JP4170453B2 - ワイヤ入りブラジャー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤ入りブラジャーに関し、ワイヤの取付部位を改良することにより、ワイヤが肌へ与える圧力を低減させ、かつ生産性を向上させるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のワイヤ入りブラジャーにおいては、ワイヤの肌当たり感を柔らげ、圧迫感を低減させるために様々な改良がなされている。例えば図6で示されるように、ワイヤ38が袋状のテープ39に封入されて、表側カップ布40と裏側カップ布41の間に挿入され、上側縫着部位42および下側縫着部位43においてこれらカップ布とテープが一体縫着されているものが提案されている(特開平7−133503号公報)。
【0003】
このワイヤ入りブラジャーによれば、ワイヤは複数枚の布を介しているのでワイヤの肌当たり感が柔らぎ、ワイヤによる圧迫感を低減することができる旨が開示されている。またカップの中にワイヤを入れ込むため、そのラインがアウターに写ることもなくまた肌に直接ワイヤ入りテープが当接しないので肌に跡形が残ることもないという利点も挙げられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ブラジャーの主な機能は、運動や日常生活の中の様々な動きに対して乳房を支え、また乳房を本来の形に保つことである。そのためにはカップが保形性に優れていることが必要で、保形性を得るにはカップ部分の表地の形を保持することが重要な要素となる。しかし上記従来例のようにカップの表地と裏地が一体縫着されている場合、裏地が乳房の動きに伴って動くと(裏地は乳房に直に接するため、乳房の動きにつられて動き易い)、表地も動いてしまい、表地の形が変化してカップの保形性を保つことが困難であった。
【0005】
また表地、ワイヤ及び裏地を一体縫着することは製造工程上煩雑であるだけでなく、縫製の際表地にしわがより易く、アウターの外面に写る等の外観不良を引き起こすおそれがあった。
また上記従来例においては、表側カップ布とテープと裏側カップ布が一体縫着されてカップ生地の表地と裏地が密着するため、カップ内外の通気性が悪くなるおそれがあった。ブラジャーは肌に直に着用するもので一般に洗濯回数が多く、通気性が悪いと洗濯後の乾きが遅くなり、特に雨天時においては不都合なものである。また、通気性が悪いと長時間の着用においてムレが生じ、着用感が悪くなるおそれがあった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ワイヤによる圧迫感を軽減し、かつカップの保形性を維持しながら、通気性、製造効率及び外観の良いワイヤ入りブラジャーを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、以下のような技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係るワイヤ入りブラジャーは、カップを構成する表地と裏地の間にワイヤを装着したブラジャーであって、前記ワイヤは前記表地または前記裏地のどちらか一方にのみ接合されており、前記ワイヤが前記表地に接合されている場合は前記ワイヤと前記裏地が分離し、前記ワイヤが前記裏地に接合されている場合は前記ワイヤと前記表地が分離していると共に、いずれの場合においても、前記表地と裏地とが前記ワイヤの長手方向の途中で部分的に接合されていることを特徴とする。
【0008】
この手段を採用することにより、ワイヤとワイヤが接合されたカップ生地の間が分離され、表地と裏地が一体接合されない。従って表地が裏地の動きに影響されることがなく、カップの保形性が維持できる。
また前記表地と前記裏地はそれぞれ土台生地を備え、該土台生地を介して前記表地と前記裏地が接合されることを特徴とする。
この手段を講じることにより、土台生地が胸のふくらみと胴体の境界縁より下側(腹側)の胴部にフィットし、腕等の動きによりブラジャー全体が上側(胸側)にずりあがることがなくなる。従って、ワイヤをおおむね一定の位置に保つことができる。
【0009】
またカップは通常その周縁を接合して形成されているが、本発明はワイヤを一方のカップ生地に接合し、他方のカップ生地から分離するものであるから、少なくともワイヤが接合されているカップ下端縁近傍においては、カップ生地同士を接合してカップを形成することが不都合な場合がある。従って、カップ生地に土台生地を備え、該土台生地を介してカップを形成すれば問題はない。
