JP4174926B2 - 磁気記録媒体の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法およびその製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体の製造方法およびその製造装置に関し、より詳細には、プラズマCVD法において反応ガスに正の直流電圧と負の直流電圧とを交互に印加することにより、特に異常放電による歩留まりの低下を抑制するとともに、膜質をさらに向上させることによって、ドロップアウトの低減および耐食性を向上させ、信頼性を大幅に向上させることができる磁気記録媒体の製造方法およびその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体分野における高記録密度化に伴い、記録膜のみならず、保護膜の性能が製品の信頼性を決定する重要な基本技術の一つとなっている。また、価格競争に打ち勝つためには成膜を高速かつ安定に行うことも必須である。このためには、成膜レート(成膜速度)が高いプラズマCVD法が有利であることが知られている。プラズマCVD法により薄膜を形成する方法として各種の提案がされているが、膜質を向上させて信頼性を確保するために、高エネルギーでの成膜が必須となる。
【0003】
しかしながら高エネルギーでの成膜は、異常放電が発生しやすく、歩留まりの低下のみならず極微少欠陥部での微少放電による欠陥の顕在化、さらには膜質の低下をも招くことになる。
【0004】
この異常放電を防止する方法として、直流電圧に特定周波数の交流電圧を重畳する方法(例えば特開平03−224132号公報)が提案されている。これにより特定用途に対応する信頼性についてはほぼ解決済みである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら過酷な使用条件、例えばヘリカルスキャン型で高速回転の小径シリンダーを搭載したビデオテープレコーダ、常時摺動型の固定磁気ディスクなどにおいては、微少欠陥に起因するドロップアウトあるいはエラーレートが増加する。また、高温高湿環境下に保存した後にも、磁性層への密着強度および膜質の低下により、ドロップアウトおよびエラーレートが大幅に増加するという問題点がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされ、その目的とするところは、保護膜形成時に極微小欠陥の顕在化を撲滅すると共に、磁性層と保護膜との密着強度をより高めることにより、ドロップアウトを低減し、耐食性を向上した磁気記録媒体の製造方法およびその製造装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性基材上に積層した強磁性金属薄膜上に、炭化水素を含有する反応ガスからプラズマCVD法により保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、プラズマCVD法で前記保護膜を形成する際において反応ガスに正の直流電圧と負の直流電圧とを交互に印加し、前記正の直流電圧および前記負の直流電圧のうち、少なくとも正の直流電圧に、周波数が1MHz以上で、印加する前記正の直流電圧以下のパルス電圧を少なくとも1回以上重畳することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決する本発明に係る磁気記録媒体の製造装置は、非磁性基材上に強磁性金属薄膜を積層してなる磁気記録媒体基材を繰り出す繰り出しローラと、繰り出された磁気記録媒体基材をその周面上で搬送するメインローラと、メインローラの周面上で搬送される磁気記録媒体基材の強磁性金属薄膜上に保護
