JP4174236B2 - 内面溝付管の加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、管内面に溝が形成された内面溝付管の加工方法に関し、具体的には家庭用及び業務用エアコン等の空冷式熱交換器に使用される内面溝付伝熱管の加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
空冷式熱交換器の凝縮器及び蒸発器には、管内面に螺旋状の溝を形成して熱伝達効率を向上させた内面溝付管が使用されている。図4は、従来の内面溝付管の加工装置を示す管中心軸(以下管軸と称す)方向の模式的断面図である。この図4を参照して従来の内面溝付管の加工装置と加工方法について説明する。
【0003】
素管18の内部にはフローティングプラグ12が挿入されている。このフローティングプラグ12は、管供給側(図面において左側が供給側、右側が引抜き側となる。)の外径が素管18の内径よりやや小さく、管引抜き側の外径は管供給側のものよりも小さい略円錐台形である。このフローティングプラグ12と対応する位置の素管18の外面には、フローティングプラグ12と共に素管18を縮径加工する保持ダイス11が配置されている。
【0004】
また、フローティングプラグ12には連結軸14を介して略円柱形の溝付プラグ13が連結されている。この溝付プラグ13の外周面には素管18の内周面に形成すべき形状の溝が加工されている。更に、この溝付プラグ13は連結軸14を軸として自在に回転することができる。そして、この溝付プラグ13に対応する位置の素管18の外面には、複数個の転圧ボール15が管周方向に並んで配設されている。この転圧ボール15は加工リング31に収容されて相互に適長間隔をおいて配置されており、この加工リング31により転圧ボール15は管軸方向における所定位置に保持される。
【0005】
上記加工リング31はモータ19の駆動軸32に接続されている。モータ19は円筒状の駆動軸32と、この駆動軸32を磁場により回転させるコイル33とを有し、コイル33に給電することにより駆動軸32が回転駆動され、加工リング31を管軸と同軸上で回転駆動する。この加工リング31の回転により、転圧ボール15は管軸を中心として管周方向に回転する。なお、モータ19の中心を素管18が通過する。また、転圧ボール15の管引抜き方向下流側には、内面にフィンを形成された素管18の外径を所定の寸法に縮管加工する仕上げダイス17が素管18に接して設けられている。
【0006】
上記のように構成された内面溝付管の加工装置を用いた従来の加工方法は以下のとおりである。フローティングプラグ12は素管18の先端内に挿入されその位置を機械的又は磁気的な手段により保持されている。そして、この状態から素管18の先端が保持ダイス11を通し仕上げダイス17へと供給され、またフローティングプラグ12の保持が開放される。この後、素管18の引抜き開始の移動に伴ってフローティングプラグ12が保持ダイス11と対応する位置まで移動する。そしてこの後の引抜きにより、素管18はフローティングプラグ12及び保持ダイス11により縮管加工され、更に後続する転圧ボール15により縮管されると共に、この転圧ボール15による圧下力を受けて素管18の内部に配置されている溝付プラグ13に押圧される。
【0007】
上記溝付プラグ13は連結軸14を介してフローティングプラグ12に連結されており、フローティングプラグ12は素管18の引抜きによる摩擦力と、保持ダイス11からの抗力とにより保持ダイス11と対応する位置に静止しているので、溝付プラグ13も転圧ボール15と対応する位置に止まっている。従って、転圧ボール15を素管18の外周面に転接して円周方向に回転駆動すると、溝付プラグ13との共働作用により、素管18の内周面に溝付プラグ13の外周面に形成されている溝形状が転写されてフィン16が形成される。このとき、溝付プラグ13は素管18を引抜くことにより、溝付プラグ13の周面に刻まれた溝により回転する。また、その内面にフィン16が形成された素管18は仕上げダイス17により縮管加工され、所望の外径を有する内面溝付管が製造される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のような内面溝付管の加工においては、溝付加工開始時あるいは溝付加工中の管の破断が問題となる。管破断の要因の一つは、フローティングプラグ12及び保持ダイス11により縮管加工された溝付加工前の素管内径が、溝付プラグ13の外径よりも小さくなることである。このように溝付加工前の素管内径が溝付プラグ13の外径より小さい場合には、溝付加工前の素管が溝付プラグ13により拡管されたり、より小さい場合には、素管の内面が溝付プラグ13の外表面に密着して摩擦力を生じたりして、引抜き力が増大し破断が起こる。
【0009】
