JP4174209B2 - 位相差フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、位相差フィルムに関する。さらに詳しくは共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物より形成された位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂(以下、PCと称することがある)は、ビスフェノールを炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)より得られるポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性に優れ、また耐衝撃性等の機械特性に優れた性質を有することから多くの分野に用いられている。各種レンズ、光ディスク等の光学分野においては、その耐衝撃性、透明性、低吸水性等の特性が注目され、光学用途材料として重要な位置を占めている。
【0003】
しかしながら、ビスフェノールAにホスゲンやジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂から形成された位相差フィルムは光弾性定数が大きく、フィルムの複屈折が大きくなってしまう欠点を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の第1の目的は、透明性、耐熱性および耐衝撃性に優れた位相差フィルムを提供することにある。
本発明の第2の目的は、光弾性定数が低い位相差フィルムを提供することにある。
本発明の第3の目的は、物理特性および光学的特性を具備した位相差フィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため、種々研究を重ねた結果、シクロヘキサンジメタノールと特定のビスフェノールとを一定の割合で含むジヒドロキシ化合物成分より得られた共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物から形成された位相差フィルムは、前記本発明の目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明によれば下記一般式(I)
【0007】
【化8】
【0008】
で表される構成単位(I)および下記式(II)
【0009】
【化9】
【0010】
で表される構成単位(II)からなり、構成単位(I)のモル分率の割合が構成単位(I)および(II)の合計に対して30〜85%である共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物より形成された位相差フィルムが提供される。
【0011】
(ただし前記構成単位(II)において、R1およびR2はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基または炭素数7〜20のアラルキルオキシ基であって、qおよびrはそれぞれ0〜4の整数であり、R 7 およびR 8 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0014】
本発明の位相差フィルムは、透明性、耐衝撃性および耐熱性に優れているのみならず、しかも光弾性定数が低くそのフィルムを製造するための延伸性にも優れている。
【0015】
本発明者が調べた限り、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)をジヒドロキシ成分としてビスフェノールと一緒に重合した共重合ポリカーボネート樹脂に関し、いくつか文献がある。以下その文献を簡単に紹介する。
【0016】
(1)米国特許第4,501,875号明細書(特開昭59−74121号公報)この文献には二価フェノールと脂肪族(または脂環族)グリコールのビスハロホーメートをホスゲンと反応させることによって、加工性の改善された共重合ポリカーボネート樹脂が記載されている。具体的にはCHDMのビスクロロホーメート4モル%をビスフェノールAと共重合させて得られたポリカーボネートは、ビスフェノールA単独のポリカーボネートと比べて、流動性(メルトフロー)が改良される以外に衝撃値、荷重たわみ温度および延性はほぼ同じ物性が得られることのみが記載されている。
【0017】
(2)特開昭63−92642号公報
この文献には、ビスフェノールAとそれに対して2〜4モル%のCHDMとをジフェニルカーボネートとエステル交換させて得られた共重合ポリカーボネートを光ディスク基板として使用することが記載されている。
【0018】
(3)特開平8−302005号公報
この文献には、ビスフェノールAとCHDM(4モル%)をジフェニルカーボネートとエステル交換反応により重合させて共重合ポリカーボネートを得ること、その際ジフェニルカーボネートを多量使用することによりヒドロキシル末端基の割合が極度に低下したポリマーが得られることおよびそのポリマーは耐加水分解性が向上したものであることが記載されている。
【0019】
(4)European Polymer Journal.Vol.12 pp279-282(1976)
この文献には、ビスフェノールAとCHDMとを塩化メチレン溶媒中にてピリジンを酸結合剤として使用してホスゲンと反応させて均一溶液重合により共重合ポリカーボネートを得ること、その際CHDMを1〜50モル%の割合で含有する共重合ポリカーボネートを得ること、GPC法により分子量を測定した結果および物性(引張り応力、破断伸度)を測定した結果が記載されている。この文献には得られた共重合ポリカーボネートの用途、特に光学用途について何等記載されていない。
【0020】
(5)Polymer,1983,Vol.24,October pp1313-1316
この文献には、ビスフェノールAとCHDMの50/50(モル比)の交互共重合ポリカーボネートを得ること、この交互共重合ポリカーボネートは、ビスフェノールAのクロロホーメートとCHDMとを塩化メチレン溶媒中でピリジンを酸結合剤として使用し均一溶液重合により得ること、このポリカーボネートをランダム共重合ポリカーボネートと比較するため物性(粘度、ガラス転移点、老化特性)を測定した結果が記載されている。この文献には交互共重合ポリカーボネートの用途、特に光学用途について何等の記載もない。
【0021】
以下本発明の位相差フィルムについてさらに詳細に説明する。
本発明の位相差フィルムを形成する共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、前述したように下記構成単位(I)および(II)よりなり、構成単位(I)の割合がモル分率で、構成単位(I)および(II)の合計に対して30〜85%である。
【0022】
【化11】
【0023】
(式中R1、R2、R 7 、R 8 、qおよびrの定義は、前記構成単位(II)の定義と同じである。)
【0024】
前記構成単位(I)および(II)は、ポリカーボネート樹脂の製造において、ジヒドロキシ化合物成分としてそれぞれ下記式(I−R)で表されるシクロヘキサンジメタノールおよび下記式(II−R)で表されるビスフェノールを使用することによって形成された単位である。
【0025】
【化12】
【0026】
(ただし式(II−R)中、R1、R2、R 7 、R 8 、qおよびrの定義は、前記構成単位(II)の定義と同じである。)
【0027】
