JP4172173B2 - 位相差フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層構造体及び位相差フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、表面平滑性と外観が良好であり、層間剥離強度が大きく、層間剥離を起こすことなく共延伸などの後加工が可能な積層構造体及び該積層構造体を一軸延伸してなる位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ(LCD)は、高画質、薄型、軽量、低消費電力などの特徴をもち、テレビジョン、パーソナルコンピュータなどのフラットパネルディスプレイとして広く使用されている。カラー液晶ディスプレイには、単純マトリクス方式で構造が簡単な超ねじれネマッティック(STN)液晶が用いられるが、超ねじれネマッティック液晶に基づく楕円偏光により、液晶ディスプレイの表示の色相が緑色ないし黄赤色を帯びるという問題が生ずる。この問題を解決する手段の一つとして、位相差フィルムを用い、超ねじれネマッティック液晶の複屈折による位相差を補償し、楕円偏光を直線偏光に戻す対策が講じられている。
ノルボルネン系樹脂とポリスチレンの積層構造体を一軸延伸すると、光学的特性の良好な位相差フィルムが得られることが知られている。しかし、ノルボルネン系樹脂とポリスチレンは、層間剥離強度が小さく、積層構造体を一軸延伸すると、簡単に層間剥離を起こしてしまう。また、ノルボルネン系樹脂層とポリスチレン層の間に接着層を設けて層間剥離強度を高めると、積層構造体の表面に細かい皺が発生して、表面平滑性が損なわれてしまう。このために、表面平滑性と外観が良好であり、層間剥離を起こすことなく一軸延伸することが可能な積層構造体が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表面平滑性と外観が良好であり、層間剥離強度が大きく、層間剥離を起こすことなく共延伸などの後加工が可能な積層構造体及び該積層構造体を一軸延伸してなる位相差フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ノルボルネン系樹脂などの脂環式構造を有する重合体からなる層(A層)とポリスチレンなどの熱可塑性樹脂からなる層(B層)の層間に、メルトフローレートの小さい高粘度のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる層(C層)を設けることにより、表面平滑性の良好な積層構造体が得られ、かつこの積層構造体は層間剥離強度が大きく、層間剥離を起こすことなく一軸延伸し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ノルボルネン系重合体からなる層(A層)とビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる層(B層)との層間に、温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1g/10分以下であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる層(C層)を有し、共押出法により製膜されてなることを特徴とする積層位相差フィルム、
(2)A層−C層−B層−C層−A層の5層構造を有する、第1項記載の積層位相差フィルム、
(3)前記B層がビニル芳香族系重合体からなる第1項記載の積層位相差フィルム、
(4)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル構造単位の割合が5〜50重量%である第1項記載の積層位相差フィルム、
(5)温度250℃、剪断速度180sec-1で測定した脂環式構造を有する重合体の溶融粘度が500〜4,000Pa・sであり、同条件で測定したビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂の溶融粘度が200〜3,000Pa・sであり、かつ同条件で測定したエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶融粘度が、該重合体の溶融粘度と該熱可塑性樹脂の溶融粘度の中間にある第1項記載の積層位相差フィルム、及び、
(6)A層とC層の間、及びC層とB層の間の層間剥離強度が、1.2N/25mm以上である第1項ないし第5項のいずれかに記載の積層位相差フィルム、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の積層構造体は、脂環式構造を有する重合体からなる層(A層)とビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる層(B層)との層間に、温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1g/10分以下であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる層(C層)を有する。
本発明の積層構造体のA層に用いる脂環式構造を有する重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有するものであり、主鎖中に脂環式構造を有する重合体及び側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれをも用いることができる。脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などを挙げることができる。これらの中で、シクロアルカン構造を有する重合体は、熱安定性が良好であり、好適に用いることができる。脂環式構造を構成する炭素数に特に制限はないが、4〜30個であることが好ましく、5〜20個であることがより好ましく、6〜15個であることがさらに好ましい。
脂環式構造を有する重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合に特に制限はないが、脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が50重量%未満であると、積層構造体の耐熱性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明に用いる脂環式構造を有する重合体に特に制限はなく、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、これらの重合体の水素化物などを挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体及びこれらの重合体の水素化物は、耐熱性、機械的強度が良好なので、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体と共重合可能な単量体との開環共重合体、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体と共重合可能な単量体との付加共重合体、これらの重合体の水素化物などを挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物は、耐熱性、機械的強度が良好であり、特に好適に用いることができる。
