JP4174244B2 - 画像撮影装置及びその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体像を電気的に撮影する画像撮影装置、特に撮影者の著作権を保護することが可能な画像撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年急速に普及しつつあるディジタルスチルカメラおよびディジタルビデオカメラは、CCDセンサなどの撮像素子によって撮像した画像を、ディジタルフォーマットの画像データに変換してメモリカードなどの記録媒体にディジタル記録する装置である。
【0003】
これらディジタル画像データは、コンピュータによって容易に修正・加工・印刷等ができ、一般家庭でも利用されるに至っている。同時にネットワークの発達、特にインターネットの発達により、不特定多数の間でディジタル画像データを流通させることも容易となっている。
【0004】
このような背景のもとディジタルスチルカメラおよびディジタルビデオカメラ等の画像記録装置の必要性は飛躍的に高まりつつある。
【0005】
一方で、パーソナルコンピュータ等の普及によるデジタルデータの複製の容易化およびコスト低下に加え、インターネットへのアクセスの容易化によるデジタルデータの配布の容易化およびコスト低下によって、一般の個人であっても、私的使用の範囲を超えて容易かつ安価にデジタルデータの複製物を作成し、配布することが可能である。したがってディジタル画像データの取り扱いに関しては、個人が趣味の範囲で楽しむ撮影程度であれば大きな問題にならないものであっても、業としてディジタル画像の流通を行う者にとっては、非権利者が容易に複製・配布等できてしまうことは看過しがたいこととなっている。
【0006】
このように撮影者等の著作権者の権利保護が十分になされていないという問題が生じており、撮影されたディジタル画像データに対し、著作権を保護するための方策が強く望まれている。
【0007】
このディジタル画像データ等の著作権保護の実現を目的として「電子透かし(Watermark)」という技術が広く研究されている。同技術は、ディジタル画像データおよびディジタル音声データ等の対象となるデータ部分に、その目的に応じて人間に知覚されないように、もしくは積極的に知覚されるように、別情報を重ね合わせて埋め込む技術であり、必要に応じて正当な権利や資格を有する利用者のみが、埋め込まれた別情報を取り出せたり、または除去できるようにされている。
【0008】
これらの技術は、特開平10−290359号公報および特開平10−150517号公報、米国特許第5530759号(特開平8−241403号公報)等に詳しい。
【0009】
また、一方でプライバシーやセキュリティ保護等の観点から特定の個人を認証するための技術が広く研究されている。
【0010】
個人を認証する方法として古くから一般的に行われている方法としては、その特定の人物のみが所持しうる鍵やカードや印鑑によって確認を行う方法や、その特定の人物のみが知りうるパスワードや暗証番号の入力によって確認を行う方法などが知られている。これらの方法においては、盗難・偽造・情報漏洩等により、他人がその特定の人物になりすます事が比較的容易であるという根本的な問題を抱えている。
【0011】
そこで、これらの方法に替えて認証を行うその特定人物の身体的な特徴を用いる、バイオメトリクス個人認証法が注目を集めるようになった。
【0012】
この身体的特徴とは、個々人により固有であり、ランダム性を備え、長時間変化がないことなどが要求されるが、個人認証を行う装置への展開を考慮すると、認証に必要なデータを取得する時間や装置のコスト等の用件が加味され、現在では指紋・掌紋・虹彩模様・声紋・顔貌を身体的特徴として用いることが広く利用されつつある。
【0013】
以下、虹彩模様を用いた個人認証の原理について、特表平8−504979に従って概略を説明する。
【0014】
図9は、被験者がある特定の個人であるかを判断するまでのフローチャートである。
【0015】