本発明において、構成単位(I)のモル分率の割合が構成単位(I)及び(II)の合計に対して30〜85%である共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物とは、要するに、共重合体であれ、ポリカーボネート樹脂のブレンド物であれ、位相差フィルムとして使用されている樹脂全体において、構成単位(I)のモル分率の割合が構成単位(I)及び(II)の合計に対して30〜85%であればよいという意味である。この割合は例えばNMRにより分析することができる。すなわち、位相差フィルムを作製するにあたっては、ブレンド物でも共重合体でもよいという意味である。ブレンド物は共重合体同士、共重合体とホモ重合体、ホモ重合体同士であってもよい。ただし、ブレンド物の場合は光学的な観点および透明性の観点から互いに相溶しうるブレンド物であることが好ましい。
【0028】
ブレンド物の具体的態様としては、例えば(i)構成単位(I)からなるホモポリカーボネート樹脂と構成単位(II)からなるホモポリカーボネート樹脂とのブレンド物、(ii)構成単位(I)からなるホモポリカーボネート樹脂と構成単位(I)および(II)からなるカーボネート共重合体樹脂とのブレンド物、(iii)構成単位(II)からなるホモポリカーボネート樹脂と、構成単位(I)および(II)からなるカーボネート共重合体樹脂とのブレンド物および(iv)構成単位(I)からなるホモポリカーボネート樹脂、構成単位(II)からなるホモポリカーボネート樹脂および構成単位(I)および(II)からなるカーボネート共重合体樹脂との3種のブレンド物が挙げられる。これらブレンド物は、例示であってこれらの若干の改変や追加は、本発明の主旨を変更しない限り許容される。殊に前記(i)〜(iv)において“カーボネート共重合体樹脂”の組成は、前記した“共重合ポリカーボネート樹脂”と同じ組成である必要はない。すなわち“カーボネート共重合体樹脂”は、構成単位(I)のモル分率の割合が構成単位(I)および(II)の合計に対して、例えば5〜95%好ましくは10〜90%であることができる。
【0029】
しかし本発明の位相差フィルムは、ポリカーボネート樹脂ブレンド物よりも共重合ポリカーボネート樹脂により形成されていることが光学的な観点および透明性の観点から好ましい。
【0030】
次に本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物の製造に使用されるジヒドロキシ化合物としてのシクロヘキサンジメタノール(I−R)およびビスフェノ―ル(II−R)について、その具体的化合物を説明する。
【0031】
前記式(I−R)で表されるシクロヘキサンジメタノールとしては、シス体、トランス体またはシス/トランス体の混合物でもよく、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。また、これらは単独または2種以上組合せて用いてもよい。
【0032】
シクロヘキサンジメタノールとして1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用しかつそのトランス/シスの比が100/0〜50/50の範囲であるものを使用するのが好適である。より好適なトランス/シスの比は100/0〜60/40、さらに好適には100/0〜70/30、最も好適には100/0〜80/20である。トランス体の比が高い程得られる共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、そのガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。すなわち、1,4−シクロヘキサンジメタノール/ビスフェノールAのモル比が50/50の共重合ポリカーボネート樹脂の場合、その1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス/シス比が50/50および99/1では、樹脂のガラス転移温度(Tg)はそれぞれ89℃および96℃となる。1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス/シス比が最も高いものを得るには、それ自体公知の方法を採用することができる。例えば有機溶媒中で再結晶を繰返すことにより、トランス体の比率が高い1,4−シクロヘキサンジメタノールを得ることができる。
【0033】
一方前記式(II−R)で表されるビスフェノールとしては、
【0035】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。また、これらは単独または2種以上組合せて用いてもよい。
【0036】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、その構成単位すべてのモル分率の合計を100モル%とした時に一般式(I)で表される構成単位のモル分率が30〜85%である。構成単位(I)のモル分率が85%を超えると耐熱性の低下をきたすことがあり、フィルム材料としては好ましくない。
【0037】
本発明の位相差フィルムに使用するための共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、加工性および光学特性の点から、その重合度は、比較的に低い値である。すなわち、比粘度で表して、0.3〜2.0の範囲が適当であり、0.3〜0.7の範囲がより好ましい。この範囲の比粘度を有する共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、後述するように流動性(Q値)に優れ、延伸製膜性に優れ、しかも得られたフィルムは、光学歪が極めて少ない。
【0038】
本発明の位相差フィルムを形成する共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、その末端基および分子量分布において好ましい態様を有している。前記共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、原料モノマーのビスフェノールに由来するフェノール性水酸基(OH基)の末端基を有している。そのフェノール性水酸基(OH基)の末端基の含有割合が、全末端基当り1〜80モル%の範囲、好ましくは2〜70モル%の範囲であるのが有利である。共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、その末端基がフェノール性水酸基の末端基およびフェノール性水酸基を有しないアリールまたはアルキル末端基(例えばフェニル基、置換フェニル基、メチル基またはエチル基)より実質的に形成されている。従って全末端基としては、フェノール性水酸基および前記アリール基またはアルキル基の末端基の合計量を実質的に意味する。
【0039】
従って本発明では、前記合計量を100モル%とした時のフェノール性末端基の割合が1〜80モル%である共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物が使用される。
【0040】
一方本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、ある一定の分子量分布の範囲を有していることが好ましい。この分子量分布を重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表して、1.1〜3の範囲、好ましくは1.3〜2.8の範囲である共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物が有利に利用される。この重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は後述する測定法に基いて決定される。
【0041】
