JP4175732B2 - 漏洩量測定装置および漏洩量測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラント、工場、鉱山、作業現場など各種現場で流体の漏洩した場合に漏洩量を、その場で計測する漏洩量測定装置および漏洩量測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、プラント内における流体漏洩をその場で検知・判定する技術には、特開平5-281104号公報「プラント異常点検装置」、特開平6-331480号公報「漏洩検出方法および装置」、特開平7-333171号公報「漏洩検出方法および装置」に示されるものがある。
【0003】
特開平5-281104号公報「プラント異常点検装置」は、図20に示すように、ガスセンサ20と赤外線カメラ21もしくはテレビカメラ22を方位設定手段(旋回装置)23に装着し、方位設定手段23を制御手段24で制御してガスセンサ20の出力が基準値を超えたとき赤外線カメラ21もしくはテレビカメラ22で捉えた映像を画像処理手段25で画像処理し、その結果、異常発熱物体や物体の外観的な異常などの存在が確認されたとき警報を発する。これにより、広範囲のプラントを短時間に精度良く点検することができるようにしたものである。
【0004】
本装置は、例えば、図21に示すフローチャートに従って液体漏洩の検知・判定を行う。まず、ステップST1にて、旋回装置23を旋回させてガスセンサ20および赤外線カメラ21を走査させる。ステップST2にてガスセンサ20が基準値を超えると、ステップST3に進み旋回動作を停止させる。そして、ステップST4およびステップST5にて、赤外線カメラ21が動作して出力映像が画像処理手段25によって画像処理される。ステップST6にて、異常発熱物体が認識された場合、ステップST7にて警報が発生する。一方、異常発熱物体が認識されなかった場合は、ステップST8にて赤外線カメラ21を停止させてステップST1に戻る。
【0005】
特開平6-331480号公報「漏洩検出方法および装置」は、図22に示すように、監視対象26を撮像する可視カメラ27および赤外線カメラ28は、カメラ切り替え部29で切り替えられる。可視カメラ27では、監視対象26の可視画像を撮像し、赤外線カメラ28では監視対象26の熱画像を撮像する。演算部30では撮像した可視画像および熱画像を画像メモリ31に記憶すると共に、可視画像および熱画像に対し差分処理や二値化処理などの演算を行い、可視画像および熱画像から流体漏洩に伴う異常を二値画像として検出する。異常判定部32ではこの二値画像同士の面積を比較することにより、異常の種別を判定し判定結果を表示部33に表示出力する。これにより、画像を用いてプラント内機器の監視装置において流体漏洩に伴う異常種別の自動判定が可能となるようにしたものである。
【0006】
本装置は、例えば、図23に示すフローチャートに従って液体漏洩の検知・判定を行う。まず、ステップ10Aでは、可視カメラ27にて監視対象の撮影を行い、この可視画像の差分処理および二値化処理を行って可視画像の二値化可視画像を求める。同様に、ステップ10Bでは、赤外線カメラ28による熱画像の二値化熱画像を求める。そして、ステップ10Cにて、両二値化画の面積が、所定値以上かどうか判定する。所定値以下の場合は、ステップ10Eに進み異常なしと判定される。所定値以上の場合、ステップ10Dにて二値化可視画像と二値化熱画像の面積比較が行われる。二値化可視画像の面積が大きい場合には、ステップ10Gに進み非発熱性の漏洩と判定される。一方、二値化熱画像の面積が大きい場合は、ステップ10Fに進み発熱性の漏洩と判定される。
【0007】
特開平7-333171号公報「漏洩検出方法および装置」は、図24に示すように、可視カメラ27では監視対象26の可視画像を撮像する。撮像された可視画像は画像入力部34を介して演算部30に入力され画像メモリ31に記憶される。差分周期設定部35では、差分処理の差分周期を設定する。演算部30では撮像した画像を用い、差分処理や二値化処理などの演算を行い、可視画像から流体漏洩に伴い異常を二値画像として検出する。異常判定部32では、この二値画像同士の面積を比較することにより異常の種別を判定し、判定結果を表示部33に表示出力する。これにより、画像を用いたプラント内機器の監視装置において流体漏洩を伴う異常種別の自動判定が可能となる。
【0008】
本装置は、例えば、図25に示すフローチャートに従って液体漏洩の検知・判定を行う。まず、ステップ10Aでは、可視カメラ27にて監視対象26の撮影を行い、100ns程度の短い差分周期で差分処理を行い、二値化処理を行って可視画像の二値化画像を求める。そして、その二値化画像の面積を求める。ステップ10Bでは、1s程度の長い差分周期で差分処理を行い、ステップ10Aと同様に二値化画像の面積を求める。ステップ10Cにて、これら二値化画像の面積が所定値以上かどうかを判定する。面積が所定値未満の場合は、ステップ10Eに進み異常無しと判定する。面積が所定値以上の場合はステップ10Dに進み、ステップ10Aとステップ10Bで求めた二値化画像の面積を比較する。ステップ10Aで求めた面積が大きい場合、ステップ10Gにて水漏れなど状態変化の時定数が短い異常と判定する。一方、ステップ10Bで求めた面積が大きい場合、ステップ10Fにて蒸気漏れなど状態変化の時定数が長い異常と判定する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述の特開平5-281104号公報「プラント異常点検装置」、特開平6-331480号公報「漏洩検出方法および装置」、特開平7-333171号公報「漏洩検出方法および装置」では、漏洩流体の漏洩量を把握することができない。
【0010】
すなわち、赤外線カメラや可視カメラによって流体の漏洩を検知し差分処理などの画像処理を行うので、微量な流体の漏洩や漏洩媒体を迅速に現場で判断でき、また、人にとって漏洩状態の視覚的把握に有効な画像として漏洩を記録することはできるが、漏洩流体の漏洩量を把握することができない。
【0011】
このように、従来の技術では、点検者が、漏洩現場で迅速に漏洩流体の漏洩量を把握することはできない。加えて、漏洩停止後であっても高精度に漏洩量を測定することができない。
【0012】
本発明の目的は、漏洩部の形状および面積を現場で迅速かつ的確に定量把握でき、漏洩停止後には高精度に漏洩量を計測できる漏洩量測定装置および漏洩量測定方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係わる漏洩量測定装置は、漏洩流体の映像を観測する映像観測装置と、漏洩流体の音響を計測する音響計測装置と、映像観測装置および音響計測装置の出力から漏洩流体の特徴量を抽出する特徴量抽出装置と、抽出された一つ又は複数の特徴量によって、流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状等毎に作成した逐次の漏洩量に関するデータベースを検索して漏洩量を求める漏洩量検索装置とを備え、前記漏洩量検索装置は、漏洩流体の漏洩量と漏洩時間から漏洩事象による全漏洩量を積算し、逐次の漏洩量、漏洩事象による全漏洩量、漏洩部の面積および形状をモニタ表示可能に構成したことを特徴とする。
【0014】
本発明では、映像観測装置および音響計測装置によって漏洩流体の音響および映像を計測し、特徴量抽出装置によって漏洩流体の音響および映像の特徴量を抽出する。そして、抽出された一つ又は複数の特徴量によって、漏洩量検索装置により、漏洩流体の圧力および温度、漏洩流体の相状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した漏洩量に関するデータベースを検索することによって、映像観測又は音響計測の単独では困難な漏洩量測定を高精度に行う。また、漏洩量の検索結果、漏洩部の形状および面積、漏洩映像を表示および記憶することによって、迅速かつ的確に漏洩を把握する。
【0015】
請求項2の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1の発明において、前記漏洩量検索装置は、漏洩部の破損状態およびプラント計装出力から多次元の熱流動計算による数値解析を行ない,漏洩部の面積および形状、漏洩媒体の相状態、流体圧力から漏洩量を求めることを特徴とする。
【0016】
本発明では、漏洩流体の漏洩停止後に破損状態観測手段によって観測した漏洩部の破損状態およびプラント計装出力から数値解析を行うことによって、漏洩量を高精度に求めることができる。また、漏洩量の解析結果、漏洩部の形状および面積を漏洩量検索装置に表示および記憶することによって、迅速かつ的確に漏洩量や破損状況を把握することができる。