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(別名ノルボルネン)、トリシクロ[5.2.1.02,7]デカ−3,8−ジエン(別名ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[7.4.110,13.01,9.02,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(別名メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]ドデカ−3−エン(別名テトラシクロドデセン)、これらの環に置換基を有する誘導体などを挙げることができる。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルコキシカルボニル基などを挙げることができ、これらの置換基は、1個又は2個以上を有することができる。このような誘導体としては、例えば、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]ドデカ−3−エンなどを挙げることができる。これらのノルボルネン系単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0007】
ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を開環重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒などを挙げることができる。ノルボルネン系単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィンなどを挙げることができる。ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物は、開環重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体と共重合体可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム、バナジウムなどの金属の化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒などを挙げることができる。ノルボルネン系単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、これらの誘導体、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、これらの誘導体、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンなどを挙げることができる。これらの中で、α−オレフィンを好適に用いることができ、エチレンを特に好適に用いることができる。
【0008】
上記のノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体は、共重合体中のノルボルネン系単量体構造の割合が30重量%以上であることが好ましく、50重量%であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。
本発明に用いる単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの付加重合体を挙げることができる。
本発明に用いる環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−付加重合又は1,4−共役付加重合した重合体及びその水素化物を挙げることができる。
本発明に用いるノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体又は環状共役ジエン系重合体の分子量に特に制限はないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量が、5,000〜500,000であることが好ましく、8,000〜200,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましい。
【0009】
本発明に用いるビニル脂環式炭化水素重合体に特に制限はなく、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族単量体の重合体の水素化物、上記の単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体、傾斜ブロック共重合体の水素化物などを挙げることができる。本発明に用いるビニル脂環式炭化水素重合体の分子量に特に制限はないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000〜300,000であることが好ましく、15,000〜250,000であることがより好ましく、20,000〜200,000であることがさらに好ましい。
本発明に用いる脂環式構造を有する重合体は、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、100〜250℃であることがより好ましく、120〜200℃であることがさらに好ましい。
【0010】
本発明の積層構造体のB層には、ビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂が用いられる。ビニル芳香族系重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルナフタレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などを挙げることができる。本発明に用いるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどを挙げることができる。本発明に用いるポリアミドとしては、例えば、ナイロン3、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などを挙げることができる。本発明に用いるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。本発明に用いるポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o',o'−テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどを挙げることができる。
【0011】
本発明の積層構造体のC層には、温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が用いられる。本発明に用いる温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体などを挙げることができる。
本発明においては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体として、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルに、さらに他の共重合可能な単量体を共重合した三元以上の共重合体を用いることもできる。他の共重合可能な単量体としては、例えば、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有する単量体、スチレン、酢酸ビニルなどのビニル単量体などを挙げることができる。
