以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素については同じ符号を付しており、説明を省略する場合がある。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるコネクタの構成を説明するための断面図である。図1(a)は雌側コネクタ20の断面図、図1(b)は雄側コネクタ40の断面図、および図1(c)は雌側コネクタ20と雄側コネクタ40とを係合させた状態の断面図である。
本実施の形態にかかる雌側コネクタ20は、図1(a)に示すように特殊な形状の複数のソケットコンタクト10が絶縁性のハウジング12に一定のピッチで一列に配列され、さらに外部機器と接続するための接続端子14が設けられた構成からなる。
すなわち、少なくとも表面が導電性を有するソケットコンタクト10は、同一の曲面形状を有し、所定の空間を設けて対向して配置した一対の接触部2と、この一対の接触部2により構成され、一方が開口し、他方に向かう方向に少なくとも湾曲部6を有するピン挿入部4と、一対の接触部2から延在された延在部8とを含んで形成されている。
このソケットコンタクト10は、延在部8がピン挿入部4の開口した面の反対側に露出し、ピン挿入部4を一定の配列ピッチとするように絶縁性のハウジング12により固定されている。本実施の形態では、ハウジング12は、隣接するソケットコンタクト10の間を充填するとともに、これらを接着する絶縁性樹脂と、ソケットコンタクト10を挟むように設けられている絶縁平板(図示せず)とから構成されている。また、延在部8には、外部機器(図示せず)と接続するための接続端子14が設けられている。
一方、図1(b)に示すように、雄側コネクタ40は、コンタクトピン44がピン挿入部4の配列ピッチと同じピッチで絶縁性基材42に対して垂直方向にそれぞれ植設されて構成されている。このコンタクトピン44は、雌側コネクタ20のピン挿入部4の空間よりも小さく、ピン挿入部4の全長よりも短い導電体平板で、かつ弾性部材からなる。このコンタクトピン44は、絶縁性基材42に設けた貫通孔に挿入し、電極端子46と、例えばハンダを用いてハンダ付け部48で接続、固定されている。なお、導電体平板としては、ばね性を有する金属板を用いることが好ましいが、それに限定されない。例えば、ばね性を有する樹脂板の表面にめっきや蒸着等により導電性を付与したものでもよい。
このように構成された雌側コネクタ20と雄側コネクタ40とを、図1(c)に示すようにして係合させる。すなわち、雄側コネクタ40のコンタクトピン44と雌側コネクタ20のピン挿入部4とを位置合せする。つぎに、雄側コネクタ40を雌側コネクタ20の方向に押しこむと、複数個のコンタクトピン44がそれぞれ対応するソケットコンタクト10のピン挿入部4に挿入される。そして、ピン挿入部4の湾曲部6の位置をこえると、コンタクトピン44の先端が弾性変形する。そして、コンタクトピン44は弾性変形を生じながら、ピン挿入部4を構成する接触部2に沿って延在部8の近傍まで進入する。そして、雄側コネクタ40の絶縁性基材42が雌側コネクタ20のハウジング12の上面に当たる位置で止まると、図1(c)に示した係合状態となる。この状態では、ソケットコンタクト10のピン挿入部4において、コンタクトピン44はソケットコンタクト10の接触部2と弾性変形力により少なくとも2箇所で弾接し、安定な電気的接続と機械的固定が可能となる。
なお、雌側コネクタ20と雄側コネクタ40の両端部のそれぞれ対応する位置に、例えば雄側コネクタ40には、ガイドピンを設け、雌側コネクタ20には、このガイドピンに対応するガイド孔を設けてもよい。この場合に、ガイドピンの長さはコンタクトピン44の長さより長くしておけば、より容易に、かつ確実にコンタクトピン44をピン挿入部4に挿入することができる。
また、ガイドピンとガイド孔とにラチェット機構も付加してもよい。ラチェット機構を設けておけば、挿入感が得られるだけでなく、より確実な固定も可能となる。
つぎに、本実施の形態にかかるコネクタのうち、雌側コネクタ20の製造方法について説明する。
