JP4171167B2 - 光硬化性組成物及び液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光の照射により硬化する光硬化性組成物に関し、詳しくは、液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)を構成する導電層と液晶層との間に設けられる構造体の形成に好適な光硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
CRTに代わるフラットパネルディスプレイとして、現在最も広く使用、期待されているのが液晶表示装置(LCD)である。中でも、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)方式のLCD(TFT−LCD)は、パーソナルコンピュータ、ワープロ、OA機器や、携帯テレビジョン等への応用による市場の一層の拡大が期待され、画像品質の更なる向上が求められている。
【0003】
現在、TFT−LCDの中で最も広く使用されている方式は、ノーマリホワイトモードのTN(Twisted Nematic) 型LCDである。しかし、TN型LCDは、視野角が狭いという欠点があり、表示画面を観察する位置によって表示状態が異なる。そのため、用途が限定されるという問題があった。尚、この問題は、一般に電極を備える一対の基板間に液晶を挟持し電極間に電圧印加して表示可能なLCD(例えば、単純マトリクス型やプラズマアドレス型LCD)においても同様のことがいえる。
【0004】
即ち、図1に示す通りである。図1の(1)では、電圧を印加しない白表示の状態を示すが、この状態ではどの方位でもほぼ白に見ることができる。ところが、(3)では、所定の電圧を印加した黒表示の状態を示すものであるが、斜めに入射する光では、垂直方向に配向された液晶分子を斜めに通過するため偏光方向がある程度捩じれ、完全な黒でなく中間調(グレイ)に見えてしまう。また、(2)では、中間電圧を印加した中間調表示の状態を示すが、この場合セルの中間部では液晶分子が途中まで立ち上がるため、垂直に入射する光に対しては中間調(グレイ)に表示される。しかし、図中のように左右斜めに入射する光の方向から見た場合には異なり、右下から左上に向かう光に対しては液晶分子は平行に配向されるので左側から観察すると黒く見えるが、左下から右上に向かう光に対しては液晶分子は垂直に配向されるので白に近い表示になる。このように、LCDには、表示状態に視角依存を有するという欠点がある。
【0005】
上記のような問題を解決する手段として、特許第2947350号では、液晶層に対して突起状又は凹状等の構造体を形成し、該構造体の表面に沿って局部的に液晶分子の配向状態に傾きを与えて、液晶面に対して斜めから観察した際にも同様の表示が得られるように、視野角を拡げる技術が提案されている。ここでは、構造体を形成する材料としてポジレジストが用いられ、一般的には、レジストからなる最終構造体の硬化度を高めたり、構造体の形状に傾斜等を持たせる目的で、構造体の形成後に高温下でのベーク処理が施される。しかし、ベーク処理を施した場合、ポジレジストからなる構造体は黄色く着色するという問題がある。特に、フルカラー表示を行うLCDの場合、カラーフィルタ以外の構成物が着色されていると、その色相の付加により3原色の色純度が低下し、表示される色相にズレを生じ、鮮やかな画像を表示することができない。
【0006】
上記のようなレジスト材料としてはネガ型のレジストも知られており、例えば、特開平6−256684号や同7−248625号では、分子内にエポキシ基を含む重合性化合物を含有する組成物が開示されている。しかし、いずれもアルカリ現像性を付与するために、エポキシ基と共にカルボン酸や他の酸成分を相当量必要とするため、エポキシ環が反応して保存中に増粘、固化してしまうといった保存安定性の点で問題がある。
【0007】
また、特開平11−323057号では、スペーサ又は保護層形成用の組成物として放射線硬化性の組成物が開示されている。該組成物は、光硬化性、現像性の点で優れ、スペーサや保護層の形成には適するものの、材料コストが高く、液晶表示素子の低コスト化が図れないという問題がある。
【0008】
以上の通り、液晶分子の配向を規制する構造体を安価かつ簡易に形成することができ、しかもベークによる黄色着色がなく、色相の鮮やかなフルカラー画像の表示を可能とする光硬化性組成物は、未だ提供されていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、液晶分子の配向を規制する構造体の形成に用いられ、着色がなく透明性に優れ、表示画像の色相を損なうことのない構造体を安価かつ簡易に形成しうる光硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明は、基板上の導電層と液晶層との間に、安価な光硬化性組成物により簡易に形成され、着色がなく透明性に優れた構造体を備え、液晶表示面に対する観察位置(視野角)に依存しない広視野角を有し、色相の良好なフルカラー画像の表示が可能な液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 重合性モノマーと(メタ)アクリル酸含有重合体と重合開始剤とC.I.basic blue 7とを含み、かつ前記(メタ)アクリル酸含有重合体の総量に対する前記重合性モノマーの総量の質量比が0.5〜0.6である光硬化性組成物であって、互いに対向し合う側の表面に導電層を備える2枚の基板間に液晶層が狭持されてなる液晶表示素子の、前記導電層と液晶層との間に設けられる実質的に無色の透明な構造体の形成に用いられることを特徴とする光硬化性組成物である。
【0011】
<2> 構造体が転写材料を用いて形成され、該転写材料の感光性樹脂層に含有される前記<1>に記載の光硬化性組成物である。
<3> 転写材料が、仮支持体上にアルカリ可溶な熱可塑性樹脂層と中間層と感光性樹脂層とがこの順に設けられてなる前記<2>に記載の光硬化性組成物である。
【0012】
<4> 構造体がフォトリソグラフィ法によりパターニングされてなる前記<1>〜<3>のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
<5> 構造体がプロキシミティ露光手段によりパターニングされてなり、該パターニングにおける、露光量が重合硬化を起こす最小露光量の3〜10倍であり、プロキシミティ量が40〜150μmである前記<1>〜<4>のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
【0013】
<6> 構造体が、光の照射により硬化された後、更に200〜260℃でベークされてなる前記<1>〜<5>のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
【0014】
<7> 構造体が、基板と直交するその断面が台形及び蒲鉾形のいずれか一方の形状を有してなる前記<1>〜<6>のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
<8> 前記<1>〜<7>のいずれかに記載の光硬化性組成物からなる構造体を備えることを特徴とする液晶表示素子である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の光硬化性組成物は、液晶表示素子を構成する導電層と液晶層との間に設けられる構造体の形成に用いられ、重合性モノマーと(メタ)アクリル酸含有重合体と重合開始剤とC.I.basic blue 7とを含み、かつ前記(メタ)アクリル酸含有重合体の総量に対する前記重合性モノマーの総量の質量比を0.5〜0.6とする。
本発明の液晶表示素子においては、基板に設けられた導電層と液晶層との間に、前記本発明の光硬化性組成物を硬化してなる透明構造体を備えてなる。
以下、本発明の光硬化性組成物、及び液晶表示素子について詳細に説明する。
【0016】
<光硬化性組成物>
前記光硬化性組成物は、重合性モノマーと(メタ)アクリル酸含有重合体と重合開始剤とC.I.basic blue 7とを含んでなり、光に感応して硬化する性質を有する。本発明においては、液晶表示素子を構成する導電層と液晶層との間に設けられる、液晶分子の配向を規制する構造体の形成に用いられる。前記光としては、300〜500nmの紫外線が好ましい。
更に、前記光硬化性組成物は、少なくとも温度150℃以下で軟化若しくは粘着性を有する熱可塑性の樹脂組成物であり、未照射部ではアルカリ溶液に対して易溶性を有する。また、必要に応じて、消色性染料、熱可塑性の結合剤、相溶性の可塑剤等の他の成分を含んでなる。但し、本発明に係る光硬化性組成物は、エポキシ基含有重合体を含有せずに構成される。
【0017】
−重合性モノマー−
前記重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する付加重合可能な化合物であり、後述の(メタ)アクリル酸含有重合体のアルカリ溶解性を損なわず、光照射時に重合し、(メタ)アクリル酸含有重合体と共にアルカリ水溶液に対する溶解性を減少させるものである。
【0018】
前記重合性モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を1分子中に2個以上有する化合物の中から適宜選択でき、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、並びに、これらの共重合体等の化学構造を持つものが含まれる。
【0019】
具体的には、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0020】
