JP4171147B2 - 水素脆化判定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、渦流センサを用いてチタン管に生じた水素脆化の程度を判定する水素脆化判定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より渦流センサを用いて管体の層厚を測定する方法が知られており、例えば、特公平6−8723号公報に記載の“ライナ被覆管の厚み測定方法”では、核燃料被覆用等に用いられるライナ被覆管のライナ層厚を、渦流法を用いて測定することが行われている。
【0003】
上記測定方法は、ジルカロイ管の内面にライニングされたライナ層を測定するものであり、核燃料被覆管の耐食性を管理することを目的としている。また、この測定方法は、ライナ層とジルカロイ層とで電気抵抗が明確に異なる性質を利用してライナ層の厚みを測定しており、測定に使用する周波数としてライナ層の厚さと渦流の浸透深さが近い周波数を用いることにより測定精度を高めている。
【0004】
一方、チタン管は耐食性に優れていることから、発電設備、化学プラント等における熱交換器の伝熱管として利用されることが多くなっている。その化学プラントで使用される熱交換器には、硫化水素等の水素を発生させる不純物を含んだ熱媒体を導入することがあり、この状態で長時間運転されると、熱媒体中の水素がチタン管に拡散し、拡散した水素量がチタンの固溶限(約100ppm)を超えると、チタンの結晶粒界等に水素化物が析出する。この水素化物が大量に析出すると、チタンが脆化(水素脆化)し最終的に破壊に至る虞れがある。そこで、その水素脆化の程度を把握し、熱交換器の寿命を知ることのできる判定方法が要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、測定対象が熱交換器のチタン管である場合には、上記したジルカロイ管におけるライナ層測定方法のように渦流法を応用することができない。なぜなら、水素化物の比抵抗はチタンのそれと比較的近い値を示すため、水素化物が析出しても物性の変化量として捉えることが困難であるからである。
【0006】
しかも、チタン管温度に起因するインピーダンス変化、チタン管に存在する不純物(管素材中に存在する酸素、窒素等の不純物がチタン管の比抵抗を変化させる)、チタン管の内径変動(管製造時において管を支持しているローラの偏心が原因で生じる)及びバッフルプレートの存在がノイズとなり、測定を困難にする要因となっている。なお、バッフルプレートは多数の伝熱管を貫通させた状態で熱交換器内に配設されるものである。
【0007】
本発明は以上のような従来の渦流法による層厚さ測定方法における課題を考慮してなされたものであり、チタン管の水素脆化を正確に判定することができる水素脆化判定方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の本発明は、参照コイル及び検出コイルを備えた渦流センサを被測定管としてのチタン管内に挿入し、複数の周波数の交流電流を前記参照コイルに印加して前記チタン管のインピーダンス変化を検出コイルで測定し、前記チタン管の内径変動成分をr、外部導電体影響成分をb、温度による比抵抗変化成分をρとするとき、
個々の周波数における出力信号Vが下記式
V=a1*ρ+a2*r+a3*b ……式 (1)
ただし、a1,a2,a3は係数
で表されることを利用し、複数の周波数での実測値Vと既知の上記係数a1,a2,a3を式 (1) に代入して上記r,b,ρの各成分を決定し、決定された成分のインピーダンス変化量に基づいて前記チタン管の水素吸収量を求める水素脆化判定方法である。
【0009】
請求項2の本発明は、前記複数の周波数が多重化された周波数からなり、各周波数毎に測定されたインピーダンスの水平及び垂直成分に基づいて、内径変動成分及び比抵抗変化成分を抽出する水素脆化判定方法である。
【0010】
請求項3の本発明は、多重化周波数が、チタン管外部の導電体に磁力線が漏れることのない浸透深さで渦電流を発生させる主周波数と、その主周波数の倍の副周波数とを重畳したものからなる水素脆化判定方法である。
【0011】
請求項4の本発明は、チタン管において最も温度の低い部位を水素非吸収部位とみなし、渦流測定器のヌルを取る水素脆化判定方法である。
【0012】
請求項5の本発明は、被測定管と同一寸法からなる別の基準管を準備し、双方のチタン管に温度差を与えたときの両管のインピーダンス差を求めておき、水素を吸収したチタン管のインピーダンス変化量を求める場合に、そのインピーダンス差に基づいて渦流測定器の校正を行う水素脆化判定方法である。