前記した末端基および分子量分布を有する共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、後述するように、カーボネート前駆体としてカーボネートエステル(特にジフェニルカーボネート)を使用するエステル交換法により重合して樹脂を製造する方法において、カーボネートエステルの仕込割合や反応条件を制御することによって得ることができる。
【0042】
前記末端基および分子量分布を有する共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、フィルムとしての成形加工性に優れ、得られたフィルムは、耐熱性、耐衝撃性および色相が良好であり、しかもフィルムの表面をハードコート処理して硬化層を形成させる場合の処理の加工性が容易になり均一で強固に接着した硬化層となるのに役立つ。
【0043】
次に本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物を製造するための重合法について説明する。
【0044】
本発明の共重合カーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、主たるジヒドロキシ化合物として下記式(I−R)で表されるシクロヘキサンジメタノールおよび下記式(II−R)で表されるビスフェノールを使用することにより製造される。
【0045】
【化14】
【0046】
(ただし式(II−R)中、R1、R2、R 7 、R 8 、qおよびrの定義は、前記構成単位(II)の定義と同じである。)
【0047】
重合方法は、酸結合剤の存在下に前記2種のジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させる方法(溶液重合法)および前記2種のジヒドロキシ化合物をカーボネートエステルとエステル交換反応させる方法(エステル交換法)が好ましく採用される。
【0048】
これらのうち、エステル交換法が有利である。エステル交換法は、その重合の形態や方式は特に制限されない。例えば、溶融重合法または固相重合法いずれも採用することができるが、溶融重合法が工業的に望ましい。
【0049】
溶液重合法においては、酸結合剤としてピリジン、キノリン、イソキノリン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミンが挙げられ、殊に、ピリジンが好適なものとして用いられる。酸結合剤単独/または、有機溶媒を用い希釈して溶液中で反応が行われる。該有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素または塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられ、特に塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が好ましく、殊に塩化メチレンが最も好ましい。該酸結合剤の使用量は、通常ホスゲンに対して、2〜100モル当量用いられ、好ましくは、2〜50モル当量用いられる。反応温度は通常0〜100℃で、好ましくは、0〜40℃で行われる。反応時間は通常数分〜数日間、好ましくは、10分間〜5時間行われる。また、末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されていることになる。かかる単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができる。
【0050】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0051】
エステル交換法による溶融重合法においては不活性ガスの存在下にジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1,330〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜10時間程度である。
【0052】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0053】
カーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物1モル当り0.97〜1.2モルの範囲の割合で使用するのが好ましく、1.0〜1.1モルの範囲の割合で使用するのが特に好ましい。
【0054】
また、エステル交換法において重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類;アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類;亜鉛化合物類;ホウ素化合物類;アルミニウム化合物類;ケイ素化合物類;ゲルマニウム化合物類;、有機スズ化合物類;鉛化合物類;オスミウム化合物類;アンチモン化合物類;マンガン化合物類;チタン化合物類;ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料のジヒドロキシ化合物1モルに対し、好ましくは1×10-9〜1×10-2当量、より好ましくは1×10-8〜5×10-3当量の範囲で選ばれる。
また、必要に応じて分子量調節剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0055】
得られたポリカーボネート樹脂に触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、さらにドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の上記塩類が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられ、その中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0056】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記重合触媒1モル当り0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
【0057】
本発明者らの研究によれば、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、その重合方法によって、得られる物性、殊にガラス転移温度および流動性(Q値)に若干の相違があることが判った。この相違は後述するように構成単位(I)および構成単位(II)がポリマー主鎖上に交互に配列した割合の差に起因しているものと考えられる。
【0058】
すなわち、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、カーボネート結合(−O−CO−O−)を中心として、(I)両側に構成単位(I)および構成単位(II)が結合した構造(以下“ヘテロカーボネート”という)および(II)両側に2つの構成単位(I)が結合するかあるいは2つの構成単位(II)が結合する構造(以下“ホモカーボネート”という)の2種のカーボネート結合により構成されている。
【0082】
位相差フィルムは、ポリカーボネート樹脂ブレンド物よりも共重合ポリカーボネート樹脂により形成されていることが好ましい。
