JP4175012B2 - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、静電潜像が形成される像担持体と、トナーを担持するトナー担持体とを相互に離間させた状態で前記トナー担持体に交番電圧を印加して前記トナー担持体から前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機およびファクシミリ装置などの画像形成装置として、非接触現像方式のものが従来より知られている。この現像方式の画像形成装置では、感光ドラムや感光体ベルトなどの感光体(像担持体)が所定方向に一定速度で回転して、その周囲に配設された帯電ユニットにより均一に帯電される。次いで感光体には露光ユニットからの光ビームが露光され、感光体上に静電潜像が形成される。そして、この感光体に形成された静電潜像は、感光体の周囲に配設された現像ユニットによって現像される。
【0003】
この現像ユニットには、帯電したトナーを担持しながら感光体と対向する現像位置にトナーを搬送する現像ローラ(トナー担持体)が感光体から離間して設けられている。そして、現像ローラに交番電圧を印加することによって現像ローラと感光体との間に交番電界を発生させ、現像ローラ上の帯電トナーを感光体に向けて飛翔させることにより、感光体上の静電潜像が顕像化される。すなわち、こうして飛翔したトナーは、それぞれの直流電位に起因するトナー付着性の大小に応じて現像ローラ、感光体のいずれかに最終的に付着するが、感光体表面には画像信号に対応した静電潜像が形成されているので、感光体表面各部へのトナー付着量はその直流電位に応じて異なることとなり、こうして感光体表面には画像信号に対応したトナー像が形成される。
【0004】
このようにして形成されるトナー像の画像濃度は、主に、現像位置におけるトナーの飛翔量と、現像ローラおよび静電潜像各部の直流電位とによって決まる。したがって、必要十分な濃度の、しかも画像コントラストの良好なトナー像を得るためには、現像ローラおよび感光体各部の電位を適切に設定するとともに、十分な量のトナーを現像位置に飛翔させることが重要となる。
【0005】
この種の装置では、装置の個体差、経時変化や、温湿度など装置の周囲環境の変化に起因してトナー像の画像濃度が異なることがある。特に、非接触現像方式の画像形成装置では、現像ローラと感光体とがギャップを隔てて対向配置されているが、このギャップの大きさは、装置の製造上のばらつきや熱膨張による変形等に起因して、装置毎に、また1台の装置においても微妙に変動することとなる。このようなギャップ変動があるとトナーを飛翔させる交番電界の強度も変動してしまう。その結果、トナー像の画像濃度が大きく変動することがあった。
【0006】
そこで、従来より、画像濃度の安定化を図るための種々の技術が提案されている。このような技術としては、例えば像担持体上にテスト用の小画像(パッチ画像)を形成し、そのパッチ画像の濃度に基づいて画像形成条件を最適化するパッチ処理技術がある。この技術は、像担持体上に種々の画像形成条件で所定のパッチ画像を形成するとともに、このパッチ画像または該パッチ画像を他の転写体に転写してなる画像の濃度を濃度センサにより検出し、その濃度が予め設定された目標濃度に最も近くなるように装置各部に与える電位等の画像形成条件を設定することで、所望の画像濃度を得ようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、形成されるパッチ画像の画像濃度は様々な要因の組み合わせによって決まるものであり、その画像濃度に基づいて画像形成条件を構成する複数のパラメータを個別に最適化するためには複雑な処理が必要となる。そのため、従来のパッチ処理技術では、このような複雑な処理を行わせることによって装置コストの上昇を招いたり、処理に長時間がかかって画像形成のスループットが低下するという問題があった。
【0008】
特に、絵や写真等のグラフィック画像を高い画質で形成するためには、低濃度から高濃度までの広い画像濃度範囲にわたって高い階調再現性が要求される。このような高い再現性を実現するには各パラメータをより細かく調整する必要があるため、さらに複雑な制御およびより長い処理時間を必要とすることとなる。
【0009】
その一方で、より短時間で処理を行うために、より簡易な方法で画像形成条件を最適化する技術の確立も望まれている。というのは、この種の画像形成装置を主に文字出力に使用しているユーザも多く、このようなユーザは、グラフィック画像における画質よりもむしろ文字等の細線画像における画質および印字の高速性を装置に求めるからである。また、このように短時間の処理であれば、スループットを犠牲にすることなくより頻繁に画像形成条件の調整を行うことができるため、例えば連続して多数枚の画像形成を行う際などの画像品質の安定にも寄与することになる。
【0010】
しかしながら、細線画像の画質に着目して短時間で画像形成条件の最適化を行う技術は確立されていないため、従来技術の画像形成装置ではこのようなユーザのニーズに応えるに至っていなかった。
【0011】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、非接触現像方式の画像形成装置に好適なパッチ処理技術を適用することによって、画質の良好なトナー像を安定して形成することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、帯電した像担持体の表面に光ビームを露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に対して離間配置され、その表面にトナーを担持するトナー担持体と、前記トナー担持体に現像バイアスを印加して、前記トナー担持体に担持されたトナーを前記像担持体表面に移動させて前記静電潜像をトナーにより顕像化するバイアス印加手段と、前記像担持体と前記トナー担持体との間のギャップにおけるトナー飛翔量が前記静電潜像の画線部に付着するトナー密度の増加に対する光学濃度の増加がほぼ飽和する濃度飽和条件となるように、前記トナー担持体のトナー搬送量および前記現像バイアスの交流成分の振幅を設定してトナー像を形成するとともに、前記現像バイアスの直流成分を多段階に変更設定しながら、低濃度パッチ画像として細線またはハーフトーン画像からなるトナー像を各現像バイアスで形成し、その画像濃度に基づいて現像バイアスを最適化する最適化処理を実行する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0013】
このように構成された発明では、像担持体とトナー担持体との間のギャップにおけるトナー飛翔量が静電潜像の画線部に付着するトナー密度の増加に対する光学濃度の増加がほぼ飽和する濃度飽和条件となるようにトナー担持体のトナー搬送量および現像バイアスの交流成分の振幅を設定してトナー像を形成する。そして、細線画像やハーフトーン画像などの低濃度画像、すなわち画像全体に対するドットの面積率の低い画像の画質に着目し、その画像濃度に影響を与えるパラメータとしての現像バイアスの直流成分を、実際に形成した低濃度パッチ画像の濃度に基づいて最適化している。そのため、少なくとも細線画像については所定の画像濃度を確保しつつ、しかも従来のパッチ処理技術と比較してその処理を大幅に簡略化することが可能となっている。