前記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル(モノマー)としては、アクリル酸エステルとして、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンテルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、
【0021】
テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられ、
【0022】
メタクリル酸エステルとして、例えば、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が挙げられ、
【0023】
イタコン酸エステルとして、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられ、
【0024】
クロトン酸エステルとして、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられ、
イソクロトン酸エステルとして、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられ、
【0025】
マレイン酸エステルとして、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレー卜等が挙げられる。
更に、前述の各種エステルの混合物も挙げることができる。
【0026】
前記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド(モノマー)としては、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレシビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報に記載の、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で表される水酸基含有ビニルモノマーを付加せしめた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH … 一般式(A)
〔式中、R及びR'は、H又はCH3を表す。〕
【0028】
また、特開昭51−37193号公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載の、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に、日本接着協会誌(vo1.20、No.7、p.300〜308(1984年))に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0029】
前記重合性モノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記重合性モノマーの含有量としては、光硬化性組成物の全固形分の10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
【0030】
また、後述の(メタ)アクリル酸含有重合体の総量に対する前記重合性モノマーの総量の質量比が0.5〜0.6である。
前記質量比が、0.5未満であると、光重合による硬化が不十分で硬度が不足することがあり、0.9を越えると、好ましい形状が得られないことがある。
【0031】
−(メタ)アクリル酸含有重合体−
前記(メタ)アクリル酸含有重合体は、主にバインダー成分として含有され、アルカリ溶液により現像可能なものである。
前記(メタ)アクリル酸含有重合体としては、一般に、側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載の、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げられる。
【0032】
上記のほか、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好適に挙げられる。特に、米国特許第4139391号明細書に記載の、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体やベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。更に、アルコール可溶性ナイロンも挙げることができる。
また、複数の(メタ)アクリル酸含有重合体を組合わせて使用してもよい。
【0033】
前記(メタ)アクリル酸含有重合体は、通常、50〜300mgKOH/1gの範囲の酸価と、1000〜300000の範囲の重量平均分子量を有するものの中から適宜選択して使用される。
前記酸価が、50mgKOH/1g未満であると、アルカリ現像性が大きく低下することがあり、300mgKOH/1gを超えると、目標とする構造体が得られなくなることがある。
【0034】
前記(メタ)アクリル酸含有重合体の重量平均分子量としては、上記の通り、1000〜300000が好ましく、中でも特に10000〜250000が好ましい。
前記重量平均分子量が、1000未満であると、目標とする構造体が得られなくなることがあり、300000を越えると、現像性が極端に低下することがある。尚、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算平均分子量である。
【0035】
前記(メタ)アクリル酸含有重合体の含有量としては、光硬化性組成物の全固形分の20〜60質量%が好ましく、30〜55質量%がより好ましい。
前記含有量が、20質量%未満であると、硬化性組成物を支持体等上に塗布する際に膜形成が困難となることがあり、60質量%を超えると、重合性モノマーの含有比が少なくなり、重合不良となることがある。
【0036】
−重合開始剤−
前記重合開始剤は、重合性モノマーの光重合を実質的に開始させることのできるものであり、前記重合性モノマーの重合反応を開始させる能力を持つ化合物は全て使用可能である。中でも特に、約300〜500nmの波長領域に、少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有し、紫外線領域の光線に対して感光性を有することが好ましい。また、光励起された増感剤、例えば、後述の消色性染料と何らかの相互作用を伴って活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0037】
前記重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体、ケトン化合物、ケトオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、特開平2−48664号公報、特開平1−152449号公報、特開平2−153353号公報に記載の、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類、及びこれら2種以上の組合せ等が挙げられる。
【0038】
中でも、光感度、保存性、基板への密着性等に優れる点で、トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物、ケトオキシム化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組合わせ、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン〕を用いた系が好ましい。
【0039】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(若林ら著、1969)に記載の化合物〔例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン等〕、
【0040】
英国特許1388492号明細書に記載の化合物〔例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−s−トリアジン等〕、特開昭53−133428号公報に記載の化合物〔例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン等〕、
【0041】
独国特許3337024号明細書に記載の化合物〔例えば、2−(4−スチリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−p−メトキシスチリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチルビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−クロロスチリルフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−チオフェン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−チオフェン−3−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−フラン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ベンゾフラン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等〕、
【0042】
J.Org.Chem.(F.C.Schaefer等、29、1527(1964))に記載の化合物〔例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロモメチル−s−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロロメチル−s−トリアジン等〕、
【0043】