従来位相差フィルムとして広く用いられてきたビスフェノールA骨格を有するポリカーボネートホモ重合体は、高い透明性、耐熱性を有しているものの光学弾性定数が大きいといった問題があった。例えば、液晶表示装置に用いられる位相差フィルムのうち、偏光板と貼りあわせて用いる場合があるが、この場合、偏光板の熱収縮または熱膨張等により、位相差フィルムに応力がかかり、その結果、位相差斑が発生し画質の均一性が保てなくなるといった問題が生じていた。かかる問題点を解決する方法として光弾性定数の小さいノルボルネン系樹脂を用いる方法があるが、ノルボルネン樹脂は延伸性が悪く生産性が低いといった問題があった。ここでいう延伸性が良いとは破断が少ないことや、均一に延伸できる等といった意味である。光学的に均一に延伸できるためには光学弾性定数が低い方が良いが、その意味ではノルボルネン樹脂は良いが、樹脂が脆くフィルムにした場合、延伸工程等で破断が生じやすいといった問題点があった。位相差フィルム用途において好ましい光学弾性定数としては、70×10-8cm2/N以下である。より好ましくは60×10-8cm2/N以下、さらに好ましくは50×10-8cm2/N以下、最も好ましくは40×10-8cm2/N以下である。また、位相差フィルムに用いる場合のガラス転移点温度は90℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、最も好ましくは120℃以上である。
【0083】
位相差フィルムとして用いる場合、最も好ましい構成は前記した構成単位(I)及び(II)からなり、構成単位(I)のモル分率の割合が構成単位(I)及び(II)の合計に対して30〜85%である共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物である。
【0086】
構成単位 (II)で特に好ましくはR 7 およびR 8 のいずれもが水素原子である場合である。構成単位(I)の繰返し単位を有するホモポリカーボネート重合体は正の屈折率異方性を有するが、一方、構成単位( II ) のホモポリカーボネート重合体は負の屈折率異方性を有する。ここで、正、負の屈折率異方性とはガラス転移点近傍(Tg±10℃)で一軸延伸した際、延伸方向の屈折率が最大となるものを正、延伸方向に直交する方向の屈折率が最大となるものを負の屈折率異方性を持つと定義する。WO00/26705によれば、それぞれ特定の位相差波長分散を持った正と負の屈折率異方性を有するもの同士をブレンド及び/または共重合させることにより、位相差フィルムの位相差の波長分散を自由に制御することが可能であることが示されている。従って、構成単位(II) を有するものを用いることは、位相差の波長分散性を制御する点から見て好ましい。位相差の波長分散性が自由に制御できることは、特に液晶表示装置にこの位相差フィルムを用いた場合を考えると、液晶表示装置の光学設計の自由度を格段に広げることが出来、画質向上に寄与することができるといった効果を有している。さらに、フルオレン骨格を有する構成単位( II )は、高い耐熱性及び低い光弾性定数を有しており、位相差フィルムとして好ましく用いることができる。また、延伸性にも優れている。
【0087】
特に上記一般式(I)で表される構成単位(I)、および構成単位(II)からなり、構成単位(I)のモル分率の割合が構成単位(I)および(II)の合計に対して30〜85%である共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、位相差が短波長ほど小さくなる位相差フィルムを作製することを可能にするので優れている。また、比率により負の屈折率異方性を有するものを作製することができる。位相差が短波長ほど小さくなるような特性を有する位相差フィルムは例えば広帯域λ/4板や広帯域λ/2板として使用することができる。
【0088】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために、さらにリン含有熱安定剤を使用することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
【0089】
具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクダデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオキソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、
テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイト、
【0090】
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられ、なかでもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイトが好ましい。
【0091】
これらの熱安定剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の使用量は、該共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.001〜0.15重量部が好ましい。
【0092】
さらに本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、成形時の金型からの離型性を改良する目的等で脂肪酸エステル化合物を使用することができる。
【0093】
かかる脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜20の一価または多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられ、なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかる脂肪酸エステルの使用量は、該共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0094】
耐候性の向上および有害な紫外線をカットする目的で、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物にはさらに紫外線吸収剤を配合することができる。かかる紫外線吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールに代表されるトリアジン系紫外線吸収剤、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2,4−tert−ブチルフェノールおよび2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示され、これらは単独で用いても、2種以上併用してもよい。これら紫外線吸収剤は、共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部当り通常0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.8重量部配合される。
【0095】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、フィルムに製膜した場合、ポリカーボネート樹脂や紫外線吸収剤に基づくフィルムの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としてはポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0096】