【0014】
そして、このように現像バイアスを最適化した画像形成装置では、特に低濃度画像において良好な画質を得ることができるのはもちろんであるが、高濃度画像、すなわち画像全体に対するドットの面積率の高い画像についても比較的安定した画質のトナー像を形成することが可能である。その理由は以下の通りである。低濃度画像の場合と同様に、高濃度画像においても現像バイアスを変化させることでトナー像を構成するトナーの密度が変化するが、高濃度画像では、画線部、すなわち静電潜像のうちトナーを付すべき部分の面積が比較的広くなっており、このように広い面積にわたってトナーが付着している状態では、トナー密度がある程度以上であれば、それ以上トナー密度を高くしても画像濃度はあまり増加しなくなる。このようにトナー密度に対する画像濃度の変化の小さい濃度飽和条件の下では、現像バイアスの変化に伴う高濃度画像の濃度変化も小さい。そのため、低濃度画像の濃度を調整すべく現像バイアスを変更した場合でも、高濃度画像の濃度が目標値から大きく外れることはなく、こうすることにより、この画像形成装置は、低濃度画像から高濃度画像までの広い濃度範囲について、画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。
【0015】
特に、非接触現像方式の画像形成装置では、ギャップ変動による画像濃度の変動を小さく抑えることが重要であり、そのためにはトナー密度の変化が画像濃度の変動として現れ難い濃度飽和条件で画像形成を行うのが好ましい。このような装置では現像バイアスの変化に対する高濃度画像の濃度変化も小さくできるため、上記のようにして現像バイアスを最適化することにより、細線画像に適した画像形成条件を簡単にかつ短時間にて設定することが可能である。
【0016】
このように画像濃度の変動が少なくなる程度のトナーを付着させうる濃度飽和条件を実現するためには、例えば、トナー担持体と像担持体との間に飛翔するトナーの量をできるだけ多くすればよい。このようにした画像形成装置の例としては、トナー担持体からのトナーの飛翔しやすさ、つまりトナーの飛翔性が高くなるように構成された画像形成装置があり、例えば、前記トナー担持体にトナー粒子からなるトナー層が少なくとも1層を超えて担持されている装置、前記トナー担持体に104Ωcm以上の比抵抗を有する表面層が形成されている装置、前記トナーとしてその体積平均粒径が8μm以上のトナーを用いる装置、前記トナーとしてその安息角が25度以下であるトナーを用いる装置、または前記トナーとしてトナー母粒子および酸化チタン外添剤を含むトナーを用いる装置などがある。
【0017】
また、このような画像形成装置の他の例としては、前記トナーとして、トナー母粒子および外添剤を含み、しかも、前記トナー母粒子および前記外添剤それぞれの体積平均粒径をDおよびd、真比重をρ1およびρ2、質量をWおよびw、円周率をπとしたときの次式、
(D・ρ1・w)/(d・ρ2・W・π)
で表される外添剤被覆率が1以上であるトナーを用いる画像形成装置がある。
【0018】
また、前記トナーが負に帯電するものである場合、前記現像バイアスは、前記トナー担持体に負電圧が加わる期間が50%より小さくなる波形を有することが好ましく、さらには30ないし48%であることがより好ましい。このようにすると、より安定した画質で細線画像を形成することができる。
【0019】
また、上記したパッチ画像としては、互いに離隔配置された複数のドット、または互いに離隔配置された複数の1ドットラインのいずれかで構成されていることが好ましい。というのは、文字を主体とした画像は主に点や線の組み合わせにより構成されているため、このようなドットまたはラインで構成された画像をパッチ画像として用いることにより、画像形成条件をより文字出力に適した状態に調整することができるからである。
【0020】
また、前記制御手段は、前記各パッチ画像の濃度が予め定められた目標濃度に最も近くなるときの現像バイアスを前記現像バイアスの最適値とするようにしてもよい。
【0021】
ところで、画像の濃度は、現像バイアス以外にも例えば露光ビームのエネルギー密度やトナーの特性など他の要因によっても変化する。そのため、装置の構成や使用するトナーによっては、現像バイアスの増減のみで画像濃度を調整しようとすると、その可変範囲が広くなりすぎて実現が困難となったり、低濃度画像と高濃度画像との画質のバランスが取れなくなるなどの問題が生じる場合がある。
【0022】
そこで、前記現像バイアスの可変範囲を定めるとともに、前記光ビームのエネルギー密度を少なくとも2段階に変更可能とし、前記制御手段は、第1のエネルギー密度の前記光ビームと、前記各現像バイアスとの条件下で形成された各パッチ画像の画像濃度がいずれも目標濃度未満であるとき、前記第1のエネルギー密度より大きい第2のエネルギー密度を有する光ビームを用いて再度前記最適化処理を行うようにしてもよい。
【0023】
また、前記現像バイアスの可変範囲を定めるとともに、前記光ビームのエネルギー密度を少なくとも2段階に変更可能とし、前記制御手段は、第1のエネルギー密度の前記光ビームと、前記各現像バイアスとの条件下で形成された各パッチ画像の画像濃度がいずれも目標濃度より高いとき、前記第1のエネルギー密度より小さい第3のエネルギー密度を有する光ビームを用いて再度前記最適化処理を行うようにしてもよい。
【0024】
このように、露光ビームのエネルギー密度を可変として画像濃度制御に補助的に使用することにより、現像バイアスの可変範囲を比較的小さく設定することができ、上記した問題の発生を未然に防止することができる。
【0025】
また、この発明にかかる画像形成方法は、像担持体の表面に光ビームを露光してその表面に静電潜像を形成するとともに、トナーを担持するトナー担持体と前記像担持体とを相互に離間させた状態で前記トナー担持体に現像バイアスを印加して前記トナー担持体から前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化する画像形成方法において、上記目的を達成するため、前記像担持体と前記トナー担持体との間のギャップにおけるトナー飛翔量が前記静電潜像の画線部に付着するトナー密度の増加に対する光学濃度の増加がほぼ飽和する濃度飽和条件となるように、前記トナー担持体のトナー搬送量および前記現像バイアスの交流成分の振幅を設定してトナー像を形成するとともに、前記現像バイアスの直流成分を多段階に変更設定しながら、低濃度パッチ画像として細線またはハーフトーン画像からなるトナー像を各現像バイアスで形成し、その画像濃度に基づいて現像バイアスを最適化する最適化処理を実行することを特徴としている。