図2および図3は、雌側コネクタ20の製造方法を説明するための主要工程の平面図である。また、図4は、図2および図3に示すうちの主要工程の断面図である。なお、図4(a)は、図2(a)に示すA−A線に沿った断面図である。また、図4(b)は、図2(b)に示すB−B線に沿った断面図である。さらに、図4(c)は、図3(a)に示すC−C線に沿った断面図である。また、図4(d)は、図3(d)に示すD−D線に沿った断面図である。さらに、図4(e)は、図1(a)と同じ図である。
最初に、少なくとも表面が導電性を有する曲面板24を、本実施の形態では、例えば金属板を用いて折り曲げ加工等により形成する。以下、これを金属製曲面板24とよぶ。この金属製曲面板24の断面形状は図4(a)からもわかるように、最終的に接触部となる板状部24A、この一対の板状部24Aにより形成され、ピン挿入部となる開口領域24B、湾曲部となる領域24Cおよび延在部となる平面部24Dが形成されている。さらに、この金属製曲面板24は、後述するように切断後に複数の列状構造体を得られる長さを、この断面に対して垂直方向に有している。
この金属製曲面板24の加工は、例えば折り曲げ加工等により形成する。そのための金属板としては、例えば銅板、ステンレス板等、折り曲げが容易で、薄板状であれば、特に制約なく使用できる。なお、表面に金(Au)めっき等を施しておくと、コンタクトピンを挿入したときの接触抵抗を小さくできることから好ましい。
この金属製曲面板24の厚みとしては、特に制約はないが薄すぎると、加工中に折り曲げた状態を保持し難くなることから、50μm以上が望ましい。また、厚すぎると、加工し難くなり、かつコンタクトピンのピッチも小さくできなくなるため、0.2mm程度以下が望ましい。
また、コンタクトピンはピン挿入部に沿って弾性変形しながら挿入できる程度の強度が必要である。このためには、金属材料の弾性率にも依存するが、0.1mm〜0.2mm程度の厚みとすることが望ましい。したがって、ピン挿入部となる開口の大きさは、この厚みより大きく設定することが要求される。
このような金属製曲面板24を平板22上に、図2(a)および図4(a)に示すように一定のピッチで配置して固定する。なお、配置するときに、金属製曲面板24間にスペーサを設けておいてから平板22に固定し、その後スペーサを除去するようにしてもよい。このようにすれば、ファインピッチで、しかも高精度に配置して固定できる。この固定方法としては、例えば接着剤で固定してもよい。このような金属製曲面板24を用いて平板22上に配置した場合、ピン挿入部のピッチを、例えば0.6mm程度とすることも可能となり、ファインピッチのコネクタを形成できる。
また、平板22としては、樹脂材料でも金属材料でも使用できるが、後述するように平板22ごと切断するので、切断が容易にできる材料を用いることが望ましい。
つぎに、図2(b)および図4(b)に示すように、金属製曲面板24を囲むように隔壁26を設ける。この隔壁26は、ハウジング12の一部となる絶縁性接着樹脂28を注入していくときに、絶縁性接着樹脂28が平板22の外部に流れ出さないようにすること、および金属製曲面板24の開口領域24Bに流れこむことを防止するために設ける。したがって、隔壁26は金属製曲面板24および平板22に密着させることが望ましい。隔壁26の材料は、平板と同様に特に制約はなく、樹脂材料でも金属材料でも使用可能である。ただし、この隔壁26も最終的に切断するので、平板22と同じ材料を用いることが好ましい。
つぎに、図3(a)および図4(c)に示すように、隔壁26で囲まれた領域に絶縁性接着樹脂28を注入する。このとき、金属製曲面板24の開口領域24Bは隔壁26により保護されているので絶縁性接着樹脂28は入りこまない。なお、この絶縁性接着樹脂28は、金属製曲面板24の平面部24Dとほぼ同じ高さまで注入する。注入後に硬化させると、隣接する金属製曲面板24がこの絶縁性接着樹脂28により接着固定される。
つぎに、図3(b)および図4(d)に示すように、金属製曲面板24の延在部となる平面部24D上に接続端子となる電極膜30を形成する。このとき、平面部24Dの表面にまで絶縁性接着樹脂28が形成されている場合には、平面部24Dが露出するまで研磨してから電極膜30を形成する。この電極膜30としては、平面部24Dの表面に、例えば銅(Cu)やニッケル(Ni)膜を設け、さらにハンダまたは金(Au)膜を設ける。なお、平面部24Dのみに限定されず、絶縁性接着樹脂28の表面にまで形成してもよい。