膜を形成するプラズマCVD装置本体と、保護膜を形成された磁気記録媒体を巻き取る巻き取りローラとを備え、プラズマCVD装置本体は、メインローラの円周面の少なくとも一部に沿って備えられた放電管と、放電管に炭化水素を含有する反応ガスを供給する原料ガス導入口と、放電管内に備えられ、反応ガスに電圧を印加するプラズマ発生用電極と、プラズマ発生用電極に接続された正電圧発振用直流電源と、プラズマ発生用電極に接続された負電圧発振用直流電源と、プラズマ発生用電極に供給される電圧を、正電圧発振用直流電源および負電圧発振用直流電源の間で交互に切り替える正負電圧切替部とを備え、前記正負電圧切替部にパルス発振部が接続されると共に、前記正負電圧切替部が正電圧発振用直流電源または負電圧発振用直流電源から供給される電圧に、前記パルス発振部から発振されたパルスを重畳することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面と共に詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る方法を実施することにより得られる磁気記録媒体20の断面図である。図1に示されるように、磁気記録媒体20は、非磁性基材1、強磁性金属薄膜2、バックコート層3、保護膜4、および潤滑剤層5からなる。より詳細に説明すると、非磁性基材1としては、ポリエチレンテレフタレートなどからなる厚み3μmから20μm程度のポリエステルフィルムを用いることが好ましい。強磁性金属薄膜2は、酸素を導入しながらコバルト合金の斜方蒸着により厚み0.1μmから0.2μm程度になるように非磁性基材1上に積層される。
【0010】
バックコート層3は、ポリエステル樹脂とカーボン粉末との混合物をメチルエチルケトン等の溶媒により希釈し、これを非磁性基材1の裏面に湿式塗布することにより設けられる。
【0011】
保護膜4は、強磁性金属薄膜2上にプラズマCVD法により形成される。このプラズマCVD法による保護膜4の形成については、後に詳述する。保護膜4上には潤滑剤層5が積層される。この潤滑剤層5は、含フッ素脂肪酸等の潤滑剤をダイアモンド状炭素膜からなる保護膜4上に湿式塗布または真空蒸着することにより設けられる。なお、本明細書において用いられる用語「ダイアモンド状炭素膜」とは、ダイアモンドの炭素骨格を格子の一部に有すると共にアモルファス(非晶質)の水素を含有する炭素からなる膜を指す。
【0012】
以下、プラズマCVD装置を示す図2を用いて、プラズマCVD法による保護膜4の形成について詳述する。非磁性基材1のそれぞれ表面および裏面に強磁性金属薄膜2およびバックコート層3を積層してなる磁気記録媒体基材20aは、繰り出しローラ21に巻回されている。この磁気記録媒体基材20aは、その張力を制御されながら繰り出しローラ21から送り出される。次いで、磁気記録媒体基材20aはパスローラ22上を通過し、メインローラ23に送られる。メインローラ23上では、磁気記録媒体基材20aが一定速度で搬送されるように速度制御されている。メインローラ23上で磁気記録媒体基材20aにプラズマCVD法により保護膜4を形成する方法については後述する。保護膜4を形成された磁気記録媒体20は、メインローラ23をほぼ一回転し、次いでパスローラ24上を通過して巻き取りローラ25に巻き取られる。なお、巻き取りローラ25に巻き取られる際にも、繰り出しローラ21と同様に、磁気記録媒体20はその張力を制御されながら巻き取られる。
【0013】
メインローラ23の下方には、保護膜4を形成するための放電管26がメインローラ23の円周面に沿って備えられている。この放電管26内には、プラズマ発生用電極27が備えられている。また、放電管26は原料ガス導入口28を備え、この原料ガス導入口28から炭化水素を含有する反応ガスが導入される。
【0014】
反応ガスは、炭化水素のみを含んでいてもよく、炭化水素以外に水素、窒素、酸素、アルゴン等の添加ガスを含んでいてもよい。また、用いられる炭化水素は1種類であってもよく、2種類以上の炭化水素を混合して用いても良い。炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの飽和炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、アセチレン等の不飽和炭化水素を用いることができる。本発明においては、比較的カーボン数が多く、成膜レートが高く、かつ気化しやすいという理由から、ヘキサンを用いることが好ましいが、その他の材料についても成膜条件(例えば、ガス圧、電圧など)を最適化し、さらに気化条件を適正化することにより、ヘキサン以外のものを使用することができる。また、添加ガスが用いられる場合には、安価で、かつ電離した電子が炭化水素ガスをさらに分解することによって膜質がダイアモンドに近づくと共に、成膜レートも向上するという理由から、アルゴンを用いることが好ましい。放電管26内に導入される反応ガスの圧力は0.001Torrから3Torr程度、好ましくは0.01Torrから1.0Torr程度である。