【0026】
このように構成された画像形成方法では、トナー密度に対する画像濃度変化の少ない濃度飽和条件の下でトナー像を形成することで、ギャップ変動等による画質低下を抑制している。また、パッチ画像として形成した低濃度画像の濃度に基づいて現像バイアスを最適化しており、上記した画像形成装置と同様に、簡単な方法で、しかも短時間にて細線や文字を主体とする画像を形成するのに適した画像形成条件を見出すことができる。そして、このように最適化された条件の下で画像形成を行っているので、画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。
【0027】
この画像形成方法においても、上記した画像形成装置と同様に、現像バイアスの可変範囲を小さくするために、前記各現像バイアスで形成した前記パッチ画像の画像濃度がいずれも予め定められた目標濃度未満であるときには、前記光ビームのエネルギー密度を1段階増加させて再度前記最適化処理を実行したり、また前記各現像バイアスで形成した前記各パッチ画像の画像濃度がいずれも予め定められた目標濃度より高いときには、前記光ビームのエネルギー密度を1段階低下させて再度前記最適化処理を実行するようにしてもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる画像形成装置の第1の実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号が本発明の「制御手段」として機能する制御ユニット1のメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ12がエンジン部EGの各部を制御してシートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0029】
このエンジン部EGでは、感光体2が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体2の周りにその回転方向D1に沿って、感光体2表面を所定の表面電位に帯電させる帯電ユニット3、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部5がそれぞれ配置されている。帯電ユニット3は帯電バイアス発生部121から帯電バイアスが印加されており、感光体2の外周面を均一に帯電させる。
【0030】
そして、この帯電ユニット3によって帯電された感光体2の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、図2に示すように、露光パワー制御部123と電気的に接続されており、画像信号切換部122を介して与えられる画像信号に応じて露光パワー制御部123が露光ユニット6を制御し、光ビームLを感光体2上に露光して感光体2上に画像信号に対応する静電潜像を形成する。例えば、エンジンコントローラ12のCPU124からの指令に基づき、画像信号切換部122がパッチ作成モジュール125と導通している際には、パッチ作成モジュール125から出力されるパッチ画像信号が露光パワー制御部123に与えられてパッチ潜像が形成される。一方、画像信号切換部122がメインコントローラ11のCPU111と導通している際には、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像信号に応じて光ビームLが感光体2上に露光されて画像信号に対応する静電潜像が感光体2上に形成される。このように、この実施形態では、露光ユニット6が本発明の「露光手段」として機能するとともに、感光体2が本発明の「像担持体」として機能している。
【0031】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では現像ユニット4として、ブラック用の現像器4K、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびイエロー用の現像器4Yが軸中心に回転自在に設けられている。そして、これらの現像器4K、4C、4M、4Yは回転位置決めされるとともに、感光体2との対向位置に選択的に位置決めされ、「バイアス印加手段」として機能する現像バイアス発生部126によって現像バイアスが印加されて選択された色のトナーを感光体2の表面に付与する。これによって、感光体2上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0032】
これらの現像器4K、4C、4M、4Yはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4C、4M、4Yについても同様である。図3は、この画像形成装置の現像器を示す断面図である。この現像器4Kでは、その内部にトナーを収容するハウジング41に供給ローラ43および現像ローラ44が設けられている。この現像ローラ44は、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属または合金により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ43、44が接触しながら回転することでトナーが現像ローラ44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ44表面に形成される。すなわち、この実施形態では、現像ローラ44が本発明の「トナー担持体」として機能している。
【0033】
また、この現像器4Kでは、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層を所定厚みに規制するための規制ブレード45が配置されている。この規制ブレード45は、ステンレスやリン青銅などの板状部材451と、板状部材451の先端部に取り付けられたゴムや樹脂などの弾性部材452とで構成されている。この板状部材451の後端部はハウジング41に固着されており、現像ローラ44の回転方向において、板状部材451の先端部に取り付けられた弾性部材452が板状部材451の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材452が現像ローラ44表面に弾性的に当接して現像ローラ44の表面に形成されるトナー層の厚みを最終的にトナー2層程度に規制する。
【0034】
なお、現像ローラ44表面のトナー層を構成する各トナー粒子は、供給ローラ43、規制ブレード45と摩擦されたことによって帯電しており、ここではトナーが負に帯電するものとして以下説明するが、装置各部の電位を適宜変更することで正に帯電するトナーも使用可能である。
【0035】