なお、本実施の形態のように、金属製曲面板24の延在部となる平面部24Dが露出している場合には、特に電極膜を形成せずに、この露出部を最終的に接続端子として用いてもよい。
つぎに、図3(c)に示すように、複数の金属製曲面板24、絶縁性接着樹脂28、隔壁26および平板22を、金属製曲面板24の配列方向に対して直交する方向に切断する。この切断は、ダイシング装置を用いることが好ましい。また、切断する幅は、最終的に作製するコネクタの形状に合せる。一般的には、2mm〜10mm程度の範囲とすることが多い。このダイシングにより、同一の曲面形状を有し、所定の空間を設けて対向して配置された一対の金属製の接触部2と、一対の接触部2により形成され、一方が開口し、他方に向かう方向に少なくとも湾曲部6を有するピン挿入部4とが列状に配置された列状構造体32が形成される。さらに、本実施の形態の場合には、この列状構造体32の段階において、接続端子14も形成されている。
つぎに、図3(d)および図4(e)に示すように、列状構造体32のピン挿入部4を両側から絶縁平板18により挟みこみ、接着固定する。この接着は上記の絶縁性接着樹脂28と同じ材料を用いることが好ましい。絶縁性接着樹脂28と絶縁平板18とにより、雌側コネクタ20のハウジング12が構成される。
以上により、本実施の形態にかかる雌側コネクタ20を作製することができる。本実施の形態にかかる雌側コネクタ20は、ソケットコンタクト10がハウジング12に固定されている。雄側コネクタ40とは、コンタクトピン44が弾性変形することで雌側コネクタ20のピン挿入部4と係合する構造である。このため、雌側コネクタ20の構成が簡単で、かつファインピッチのピン配置にも対応可能なコネクタを実現できる。
なお、本実施の形態では、曲面板24として金属板を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4(a)に示す曲面板24を樹脂成型等により形成し、その表面に蒸着やめっきにより導体を形成したものを用いてもよい。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかるコネクタにおいて、雌側コネクタ35の構造を示す平面図と斜視図である。本実施の形態にかかる雌側コネクタ35は、ピン挿入部が2列に配列されていることが特徴であり、第1の実施の形態で説明した図3(c)に示す列状構造体32を2本用いて、これらを絶縁平板18により挟み、接着固定して作製する。
図5(a)は、2本の列状構造体32を絶縁平板18により挟み、接着固定した状態を示す平面図である。この工程は、図3(c)と同じ方法により作製することができるので説明を省略する。
図5(b)および図5(c)は、平板22および隔壁26を除去することにより、本実施の形態の雌側コネクタ35とした構成を示す平面図と斜視図である。なお、図5(b)は接続端子14側から見た平面図であり、図5(c)に示す斜視図はソケットコンタクト10の開口した側から見た斜視図である。なお、平板22および隔壁26を除去して雌側コネクタ35とする方法は、第1の実施の形態の図3(d)および図4(e)で説明した方法と同じであるので説明を省略する。
以上のような工程により、2列構成の本実施の形態の雌側コネクタ35が得られる。なお、列状構造体32の湾曲部6の向きが、それぞれ別々の方向になるように配置することもできる。このように湾曲部6の向きを、それぞれの列状構造体32で変えると、雄側コネクタのコンタクトピンを挿入するときに、コンタクトピンの弾性変形方向が互いに異なるようになるため、挿入動作がより安定する。
なお、本実施の形態の雌側コネクタ35に対応する雄側コネクタは、第1の実施の形態の図1(b)に示す雄側コネクタ40と同じ方法により作製することができる。すなわち、絶縁性基材に雌側コネクタ35のピン挿入部の配列ピッチと同じピッチで形成された貫通孔に対して垂直方向にコンタクトピンをそれぞれ植設し、一方の表面に形成されている電極端子とコンタクトピンとを、例えばハンダ付けにより接続し、固定すれば容易に作製することができる。