具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名SolventViolet36[CA.No 68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[商標名バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No 61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]が代表例として挙げられる。これらブルーイング剤は通常共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部当り0.3×10-4〜2×10-4重量部の割合で配合される。
【0097】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して、0.0001〜0.05重量部である。
【0098】
本発明の位相差フィルムはその表面にハードコート層、反射防止コート層または防曇コート層などの保護層を形成させることができる。これら保護層については後に説明する。
【0099】
本発明の位相差フィルム基材表面に形成されるハードコート(硬化)層としては、熱硬化性または活性エネルギー硬化性のいずれも好ましく用いられる。
【0100】
熱硬化性ハードコート材料としては、オルガノポリシロキサンなどのシリコーン系樹脂およびメラミン系樹脂等が挙げられる。
【0101】
かかるシリコーン系樹脂については、特開昭48−056230号、特開昭49−014535号、特開平08−054501号および特開平08−198985号公報等に記載されている樹脂を用いることができる。例えば一般式
(R1)a(R2)bSi(OR3)4-(a+b)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物からなるコーティング組成物を乾燥および/または加熱硬化させて得られるハードコート層である。(ここでR1およびR2はそれぞれ独立にアルキル基、アリル基、アシル基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリルオキシ基およびシアノ基からなる群より選ばれる有機基を示し、R3は、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシアルキル基、アリル基、アシル基であり、aおよびbは0または1の整数である。)これらの有機ケイ素化合物の具体例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、iso−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケート、tert−ブチルシリケート等のテトラアルコキシシランまたはその加水分解物、およびメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシランまたはその加水分解物、さらにジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジメトキシシランまたはその加水分解物等が挙げられる。
【0102】
これらの有機ケイ素化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの有機ケイ素化合物は、硬化温度を下げ硬化をより進行させるためには加水分解して使用することが好ましい。加水分解は、塩酸、硫酸などの無機酸や酢酸などの有機酸の存在下に行うことが好ましい。用いる酸の添加量を調節することによって、加水分解の度合いは容易に制御することが可能である。また、加水分解を均一に行うために、有機溶剤を用いてもよい。これら有機溶剤としては、アルコール、ケトン、エーテル、セロソルブまたは芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して使用される。
【0103】
メラミン系樹脂としては、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミンまたはイソブチル化メチロールメラミン等のメラミン樹脂に架橋剤、硬化剤等からなるコーティング組成物を乾燥および/または加熱硬化させて得られるハードコート層である。
【0104】
上記メラミン系樹脂は、単独で用いてもよいし、また2種以上混合して用いてもよい。また、物性を損わない範囲でアクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂またはシリコン樹脂等の変性剤を混合してもよい。
硬化剤としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸や酢酸、シュウ酸、マレイン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。
【0105】
架橋剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の短鎖グリコール、およびポリエチレングリコール等の長鎖グリコールが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を配合してもよい。
【0106】
かかるメラミン系コーティング組成物における硬化剤、架橋剤の配合量としては、その目的により適宜決められる。架橋剤はメラミン系樹脂の官能基および架橋剤の官能基が等モル量になることが目安とされ、メラミン系樹脂100重量部に対して好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜150重量部である。また、硬化剤はメラミン系樹脂100重量部に対し好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜7重量部である。
溶剤としては、アルコール、ケトン、エーテル、セロソルブ、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して使用される。
【0107】
活性エネルギー線硬化性ハードコート材料としては、特開昭54−097633号、特開平03−145602号および特開2000−229384号公報等に記載されている材料を用いることができる。例えば、活性エネルギー線硬化性の官能基を2個以上有する多官能性化合物が挙げられ、該活性エネルギー線硬化性官能基として、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基などの不飽和基を有する基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。例えば、多価アルコール等の2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸からなるポリ(メタ)アクリレートである。
【0108】
上記ポリ(メタ)アクリレート化合物として具体的には、以下の化合物が挙げられる。例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシルエチルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン付加物ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
好ましくは、トリメチロールプロパン系ポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートとイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0110】