こうして現像ローラ44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ44の回転により感光体2と対向する現像位置に搬送される。図4は、この実施形態における現像位置を示す図である。また、図5は、現像バイアスの波形の例を示す図である。この装置では、感光体2との対向位置に配置された一の現像器(例えば図1ではブラック現像器4K)に設けられた現像ローラ44と感光体2とがギャップGを隔てて対向配置されている。そして、現像ローラ44に対して、現像バイアス発生部126から現像バイアスが印加される。この現像バイアスは、図5(a)に示すように、直流成分Vmeanに対して振幅Vppなる矩形波電圧が重畳された波形を有する交番電圧である。
【0036】
なお、現像バイアスとしての交番電圧の波形はこれに限定されるものではなく、例えば直流電圧に正弦波や三角波などの波形を有する交流電圧を重畳したものであってもよい。また例えば図5(b)に示すように、そのデューティ比が50%以外の波形であってもよい。この場合には、その直流成分Vmeanとしては、加重平均電圧、すなわち、時間とともに振幅の変化する電圧波形の瞬時値をある時間範囲について平均化して直流電圧値に換算した値を用いることができる。
【0037】
この現像バイアスのデューティ比については、感光体2へのトナー付着を促進する方向、すなわち図5(b)の波形では負(同図における上側)の電圧が加わる期間のデューティを50%より小さくしてゆくと細線画像の濃度が上昇することが発明者の実験によりわかっている。また、装置の経時変化やトナーの劣化によりトナーの飛翔性が低下すると特に細線画像の品質が劣化しやすい。そこで、より安定した画質で細線画像を形成するためには負電圧が加わる期間を50%より小さくすることが好ましく、現像バイアスのデューティ比としては48〜30%、さらに望ましくは45〜35%程度とするのがよい。
【0038】
現像ローラ44に現像バイアスとしての交番電圧が印加されると、現像ローラ44と感光体2とに挟まれた現像位置DPには交番電界が発生する。この電界の作用により、現像ローラ44に担持されたトナーTの一部が現像ローラ44から遊離して現像位置DPに飛翔し往復運動する(符号T1)。こうして飛翔したトナーが感光体2各部にその表面電位に応じて付着することによって、感光体2上の静電潜像がトナーにより現像される。
【0039】
ここで、上記のようにして行う現像プロセスでは、現像位置DPに飛翔させるトナーの量には適当な範囲がある。図6は、感光体2上のトナー密度とトナー像の光学濃度との関係を示す図である。図6に示すように、トナー像を構成するトナーの密度を高くすればその光学濃度は高くなる。しかし、トナーが密に付着した状態になれば、それ以上にトナー密度を増加させても光学濃度はあまり変化しなくなり、図6に示すように高トナー密度領域で飽和特性を示す。言い換えれば、このような高密度にトナーが付着する条件、すなわち本発明にいう「濃度飽和条件」の下では、感光体2に付着するトナー量に多少の変動があったとしてもその画像濃度はほとんど変化しない。したがって、この濃度飽和条件を満たすべく、現像位置DPに飛翔するトナー量が十分に多くなるようにしておけば、何らかの原因によりその飛翔量に多少の変動があったとしても、得られるトナー像の濃度変化を少なくできることを示している。
【0040】
非接触現像方式の画像形成装置において、濃度ムラが少なく、かつ画像コントラストの高いトナー像を形成するためには、このように画像濃度変化の少ないトナー飛翔量が得られる条件で画像形成を行うことが好ましい。というのは、非接触現像方式の装置では製造上の理由からギャップGにある程度の変動が生ずるのは避けられないが、このような濃度飽和条件の下でトナー像形成を行うことでギャップ変動に起因する画像濃度の変動を抑制することができるからである。ただし、付着させるトナー量を多くしすぎると、トナーの消耗が激しくなり、また後述する定着ユニットでの定着プロセスに支障を来すなどの問題が生じるおそれがあるため、これらの要請によりトナー量の上限が規制される。
【0041】
この実施形態では、以下の(1)、(2)に示す構成とすることで必要十分なトナー飛翔量を確保して濃度飽和条件での画像形成を可能とするとともに、後述するように、パッチ画像の濃度に応じて直流現像バイアスVmeanを制御することで画像濃度の調整を行っている。
(1)規制ブレード45により、現像ローラ44上のトナー層の厚みをトナー2層程度に規制している。トナー層を構成するトナーTのうち、現像ローラ44と直接接触しているトナー(図4に示す符号T2)には現像ローラ44との間に強い鏡像力が作用しているので飛翔し難い。そこで、トナー層の厚みをトナー2層程度として、直接現像ローラ44に接触せずより飛翔しやすいトナーの量を増やしている。このように飛翔しやすいトナーが存在すると、そのトナーは比較的小さな力によって現像ローラ44から飛翔することができ、かつ、そのトナーが交番電界に応じ往復運動を行う中で現像ローラ44上のトナーT2に衝突することでトナーT2を飛翔させる効果もある。そのため、十分な量のトナーを現像位置DPに供給することができる。
(2)現像バイアスの振幅Vppを、現像位置DPで放電が発生しない程度でできるだけ大きくしている。この実施形態のような非接触現像方式の画像形成装置では、ギャップG(図4)の変動によってトナーを飛翔させる交番電界の強度が変化する。そこで、交番電圧の振幅Vppをできるだけ高く設定することで、ギャップGが大きく電界が弱い場合でも十分な量のトナーを飛翔させることができるようにしている。ただし、電圧を高くしすぎると現像ローラ44と感光体2との間で放電が発生し著しく画質を損ねることとなるので、このような放電が起きない程度の電圧とする必要がある。
【0042】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラに掛け渡された中間転写ベルト71と、中間転写ベルト71を回転駆動する駆動部(図示省略)とを備えている。
【0043】
さらに、この一次転写領域TR1から周方向(図1の回転方向D1)に進んだ位置にはクリーニング部5が配置されており、一次転写後に感光体2の外周面に残留付着しているトナーを掻き落とすとともに、必要に応じて感光体2の表面電位をリセットする。
【0044】
そして、カラー画像を形成する場合には、1つのトナー色での静電潜像の現像が終了すると、現像ユニット4を回転させて現像器を切り替える。例えば、ブラック色の現像器4Kでの現像を行った後には、現像ユニット4の図1における左回り90度の回転によりシアン色の現像器4Cが現像位置に移動してくる。そして、新たに現像位置に配置された現像器4Cを用いて再びトナー像を形成する。同様にして各色で現像されるトナー像は中間転写ベルト71上の同じ位置に重ね合わされてゆき、中間転写ベルト71上にフルカラーのトナー像が形成される。
【0045】
こうして中間転写ベルト71上に形成されたモノクロまたはフルカラーのトナー像は、所定の二次転写領域TR2において、カセット8から取り出された転写材としてのシートS上に二次転写される。また、こうして画像が形成されたシートSは定着ユニット9を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部に搬送される。なお二次転写後、中間転写ベルト71は不図示のクリーニング部にて中間転写ベルト71に残留付着しているトナーが除去される。