まず照明やフォーカスの制御を行って被験者の眼球画像が取得される(1101)。眼球像が取得されると、瞼・睫が検出され、さらに図10のように、瞳孔−虹彩の境界21・虹彩の外側境界22が検出され、23のような分析帯と呼ばれる領域に分割されて座標系が設定される(1102)。
【0016】
次に分析帯の濃淡変化の抽出を主としたイメージ解析を行い(1103)、これをもとにコード化を行う(1104)。コード化によって生成される個人認証コードは、1,0で示されるビットのある一定長の羅列によって表現される。
【0017】
このようにコード化された個人認証コードを、予め特定の個人から取得されたテンプレートとしての個人認証コード1107とマッチングを行う(1105)。つまり、両者の一致度をある評価関数に従って算出し、一定の閾値を超えた場合には両者が同一人物からサンプリングされた個人認証コードであるという判定を行う(1106)。
【0018】
また、指紋・掌紋であれば、対象となる指画像・掌画像を取得し、指紋・掌紋を構成する隆線の特徴点である端点や分岐点をもとにコード化を行い、同一人判定のマッチングを行う。
【0019】
上記技術を用いて、特開2000−196998においては、目の情報を直接電子透かしとして撮影画像に埋め込む方法が開示されている。
【0020】
この方法によると、被写体の撮影とほぼ同時に取得される眼球像から、虹彩模様や網膜模様を抽出し撮影画像に埋め込むため、撮影画像と撮影者情報が一対一に対応し、かつ、第三者が介入する余地がないので、著作権情報としては高い信頼性を持つ点で有効である。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記方法によると被写体の撮影とほぼ同時に眼球像を取得する作業が必要であり、さらには眼球像から虹彩模様や網膜模様を抽出し、画像処理等によるコード化手段によって個人認証コードへ変換する作業も必要である場合がある。この場合、デジタルカメラ等のディジタル画像撮像装置においては、シーケンス上撮影時の被写体像処理に最も負荷が掛かるタイミングであるため、これら眼球像処理もあわせると、全体の処理に膨大な時間がかかる。そのため、次の撮影が可能となるまで撮影者は待たされることとなり、シャッターチャンスを逃す恐れもある。
【0022】
また、撮影ごとに撮影者の眼球像を取得する場合、取得の瞬間において撮影者が目を閉じてしまったり、睫や髪の毛が掛かってしまったりすることが往々にして起こりうることを考慮すると、必ずしも眼球像が適切に取得できるとは限らず、さらには、例えば屋内などの低照度下での撮影では撮影者の瞳孔は開くことになるので、相対的に虹彩模様の面積は小さくなり、精確な個人認証コードに変換することが不可能になるといった問題もある。
【0023】
従って、被写体の撮影と同時に虹彩情報を取得する方法は、相応のデメリットとリスクを負う必要がある。
【0024】
一方、撮影と同時には撮影者の生体情報を取得せずに、撮影された画像に生体情報を記録するには、予め画像撮影装置に撮影者が何らかの方法で自らの生体情報を登録する必要があるが、使用の度に登録作業を繰返すことは撮影者にとって煩雑であり、しかし一度の登録作業のみで更新をおこなわないと、後に該画像撮影装置を使用する他の撮影者まで同一の生体情報が記録されることになってしまう。そうすると、撮影画像と撮影者を結びつけて著作情報を記録するという目的が達成されない。
【0025】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、撮影画像における撮影者の著作権を保護するために、撮影者の生体情報を精度よく取得し、該生体情報を確実に撮影画像に記録できる画像撮影装置を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本出願に係る請求項1の発明は以下の手段を構成する。すなわち、ファインダーを有し、撮像素子によって被写体像を撮影する画像撮影装置であって、前記ファインダーにおいて前記画像撮影装置の焦点検出領域を撮影者に知らしめるための発光手段を点灯させて撮影者の虹彩情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された撮影者の虹彩情報を着脱可能な記録媒体に記録する虹彩情報登録手段と、前記取得手段により新たに取得した虹彩情報と、装着された前記記録媒体に記録された虹彩情報とを照合する照合手段と、前記虹彩情報登録手段によって撮影者の虹彩情報が記録された記録媒体が装着されている場合であって、前記照合手段により双方の虹彩情報が一致した場合に、撮影された被写体画像とあわせて前記記録媒体に記録された虹彩情報を記録する被写体記録手段とを有する。