【0017】
請求項3の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1の発明において、前記映像観測装置は、可視画像および赤外線画像の一方又は両方を観測することを特徴とする。
【0018】
本発明では、漏洩流体の可視画像および赤外線画像の一方又は両方を観測できる映像観測装置とする。この結果、漏洩媒体の種類、温度、圧力、相状態に応じて、映像出力から有効な特徴量を抽出することができる。
【0019】
請求項4の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1または3の発明において、前記特徴量抽出装置は、前記映像観測装置および音響計測装置を同時に動作させて漏洩流体の音響および映像の特徴量を抽出し、漏洩流体の密度が時間変化する領域を抽出することを特徴とする。
【0020】
本発明では、映像観測装置の出力映像から漏洩流体の密度が時間変化する領域を抽出して特徴量とする。この結果、微量漏洩であっても特徴量として抽出でき、映像観測装置の映像出力から有効な特徴量を得ることができる。
【0021】
請求項5の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1または請求項3の発明において、前記映像観測装置は、照明手段を備えて静止映像を観測することを特徴とする。
【0022】
本発明では、照明手段を備えて漏洩流体の静止映像を観測する映像観測装置とする。この結果、動画像を観測する映像観測装置に比べて漏洩流体の高感度な静止映像を観測することができ、微少漏洩の場合でも映像観測装置の映像出力から有効な特徴量を得ることができる。
【0023】
請求項6の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1または請求項3乃至請求項5のいずれか1項の発明において、前記特徴量抽出装置は、音響スペクトルを特徴量として抽出することを特徴とする。
【0024】
本発明では、音響計測装置が出力する漏洩流体の音響スペクトルを特徴量とすることができる。この結果、音響スペクトルは漏洩部までの距離には依存しないため、漏洩部までの距離とは無関係に音響計測装置の音響出力から有効な特徴量を得ることができる。
【0025】
請求項7の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1、3乃至6のいずれか1項の発明において、前記特徴量抽出装置は、漏洩部までの距離を音響によって求めて前記音響計測装置の音響出力の距離校正を行うことを特徴とする。
【0026】
本発明では、漏洩部の音響から漏洩部までの距離を求め、音響計測装置の音響出力の距離校正を行う。この結果、漏洩部までの距離に関わらず、音響計測装置の音響出力から有効な特徴量を得ることができる。
【0027】
請求項8の発明に係わる漏洩量測定装置は、請求項1、3乃至7のいずれか1項の発明において、前記特徴量抽出装置は、漏洩流体の映像を観測する前記映像観測装置の映像出力から漏洩量の計測に適した音響周波数を選定することを特徴とする。
【0028】
本発明では、漏洩流体の映像を観測する映像観測装置の映像出力から音響計測を行うときに障害となる物の状況を把握し、漏洩量の計測に適した音響周波数を選定する。この結果、障害物の状況に関わらず、音響計測装置から有効な音響出力を得ることができる。
【0029】
請求項9の発明に係わる漏洩量測定方法は、漏洩流体の映像を観測する映像観測工程と、漏洩流体の音響を計測する音響計測工程と、映像観測装置および音響計測装置の出力から漏洩流体の特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、抽出された一つ又は複数の特徴量によって、流体圧力および温度、漏洩媒体の状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した逐次の漏洩量に関するデータベースを検索して漏洩量を求める漏洩量検索工程と、漏洩量と漏洩時間から漏洩事象による全漏洩量を求める漏洩量算出工程とを備え、逐次の漏洩量、漏洩事象による全漏洩量、漏洩部の面積および形状をモニタ表示することを特徴とする。
【0030】
本発明では、映像観測工程および音響計測工程で漏洩流体の音響および映像を計測し、特徴量抽出工程において漏洩流体の音響および映像の特徴量を抽出する。そして、抽出された一つ又は複数の特徴量によって、漏洩流体の圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した漏洩量に関するデータベースを検索することによって、映像観測又は音響計測の単独では困難な漏洩量測定を高精度に行うことができる。漏洩量算出工程では、この一連の工程を繰り返し行って漏洩量を一定の時間間隔で逐次求め、漏洩量を漏洩時間の間積算することによって、漏洩事象による全漏洩量を求める。また、漏洩量の検索結果、漏洩部の形状および面積、漏洩映像を表示および記憶することによって、迅速かつ的確に漏洩を逐次把握することができる。
【0031】
請求項10の発明に係わる漏洩量測定方法は、請求項9の発明において、漏洩流体の漏洩停止後に漏洩部の破損状態を観測する破損状態観測工程と、漏洩部の破損状態およびプラント計装出力から漏洩量を数値解析する漏洩量解析工程とを備えたことを特徴とする。
【0032】
本発明では、漏洩流体の漏洩停止後に破損状態観測工程によって観測した漏洩部の破損状態およびプラント計装出力から数値解析を行うことによって、漏洩量を高精度に求めることができる。また、漏洩量の解析結果、漏洩部の形状および面積を漏洩量検索装置に表示および記憶することによって、迅速かつ的確に漏洩量や破損状況を把握することができる。
【0033】
請求項11の発明に係わる漏洩量測定方法は、漏洩流体の流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状から数値解析して漏洩量を求める漏洩量解析工程と、漏洩流体の映像を観測する映像観測工程と、漏洩流体の音響を計測する音響計測工程と、映像観測装置および音響計測装置の出力から漏洩流体の特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、抽出された一つ又は複数の特徴量によって、流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した逐次の漏洩量に関するデータベースを用いて映像又は音響の一つ又は複数の特徴量から漏洩量を検索する漏洩量検索工程と、プラント計装出力から漏洩量を算出して求める漏洩量算出工程と、漏洩部の外観的な破損状態を観測して漏洩量を数値解析する漏洩量判定工程と、前記漏洩量解析工程、前記漏洩量検索工程、前記漏洩量算出工程および前記漏洩量判定工程の一つ又は複数を用いて漏洩量を判定する漏洩量総合判定工程と、前記漏洩量総合判定工程の判定結果を表示する漏洩量表示工程とを備えることを特徴とする。
【0034】
本発明では、漏洩流体の流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の形状および面積に基づいた漏洩量の数値解析、映像および音響の一つ又は複数の特徴量を用いた漏洩量データベースの検索、プラント計装出力に基づいた漏洩量の数値解析、漏洩部の外観的な破損状態に基づいた漏洩量の数値解析の各々の手法によって漏洩量を求めることができる。そして、これら手法の一つ又は複数を組合せることによって、漏洩流体の漏洩量を高精度に求めることができる。
【0035】
請求項12の発明に係わる漏洩量測定方法は、請求項11の発明において、漏洩停止後に漏洩部の破損状態を観測して漏洩量を数値解析する漏洩量解析工程を備えたことを特徴とする請求項11に記載の漏洩流体の漏洩量測定方法。
【0036】
本発明では、請求項11の発明の工程手法に加え、漏洩停止後に漏洩部の破損状態を観測して漏洩量を数値解析する工程を有するので、これら工程の一つ又は複数を組合せることによって、漏洩流体の漏洩量を高精度に求めることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる漏洩量測定装置の構成図である。この第1の実施の形態は、請求項1および請求項9に対応するものである。
【0038】