【0046】
また、中間転写ベルト71の移動方向において一次転写領域TR1の後方には、例えば反射型フォトセンサからなるパッチセンサPSが設けられており、CPU124からの制御指令に応じて、後述するようにして感光体2上に形成され中間転写ベルト71に転写されるパッチ画像の光学濃度を検出する。
【0047】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号127はCPU124で行う演算プログラム、CPU124における演算結果、ならびにエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのメモリである。
【0048】
上記のように構成された画像形成装置では、電源投入時などの適当なタイミングで所定のパッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて画像形成条件を最適化する最適化処理を行っている。具体的には、エンジンコントローラ12のCPU124が予め記憶されたプログラムを実行して、各トナー色毎に図7に示す処理を行っている。図7は、この画像形成装置の最適化処理を示すフローチャートであり、図8は、この最適化処理におけるパッチ処理を示すフローチャートである。また、図9はこのパッチ処理に用いるパッチ画像の例を示す図である。
【0049】
この画像形成装置では、画像形成条件を調整して所望の画像濃度を得るべく、露光ビームLの単位面積当たりのエネルギー(以下、単に「露光エネルギー」という)Eと、現像バイアスの直流成分(以下、「直流現像バイアス」という)Vmeanとを変更可能に構成されている。このうち、濃度調整に主として用いるのは直流現像バイアスVmeanであって、露光エネルギーEの可変範囲は3段階:E1;E2;E3(ただし、E1>E2>E3)のみに限定されており、直流現像バイアスVmeanの調整だけでは所望の画像濃度が得られない場合の濃度の増減に補助的に使用されるものである。このようにする理由については後述する。
【0050】
以下、図7および図8を参照しながら、この最適化処理についてさらに詳しく説明する。この最適化処理では、まず露光エネルギーEを初期値(例えばE2)に設定し(ステップS1)、この条件でパッチ処理(ステップS2)を行う。このパッチ処理(図8)では、直流現像バイアスVmeanをその可変範囲における最小値Vminから最大値Vmaxまで1ステップずつ増加させながら、各バイアス条件でパッチ画像として例えば図9に示す1オン10オフの1ドットライン群からなるトナー像PIを形成する(ステップS21〜S24)。こうすることで、中間転写ベルト71上には、それぞれのバイアス条件に応じた濃度の複数のパッチ画像が形成されることとなる。そして、こうして形成されたパッチ画像が中間転写ベルト71の移動に伴ってパッチセンサPSと対向する位置に移動してくるタイミングで該センサPSからの出力信号を読み込み、その信号に基づいて各パッチ画像の光学濃度を求める(ステップS25)。
【0051】
図7に戻って、こうしてパッチ処理(ステップS2)で求めた各パッチ画像の光学濃度と予め設定された目標濃度(例えば光学濃度OD=0.22)とを比較し(ステップS3、S4)、これらのパッチ画像の中に目標濃度とほぼ等しい濃度を有するものがあれば、そのパッチ画像を形成したときの直流現像バイアス値Vmeanを最適直流現像バイアスVopとして設定し(ステップS5)、最適化処理を終了する。そして、以後のトナー像形成は、この最適直流現像バイアスVopを現像ローラ44に与えながら行うこととなる。
【0052】
一方、ステップS3において、各パッチ画像の濃度がいずれも目標濃度に達していなければ、露光エネルギーEを1段階増加させ(ステップS9)、再度上記したパッチ処理(ステップS2)を行うが、もし露光エネルギーEが既に最大値E1となっていた場合には(ステップS8)、後述するエラー処理(ステップS10)を実行して最適化処理を終了する。
【0053】
また、ステップS4において、各パッチ画像の濃度がいずれも目標濃度を超えている場合には、露光エネルギーEを1段階低下させ(ステップS7)、再度上記したパッチ処理(ステップS2)を行うが、もし露光エネルギーEが既に最小値E3となっていた場合にも(ステップS6)、エラー処理(ステップS10)を実行して最適化処理を終了する。
【0054】
このように、この最適化処理では、まず露光エネルギーEを固定しておき、直流現像バイアスVmeanを多段階に変更設定しながらパッチ画像を形成し、その画像濃度に基づいて最適現像バイアスVopを求めている。そして、直流現像バイアスVmeanをどのように設定してもパッチ画像濃度が不足もしくは過剰となる場合には露光エネルギーEを1段階増加または低下させて再度パッチ処理を行い、目標濃度が得られる直流現像バイアスVmeanを求めるようにしている。
【0055】
一方、使用されるトナーの特性ばらつきや、装置およびトナーの劣化・故障、極端な温湿度環境等に起因して、露光エネルギーEおよび直流現像バイアスVmeanをどのような組み合わせにしても所望濃度が得られない場合もありうる。この実施形態では、このような場合にステップS10のエラー処理が行われるように構成されているが、このエラー処理としては種々の内容が考えられる。例えば、図示しない表示部に、所望濃度が得られない旨をユーザに報知するメッセージを表示し、以後の画像形成動作を行わないようにしてもよい。また、例えば、どのような条件でも濃度が不足する場合には、最高の濃度が得られる条件で画像形成を行うようにしたり、逆にどのような条件でも濃度が過剰となる場合には、濃度が最低となる条件で画像形成を行うようにしてもよい。
【0056】
このような画像形成条件の最適化処理を行うことによって、広い濃度範囲にわたって良好な画質のトナー像を安定して形成することができる理由について、高濃度画像としてベタ画像を、また低濃度画像として細線画像を例にとり、図4、図6および、図10ないし図12を参照して説明する。図10は、この画像形成装置においてベタ画像および細線画像を形成する場合の感光体2の表面電位プロファイルの例を示す図であり、図11は、画像濃度とその形成条件との関係を示す図である。また、図12は、直流現像バイアスVmeanが不適正な場合の画像の歪みを例示する図である。
【0057】
帯電ユニット3により均一の表面電位Vdに帯電された感光体2を部分的に光ビームLにより露光すると、その部分の電荷が中和されて感光体2の表面に静電潜像が形成されるが、ベタ画像のような高濃度画像では感光体2表面の比較的広い範囲が露光されているため、その表面電位プロファイルは、例えば図10(a)に示すように、感光体2の特性で決まる残留電位Vr程度まで低下した井戸型となる。一方、細線画像のような低濃度画像では露光される領域が狭いため、その表面電位Vsは例えば図10(b)に示す鋭いディップ状のプロファイルを有することとなる。なお、図10(b)では1ラインのみの例を示しているが、互いに離隔配置されている複数のラインの場合も同様である。