【0015】
また、プラズマ発生用電極27には、正負電圧切替部31を介して正電圧発振用直流電源29と負電圧発振用直流電源30とが接続されている。正電圧発振用直流電源29はリップル率10%以下で最大7kVの電圧を発振することができる。同様に、負電圧発振用直流電源30はリップル率10%以下で最大−3kVの電圧を発振することができる。正負電圧切替部31は、正電圧発振用直流電源29と負電圧発振用直流電源30とから発振される電圧を高速で切り替えることができる。この高速切替にはIGBTがよく用いられ、ダイオード、コンデンサ等により、オーバーシュートを10%以下に抑制されると共に、リンギングをも最小に抑制している。これらの放電管26、プラズマ発生用電極27、原料ガス導入口28、正電圧発振用直流電源29、負電圧発振用直流電源30、および正負電圧切替部31からプラズマCVD装置本体Xが構成されている。
【0016】
上述した繰り出しローラ21、パスローラ22、メインローラ23、パスローラ24、巻き取りローラ25、放電管26は、図2に示すように、真空漕32内に備えられており、この真空漕32は、真空ポンプ33により真空排気される。真空漕32内の真空度および放電管26に供給される反応ガスの圧力(すなわち、放電管26内の圧力)を考慮して、真空ポンプ33の容量が選択される。真空漕32内の圧力は約1×10-4Torrとすることが好ましい。
【0017】
反応ガスに印加する直流電圧について図3を用いて説明する。図3は、放電管26に備えられたプラズマ発生用電極27を介して反応ガス32に印加される電圧の波形を示す。図3において、縦軸は印加電圧であり、横軸は時間である。また、Tは交互に印加される正の直流電圧と負の直流電圧との1サイクルの周期を示し、微小異常放電の発生頻度およびダイアモンド状炭素膜からなる保護膜4の膜質の関係から、周波数換算で1kHz以上100kHz以下であり、5kHz以上75kHz以下が好ましく、10kHz以上50kHz以下がより好ましい。周期Tが周波数換算で1kHz未満である場合には負荷のC(キャパシタンス)の影響で異常電流が発生したときに逆方向への電子の流れが発生するまでの時間が長いため異常放電が生じて成膜ができない場合があり、逆に周期Tが周波数換算で100kHzを越える場合には、高電圧の切換が、負荷のC(キャパシタンス)および配線のL(リアクタンス)の関係上、うまく整合せず、成膜に支障を来す場合がある。
【0018】
V1は正電圧発振用直流電源29から供給される正の直流電圧の電圧値(以下、単に正電圧という)、V2は負電圧発振用直流電源30から供給される負の直流電圧の電圧値(以下、単に負電圧という)である。成膜に有効な正電圧を十分に供給すると共に、微小異常放電と膜質とのバランスから、V1は0.4kV以上5kV以下が好ましく、0.6kV以上3.5kV以下がより好ましく、1.0kV以上3.0kV以下がさらにより好ましい。同様の理由により、V2は−0.05kV以上−2kV以下が好ましく、−0.1kV以上−1.0kV以下がより好ましく、−0.2kV以上−0.8kV以下がさらにより好ましい。
【0019】
t1は正電圧発振時間、t2は負電圧発振時間を示し、ドロップアウトを低減するという観点から、正電圧発振時間t1は、負電圧発振時間t2の2倍以上が好ましい。なお、本明細書においては、正電圧発振時間t1と負電圧発振時間t2との比を「正負発振比」という場合がある。ただし、回路の関係上、正電圧発振時間t1を負電圧発振時間t2の100倍以上とすることは困難である。Tsは最大負電圧から最大正電圧までの立ち上がり時間であり、ドロップアウトを低減し、耐食性を高めるという膜質の関係上、負電圧発振時間t2の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましいが、回路構成の関係上、負電圧発振時間t2が短い場合には限度があり、約0.5μsecより短い時間とすることは困難である。