図1において、プラント機器5の漏洩流体6の映像は映像観測装置1で観測され、漏洩流体6の音響は音響計測装置2で計測される。映像観測装置1および音響計測装置2の出力信号は特徴量抽出装置3に入力され、特徴量抽出装置3において漏洩流体6の特徴量が抽出される。漏洩量検索装置4では、特徴量抽出装置3で抽出された一つ又は複数の特徴量によって、漏洩流体の流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状毎に予め作成された漏洩量に関するデータベースを検索して、漏洩量を求めるようになっている。
【0039】
映像観測装置1は、漏洩流体6の可視画像を撮影する撮影機器で構成される。ここでは、デジタルビデオカメラとする。デジタルビデオカメラからの映像出力はNTSC(National Television System Committee)信号に変換され、ケーブルによって特徴量抽出装置3へ伝送される。デジタルビデオカメラは、画素数や画角など性能に制限はなく各種のデジタルビデオカメラが適用可能である。また、デジタルビデオカメラに限定されず、CCDカメラ、CMOSカメラなど固体撮像素子、電子管など可視画像を撮影できる機器は全て適用可能である。
【0040】
音響計測装置2は、流体の漏洩時に発生する音響を集音するマイクロホンで構成される。マイクロホンは、周波数特性:20〜100[kHz]、口径:1/4インチの無指向性コンデンサ型マイクロホンとする。音響出力は音響計測装置2に備えたADコンバータによってAD変換され、ケーブルによって特徴量抽出装置3へ伝送される。ADコンバータは、サンプリング周波数:10[MHz]、分解能:12[bit]とする。マイクロホンやADコンバータは、現場ノイズの周波数や音圧、漏洩時の音響周波数や音圧に合わせて適宜に選定することができる。また、マイクロホンを複数用いて、音響の伝播方向から漏洩部位を厳密に特定することもできる。
【0041】
特徴量抽出装置3は、映像および音響の入力部および汎用型のコンピュータで構成される。また、特徴量抽出装置3は、専用の処理装置を製作して小型軽量化を行うことができる。特徴量抽出装置3を構成するコンピュータは、一定時間:Δt秒毎の映像観測装置1および音響計測装置2の映像出力および音響出力を記憶する記憶機能、映像観測装置1および音響計測装置2の出力を漏洩量検索装置4の表示画面に表示する機能、映像観測装置1の映像出力に対し画像処理を行って漏洩媒体および相状態の判定、映像の特徴量を抽出する機能、音響計測装置2の音響出力に対し信号処理を行って音響の特徴量を抽出する機能を備えている。Δtは任意に設定可能であり、ここではΔt=1/30秒とする。映像出力および音響出力は、特徴量抽出装置3に内蔵されたハードディスク又は外付のハードディスクに記憶する。また、フロッピーディスク、光磁気ディスク、スマートメディア、メモリカード等のメディアに記憶することもできる。
【0042】
漏洩流体6の漏洩媒体および相状態は、各配管および部位に流れる媒体および相状態を特徴量抽出装置3に予め記憶しておくことによって、映像観測装置1の出力映像から漏洩場所および漏洩部位を特定して同定することができる。
【0043】
映像の特徴量には、映像中での漏洩流体6の面積、漏洩の勢いを示す漏洩流体6の噴射長、漏洩の広がり程度を示す拡散角、映像に撮影された漏洩流体6の平均輝度や輝度分布が挙げられる。ここで、図2に示す漏洩流体6の漏洩映像によって各特徴量を説明する。
【0044】
漏洩流体6の面積は、図2に示す漏洩流体6の漏洩面積である。漏洩面積は、映像の輝度ヒストグラム、映像の縦方向又は横方向の輝度プロファイルなどから、一定閾値以上の輝度領域又は一定変化率以上で囲まれる輝度領域を抽出することによって求める。
【0045】
漏洩流体6の噴射長は漏洩の勢いを示す特徴量であり、図2に示す噴射方向の最大長さとする。噴射長は漏洩面積から求め、漏洩面積の噴射方向の最大長さである。発散角は漏洩の広がり程度を示す特徴量であり、図2に示す噴射方向の広がり角とする。発散角は、噴射長と同様に漏洩面積から求め、噴射方向の広がり角とする。
【0046】
漏洩流体6の平均輝度は漏洩面積の輝度平均であり、輝度分布は漏洩面積の輝度分布とする。平均輝度は漏洩面積の輝度値を平均して求め、輝度分布は漏洩面積内の輝度分布そのものである。
【0047】
一方、音響の特徴量には、漏洩音響の音圧および音響スペクトルがある。本実施例では、発散角を映像の特徴量、音圧を音響の特徴量とする。
【0048】
漏洩量検索装置4は、特徴量抽出装置3と同様に汎用型のコンピュータで構成される。そして、漏洩量検索装置4はケーブルによって特徴量抽出装置3と接続され、流体圧力や温度、相状態、漏洩部の面積や形状等毎に作成した漏洩量に関するデータベースを記憶している。また、漏洩量の検索結果、漏洩部の形状や面積を表示するモニタおよび記憶するハードディスクを備えている。
【0049】
データベースは、漏洩部の形状や面積、漏洩媒体、漏洩圧力や温度、相状態等をパラメータして、できるだけ多くの漏洩量データを蓄積させる。なお、データベース作成時には、漏洩の可能性が高い部位および条件を経験的に選定して漏洩量データを作成する。例えば、発電所内では、機器配管やフランジ部などが漏洩の可能性が高い部位として挙げられる。この場合の漏洩は、配管に空いたピンホール、フランジシールに不具合がある部位に限定され、漏洩部の形状や面積も限定される。また、配管やフランジ内部の相状態は、通常運転時ならプラントのヒートバランスから既知であったり、場所によっては測定されている。一方、各漏洩流量における映像や音響に関する特徴量は、数値解析と同一条件で実際に漏洩を発生させて求める。
【0050】
映像の特徴量を発散角、音響の特徴量を音圧とする第1の実施の形態におけるデータベースの一部分を図3に示す。図3は、漏洩流体6:飽和水、漏洩圧力:7[MPa]、漏洩部の形状がピンホールの例である。この場合、漏洩が発生するプラント機器5は、発電所内蒸気タービン系配管のフランジパッキン部とする。そして、腐食によって直径:0.2[mm]のピンホール形状の漏洩部ができたとする。漏洩流体6は、飽和水、漏洩量は9.0×10-2[L/m]とする。また、漏洩量測定装置の設置場所は、発電所に限定されず各種プラント、工場、ビル、作業現場、鉱山などの現場で適用可能であり、フランジ部以外に、切替弁、遮断弁、調節弁などの各種弁、配管、継ぎ手などの各種部位から漏洩量を測定することができる。また、漏洩量測定が可能な漏洩流体6は、飽和水に限定されず各種の流体とすることができる。
【0051】
以上のように構成した第1の実施の形態の漏洩量測定装置の作用について説明する。発電所内蒸気タービン系配管のフランジパッキン部から飽和水の漏洩が発生した場合、映像観測装置1および音響計測装置2が同時に動作する。
【0052】
映像観測装置1では、1/30秒毎に漏洩流体6の漏洩映像が観測される。映像観測装置1の映像出力は、NTSC信号に変換されてケーブルによって伝送され、特徴量抽出装置3へ入力される。一方、音響計測装置2では、映像観測装置1の動作信号をトリガ信号にして映像の観測時刻と同時刻の漏洩流体6の漏洩音響が観測される。音響計測装置2の音響出力は、ADコンバータによってAD変換されてケーブルによって伝送され、特徴量抽出装置3へ入力される。
【0053】
特徴量抽出装置3では、漏洩映像が記録されると共に、ケーブルによって漏洩量検索装置4のモニタへ伝送して漏洩映像を画面表示する。漏洩量検索装置4の表示画面に表示される漏洩流体6の漏洩映像を図4に示す。
【0054】
そして、特徴量抽出装置3では、逐次伝送される観測時間:1/30秒毎の漏洩映像に対し、漏洩媒体および相状態の判定、映像の特徴量である発散角の抽出が行われる。また、音響の特徴量である音圧が抽出される。相状態の判定は、相状態によって音速が異なるため非常に重要である。図4に示す漏洩映像では、発電所内蒸気タービン系配管のフランジパッキン部における漏洩であるため、漏洩媒体:飽和水、相状態:液体となる。さらに、映像の特徴量である発散角:18[°]、音響は音圧:66[dB]となる。1/30秒毎に抽出される漏洩映像、漏洩媒体、相状態、発散角および音圧の特徴量は、ケーブルによって漏洩量検索装置4へ逐次伝送される。
【0055】
漏洩量検索装置4では、漏洩媒体および相状態:飽和水、発散角:18[°]、音圧:66[dB]と最も一致する漏洩量を漏洩量データベースから検索する。検索の結果、漏洩量は、9.0×10-2[L/m]となる。また、図3に示される漏洩量データベースは、漏洩部位の形状や面積毎に求められているため、漏洩部の形状や面積を判定することができる。そして、漏洩量の検索結果、漏洩部の形状および面積は、漏洩量検索装置4のモニタへ表示される。