特に加工開始時からフローティングプラグ12が素管18の移動に伴って保持ダイス11と対応する位置まで移動が完了するまでの間は、素管18はフローティングプラグ12による加工が施されず、保持ダイス11により縮管加工された状態となっているため、フローティングプラグ12と保持ダイス11とが対応する位置で縮管加工された場合に比べて、肉厚が厚く、管外径も小さい即ち管内径が小さくなっている。このため、縮管加工された素管内径が溝付プラグ13の外径よりも小さくなりやすく、溝付加工開始時には破断発生の危険性が高くなっている。
【0010】
この溝付加工開始時の管の破断を防止する内面溝付管の製造方法が特開昭63−309322号公報に提案されている。この提案の方法は、従来より採用されていた溝付加工開始時の管の破断防止のための保持ダイスの引抜き方向への進退移動に代えて、溝付プラグを連結軸に沿って移動可能に設け、その溝付プラグを電磁石により磁気的に保持する構成としたものである。即ち、溝付加工開始時、素管がフローティングプラグと保持ダイスによって所定外径及び肉厚になるまで電磁石をオンして溝付プラグを転圧ボールと対応する位置より後退させて保持し、所定外径及び肉厚になった頃合を見てオフして転圧ボールと対応する位置に位置させて、管の破断防止を図るものである。
【0011】
しかしながら、管の破断は溝付加工開始時のみならず、加工中のフローティングプラグ12と保持ダイス11とが対応する位置(素管供給側方向と引抜き方向の力が釣り合って止まる位置)で縮管加工されている状態にあっても、素管の長手方向での形状(外径や肉厚等)や材質の変動、潤滑油の流量や温度による粘性の変動、装置的な要因による管の引抜き速度や転圧ボールの回転速度の変動、またそれらによる素管張力の変動によっても素管内径が溝付プラグ13の外径より小径に変化して管の破断が発生する。上記提案の方法では、電磁石により磁気的に保持するという特別な機構が必要となるばかりでなく、このような加工中の内径変化の場合には破断を防止する効果が期待できない。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解消するためになしたものであって、その目的は、溝付加工開始時はもとより溝付加工中にあっても管の破断を防止し得る内面溝付管の加工方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る内面溝付管の加工方法は、素管内にフローティングプラグとこのフローティングプラグに連結軸を介して相対的に回転可能に連結された溝付プラグとを挿入し、その素管を保持ダイス及び複数個の転圧ボールによって順次縮径加工すると共に、フローティングプラグを保持ダイスに係合させることにより溝付プラグを転圧ボールの配設位置に位置させ、転圧ボールにより素管の内面を溝付プラグに押圧することにより素管の内面に溝付プラグの溝形状を転写する内面溝付管の加工方法において、フローティングプラグと溝付プラグの間の連結軸に、その最大外径部を溝付プラグの外径と同じかそれよりも大きい径に形成されてなる拡管プラグであって、その外径部に溝を有しない拡管プラグを配置して管内面に溝加工を行うものである。
【0014】
上記の構成では、フローティングプラグと溝付プラグの間の連結軸に拡管プラグを配置しているので、保持ダイスで縮管加工された管の内径が必要以上に小径になった場合にそれを拡管して溝付プラグの外径より小径になることを規制することができ、溝付加工開始時はもとより溝付加工中にあっても管の破断を防止することができる。なお、拡管プラグの配置位置は、フローティングプラグと溝付プラグの間であればよく、フローティングプラグ又は溝付プラグと一体的に配置されてあってもよい。
【0015】
なおこの場合、拡管プラグの最大外径部の外径は、溝付加工中のフローティングプラグと保持ダイスとが対応する位置で縮管加工されている時の素管内径と同程度、即ち、溝付加工開始時や内径が縮小する変化が生じた際にのみ拡管プラグによる拡管加工が施されるようにすることが好ましい。また、拡管プラグの最大外径部の外径の上限としては、保持ダイスの内径から当該保持ダイスによる縮管加工後の素管肉厚の80%を2倍した値を差し引いた大きさを超えない外径とすることが好ましく、これを超える外径としてもこれまでの試験結果によれば、破断防止効果は向上せず、逆に引抜力の増大を招くことが確認されているためである。
【0016】
また、上記請求項1の発明においては、前記拡管プラグが、その最大外径部を境として管供給側、管引抜き側の何れの側も最大外径部から小径へとテーパあるいは円弧形状に形成されてなるとよい(請求項2)。このように最大外径部までのアプローチを円滑に形成することで、溝付加工開始時及び溝付加工中のいずれの場合にもより効果的に破断防止が図れる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る内面溝付管の加工方法を説明するための内面溝加工部の断面説明図であって、内面溝付管の加工装置全体の基本構成は、フローティングプラグと溝付プラグの間の連結軸に拡管プラグ(詳細は図2乃至図3参照)を設けた構成を除いて上記図4に示す従来の内面溝付管の加工装置と同じ構成である。以下の説明では従来装置と同じ構成部分は同じ符号をもって示す。