【0013】
請求項1の本発明に従えば、水素化物の比抵抗と近い比抵抗を有するチタン管について内径変動、外部導電体の影響及び温度の影響を排除することができるため、水素脆化の程度を判定することが可能になる。
【0014】
請求項2の本発明に従えば、測定信号に重畳されるノイズを効果的に排除してインピーダンス変化の測定精度を高めることができる。
【0015】
請求項3の本発明に従えば、チタン管の外部に例えばバッフルプレート等の導電体が存在する場合であっても水素脆化の程度を正確に判定することができる。
【0016】
請求項4の本発明に従えば、水素の拡散は温度依存性が極めて高くチタン管低温部では水素吸収が極めて小さいことを利用し、その低温部で渦流測定器のヌルを取ることにより温度影響を排除することができる。
【0017】
請求項5の本発明に従えば、別のチタン管を基準管として用い校正を行うことにより測定感度を設定することが可能になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した一実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る水素脆化判定方法に使用する判定装置の基本構成を示したものである。
【0020】
同図において判定装置1は、渦流センサ2と、その渦流センサ2に接続される渦流測定部3と、その渦流測定部3から出力される測定データに基づいて水素脆化判定に必要な計算を実行する演算部4aを備えたコントローラ4と、そのコントローラ4から出力される指令を受けて渦流センサ2を被測定管としてのチタン管内で移動させる駆動機構5から主として構成されている。
【0021】
渦流測定部3は渦流センサ2の参照コイル2aを励磁するとともに、検出コイル2bから出力される検出信号をインピーダンス値に変換して演算部4aに与えるようになっている。コントローラ4は、例えばパーソナルコンピュータから構成することができ、図示しないROMに予め記憶されているプログラムに従って水素脆化判定処理を実行する。
【0022】
図2はチタン管6内に挿入された渦流センサ2を示している。この渦流センサ2は駆動機構5によってチタン管6内を軸方向に移動することができるようになっている。なお、本実施形態におけるチタン管6は、具体的には熱交換器の伝熱管である。
【0023】
参照コイル2aとその参照コイル2aの近傍に配置された検出コイル2bとはインピーダンスが同じになるように調整され、参照コイル2aの周囲をダミー管2cでカバーすることにより、検出コイル2bのみがチタン管の水素吸収について測定信号を検出できるようにしている。なお、ダミー管付きの参照コイル2a及び検出コイル2bは管状のプローブ内に収納されているものとする。
【0024】
本発明では、参照コイル2aに流れる電流を打ち消す渦電流をチタン管6に流し、その渦電流の大きさがチタン管の比抵抗に依存することを利用して水素脆化判定を行っている。
【0025】
なお、チタン管6が溶接管であると、溶接ビードの盛り方が部位によって異なっていることで肉厚が均一でないために渦電流の大きさが変化する。ビード部の肉厚の変動周期が10mm程度であることから、コイル長さがその周期よりも短い励磁コイル2aを用いると溶接ビード部の肉厚変化によるインピーダンス変化も抽出してしまい、水素吸収量の判定を困難にする。
【0026】
また、水素の吸収は、管径の数倍以上の領域に広がって発生するため、管径と同程度のコイル長さを採用しても領域の分解能の低下につながらない。従って管の内径と同程度の長さの内挿型励磁コイルを渦流センサとして用いる。
【0027】
また、参照コイル2aに流す交流電流の周波数としては、熱交換器のバッフルプレートの影響が及ばない限界近傍の周波数、例えば1MHzを選択する。低い周波数を選択しない理由については後述する。
【0028】
図3のインピーダンス図表は、周波数1MHzでのチタン管のインピーダンス平面を示したものであり、横軸は実数軸u、縦軸は虚数軸vを示している。図3中の半円の軌跡A1は所定の内径を有し肉厚が無限大に想定された基準の仮想管であり、A2は所定の内径よりも数10μm程度内径が拡大された場合の、肉厚が無限大に想定された仮想管である。一方、B1は薄肉管における軌跡A1に相当する軌跡であり、B2は軌跡A2に相当する軌跡である。
【0029】