【0020】
以上のように構成された磁気記録媒体基材20aに保護膜4を形成するプラズマCVD法について、図2および図3を参照してその動作を述べる。
【0021】
まず、真空漕32を真空ポンプ33により排気し、規定の真空度(1×10-4Torr)に到達した後、非磁性基材1上に強磁性金属薄膜2を積層してなる磁気記録媒体基材20aを繰り出しローラ21から繰り出してメインローラ23に密着させて搬送する。なお、磁気記録媒体基材20aは繰り出しローラ21から巻き取りローラ25に向けて連続的に送り出されている。
【0022】
メインローラ23に密着した磁気記録媒体基材20aは、プラズマCVD装置本体Xに到達する。放電管26内の反応ガスには、正負電圧切替部31により予め設定された時間に応じて正電圧発振用直流電源29と負電圧発振用直流電源30との間で切り替えられた正負交互の直流電圧がプラズマ発生用電極27を介して印加されており、これにより放電管26内のプラズマ発生用電極27からプラズマのイオン電流が発生し、加速されて放電管26を出て磁気記録媒体基材20aの強磁性金属薄膜2上に積層し、これによりダイアモンド状炭素膜からなる保護膜4が形成される。
【0023】
このように、プラズマ発生用電極27を介して反応ガスに、特定の周期で正負交互の直流電圧が印加されることによって、プラズマ内部における一定方向への電子の流れが防止される(第2コメントをご覧下さい)。これにより、極微小欠陥への微小異常放電が発生しないため、欠陥の顕在化を防止することができ、ドロップアウトを抑制することができる磁気記録媒体20を得ることができる。さらに、成膜に有効な正電圧が印加される時間が負電圧と比較して長いため、ダイアモンド状の炭素骨格の整合性、硬度、強磁性金属薄膜2との間の密着強度などの膜質に優れた保護膜4を形成することができ、磁気記録媒体20の耐食性を向上させることができる。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本実施の形態2において用いられるプラズマCVD装置X’の概略図である。実施の形態1において用いられるプラズマCVD装置X(図2)と異なる点は、正負電圧切替部31にパルス発振部41が接続されると共に、正負電圧切替部31が正電圧発振用直流電源29または負電圧発振用直流電源30から供給される電圧に、パルス発振部41から発振されたパルスを重畳する機能を有することである。なお、以下、説明を容易にするために、このような正負電圧切替部31を「パルス重畳・正負電圧切替部42」と言うことにする。パルス発振部41から発振されたパルスは、パルス重畳・正負電圧切替部42において正の直流電圧および負の直流電圧に重畳される。
【0025】
この重畳について、放電管26に備えられたプラズマ発生用電極27を介して反応ガスに印加される電圧の波形を示す図5を用いてより詳細に説明すると、正電圧V1に正パルス電圧Vp1が、負電圧V2に負パルス電圧Vp2がそれぞれTp1およびTp2の時間、重畳される。ドロップアウトをより低減し、膜質と微小異常放電とのバランスから、これらの正負パルス電圧Vp1およびVp2は、それぞれ正負電圧V1およびV2以下であり、正負パルス発生時間Tp1およびTp2はいずれも1μsec以下(周波数換算で1MHz以上)であることが好ましい。
【0026】
このように、正電圧V1および負電圧V2にそれぞれ正負パルス電圧Vp1およびVp2を重畳することにより、プラズマ放電により生成されたイオン、ラジカル等が強磁性金属薄膜2に対してより強力に打ち込まれるため、強磁性金属薄膜2とダイアモンド状炭素膜からなる保護層4との間の密着強度をより確保することができ、これによりドロップアウトを低減させると共に耐食性をさらに向上させた磁気記録媒体20を得ることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例と共により詳細に説明するが、以下の実施例は例示の目的にのみ用いられ、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を限定するために用いられてはならない。
(実施例1)
