JP4175823B2 - 金型用特殊鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コールドホビング加工して使用される金型用の特殊鋼の製造方法に関し、特に、焼きなまし方法を改善して共晶炭化物の発生を防止した金型用特殊鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特殊鋼をコールドホビングプレスにより加工して金型を製造する技術がある。この場合に、コールドホビングプレスによる加工前の鋼材の焼きなまし硬さは、179HB以下と軟らかいことが要求されており、硬さが低ければ低いほどコールドホビングプレス加工時の応力が小さく、加工がしやすい。
【0003】
一方、従来技術においては、上述の如く、鋼材の硬さが低くて軟らかいため、コールドホビングプレス加工により、断面形状が膨らむように比較的大きく変化する。このように、コールドホビングプレス加工後の変形量が大きいため、後加工で、膨らんだ部分を機械加工により削り取って、断面形状を修正する必要があり、切削加工量の増加及び歩留の低下が生じてしまう。
【0004】
また、焼きなまし硬さを179HB以下とするように、焼きなまし硬さのみを重視した場合、コールドホビングプレス時の加工変形量が大きい部分に発生するミクロクラックを防止することができず、金型が短寿命になってしまうという問題点がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、連続焼きなましでの炭化物の大きさ及び焼きなまし硬さを制御し、金型製造のコストを低減でき、金型寿命を延長することができる金型用特殊鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る金型用特殊鋼の製造方法は、C:0.65乃至0.75質量%、Si:0.12乃至0.19質量%、Mn:0.67乃至0.69質量%、Cr:4.5乃至5.5質量%、V:0.05乃至0.15質量%を含有し残部Fe及び不可避的不純物からなる特殊鋼素材を、熱間圧延した後、815乃至865℃の均熱温度に保持し、その後、300℃までの冷却速度を15℃/時以下として冷却することにより焼きなまし処理することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例方法を示す工程図、図2はその焼きなまし工程における熱処理パターンを示す図である。図1に示すように、例えば40トン電気炉にて特殊鋼原料を溶解し、この溶湯を鋳造してインゴットを得る。原料組成は、C:0.65乃至0.75質量%、Cr:4.5乃至5.5質量%、V:0.05乃至0.15質量%を含有するものであり、例えば、C:0.74質量%、Si:0.12質量%、Mn:0.67質量%、Cr:5.03質量%、V:0.08質量%を含有するものである。
【0008】
次いで、このインゴットを分塊圧延し、断面が115mmの方形のビレットを得る。その後、このビレットを圧延し、平板形状にする。次いで、この圧延板を焼きなまし処理する。この焼きなまし処理の熱処理パターンは、図2に示すように、815乃至865℃に加熱して均熱し、その後、15℃/時以下の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却する。300℃以下の温度まで降温した後、焼鈍炉から取り出す。これにより、炭化物が小さく、0.2%耐力が低い材料を製造することができる。その後、検査工程を経て金型加工する。
【0009】
次に、上述のごとく構成された本実施例方法の動作について説明する。コールドホビングプレスの加工性を向上させるのは、材料の硬さのみではなく、0.2%耐力が影響し、この0.2%耐力が小さいほど、容易に変形する。本発明者らは更にコールドホビングプレス時の特殊鋼素材の変形量を少なくするためには、素材の硬さを、160乃至174HBにすることが有効であることを見いだした。この硬さの範囲内で、小さい応力で加工するために、0.2%耐力と引張り強さとの比(0.2%耐力)/(引張り強さ)×100を45%以下とすることが好ましい。
【0010】
また、ミクロクラックを発生させないために、炭化物の大きさを小さくし、炭化物の数が多い組織とすることが必要である。ミクロクラックの発生は炭化物の大きさとホビング加工時の歪みの大きさで決定され、炭化物の周囲のボイド発生からミクロクラックへの推移は、炭化物の大きさが大きいほど、また真歪が大きいほど、容易に推移していく。このため、ミクロクラックの発生を防止するためには、炭化物の大きさを0.35μm以下に小さくし、真歪みを小さくすることが好ましい。
【0011】
図3及び図4は従来の金型用特殊鋼における真歪みによるボイドの発生機構を示す金属組織の顕微鏡写真である。図3(a)及び(b)に示すように、真歪みεが0又は0.5の場合に、ボイドは発生しないが、図3(c)に示すように、真歪みεが0.7になると、炭化物の周囲にボイドが発生する。そして、図3(d)に示すように、真歪みεが0.8になると、ボイドが成長を始め、図4(a)に示すように、真歪みεが0.9になると、成長したボイドが連結し始め、図4(b)に示すように、真歪みεが1.0になると、ミクロクラックが発生している。
【0012】
なお、図3及び図4に示す金属組織の試料は、下記表1の従来鋼1欄に記載の組成を有する従来の金型用特殊鋼についてのものである。そして、焼きなまし温度は860〜880℃、冷却速度は20〜22℃/時である。また、表1に示す従来鋼2においても、従来鋼1と同様の組織及びミクロクラックの発生が認められる。