上記の軌跡A1及びA2は、比透磁率が1であり肉厚無限大の仮想管に励磁コイルを挿入した場合のインピーダンス変化を表しており、周波数、比抵抗が増加すると、インピーダンスはその半円の軌跡A1またはA2上を原点(u=0,v=0)に向かって移動する。また、仮想管の内径が大きくなると、半円の上端は同じであり下端が上方向に移動して半円の半径が小さくなる(図表中A1→A2)。
【0030】
これに対し肉厚が有限の管、すなわち現実の薄肉管ではその半円の軌跡が外側に広がり、B1,B2となる。図表中では周波数1MHzで、水素を吸収していない場合における肉厚変化時の軌跡をB1→B2で併せて示しているが、これらの軌跡は、比抵抗が同じ無限大肉厚の管のインピーダンス点に対し螺旋状の軌跡を描きながら収斂する。
【0031】
従って、浸透深さに比較して肉厚が十分厚い条件、すなわち、原点(u=0,v=0)近傍の点から、軌跡A1において角周波数ωを減少させるとインピーダンスは矢印M方向に移動し、薄肉管の螺旋状の軌跡B1に乗り移って矢印N方向に移動する。この螺旋状の軌跡B1上の各点は肉厚と対応関係がある。そして、上記無限大肉厚の管の軌跡A1と、中空管の肉厚を厚くして得られた螺旋状の軌跡B1とが最初に交差する点Pの肉厚は、渦電流の浸透深さが板厚に一致した時に相当する。
【0032】
チタン管に水素が吸収され、水素化物が析出し比抵抗が変化すると、具体的には軌跡B1上で比抵抗が大きくなると、インピーダンスが上方に(肉厚がゼロになる方向に)、また、比抵抗が小さくなるとインピーダンスが下方にそれぞれ変化する。基本的にはこのインピーダンス変化に基づいて水素化物の析出量を評価し、脆化の程度を把握している。
【0033】
次に、バッフルプレートの影響について説明する。
【0034】
渦電流浸透深さよりも肉厚の薄い管を測定すると、参照コイル2aで誘起された磁力線はその肉厚を通過して管外に漏れる。そのため、チタン管6の外側に金属製バッフルプレートが存在すると、そのバッフルプレートにも渦電流が流れてしまい検出コイル2bで検出されるインピーダンスに変化が生じることになる。従って選択する周波数を低くするほどバッフルプレート等のチタン管6外部に存在する導電体に渦電流が漏れやすくなり測定信号に悪影響を及ぼすことになる。このことから、渦電流の浸透深さが管肉厚の半分程度となるような周波数を主周波数として選択することが好ましい。
【0035】
逆に、主周波数を浸透深さ程度の低い値に選定すると、インピーダンスに対してチタン管の肉厚変動が鋭敏に重畳してしまい、水素吸収量の測定を困難にする。
【0036】
上記理由から主周波数を選択すると、選択した主周波数の交流電流を参照コイル2aに印加する限り、バッフルプレートの影響を受けることがほとんどない。
【0037】
しかしながら主周波数のみの測定では、例えばチタン管6の内径変動や僅かに残存するバッフルプレートの影響が観測されることになる。そこで、それらのノイズを防止して水素吸収量の判定精度を向上させるために副周波数を選択する。
【0038】
この副周波数は、主周波数の倍の周波数(2MHz)を選択し、その副周波数との多重周波数処理を行うことにより、チタン管6におけるノイズの影響を除去する。
【0039】
以下、ノイズの排除方法について説明する。
(a)管の温度・微量不純物成分に起因するノイズの排除
水素脆化有無の判断に必要な比抵抗の変化を測定する際に得られる信号変化は微小であるのに対し、チタン管6の比抵抗の絶対値は、管製造時において素材中に含まれる酸素、窒素等の量で変化し、また、測定時の管温度によっても変化する。そして管温度を一定に制御することは不可能である。従って計測された信号の絶対値で単純に水素の吸収量を判断することはできない。
【0040】
また、チタン管6中での水素の拡散は、温度の3乗に比例するほどの大きな温度依存性がある。しかも、熱交換器の運転時の流体温度は、熱交換器の構造でも変化するが、具体的にはチタン管6の長手方向に数10℃程度の範囲で分布する。しかしながら、このことは、チタン管6の長手方向に均一して水素の吸収が生じることは稀であることを示している。
【0041】
本発明では上記性質を利用して熱交換器の運転時に最も低温になる部位で渦流測定部3のNULL(ヌル)を取り、すなわち、参照コイル2aと検出コイル2bとのインピーダンスの差分を強制的にゼロにし、次いでその部位を基準として判定を開始することでチタン管の製造時における不純物の影響を排除し、水素吸収量を正確に判定できるようにしている。
(b)ノイズ及び水素吸収量の定量化