また、上記多官能性化合物は活性エネルギー線硬化性官能基以外に、さらに例えば水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、アミド結合、ジオルガノシロキサン結合など種々の官能基や結合を有していてもよい。特にウレタン結合を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下、“アクリルウレタン”と称することがある)が好ましい。
【0111】
上記多官能性化合物であるアクリルウレタンとしては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物(1)、1分子中に少なくとも2個以上の水酸基を有する化合物(2)および水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(3)との反応生成物等が挙げられる。
【0112】
1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物(1)としては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0113】
1分子中に少なくとも2個以上の水酸基を有する化合物(2)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、または上記多価アルコール、ポリアルキレングリコールと多塩基酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸など)またはその無水物との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0114】
水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(3)の具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート等が挙げられる。
【0115】
具体的な好ましい多官能性化合物は、上記アクリルウレタンとしては、ペンタエリスリトールやその多量体であるポリペンタエリスリトールとポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの生成物であるアクリルウレタン、またはペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの反応生成物であるアクリルウレタンが挙げられる。
【0116】
硬化させるための活性エネルギー線のうち、紫外線(UV)で硬化する場合には、光重合開始剤が用いられる。該光重合開始剤として、アリールケトン系光重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類など)、含イオウ系光重合開始剤(例えばスルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ジアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤およびその他の光重合開始剤等が挙げられる。
【0117】
上記光重合開始剤量は、UV硬化性多官能化合物100重量部に対して0.01〜20重量部、特に0.1〜10重量部が好ましい。
また、適当な粘度に調節する目的で、有機溶剤が含まれてもよい。有機溶剤としては、アルコール、ケトン、エーテル、セロソルブまたは芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して使用される。
【0118】
コーティング組成物には、上記成分以外に得られる硬化膜の物性を損わない限り、他の成分を添加できる。例えば、反応を促進させるために硬化剤を、種々の基材との屈折率を合せるために微粒子状無機物を、また塗布時における濡れ性や硬化膜の平滑性を向上させる目的で各種界面活性剤を含有させることができる。
【0119】
特に、表面硬度向上のためには、高分子量無水ケイ酸の水および/またはアルコールなどの有機溶媒中のコロイド状分散体であるコロイダルシリカが好適に使用される。コロイダルシリカは粒径1〜100μmのシリカ微粒子を分散させたものが好適に使用される。また、コロイダルシリカは反射防止膜との密着性向上のためには5〜70重量%の範囲で好ましく使用される。
また、着色剤(染料および顔料)や充填剤を分散させたり、有機ポリマーを溶解させて塗膜を着色させることが可能である。さらに紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加も可能である。
【0120】
コーティング組成物のフィルムへの塗布手段としては、特に制限されず、例えばディップ法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、フローコート法、ロールコート法等の公知の方法が採用できる。面精度の点からディップ法、スピンコート法が好ましく用いられる。
フィルム上に塗布したコーティング組成物は、以下のようにして硬化してハードコート層を形成させる。熱硬化性ハードコート材料の場合、フィルムへ塗布後、乾燥および/または加熱などにより行われる。
【0121】
乾燥および/または加熱温度としては、50〜200℃の範囲で行うのが好ましく、特に好ましくは70〜150℃の範囲である。
乾燥および/または加熱は硬化膜が十分な硬度を与えるまで行われ、加熱温度が高くなるほど短時間で済み、0.3〜5時間かけて行うとよい。
【0122】
活性エネルギー線硬化性ハードコート材料の場合、フィルムへの塗布後、UV線、電子線、レーザーなどの活性エネルギー線照射により行われる。活性エネルギー線としては、特に限定されないが、UV線が好ましい。UV線源としてはキセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等が使用できる。
【0123】
なお、フィルムとハードコート層との密着性を高める目的で、コーティング組成物の塗布前にフィルムに対する前処理を行うのが好ましい。例えば、酸、アルカリ、有機溶剤などによる化学的処理、プラズマ、紫外線などの物理的処理、各種洗剤による洗浄処理、さらには各種樹脂を用いたプライマー処理等が例示される。
【0124】
上記方法で硬化させたハードコート層の厚さは、1〜50μmが好ましい。この層厚が50μm超では、硬化が不十分になりフィルムとの密着性が損われやすく、1μm未満では、この層の上に形成される最外層の耐摩耗性や耐擦傷性が十分発現できない恐れが有る。
【0125】
必要に応じて前記硬化層上に単層または多層の反射防止層を形成させてもよい。反射防止層の構成成分としては、無機酸化物、フッ化物、窒化物などの従来から公知のものが用いられる。具体的には、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化マグネシウム、窒化ケイ素等が挙げられる。その形成方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等が挙げられる。この反射防止層を設けることにより、反射防止性能が向上する。さらに前記硬化層または反射防止層の上にさらに防曇層を形成させてもよい。
【0126】