【0056】
以上に述べた作用の結果、映像観測装置1および音響計測装置2によって、同時刻における漏洩流体6の漏洩映像および漏洩音響を計測が可能である。そして、特徴量抽出装置3では、観測映像から漏洩媒体および相状態を判定することができ、さらに観測映像および計測音響から漏洩量推定に有効な音響および映像の特徴量を抽出することができる。特徴量には、映像中での漏洩流体6の面積、噴射長、拡散角、平均輝度や輝度分布、音響の音圧および音響スペクトルなどが挙げられ適宜に有効な特徴量を選定することができる。
【0057】
そして、漏洩量検索装置4では、一つ又は複数の映像および音響の特徴量を用い、漏洩部の形状や面積、漏洩媒体、相状態、漏洩圧力毎に求めた漏洩量データベースを検索することによって、漏洩量、漏洩部の形状および面積を高精度に逐次求めることができる。
【0058】
また、映像観測装置1が一定時間間隔に出力する漏洩映像および漏洩量の検索結果を漏洩量検索装置4へ画面表示および記憶することによって、点検者が、迅速かつ的確に漏洩流体6の漏洩を定量把握することができる。
【0059】
次に、第1の実施の形態の漏洩量測定装置での漏洩量測定方法(請求項9)に関する作用について説明する。漏洩は発電所内蒸気タービン系配管のフランジパッキン部であるが、プラントを停止させて漏洩を止めるためには、通常10時間程度必要である。このため、漏洩発見後から漏洩が止まるまでの10時間程度に漏洩する全漏洩量の把握が重要となる。
【0060】
漏洩発見と同時に漏洩量測定装置を動作させると、漏洩映像および漏洩音響は、映像観測装置1および音響計測装置2から1/30秒毎に出力され特徴量抽出装置3へ伝送される。そして、特徴量抽出装置3では、漏洩媒体および相状態の判定、映像および音響の特徴量である発散角および音圧の抽出、映像記録、漏洩量検索装置4のモニタへの表示が1/30秒毎に行われる。
【0061】
漏洩量検索装置4では、漏洩媒体および相状態、発散角および音圧の特徴量が最も一致する漏洩量を漏洩量データベースから検索することによって、1/30秒毎の漏洩量、漏洩部の形状および面積を逐次求め、漏洩量、漏洩部の形状および面積の記憶および漏洩量検索装置4のモニタでの表示を行う。この工程を続け、漏洩量測定装置の動作開始時から動作停止時まで1/30秒毎に漏洩量を求める工程を逐次繰り返し行い、各時刻における漏洩量を求める。そして、動作開始時から動作停止時までの漏洩量を積算することによって、装置停止時までの全漏洩量を求めることができる。
【0062】
以上に述べた作用の結果、映像観測装置1および音響計測装置2では一定の時間間隔で漏洩映像および漏洩音響が出力され、特徴量抽出装置3において漏洩媒体および相状態の判定、発散角および音圧の特徴量抽出が逐次に行われる。このため、漏洩量検索装置4では、一定時間間隔の漏洩量、漏洩部の形状および面積を高精度に一定の時間間隔で逐次求めることができる。そして、漏洩量測定装置の動作開始時から動作停止時まで漏洩量を求める工程を一定時間間隔で逐次繰り返し行い、各時刻の漏洩量を動作開始時から動作停止時まで積算することによって全漏洩量を求めることができる。また、逐次の漏洩量、漏洩事象による全漏洩量、漏洩部の形状および面積を表示および記憶することによって、点検者が、迅速かつ的確に漏洩を把握することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図5は本発明の第2の実施の形態に係わる漏洩量測定装置のブロック構成図である。この第2の実施の形態は、請求項2、請求項3、および請求項10に対応するものである。
【0064】
図5において、映像観測装置1は、可視画像を撮像するデジタルビデオカメラ1aおよび赤外線画像を撮像する赤外線映像装置1bとを有している。
【0065】
映像観測装置1は、漏洩流体の可視画像および赤外線画像を撮影する撮影機器(赤外・可視観測装置)で構成される。すなわち、映像観測装置1の可視画像を撮影する機器は、第1の実施の形態と同様にデジタルビデオカメラ1aで構成される。このデジタルビデオカメラ1aによって、漏洩停止後の漏洩部の破損状況を観測する。この映像出力はNTSC信号に変換され、ケーブルによって特徴量抽出装置3へ伝送される。
【0066】
一方、映像観測装置1の赤外線画像を撮影する機器は、赤外線映像装置1bで構成される。この赤外線映像装置1bは、光電形素子のインジウムアンチモン(InSb)を赤外線検出素子に用いた下記性能の赤外線映像装置とする。
【0067】
・測定温度範囲 … −40〜2000 ℃
・温度分解能 … 0.1℃(20〜35℃)〜3.4℃(1400〜2000℃)
・画角 … 水平方向 約14°、垂直方向約10°
・画素数 … 150×180程度
・冷却方式 … スターリング冷却方式
【0068】
赤外線検出素子の冷却方式は、液体窒素を用いた冷却方式や電子冷却方式とすることもできる。赤外線映像装置1bは、水銀カドミウムテルル(HgCdTe)などの光電形素子、サーミスタ、サーモパイル、焦電素子などの熱電形素子を赤外線検出素子に用いた装置など各種の赤外線映像装置1bが適用可能である。この赤外線映像装置1bの映像出力は、ケーブルによって特徴量抽出装置3へ伝送される。可視画像および赤外線画像の映像を出力する時間間隔:Δtは、Δt=1/30とする。特徴量抽出装置3は、第1の実施の形態と同一の構成および機能を有する特徴量抽出装置3で構成される。
【0069】
赤外線画像の特徴量は可視画像の特徴量と同様に定義され、赤外線画像中での漏洩流体6の面積、漏洩の勢いを示す漏洩流体6の噴射長、漏洩の広がり程度を示す拡散角、映像に撮影された漏洩流体6の平均温度や温度分布が挙げられる。この場合の温度は、赤外線画像中における相対的な温度である。なお、漏洩流体6の放射率を知れば、絶対温度へ変換は容易に行うことができる。この第2の実施の形態では、赤外線画像の噴射長を映像の特徴量、音圧を音響の特徴量とする。
【0070】
漏洩量検索装置4は第1の実施の形態と同一の構成であるが、数値解析によって漏洩量を求めることができるようになっている。数値解析では多次元の熱流動計算を行い、漏洩部の面積および形状、漏洩媒体の相状態、流体圧力から漏洩量を求めることができる。
【0071】
さらに、漏洩量検索装置4には、各時刻におけるプラント計装出力の値が記憶される。また、漏洩量検索装置4の表示画面では、赤外線画像或いは可視画像、赤外線および可視の両画像、赤外線画像と可視画像の重ね合せ画像を表示できるようになっている。重ね合せ画像を作成することによって、漏洩部位の特定が容易になる。
【0072】
映像の特徴量を噴射長、音響の特徴量を音圧とする第2の実施の形態におけるデータベースの一部分を図6に示す。図6は、漏洩流体6:飽和水、漏洩圧力:1[MPa]、漏洩部の形状がスリットの例である。この場合、漏洩が発生するプラント機器5は、発電所内蒸気タービン系ドレン配管であり、漏洩部は、縦:20[mm]横:0.05[mm]のスリット形状の亀裂とする。漏洩流体6は飽和水、漏洩量は0.5[L/m]とする。赤外線映像装置1bを有した映像観測装置1は、保温材で覆われた配管からの漏洩検知に特に有効である。この場合、保温材の異常高温部、保温材から滴下する漏洩流体6の液体、保温材の隙間から拡散する漏洩流体6を検知することになる。
【0073】
以上のように構成した第2の実施の形態(請求項2、請求項3、請求項10)に関する作用について説明する。発電所内の蒸気タービン系ドレン配管から飽和水の漏洩が発生したとすると、映像観測装置7および音響計測装置2は同時に動作する。
【0074】
映像観測装置1では、1/30秒毎に漏洩流体6の赤外線画像および可視画像が観測される。映像観測装置1の可視画像および赤外線画像はケーブルによって伝送され、映像入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。一方、音響計測装置2では、映像観測装置1の動作信号トリガ信号として映像の観測時刻と同時刻の漏洩流体6の漏洩音響が観測される。音響計測装置2の音響出力は、ADコンバータによってAD変換されてケーブルによって伝送され、音響入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。
【0075】
特徴量抽出装置3では、漏洩流体6の赤外線画像および可視画像が記録されると共に、ケーブルによって漏洩量検索装置4の表示画面へ伝送して赤外線画像を画面表示する。漏洩量検索装置4の表示画面に表示される漏洩流体6の赤外線画像を図7に示す。
【0076】