熱交換器運転時におけるチタン管6低温部における実測では、(b-1)管の熱膨張や製造誤差による内径変動、(b-2)バッフルプレートの有無、(b-3)管の温度変化による比抵抗の変化によって測定信号にノイズが重畳される。そこで、そのノイズを排除するにあたり個々のノイズ源に対して以下の処理を行う。なお、これらの処理は信号の発生方向を抽出して位相弁別を行うことにより実施する。
【0042】
(b-1)管の内径変動(以下、係数rとする)
水素を吸収せずに内径変動のみ存在するチタン管を測定し、内径変動に起因する出力信号の変化方向を把握する。
【0043】
(b-2)バッフルプレートの影響(以下、係数bとする)
バッフルプレートで発生する信号の方向を測定し、バッフルプレートによる出力信号の変化方向を調べる。
【0044】
(b-3)管の比抵抗による影響(以下、係数ρとする)
個々の周波数での出力信号が、水素吸収量hと上記した(b-1)〜(b-3)の各要因によって変化するが、その信号Vが下式で表現されることを利用して個々の要因の大きさを定量化する。
【0045】
信号V=a1*ρ+a2*r+a3*b ……式(1)
測定される出力は、インピーダンスがベクトル量であることを考慮すると、各周波数毎にX成分、Y成分の値が存在するため、主周波数と副周波数とで合計4個の測定値が得られる。
【0046】
そこで、(b-1)チタン管6の内径について検討すると、図4に示すように、周波数で決まる一定方向に信号が変化し、変化量が管の内径に比例することがわかる。同図の直線C1は周波数1MHzの交流電流をコイルに印加した場合、実線で示される直線C2は周波数2MHzで内径が変化した時のインピーダンスの変化に対応する。
【0047】
この時、チタン管6の内径変動による信号変化の比が各周波数毎に一定であることが重要である。すなわち、周波数毎に出力信号の比が求まっていれば、式(1)を用い、各周波数の測定値からチタン管6内径の変動量を知ることができる。
【0048】
一方、(b-2)バッフルプレートによる信号は、図5に示すように、周波数で決まる一定方向に信号が変化し、その変化量はバッフルプレートの影響度に比例することがわかる。直線D1は1MHz、直線D2は2MHzである。この場合も上記と同様に周波数毎に出力信号の比が求まることになり、バッフルプレートの影響量を定量化することができる。
【0049】
また、(b-3)チタン管6の比抵抗が変化した場合の信号についても、図6に示すように、周波数で決まる一定方向に信号が変化する。この影響についても周波数毎に影響度の比を求めることが重要であり、内挿コイルのインピーダンスをシュミレーションで求めた結果から、この方向と周波数毎による振幅の比を求めている。
【0050】
上記の関係を利用して、2つの周波数での渦流測定器3の実測値Vを用い、既知の係数a1,a2,a3を式(1)に代入してr,b,ρを決定する。
【0051】
チタン管6で水素の吸収が生じると、上述したように内径rと比抵抗ρとが変化する。ただし、内径rの変化量には、先に説明した通り製造誤差が含まれるため、その変化量から水素吸収量を一義的に判定することはできない。ところが、温度と管素材中の不純物成分が一定であるという条件下では、比抵抗ρの変化が水素吸収量を反映していると言える。従って比抵抗ρから水素脆化の程度を判定することができる。
【0052】
図7は測定された内径変化成分(グラフr1参照)、比抵抗成分(グラフρ1参照)、バッフルプレート成分(グラフb1参照)の管軸方向依存性を図表に表したものである。ただし横軸は測定点の管軸方向の位置、縦軸は各成分の大きさを示す。
【0053】
同図において横軸右端部分に水素吸収量のピーク、具体的にはその位置で5,000ppm程度吸収された部分があるが、そのピーク部分で内径rの信号と比抵抗ρの信号がそれぞれ大きくなっていることがわかる。このように内径変動の要因を抽出する必要性及び効果は、図8に示す新管を測定した結果と比較することにより説明できる。
【0054】
図8はバッフルプレートを取り付けた新しいチタン管に対して測定を行った結果を示したものである。同図から、内径rの変動に起因する信号が大きく観察されるが(図中r2参照)、比抵抗ρの信号はそれに比較して変動が小さい(グラフρ2参照)。
【0055】
なお、図7において、水素を吸収していない部分の内径変動は小さいが、これはたまたま製造時の条件が図8の被測定管に対して良好であったためであり、通常は図8に示すような内径変動が現れる。従って水素吸収量を判定するには比抵抗成分の抽出を行う必要がある。
【0056】
そしてその比抵抗成分が、温度と管素材中の不純物量が一定の条件下では水素量のみによって一義的に決まることを利用して水素の吸収量を評価することが可能になる。