かくして、本発明の位相差フィルムは液晶表示装置、反射型液晶表示装置、有機または無機のエレクトロルミネッセンス素子、液晶プロジェクター、光記録再生装置における光ピックアップ光学系、タッチパネル、反射防止フィルム等の光学装置において好適に用いられる。液晶プロジェクターには偏光変換素子や偏光ビームスプリッタ−が用いられているが、これらと本発明の位相差フィルムを組み合わせて用いることが可能である。光ピックアップ系においては、例えば偏光ビームスプリッターと本発明の位相差フィルムのうち、位相差を4分の1とした4分の1波長板とを組み合わせることにより、性能の良い光ピックアップを作製することが可能となる。また、本発明の位相差フィルムを偏光板と組み合わせることにより、円偏光板や楕円偏光板を形成することができる。円偏光板は反射防止フィルムとして、有機エレクトロルミネセンス素子やタッチパネル、プラズマデイスプレイ、CRT、液晶表示装置等に好適に用いることができる。本発明の位相差フィルムのうち、位相差が短波長ほど小さくなる位相差フィルムを該反射防止フィルムとして用いたならば、フィルム一枚で広帯域の波長にて反射率を抑えることができるという優れた効果を有する。
【0127】
位相差フィルムとして特に好ましい構成は、以下の式(I)と(iii)の繰返し単位を有するものである。本構成は透明性、高い耐熱性、低い光学弾性定数、延伸性、そして下記繰返し単位の比率により自由に位相差波長分散を制御できるといった位相差フィルムとしては好適な特性を有している。
【0128】
【化22】
【0129】
【化23】
【0130】
位相差フィルムを形成する共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、フェノール性水酸基(OH基)の末端基の含有割合が全末端基当り1〜80モル%の範囲、好ましくは2〜70モル%の範囲のものが好適である。さらに比粘度が0.3〜2.0の範囲であることが好ましく、さらに0.3〜0.7の範囲がより有利である。また分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜3の範囲、好ましくは1.3〜2.8の範囲のものが有利である。
【0131】
位相差フィルムの厚みは1〜200μmの範囲、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは15〜100μmの範囲であるのが望ましい。
位相差フィルムの製造方法としてはそれ自体公知の方法が用いられる。例えばフィルムの製法は、厚みの均一性に優れ、ゲル、フィッシュアイ、スクラッチ等が生じない方法および異物の含有量が少ない方法が好ましく、例えば溶液キャスト法、溶融押出し法、カレンダー法等が挙げられる。なかでも、高度な均一性を要求される場合には、溶液からのキャスティング法が好ましく採用される。キャスティング法は、一般にはダイから溶液を押出すキャスティング法、ドクターナイフ法等が好ましく用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジオキソラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶媒が好ましい。これらは1種でもよいし、2種以上の混合溶媒でもよい。溶液濃度は5〜50重量%溶液が好ましく用いられる。フィルム製膜法としては好ましくは溶液キャスト法であり、延伸方法としては縦一軸、横一軸、多段延伸同時二軸延伸等用いても良い。溶液キャストの溶媒としてはジクロロメタン、ジオキソラン等が好適に用いられる。
【0132】
さらに、位相差フィルムには前述したとおりフェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0133】
位相差フィルムには公知の可塑剤であるジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル、脂肪族二塩基エステル、グリセリン誘導体、グリコール誘導体等が含有してもよい。延伸時には、前述のフィルム製膜時に用いた有機溶剤をフィルム中に残留させ延伸しても良い。この有機溶剤の量としてはポリマー固形分対比1〜20wt%であることが好ましい。
また、上記可塑剤や液晶等の添加剤は、本発明の位相差フィルムの位相差波長分散を変化させ得るが、添加量は、ポリマー固形分対比10wt%以下が好ましく、3wt%以下がより好ましい。
【0134】
位相差波長分散はかなりの部分がその化学構造で決まるが、延伸条件、ブレンド状態等によっても変動することに留意されるべきである。
本発明の位相差フィルムは特に1枚の高分子配向フィルムをもって波長依存性が少ない良好な四分の一波長板(λ/4板)あるいは二分の一波長板(λ/2板)を構成することもできるが、この用途のためにはR(550)≧50nmが望ましく、より望ましくはR(550)≧90nmであり、特にλ/4板として用いるためには 100nm≦R(550)≦180nmであること、λ/2板として用いるためには220≦R(550)≦330nmであることが望ましい。
【0135】
より一般的に述べると、本発明の位相差フィルムが、1枚で広帯域λ/4板として用いることができるためには、位相差波長分散が
0.60<R(450)/R(550)<0.97かつ
1.01<R(650)/R(550)<1.40
より好ましくは
0.65<R(450)/R(550)<0.92かつ
1.03<R(650)/R(550)<1.30
さらに好ましくは
0.70<R(450)/R(550)<0.87かつ
1.04<R(650)/R(550)<1.25
の範囲内であることが好ましい。また、本発明の位相差フィルムは、粘着層、接着層を介して偏光板と貼り合わせて円偏光板または楕円偏光板としたり、また、位相差フィルム上に何らかの材料をコーティングして湿熱耐久性を向上させたり、耐溶剤性を改良したりしても良い。また、本発明の位相差フィルム上に反射防止手段を形成してもよく、そのようなフィルムは光学部品として、例えば、光ピックアップや投写型表示装置の光学装置にて使用することが可能である。
【0136】
また、本発明の位相差フィルムを複数枚用いて所望の光学特性を得ても良い。例えば2分の1波長板と4分の1波長板を作製し、適当な角度で貼り合わせることにより、広帯域4分の1波長フィルムを形成することが可能であるし、また、2分の1波長板同士を適当な角度で貼りあわせることにより、広帯域2分の1波長板を形成することが可能である。また、『Society for Information Display 2001 International Symposium Digest of Technical Papers』のp906〜909に記載されているような配置にて本発明のフィルムを使用し、視野角及び広帯域性を有する積層フィルムを作製することは可能である。さらに、本発明の位相差フィルムとは異なる他の位相差フィルム、例えば、高分子液晶からなる光学補償フィルムや、デイスコチック液晶を配向硬化させた視野角拡大フィルム等と一緒に液晶表示装置中にて用いても良い。
【0137】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、実施例中の部および%は重量部および重量%である。なお、各種物性などは以下の方法により評価した。
(1)比粘度
塩化メチレンを溶媒として、0.7g/100mlの濃度で測定した。なお、測定温度を20℃とした。
(2)屈折率およびアッベ数
ポリカーボネート樹脂のキャスティングフィルム(厚み100μm)を作成し、アタゴ(株)製アッベ屈折計によりジヨードメタンを接触液として25℃で測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製 DSC2910を用いて測定した。
【0138】
(4)光弾性定数
理研機器(株)製の光弾性測定装置PA−150により厚さ100μmのキャストフィルムを用いて測定した。
(5)全光線透過率
ASTM D−1003に準拠し、日本電色(株)製ヘーズメーターNDH2000により測定した。
(6)位相差(R値)の測定