発明の実施の形態1に対応する実施例1においては、厚み6μmのポリエチレンテレフタレートからなる非磁性基材1の一方の面に、斜方蒸着法によりCo−Oからなる厚み0.12μmの強磁性金属薄膜2を積層した。また、非磁性基材1の他方の面には、トルエン、メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノンの混合液に希釈したポリエステル樹脂、カーボン粉末等を湿式塗布し、厚み0.5μmのバックコート層3を積層した。
【0028】
次いで、図2に示すプラズマCVD装置Xを用いて、1:1の圧力比でヘキサンガスとアルゴンガスとを含有し、総ガス圧0.8Torrの反応ガスを原料ガス導入口28から放電管26に供給した。この放電管26内に備えられたプラズマ発生用電極27に、それぞれ正電圧発振用直流電源29および負電圧発振用直流電源30から正電圧3kV、負電圧−0.8kVを印加した。電圧について詳細により説明すると、正電圧発振時間t1と負電圧発振時間t2との比(正負発振比)は1:1とし、周期Tを周波数換算で0.9kHz〜101kHzの範囲で段階的に切り替えることとし(詳細は表1の周期の欄を参照)、最大負電圧から最大正電圧に到達する立ち上がり時間Tsを負電圧発振時間t2の1/5とした。このように反応ガスに交互に正の直流電圧および負の直流電圧を交互に印加することによって、磁気記録媒体基材20aの強磁性金属薄膜2上にダイアモンド状炭素膜からなる保護層4を形成した。保護層4の厚みは10nmであった。最後に、この保護層4上に含フッ素脂肪酸からなる潤滑剤層5を積層し、磁気記録媒体20のサンプル101〜109を作製した。
【0029】
また、正電圧と負電圧との周期Tを周波数換算で30kHzとし、正電圧発振時間t1と負電圧発振時間t2との比を1.5:1〜20:1(詳細は表1の正負発振比の欄を参照)の範囲で段階的に切り替えることとしたこと以外は、サンプル101〜109と同様にして磁気記録媒体20のサンプル111〜115を作製した。
【0030】
さらに、正電圧発振時間t1と負電圧発振時間t2との比を5:1とし、正電圧と負電圧との周期Tを周波数換算で30kHzとし、最大負電圧から最大正電圧に到達する立ち上がり時間Tsを負電圧発振時間t2の1/1〜1/20の範囲で段階的に切り替えることとした(詳細は、表1の立ち上がり時間/負電圧発振時間の欄を参照)こと以外は、サンプル101〜109と同様にして磁気記録媒体20のサンプル121〜124を作製した。
【0031】
(実施例2)
発明の実施の形態1に対応する実施例2においては、正負発振比t1:t2を5:1とし、周期Tを周波数換算で30kHzとし、3kVの正電圧V1の半分の電圧にあたる1.5kVの正パルス電圧Vp1が、正電流V1に1回、重畳された。正パルス電圧Vp1について詳細に説明すると、その発振時間Tp1を周波数換算(すなわち、Tp1の逆数)で0.9MHz〜5MHzの範囲で段階的に切り替えることとした(詳細は、表2の正パルス周波数の欄を参照)こと以外は、実施例1と同様に磁気記録媒体20のサンプル201〜205を作製した。なお、サンプル204を作製する際には、上記の正パルス電圧Vp1だけでなく、−0.8kVの負電圧V2の半分の電圧にあたる−0.4kVの負パルス電圧Vp2を、負電圧V2に1回、重畳した。この負パルス電圧の発振時間Tp2は周波数換算(すなわち、Tp2の逆数)で2MHzであった。
【0032】
また、正パルス電圧Vp1の発振時間Tp1を周波数換算で2MHzとし、正パルス電圧Vp1の値を正電圧V1に対して1.1倍〜1/5倍の範囲で段階的に切り替えることとした(詳細は、表2の正パルス電圧の欄を参照)こと以外は、サンプル201〜205と同様にして磁気記録媒体20のサンプル211〜214を作製した。
【0033】
さらに、周波数換算で2MHzの発振時間Tp1を有する正パルス電圧Vp1を正電流V1に2回または3回重畳したこと(詳細は表2の正パルス周波数の欄を参照)以外は、サンプル204と同様にして磁気記録媒体20のサンプル221〜223を作製した。なお、サンプル221を作製する際には、負パルス電圧Vp2の値を負電圧V2に対して1/2とし、サンプル222を作製する際には、負パルス電圧Vp2を負電圧V2と同じにした。
【0034】
(比較例1〜3)