特開昭62−58241号公報に記載の化合物〔例えば、2−(4−フェニルアセチレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナフチル−1−アセチレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−p−トリルアセチレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−p−メトキシフェニルアセチレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−p−イソプロピルフェニルアセチレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−p−エチルフェニルアセチレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等〕、
【0044】
特開平5−281728号公報に記載の化合物〔例えば、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等〕、等を挙げることができる。
【0045】
前記ケトオキシム化合物としては、例えば、下記一般式(B)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化1】
【0047】
前記一般式(B)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい炭化水素基、ヘテロ環基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい炭化水素基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。また、R4及びR5は互いに結合して環を形成していてもよく、この場合、該環が−O−、−NR6−、−O−CO−、−NH−CO−、−S−及び−SO2−より選択される少なくとも一種の2価の基を環の連結主鎖として含んでいてもよい炭素数2〜8のアルキレン基を表す。R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよく、不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基、置換カルボニル基を表す。
【0048】
前記一般式(B)で表される化合物の以下に示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
例えば、p−メトキシフェニル−2−N,N−ジメチルアミノプロピルケトンオキシム−O−アリルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−アリルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−ベンジルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−n−ブチルエーテル、p−モルフォリノフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−アリルエーテル、p−メトキシフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−n−ドデシルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−メトキシエトキシエチルエーテル、
【0049】
p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−p−メトキシカルボニルベンジルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−メトキシカルボニルメチルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−エトキシカルボニルメチルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−4−ブトキシカルボニルブチルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−2−エトキシカルボニルエチルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−メトキシカルボエル−3−プロペニルエーテル、p−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロピルケトンオキシム−O−ベンジルオキシカルボニルメチルエーテル等が挙げられる。
【0050】
前記ヘキサアリールビイミダゾールとしては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
これらのビイミダゾール類は、例えば、Bull.Chem.Soc.Japan,33,565(1960)及びJ.Org.Chem,36(16)2262(1971)に記載の方法により容易に合成することができる。
【0051】
前記ケトオキシムエーテルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0052】
前記重合開始剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、また異種間で数個の化合物を併用することも可能である。
前記重合開始剤の含有量としては、光硬化性組成物の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましい。
【0053】
−他の成分−
前記光硬化性組成物には、他の成分として、消色性染料、熱可塑性の結合剤、相溶性の可塑剤等の成分を含有してもよい。
【0054】
本発明においては、構造体の形成時における転写不良、精度不良等の故障の認識を可能とし、製造適性を向上させる観点から、消色性染料としてC.I.basic blue 7を添加する。
前記消色性染料は、一般に、200℃、1時間の加熱により消色しうる色素を意味し、ベーク時に消色可能な有色染料である。中でも、180℃、1時間の加熱により消色する色素が好ましい。このような色素は、通常、熱により分解、酸化等による構造変化を起こすか、あるいは熱により蒸発、昇華するものである。
また、消色後において、前記色素を含む構造体が、400〜800nmの平行光線に対して90%以上の光透過率を有することが好ましい。
【0055】
前記消色性染料としては、熱により分解する色素として、例えば、ビクトリアピュアブルーBOH、ビクトリアピュアブルーBOH−M、マラカイトグリーン、アイゼンマラカイトグリーン、マラカイトグリーン塩酸塩、アイゼンダイヤモンドグリーン等のジアルキルアミノトリフェニルメタン系の染料等が挙げられ、熱により蒸発又は昇華する色素として、例えば、オリエントオイルブラウン、メチルイエロー、スミカロンブリリアントブルーB、1,3,5−トリフェニルテトラゾリウムホルマザン等が挙げられる。
【0056】
上記のほか、染料便覧(有機合成化学協会編、丸善、昭和47年7月20日発行)に記載の、昇華堅牢試験の耐汚染性の評価(180℃、1時間以下の条件)が1〜3のものも使用可能である。具体的には、例えば、C.I. Disperse Yellow 8, 31, 72、C.I. Disperse Orange 1, 3, 20, 21 、C.I. Disperse Red 15, 55, 60, 65、C.I. Disperse Violet 8, 23, 26, 37、C.I. Disperse Blue 20, 26, 55, 56, 72, 90, 91, 92, 106、C.I. Disperse Black 29、 Diacellition Direct Black B M/D (三菱化成(株)製)、Sumikaron Violet RS (住友化学(株)製)、Dianix Fast Sky Blue B M/D(三菱化成(株)製)、Miketon Polyester Blue BCL, GRN (三井石油化学(株)製)、KayaronPolyester Navy Blue GF(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
加熱装置の適性、環境汚染を考慮すると、前記熱分解性の染料が好ましい。
【0057】
前記消色性染料の添加量としては、光硬化性組成物の全固形分の0.1〜10質量%が好ましい。
【0058】
前記熱可塑性の結合剤としては、例えば、エチレン性不飽和化合物等の公知の結合剤が挙げられる。
前記相溶性の可塑剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートビフェニルジフェニルフォスフェート等を挙げられる。
前記結合剤及び可塑剤の添加量としては、本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。
【0059】
前記成分よりなる光硬化性組成物は、光感応性を有するので、所望のパターンで照射し、アルカリ現像により未照射の不要部を除去する簡易な工程によって、所望の形状からなる透明な構造体を安価に形成することができる。しかも、高温下でベーク処理を施した場合でも、構造体自体が黄色等に着色することもなく透明性に優れ、3原色の色純度を損なうことのない構造体を得ることができる。
【0060】
(構造体の形成)