【0057】
図9は渦流測定部3で抽出した内径変動量と比抵抗判定値との関係を、水素を吸収した管(グラフF参照)と、新管(グラフG参照)についてそれぞれ図表に表したものである。
【0058】
同図のにおいて、単に内径のみが変化した場合はグラフGで示したように内径成分に大きな変化が現れる。このときの垂直方向の変動範囲は、±2Vであり計4V変化する。これに対し、グラフFに示したように水素を吸収したチタン管6における内径成分の変化は約6Vである。従って内径成分だけを見る限りは水素吸収によるインピーダンスの変化かどうかは判断しにくい。
【0059】
ところが、比抵抗成分を考慮すると、グラフGにおいてチタン管6の内径変化による比抵抗成分の変動は3V程度であるが、水素を吸収した管としてのグラフFでは比抵抗成分の変化は8Vと大きく現れる。それにより水素を吸収したことによって内径変化したチタン管6と、例えば製造誤差によって内径が変化しているだけのチタン管とを正確に識別することができる。
【0060】
そこで、図7で得られた比抵抗成分の大きさを下記式を用いて水素吸収量に変化する。
【0061】
Vρ=c*H ……(2)
Vρ:抵抗変化成分の値
c:定数
H:水素吸収量
ただし、定数cは測定位置での渦電流出力と水素分析結果との関係を先に実測しておくことによって決めるものとする。
【0062】
なお、図中、グラフKは、管温度の上昇によって内径と比抵抗の変化が共存したときの測定値であり、比較のために示したものである。
(c)校正方法
金属では、比抵抗が温度に比例して変化する現象を利用し、被測定管と同一寸法からなる標準管を準備し、その標準管に所定の温度差を付け、温度の低い管と高い管との出力信号の差が所定の値になるような感度で測定を行う。そのように測定部3を調整した時のインピーダンス変化を図10に示す。ただし、比抵抗は温度変化だけでなく内径変動によっても生じるが、その内径の変化量についても温度を決定すれば求められる量である。また、比抵抗の変化量と内径の変動の比は材料固有の値であるため、その校正を行うことで測定条件を一定にすることができる。
【0063】
図12は、水素脆化判定装置1におけるコントローラ4の制御動作を示したものである。
【0064】
まず、上記(c)の校正方法に基づいて感度校正を行い(ステップS1)、被測定管としてのチタン管6内にプローブを挿入する(ステップS2)。
【0065】
次いで熱交換器使用時の低温部でNULLを取り(ステップS3)、測定開始位置にプローブを移動させる(ステップS4)。すなわち、引き抜き方向に移動させながら測定を行うためにプローブを一旦、伝熱管の奥部に挿入する。
【0066】
次いでプローブを移動させながら測定を開始する(ステップS5)。なお、測定は一定時間間隔で行う。
【0067】
主周波数、副周波数からなる交流電流を参照コイル2aに印加し、チタン管6に発生するインピーダンスを抽出する(ステップS6)。
【0068】
図4〜図6に示すように、内径変動量、バッフル成分、比抵抗の変化量を分離する(ステップS7)。分離された各測定値を管軸方向にグラフ化したものが図7に示される。
【0069】
抵抗変化量から水素量を推定し(ステップS8)、軸方向分布の描画を行う(ステップS9)。同時にバッフル成分を抽出し(ステップS10)、管のリサージュ波形を描画する(ステップS11)。
【0070】
次いで測定位置が管端に到達したかどうかを判断し(ステップS12)、YESであればチタン管6における最大水素量を算出し(ステップS13)、測定結果をコントローラ4のメモリに記憶する(ステップS14)。なお、管端でなければステップS5に戻り測定を繰り返す。
【0071】
次いで測定対象が測定最終管かどうかを判断し(ステップS15)、YESであれば測定を終了し、NOであればステップS2に戻り、次の被測定管について測定を行う。
【0072】
なお、本発明の周波数は上記実施形態では2周波での測定例を示したが、これに限らず2周波以上の周波数の測定データを用いて判定を行うこともできる。
【0073】
また、上記実施形態では肉厚方向に水素の吸収量が一定であることを前提としたが、水素吸収量が肉厚方向に異なると、例えば図11に示すように、水素の吸収量の分布で内径側に水素分布が多いと、相対的に高周波側での出力信号が大きく現れる。この関係を利用して水素吸収量の肉厚方向の分布も考慮した判定が可能になる。
【0074】