そして、特徴量抽出装置3では、逐次伝送される観測時間:1/30秒毎の漏洩映像に対し、漏洩媒体および相状態の判定、映像の特徴量である赤外線画像の噴射長の抽出が行われる。また、音響の特徴量である音圧が抽出される。図7に示す漏洩映像では、発電所内蒸気タービン系ドレン配管における漏洩であるため、漏洩媒体:飽和水、相状態:液体となる。さらに、映像の特徴量である赤外線画像の噴射長:10[mm]、音響は音圧:89[dB]となる。
【0077】
1/30秒毎に抽出される漏洩映像、漏洩媒体、相状態、噴射長および音圧の特徴量は、ケーブルによって漏洩量検索装置4へ逐次伝送される。漏洩量検索装置4では、漏洩媒体および相状態:飽和水、噴射長:10[mm]、音圧:89[dB]と最も一致する漏洩量を漏洩量データベースから検索することによって、漏洩量を逐次求めることができる。検索の結果、漏洩量は、0.5[L/m]となる。また、図6に示される漏洩量データベースは、漏洩部の形状や面積毎に求められているため、漏洩部の形状:スリット、面積:1.0[mm2]と判定することができる。そして、漏洩量の検索結果、漏洩部の形状および面積は、漏洩量検索装置4のモニタへ表示される。
【0078】
以上の作用を繰り返し行うことによって、プラント停止処置などによる漏洩停止後まで一定時間間隔で逐次漏洩量を求めることができる。また、一定の時間間隔に出力される漏洩映像および漏洩量の検索結果は、漏洩量検索装置4のモニタへの表示と記憶が行われる。さらに、漏洩停止時には、映像観測装置1のデジタルビデオカメラ1aによって漏洩部の可視画像を観測する。この可視画像はケーブルによって伝送され、映像入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。
【0079】
特徴量抽出装置3では、漏洩部位の可視画像が記録されると共に、ケーブルによって漏洩量検索装置4の表示画面へ伝送して漏洩部の画像を画面表示する。そして、特徴量抽出装置3では漏洩媒体および相状態の判定と共に、漏洩部位の画像から漏洩部の形状および面積を抽出する。第2の実施の形態では、漏洩部は面積:1.0[mm2]、形状:スリットとなる。
【0080】
漏洩部の形状および面積、漏洩媒体および相状態は、ケーブルによって漏洩量検索装置4へ伝送される。漏洩量検索装置4では、漏洩が発生した配管内圧力の時間変化が記憶されているため、各時刻での配管内圧力、漏洩媒体および相状態:飽和水、漏洩部の面積:1.0[mm2]、形状:スリットの条件から数値解析することによって、各時刻に発生した漏洩量を高精度に求めることができる。また、漏洩発見時から漏洩停止までの各時刻の漏洩量を求めて積算することによって、漏洩事象による全漏洩量を求めることができる。
【0081】
以上に述べた作用の結果、映像観測装置1および音響計測装置2によって、同時刻における漏洩流体6の赤外線画像および可視画像の観測、漏洩音響の計測が可能となる。そして、特徴量抽出装置3では、可視画像から漏洩媒体および相状態を判定でき、赤外線画像および計測音響から漏洩量推定に有効な音響および映像の特徴量を一定時間間隔で逐次抽出することができる。映像の特徴量は、漏洩媒体の種類、気体や液体など媒体の状態に応じて可視画像および赤外線画像から適宜に選定する。赤外線画像の特徴量には、映像中での漏洩流体6の面積、噴射長、拡散角、平均温度や温度分布、音響の音圧および音響スペクトルなどが挙げられ適宜に有効な特徴量を選定することができる。
【0082】
漏洩量検索装置4では、漏洩部の形状や面積、漏洩媒体、相状態、漏洩圧力などをパラメータして求めた漏洩量データベースから赤外線画像および音響の特徴量と最も一致する漏洩量を検索することによって、漏洩量を高精度に一定時間間隔で逐次に求めることができる。また、映像観測装置1が一定時間間隔に出力する赤外線画像および可視画像、漏洩量の検索結果を漏洩量検索装置4のモニタに表示することによって、点検者が、漏洩流体6の漏洩媒体および相状態、漏洩程度、漏洩部位を迅速かつ的確に把握することができる。
【0083】
さらに、漏洩停止時には、映像観測装置1のデジタルビデオカメラによって漏洩部位の可視画像を観測することができる。特徴量抽出装置3では、可視画像によって漏洩媒体および相状態、漏洩部の形状および面積を判定することができる。従って、漏洩量検索装置4では、プラント計装出力、漏洩媒体、相状態、漏洩部の形状および面積から数値解析によって漏洩量を求めることができ、ある時刻に発生した漏洩量を高精度に求めることができる。加えて、漏洩発見時から漏洩停止までの各時刻における漏洩量を求め、各時刻の漏洩量を時間積算することによって、漏洩停止時までの全漏洩量を求めることができる。
【0084】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図8は本発明の第3の実施の形態に係わる漏洩量測定装置のブロック構成図である。この第3の実施の形態は、請求項4、請求項7、および請求項8に対応するものである。この第3の実施の形態は、特徴量抽出装置3は、差分処理装置8および音響処理装置9を備えたものである。
【0085】
図8において、映像観測装置1および音響計測装置2は、第1の実施の形態と同一の機能および構成である。映像観測装置1の映像出力は、ケーブルによって特徴量抽出装置3の差分処理装置8に伝送される。映像出力の時間間隔は、Δt= 1/30秒とする。差分処理装置8では、時刻:t=t0の可視画像と時刻:t=t0+Δtの可視画像の差分演算を行って差分画像を求める。差分画像では、時間間隔:Δtの間に密度変化があった画像領域が抽出される。
【0086】
従って、映像観測装置1が漏洩流体6を観測した場合、漏洩流体6の密度が時間共に変化するため差分画像から漏洩を認識することができる。この差分画像から漏洩を判断することによって、微少漏洩の検知が可能となる。さらに、差分処理装置8では、予め記憶しておいた各配管および部位に流れる媒体および相状態に関する情報と可視画像から漏洩媒体および相状態を同定する。なお、各時刻の可視画像および差分画像は、差分処理装置8に記憶できるようになっている。
【0087】
一方、音響計測装置2の音響出力は、ケーブルによって特徴量抽出装置3の音響処理装置9に伝送される。音響処理装置9では、漏洩量データベースの特徴量が基準距離:1mでの数値であるため、漏洩部位までの距離を求めて音響出力を校正する。音響出力の校正は、(音響出力の校正値)= (音響出力)/(漏洩部位までの距離)2によって行うことができる。漏洩部位までの距離は、映像観測装置1の映像出力から計算することができる。
【0088】
また、音響処理装置9では、特定周波数の音圧を抽出して特徴量とする。例えば、漏洩部位と音響計測装置2の間に障害物が存在しない場合、指向性が鋭い超音波領域における音圧を特徴量とする。超音波は指向性が鋭いため、周囲にある構造物からの回折・散乱の影響が少なく、漏洩音響の音圧を高いS/Nで計測することができる。一方、障害物が存在する場合は、指向性が鈍い可聴領域の音圧を特徴量とすることによって漏洩音響の音圧を計測することができる。この第3の実施の形態では、超音波領域である周波数:60[kHz]の音圧、差分画像を特徴量とする。
【0089】
漏洩量検索装置4は、処理データを伝送するためのケーブルによって差分処理装置8および音響処理装置9と接続されている。漏洩量検索装置4には、漏洩部の形状および面積、漏洩媒体、漏洩圧力、相状態等をパラメータにして、周波数:60[kHz]の音圧、差分画像に関する漏洩量のデータベースを記憶している。また、漏洩量検索装置4の表示画面では、差分画像、差分画像と可視画像の重ね合せ画像を選択して表示できるようになっている。図9は、漏洩流体6:飽和蒸気、漏洩圧力:7[MPa]、漏洩部の形状:ピンホールの例である。この場合、漏洩が発生するプラント機器5は、発電所内蒸気タービン系配管とする。そして、腐食によって直径:3.0[mm]程度のピンホール形状の漏洩部ができたとする。漏洩流体6は、飽和蒸気、漏洩量:4.0[L/m]とする。
【0090】
以上のように構成した第3の実施の形態(請求項4、請求項7、請求項8)に関する作用について説明する。発電所内蒸気タービン系配管から飽和蒸気の漏洩が発生した場合、映像観測装置1および音響計測装置2が同時に動作する。 漏洩量測定装置から漏洩部位までの距離は、2[m]とする。映像観測装置1の映像出力はケーブルによって差分処理装置8に伝送され、時間間隔:Δt= 1/30秒の差分画像が逐次求められる。さらに、漏洩媒体および相状態が、飽和蒸気と判定される。差分画像および可視画像は差分処理装置8に記憶され、差分画像は、さらに漏洩量検索装置4へ伝送されて画面表示される。画面表示される重ね合せ画像を図10に示す。