液晶表示素子は、一般に、カラーフィルタと該カラーフィルタ上に導電層(電極)とを備えるフィルタ側基板と、これと対向配置される導電層(電極)付きの対向基板との2枚の基板(前記フィルタ側基板及び対向基板のいずれに薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子が備えられていてもよい。)によって液晶層が狭持されてなり、前記光硬化性組成物を用いて、前記2枚の基板にそれぞれ設けられた導電層の少なくとも一方の導電層と液晶層との間に、液晶層側に凸となる透明な構造体(透明構造体)を設けることによって、液晶分子の配向の向きを規制し、液晶面に対する観察位置(視野角)に依存しない広視野角を確保することができる。また、液晶表示した際の画像の色相を害しないためには、実質的に無色透明であることが要求される。ここで、無色透明とは、3原色からなるカラーフィルタの色純度を低下させるような着色がなく、光透過性に優れることをいう。
【0061】
本発明においては、前記構造体は、既述の光硬化性組成物から構成され、光硬化性組成物に光をパターン状に照射して硬化し、現像処理により不要部(未硬化部)を除去することによって形成できる。
前記構造体は、2枚の基板の一方の導電層と液晶層との間のみに形成してもよいし、両基板の導電層と液晶層との間に形成してもよい。
【0062】
前記構造体は、基本的には、(1)仮支持体上に感光性樹脂層として光硬化性組成物を含む層が設けられた転写材料を用い、転写により基板の導電層上に感光性樹脂層からなる構造体を形成する方法、(2)光硬化性組成物を含んで調製された液を基板上に塗布等することにより、基板の導電層上に直接感光性樹脂層を設け、該層からなる構造体を形成する方法、等が挙げられる。尚、仮支持体又は基板上に、光硬化性組成物を含む液(以下、「感光性樹脂層用塗布液」ということがある。)を塗布して層形成する場合には、スピンコート法等の公知の塗布方法を適用することができる。
本発明においては、均一厚の構造体の形成が容易な点で、前記(1)の方法が好ましい。
【0063】
まず、前記(1)の方法及び該方法に用いる転写材料について説明する。
−−転写材料−−
前記転写材料は、仮支持体上に、少なくとも光硬化性組成物を含む層、即ち感光性樹脂層が設けられてなる。ここで、前記光硬化性組成物は既述の通りであり、感光性樹脂層は、少なくとも温度150℃以下で軟化若しくは粘着性を有する熱可塑性を示す転写適性を有し、また光若しくは光が照射されると硬化する一方、未照射部はアルカリ溶液に対して易溶性でレジスト性を備える。
本発明においては、特に、仮支持体上にアルカリ可溶な熱可塑性樹脂層と中間層と感光性樹脂層(光硬化性組成物を含む層)とがこの順に設けられてなる転写材料が好ましく、更に前記感光性樹脂層上にカバーフィルムが設けられていてもよい。
【0064】
−アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層−
前記アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層は、仮支持体上の第一層目として設けられ、主として熱可塑性樹脂を含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、転写後のアルカリ現像を可能とし、あるいは転写時の転写条件によっては熱可塑性樹脂が周囲にはみ出して被転写体である導電膜上を汚染してしまう場合に除去処理を可能とする観点から、アルカリ性水溶液に可溶な樹脂が好適である。更に、熱可塑性樹脂層は、被転写体である基板の導電膜上に転写する際、導電膜上に存在する凹凸に起因して生じうる転写不良を防止するクッション材としての機能をも発揮させる観点から、加熱密着時に前記凹凸に応じて変形しうる性質が必要とされる。
【0065】
上記の点から、前記熱可塑性樹脂としては、アルカリ可溶性であって、実質的な軟化点が80℃以下の樹脂が好ましい。
軟化点が80℃以下の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンとアクリル酸エステル共重合体とのケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等との(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のケン化物等が挙げられ、一種単独よりなるものであっても、二種以上を併用したものであってもよい。
【0066】
更に、「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)に記載の、軟化点が約80℃以下の有機高分子のうち、アルカリ水溶液に可溶なものも使用できる。
【0067】
また、軟化点80℃以上の有機高分子物質であっても、その有機高分子物質中に該有機高分子物質と相溶性のある各種可塑剤を添加することにより、実質的な軟化点を80℃以下に下げて使用することもできる。前記可塑剤としては、既述の光硬化性組成物に使用可能な可塑剤と同様のものが挙げられる。
【0068】
前記有機高分子物質を用いる場合、後述の仮支持体との接着力を調節する目的で、実質的な軟化点が80℃を越えない範囲で、各種ポリマー、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、離型剤等を加えることもできる。
【0069】
転写材料は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層の他、後述の中間層、感光性樹脂層を順次積層して構成されるが、特に熱可塑性樹脂層と仮支持体との間の接着強度が他の層間における接着強度よりも小さくすることが必要であり、これにより転写の後仮支持体を容易かつ熱可塑性樹脂層表面の破壊を伴うことなく除去することができる。即ち、仮支持体除去後の感光性樹脂層への露光を均一に行うことが可能となる点で重要である。
【0070】
前記熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂と必要に応じて他の成分を有機溶剤に溶解して塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を調製し、例えば、スピンコート法等の公知の塗布方法により仮支持体上に塗布等して形成することができる。
【0071】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
【0072】
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキンプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0073】
これらの中でも、各成分の溶解性、及び膜形成性の点で、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエステル類、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコール類が特に好適である。
【0074】
更に、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
【0075】
前記熱可塑性樹脂層の層厚としては、6〜100μmが好ましく、6〜50μmがより好ましい。前記層厚が、6μm未満であると、導電層上の1μm以上の凹凸を完全に吸収することができないことがあり、100μmを超えると、現像性、製造適性が低下することがある。
【0076】
−中間層−
前記中間層は、該中間層上に設けられる感光性樹脂層及び前記熱可塑性樹脂層には有機溶剤が用いられるため、両層が互いに混ざり合うのを防止する機能を有する。また、該中間層は、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものであればよく、酸素透過性の低いものが好ましい。
【0077】
前記中間層は、水又はアルカリ水溶液に分散、溶解可能な樹脂成分を主に構成され、必要に応じて、界面活性剤等の他の成分を含んでいてもよい。
前記中間層を構成する樹脂成分としては、公知のものの中から適宜選択でき、例えば、特開昭46−2121号や特公昭56−40824号に記載の、ポリビニルエーテル/無水マレイン酸重合体、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキル澱粉の水溶性塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、各種のポリアクリルアミド類、各種水溶性ポリアミド、ポリアクリル酸の水溶性塩、ゼラチン、エチレンオキサイド重合体、各種澱粉及びその類似物からなる群の水溶性塩、スチレン/マレイン酸の共重合体、マレイネート樹脂、及びこれらを2種以上組合せたもの等が挙げられる。
【0078】
中でも、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを組合せてなるものが特に好ましい。更に、前記ポリビニルアルコールとしては、鹸化率が80%以上のものが好ましい。また、前記ポリビニルピロリドンの含有量としては、中間層の固形体積の1〜75%であることが好ましく、1〜60%であることがより好ましく、10〜50%であることが最も好ましい。
前記固形体積が、1%未満であると、感光性樹脂層との十分な密着性が得られないことがあり、75%を越えると、酸素遮断能が低下することがある。
【0079】
前記中間層は、その酸素遮断能が低下すると、感光性樹脂層の重合感度が低下して、露光時の光量をアップしたり、露光時間を長くする必要が生ずるばかりか、解像度も低下することになるため、酸素透過率の小さいことが好ましい。
【0080】
前記中間層は、樹脂成分等を水系溶媒に溶解、分散して塗布液(中間層用塗布液)を調製し、例えば、スピンコート法等の公知の塗布方法により基板上に塗布等して形成することができる。前記水系溶媒としては、蒸留水等の水を主成分とし、所望により本発明の効果を損なわない範囲でアルコール等の水と親和性のある溶剤や塩等を添加した溶媒が挙げられる。
【0081】