【0037】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るディジタルスチルカメラの正面斜視図である。本実施形態においては、取得される生体情報画像は、虹彩画像である場合を例に説明する。
【0038】
102はシャッター釦であり、押下によって撮影開始の信号が発生し、撮像素子によって被写体像の撮影が開始される。104は撮影情報表示用液晶であり、シャッター速度、絞り値あるいは設定した撮影モード等を表示させることができる。105は各種設定を行うための設定釦群であり、106は撮影モードを切り替えるためのモードダイヤルである。107はカメラを把持するためのグリップ部であり、この一部が側部カバー108で開閉可能となっており、後述のメモリカード516およびIDカード518を着脱できるようになっている。
【0039】
図2は、本実施形態に係るディジタルスチルカメラの断面要部概略図である。201は撮影レンズ群であり、便宜上2枚のレンズで示したが、実際には多数のレンズから構成されている。202は主ミラーで、ファインダ系による被写体像の観察状態と被写体像の撮影状態に応じて撮影光路へ斜設、あるいは退去される。203はサブミラーで、主ミラー202を透過した光束をカメラボディの下方に位置する焦点検出装置205へ向けて反射する。204はシャッターであり、504はCCDあるいはCMOSエリアセンサなどによる撮像素子である。
【0040】
206は、撮影レンズ群201の予定結像面に配置されたピント板、207はファインダ光路変更用のペンタプリズム、208、209は各々被写体像の輝度を判定するための結像レンズと測光センサである。
【0041】
上記ペンタプリズム207の射出後方には分光器210aを備えた接眼レンズ210が配置され、撮影者によるピント板206の観察に使用される。分光器210aは、例えば可視光を透過し、赤外光を反射するダイクロイックミラーより成っている。
【0042】
211は受光レンズであり、113はCCD等の撮像素子を用いた虹彩検出用センサで、受光レンズ211に関して所定の位置にある撮影者の瞳孔近傍216と共役になるように配置されている。213a、213bは、撮影者の瞳孔近傍を照明するための赤外発光ダイオードである。
【0043】
撮影者の虹彩は、分光器210aによって反射され、受光レンズ211で結像されて、虹彩検出用センサ上に像を形成し画像化される。
【0044】
図3は、本実施形態のディジタルスチルカメラの電気ブロック図である。カメラ制御用マイクロコントローラ(以下、「MCU」と略記する)500には、虹彩検出用センサ113をはじめ、瞳孔近傍照明用の赤外発光ダイオード213を駆動するためのIRED駆動回路114、信号入力回路501、液晶駆動回路502等のカメラ制御回路およびセンサが接続されている。
【0045】
カメラ制御用MCU500内には、カメラ動作を実行するプログラムを格納したROM500A、変数を記憶するためのRAM500B、補正データやその他パラメータを記憶するためのEEPROM(電気的消去・書き込み可能メモリ)500Cが内蔵されている。
【0046】
虹彩検出用センサ113は、撮影者の虹彩を検出し、その電気信号をカメラ制御用MCU500に伝達する。カメラ制御用MCU500は、伝達された電気信号をA/D変換し、その像データを順次RAMに格納していく。
【0047】
信号入力回路501は、カメラの各種スイッチ群の状態をカメラに伝達する回路であり、前述のシャッター釦102、設定釦群105、モードダイヤル106の信号もこの回路を介してMCUに伝達される。