また前記ワイヤが前記表地に接合されている場合は、前記ワイヤが前記裏地にワイヤ長手方向の間隔をおいて部分接合されており、前記ワイヤ長手方向の部分接合部間が前記裏地から分離され、
一方、前記ワイヤが前記裏地に接合されている場合は、前記ワイヤが前記表地にワイヤ長手方向の間隔をおいて部分接合されており前記ワイヤ長手方向の部分接合部間が前記表地から分離されてあることを特徴とする。
【0010】
ワイヤが表地または裏地のどちらか一方にしか接合されていないと、カップ内でワイヤが移動し易くなり、カップの保形性を維持することは難しい。上記手段を講じることにより、カップの保形性を保持できる程度にワイヤが固定されても、部分接合(スポット接合)間はワイヤが接合されていない方のカップ生地から分離しているので、裏地、すなわち肌地の動きが表地に伝わることはない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1、図2及び図3は、本発明のワイヤ入りブラジャーに係る第1実施形態で、図1は斜視図、図2は図1のA−A線における断面図、図3は背面図である。本発明のワイヤ入りブラジャー1は、左右のカップ2L、2Rと、カップ2L、2Rの上部に接合された肩ひも4L、4Rを持ち、前記カップ2L、2Rはそれぞれ表地20と裏地21の二枚の生地より成り、これらの生地の間にワイヤ8が表地20又は裏地21のどちらか一方にのみ接合されて構成されている。
【0012】
また表地20と裏地21には土台生地5が備えられている。土台生地5は左右のカップ2L、2R間の連結部9から背面に延びる背面布6L、6Rまで一続きになったもので、表側土台生地5aと裏側土台生地5bから構成されている。
また上記土台生地5a、5bは両者とも縦横に伸縮自在な生地よって構成される。従って着用者のアンダーバストラインにそってぴったりとフィットし、ワイヤ入りブラジャー1が全体としてずり上がるのを防ぐことができる。また着脱が容易に行うことができるようにもなる。本実施形態においては、上記生地としてゴム生地を採用しているが、これに限定されるものではない。
【0013】
裏側土台生地5bのアンダーバストラインには、その全長にわたって長手方向に伸縮自在な下側テープ生地12が接合してあり、また該裏側土台生地5bの上側の端縁には、カップ2L、2Rと肩ひも4L、4Rの接合部位から掛止生地14L、14Rに至るラインに沿ってその全長に渡り、長手方向に伸縮自在な上側テープ生地13L、13Rが接合してある。これらのテープ生地が長手方向に自在に伸縮するので、ワイヤ入りブラジャー1の着脱を容易に行うことができるようになる。更にこれらのテープ生地により、裏側土台生地5bの縁が保護され、該縁にほつれ等が発生するのを防ぐことができる。
【0014】
またカップ2L、2Rの外側には、カップ2L、2Rに隣接して短ワイヤ11L、11Rを、上側テープ生地13L、13Rと下側テープ生地12との間の全長に渡って、表側土台生地5aと裏側土台生地5bの間にそれぞれ接合し、土台生地5を張設している。従って、着用の際あるいは着用中に土台生地5がめくれる、よれる等の不都合の発生を回避することができる。
土台生地5の左右の背面布6L、6Rの両端部には、ワイヤ入りブラジャー1を着用する際に前記背面布6L、6R両端を掛止するために、掛止生地14L、14Rが接合されている。これら掛止生地14L、14Rの一方には雄型掛止部材16が、他方には雌型掛止部材18が設けられ、これら雌雄の掛止部材16、18を互いに掛止して着用する。またこれらの掛止部材は着脱自在である。
【0015】
本実施形態においては、雄型掛止部材16として突起状フックを、雌型掛止部材18としてループ状フックが設けられているが、これらに限定されるものではない。
また先述の肩ひも4L、4Rは、胸側から肩を通って背中側に来るようなループを形成して、それぞれ背面布6L、6Rへ接合されている(図示略)。
本発明におけるカップ2L、2Rは、乳房をそのふくらみにそって包み込む碗のような形状であって、表地20と裏地21からなっている。裏地21はある程度の厚みを持ったパット生地で、例えばポリウレタンフォーム等により形成されている。また裏地の肌側面には不織布が接合されていてもよい。
【0016】
またカップ2L、2Rの碗のようなカーブにそいつつ、カップ2L、2Rのトップバスト部分を左右に横切って通るライン上にテープ布19L、19Rが裏地21側から接合されていて、カップ2L、2Rの形状を美しく保っている。
なお本発明で採用されるカップは、表地、裏地共にあらかじめプレス成形されているものであっても構わない。