前記中間層の層厚としては、約0.1〜5μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。前記層厚が、約0.1μm未満であると、酸素透過性が高すぎて感光性樹脂層の重合感度が低下することがあり、約5μmを越えると、現像や中間層除去時に長時間を要することがある。
【0082】
−感光性樹脂層−
前記感光性樹脂層は、既述の光硬化性組成物を含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。該層が光照射されると、光照射部で重合反応が起こり硬化されることにより構造体が形成される。
前記感光性樹脂層は、光硬化性組成物と必要に応じて他の成分を有機溶剤に溶解して塗布液(感光性樹脂層用塗布液)を調製し、例えば、スピンコート法等の公知の塗布方法により基板上に塗布等して形成することができる。前記有機溶剤としては、前記熱可塑性樹脂層用塗布液の調製に使用可能なものと同様のものが挙げられる。
【0083】
感光性樹脂層の層厚としては、0.5〜10μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。
前記層厚が、0.5μm未満であると、感光性樹脂層用塗布液の塗布時にピンホールが発生しやすく、製造適性が低下することがあり、10μmを超えると、現像時に未露光部を除去するのに長時間を要することがある。
【0084】
−仮支持体−
前記仮支持体としては、熱可塑性樹脂層に対して転写に支障とならない程度の剥離性を有するものが好ましく、化学的、熱的に安定で可撓性のものが好ましい。具体的には、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄膜シート若しくはこれらの積層物が好適に挙げられる。
【0085】
仮支持体と前記熱可塑性樹脂層との間に良好な剥離性を確保するために、グロー放電等の表面処理は施さず、またゼラチン等の下塗り層も設けないことが好ましい。
前記仮支持体の厚みとしては、5〜300μmが適当であり、20〜150μmが好ましい。
【0086】
−カバーフィルム−
前記感光性樹脂層上には、保管等の際の汚れや損傷から保護する目的で、カバーフィルムを設けることが好ましい。カバーフィルムは、感光性樹脂層から容易に剥離可能なものの中から選択でき、前記仮支持体と同一又は類似の材料からなるものであってもよい。
具体的には、例えば、シリコーン紙、ポリオレフィン又はポリテトラフルオロエチレンシート等が好ましく、中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムがより好ましい。
【0087】
前記カバーフィルムの厚みとしては、約5〜100μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0088】
転写材料は、前記仮支持体上に、まず、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解し調製した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布、乾燥して熱可塑性樹脂層を設け、続いて該熱可塑性樹脂層上に、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶媒を用いてなる塗布液(中間層用塗布液)を塗布、乾燥して中間層を設け、更に該中間層上に、硬化性組成物を中間層を溶解しない溶剤に溶解し調製した塗布液(感光性樹脂層用塗布液)を塗布、乾燥して感光性樹脂層を設けることにより形成することができる。又は、前記カバーフィルム上に感光性樹脂層を設け、一方、仮支持体上に熱可塑性樹脂層と中間層とを設け、それぞれを中間層と感光性樹脂層とが接するように貼り合わせることにより、或いは、前記カバーフィルム上に感光性樹脂層と中間層とを設け、一方、仮支持体上に熱可塑性樹脂層を設け、それぞれを上記同様、中間層と感光性樹脂層とが接するように貼り合わせることにより、製造することができる。
【0089】
後述のように、転写材料を被転写体である基板の導電層上に密着させ、転写材料の仮支持体を剥離する過程では、仮支持体や基板等が帯電する結果、周囲のゴミ等を引き寄せ、剥離後の感光性樹脂層上にゴミ等が付着して、その後の露光過程で未露光部ができ、その部分がピンホールを形成する要因となることから、帯電を防止する目的で、仮支持体の少なくとも一方の表面に導電性層を設けたり、あるいは導電性を付与した仮支持体を用いることにより、その表面電気抵抗を1013Ω以下に下げることが好ましい。
【0090】
仮支持体に導電性を付与するには、仮支持体中に導電性物質を含有させればよい。例えば、金属酸化物の微粒子や帯電防止剤を予め練り込んでおく方法が好適である。
前記金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化モリブデン等の結晶性金属酸化物、及び/又は、その複合酸化物の微粒子が挙げられる。
【0091】
前記帯電防止剤としては、エレクトロストリッパーA(花王(株)製)、エレノンNo19(第一工業製薬(株)製)等のアルキル燐酸塩系アニオン界面活性剤;アモーゲンK(第一工業製薬(株)製)等のベタイン系両性界面活性剤;ニッサンノニオンL(日本油脂(株)製)等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル系非イオン界面活性剤;エマルゲン106、120、147、420、220、905、910(花王(株)製)やニッサンノニオンE(日本油脂(株)製)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン界面活性剤、等が好適である。その他、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルアミン系等のものが挙げられる。
【0092】
仮支持体上に導電性層を設ける場合には、導電性層としては公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。導電性層に用いる導電性物質として、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3等から選ばれる少なくとも1種の結晶性金属酸化物、及び/又は、その複合酸化物の微粒子等が挙げられる。これらを含有させて用いる方法が湿度環境に影響されない、安定した導電効果を有する点で好ましい。
【0093】
前記結晶性金属酸化物又はその複合酸化物の微粒子の体積抵抗値としては、107Ω・cm以下が好ましく、105Ω・cm以下がより好ましい。また、その粒子径としては、0.01〜0.7μmが好ましく、0.02〜0.5μmがより好ましい。
【0094】
上記結晶性金属酸化物及びその複合酸化物の微粒子の製造方法は、特開昭56−143430号に詳細に記載されている。即ち、第1に、金属酸化物微粒子を焼成により作製し、導電性を向上させる異種原子の存在下で熱処理する方法、第2に、焼成により金属酸化物微粒子を製造する際に導電性を向上させるための異種原子を共存させる方法、第3に、焼成により金属微粒子を製造する際に雰囲気中の酸素濃度を下げて、酸素欠陥を導入する方法等が記載されている。異種原子を含む具体例としては、ZnOに対してAl、In等、TiO2に対してNb、Ta等、SnO2に対してSb、Nb、ハロゲン元素等を存在させることが挙げられる。
【0095】
異種原子の添加量としては、0.01〜30mol%が好ましく、0.1〜10mol%がより好ましい。導電性粒子の使用量としては、0.05〜20g/m2が好ましく、0.1〜10g/m2がより好ましい。
【0096】
転写材料に設ける導電性層には、バインダーとして、ゼラチン、セルロースナイトレート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、炭素数1〜4のアルキルアクリレート、ビニルピロリドン等を含むホモポリマー又は共重合体;可溶性ポリエステル、ポリカーボネート、可溶性ポリアミド等を使用することができる。
【0097】
これらのバインダー中に導電性粒子を分散する場合、チタン系分散剤又はシラン系分散剤等の分散液を添加してもよい。また、必要に応じて、バインダー架橋剤等を添加することもできる。
【0098】
前記チタン系分散剤としては、例えば、米国特許4,069,192号、同4,080,353号等に記載の、チタネート系カップリング剤、プレンアクト(味の素(株)製)等が挙げられる。前記シラン系分散剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、「シランカップリング剤」(信越化学(株)製)として市販されている。前記バインダー架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0099】
前記導電性層は、導電性微粒子をバインダー中に分散させて仮支持体上に塗設したり、又は仮支持体上に下引処理(例えば、下塗り層等)を施した上に導電性微粒子を付着させることにより設けることができる。
【0100】
前記導電性層は、仮支持体の感光性樹脂層を塗設した面とは反対の表面上に設けてもよく、この場合には、十分な耐傷性を確保する目的で、導電性層上に更に疎水性重合体層を設けることが好ましい。該疎水性重合体層は、疎水性重合体を有機溶剤に溶解した状態又は水性ラテックスの状態で塗布すればよく、その塗布量としては、乾燥質量で0.05〜1g/m2程度が好ましい。
前記疎水性重合体としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアクリレート等を含むビニル系ポリマー;有機溶剤可溶性ポリアミド、ポリエステル等のポリマーを挙げることができる。
【0101】
前記疎水性重合体層には、スベリ性を付与する目的で、例えば、特開昭55−79435号に記載の有機カルボン酸アミド等のスベリ剤を使用することができる。また、必要に応じて、マット剤等を使用することもできる。このような疎水性重合体層を設けても、導電性層の効果は実質的に影響を受けない。