負電圧V2を0とし、0.9kVの直流電圧にそれぞれ1kHz、30kHz、および100kHzの交流を重畳させ、ピーク電圧を実施例1のサンプル101と同様に3kVとしたこと以外は、実施例1とほぼ同様にして比較用のサンプル1〜3を得た。
【0035】
(サンプルの評価)
次に、各サンプルの評価について説明する。各実施例および比較例においてダイヤモンド状炭素膜からなる保護膜4を強磁性金属薄膜2上に形成した磁気記録媒体20を幅6.35mmに切断した後、さらに長さ10m程度にカットして、この磁気記録媒体20をDVCカセットに装着した。改造した市販のDVCカメラ一体型ビデオテープレコーダにこのDVCカセットを装着し、3μsec、10dBのドロップアウトを23℃70%環境下で10分間測定した。1分間のドロップアウトの個数を測定値とし、300個未満を合格とした。耐食性の評価については、長さ約70m程度にカットした磁気記録媒体20を、ドロップアウト測定と同様のDVCカセットとビデオテープレコーダとを用いて、23℃70%環境下で信号を記録し、60℃90%環境下に10日放置した後、23℃10%環境下でのスチル寿命を測定し、全て10分以上を合格した。
【0036】
また、物性の測定方法としてのビッカース硬度は、シリコンウェハー上に各サンプルと同一条件で厚み約3μmとなるように成膜したサンプルを測定した。ダイヤモンド性の測定は、切断した磁気記録媒体20に対してそのままラマン分光分析を行い、得られたラマンスペクトルの1300cm-1〜1400cm-1のピークの面積強度を(IA)、さらに1500cm-1〜1600cm-1のピークの面積強度を(IB)とし、(IA/IB)の値を測定した。なお、この値が小さい程ダイヤモンド性が高い。
【0037】
以下、各実施例および比較例における正負発振比等の作製条件およびサンプルの評価結果を表1〜表3に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004174926
【0039】
表1は実施例1において作製した磁気記録媒体20の各サンプルの正負発振比等の作製条件、硬度等の物性の測定値、ならびにビデオテープレコーダを用いて実用性能を評価した時のドロップアウト数および耐食性を示している。
【0040】
【表2】
Figure 0004174926
【0041】
表2は実施例2において作製した磁気記録媒体20の各サンプルの正負発振比等の作製条件、硬度等の物性の測定値、ならびにビデオテープレコーダを用いて実用性能を評価した時のドロップアウト数および耐食性を示している。
【0042】
【表3】
Figure 0004174926
【0043】
表3は比較例において作製した磁気記録媒体20の各サンプルのの正負発振比等の作製条件、硬度等の物性の測定値、ならびにビデオテープレコーダを用いて実用性能を評価した時のドロップアウト数および耐食性を示している。
【0044】
表1のサンプル101〜109は、表3の比較例と比較してドロップアウト数および耐食性において大幅に改善されていることが明らかである。
【0045】
また、表1のサンプル111〜115においては、正の電圧の発振時間を長くすることによって成膜レートの向上が認められるばかりでなく、正電圧発振時間t1が負電圧発振時間t2の2倍以上である場合には、ダイヤモンド性がさらに高くなり、さらなるドロップアウトの低減と耐食性の向上とが認められる。
【0046】
さらに、表1のサンプル121〜124においては、最大負電圧から最大正電圧に到達する立ち上がり時間Tsが、負電圧発振時間t2の1/2以下である場合には、サンプル101〜109、111〜115と比較して、さらに耐食性が向上していることが認められる。
【0047】
表2の各サンプルについては、正パルス電圧Vp1を正電流V1に重畳することにより、さらに耐食性が向上していることが認められる。特に、負パルス電圧Vp2を負電流V2に重畳したサンプル204においては、特に耐食性が向上していることが認められる。また、サンプル211〜214からは、正パルス電圧Vp1を小さくすればするほど、耐食性が向上することが認められる。さらに、サンプル221〜223からは、正パルス電圧Vp1の重畳回数を増やしたり、または負パルス電圧を小さくすると、ドロップアウトをさらに低減できることが認められる。