カップ2L、2Rの下端縁3L、3Rは乳房のまるみにそう半円状となっていて、ワイヤ8及びこれを封入するテープ布7は下端縁3L、3Rのラインに沿いその全長にわたって、表地20に接合される。この際の接合は表地20に対してのみ行われるため、ワイヤ8はカップ2L、2R内部において移動する場合があり、カップの保形性の点より不都合である。かかる不都合を防止するために、カップ2L、2Rそれぞれの下端縁3L、3Rにおいて、テープ布7を接合点10L、10Rで裏地21に部分的に(スポット的に)接合する。
【0017】
接合点10L、10Rはテ−プ布7を安定させるためそれぞれ二箇所ずつ設けるのが好ましい。具体的には、下端縁3L、3Rと下側テープ生地12との接点周辺と、該接点から上側テープ生地13L、13Rに至るライン上の中間点付近が好適である(図3参照)。しかし、これらの箇所に限定されることはなく、例えばカップ2L、2R間の連結部9と下端縁3L、3Rとに渡って接合点10L、10Rを設けても構わないし、また接合点の数は二箇所に限定されることもない(二箇所以上設けても良い)。
【0018】
上記接合点はワイヤ8の長手方向の間隔をおいて設けられる。従って上記接合点間、つまり部分接合部間においてはテープ布7は裏地21に接合されない。従って、前記部分接合部間においてはワイヤ8と裏地21は分離される(分離部24が設けられる)。
カップ2L、2Rは上述のように構成されるので、表地20と裏地21は互いに密着せず、またテープ布7と裏地21も互いに密着しない。上述のように、ワイヤ8がカップ2L、2R内で移動しないように固定しても、その固定は接合点における部分的なものである。従って前記接合点間においては、ワイヤ8を封入したテープ布7と裏地21の間には分離部24が設けられ(図2参照)、該分離部24により裏地21の動きが表地20に伝わることがなく、カップの保形性が保たれると共にカップ2の通気性を確保することができる。よって先述したように、洗濯後の乾きが速くなり、着用時のムレを軽減することができる。
【0019】
またワイヤ8がテープ布7に封入され、更にカップ2L、2Rの内部に接合されているため、ワイヤ8と肌の間に複数枚の布が存在することになる。上述の分離部24によってワイヤ8と肌の間に距離も生じ、この距離と前記複数枚の布によりワイヤ8の肌当たり感が更に優しくなって、着用時の圧迫感が大幅に軽減される。
次に本実施形態にかかるカップ2L、2Rを構成する際の具体的手順について説明する。前述の表側土台生地5aは、上側の端縁を表地20側へ折り返して表地20の下側の端縁の表側に当接され、裏側土台生地5bは、上側の端縁を裏地側へ折り返して裏地21の下側の端縁の肌側に当接される。次に、前記表地20と前記裏地21の間に、ワイヤ8が封入された袋状のテープ布7を挿入する。
【0020】
ここで表地20側について、カップの表側から順に表側土台生地5a、5a(折り返され、二枚重ねになっている)、表地20、テープ布7を重ねた状態で、テープ布7に封入されているワイヤ8の上下の二箇所において、すなわち第1接合部位22(上側)と第2接合部位23(下側)においてこれらを一体に接合する。
また裏地21側について、肌側から順に裏側土台生地5b、5b(折り返され、二枚重ねになっている)、裏地21を重ねて、表地20の場合と同様にワイヤ8の上下二箇所において、すなわち第3接合部位25(上側)と第4接合部位26(下側)において一体に接合する。
【0021】
表側土台生地5a及び裏側土台生地5bそれぞれの下側の端縁は、裏側土台生地5bを表側土台生地5aが抱き込むようにしてそれぞれ肌側へ向かって折り返され、表側土台生地5aの肌側に下側テープ生地12を当接して、上下二箇所、すなわち第5接合部位27(上側)と第6接合部位28(下側)においてこれらを一体に接合する。
図4は本発明のワイヤ入りブラジャーに係る第2実施形態である。本実施形態においては、ワイヤ8を封入した袋状のテープ布7と、裏地21と裏側土台生地5bが、上下二箇所において一体に接合される。接合されたテープ布7は、表地20に対して点接合される。その他の構造については、前述の第1実施形態と同様である。
【0022】
また図5は本発明のワイヤ入りブラジャーに係る第3実施形態である。土台生地5は全体として一枚の生地で(表側土台生地5aと裏側土台生地5bが一体形成されている)、前記表地20と裏地21の下端縁を挟むように断面V字状に構成される。該V字の谷部両外側のうちの肌側に、前述の下側テープ生地12を当接して、土台生地5と前記下側テープ生地12を上下二箇所、すなわち第5接合部位27(上側)と第6接合部位28(下側)において一体に接合する。
前述した第1、第2実施形態と比較して、二枚の土台生地を接合する手間が省けて製造工程上好適である。本実施形態においては、ワイヤ8及びテープ布7は表地20側に接合されているが、裏地21側に接合されても構わない。