【0048】
液晶駆動回路502は、MCU500からの指示に従って、カメラの外側に配されている撮影情報表示用液晶104に、各種情報を表示させることができる。
【0049】
カメラ制御用MCU500は、信号線503でディジタルMCU507に接続され、ディジタルMCU507はカメラ制御用MCU500の指示に従ってディジタル画像の撮影動作を制御する。ディジタルMCUは、フラッシュメモリ509に予め格納されているプログラムに従って撮影に係わる各種デバイスの制御を行う。シャッター釦102の押下によって撮像素子504上に被写体像が形成され、その信号はA/D変換器505でA/D変換器505でA/D変換され、信号処理IC506で色補間処理やフィルタリング処理を行った後、データバス514を介して、一旦DRAM511に格納される。
【0050】
DRAMに格納されたディジタル画像データは、必要に応じてカラーモニタ508に表示される。
【0051】
ディジタル画像データは、後述する方法で著作権情報と一体化された後、JPEG−IC510でデータ圧縮され、メモリカード・インタフェース(以下I/Fと略する)513を介して着脱可能なメモリカード516に書き込まれる。また、画像データはシリアルI/F512を介して、シリアルバス515にも出力できる。
【0052】
518は撮影者が個別に管理する着脱可能なIDカードであり、ここに撮影者の虹彩情報が記録される。この虹彩情報はIDカードI/Fを介してディジタルMCU507と通信可能である。
【0053】
図4は、本実施形態にかかるディジタルスチルカメラにおける、撮影者の虹彩情報を登録する処理の流れを表すフローチャートである。ステップ100において、虹彩登録を開始させるために、モードダイヤル106を「REG」ポジションに合わせる。まずこのポジションについて説明する。
【0054】
図5は図1のモードダイヤル106をカメラ上面より見たときの詳細図である。モードダイヤル106はカメラ本体に印された指標130に表示を合わせることによって、その表示内容で撮影モードが設定される。106aはカメラを不作動とするロックポジションであり、いわゆる電源オフの状態である。このロックポジションより他のポジションへモードダイヤルを回転させることによりカメラは動作を始める。106bはカメラが予め設定した撮影プログラムによって制御される自動撮影モードのポジション、106cは使用者が撮影内容を設定できるマニュアル撮影モードで、プログラムAE、シャッター優先AE、絞り優先AE、被写体深度優先AE、マニュアル露出の各撮影モードをもっている。ここで106dが撮影者の虹彩情報の登録を行なう虹彩登録モードとなる「REG」ポジションである。
【0055】
図4に戻り、撮影者がステップ100において、モードダイヤル106を「REG」ポジションに合わせると、ステップS101に移り、これから行う動作が新規に虹彩を登録するのか、それとも既存の虹彩データの情報を消去するのかの選択をおこなう。具体的には、撮影者は情報表示用液晶104およびファインダー内LCD214に表示される指示に従って設定釦群を操作する。既存の虹彩データの情報を消去する場合は、ステップS102に進み、既に存在している虹彩データに関する一切を消去し終了する(S110)。
【0056】
ここで撮影者がファインダー内を観察する様子について図6を用いて説明する。図6において206a〜206eは、ピント板206上に記された焦点検出領域である。カメラはこの領域の任意の1領域に対応する空間において焦点の検出が可能であり、選択された1領域を撮影者に知らしめるために、高輝度発光ダイオード215によって発光させる。この任意の1領域が発光されることを以下スーパーインポーズと呼ぶ。214はファインダー内LCDであり、この表示によって、カメラがどのような設定状態にあるのか撮影者は知ることができる。
【0057】