【0102】
下塗り層を設ける場合、特開昭51−135526号、米国特許3,143,421号、同3,586,508号、同2,698,235号、同3,567,452号等に記載の塩化ビニリデン系共重合体、特開昭51−114120号、米国特許3,615,556号等に記載のブタジエン等のジオレフイン系共重合体、特開昭51−58469号等に記載のグリシジルアクリレート又はグリシジルメタアクリレート含有共重合体、特開昭48−24923号等に記載のポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、特開昭50−39536号に記載の無水マレイン酸含有共重合体等を用いることができる。
【0103】
本発明においては、特開昭56−82504号、特開昭56−143443号、特開昭57−104931号、特開昭57−118242号、特開昭58−62647号、特開昭60−258541号等に記載の導電性層も必要に応じて用いることができる。
【0104】
仮支持体上に、導電性層を塗布する場合、ローラーコート、エアナイフコート、グラビアコート、バーコート、カーテンコート等の公知の方法により塗布することができる。十分な帯電防止効果を得るためには、導電性層又は導電性を付与した仮支持体の表面電気抵抗値を、1013Ω以下とすることが好ましく、1012Ω以下とすることがより好ましい。
【0105】
また、感光性樹脂層の仮支持体との強固な接着を防止するため、仮支持体面に公知の微粒子を含有する滑り剤組成物、シリコーン化合物を含有する離型剤組成物等を塗布することもできる。
【0106】
仮支持体の熱可塑性樹脂層を設けない側の表面に導電性層を設ける場合には、熱可塑性樹脂層と仮支持体との接着性を向上する目的で、仮支持体に、例えば、グロー放電処理、コロナ処理、紫外線照射処理等の表面処理、フェノール性物質、ポリ塩化ビニリデン樹脂、スチレンブタジエンゴム、ゼラチン等の下塗り処理又はこれらの処理を組み合わせた処理を施すことができる。
【0107】
仮支持体用のフィルムは押し出し形成により形成することが可能であるが、導電性物質又は導電性層を仮支持体と同一又は異質のプラスチック原料に含有させ、前記フィルムと同時に押し出し形成した場合には、接着性、耐傷性に優れた導電性層を容易に得ることができる。この場合、前記疎水性重合体層や下塗り層を設ける必要はなく、転写材料を構成する導電性付与仮支持体として最も好ましい実施形態である。
【0108】
続いて、転写材料を用いた構造体の形成方法について説明する。ここでは、転写材料として、仮支持体上にアルカリ可溶な熱可塑性樹脂層、中間層、感光性樹脂層及びカバーフィルムがこの順に積層されてなる転写材料を、基板として、基体上の全面に導電層(ITO膜等)が設けられた基板を用いた一例を示す。
【0109】
まず、転写材料のカバーフィルムを取り除き、感光性樹脂層を加圧、加熱下で被転写体である基板の導電層上に密接し貼り合わせる。貼り合わせには、従来公知のラミネーター、真空ラミネーター等の中から適宜選択したものが使用でき、より生産性を高めるには、オートカツトラミネーターも使用可能である。
貼り合わせた後、仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥がし取り、該熱可塑性樹脂層の上方から熱可塑性樹脂層及び中間層を通して感光性樹脂層をパターン状に露光(パターニング)する。
前記露光は、300〜500nmの波長光の照射により行え、光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、Hg−Xeランプ等が挙げられる。
【0110】
また、前記パターニングの方法としては、例えば、▲1▼フォトリソグラフィ法による方法、▲2▼熱可塑性樹脂層の上方に露光マスクを配置し、該マスク介してパターン状に露光する方法、▲3▼密着型のプロキシミティ露光装置等の露光手段を用いる方法等が挙げられる。
前記方法▲3▼によるパターニングでは、その露光量としては、光硬化性組成物が重合硬化を起こす最小露光量の3〜10倍が好ましく、プロキシミティ量としては、40〜150μmが好ましい。
【0111】
前記露光の後、現像処理して、熱可塑性樹脂層、中間層、及び不要部(未硬化部分)の感光性樹脂層を除去する。すると、照射された硬化部のみが導電層上に残り、透明構造体が形成される。
【0112】
前記現像は、公知の方法により行え、溶剤若しくは水性の現像液、特にアルカリ水溶液等を用いて、例えば、(a)露光後の基板自体を現像浴中に浸漬する、(b)露光後の基板にスプレー等により噴霧する等して、更に必要に応じて、溶解性を高める目的で、回転ブラシや湿潤スポンジ等で擦ったり、超音波を照射しながら行うことができる。
【0113】
前記アルカリ水溶液としては、アルカリ性物質の希薄水溶液が好ましく、更に水混和性のある有機溶剤を少量添加したものも好適に使用することができる。前記アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩類、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩類、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩類、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等のアルカリ金属メタケイ酸塩類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモンニウムヒドロキシド類、燐酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0114】
アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度としては、0.01〜30質量%が好ましく、更にpHとしては、8〜14が好ましい。
【0115】
前記水混和性を有する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
該有機溶剤の添加量としては、0.1〜30質量%が好ましい。
【0116】
また、アルカリ水溶液には、公知の種々の界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の濃度としては、0.01〜10質量%が好ましい。
現像時の温度としては、通常、室温付近から40℃が好ましい。更に、現像処理した後に、水洗処理する工程を入れることもできる。
【0117】
現像処理した後、更に200〜260℃下でベークする。べーク処理することにより、透明構造体をより硬化させることができ、また構造体の収縮、流動により構造体の形状を適度になだらかにすることができる。
【0118】
次に、前記(2)の方法について簡単に説明する。
この場合には、基板上に、光硬化性組成物を含んで調製された液を直接塗布等することにより、基板の導電層上に感光性樹脂層を形成する。前記光硬化性組成物を含んで調製された液としては、既述の(1)の方法において用いる感光性樹脂層用塗布液と同様のものが使用できる。
基板上に感光性樹脂層を形成した後、(1)の方法と同様にして、露光(パターニング)、現像等することにより、基板の導電層上に照射された硬化部のみが導電層上に残り、透明な構造体が形成される。そして、更に200〜260℃下でベークすることが好ましい。
【0119】
以上のように、安価な硬化性組成物により簡易に液晶分子の配向を規制しうる構造体を形成することができ、しかも、前記硬化性組成物を用いることにより、ベーク処理による着色がなく透明性に優れる透明構造体を形成することができる。
【0120】
上記のようにして形成される構造体は、液晶分子の配向の向きを規制しうる形状、形態で導電層及び液晶層の間に形成されていればよく、その形状、形態には特に制限はない。
前記構造体の形状としては、公知の形状の中から適宜選択することができ、例えば、基板の導電層面を底面とする角錐型(三角錐、四角錐等)、半球型のものや、同様に導電層面を底面とする円錐型、台形型、蒲鉾型のもの、また、帯状に基板上に形成されその長さ方向と直交する断面形状が三角形である三角柱状のもの、同様にその長さ方向と直交する断面形状が半円形、四角形、台形、蒲鉾形等の柱状体のものなど、例えば特許第2947350号等に記載された形状等に形成できる。
【0121】
また、構造体の配置態様としては、公知の態様の中から適宜選択することができ、例えば、特許第2947350号等に記載の態様で形成できる。
例えば、帯状に基板上に形成されその長さ方向と直交する断面形状が台形である複数の柱状体が等ピッチで1方向に平行に延びたパターンで配置され、且つ2枚の基板の各導電層と液晶層との両方の間に設けられてなる態様であってもよい(特許第2947350号の図14参照)。前記構造体が両方の基板の導電層と液晶層との間に設けられる場合には、必ずしも同形状の構造体を形成する必要はなく、異形状の構造体を組合せて形成してもよい。また、基板上に帯状に形成される構造体は、直線状の形態に限られず、所定の角度をなして屈曲状の形態で設けられてもよい(特許第2947350号の図42及び図55等参照)。
【0122】
その他、前記構造体の大きさ、配置間隔、配置形状等の詳細については、特許第2947350号等の記載を参照できる。
【0123】
前記構造体の形状の中でも、十分な視野角が得られる点で、基板と直交する断面が台形及び蒲鉾形のいずれかの形状を有する構造体が好ましく、前記した基板の導電層面を底面とする台形型、蒲鉾型や、帯状に基板上に形成されその長さ方向と直交する断面形状が半円形、台形、蒲鉾形の柱状体などが好ましい。
【0124】