位相差R値は、複屈折Δnと膜厚dの積であり、R=Δn・dで表される。一軸延伸したポリカーボネート樹脂のキャスティングフィルムを日本分光社(株)製エリプソメータM−150により測定した。なお、以下実施例において、R(450),R(550),R(650)とは、それぞれ測定波長450,550,650nmにおける位相差値である。
(7)溶解性試験
溶媒(塩化メチレン、テトラヒドロフラン)100mLにポリマーを10gを加え、マグネチックスターラーで1時間攪拌後、溶解性を目視で確認。
判断基準は、○:透明、△:一部不溶、×:不溶とした。
【0139】
参考例1
1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)72.0重量部、ビスフェノールA(BPA)114重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)を220重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を0.18重量部、水酸化ナトリウム8×10−4重量部を攪拌装置、蒸留器および減圧装置を備えた反応槽に仕込み、窒素置換した後、140℃で溶解した。30分間攪拌後、内温を180℃に昇温しつつ徐々に減圧し1.33×104Paで30分間反応させ、生成するフェノールを留去した。次に同圧に維持しながら昇温し続け、190℃で30分間、200℃で40分間、220℃で30分間、さらに240℃で30分間フェノールを留去せしめ反応させた。その後、ゆっくりと減圧し240℃、133Pa以下とした。133Pa以下に到達後、4時間攪拌下で反応せしめた。失活剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を2.3×10−2重量部添加後、240℃、1.33×104Paで20分間攪拌した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながらペレタイザーでカットしてペレットとした。得られたペレットを塩化メチレンに溶解し、濃度40重量%の溶液を作成した。このポリカーボネート溶液を15℃でガラス板上にアプリケーターを用いて流延し、徐々に温度を上げながら塩化メチレンを蒸発し、ガラス板より剥離してさらに加熱して塩化メチレンを除去して縦297mm、横210mm、厚さ156μmのA4版のフィルムを得た。このフィルムは透明性に優れ、キャスティング製膜性は良好であった。次いで、このフィルムを100℃で150%縦一軸延伸し、延伸後の膜厚127μmのフィルムを得た。延伸性は良好であった。
このフィルムの各種評価結果を表1に示した。
【0140】
実施例1
CHDM101重量部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)113重量部を用いた以外は、参考例1と同様な操作を行い厚さ120μmのA4版のフィルムとした。このフィルムは透明性に優れ、キャスティング製膜性は良好であった。次いで、このフィルムを118℃で200%縦一軸延伸し、延伸後の膜厚90μmのフィルムを得た。延伸性は良好であった。
このフィルムの各種評価結果を表1に示した。
【0141】
比較例1
ビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製パンライトC−1400)を用いて評価した。このパウダーを塩化メチレンに溶解し、濃度20重量%の溶液を作成した。このポリカーボネート溶液を15℃でガラス板上にアプリケーターを用いて流延し、徐々に温度を上げながら塩化メチレンを蒸発し、ガラス板より剥離してさらに加熱して塩化メチレンを除去して縦297mm、横210mm、厚さ100μmのA4版のフィルムを得た。このフィルムは透明性に優れ、キャスティング製膜性は良好であった。次いで、このフィルムを160℃で150%縦一軸延伸した。
このフィルムの各種評価結果を表1に示した。
【0142】
実施例2
CHDM98重量部、BCF121重量部を用いた以外は、参考例1と同様な操作を行い厚さ140μmのA4版のフィルムとした。このフィルムは透明性に優れ、キャスティング製膜性は良好であった。次いで、このフィルムを119℃で200%縦一軸延伸し、延伸後の膜厚105μmのフィルムを得た。延伸性は良好であった。
このフィルムの各種評価結果を表1に示した。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例3
実施例2で作製したフィルムを任天堂(株)社製の携帯型ゲーム機である『ゲームボーイカラー』に搭載されている一枚偏光板反射型液晶表示装置に組み込み評価した。その構成は観測者側から、偏光板/実施例2で作製した位相差フィルム/ガラス基板/ITO透明電極/配向膜/ツイストネマチック液晶/配向膜/金属電極兼反射膜/ガラス基板である。各層間の粘着層は省略してある。電圧オフ時に白表示となるような角度で貼り合わせて、目視にて色味の評価を実施した。この位相差フィルムはλ/4板として機能している。この市販品はビスフェノールAのホモ重合体からなるポリカーボネートフィルムで位相差の異なるものを2枚使用(略二分の一波長と四分の一波長の位相差)しているが、実施例2のフィルムを1枚だけ使用した場合は、特に黒表示時における着色が少なく、それによりコントラストが高く視認性に優れることが確認できた。
【0145】
実施例4
実施例1で作製したフィルムをコレステリック液晶からなる反射型偏光板上に設置して、市販のバックライト/コレステリック液晶層/実施例1のフィルム/偏光板の構成にて色味を評価した。実施例1のフィルムはλ/4板として機能している。そのフィルムの遅相軸と偏光板の偏光軸のなす角を45°とした。偏光板から出射された光は着色の少ない白状態であった。
Claims (9)
- 下記一般式(I)
(ただし前記構成単位(II)において、R1およびR2はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基または炭素数7〜20のアラルキルオキシ基であって、qおよびrはそれぞれ0〜4の整数であり、R 7 およびR 8 はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。) - 共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物が、0.3〜2.0の比粘度を有する請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物が、フェノール性水酸基(OH基)の末端基の含有割合が全末端基当り1〜80モル%の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物の重量平均分子量/数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.1〜3の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 上記一般式(I)で表される構成単位(I)および上記式(II)で表される構成単位(II)からなる共重合ポリカーボネート樹脂より形成された請求項1〜6のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルムを用いたことを特徴とする光学装置。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の位相差フィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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