【0091】
一方、音響計測装置2の音響出力はケーブルによって音響処理装置9に伝送され、周波数:60[kHz]における音圧の抽出および音圧の校正が行われる。周波数:60[kHz]の音響出力:126[dB]、漏洩部位までの距離:2[m]であるため、音響出力の校正値は、120[dB]となる。
【0092】
1/30秒毎に抽出される漏洩映像、漏洩媒体、相状態、差分画像、周波数:60[kHz]における音響出力の校正値は、ケーブルによって漏洩量検索装置4へ逐次伝送される。漏洩量検索装置4では、漏洩媒体および相状態:飽和蒸気、音圧:120[dB]がモニタに表示される共に、漏洩量データベースから漏洩量、漏洩部の形状および面積を検索する。検索の結果、漏洩量は4.0[L/m]である。また、漏洩部は、直径:3.0[mm]のピンホール形状となる。
【0093】
なお、選択される漏洩量が複数存在する場合は、選択された漏洩量データベースの各差分画像と差分処理装置8が出力する差分画像の差分演算を行う。演算の結果、抽出される画像領域が最も小さい場合の漏洩量データベースの漏洩量が求めるべき漏洩量となる。
【0094】
以上に述べた作用の結果、映像観測装置1および音響計測装置2によって、同時刻における漏洩流体6の漏洩映像および漏洩音響を計測が可能である。そして、差分処理装置8では、可視画像による漏洩媒体および相状態の判定、時間間隔:Δtの差分画像を逐次求めることができる。この差分画像から漏洩を判断することによって、微少漏洩の高感度な検知が可能となる。
【0095】
さらに、音響処理装置9では、漏洩音響の計測に適した音響周波数の選定、漏洩部位までの距離を漏洩量データベースの距離に校正する音響出力の距離校正を行い、音響の特徴量を求める。この結果、漏洩部位までの距離や障害物の有無とは無関係に有効な音響の特徴量を抽出することができる。
【0096】
そして、漏洩量検索装置4では、漏洩媒体および相状態、音圧が最も一致する漏洩量データベースの漏洩量を検索することによって、漏洩媒体および相状態を特定でき、微少漏洩の場合でも漏洩部までの距離、障害物の有無とは無関係に漏洩量、漏洩部の形状および面積を高精度に一定時間間隔で逐次求めることができる。
【0097】
また、差分処理装置8が一定時間間隔に出力する漏洩映像を漏洩量検索装置4の表示画面へ伝送して漏洩映像を画面表示することによって、点検者が、漏洩流体6の漏洩媒体および相状態、漏洩量、差分処理状況を迅速かつ的確に把握することができる。
【0098】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図11は本発明の第4の実施の形態に係わる漏洩量測定装置のブロック構成図である。この第4の実施の形態は、請求項5、請求項6に対応するものである。この第4の実施の形態は、映像観測装置1としては、照明手段を備えて静止映像を観測する静止画撮影装置1Aを用いたものである。また、特徴量抽出装置3は、音響スペクトルを特徴量として抽出する。
【0099】
図11において、静止画撮影装置1Aは、ストロボやフラッシュなどの照明手段を備えて漏洩流体6の静止画像を撮影できる撮影機器で構成される。照明手段を瞬間的に発光させて静止画を撮影することによって、高感度な静止画像を得ることができる。このため、微粒子状或いは気体の漏洩流体6であっても、静止画撮影装置1Aによって漏洩流体6を観測することができる。
【0100】
この第4の実施の形態では、ストロボ発光機構を備えた1/2インチインターライン方式の230万画素のデジタルスチルカメラとする。デジタルスチルカメラは、任意に設定可能な時間間隔:Δtで自動的に静止画を連続して撮影できるようになっている。また、第4の実施の形態では、時間間隔:Δt=1/3秒とする。デジタルスチルカメラには性能に関する制限はなく、各種のデジタルスチルカメラが適用可能である。ストロボ発光機構が備えていないデジタルスチルカメラの場合は、外付のストロボ発光機構を付けることによって適用することができる。
【0101】
静止画撮影装置1Aの映像出力および音響計測装置2の音響出力は、ケーブルによって特徴量抽出装置3へ伝送される。特徴量抽出装置3は、第1の実施の形態と同一の構成および機能を有する。静止画像の特徴量は可視画像の特徴量と同様に定義され、静止画像中での漏洩流体6の面積、漏洩の勢いを示す漏洩流体6の噴射長、漏洩の広がり程度を示す拡散角、映像に撮影された漏洩流体6の平均輝度や輝度分布が挙げられる。
【0102】
音響の特徴量には、漏洩音響の音圧および音響スペクトルがある。音響スペクトルにおける各周波数成分のスペクトル密度は、図12に示すように漏洩量の増加と共に増加する。従って、音響スペクトルから漏洩量を求めることができる。本実施例では、静止画像の発散角を映像の特徴量、音響スペクトルを音響の特徴量とする。
【0103】
また、漏洩量検索装置4についても、第1の実施の形態と同一の構成および機能である。漏洩量検索装置4の表示画面では、時間間隔:Δtの静止画を逐次表示できるようになっている。映像の特徴量を静止画の発散角、音響の特徴量を音響スペクトルとする第4の実施の形態のデータベースの一部分を図13に示す。図13は、漏洩流体6:飽和蒸気、漏洩圧力:4[MPa]、漏洩部の形状がスリットの例である。この場合、漏洩が発生するプラント機器5は、発電所内蒸気タービン系配管とする。そして、腐食によって縦:20[mm]横:0.4[mm]のスリット形状の亀裂が発生したとする。漏洩流体6は、飽和蒸気、漏洩量:2.0[L/m]とする。
【0104】
以上のように構成した第4の実施の形態(請求項5、請求項6)に関する作用について説明する。発電所内蒸気タービン系配管から飽和蒸気の漏洩が発生した場合、静止画撮影装置1Aおよび音響計測装置2が同時に動作する。
【0105】
静止画撮影装置1Aでは、1/3秒毎に漏洩流体6の静止画像が観測される。静止画撮影装置1Aの静止画はケーブルによって伝送され、映像入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。一方、音響計測装置2では、映像観測装置1の動作信号をトリガ信号にして映像の観測時刻と同時刻の漏洩流体6の漏洩音響が観測される。音響計測装置2の音響出力は、ADコンバータによってAD変換されてケーブルによって伝送され、音響入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。
【0106】
特徴量抽出装置3では、静止画像が記録されると共に、ケーブルによって漏洩量検索装置4の表示画面へ伝送して漏洩映像を画面表示する。漏洩量検索装置4の表示画面に表示される漏洩流体6の漏洩映像を図14に示す。そして、特徴量抽出装置3では、逐次伝送される観測時間:1/3秒毎の漏洩映像に対し、漏洩媒体および相状態の判定、静止画の特徴量である発散角の抽出が行われる。また、音響の特徴量である音響スペクトルが抽出される。発電所内では外乱となる音響の音圧が大きい場所がある。このような場所では、音響スペクトルが有効な特徴量となる。図14に示す漏洩映像では、発電所内蒸気タービン系配管における漏洩であるため、漏洩媒体:飽和蒸気、相状態:気体となる。さらに、映像の特徴量である発散角:25[°]、図15に示す音響スペクトルとなる。
【0107】
1/3秒毎に抽出される静止画像、漏洩媒体、相状態、発散角および音響スペクトルの特徴量は、ケーブルによって漏洩量検索装置4へ逐次伝送される。漏洩量検索装置4では、漏洩媒体および相状態:飽和蒸気、発散角:25[°]、図15に示す音響スペクトルと最も一致する漏洩量を漏洩量のデータベースから検索する。検索の結果、漏洩量は2.0[L/m]である。また、漏洩部は、縦:20[mm]横:0.4[mm]のスリット形状である。
【0108】
以上に述べた作用の結果、静止画撮影装置1Aおよび音響計測装置2によって、同時刻における漏洩流体6の静止画像、漏洩音響の計測が可能となる。そして、特徴量抽出装置3では、静止画像から漏洩媒体および相状態を判定でき、静止画像および計測音響から漏洩量推定に有効な音響および映像の特徴量を一定時間間隔で逐次抽出することができる。静止画像は瞬間的に高輝度なストロボ機構によって漏洩流体6を観測するため、動画像に比べて高感度に漏洩流体6を観測することができる。静止画像の特徴量には、漏洩流体6の面積、噴射長、拡散角、平均輝度や輝度分布が挙げられる。そして、漏洩媒体の種類、気体や液体など媒体の状態に応じて適宜に選定することができる。音響の特徴量には音圧および音響スペクトルなどが挙げられ、音響スペクトルは漏洩部までの距離に依存しないため、漏洩部までの距離とは無関係に特徴量を得ることができる。