以上の通り、前記構造体は、導電層と液晶層との間に設けられることにより、構造体の凸面に沿って液晶分子の配向の向きが傾斜するように規制されるので、液晶面を観察する位置(視野角)に依存しない広視野角を確保することができる。
【0125】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、互いに対向し合う側の表面に導電層が設けられた2枚の基板間に液晶層が狭持され、既述の本発明の光硬化性組成物からなる構造体を基板の導電層と液晶層との間に備えてなる。また、構造体を含む導電層上にはこれらを覆って配向膜を形成することもできる。
【0126】
本発明の液晶表示素子の基本的な構成態様としては、(1)薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という。)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、カラーフィルタ及び対向電極(導電層)を備えるフィルタ側基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成されるもの、(2)カラーフィルタが前記駆動側基板に直接形成されたカラーフィルタ一体型駆動基板と、対向電極(導電層)を備える対向基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成されるもの等が挙げられる。
【0127】
導電層としては、例えば、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO2等の金属酸化膜などが挙げられ、中でも透明性のものが好ましく、ITO膜が特に好ましい。
前記駆動側基板、フィルタ側基板、対向基板は、その基材として、例えば、ソーダガラス板、低膨張ガラス板、ノンアルカリガラス板、石英ガラス板等の公知のガラス板、あるいはプラスチックフィルム等を用いて構成される。
【0128】
TFT等の駆動素子と画素電極とが配列形成された駆動側基板としては、例えば、互いに垂直に交わってマトリックス状に配設されたデータバスライン及びゲートバスラインと接続されたTFT、及びTFTを介してデータバスラインと接続する導電層が設けられたもの等が挙げられる。
【0129】
前記態様のいずれにおいても、液晶表示素子を構成する基板の両方に導電層が形成され、該両導電層間に電圧が印可されその間に狭持される液晶材料がその電圧に応じて配向状態を変化させ表示を行う。したがって、既述の構造体は、いずれの導電層上にも所望の形状、形態で形成することができる。
【0130】
前記態様(1)の一例として、図2により簡単に説明する。
一方の基板10は、フィルタ側基板である。基板3の液晶層6に対向する側の表面には、カラーフィルタ膜7、共通電極をなすITO膜(電極層)1、及び等ピッチで断面台形の構造体8が形成されている。更に、ITO膜1及び構造体8上には、配向膜(図示しない)が設けられる。
他方の基板20は、TFTを備える駆動側基板である。基板4の液晶層6に対向する側の表面には、TFT(図示しない)、該TFTのドレイン電極と接合するITO膜(電極層)2、及び等ピッチで断面台形の構造体8が形成されている。基板20には、ゲート電極をなすゲートバスラインが複数本形成され、該ゲートバスラインに直交して複数本のデータバスラインが平行に形成され、ゲートバスラインとデータバスラインの交点に対応して複数個のTFTが配列されている。更に、TFT、ITO膜2及び構造体8上には、更に配向膜(図示しない)が設けられる。
前記基板10及び基板20の間には、液晶材料を封入してなる液晶層6が狭持され、構造体8は液晶層6側に凸に突起し、該凸面に沿って液晶分子5が配向している。
【0131】
以上の通り、基板の導電層と液晶層との間に、着色のない透明な構造体が設けられるので、液晶表示面に対する観察位置(視野角)に依存しない広視野角を確保することができると共に、3原色(B(青色)、G(緑色)、R(赤色))の色純度をも損なわれず、色相ズレのない鮮明なフルカラー画像を表示しうる液晶表示素子を提供することができる。
【0132】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。以下において、本発明に係る構造体を透明構造体ということがある。
【0133】
(実施例1)
<構造体の形成>
−転写材料(1)の作製−
仮支持体として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を準備し、該仮支持体上に、下記組成よりなる熱可塑性樹脂層用塗布液H1を塗布、乾燥して、乾燥層厚20μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0134】
〔熱可塑性樹脂層用塗布液H1の組成〕
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 ・・・15部
(共重合比(モル比)=55/28.8/11.7/4.5、重量平均分子量90000)
・ポリプロピレングリコールジアクリレート ・・・ 6.5部
(平均分子量822)
・テトラエチレングリコールジメタクリレート ・・・ 1.5部
・p−トルエンスルホンアミド ・・・ 0.5部
・ベンゾフェノン ・・・ 1.0部
・メチルエチルケトン ・・・30部
【0135】
続いて、前記熱可塑性樹脂層上に、下記組成よりなる中間層用塗布液B1を塗布、乾燥して、乾燥層厚1.6μmの中間層を形成した。
〔中間層用塗布液B1の組成〕
・ポリビニルアルコール ・・・ 130部
(PVA−205(ケン化率80%)、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン ・・・ 60部
(PVP K−90、GAFコーポレーション社製)
・フッ素系界面活性剤 ・・・ 10部
(サーフロンS−131、旭硝子(株)製)
・蒸留水 ・・・3350部
【0136】
続いて、下記組成よりなる感光性樹脂層用塗布液T1を調製し、前記中間層上に更に塗布し、乾燥して乾燥層厚2.0μmの感光性樹脂層を積層した。
〔感光性樹脂層用塗布液T1の組成〕
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 ・・・ 6.7部
(共重合比=73/27、重量平均分子量30000
;(メタ)アクリル酸含有重合体)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート ・・・ 4.0部
(重合性モノマー;(メタ)アクリル酸含有重合体に対する質量比=0.6)
・フェノチアジン ・・・ 0.005部
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン(重合開始剤)
・・・ 0.13部
・ビクトリアピュアブルーBOH−M(消色性染料) ・・・ 0.19部
・ポリ(N−プロピルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート)/ポリプロピレングリコールメチルエーテルアクリレート
(共重合比=40/60) ・・・ 0.010部
・メチルエチルケトン ・・・32部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・53部
・メタノール ・・・ 4部
【0137】
更に、前記感光性樹脂層上に、カバーフィルムとしてポリプロピレン(厚み12μm)フィルムを圧着貼付して設け、仮支持体上に、熱可塑性樹脂層、中間層、感光性樹脂層、カバーフィルムがこの順に積層された転写材料(1)を作製した。
【0138】
−フィルタ側基板の作製−
所定サイズのガラス基板上に、膜厚0.1μmのクロム(Cr)金属膜をスパッタリングにより形成した。続いて、フォトレジストを用いてエッチングし、所定サイズ、形状からなる格子状のブラックマトリックスを形成した。その後、特開平11−64621号公報に記載のカラーフィルタの製造方法により、所定の位置にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)からなる着色膜を形成した。
次に、着色膜及びブラックマトリックス上に、スピンコーターによりアクリル樹脂系の液を塗布して保護層を形成し平坦化した後、該保護層上に更に導電層としてスパッタリング法によりITO膜を成膜し、フィルタ側基板を得た。
【0139】
−構造体の形成−
上記より得た転写材料(1)からカバーフィルムを剥がし、その感光性樹脂層の表面と前記フィルタ側基板のITO膜が設けられた側の表面とを重ね合わせ、ラミネーターVP−II(大成ラミネータ(株)製)を用いて、線圧100N/cm、温度130℃、搬送速度1m/分の条件下で貼り合わせた。その後、転写材料の仮支持体のみを熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、除去した。
この状態では、フィルタ側基板上に、感光性樹脂層、中間層、熱可塑性樹脂層がこの順に積層されている。ここで、前記感光性樹脂層が光により硬化を起こす最小露光量は、3mJ/cm2であった。
【0140】
次に、最外層である熱可塑性樹脂層の上方に、所定のフォトマスクが感光性樹脂層の表面から70μmの距離となるようにプロキシミティ露光機を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー15mJ/cm2でプロキシミティ露光した。
その後、1%トリエタノールアミン水溶液を用いて、熱可塑性樹脂層及び中間層を溶解除去した。この段階では、感光性樹脂層は実質的に現像はされていなかった。
【0141】
続いて、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、これを収容した現像浴中に浸漬して感光性樹脂層をブラシで擦りながら現像し、感光性樹脂層の不要部(未硬化部)を現像除去した。すると、フィルタ側基板上には、所望の形状にパターニングされた感光性樹脂層よりなる透明な構造物が形成された。