【0048】
以上の結果より、正電圧と負電圧とを交互に印加すること、特に特定の立ち上がり時間で特定の時間(特定の周波数)発振すること、および正電圧のみまたは正・負双方の電圧にパルスを重畳することによって、強磁性金属薄膜2と保護膜4との密着性が高くなり、保護膜4自体の緻密性が高くなるとともに、微少異常放電も低減されて、磁気記録媒体としてドロップアウトの低減および耐食性が向上するということが理解される。
【0049】
【発明の効果】
プラズマCVD法において反応ガスに正の直流電圧と負の直流電圧とを交互に印加する本発明により、特に異常放電による歩留まりの低下を抑制するとともに、膜質をさらに向上させることによって、ドロップアウトの低減および耐食性を向上させ、信頼性を大幅に向上させることができる磁気記録媒体の製造方法およびその製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気記録媒体20の断面図
【図2】本発明の実施の形態1および実施例1におけるプラズマCVD成膜方法の一例として、正・負の直流電圧を交互に印加するプラズマCVD装置の概略図
【図3】本発明の実施の形態1および実施例1における電圧の波形図
【図4】本発明の実施の形態2および実施例2におけるプラズマCVD成膜方法の一例として、正負の直流電圧を交互に印加すると共に、かつ1MHz以上のパルスを電圧に重畳するプラズマCVD装置の概略図
【図5】本発明の実施の形態2および実施例2における電圧の波形図
【符号の説明】
1 非磁性基材
2 強磁性金属薄膜
3 バックコート層
4 (ダイヤモンド状炭素膜からなる)保護層
5 潤滑剤層
20 磁気記録媒体
20a 磁気記録媒体基材
21 繰り出しローラ
22 パスローラ
23 メインローラ
24 パスローラ
25 巻き取りローラ
26 放電管
27 プラズマ発生用電極
28 原料ガス導入口
29 正電圧発振用直流電源
30 負電圧発振用直流電源
31 正負電圧切替部
32 真空槽
33 真空ポンプ
41 パルス発振部
42 パルス重畳・正負切替部

Claims (2)

  1. 非磁性基材上に積層した強磁性金属薄膜上に、炭化水素を含有する反応ガスからプラズマCVD法により保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記プラズマCVD法で前記保護膜を形成する際において、前記反応ガスに正の直流電圧と負の直流電圧とを交互に印加し、
    前記正の直流電圧および前記負の直流電圧のうち、少なくとも正の直流電圧に、周波数が1MHz以上で、印加する前記正の直流電圧以下のパルス電圧を少なくとも1回以上重畳することを特徴とする、磁気記録媒体の製造方法。
  2. 非磁性基材上に強磁性金属薄膜を積層してなる磁気記録媒体基材を繰り出す繰り出しローラと、
    前記繰り出された磁気記録媒体基材をその周面上で搬送するメインローラと、
    前記メインローラの周面上で搬送される磁気記録媒体基材の強磁性金属薄膜上に保護膜を形成するプラズマCVD装置本体と、
    前記保護膜を形成された磁気記録媒体を巻き取る巻き取りローラと
    を備えた磁気記録媒体の製造装置であって、
    前記プラズマCVD装置本体は、
    前記メインローラの円周面の少なくとも一部に沿って備えられた放電管と、
    前記放電管に炭化水素を含有する反応ガスを供給する原料ガス導入口と、
    前記放電管内に備えられ、前記反応ガスに電圧を印加するプラズマ発生用電極と、
    前記プラズマ発生用電極に接続された正電圧発振用直流電源と、
    前記プラズマ発生用電極に接続された負電圧発振用直流電源と、
    前記プラズマ発生用電極に供給される電圧を、前記正電圧発振用直流電源および負電圧発振用直流電源の間で交互に切り替える正負電圧切替部と
    を備え
    前記正負電圧切替部にパルス発振部が接続されると共に、前記正負電圧切替部が正電圧発振用直流電源または負電圧発振用直流電源から供給される電圧に、前記パルス発振部から発振されたパルスを重畳することを特徴とする、磁気記録媒体の製造装置。
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