【0109】
漏洩量検索装置4では、漏洩量データベースから静止画像および音響の特徴量と最も一致する逐次の漏洩量を検索することによって、漏洩媒体および相状態を特定でき、微少漏洩の場合でも漏洩部までの距離とは無関係に、逐次の漏洩量、漏洩部の形状および面積を高精度に一定時間間隔で逐次求めることができる。
【0110】
また、静止画撮影装置1Aが一定時間間隔に出力する静止画像、逐次の漏洩量、漏洩部の形状および面積を漏洩量検索装置4のモニタに表示することによって、点検者が、漏洩流体6の漏洩媒体および相状態、逐次の漏洩量、漏洩部の形状や面積を迅速かつ的確に把握することができる。
【0111】
次に、本発明に係わる第5の実施の形態を説明する。この第5の実施の形態は、請求項11、請求項12の漏洩量測定方法に対応するものである。この場合、漏洩量測定装置は第1の実施の形態と同様に構成され、映像観測装置1はデジタルビデオカメラ、音響計測装置2はマイクロホン、特徴量抽出装置3および漏洩量検索装置4は汎用型のコンピュータで構成される。そして、特徴量抽出装置3では、表1に示す各項目から一つ又は複数の特徴量を選択できるようになっている。
【0112】
【表1】
【0113】
漏洩部の状況やプラント計装出力は、映像観測装置1の漏洩映像を用いて判定する。漏洩映像によって、漏洩部(配管、弁、フランジ等)、漏洩部の破損程度、保温材の有無、漏洩開口部の面積、漏洩開口部の表面粗さ、漏洩部との距離、漏洩部の表面温度などは、容易に判定できる。また、漏洩映像から漏洩部の系統を特定することによって、漏洩媒体の相状態、圧力、温度などプラント計装出力を判定することができる。また、音響の特徴量である音圧を選択した場合、第3の実施の形態で述べた漏洩部までの距離校正、保温材や障害物の有無に基づく周波数選定を適宜に行う。
【0114】
漏洩量検索装置4では多次元の熱流動計算を行い、漏洩媒体の圧力、温度、相状態、漏洩部の形状、面積、表面温度などの条件を用いて漏洩量を数値解析するようになっている。そして、解析結果は、漏洩量検索装置4の表示画面に表示できるようになっている。表示画面は、CRT、液晶やプラズマ方式のディスプレイ、ブラウン管など各種モニタが適用可能である。また、アナログメータ、デジタルカウンタ等で簡易構成することもできる。これに加え、漏洩量検索装置4には、各時刻におけるプラント計装出力値が記憶される。
【0115】
漏洩が発生するプラント機器5は、第1の実施の形態と同様、発電所内蒸気タービン系配管のフランジパッキン部とする。そして、腐食によって直径0.2[mm]のピンホール形状の漏洩部ができたとする。漏洩流体6は、飽和水、漏洩量は9.0×10-2[L/m]とする。
【0116】
以上のように構成した第5の実施の形態の漏洩量測定装置を用いた漏洩量測定方法(請求項11対応)に関する作用について説明する。発電所内蒸気タービン系配管のフランジパッキン部から飽和水の漏洩が発生した場合、映像観測装置1および音響計測装置2が同時に動作する。映像観測装置1では、1/30秒毎に漏洩流体6の漏洩映像が観測されてケーブル伝送され、映像入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。一方、音響計測装置2では、映像と同時刻の漏洩音響が観測されてケーブル伝送され、音響入力部から特徴量抽出装置3へ入力される。
【0117】
特徴量抽出装置3では漏洩映像が記録されると共に、ケーブルによって漏洩量検索装置4の表示画面へ伝送して図4に示す漏洩映像を画面表示する。そして、特徴量抽出装置3では、逐次伝送される観測時間:1/30秒毎の漏洩映像に対し、漏洩媒体および相状態の判定、映像および音響に関する特徴量の抽出が行われる。
【0118】
特徴量抽出装置3では、表1に示す各項目から一つ又は複数の特徴量を選択する。この第5の実施の形態では、相状態、圧力、音圧、数値解析、フランジ漏洩を特徴量とした。第5の実施の形態では、相状態:液体、圧力:7[MPa]、音圧:66[dB]、フランジ漏洩である。そして、データベースを用いて映像又は音響の一つ又は複数の特徴量から漏洩量を検索する。またプラント計装出力から漏洩量を算出して求める。また漏洩部の外観的な破損状態を観測して漏洩量を数値解析する。これらの一つ又は複数を用いて漏洩量を判定し、その判定結果を表示する。
【0119】
このように、特徴量を用いて漏洩量の判定を行い、例えば図16に示すように表示する。漏洩量の判定結果は、表示左上の“漏洩量の判定結果”に示され、漏洩量:9.0×10-2[L/m]となる。“全漏洩量”は、計測時間中に計測した漏洩量の時間積算値である。図16の表示では複数の特徴量を表示しているが、特徴量の表示個数や選定は、使用者が表1の中から任意に設定することが可能である。特徴量の設定は、“特徴量の設定”コマンドによって選定メニューを表示して行うようになっている。
【0120】
以上に述べた作用の結果、特徴量抽出装置3では、表1に示す各項目から一つ又は複数の特徴量を選択することができる。そして、一つ又は複数の特徴量を適宜に組合せて漏洩量を判定できるため、高精度な漏洩量測定が可能となる。
【0121】
次に、第5の実施の形態の漏洩量測定装置を用いた漏洩量測定方法(請求項12対応)に関する作用について説明する。漏洩発見時には、プラント停止等による漏洩停止処置を実施する。そして、漏洩停止後に映像観測装置1によって、漏洩部(配管、弁、フランジ等)、漏洩部の破損程度、漏洩開口部の面積および表面粗さ、漏洩部との距離を詳細に観測する。
【0122】
このため、漏洩部(配管、弁、フランジ等)、漏洩部の破損程度、漏洩開口部の面積、漏洩開口部の形状、漏洩開口部の表面粗さ、漏洩部との距離の計6項目を表1に示す特徴量へ加えている。そして、表1に示す計24項目の特徴量から一つ又は複数の特徴量を選択することができる。
【0123】
この実施の形態では、相状態、漏洩部の形状、音圧、数値解析、漏洩部を特徴量とした。この実施の形態は、相状態:液体、漏洩部の形状:直径0.2[mm]のピンホール、音圧:66[dB]、フランジ漏洩となる。そして、これら特徴量を用いて漏洩量の判定を行い、例えば、図17に示すように表示する。“漏洩量の判定結果“では、漏洩量:9.0×10-2[L/m]となる。”全漏洩量“:5.40[L/m]は、本漏洩事象による全漏洩量である。また、図18や図19に示されるような簡易表示とすることもできる。簡易表示においても、特徴量の表示個数や選定は、使用者が表1の中から任意に設定することが可能である。
【0124】
以上に述べた作用の結果、特徴量抽出装置3では、漏洩停止後の漏洩部(配管、弁、フランジ等)、漏洩部の破損程度、漏洩開口部の面積および表面粗さ、漏洩部との距離を特徴量とすることができる。このため、24項目の中の一つ又は複数を特徴量に選択することができる。以上の結果、一つ又は複数の特徴量を適宜に組み合わせて漏洩量を判定でき、高精度な漏洩量測定が可能となる。
【0125】
【発明の効果】
本発明によれば、同時刻における漏洩流体の漏洩画像および漏洩音響の計測が可能である。漏洩画像は、赤外線映像装置、可視画像撮影装置、静止画撮影装置などによって撮影することができる。静止画像は、瞬間的に高輝度なストロボ機構によって観測するため、動画像に比べて高感度に漏洩流体を観測することができる。
【0126】
そして、漏洩映像および漏洩音響から音響および映像に関する特徴量を抽出する。特徴量には、映像中での漏洩流体の面積、噴射長、拡散角、平均輝度や輝度分布、平均輝度や輝度分布、音響の音圧および音響スペクトルなどが挙げられ適宜に選定することができる。また、漏洩画像では、差分画像を特徴量とすることによって、微少漏洩の高感度な検知が可能である。一方、音響計測では、可聴音や超音波など計測周波数の選定、漏洩部位までの距離校正を行うことによって、障害物の有無や漏洩部までの距離に依存しない特徴量を得ることができる。また、音響スペクトルは、漏洩部までの距離には無関係な特徴量となる。
【0127】
また、漏洩映像によって、漏洩中および漏洩停止後の漏洩部の状況に関する特徴量、漏洩媒体の温度、圧力、相状態などプラント計装出力に関する特徴量を抽出することができる。
【0128】
以上に述べた映像、音響、漏洩中および漏洩停止後の漏洩部の状況、プラント計装出力に関する特徴量の一つ又は複数の特徴量を用い、漏洩媒体、相状態、圧力、温度、漏洩部の形状や面積等毎に求めた漏洩量のデータベースを検索することによって、映像又は音響の単独の特徴量では困難な漏洩量、漏洩部の形状および面積の計測を現場で高精度に一定の時間間隔で逐次求めることができる。さらに、映像、音響、漏洩中および漏洩停止後の漏洩部の状況、プラント計装出力、数値解析による漏洩量の解析値などの特徴量から、一つ又は複数を組み合せて漏洩量推定することによって、現場で高精度な漏洩量計測が可能となる。