なお、化学プラントの運転時において熱交換器が振動するとバッフルプレートとそのバッフルプレートを貫通している伝熱管とが接触する可能性が高い。伝熱管の表面には通常、水素の拡散を防止するための表面処理が施されているが、その表面処理層が繰り返し振動を受けてバッフルプレートと接触すると、部分的に表面処理層が剥離し、局部的に水素を吸収する虞れがある。従って水素吸収部位がバッフル部近傍にあるかどうかについて調査することも水素吸収の原因を特定する上で重要である。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態に示したチタン管の水素脆化判定に好適であるが、水素化物の比抵抗と近い比抵抗を有する測定対象であれば、チタン管以外の管についても適用することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1の本発明によれば、チタン管に生じる水素脆化の程度を判定する場合に、チタン管の比抵抗が水素化物の比抵抗と近い値を示すにも拘わらず渦流センサを用いて水素脆化の程度を正確に判定することができる。
【0077】
請求項2の本発明によれば、測定信号に重畳されるノイズを効果的に排除してインピーダンス変化量の測定精度を高めることができる。
【0078】
請求項3の本発明によれば、チタン管の外部に例えばバッフルプレート等の導電体が存在する場合であっても水素脆化の程度を正確に判定することができる。
【0079】
請求項4の本発明によれば、チタン管の低温部でヌルを取り測定の基準値とすることができる。
【0080】
請求項5の本発明によれば、別のチタン管を基準管として用い校正を行うことにより測定感度を設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素脆化測定方法に使用する装置の構成図である。
【図2】被測定管に挿入された渦流センサの構成を示す説明図である。
【図3】水素脆化測定におけるインピーダンス変化を示す概念図である。
【図4】内径変動による信号出力を示す図表である。
【図5】バッフルによる信号出力を示す図表である。
【図6】比抵抗の変化による信号出力を示す図表である。
【図7】チタン管における軸方向演算結果を示す図表である。
【図8】新管における軸方向演算結果を示す図7相当図である。
【図9】内径変動量と比抵抗評価値の関係を示す図表である。
【図10】温度変化による信号出力を示す図表である。
【図11】水素分布によるインピーダンス変化を示す図表である。
【図12】水素脆化判定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 判定装置
2 渦流センサ
2a 参照コイル
2b 検出コイル
3 渦流測定部
4 コントローラ
5 駆動機構
6 チタン管

Claims (5)

  1. 参照コイル及び検出コイルを備えた渦流センサを被測定管としてのチタン管内に挿入し、複数の周波数の交流電流を前記参照コイルに印加して前記チタン管のインピーダンス変化を検出コイルで測定し、前記チタン管の内径変動成分をr、外部導電体影響成分をb、温度による比抵抗変化成分をρとするとき、
    個々の周波数における出力信号Vが下記式
    V=a1*ρ+a2*r+a3*b ……式 (1)
    ただし、a1,a2,a3は係数
    で表されることを利用し、複数の周波数での実測値Vと既知の上記係数a1,a2,a3を式 (1) に代入して上記r,b,ρの各成分を決定し、決定された成分のインピーダンス変化量に基づいて前記チタン管の水素吸収量を求めることを特徴とする水素脆化判定方法。
  2. 前記複数の周波数が多重化された周波数からなり、各周波数毎に測定されたインピーダンスの水平及び垂直成分に基づいて、内径変動成分及び比抵抗変化成分を抽出する請求項1記載の水素脆化判定方法。
  3. 前記多重化周波数が、前記チタン管外部の導電体に磁力線が漏れることのない浸透深さで渦電流を発生させる主周波数と、その主周波数の倍の副周波数とを重畳したものからなる請求項2記載の水素脆化判定方法。
  4. 前記チタン管において最も温度の低い部位を水素非吸収部位とみなし、渦流測定器のヌルを取る請求項1〜3のいずれかに記載の水素脆化判定方法。
  5. 前記被測定管と同一寸法からなる別の基準管を準備し、双方のチタン管に温度差を与えたときの両管のインピーダンス差を求めておき、水素を吸収した前記チタン管のインピーダンス変化量を求める場合に、前記インピーダンス差に基づいて前記渦流測定器の校正を行う請求項1〜4のいずれかに記載の水素脆化判定方法。
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