さらに、本実施の形態の雌側コネクタ35では、ピン挿入部4を2列に配列したが、本発明はこれに限定されない。例えば、列状構造体を3本、4本あるいはそれ以上用いて、これらを絶縁平板で接着固定して、3列構造、4列構造、あるいはそれ以上の列構造を有する雌側コネクタを作製することも容易にできる。また、このような雌側コネクタに対応する雄側コネクタも、上記した方法と同様な方法により容易に作製することができる。このような構成のコネクタは、従来のコネクタに比べて小面積の領域で多ピン構造を実現することができる。
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態にかかるコネクタにおける雌側コネクタの50の平面図と断面図である。なお、図6(b)は、図6(a)に示すX−X線に沿った断面図である。本実施の形態の雌側コネクタ50は、額縁状の額縁領域にピン挿入部4が配列されていることが特徴である。額縁領域には、一対の接触部2とそれにより形成されるピン挿入部4を備えたソケットコンタクト10が絶縁性接着樹脂28により接着固定され、これらの周囲に外周側絶縁平板19Aと内周側絶縁平板19Bとからなる絶縁平板19が接着固定されている。すなわち、額縁領域の4つの辺のそれぞれについてみれば、第1の実施の形態の雌側コネクタと同じ形状である。
なお、ピン挿入部4の湾曲部の向きについては、対向する辺同士が異なる方向に向くように配置してもよい。このような配置とすると、雄側コネクタのコンタクトピンを挿入していくときに滑らかに行うことができる。
図7は、本実施の形態の雌側コネクタ50を製造するための主要工程を説明するための図である。図7(a)は、額縁形状を作製するための4つの辺を構成する列状構造体33のうちの1つを示す平面図で、図7(b)はその断面図である。また、図7(c)は、平板23上において列状構造体33を額縁状に形成する工程を示す平面図で、図7(d)はそのE−E線に沿った断面図である。
図7(a)および図7(b)からわかるように本実施の形態の列状構造体33は、第1の実施の形態の図3(c)に示した列状構造体32の両端部を切断した構造である。その他の構造については、図3(c)と同じであるので説明を省略する。なお、両端部の切断は、図3(c)に示すような形状とした後に切断してもよいし、あるいは図3(b)まで作製した状態で切断し、その後図3(c)に示すような個辺に切断してもよい。
つぎに、図7(c)および図7(d)に示すように、図7(a)および図7(b)に示した列状構造体33を平板23上で額縁状に配置する。このとき、平板23上にあらかじめ外周側絶縁平板19Aと内周側絶縁平板19Bとからなる絶縁平板19を配置しておき、列状構造体33をこれらにより形成される隙間に挿入し、接着固定してもよい。
このようにして外周側絶縁平板19Aと内周側絶縁平板19Bとからなる絶縁平板19により列状構造体33を接着固定すると、4つの列状構造体33は絶縁平板19により一体化して額縁形状が作製される。
この後、平板23を除去する。つぎに、平板22、外周側絶縁平板19Aおよび内周側絶縁平板19Bを一緒に研磨して除去して、ピン挿入部4の開口を露出させる。これにより、図6に示す額縁状の形状を有する雌側コネクタ50が作製される。なお、本実施の形態では、外周側絶縁平板19Aおよび内周側絶縁平板19Bからなる絶縁平板19と絶縁性接着樹脂28とによりハウジング130が構成される。
なお、本実施の形態の雌側コネクタ50に対応する雄側コネクタは、第1の実施の形態の図1(b)に示す雄側コネクタ40と同じ方法により作製することができる。すなわち、絶縁性基材に雌側コネクタ50のピン挿入部の配列ピッチと同じピッチで形成された貫通孔に対して、垂直方向にコンタクトピンをそれぞれ植設し、一方の表面に形成されている電極端子とコンタクトピンとを、例えばハンダ付けにより接続し、固定すれば容易に作製することができる。
なお、本実施の形態では、額縁を構成する列状構造体をすべてほぼ同じ形状としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、長方形状としてもよい。この場合には、列状構造体とするための図3(c)に示す形状を複数種類作製して用いれば容易に作製できる。
(第4の実施の形態)
図8は、本発明の第4の実施の形態にかかるコネクタにおける雌側コネクタを製造する方法を示す主要工程の断面図と上面図である。なお、図8(a)から図8(c)までは、断面図であり、図8(d)は図8(c)の上面図である。