ステップS101において新規虹彩登録が選択されると、ステップS103へ移り実際に撮影者の虹彩を取得するルーチンに入る。現在の状態が新規に虹彩データの取得中であることが、図6で示すようにファインダー内LCD214に表示され、同時に中央の焦点検出領域である206aがスーパーインポーズされる。ステップS104において撮影者はこの中央焦点検出領域206aを注視する。注視した状態でシャッター釦102を押し下げると(S105)、カメラは、分光器210aによって反射され受光レンズ211で結像されて虹彩検出用センサ113上に形成した撮影者の虹彩像を取り込む(S106)。取り込まれた虹彩画像は、画像そのものとして、もしくは図9のステップS1102〜S1104の手順により個人認証コードにまで処理されて、虹彩情報として記録される。
【0058】
ここで、ステップS107において、撮影者の個人データとして満足できる、すなわち同一人判定ができる程度に虹彩情報が良好に取得されているかの判断がおこなわれる。もし良好に取得されていないなら、ステップS108で失敗の合図、例えば電子音を出したりファインダー内LCD214に表示して再びステップS103に戻る。良好に取得されたと判断されると、ステップS109に移り、登録が成功した合図をおこなって虹彩情報登録終了を知らせる。
【0059】
以上の処理において、登録された撮影者の虹彩情報は、ディジタルMCU507からIDカードI/F517を介してIDカード518に書き込み処理が行われ記録される。例えば、虹彩画像から虹彩情報への加工は、虹彩情報を読み込んだディジタルMCU507によりステップS106において行われる。そして、同ステップにおいて、虹彩情報への加工及びIDカード518への記録が行われ、虹彩情報が登録される。
【0060】
撮影者は自らの虹彩情報が記録されたこのIDカードをカメラとは別個に管理できる。撮影に際しIDカードをカメラに装着すれば、一定の撮影シーケンスによって撮影された被写体像に、カメラの電源オフの動作指示やメモリーカード516の取外し信号等に伴って、登録された虹彩情報が記録される。またその記録方法は、虹彩画像をそのまま電子透かしとして埋め込む、または個人認証コードを電子透かしとして埋め込む、もしくは撮影画像を説明するために付加される付帯情報である画像メタデータの一項目として個人認証コードを書き込むなどが可能である。このように虹彩情報を電子透かしとして埋め込まれた画像情報を、電子透かしを埋め込んだ手順に応じた手順で処理することで、元の個人認証情報へと再現することができる。あるいは、単に付帯情報として付加した場合には、その付帯情報から個人認証情報を取得できる。画像から得られる個人認証情報は、撮影者が有するテンプレート個人認証情報と照合することでその画像の撮影者を特定でき、権利管理情報として機能する。また、個人認証情報を電子透かしとして画像に埋め込むことで、画像の複製や改変がされた場合にも、その個人認証情報は撮影者を特定するために利用できる。
【0061】
次に、既に虹彩情報が記録されているIDカードがカメラに装着された状態で、カメラの電源をONしたときの動作について図7を用いて説明する。
【0062】
ステップS200で撮影者によりカメラの電源がONされると、ステップS201においてカメラはまずIDカードが装着されているか、さらに装着されていればそのIDカードに既に虹彩情報が記録されているかどうかの判断が行われる。記録済みのIDカードが装着されていなければ、ステップS202に移り、被写体像に対する虹彩情報の記録に関する一切の処理を無効とする処理が行われ、撮影シーケンス等に移行する(S209)。この場合は、撮影者は図4の虹彩情報登録処理を実行し、新規に自らの虹彩情報をIDカードに記録すれば、被写体像に対する虹彩情報の記録を有効にすることができる。
【0063】
ステップS201で虹彩情報が記録済みのIDカードが装着されていると判断されると、ステップS203において、IDカードに記録されている虹彩情報がいま電源をONした撮影者の虹彩情報と一致するかの同一人判定を行う旨の表示を、撮影情報表示用液晶104およびファインダー内LCD214で行われ、同時に中央の焦点検出領域である206aがスーパーインポーズされる。ステップS204において撮影者はこの中央焦点検出領域206aを注視する。注視した状態でシャッター釦102を押し下げると(S205)、カメラは、分光器210aによって反射され受光レンズ211で結像されて虹彩検出用センサ113上に形成した撮影者の虹彩像を取り込む(S206)。