【0129】
また、漏洩量、漏洩映像、漏洩部の形状および面積を一定の時間間隔で画面表示することによって、点検者が、漏洩流体の漏洩媒体および相状態、漏洩量、漏洩の時間変化、漏洩部の形状および面積を迅速かつ的確に把握することができる。そして、動作開始時から動作停止時まで漏洩量を求める工程を一定時間間隔で逐次繰り返し行い、各時刻の漏洩量を動作開始時から動作停止時まで積算することによって、漏洩事象による全漏洩量を求めることができる。
【0130】
また、漏洩停止後には、漏洩部の形状、面積など漏洩部の状況を観測することによって、任意の時刻に発生した漏洩量や漏洩事象による全漏洩量を高精度に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる漏洩量測定装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によって得られる映像の特徴量の説明図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の漏洩量データベースを示す説明図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の漏洩映像の一例を示す平面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる漏洩量測定装置の構成図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の漏洩量データベースを示す説明図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の漏洩映像の一例を示す平面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係わる漏洩量測定装置の構成図。
【図9】本発明の第3の実施の形態の漏洩量データベースを示す説明図。
【図10】本発明の第3の実施の形態の漏洩映像の一例を示す平面図。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係わる漏洩量測定装置の構成図。
【図12】本発明の第4の実施の形態における音響の特徴量である音響スペクトル特性を示す特性図。
【図13】本発明の第4の実施の形態の漏洩量データベースを示す説明図。
【図14】本発明の第4の実施の形態の漏洩映像の一例を示す平面図。
【図15】本発明の第4の実施の形態における音響の特徴量である音響スペクトルを示す特性図。
【図16】本発明の第5の実施の形態における漏洩量の表示の一例を示す平面図。
【図17】本発明の第5の実施の形態における漏洩量の表示の他の一例を示す平面図。
【図18】本発明の第5の実施の形態における漏洩量のアナログ表示の一例を示す平面図。
【図19】本発明の第5の実施の形態における漏洩量のデジタル表示の一例を示す平面図。
【図20】従来の漏洩検出装置(その1)のブロック構成図。
【図21】従来の漏洩検出装置(その1)での液体漏洩の検知・判定のフローチャート。
【図22】従来の漏洩検出装置(その2)のブロック構成図。
【図23】従来の漏洩検出装置(その2)での液体漏洩の検知・判定のフローチャート。
【図24】従来の漏洩検出装置(その3)のブロック構成図。
【図25】従来の漏洩検出装置(その3)での液体漏洩の検知・判定のフローチャート。
【符号の説明】
1 映像観測装置
2 音響計測装置
3 特徴量抽出装置
4 漏洩量検索装置
5 プラント機器
6 漏洩流体
8 差分処理装置
9 音響処理装置
1A 静止画撮影装置
Claims (12)
- 漏洩流体の映像を観測する映像観測装置と、
漏洩流体の音響を計測する音響計測装置と、
映像観測装置および音響計測装置の出力から漏洩流体の特徴量を抽出する特徴量抽出装置と、
抽出された一つ又は複数の特徴量によって、流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した逐次の漏洩量に関するデータベースを検索して漏洩量を求める漏洩量検索装置とを備え、
前記漏洩量検索装置は、漏洩流体の漏洩量と漏洩時間から漏洩事象による全漏洩量を求め、逐次の漏洩量、漏洩事象による全漏洩量、漏洩部の面積および形状をモニタ表示可能に構成したことを特徴とする漏洩量測定装置。 - 前記漏洩量検索装置は、漏洩部の破損状態およびプラント計装出力から多次元の熱流動計算による数値解析を行ない,漏洩部の面積および形状、漏洩媒体の相状態、流体圧力から漏洩量を求めることを特徴とする請求項1に記載の漏洩量測定装置。
- 前記映像観測装置は、可視画像および赤外線画像の一方又は両方を観測することを特徴とする請求項1に記載の漏洩量測定装置。
- 前記特徴量抽出装置は、前記映像観測装置および音響計測装置を同時に動作させて漏洩流体の音響および映像の特徴量を抽出し、漏洩流体の密度が時間変化する領域を抽出することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の漏洩量測定装置。
- 前記映像観測装置は、照明手段を備えて静止映像を観測することを特徴とする請求項1または3に記載の漏洩量測定装置。
- 前記特徴量抽出装置は、音響スペクトルを特徴量として抽出することを特徴とする請求項1、3乃至5のいずれか1項に記載の漏洩量測定装置。
- 前記特徴量抽出装置は、漏洩部までの距離を音響によって求めて前記音響計測装置の音響出力の距離校正を行うことを特徴とする請求項1、3乃至6のいずれか1項に記載の漏洩量測定装置。
- 前記特徴量抽出装置は、漏洩流体の映像を観測する前記映像観測装置の映像出力から漏洩量の計測に適した音響周波数を選定することを特徴とする請求項1、3乃至7のいずれか1項に記載の漏洩量測定装置。
- 漏洩流体の映像を観測する映像観測工程と、
漏洩流体の音響を計測する音響計測工程と、
映像観測装置および音響計測装置の出力から漏洩流体の特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
抽出された一つ又は複数の特徴量によって、流体圧力および温度、漏洩媒体の状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した逐次の漏洩量に関するデータベースを検索して漏洩量を求める漏洩量検索工程と、
漏洩量と漏洩時間から漏洩事象による全漏洩量を求める漏洩量算出工程とを備え、
逐次の漏洩量、漏洩事象による全漏洩量、漏洩部の面積および形状をモニタ表示することを特徴とする漏洩流体の漏洩量測定方法。 - 漏洩流体の漏洩停止後に漏洩部の破損状態を観測する破損状態観測工程と、漏洩部の破損状態およびプラント計装出力から漏洩量を数値解析する漏洩量解析工程とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の漏洩流体の漏洩量測定方法。
- 漏洩流体の流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状から数値解析して漏洩量を求める漏洩量解析工程と、
漏洩流体の映像を観測する映像観測工程と、
漏洩流体の音響を計測する音響計測工程と、
映像観測装置および音響計測装置の出力から漏洩流体の特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
抽出された一つ又は複数の特徴量によって、流体圧力および温度、漏洩媒体の相状態、漏洩部の面積および形状毎に作成した逐次の漏洩量に関するデータベースを用いて映像又は音響の一つ又は複数の特徴量から漏洩量を検索する漏洩量検索工程と、
プラント計装出力から漏洩量を算出して求める漏洩量算出工程と、
漏洩部の外観的な破損状態を観測して漏洩量を数値解析する漏洩量判定工程と、
前記漏洩量解析工程、前記漏洩量検索工程、前記漏洩量算出工程および前記漏洩量判定工程の一つ又は複数を用いて漏洩量を判定する漏洩量総合判定工程と、
前記漏洩量総合判定工程の判定結果を表示する漏洩量表示工程とを備えることを特徴とする漏洩流体の漏洩量測定方法。 - 漏洩停止後に漏洩部の破損状態を観測して漏洩量を数値解析する漏洩量解析工程を備えたことを特徴とする請求項11に記載の漏洩流体の漏洩量測定方法。
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