Pの損傷を、切欠き部11aのみならず切欠き部21aが効果的に防止する。
【0032】
実施の形態3
図9は本発明の実施の形態3に係る配線・配管材保護具を下地材に取付けた状態を示す斜視図である。
実施の形態3の配線・配管材保護具30は、保護部31を有する。保護部31は、実施の形態1の配線・配管材保護具10の保護部11の左右両端に、突刺部12またはねじれ防止部13と反対方向へ略直交して延びる左右一対の側壁32を一体形成したものである。また、一方(図9中右側)の側壁32には蓋部33の基端が開閉自在となるよう一体的に接合されている。これにより、実施の形態3では、前記保護部31は筒状に形成され、蓋部33により内部の収容空間Sを開閉自在となっている。
【0033】
一方、実施の形態3の配線・配管材保護具30は、保護部31を下地材1の切欠き溝1a内に完全に収容し、密接して装着するようになっている。よって、保護部31の長さは、下地材1の切欠き溝1aと略同一となっている。そして、保護部31の内部空間自体が、配線Wや配管材Pを収容するための収容空間Sを形成する。ここで、保護部31は、前記収容空間S内に複数の配線Wや配管材Pを並列状態で挿通して収容できるような長さを有する。なお、保護部31の長さは、任意の長さとすることができるが、実施の形態3では、その幅の約3倍程度とされている。一方、保護部31の幅は、下地材1の幅と同一とされている。よって、実施の形態3では、実施の形態1におけるような位置合わせ部11bは保護部31には設けられていない。また、保護部31の下端部が下地材1の下端から下方に突出することもない。しかし、実施の形態1と同様、保護部31に位置合わせ部を設けたり、下端部に切欠き部を設けて、その切欠き部が下地材1の下端から下方に突出したりするように構成することもできる。
【0034】
ところで、本発明の配線・配管材保護具は、躯体として、壁以外の床や天井等の下地材に固定して使用することもできる。即ち、本発明の配線・配管材保護具は、仕上材を下地材に固定する際に釘類から保護する必要がある限り、任意の躯体の内部に固定することができる。また、本発明の配線・配管材保護具を固定する下地材としては、胴縁以外にも、任意の下地材を使用することができる。下地材としては、木質系に限らず、突刺部12を打ち込み可能な限りにおいて、任意の材質の下地材を使用することができる。
【0035】
更に、上記実施の形態では、一対の突刺部12の両方が、保護部11に対して傾斜して延びているが、本発明の配線・配管材保護具は、前記一対の突刺部のうちの少なくとも一方の突刺部が、先端側が他方の突刺部に近接するよう基端側から傾斜して延びるものであればよい。更にまた、上記実施の形態の配線・配管材保護具では、まず、一方の突刺部12を下地材1に打ち込んだ後、他方の突刺部12を下地材1に打ち込んで固定しているが、これら一対の突刺部12を同時またはほぼ同時に下地材1に打ち込むようにしても良い。
【0036】
また、上記実施の形態の配線・配管材保護具は、下地材1の上端面にねじれ防止部13を載置して固定する場合について説明したが、天井の直近に固定する場合においては、ねじれ防止部3を天井板の下側面と最上部の下地材1の上端面との間に差し込んで固定する。更に、本発明の配線・配管材保護具は、金属製以外にも、突刺部12を下地材1等の造営材に打ち込み可能で、かつ、仕上材等の釘類が貫通しない材質とする限りにおいて、硬質樹脂等、他の材料により一体成形してもよい。
【0037】
更に、本発明に係る配線・配管材保護具は、保護部を上記各実施の形態の形状以外の形状とすることもできる。しかし、保護部を平板状に形成した場合、平板状という非常に簡単な構成で、配線Wや配管材Pの保護を確実に行うことができ、製造コストを大幅に低減することができる。更にまた、実施の形態1または2のように、保護部11を矩形平板状に形成すると共に、その長さ方向両端の幅を下地材1の幅より大きな寸法とし、更に、長さ方向両端の一端部を切欠き部11aとすると共に、それ以外の部分を下地材1の幅と同一寸法の位置合わせ部11bとした場合、平板状という非常に簡単な構成で、配線や配管材の保護を確実に行うことができ、製造コストを大幅に低減することができる。また、保護部11の切欠き部11a相当部分により、下地材1の下側においても配線Wや配管材Pの保護機能を発揮することができる。更に、位置合わせ部11bにより、下地材1への位置合わせを容易かつ正確に行うことができる。
【0038】
或いは、本発明に係る配線・配管材保護具は、実施の形態3のように、保護部31を筒状に形成することもできる。この場合、配線Wや配管材Pの配設作業前に配線・配管材保護具30を下地材1に固定することができ、また、配線Wや配管材Pの変更も容易に行うことができる。
【0039】
更に、本発明に係る配線・配管材保護具は、保護部11に前記挿通孔14を必ずしも形成しなくてもよい。しかし、突刺部12の近傍における保護部11に、釘類の軸部を挿通するための挿通孔14を形成した場合、その挿通孔14に釘類を使用して下地材1への固定をより強固に行うことができる。
【0040】
また、本発明に係る配線・配管材保護具は、保護部の長さと任意とする事ができる。しかし、上記各実施の形態のように、保護部11,21,31の長さを、配線W及び/または配管材Pを収容するための収容空間Sを形成すると共に、収容空間S内に複数の配線W及び/または配管材Pを並列状態で挿通して収容できるような長さとした場合、複数の配線Wや配管材Pを集中して1箇所に配設することができる。
【0041】
【発明の効果】