【0064】
取り込まれた虹彩画像は、図9および図10を用いて説明した虹彩模様による個人認証の原理の処理手順と同じく、虹彩部分が分析帯に分割され座標系が設定されて、濃淡変化の抽出を原理としたイメージ解析が実行され、これをもとにコード化が行われ、虹彩データとしての個人認証コードに加工される。これと同じくIDカードに記録された虹彩情報から個人認証コードを読み出し、両個人認証コードのマッチングがステップS207で行われる。マッチングの結果両個人認証コードが同一人からサンプリングされたものでないと判断されれば、ステップS202に移行し、被写体像に対する虹彩情報の記録に関する一切の処理を無効とする処理が行われ、撮影シーケンス等に移行する(S209)。同一人からサンプリングされたものであると判断されれば、図示されていない発音体を用いて電子音を所定時間鳴らすと同時に撮影情報表示用液晶104およびファインダー内LCD214でその旨を表示し撮影者に知らしめる。そしてステップS209以降でIDカードに記録された虹彩情報は有効なものとして扱われ、撮影された被写体像に虹彩情報が記録される。虹彩情報は、前述したように、電子透かしとして被写体像に合成されてメモリカード516に記録される。あるいは、付帯情報として被写体像に対応づけて付加的に記録することもできる。
【0065】
以上の手順により、カメラの電源投入時に、撮影者の虹彩情報とIDカードに記録されている虹彩情報とを照合し、一致した場合に限って、IDカードの虹彩情報を、電源がオフとされるまでの間に撮影された被写体像に記録する。このため、撮影のたびに撮影者の虹彩画像を取り込み、加工する手順が不要となり、短い撮影間隔であっても確実に虹彩画像に基づいた個人認証情報を画像に記録できる。また、撮影開始時に撮影者の認証を行い、撮影者の個人認証情報とIDカードに記録された個人認証情報とが一致しない場合でも、被写体像に個人認証情報を記録せずに撮影を行うことができる。このため、IDカードが挿入されていない場合や、撮影者と異なる個人認証情報が記録されたIDカードが挿入されている場合でも、撮影自体は行うことができる。その場合には、撮影画像に、本来の撮影者のものとは異なる個人認証情報が記録されてしまうことを防止している。
【0066】
なお、本実施形態における電子透かしの技術の一例を簡単に説明すると次のようなものである。
【0067】
まず、原画像を、1ブロックがn画素×m画素の複数ブロックに分割する。次に分割した各ブロックに離散コサイン変換(DCT変換)等の直交変換を施し、n×mの周波数成分行列を得る。埋め込みデータの埋め込みに先立ち、直交変換処理で得られた周波数成分行列のどの成分に埋め込みデータを埋め込むかを示す埋め込み成分を乱数により決定し、さらにその周波数成分の値をどの程度変更するかを示す変更量を決定し、この埋め込み成分と変更量を鍵情報として取得・保存しておく。
【0068】
埋め込み成分としては、例えば周波数成分行列の低周波数部分を選択することにより、人間に知覚できないように埋め込むことができる。また、変更量を変えることにより、周波数成分行列の元の値との差を変えられるため、画質の劣化を制御することができる。
【0069】
選択された各ブロックの周波数成分行列の値を、鍵情報である埋め込み成分と変更量に基づいて変更することにより、埋め込みデータを埋め込む。さらに、埋め込みデータが埋め込まれた各ブロックの周波数成分行列を逆直交変換し、n画素×m画素の複数ブロックの画像を得る。
【0070】
最後に、逆直交変換処理で得られた複数ブロックの画像をつなぎ合わせ、埋め込みデータが埋め込まれた透かし画像を得る。
【0071】
虹彩情報を埋め込み情報として上述の電子透かし技術により被写体画像に埋め込むことで、生体情報である虹彩情報は被写体画像全体にわたって遍在することとなるため、画像の加工等により生体情報が失われにくい。
【0072】
[第2実施形態]