【0058】
そして、このような電位プロファイルを有する静電潜像がトナーを担持する現像ローラ44と対向する現像位置DPに搬送されてくると(図4)、この現像位置DPで往復飛翔しているトナーは、現像ローラ44、感光体2各部の直流電位に応じてそのいずれかに付着する。このとき、直流現像バイアスVmeanと感光体2の表面電位Vsとの電位差が大きいほど現像ローラ44から感光体2へのトナー移行が促進されるため、この電位差すなわちコントラスト電位Vcontが大きいほど感光体2に付着するトナーの密度は高くなり、それに伴って画像濃度も高くなる。
【0059】
ここで、露光エネルギーEを変化させた場合を考えてみると、図10の点線で示すように、ベタ画像では表面電位プロファイルの変化は小さいのに対し、細線画像ではディップの深さまたは幅、あるいはその両方が大きく変化することとなる。このように、静電潜像の電位プロファイルに対する露光エネルギーEの影響は、ベタ画像では小さく、細線画像で大きくなる。したがって、現像されるトナー像の濃度も、細線画像では露光エネルギーEにより変化することとなる。
【0060】
一方、直流現像バイアスVmeanを変化させた場合には、コントラスト電位Vcontが変化することとなるため、ベタ画像、細線画像いずれの場合においてもそのトナー密度が変化する。
【0061】
ここで、トナー密度と光学濃度ODとの関係は、図6に示すように飽和特性を有している。したがって、静電潜像の画線部に付着するトナー密度に対して画像濃度が飽和するような画像形成条件(濃度飽和条件)の下で画像形成を行ったとき、ベタ画像の濃度はトナー密度が変化してもあまり変化しない。一方、細線画像では、狭い画線部に集中的に付着したトナーがその周囲にも広がることにより画線部の幅が広がる。そのため、濃度飽和条件の下でも見かけ上はトナー密度の増加に伴って画像濃度も高くなる。
【0062】
これらのことから、ベタ画像および細線画像の光学濃度ODと、露光エネルギーEおよび直流現像バイアスVmeanとの関係は図11に示すようになる。ベタ画像においては、図11(a)に示すように、露光エネルギーEによる画像濃度の差は小さく、しかも、直流現像バイアスVmeanに対する濃度変化も小さい。これに対して、細線画像では、図11(b)に示すように、その画像濃度は露光エネルギーE、直流現像バイアスVmeanのいずれによっても大きく変化することとなる。
【0063】
より具体的には、ベタ画像において直流現像バイアスVmeanをその可変範囲における最小値Vminから最大値Vmaxまで変化させた場合の濃度変化は図に示す範囲RH程度であり、一方、細線画像では、直流現像バイアスVmeanを変化させたときの濃度変化はこれより大きく、例えば露光エネルギーE2においてはその変化範囲は図に示すR2程度となる。したがって、直流現像バイアスVmeanによる濃度変化の大きい細線画像をパッチ画像として形成し、その濃度が目標値(この実施形態では光学濃度OD=0.22)となるような直流現像バイアスVopを求めれば、そのときのベタ画像の濃度もほぼ目標値(例えば光学濃度OD=1.3)に近い値を得ることができ、こうして求めた画像形成条件で画像形成を行うことにより、広い濃度範囲にわたって画質の良好なトナー像を得ることが可能となる。
【0064】
なお、直流現像バイアスVmeanの可変範囲については、画質向上のため次のような諸条件による制約を設けている。すなわち、直流現像バイアスVmeanが大きくなると図10に示すコントラスト電位Vcontが大きくなる。そのため、直流現像バイアスVmeanが大きすぎると、エッジ効果として知られるように画像の端部が極端な高濃度となったり、トナー付着量が過大となって後段での転写・定着プロセスにおいてトナーの散りが生じ画質が低下するなどの問題がある。一方、直流現像バイアスVmeanが小さすぎる場合、コントラスト電位Vcontが小さくなるのでトナーを感光体2に付着させる力が弱くなり、例えば図12(a)に示す矩形パターンRIの例のように、特に感光体2の移動方向から見たときの画像の左右および下流側のトナーが剥ぎ取られて画像が歪むという現象が発生する。この歪み量Dは、図12(b)に示すように、コントラスト電位Vcontの増加とともに減少し、次第に一定値に漸近するという特性を示す。さらに、図11(a)に示すように、直流現像バイアスVmeanが小さい領域ではベタ画像の濃度変動も大きくなってしまう。
【0065】
したがって、画質が良好で安定したトナー像形成を行うためには、コントラスト電位Vcontが、エッジ効果やトナーの散りが出ない程度に低く、かつ画像の歪み量Dが許容範囲内に収まる程度に高い値となっていることが必要である。この範囲は、種々のコントラスト電位Vcontでトナー像を形成しながらその画質を評価することで予め求めることができ、発明者らの実験では、この実施形態の画像形成装置においてコントラスト電位Vcontとしては50〜250V程度、また直流現像バイアスVmeanとしては、−(170〜320)V程度が好ましい範囲であった。
【0066】
こうして直流現像バイアスVmeanの可変範囲を規定したことにより、一定の画質を確保できるものの、細線画像の濃度制御範囲も制限されることとなる。そのため、装置の特性のばらつきや周囲環境によっては、直流現像バイアスVmeanの調整だけでは所望の画像濃度が得られないことも考えられる。そこで、この実施形態の画像形成装置では、露光エネルギーEをE1、E2、E3の3段階に変更可能として、細線画像における濃度制御範囲を広げている。すなわち、図11に示すように、露光エネルギーE1、E2、E3における画像濃度変化の範囲はそれぞれR1、R2、R3であるから、露光エネルギーEと直流現像バイアスVmeanとの組み合わせにより濃度調整範囲を図に示す範囲RLまで広げることができる。
【0067】
なお、このように濃度調整範囲を広げてもなお画像濃度が目標値に至らない場合もありうるが、画像濃度がこのように大きく目標濃度からずれる場合、装置やトナーの劣化・故障など何らかの異常が原因となっている可能性が高い。したがって、徒に露光エネルギーEや直流現像バイアスVmeanの可変範囲を広げて処理を複雑にするよりも、このような場合には先に例示したようなエラー処理を行うようにする方が好ましい。
【0068】
また、前述した最適化処理においては、電源投入直後またはユニット交換後のように装置の動作環境が不明である場合を想定し、露光エネルギーEの初期値を中心値E2に設定しているが、例えば、通電中、一定時間毎にまたは所定枚数の画像形成を行う毎に画像形成条件の再調整を行うような場合には、動作環境がそれほど大きく変わっていることは少ないから、このような場合には、その直前まで設定されていた露光エネルギー値を初期値としてもよい。こうすることで、より短時間に最適直流現像バイアスVopを見出すことが可能となる。したがって、より頻繁に画像形成条件の再調整を行うことも可能である。例えば、連続して多数枚の画像形成を行うときに一定間隔で上記した最適化処理を行い、その都度画像形成条件の再調整を行うようにすれば、画像形成のスループットを低下させることなく各画像毎の濃度のばらつきを小さくすることができる。