【0013】
【表1】
【0014】
これに対し、本発明のように、C:0.65乃至0.75質量%、Cr:4.5乃至5.5質量%、V:0.05乃至0.15質量%を含有する特殊鋼素材を、熱間圧延した後、815乃至865℃の均熱温度に保持し、その後、300℃までの冷却速度を15℃/時以下として冷却することにより焼きなまし処理して製造した金型用特殊鋼は、図5(a)、(b)に示すように、真歪みεが0又は0.5の場合にはボイドが発生せず、図5(c)に示すように、真歪みεが0.7の場合にボイドが発生するが、図5(d)、(e)のように、真歪みεが0.9又は1.2と大きくなっても、未だ小さなボイドの状態であり、ミクロクラックは発生していない。このように、本発明においては、ボイドの成長が極めて遅く、真歪みが1.2まで印加されてもミクロクラックは発生せず、小さなボイドが存在している状態である。
【0015】
なお、図5に示す金属組織は、下記表2の発明鋼1欄に記載の組成(本発明の範囲内)を有する試料について得られたものである。なお、焼きなまし温度は820〜840℃、冷却速度は8〜10℃/時である。また、表2に記載の発明鋼2及び発明鋼3においても、発明鋼1と同様にミクロクラックは発生しなかった。
【0016】
【表2】
【0017】
このボイド又はミクロクラックの発生機構を図6に模式的に示す。従来の金型用特殊鋼においては、真歪みεが0.7になると、炭化物の周りにボイドが発生し、真歪みが1.2になると、ボイドが連結してミクロクラックが発生する。
【0018】
これに対し、本発明の場合は、炭化物が小さく、真歪みが0.7になると、この炭化物の周りに、ボイドが発生するものの、このボイドは成長せず、歪みが1.2になっても、ボイドのままであり、ミクロクラックが発生しない。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。下記表3は本発明の実施例及び比較例の焼きなまし工程における焼きなまし温度及び冷却速度と、得られた金型用特殊鋼の特性とを示す。また、図7は横軸に平均炭化物粒径をとし、縦軸にボイド発生からミクロクラック発生までの真歪みをとって、これらの実施例(○)及び比較例(●)における平均炭化物粒径と真歪みとの関係を示すグラフ図である。
【0020】
【表3】
【0021】
本発明の実施例1及び2は、焼きなまし温度及び冷却速度が本発明の請求項1にて規定する範囲内であり、このため、焼きなまし硬さが170HB又は174HBと適切な範囲160乃至174HBに入っており、(0.2%耐力)/(引張り強さ)×100の比率が38.5%及び40.0%と適切な範囲45%以下に入っている。このため、炭化物の平均粒径を0.32μm又は0.34μmと適切な範囲0.35μm以下にすることができ、図7に示すように、ミクロクラックの発生までの真歪みが0.4以上であり、コールドホビングプレス加工において通常印加される真歪み0.3程度ではミクロクラックが発生しなかった。これに対し、比較例1乃至3においては、焼きなまし温度が860℃乃至870℃と高温であり、また冷却速度が19℃/時又は20℃/時と速いため、焼きなまし硬さが硬く、(0.2%耐力)/(引張り強さ)×100の比率が大きく、炭化物の平均粒径も大きい。このため、コールドホビングプレス加工において通常印加される真歪み0.3程度で、ミクロクラックが発生した。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、焼きなまし工程におけるヒートパターンを改良し、均熱温度を低く、冷却速度を著しく遅くした結果、炭化物の粒径を小さくし、かつ均一に分散させたものとすることができ、ボイドの成長を抑制し、ミクロクラックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る金型用特殊鋼の製造方法を示すフローチャート図である。
【図2】焼きなまし工程におけるヒートパターンを示す図である。
【図3】(a)乃至(d)は従来の金型用特殊鋼のボイドと真歪みとの関係を示す金属組織の顕微鏡写真である。
【図4】(a)及び(b)は同じく従来の金型用特殊鋼のボイドと真歪みとの関係を示す金属組織の顕微鏡写真である。
【図5】(a)乃至(e)は本発明の金型用特殊鋼のボイドと真歪みとの関係を示す金属組織の顕微鏡写真である。
【図6】ボイド及びミクロクラックの発生機構を示す模式図である。
【図7】炭化物の平均粒径と、ボイド発生からミクロクラック発生までの真歪みとの関係を示すグラフ図である。
Claims (1)
- C:0.65乃至0.75質量%、Si:0.12乃至0.19質量%、Mn:0.67乃至0.69質量%、Cr:4.5乃至5.5質量%、V:0.05乃至0.15質量%を含有し残部Fe及び不可避的不純物からなる特殊鋼素材を、熱間圧延した後、815乃至865℃の均熱温度に保持し、その後、300℃までの冷却速度を15℃/時以下として冷却することにより焼きなまし処理することを特徴とする金型用特殊鋼の製造方法。
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JP2002086944A JP4175823B2 (ja) | 2002-03-26 | 2002-03-26 | 金型用特殊鋼の製造方法 |
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