次に第2の実施形態に係るディジタルスチルカメラについて説明する。本実施形態は、前述の第1の実施形態と、図3等を用いて説明したIDカード518が有する機能をメモリカード516で兼用する以外は同等である。つまり、被写体像等のデータを格納するためのメモリカードの記憶領域のうちの一部が、虹彩情報を記憶するために割り当てられる。メモリカードの記憶領域におけるファイル構造を図8に示す。図8においては、ルートディレクトリ401の下に、被写体像等の画像ファイル群405を格納する画像ディレクトリ404や、動画のファイル群407を格納する動画ディレクトリ406といった各機能別に分けられたフォルダの一つとして撮影者の生体情報を格納する生体情報ディレクトリ(B_ID)402を設け、この中に虹彩情報を記述したファイル(Iris_Data)403を格納するものである。
【0073】
このように構成した場合は第1の実施形態に対し、独立した別個のIDカードが無くなり、IDカードの機能がメモリカードに統合されるので、IDカードI/F517が不要となり、また電源ON時の確認、すなわち図7におけるステップS201は、メモリカードが装着されていて、かつ有効な虹彩情報が記録されているかの確認に置き換わる。
【0074】
以上のように第1及び第2の実施形態によれば、撮影者が自らの生体情報を記録した個人データ記録媒体(実施形態中のIDカード)を管理し、撮影する際にはこの個人データ記録媒体を装着した状態で撮影をおこなえば、撮影された被写体画像に個人データが記録されるので、撮影者が撮影した被写体画像に他人の生体情報が記録される恐れがなく、また他人が撮影した被写体画像に自分の生体情報が記録される心配も少ない。さらに、生体情報の登録は、被写体像の撮影時とは異なる時に予めおこなわれるので、撮影シーケンス上もっとも処理に負荷のかかる被写体像撮影時の負荷を軽減することができ、連写性能の向上に貢献すると同時に、登録時には個人認証に不適当な情報しか取得できなかった場合にはやり直しが可能であり、確実な生体情報を取得することができる。
【0075】
また、既に装着されている個人データ記録媒体に書き込まれている生体情報と現在使用中の撮影者の生体情報との同一人判定をおこない、同一人と判定されたときのみ個人データ記録媒体に書き込まれた個人データを撮影された被写体画像に記録するので、対象の被写体画像を撮影したのが誰であるかの信頼性が高い。
【0076】
さらに、画像撮影装置には撮影した画像を記録するための着脱可能な画像記録媒体(実施例中のメモリカード)が概ね必要であるが、これを個人データ記録媒体としても兼用するので、それぞれを別個に携帯および管理する煩わしさもない。
【0077】
[第1及び第2の実施形態の変形例]
(1)なお、以上で述べた実施形態では、取得される生体情報画像が虹彩画像である場合についてのものであるが、生体画像取得から個人識別の判定に至るプロセスは、指紋画像および掌紋画像等でも同等であるので、例えば図1のグリップ部107に指紋もしくは掌紋検出センサを埋め込めば、これらの情報も虹彩画像と同様に扱うことが可能であり、いずれの情報画像を生体情報画像として用いてもよい。
(2)また、実施形態では電源ON時にすでに虹彩情報が記録されたIDカードもしくはメモリカードが装着されているかをチェックしているが、このほかにも撮影者が代わったと思われるタイミングにおいて、たとえばメモリカードを交換した直後等においてもチェックをしてもよい。
(3)さらに、これまでに述べた実施形態はディジタルスチルカメラを想定したが、上記構成要素を満たすディジタルビデオカメラ等の画像記録装置においても応用可能である。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下のような効果がある。
【0079】
請求項1記載の発明によれば、撮影者は生体情報記録媒体を持つことになるので、撮影に際しこの生体情報記録媒体をどの画像撮影装置に装着しても、撮影画像に自己の情報を関連付けて記録することが可能となる。また、この生体情報記録媒体を管理する限り、自己の情報が他人が撮影した画像に関連付けられて記録されることもない。
【0080】