本実施の形態にかかる雌側コネクタは第1の実施の形態の雌側コネクタ20とほとんど同じ形状および構造である。ただし、図8からわかるように、少なくとも表面が導電性を有する曲面板25の延在部領域25Dが折り曲げられた形状をしている。このような形状は、第1の実施の形態と同様に、金属板を金属板の加工、例えば折り曲げ加工等により容易に形成できる。全体としては、この金属製の曲面板25の断面形状は第1の実施の形態で説明した構造と同じである。本実施の形態では、金属板を用いて曲面板25を形成する場合について説明するので、以下ではこれを金属製曲面板25とよぶ。
すなわち、図8(a)からもわかるように、金属製曲面板25には、最終的に接触部となる板状部25A、この一対の板状部25Aにより形成され、ピン挿入部となる開口領域25Bおよび湾曲部となる領域25Cが設けられており、さらに本実施の形態では最終的に延在部となる延在部領域25Dが金属板を折り曲げて突出するように形成されている。この金属製曲面板25は、後述するように切断後に複数の列状構造体を得られる所定の長さを、この断面に対して垂直方向に有している。
この金属製曲面板25の加工は、例えば折り曲げ加工等により形成する。そのための金属板としては、例えば銅板、ステンレス板等、折り曲げが容易で、薄板状であれば、特に制約なく使用できる。なお、表面に金(Au)めっき等を施しておくと、コンタクトピンを挿入したときの接触抵抗を小さくできることから好ましい。これについては、第1の実施の形態と同様である。
図8(a)に示すように、この金属製曲面板25を平板22上に一定の配列ピッチで配置する。この配置については、第1の実施の形態と同じである。
つぎに、図8(b)に示すように、金属製曲面板25を囲むように隔壁26を設ける。この隔壁26は、ハウジング12の一部となる絶縁性接着樹脂28を注入していくときに、絶縁性接着樹脂28が平板22の外部に流れ出さないようにすること、および金属製曲面板25の開口領域25Bに流れこむことを防止するために設ける。したがって、隔壁26は金属製曲面板25および平板22に密着させることが望ましい。また、本実施の形態の場合には、この隔壁26は延在部領域25Dよりも低く形成する。隔壁26の材料は、平板22と同様に特に制約はなく、樹脂材料でも金属材料でも使用可能である。ただし、この隔壁26も最終的に切断するので、平板22と同じ材料を用いることが好ましい。
つぎに、隔壁26で囲まれた領域に絶縁性接着樹脂28を注入する。このとき、金属製曲面板25の開口領域25Bは隔壁26により保護されているので絶縁性接着樹脂28は入りこまない。また、隔壁26は金属製曲面板25の延在部領域25Dよりも低く形成されているので、絶縁性接着樹脂28を隔壁26と同じ高さまで注入しても延在部領域25Dは露出した状態を保持する。このように注入した後、硬化させると、隣接する金属製曲面板25同士が絶縁性接着樹脂28により接着固定される。
つぎに、第1の実施の形態と同様に、複数の金属製曲面板25、絶縁性接着樹脂28、隔壁26および平板22を、金属製曲面板25の配列方向に対して直交する方向に切断する。この切断は、ダイシング装置を用いることが好ましい。また、切断する幅は、最終的に作製するコネクタの形状に合せる。一般的には、2mm〜10mm程度の範囲とすることが多い。このダイシングにより、延在部の形状以外については、第1の実施の形態と同様な構造の列状構造体が得られる。
つぎに、第1の実施の形態と同様に列状構造体を絶縁平板18で挟み、接着固定する。この接着は上記の絶縁性接着樹脂28と同じ材料を用いることが好ましい。絶縁性接着樹脂28と絶縁平板18とにより、雌側コネクタのハウジング12が構成される。
この後、図8(c)および図8(d)に示すように、平板22と隔壁26を除去すると雌側コネクタが得られる。以上により、本実施の形態にかかる雌側コネクタを作製することができる。本実施の形態にかかる雌側コネクタは、ソケットコンタクト11がハウジング12に固定されている。また、ソケットコンタクト11は、同一の曲面形状を有し、所定の空間を設けて対向して配置した一対の接触部3と、この一対の接触部3により構成され、一方が開口し、他方に向かう方向に少なくとも湾曲部7を有するピン挿入部5と、一対の接触部3から延在された延在部9とを含んで形成されている。