【0069】
以上のように、この実施形態は、非接触現像方式の画像形成装置であって、ギャップ変動に起因する画像濃度の変動を抑えるため、トナー飛翔量を高め、濃度飽和条件(図6に示すトナー密度ds以上の領域)の下でトナー像形成を行っている。そして、このように構成された装置において、画像形成条件を最適化するため、露光エネルギーEを固定した状態で直流現像バイアスVmeanを変更設定しながら低濃度パッチ画像を形成し、その画像濃度が目標濃度にほぼ一致するときのバイアス値を最適直流現像バイアスVopとしている。このとき、ベタ画像に代表される高濃度側での画像濃度の変化は小さいので、こうすることにより、低濃度から高濃度までの広い濃度範囲にわたって所望の画像濃度を得ることができる。
【0070】
また、画像濃度を調整するために変更設定するパラメータは基本的に現像ローラ44に与える直流現像バイアスVmeanだけであり、制御が簡単であるとともに、短時間にて処理を行うことが可能である。
【0071】
また、画質向上の観点から直流現像バイアスVmeanの可変範囲を制限しているので、一定の画質のトナー像を安定して形成することができる。
【0072】
さらに、直流現像バイアスVmeanの調整のみで所望の画像濃度を得られない場合には濃度調整に露光エネルギーEを補助的に使用しているので、広い範囲にわたり濃度制御を行うことが可能である。
【0073】
次に、本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態について説明する。この実施形態の装置は、第1の実施形態と比較してその現像器の構成が一部異なっているが、その他の構成および動作については同一であるのでここでは説明を省略する。図13は、この発明にかかる画像形成装置の第2の実施形態を示す図である。この実施形態においては、現像ローラ44は、金属ローラ441と、その表面に形成された抵抗層442とで構成されている。この抵抗層442は本発明の「表面層」に相当するものであって、例えば導電粉を分散させた樹脂層で形成されている。ここで、導電粉としてはアルミニウムなどの金属粉、カーボンブラック等を、また樹脂層としてはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂等を用いることができる。さらに、この抵抗層442の比抵抗は104Ωcm以上であることが好ましい。
【0074】
このように、抵抗層442を設けたことによってトナーTと金属ローラ441とが直接接触することは防止されており、これによりトナーTに作用する鏡像力は低減されて、現像ローラ44からのトナー飛翔性が向上している。これに伴って、この実施形態では、図13に示すように、規制ブレード45が現像ローラ44上のトナー層の厚みを略トナー1層に規制している。というのは、図13の符号T3に示すように、抵抗層442を設けたことで、搬送されるトナー量は少なくても現像位置DPに十分な量のトナーを飛翔させることができるようになっているからである。
【0075】
このように構成された装置においても、第1実施形態の装置と同様の処理(図7および図8)を行うことにより、直流現像バイアスVmeanの最適値を簡単な処理によって求めることが可能であり、こうして最適化された画像形成条件の下で画像形成を行うことによって、画質の良好なトナー像を安定して形成することができるのである。
【0076】
以上のように、上記した2つの実施形態の装置は、いずれも現像位置DPにおけるトナー飛翔量を大きくして、トナー密度に対して光学濃度が飽和する濃度飽和条件の下で画像形成を行うように構成されており、本発明にかかる最適化処理を適用するのに好適な装置である。この最適化処理技術は、他の手法によりトナー飛翔量を大きくした装置においても有効である。このようにトナー飛翔量を高める手法としては、上記以外にも種々のものが考えられる。
【0077】
例えば、トナーの外添剤として酸化チタンを用いると、トナー粒子と現像ローラ44表面との間で作用するいわゆる分子間力を効果的に低減することが可能となり、その結果として、トナーの飛翔性が向上する。また、トナーと現像ローラ44との分子間力の大きさを評価する指標としてトナーの流動性がある。トナーの流動性が高いトナーほど分子間力を小さくでき、本発明に用いるトナーとして好適な流動性の目安はその安息角で25°以下である。さらに、トナーの流動性はトナー母粒子に対する外添剤の被覆率に依存し、その被覆率を1以上とすることで分子間力を低減してその流動性を高めることができる。ここで、外添剤の被覆率は下式にて定義する:
(被覆率)=(D・ρ1・w)/(d・ρ2・W・π)
上式において、Dおよびdはトナー母粒子および外添剤それぞれの体積平均粒径、ρ1およびρ2はトナー母粒子および外添剤それぞれの真比重、Wおよびwはトナー母粒子および外添剤それぞれの質量、πは円周率である。
【0078】
また、同じ帯電量であればその粒径が小さいほど鏡像力が大きくなるので、鏡像力を低くするために、比較的粒径の大きなトナーを用いることも有効である。発明者らの実験によれば、その体積平均粒径が8μm以上のトナーを使用することにより、十分なトナー飛翔量を確保することができることがわかった。
【0079】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した各実施形態では、パッチ画像として1オン10オフの細線画像を用いているが、パッチ画像として用いることのできる画像はこれらに限定されるものではなく、他のパターンを有する画像であってもよい。これらは使用されるトナーの特性やパッチセンサの感度等に応じて適宜変更されるべきものである。また、パッチ画像の目標濃度も上記の数値に限定されるものではなく、適宜変更してよい。
【0080】
また、例えば、上記した各実施形態では、パッチセンサPSは、感光体2から一次転写された直後の中間転写ベルト71上でパッチ画像の濃度を検出するように構成されているが、パッチセンサPSの位置は他の位置であってもよく、また例えば感光体2上に形成されたパッチ画像の濃度を検出するようにしてもよい。
【0081】
また、上記した各実施形態は、4色のトナーを用いてカラー画像を形成可能な装置であり、各トナー色でのトナー像を中間転写ベルト71上で重ね合わせることによってフルカラー画像を形成する。そのため、画像形成条件を比較的トナー密度が高くなる条件(例えば露光エネルギーE=E1)となるように設定した場合には、各色のトナー像におけるトナー密度は適正な範囲内にあったとしても、それらを重ね合わせた結果としての最終的なトナー密度が過大となって、前述したトナーの散りや転写・定着不良などの画質低下を招くおそれがある。そこで、このようなおそれがある場合には、外部装置から与えられた画像信号に対し、フルカラーでのトナー密度を適正範囲内に規制するような信号処理をメインコントローラ11のCPU111により行うようにしてもよい。