【0023】
なお、上述のすべての実施形態においては以下に述べる手段を採用することもできる。
ワイヤ8の長手方向に直交する面における断面形は長方形であるが(図2、4、5参照)これに限定されるものではなく、前記断面形は例えば円形、楕円形、長方形以外の多角形等であっても構わない。またワイヤ8は左右のカップ2L、2Rにそれぞれ別体となって設けられているが、一体となって設けられていても構わない。またワイヤ8の設置箇所はカップ下端縁3L、3Rのみに限定されるものではなく、少なくとも下端縁3L、3Rに設ければ更にカップ2L、2Rの上端縁に設けても構わない。
【0024】
下側テープ生地12、上側テープ生地13L、13Rは裏側土台生地5bの肌側に接合されているがこの箇所に限定されるものではなく、表側土台生地5aと裏側土台生地5bの間に接合してもかまわないし、表側土台生地5aの表側(外側)に接合してもかまわない。
また連結部9は、着用時の圧迫感をなくすためにカップ2L、2Rを離して設けているが、必ずしも離して設ける必要はない。例えば両方の乳房を中央に寄せたい場合はカップ2L、2Rを離さなくてもよい。
【0025】
また土台生地5は、上述の実施形態ではカップ生地と別体である例が説明されているが、カップ生地と一体になって構成されていても構わない。
上述のすべての実施形態においては、接合手段として縫着を採用しているがこの手段のみに限られることはない。例えば接着等の手段を採用することも可能である。またワイヤは形状記憶合金であっても構わない。
また上述のすべての実施形態においては、ワイヤ8はテープ布7を介してカップ生地に接合されているが、テープ布7を介さずに接合することも可能である。
【0026】
【発明の効果】
本発明のワイヤ入りブラジャーによれば、ワイヤをカップ生地の表地または裏地のどちらか一方に接合し、他方とは分離して構成したので、表地と裏地が一体接合されない。従って、乳房の動きにより裏地が動いても、この動きが表地まで伝わることはなく、カップの保形性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態にかかるワイヤ入りブラジャーの斜視図である。
【図2】 図1のA−A線における断面図である。
【図3】 本発明の第1実施形態にかかるワイヤ入りブラジャーの背面図である。
【図4】 本発明の第2実施形態にかかるワイヤ入りブラジャーの、図1におけるA−A線断面図である。
【図5】 本発明の第3実施形態にかかるワイヤ入りブラジャーの、図1におけるA−A線断面図である。
【図6】 従来のワイヤ入りブラジャーにかかる、図1におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ入りブラジャー
2L、2R カップ
3L、3R 下端縁
5 土台生地
5a 表側土台生地
5b 裏側土台生地
6L、6R 背面布
7 テープ布
8 ワイヤ
9 連結部
10L、10R 接合点
12 下側テープ生地
13L、13R 上側テープ生地
14L、14R 掛止生地
16 雄型掛止部材
18 雌型掛止部材
20 表地
21 裏地
24 分離部
Claims (3)
- カップを構成する表地と裏地の間にワイヤを装着したブラジャーであって、前記ワイヤは前記表地または前記裏地のどちらか一方にのみ接合されており、前記ワイヤが前記表地に接合されている場合は前記ワイヤと前記裏地が分離し、前記ワイヤが前記裏地に接合されている場合は前記ワイヤと前記表地が分離していると共に、いずれの場合においても、前記表地と裏地とが前記ワイヤの長手方向の途中で部分的に接合されていることを特徴とするワイヤ入りブラジャー。
- 前記表地と前記裏地はそれぞれ土台生地を備え、該土台生地を介して前記表地と前記裏地が接合されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ入りブラジャー。
- 前記ワイヤが前記表地に接合されている場合は、前記ワイヤが前記裏地にワイヤ長手方向の間隔をおいて部分接合されており、前記ワイヤ長手方向の部分接合部間が前記裏地から分離され、
一方、前記ワイヤが前記裏地に接合されている場合は、前記ワイヤが前記表地にワイヤ長手方向の間隔をおいて部分接合されており、前記ワイヤ長手方向の部分接合部間が前記表地から分離されてあることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ入りブラジャー。
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