このソケットコンタクト11は、延在部9がピン挿入部5の開口した面の反対側に露出し、ピン挿入部5を一定の配列ピッチとするように絶縁性のハウジング12により固定されている。
さらに、本実施の形態では、延在部9がそのまま接続端子となる。すなわち、本実施の形態の雌側コネクタは接続端子が突出したピン挿入型である。延在部9である接続端子を、例えば回路基板の貫通孔に挿入してハンダ付け等により電気的および機械的に固定して使用することができる。
なお、この雌側コネクタに係合する雄側コネクタは第1の実施の形態で説明した雄側コネクタ40を用いることができる。
(第5の実施の形態)
図9は、本発明の第5の実施の形態にかかるコネクタの係合状態を示す断面図である。図10および図11は、雌側コネクタを上面側から見た平面図および断面図である。
本実施の形態によるコネクタは、雌側コネクタ62と雄側コネクタ63とが図9に示すように係合するように構成されている。係合状態自体は、第1の実施の形態で説明したコネクタと同じであるが、本実施の形態ではガイド部を設けてあることおよび配線基板80の貫通孔にソケットコンタクト65の延在部65Bが挿入されて、ハンダ付け等により接続されていることが主な差異である。また、本実施の形態にかかる雌側コネクタ62の製造方法は第1の実施の形態から第4の実施の形態までに説明した方法とは異なる。
以下、コネクタの構造および雌側コネクタの製造方法について説明する。
雌側コネクタ62は、ハウジング64に複数個の同一形状で同一寸法を有するソケットコンタクト65が所定のピッチで配列され、収納固定されて構成されている。ハウジング64は、例えば液晶ポリマーやポリブチレンテレフタレート等の高耐熱性の絶縁性樹脂を用いることが望ましい。また、それぞれのソケットコンタクト65は、例えば銅合金等からなる一対の接触部65A、これらの接触部65Aから延在されている延在部65Bおよび一対の接触部65Aにより形成されるピン挿入部66により構成されている。
このピン挿入部66は、図11に示すような形状を有している。すなわち、開口部から中間の位置の湾曲部66Aまでは、後述のコンタクトピン71の挿入方向に沿った直線形状であるが、湾曲部66Aから閉端部までは曲面形状を有する。図9に示すように、このピン挿入部66に沿って後述のコンタクトピン71が挿入され、弾接することにより電気的接続が行われる。
そして、ソケットコンタクト65は、ピン挿入部66の接触部65Aから延在された延在部65Bが接続端子となり、図9に示すように電子機器の配線基板80にハンダ付け等により接続される。
雌側コネクタ62は、これらのソケットコンタクト65を嵌合する樹脂ケース67と樹脂板76とにより接着固定されており、この樹脂ケース67と樹脂板76とによりハウジング64を構成している。なお、樹脂ケース67は、板状部69と、そこから突出している仕切壁68と、ガイドピン72を挿入するためのガイド孔73とから主として構成されている。
一方、図12に、雄側コネクタ63の上面側から見た平面図、断面図および下面側から見た平面図をそれぞれ示す。雄側コネクタ63は、絶縁性基材70にソケットコンタクト65と同じピッチで設けられた貫通孔中にコンタクトピン71が並行に植設されて構成されている。なお、絶縁性基材70は、例えば絶縁性材料であるポリエチレンテレフタレートやガラスエポキシ樹脂、あるいはセラミック等の絶縁材料を用いることができる。図13は、このコンタクトピン71の側面図である。図13に示すように本実施の形態では、コンタクトピン71は、例えば燐青銅板やステンレス鋼板等の弾性を有する金属板を打抜き加工して形成することができる。
このような形状のコンタクトピン71の中間の突部71Aより上部が、絶縁性基材70のランド部70Aの設けられていない側から貫通孔に圧入、植設されて、ランド部70Aの中央に出た上端部71Bがランド部70Aにハンダ74等で接続され固定されている。そして、雌側コネクタ62のピン挿入部66より薄く、かつピン挿入部66の長さよりも短い挿入ピン71Cが絶縁性基材70の下方に突出している。
このコンタクトピン71は厚みが薄く、かつその幅も小さいので、ソケットコンタクト65のピン挿入部66が曲面状であっても、コンタクトピン71の挿入力を比較的小さくすることができ、かつ確実な接触も可能となる。