次いで、構造体が形成されたフィルタ側基板を230℃下で120分ベークすることにより、フィルタ側基板のITO膜上に透明構造体(a)を形成することができた。透明構造体(a)は、走査型電子顕微鏡により観察した結果、線幅11μm、中央部高さ約1.5μmの蒲鉾型の断面形状を有し、透明性に優れ、着色は認められなかった。
【0142】
更に、上記より得たフィルタ側基板に対して、駆動側基板及び液晶材料を組合せることによって液晶表示素子を作製することができる。
即ち、駆動側基板として、TFTと画素電極(導電層)とが配列形成されたTFT基板を準備し、該TFT基板の画素電極等が設けられた側の表面と、上記より得た、フィルタ側基板の透明構造体(a)が形成された側の表面とが対向するように配置し、スペーサを介在させて間隙を有して固定した。この間隙に液晶材料を封入し、画像表示を担う液晶層を設けることにより、導電層と液晶層との間に透明性の高い構造体を備える本発明の液晶表示素子を作製することができる。
【0143】
(実施例2〜3)
実施例1の感光性樹脂層用塗布液T1の調製において、(メタ)アクリル酸含有重合体の総量に対する重合性モノマーの総量の質量比が下記表1に示す比(0.5、0.9)となるように、感光性樹脂層用塗布液T1の調製と同様にして、感光性樹脂層用塗布液T2、T3を調製した。そして、感光性樹脂層用塗布液T1に代えて、感光性樹脂層用塗布液T2、T3を用いたこと以外、実施例1と同様にして、転写材料(2)、(3)を作製した。
【0144】
続いて、実施例1で用いた転写材料(1)に代えて、上記転写材料(2)、(3)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、フィルタ側基板のITO膜上にそれぞれ透明構造体(b)、(c)を形成した。透明構造体(b)及び(c)は、それぞれ線幅11μm、中央部高さ約1.5μmの蒲鉾型、台形の断面形状を有し、透明性に優れ、着色は認められなかった。
また、上記透明構造体(b)又は(c)を備えたフィルタ側基板に駆動側基板及び液晶材料を組合せることにより、実施例1と同様にして、導電層と液晶層との間に透明性の高い構造体を備える本発明の液晶表示素子を作製することができる。
【0145】
(実施例4)
実施例1と同様のフィルタ側基板のITO膜が設けられた側の表面上に、実施例1で調製した感光性樹脂層用塗布液T1を乾燥層厚2μmとなるように直接塗布し、100℃下で10分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。ここで、前記感光性樹脂層が光により硬化を起こす最小露光量は、30mJ/cm2であった。感光性樹脂層上に、実施例1と同様のプロキシミティ露光機を実施例1と同様にして配置し、照射エネルギー150mJ/cm2でプロキシミティ露光した。その後、実施例1と同様にして、現像、ベークすることにより、フィルタ側基板のITO膜上に透明構造体(d)を形成することができた。透明構造体(d)は、線幅11μm、中央部高さ約1.5μmの蒲鉾型の断面形状を有し、透明性に優れ、着色は認められなかった。
また、上記透明構造体(d)を備えたフィルタ側基板に駆動側基板及び液晶材料を組合せることにより、実施例1と同様にして、導電層と液晶層との間に透明性の高い構造体を備える本発明の液晶表示素子を作製することができる。
【0146】
(比較例1〜2)
実施例1の感光性樹脂層用塗布液T1の調製において、(メタ)アクリル酸含有重合体の総量に対する重合性モノマーの総量の質量比が下記表1に示す比(0.4、1.0)となるように、感光性樹脂層用塗布液T1の調製と同様にして、感光性樹脂層用塗布液T4、T5を調製した。そして、感光性樹脂層用塗布液T1に代えて、感光性樹脂層用塗布液T4、T5を用いたこと以外、実施例1と同様にして、転写材料(4)、(5)を作製した。
【0147】
続いて、実施例1で用いた転写材料(1)に代えて、上記転写材料(4)、(5)を用いたこと以外、実施例1と同様の操作を行った。
前記転写材料(4)を用いた比較例1では、硬化不良により、現像時に光照射部も溶けて所望の構造体を得ることはできなかった。また、前記転写材料(5)を用いた比較例2では、フィルタ側基板のITO膜上に透明構造体(e)を形成することができ、該透明構造体(e)は、線幅11μm、中央部高さ約1.5μmの角型の断面形状を有し、透明性に優れ、着色は認められなかった。
また、比較例2においては、上記透明構造体(e)を備えたフィルタ側基板に駆動側基板及び液晶材料を組合せることにより、実施例1と同様にして、前記角型の構造体を備える液晶表示素子を作製することができる。
【0148】
(比較例3)
特開平11−174673号公報の実施例1で使用された組成物及び形成方法を用いて、実施例1の透明構造体(a)と同様の形状からなる構造体(f)をフィルタ側基板のITO膜上に形成した。
また、上記透明構造体(f)を備えたフィルタ側基板に駆動側基板及び液晶材料を組合せることにより、実施例1と同様にして、導電層と液晶層との間に構造体を備える液晶表示素子を作製することができる。
【0149】
(評価)
−着色度の評価(透過率)−
各実施例及び比較例において、構造体を形成する段階で、現像後のベーク前後における構造体に400nmの光を照射し、ベーク前後の透過率〔%〕を求めた。そして、該透過率を構造体の着色の有無を評価する指標とした。測定した結果を下記表1に示す。
【0150】
−構造体の形状の評価−
以上より得られた各々の構造体に対して、各々の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、断面形状を評価した。ここで、断面形状が蒲鉾型若しくは台形の場合を良好(○)とし、角型の断面形状の場合は不良(×)とした。評価結果を下記表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
上記表1の結果から、本発明の光硬化性組成物を用いて構造体を形成した実施例1〜4では、簡易な工程で着色がなく透明性に優れ、しかも良好な断面形状を有してなる透明構造体を低コストに形成することができた。したがって、液晶分子の配向の向きを規制する構造体として、該透明構造体を備える液晶表示素子では、RGBの3原色の色純度を損なうこともないので、色相ズレのないフルカラー画像を表示することができる。
一方、(メタ)アクリル酸含有重合体に対する重合性モノマーの含有比(質量)の少ない光硬化性組成物を用いた比較例1では、光照射部まで現像除去されて構造体を得ることはできず、上記重合性モノマーの含有比(質量)の多い光硬化性組成物を用いた比較例2では、蒲鉾型若しくは台形のなだらかな断面形状にできず、角型断面の構造体しか得られなかった。角型では広視野角を得ることはできない。また、ポジレジストを用いた比較例3では、ベーク時に構造体が黄変色してしまい、透過率の高い透明性に優れた構造体を得ることができなかった。この透過率の低い構造体を備える液晶表示素子では、RGBの3原色の色純度が損なわれてしまう結果、色相の良好な画像の表示は困難である。
【0153】
【発明の効果】
本発明によれば、液晶分子の配向を規制しうる構造体の形成に用いられ、着色がなく透明性に優れ、表示画像の色相を損なうことのない構造体を安価かつ簡易に形成しうる光硬化性組成物を提供することができる。また、基板上の導電層と液晶層との間に、安価な硬化性組成物により簡易に形成され、着色がなく透明性に優れた構造体を備え、液晶面に対する観察位置(視野角)に依存しない広視野角を有し、色相の良好なフルカラー画像の表示が可能な液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 LCDの視野角による画像表示の変化を示す図である。
【図2】 本発明の液晶表示素子の一例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
1,2…導電層(電極)
5…液晶分子
6…液晶層
7…カラーフィルタ
8…構造体
10…フィルタ側基板
20…駆動側基板
Claims (8)
- 重合性モノマーと(メタ)アクリル酸含有重合体と重合開始剤とC.I.basic blue 7とを含み、かつ前記(メタ)アクリル酸含有重合体の総量に対する前記重合性モノマーの総量の質量比が0.5〜0.6である光硬化性組成物であって、
互いに対向し合う側の表面に導電層を備える2枚の基板間に液晶層が狭持されてなる液晶表示素子の、前記導電層と液晶層との間に設けられる実質的に無色の透明な構造体の形成に用いられることを特徴とする光硬化性組成物。 - 構造体が転写材料を用いて形成され、該転写材料の感光性樹脂層に含有される請求項1に記載の光硬化性組成物。
- 転写材料が、仮支持体上にアルカリ可溶な熱可塑性樹脂層と中間層と感光性樹脂層とがこの順に設けられてなる請求項2に記載の光硬化性組成物。
- 構造体がフォトリソグラフィ法によりパターニングされてなる請求項1から3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
- 構造体がプロキシミティ露光手段によりパターニングされてなり、該パターニングにおける、露光量が重合硬化を起こす最小露光量の3〜10倍であり、プロキシミティ量が40〜150μmである請求項1から4のいずれかに記載の光硬化性組成物。
- 構造体が、光の照射により硬化された後、更に200〜260℃でベークされてなる請求項1から5のいずれかに記載の光硬化性組成物。
- 構造体が、基板と直交するその断面が台形及び蒲鉾形のいずれか一方の形状を有してなる請求項1から6のいずれかに記載の光硬化性組成物。
- 請求項1から7のいずれかに記載の光硬化性組成物からなる構造体を備えることを特徴とする液晶表示素子。
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