【0082】
また、上記した実施形態における画像形成条件の最適化処理は、特に文字などの細線を主体とする画像を形成する際において好適な技術であるが、グラフィック画像等における画質をさらに向上させたいというニーズに応えるために、従来技術の最適化処理と併用するようにしてもよい。例えば、通常は上記した最適化処理により画像形成条件を文字出力に適した「標準モード」に設定しておき、ユーザがより高画質の「高精細モード」による画像形成を望む場合のみ、より細かく各パラメータを調整する最適化処理を実行するようにしてもよい。こうすることで、標準モードにおける画像形成動作の高速性と、必要に応じて実行される高精細モードにおける高画質とを両立させることができる。
【0083】
さらに、この発明は、上記したカラー画像を形成可能な装置のみでなく、これ以外にも、例えば、モノクロ画像のみを形成する装置に対しても適用することができる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、非接触現像方式の画像形成装置および画像形成方法において、像担持体とトナー担持体との間のギャップにおけるトナー飛翔量がトナー密度の変化に対する画像濃度変化の小さい濃度飽和条件となるようにトナー担持体のトナー搬送量および現像バイアスの交流成分の振幅を設定してトナー像形成を行っているが、細線画像やハーフトーン画像などの低濃度画像、すなわち画像全体に対するドットの面積率の低い画像の画質に着目し、現像バイアスの直流成分を、実際に形成した低濃度パッチ画像の濃度に基づいて最適化している。そのため、少なくとも細線画像については所定の画像濃度を確保しつつ、しかも従来のパッチ処理技術と比較してその処理を大幅に簡略化することが可能となっている。
【0085】
そして、このように現像バイアスを最適化することによって、低濃度画像の画像濃度を目標値に合わせ込むことができるとともに、高濃度画像についても比較的濃度の安定したトナー像を形成することが可能となる。そのため、この画像形成装置および画像形成方法では、広い濃度範囲にわたって、画質の良好なトナー像を安定して形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の第1の実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この画像形成装置の現像器を示す断面図である。
【図4】この実施形態における現像位置を示す図である。
【図5】現像バイアスの波形の例を示す図である。
【図6】感光体上のトナー密度とトナー像の光学濃度との関係を示す図である。
【図7】この画像形成装置の最適化処理を示すフローチャートである。
【図8】この最適化処理におけるパッチ処理を示すフローチャートである。
【図9】このパッチ処理に用いるパッチ画像の例を示す図である。
【図10】この画像形成装置においてベタ画像および細線画像を形成する場合の感光体の表面電位プロファイルの例を示す図である。
【図11】画像濃度とその形成条件との関係を示す図である。
【図12】直流現像バイアスが不適正な場合の画像の歪みを例示する図である。
【図13】この発明にかかる画像形成装置の第2の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1…制御ユニット(制御手段)
2…感光体(像担持体)
3…帯電ユニット
4K、4C、4M、4Y…現像器
6…露光ユニット(露光手段)
44…現像ローラ(トナー担持体)
71…中間転写ベルト
126…現像バイアス発生部(バイアス印加手段)
442…抵抗層(表面層)
G…ギャップ
PS…パッチセンサ
T…トナー
Claims (5)
- 帯電した像担持体の表面に光ビームを露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体に対して離間配置され、その表面にトナーを担持するトナー担持体と、
前記トナー担持体に現像バイアスを印加して、前記トナー担持体に担持されたトナーを前記像担持体表面に移動させて前記静電潜像をトナーにより顕像化するバイアス印加手段と、
前記像担持体と前記トナー担持体との間のギャップにおけるトナー飛翔量が前記静電潜像の画線部に付着するトナー密度の増加に対する光学濃度の増加がほぼ飽和する濃度飽和条件となるように、前記トナー担持体のトナー搬送量および前記現像バイアスの交流成分の振幅を設定してトナー像を形成するとともに、前記現像バイアスの直流成分を多段階に変更設定しながら、低濃度パッチ画像として細線またはハーフトーン画像からなるトナー像を各現像バイアスで形成し、その画像濃度に基づいて現像バイアスを最適化する最適化処理を実行する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。 - 前記トナーは負に帯電するものであり、前記現像バイアスは、前記トナー担持体に負電圧が加わる期間が50%より小さくなる波形を有する請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記トナー担持体に負電圧が加わる期間が30ないし48%である請求項2に記載の画像形成装置。
- 前記低濃度パッチ画像は、互いに離隔配置された複数のドット、または互いに離隔配置された複数の1ドットラインのいずれかで構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
- 像担持体の表面に光ビームを露光してその表面に静電潜像を形成するとともに、トナーを担持するトナー担持体と前記像担持体とを相互に離間させた状態で前記トナー担持体に現像バイアスを印加して前記トナー担持体から前記像担持体にトナーを移動させて前記静電潜像を顕像化する画像形成方法において、
前記像担持体と前記トナー担持体との間のギャップにおけるトナー飛翔量が前記静電潜像の画線部に付着するトナー密度の増加に対する光学濃度の増加がほぼ飽和する濃度飽和条件となるように、前記トナー担持体のトナー搬送量および前記現像バイアスの交流成分の振幅を設定してトナー像を形成するとともに、前記現像バイアスの直流成分を多段階に変更設定しながら、低濃度パッチ画像として細線またはハーフトーン画像からなるトナー像を各現像バイアスで形成し、その画像濃度に基づいて現像バイアスを最適化する最適化処理を実行する
ことを特徴とする画像形成方法。
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JP2003295531A (ja) | 2003-10-15 |
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