なお、雄側コネクタ63の絶縁性基材70の両端には、コンタクトピン71の挿入ピン71Cよりも長いガイドピン72が挿入ピン71Cと並行に立設されている。一方、雌側コネクタ62のハウジング64の両端部には、ガイドピン72を挿入するためのガイド孔73が設けられている。
なお、上記においては、雄側コネクタ63のガイドピン72と雌側コネクタ62のガイド孔73とにより構成されるガイド部を用いることで、ソケットコンタクト65のピン挿入部66にコンタクトピン71の挿入ピン71Cを容易に係合させることができる。しかし、本発明においては、このようなガイド部は必須ではない。ガイド部を設けることなく、ソケットコンタクト65のピン挿入部66にコンタクトピン71の挿入ピン71Cを位置合せして挿入するようにしてもよい。ただし、ガイド部を設けることによって、雄側コネクタ63と雌側コネクタ62とをより容易に、かつ確実に係合させることができる。また、コンタクトピン71の挿入ピン71C等が損傷を受けることも少なくできる。
なお、雄側コネクタ63のコンタクトピン71の挿入ピン71Cの先端部を曲面状に形成しておくとピン挿入部66に沿って挿入するときに、より円滑に挿入できる。また、コンタクトピン71およびソケットコンタクト65のそれぞれの表面を、例えば金(Au)めっきしておくと、接触抵抗を下げることができるので好ましい。
また、ソケットコンタクト65のピン挿入部66の湾曲部66Aまでの距離を、それぞれのソケットコンタクト65により少しづつ異ならせた構成とすると、雄側コネクタ63を雌側コネクタ62に挿入するときの押しこみ荷重が湾曲部66Aで急激に大きくなることを抑制して、平均した押しこみ荷重で押しこむことができる。
つぎに、本実施の形態にかかるコネクタのうち、ポイントとなる雌側コネクタ62の製造方法について説明する。
まず、銅合金板等の金属板を打抜き加工またはエッチング加工する。図14は、金属板を加工した状態を示す平面図である。図14に示すように、連結板は、ソケットコンタクト65が複数個、一定の配列ピッチで配列され、かつ連結部78により連結した構成からなる。ソケットコンタクト65は、一対の接触部65Aと、これらの接触部65Aにより囲まれたピン挿入部66および一対の接触部65Aを連結するように延在された延在部65Bから構成される。なお、この接点板は、銅合金等の金属板を用いて、切削等により加工して形成してもよい。
一方、図15は、上記接点板のソケットコンタクト65を挟みこんで固定するための樹脂ケース67の側面図および下面側から見た平面図である。樹脂ケース67は、接点板のソケットコンタクト65の配列ピッチに対応した仕切壁68が板状部69の面から突出して設けられた構成からなる。この樹脂ケース67は、例えば液晶ポリマーやポリブチレンテレフタレート等の比較的耐熱性の高い絶縁性樹脂により形成する。
なお、仕切壁68は、接点板のそれぞれのソケットコンタクト65の間の間隙を埋めて、それぞれのソケットコンタクト65がちょうど嵌合する形状であり、その突出高さはソケットコンタクト65の厚みと同じにしてある。また、両端の壁部に設けられたU字状の窪み75は、樹脂板76を貼合したときにガイド孔73を構成する。
図16は、このような樹脂ケース67の仕切壁68の間にそれぞれのソケットコンタクト65の一対の接触部65Aを嵌合した状態を示す側面図である。図16に示すように、ソケットコンタクト65の一対の接触部65Aがそれぞれ仕切壁68の間に嵌合され、かつソケットコンタクト65の延在部65Bは樹脂ケース67から突出している。
このように配置した後、樹脂ケース67の板状部69と同じ寸法の樹脂板76を仕切壁68上に貼合することによって、ハウジング64を形成するとともに接点板を固定する。なお、樹脂板76を樹脂ケース67と同じ樹脂材料で形成し、熱圧着により樹脂板76を樹脂ケース67に貼合してもよい。
つぎに、ソケットコンタクト65を連結している連結部78を切断する。これにより、それぞれのソケットコンタクト65の延在部65Bは、連結部78から切離される。この形状で、電子機器の配線基板80の貫通孔に挿入して端子とハンダ付けすれば、配線基板80に固定された雌側コネクタ62が得られる。
このような製造方法によれば、曲面形状の細長いピン挿入部66を備えたソケットコンタクト65を絶縁性樹脂製のハウジング64内に収容した雌側コネクタ62を簡単な工程で製造することができる。