また請求項2記載の発明によれば、前撮影者が生体情報記録媒体を装着したまま撮影を終えてしまうなどに対しても、次に使用する撮影者が撮影した被写体画像に前撮影者の生体情報が記録される心配がないので、より確かな著作権情報として、撮影画像に記録された生体情報を利用することが可能である。
【0081】
また請求項3記載の発明によれば、生体情報記録媒体を専用として別個に携帯する煩わしさもなく、また、画像を記録するための画像記録媒体は、撮影時には大抵の場合必要なものであり、かつ撮影者ごとに専用して使用しうるものであるので、撮影者の抵抗も少ない。
【0082】
また請求項4記載の発明によれば、撮影者に固有の生体情報を利用し、認証を誤りなく行うことができる。
【0083】
また請求項5記載の発明によれば、電源投入の都度照合を行うために、記録媒体に記録された生体情報に係る人物と撮影者とが不一致のまま、生体情報を撮影画像に合成するという事態の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の正面斜視図、
【図2】実施例の断面要部概略図、
【図3】実施例の電気回路の要部ブロック図、
【図4】虹彩情報登録処理を表すフローチャート図、
【図5】モードダイヤル図、
【図6】ファインダー観察図、
【図7】同一人判定の処理を表すフローチャート図、
【図8】画像記録媒体のファイル構造の説明図、
【図9】虹彩画像を用いた個人認証に係る処理図、
【図10】眼球像の座標設定の説明図である。
【符号の説明】
102…シャッター釦
105…各種設定釦群
106…モードダイヤル
113…虹彩検出用センサ
504…撮像素子
Claims (5)
- ファインダーを有し、撮像素子によって被写体像を撮影する画像撮影装置であって、
前記ファインダーにおいて前記画像撮影装置の焦点検出領域を撮影者に知らしめるための発光手段を点灯させて撮影者の虹彩情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された撮影者の虹彩情報を着脱可能な記録媒体に記録する虹彩情報登録手段と、
前記取得手段により新たに取得した虹彩情報と、装着された前記記録媒体に記録された虹彩情報とを照合する照合手段と、
前記虹彩情報登録手段によって撮影者の虹彩情報が記録された記録媒体が装着されている場合であって、前記照合手段により双方の虹彩情報が一致した場合に、撮影された被写体画像とあわせて前記記録媒体に記録された虹彩情報を記録する被写体記録手段と
を有することを特徴とする画像撮影装置。 - 前記記録媒体は、撮影された被写体画像を記録する画像記録媒体であり、該画像記録媒体の記録領域の一部に生体情報が記録されることを特徴とする請求項1に記載の画像撮影装置。
- 前記被写体記録手段の記録先は、前記記録媒体とは異なる記録媒体であることを特徴とする請求項1に記載の画像撮影装置。
- 前記照合手段は、電源投入時に、前記取得手段により取得した虹彩情報と装着された前記記録媒体に記録された虹彩情報とを照合することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像撮影装置。
- ファインダーを有し、撮像素子によって被写体像を撮影する画像撮影装置の制御方法であって、
取得手段が、前記ファインダーにおいて前記画像撮影装置の焦点検出領域を撮影者に知らしめるための発光手段を点灯させて撮影者の虹彩情報を取得する取得工程と、
虹彩情報登録手段が、前記取得工程により取得された撮影者の虹彩情報を着脱可能な記録媒体に記録する虹彩情報登録工程と、
照合手段が、前記取得工程により新たに取得した虹彩情報と、装着された前記記録媒体に記録された虹彩情報とを照合する照合工程と、
前記虹彩情報登録工程によって撮影者の虹彩情報が記録された記録媒体が装着されている場合であって、前記照合工程により双方の虹彩情報が一致した場合に、撮影された被写体画像とあわせて前記記録媒体に記録された虹彩情報を被写体記録手段が記録する被写体記録工程と
を有することを特徴とする画像撮影装置の制御方法。
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