本発明において、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1g/10分を超えると、積層構造体の表面に皺が発生して表面性が不良となり、光学特性が損なわれるおそれがある。温度190℃、荷重21.18Nでのメルトフローレートは、JIS K 7210に従って測定することができる。
【0012】
本発明においては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル構造単位の割合が、5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル構造単位の割合が5重量%未満であると、各層間の接着強度が低下するおそれがある。(メタ)アクリル酸エステル構造単位の割合が50重量%を超えると、接着層の強度が低下して皺が発生するおそれがある。
本発明においては、温度250℃、剪断速度180sec-1で測定した脂環式構造を有する重合体の溶融粘度が、500〜4,000Pa・sであることが好ましく、1,000〜3,000Pa・sであることがより好ましい。脂環式構造を有する重合体の溶融粘度が500Pa・s未満であっても、4,000Pa・sを超えても、共押出による積層構造体の製膜が不安定になるおそれがある。
本発明においては、温度250℃、剪断速度180sec-1で測定したビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂の溶融粘度が、200〜3,000Pa・sであることが好ましく、300〜2,000Pa・sであることがより好ましい。熱可塑性樹脂の溶融粘度が200Pa・s未満であっても、3,000Pa・sを超えても、共押出による積層構造体の製膜が不安定になるおそれがある。
本発明においては、温度250℃、剪断速度180sec-1で測定したエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶融粘度が、脂環式構造を有する重合体の溶融粘度とビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂の溶融粘度との中間にあることが好ましい。エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶融粘度が、両者の溶融粘度の中間を外れて低粘度又は高粘度になると、共押出による積層構造体の製膜が不安定になるおそれがある。
【0013】
本発明において、脂環式構造を有する重合体;ビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶融粘度は、キャピラリーレオメーター[(株)東洋精機製作所、キャピログラフ]を用いて測定することができる。
本発明の積層構造体は、脂環式構造を有する重合体からなる層(A層)とビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる層(B層)との層間に、温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1g/10分以下であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる層(C層)が、A層−C層−B層の3層構造又はA層−C層−B層−C層−A層の5層構造であることが好ましい。A層−C層−B層の3層構造又はA層−C層−B層−C層−A層の5層構造を有する積層構造体を一軸延伸することにより、超ねじれネマッティック液晶の複屈折による位相差を補償し、楕円偏光を直線偏光に戻すことができる光学特性を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明の積層構造体の製造方法に特に制限はなく、例えば、A層とB層を別々に製膜し、C層をドライラミネーションにより積層し、積層構造体を得ることができ、あるいは、共押出により製膜して積層構造体を得ることもできる。これらの方法の中で、共押出による製膜は、層間剥離強度が大きい積層構造体が得られ、経済的に積層構造体を製造することができるので、好適に実施することができる。共押出においては、複数基の押出機を用いて、A層、B層及びC層を多層ダイから押し出すことにより製膜することができる。
本発明の積層構造体は、A層とB層の層間剥離強度が1.2N/25mm以上であることが好ましく、1.4N/25mm以上であることがより好ましい。A層とB層の層間剥離強度が1.2N/25mm未満であると、積層構造体の一軸延伸の際に剥離を生ずるおそれがある。
本発明の位相差フィルムは、本発明の積層構造体を一軸延伸して得られる位相差フィルムである。本発明の積層構造体は、層間剥離強度が大きく、表面性が良好なので、一軸延伸しても層間剥離を起こすことがなく、表面平滑性に優れた位相差フィルムを得ることができる。積層構造体を一軸延伸する方法に特に制限はなく、例えば、ロール間の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸することができ、あるいは、テンターを用いて横方向に一軸延伸することもできる。これらの中で、縦方向の一軸延伸を好適に実施することができる。一軸延伸の延伸倍率に特に制限はないが、1.1〜3倍であることが好ましく、1.2〜2.2倍であることがより好ましい。本発明の位相差フィルムを用いることにより、超ねじれネマッティック(STN)液晶ディスプレイにおける液晶セルの複屈折に起因する着色現象をなくし、視野角と高コントラスト域の広い液晶ディスプレイを得ることができる。
【0015】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、各層の材料として下記の重合体及び樹脂を用いた。ただし、メルトフローレート(MFR)は、温度190℃、荷重21.18Nで測定した値であり、溶融粘度は、温度250℃、剪断速度180cm-1で測定した値である。
A層:
ノルボルネン系樹脂、日本ゼオン(株)、ZEONOR1420、溶融粘度1,530Pa・s。
B層:
(1)ポリスチレン、ノヴァ・ケミカル社、Daylark D332、溶融粘度440Pa・s。
(2)ポリプロピレン、日本ポリオレフィン(株)、SG510、溶融粘度480Pa・s。
(3)ナイロン12、アトケム社、リルサン AESNOTL、溶融粘度700〜1,000Pa・s。
(4)ポリエチレンテレフタレート、三菱レイヨン(株)、ダイヤナイト PA−500、溶融粘度1,450Pa・s。
(5)ポリカーボネート、帝人(株)、パンライト K−1300、溶融粘度1,600Pa・s。
C層:
(1)エチレン−アクリル酸エチル共重合体、三井・デュポン・ポリケミカル(株)、EVAFLEX−EEA A−170、MFR0.5g/10分、溶融粘度550Pa・s。
(2)線状低密度ポリエチレン、三井化学(株)、エボリューSP2520、MFR2g/10分、溶融粘度750Pa・s。
(3)エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、住友化学(株)、アクリフトWH204、MFR3g/10分、溶融粘度400Pa・s。