以上のように本実施の形態によれば、コンタクトピン71の挿入ピン71Cが対応するソケットコンタクト65のピン挿入部66に弾性変形しながら挿入され、弾性復元力により挿入ピン71Cはピン挿入部66中で一対の接触部65Aに対して少なくとも2点で弾接する。したがって、確実な接続状態を確保することができ、しかも、雌側コネクタ62のソケットコンタクト65および雄側コネクタ63のコンタクトピン71の加工や組み立てが容易で、安価に形成できる。また、両者を弾接して接続させるためのスペースを小さくすることもできるので小型化も可能とすることができる。
なお、本実施の形態では、ソケットコンタクトを一列に配置する樹脂ケースとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、額縁形状の樹脂ケースを使用して、それぞれの辺部分にソケットコンタクトを嵌合させて、樹脂板を貼合して4辺にソケットコンタクトを設けた額縁形状の雌側コネクタを作製することも容易にできる。また、樹脂ケースの板状部を中心にして、両側に仕切壁を設けてソケットコンタクトをそれぞれに嵌合してから樹脂板を貼合すれば、2列構成の雌側コネクタも作製できる。
また、本実施の形態では、1つの湾曲部を有する単純な形状のピン挿入部としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図17に示すように、くの字状に湾曲した形状のピン挿入部としてもよい。このコネクタの場合には、雄側コネクタ63は本実施の形態で説明した構成と同じであるが、雌側コネクタ90の構成が異なる。すなわち、雌側コネクタ90は、ソケットコンタクト82の一対の接触部82Aが図示するように、その一部がくの字状に形成されており、ピン挿入部84がくの字状とされている。これに伴い、樹脂ケース86の仕切壁87もくの字状に形成されている。なお、ソケットコンタクト82の延在部82Bと樹脂ケース86の板状部88の構成は本実施の形態の雌側コネクタ62と同じである。
以上のように、ソケットコンタクト82のピン挿入部84の開口部から所定位置までがコンタクトピン71の挿入方向に沿った直線状であり、コンタクトピン71が入りこむ範囲内に、曲り方向が交互に逆になった2つ以上の湾曲部を有する構成としてもよい。
このような構成とすれば、雌側コネクタ90と雄側コネクタ63との係合が容易であるとともに、各コンタクトピン71が各ピン挿入部84に少なくとも3点以上で弾接するので、薄いコンタクトピンであっても、確実で安定した接続状態を確保できるコネクタとすることができる。なお、このようなソケットコンタクトの構成は本実施の形態に限定されず、第1の実施の形態から第4の実施の形態までに説明した雌側コネクタにも適用可能である。
さらに、本実施の形態では、図14に示すようにソケットコンタクト65は金属板を加工して形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14に示すような形状を樹脂成形等により作製し、表面に蒸着やめっき等により導体を形成したソケットコンタクトを用いてもよい。図18に、このソケットコンタクト94を用いた雌側コネクタ92の断面形状を示す。
図18からわかるように、ソケットコンタクト94は、一対の接触部94Aと、これらの接触部94Aにより囲まれたピン挿入部96および一対の接触部94Aを連結するように延在された延在部94Bから構成される。また、ピン挿入部96は、開口部から中間の位置の湾曲部96Aまでは直線形状であるが、湾曲部96Aから閉端部までは曲面形状を有しており、外観形状は図14に示すソケットコンタクト65と同じである。しかし、このソケットコンタクト94は、樹脂成型部94Cの表面にめっき導体94Dが形成されて構成されている点に特徴を有する。このような構成とすることにより、ソケットコンタクト94をより任意の形状に形成することができる。また、額縁形状のソケットコンタクトも容易にできるので、額縁形状のコネクタの作製も容易である。
また、第1の実施の形態から第5の実施の形態では、特に説明しなかったが、ソケットコンタクトのピン挿入部の開口部の間口が広くなるようにテーパを設けてもよい。このような構成によれば、雌側コネクタと雄側コネクタとの係合時に、コンタクトピンの先端部を開口部のテーパで案内して、ソケットコンタクトのピン挿入部内に確実に挿入することができる。