【0018】
拡管プラグ1は、最大外径部2の外径が溝付プラグ13より僅かに大きい径に形成されるとともに、その最大外径部2を境として管供給側、管引抜き側の何れの側の部分3、4も最大外径部2から小径へとテーパに形成され、算盤珠状に形成されている。そして、その中央部に開けられた貫通孔5に連結軸14を挿通してフローティングプラグ12と溝付プラグ13の間に固定されている。
【0019】
上記構成の内面溝付管の加工装置を用いた加工方法では、加工自体は従来と同様にして行われるが、連結軸14にフローティングプラグ12、拡管プラグ1、溝付プラグ13をこの順に固定したものを、フローティングプラグ12を反引抜き側にして素管18の先端内に挿入して加工が行われるので、溝付加工開始時やその後の溝付加工中において、保持ダイス11で縮管加工された管の内径が必要以上に小径になった場合にはそれを拡管プラグ1で拡管して溝付プラグ13の外径より小径になることを規制することができる。これにより、拡管プラグ1で拡管された管は、転圧ボール15で溝付プラグ13に押圧されるまでは溝付プラグ13に食い込むなどして摩擦力が生じることが無く、管の破断を防止して内面溝付管を製造することができる。
【0020】
なお、上記例では、拡管プラグ1をフローティングプラグ12と溝付プラグ13の間に固定した例を説明したが、拡管プラグ1の貫通孔5に連結軸14を挿通しただけで引抜方向に進退可能に設けられてあってもよいし、フローティングプラグ12又は溝付プラグ13と一体的に固定して設けてもよい。また、拡管プラグ1は超硬合金で造られており摩耗が少ないことから、その外観形状は図2の他に図3に示す形状が例示できる。
【0021】
因みに、上記図1、2に示す加工装置を用いて下記条件で溝付加工を行った。結果は、管を破断させること無く溝付加工を行うことができ、約2000mにわたって良好な内面溝付管が得られた。
素管材質:銅
素管寸法:外径9.9mm、管肉厚0.4mm
保持ダイス:内径9.4mm、テーパ角29°
フローティングプラグ:テーパ角27°
溝付プラグ:外径8.6mm、溝数50、溝深さ0.25mm
拡管プラグ:図2に示す形状、プラグ長さL6.2mm、最大外径D8.65mm、最大外径部幅W1.0mm
素管引抜速度:50m/分
転圧ボール回転数:25000r.p.m.
転圧ボール個数:4個
【0022】
なお、上記条件によれば、保持ダイスを出た管の寸法は、加工開始時はフローティングプラグにかからないため、外径は保持ダイスの内径9.4mmにほぼ等しく、また肉厚は素管肉厚の0.4mmより僅かに厚くなる。従って、管の内径は8.6mmより僅かに小径で、溝付プラグの外径8.6mmより小径になっていると推測されるが、拡管プラグの最大外径部(外径8.65mm)により、溝付プラグの外径8.6mmより0.05mm程度拡管されるため、破断無く溝付加工ができたと考えられる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る内面溝付管の加工方法によれば、管の溝付加工開始時はもとより溝付加工中にあっても管の破断を防止して溝付加工ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内面溝付管の加工方法を説明するための内面溝加工部の断面説明図である。
【図2】本発明に係る拡管プラグの説明図である。
【図3】本発明に係る拡管プラグの別の形状の説明図であって、a、bはテーパ型、cはテーパと円弧の組合せ型、dは円弧型である。
【図4】従来の内面溝付管の加工装置を示す管中心軸方向の模式的断面図である。
【符号の説明】
1:拡管プラグ 2:最大外径部 3:管供給側部分
4:管引抜き側部分 5:貫通孔 11:保持ダイス
12:フローティングプラグ 13:溝付プラグ
14:連結軸 15:転圧ボール 18:素管

Claims (2)

  1. 素管内にフローティングプラグとこのフローティングプラグに連結軸を介して相対的に回転可能に連結された溝付プラグとを挿入し、その素管を保持ダイス及び複数個の転圧ボールによって順次縮径加工すると共に、フローティングプラグを保持ダイスに係合させることにより溝付プラグを転圧ボールの配設位置に位置させ、転圧ボールにより素管の内面を溝付プラグに押圧することにより素管の内面に溝付プラグの溝形状を転写する内面溝付管の加工方法において、フローティングプラグと溝付プラグの間の連結軸に、その最大外径部を溝付プラグの外径と同じかそれよりも大きい径に形成されてなる拡管プラグであって、その外径部に溝を有しない拡管プラグを配置して管内面に溝加工を行うことを特徴とする内面溝付管の加工方法。
  2. 前記拡管プラグが、その最大外径部を境として管供給側、管引抜き側の何れの側も最大外径部から小径へとテーパあるいは円弧形状に形成されてなる請求項1に記載の内面溝付管の加工方法。
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