請求項1に係る配線・配管材保護具は、上記のように構成したため、突刺部を下地材等の造営材に確実かつ円滑に打ち込んで差し込むことができ、造営材に対する固定力を十分に確保することができると共に、突刺部の造営材からの抜けを効果的に防止することができる。また、ねじれ防止部により、保護部及び/または突刺部のねじれを効果的に防止することができる。
【0042】
請求項2または請求項3に係る配線・配管材保護具は、上記のように構成したため、更に、突刺部を造営材により一層確実かつ円滑に打ち込んで差し込むことができ、造営材に対する固定力をより一層十分に確保することができると共に、突刺部の造営材からの抜けをより一層効果的に防止することができる。
【0043】
請求項4に係る配線・配管材保護具は、上記のように構成したため、更に、保護部により下地材の切欠き溝の全体を外側から覆って、配線・配管材の収容空間を形成することができる。
【0044】
請求項5に係る配線・配管材保護具は、上記のように構成したため、更に、位置合わせ部による位置合わせと、切欠き部の下地材からの突出部分による保護とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】 図2は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具の平面図である。
【図3】 図3は図2のA−A線断面図である。
【図4】 図4は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具の側面図である。
【図5】 図5は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に取付け、仕上材をその上から取付けた状態を示す横断面図である。
【図6】 図6は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に固定する場合における一対の突刺部の下地材への打ち込み動作の一例を示す説明図である。
【図7】 図7は本発明の実施の形態1に係る配線・配管材保護具を下地材に固定する場合における一対の突刺部の下地材への打ち込み動作の一例を従来例との比較で示す説明図である。
【図8】 図8は本発明の実施の形態2に係る配線・配管材保護具の平面図である。
【図9】 図9は本発明の実施の形態3に係る配線・配管材保護具を下地材に取付けた状態を示す斜視図である。
【図10】 図10は特許文献1に記載の従来技術に係るケーブル防護具を下地材に固定する場合における一対の突刺板部の下地材への打ち込み動作を示す説明図である。
【図11】 図11は特許文献1に記載の従来技術に係るケーブル防護具を下地材に固定する場合における一対の突刺板部の下地材への別の打ち込み動作を示す説明図である。
【符号の説明】
10,20,30:配線・配管材保護具
11,21,31:保護部
11a:切欠き部、11b:位置合わせ部
12:突刺部
13:ねじれ防止部

Claims (5)

  1. 構造物内に配設される配線及び/または配管材を保護する配線・配管材保護具であって、
    前記配線及び/または配管材を保護する保護部と、
    前記保護部から突出して前記構造物内の造営材に突刺自在とされた相対向する一対の突刺部とを備え、
    前記突刺部は、保護部の長さ方向両端において形成され、
    前記一対の突刺部のうちの少なくとも一方の突刺部は、先端側が他方の突刺部に近接するよう基端側から傾斜して延びるよう設け、
    前記保護部の幅方向一端において、前記一対の突刺部の近傍に、それぞれ、前記保護部及び/または前記突刺部のねじれを防止するためのねじれ防止部を一体的に設けると共に、前記ねじれ防止部が、前記保護部からその面方向と略直交する方向に突出して延びるようにし、更に、前記ねじれ防止部の先端部を下地材の上端面に載置すると、前記突刺部の先端が当該下地材の側面に略当接状態となるように、前記ねじれ防止部を前記突刺部より長く形成したことを特徴とする配線・配管材保護具。
  2. 前記一対の突刺部は、それぞれ、先端側が互いに近接するよう基端側から傾斜して延びることを特徴とする請求項1記載の配線・配管材保護具。
  3. 前記傾斜して延びる突刺部は、前記保護部の端縁から内側に向かって傾斜すると共に、前記保護部の長さを考慮して、前記下地材への前記一方の突刺部の打ち込み時に前記他方の突刺部が前記下地材に対して少なくとも直交する方向或いは内側へと向かう方向に配置されるよう、前記突刺部の長さや傾斜角度を設定したことを特徴とする請求項1または2記載の配線・配管材保護具。
  4. 前記保護部は、横長長方形状の平板をなすと共に、下地材に形成する切欠き溝の長さより大きな長さとされ、その長さ方向両端部が前記下地材における切欠き溝の長さ方向両端側部分に重なるよう、前記下地材に対して取付けられて前記切欠き溝の全体を覆うことにより、前記下地材の切欠き溝と共に配線・配管材を収容するための収容空間を形成するようになっており、前記一対の突刺部は前記横長長方形状の保護部の長さ方向両端の中央付近にそれぞれ一体形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の配線・配管材保護具。
  5. 前記保護部の長さ方向両端における幅方向一端部には切欠き部が形成され、その切欠き部以外の部分が位置合わせ部とされると共に、前記位置合わせ部の幅は下地材の幅と同一とされ、当該位置合わせ部の一端または両端を前記下地材の幅方向一端または両端に合致させることにより、当該位置合わせ部が、前記下地材の切欠き溝を外側から完全に覆うと共に、前記切欠き部の全体が、前記下地材及び前記切欠き溝から突出するようになっていることを特徴とする請求項4記載の配線・配管材保護具。
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