(4)水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、(株)クラレ、Hybrar7125、MFR0.7g/10分、溶融粘度450Pa・s。
(5)スチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、住友化学(株)、ボンダインLX4110、MFR5g/10分、溶融粘度300Pa・s。
(6)エチレン−アクリル酸エチル共重合体、三井・デュポン・ポリケミカル(株)、EVAFLEX−EEA A−702、MFR5g/10分、溶融粘度300Pa・s。
また、実施例及び比較例において、評価は下記の方法により行った。
(1)層間剥離強度
JIS K 6854−2に準じて、引張速度100mm/minで180度剥離試験を行った。
(2)表面性
積層構造体の表面の状態を観察し、下記の基準に従って判定した。
○:表面に皺や白化がなく、良好である。
△:部分的に細かい皺又は白化が認められる。
×:全面に大小の皺又は凹凸がある。
実施例1
ノルボルネン系樹脂からなるA層、ポリスチレンからなるB層及びMFRが0.5g/10分であるエチレン−アクリル酸エチル共重合体(前記(1))からなるC層を有する、A層(50μm)−C層(10μm)−B層(50μm)−C層(10μm)−A層(50μm)の3種5層構造の積層構造体を押出成形にて製造した。各層の押出条件及び積層構造体の引取条件を、第1表に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
得られた積層構造体の表面性は、皺や白化がなく良好であった。層間剥離強度は、1.47Nであった。
実施例2〜5
B層を形成する樹脂として、ポリスチレンの代わりに、第2表に示す熱可塑性樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層構造体を製造し、評価を行った。
比較例1
C層にMFRが5g/10分であるエチレン−アクリル酸エチル共重合体(前記(6))を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層構造体を製造し、評価を行った。
比較例2〜5
C層にMFRが2g/10分である線状低密度ポリエチレン(前記(2))を用いた以外は、実施例1、実施例3〜5と同様にして、積層構造体を製造し、評価を行った。
比較例6〜10
C層にMFRが3g/10分であるエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(前記(3))を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして、積層構造体を製造し、評価を行った。
比較例11〜15
C層にMFRが0.7g/10分である水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(前記(4))を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして、積層構造体を製造し、評価を行った。
比較例16〜20
C層にMFRが5g/10分であるスチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(前記(5))を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして、積層構造体を製造し、評価を行った。
比較例21〜25
C層のないA層(50μm)−B層(50μm)−A層(50μm)の2種3層構造の積層構造体を、実施例1と同様にして製造し、評価を行った。
実施例1〜5及び比較例1〜25の結果を、第2表に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
第2表に見られるように、A層にノルボルネン系樹脂、B層にポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネート、C層にメルトフローレート0.5g/10分のエチレン−アクリル酸エステル共重合体を用いた実施例1〜5の積層構造体は、層間剥離強度が大きく、表面性もほぼ良好である。
これに対して、C層がエチレン−アクリル酸エステル共重合体であっても、メルトフローレートが5g/10分であると表面性が不良である。C層に線状低密度ポリエチレンを用いると、層間剥離強度が小さい。C層がエチレン−メタクリル酸メチル共重合体であっても、メルトフローレートが3g/10分であると、層間剥離強度が小さいか、あるいは、表面性が不良である。C層に水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いると、層間剥離強度が小さいか、あるいは、表面性が不良である。C層がスチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体であっても、メルトフローレートが5g/10分であると、表面性はすべて不良になる。C層のないA層−B層−A層の2種3層構造の積層構造体は、表面性は良好であるが、層間剥離強度が極めて小さい。
【0022】
【発明の効果】
本発明の積層構造体は、表面平滑性と外観が良好であり、層間剥離強度が大きく、層間剥離を起こすことなく共延伸などの後加工が可能である。本発明の位相差フィルムは、多層構造を有するが層間剥離を起こすことがなく、良好な光学特性を有している。
Claims (6)
- ノルボルネン系重合体からなる層(A層)とビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる層(B層)との層間に、温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1g/10分以下であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる層(C層)を有し、共押出法により製膜されてなることを特徴とする積層位相差フィルム。
- A層−C層−B層−C層−A層の5層構造を有する、請求項1記載の積層位相差フィルム。
- 前記B層がビニル芳香族系重合体からなる請求項1記載の積層位相差フィルム。
- エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル構造単位の割合が5〜50重量%である請求項1記載の積層位相差フィルム。
- 温度250℃、剪断速度180sec-1で測定した脂環式構造を有する重合体の溶融粘度が500〜4,000Pa・sであり、同条件で測定したビニル芳香族系重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂の溶融粘度が200〜3,000Pa・sであり、かつ同条件で測定したエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶融粘度が、該重合体の溶融粘度と該熱可塑性樹脂の溶融粘度の中間にある請求項1記載の積層位相差フィルム。
- A層とC層の間、及びC層とB層の間の層間剥離強度が、1.2N/25mm以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の積層位相差フィルム。
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