JP4169530B2 - 電磁波シールド性光透過窓材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はPDP(プラズマディスプレーパネル)の前面フィルタや、病院などの電磁波シールドを必要とする建築物の窓材料(例えば貼着用フィルム)等として有用な電磁波シールド性光透過窓材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、OA機器や通信機器等の普及にともない、これらの機器から発生する電磁波によりもたらされる人体への影響が懸念されている。また、電磁波により精密機器の誤作動等を起こす場合もあり、電磁波が問題視されている。
【0003】
このため、従来から、OA機器のPDPの前面フィルタとして、電磁波シールド性を有し、かつ光透過性の窓材が開発され、実用に供されている。このような窓材はまた、携帯電話等の電磁波から精密機器を保護するために、病院や研究室等の精密機器設置場所の窓材としても利用されている。
【0004】
このような電磁波シールド性光透過窓材は、主に、金網のような導電性メッシュ材又は透明導電性フィルムをアクリル板等の透明基板の間に介在させて一体化した構成を有するものである。電磁波シールド性光透過窓材に用いられている導電性メッシュは、通常、線径10〜500μmで、5〜500メッシュ程度のものであり、開口率は75%未満である。
【0005】
従来から用いられている導電性メッシュは、一般に、メッシュを構成する導電性繊維の線径が太いものは目が粗く、線径が細くなると目が細かくなっている。これは、線径の太い繊維であれば、目の粗いメッシュとすることは可能であるが、線径の細い繊維で目の粗いメッシュを形成することは非常に困難であることによっている。このため、このような導電性メッシュを用いた従来の電磁波シールド性光透過窓材では、光透過率の良いものでも、高々70%程度であり、良好な光透過性を得ることができないという欠点があった。
【0006】
また、従来の導電性メッシュでは、電磁波シールド性光透過窓材を取り付ける発光パネルの画素ピッチとの関係で、モアレ(干渉縞)が発生し易いという問題もあった。
【0007】
透明導電性フィルムを併用することで光透過性と電磁波シールド性とを両立させることが考えられるが、透明導電性フィルムは、筐体と導通させることが容易ではないとの不利がある。即ち、導電性メッシュであれば、上述の如く、導電性メッシュの周縁部を透明基板周縁部からはみ出させ、このはみ出し部分を折り曲げ、この折り曲げた部分から筐体との導通を図ることができるが、透明導電性フィルムでは、その周縁部を透明基板周縁部からはみ出させて曲げると、この折り目部分でフィルムが裂け、筐体と導通させることができない。
【0008】
また、透明導電性フィルムの代りに、一方の透明基板の接着面に透明導電性膜を直接成膜することも考えられるが、この場合には、透明導電性膜が他方の透明基板で覆われるため、透明導電性膜から筐体へ導通させることができない。
【0009】
従って、透明導電性膜フィルムを用いる場合には、例えば、透明基板に貫通孔を形成して透明導電性フィルムとの導通路を設けるなどの設計変更が必要となり、電磁波シールド性光透過窓材の組み立てや筐体への組み込み作業が複雑となる。
【0010】
このような問題点を解決し、モアレ現象を防止すると共に、光透過性、電磁波シールド性、熱線(近赤外線)カット性がいずれも極めて良好な電磁波シールド性光透過窓材とするために、導電性インキを、線幅200μm以下、開口率75%以上の格子状に透明板の表面にパターン状にスクリーン印刷により印刷してなるものが提案されている。
【0011】
上記電磁波シールド性光透過窓材においては、パターン印刷により、所望のパターン形状の導電層を形成することができることから、線幅や間隔、網目形状の自由度は導電性メッシュに比べて格段に大きく、線幅200μm以下、開口率75%以上という細線で開口率の高い格子状の導電層であっても容易に形成可能である。そして、このような細線で目の粗い導電層を形成した導電性印刷膜であれば、良好な光透過性を得ることができると共に、モアレ現象をかなり防止することができる。
【0012】
なお、開口率とはメッシュの線幅と1インチ幅に存在する線の数から計算で求めたものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、上記パターン印刷による方法では、線幅を十分に小さくすることは困難であることが明らかとなった。即ち、スクリーン印刷による方法では、スクリーン目がつぶれやすく、線幅は30μmが限界で、この程度の線形ではディスプレイの画素に対してモアレが発生する場合がある。さらに、メッシュパターンを変える毎に、スクリーンの印刷版を作製し直す必要があり煩雑であるとの問題点もある。
【0014】
従って、本発明は、このような問題点を解決するものであり、線幅の小さい、開口率の大きいメッシュパターンを有する導電層が設けられた電磁波シールド性光透過窓材を提供することを目的とする。
【0015】
また本発明は電磁波シールド性光透過窓材を簡易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0016】
【発明を解決するための手段】
本発明は、透明基板上に、導電性微粒子分散液をインクジェットヘッドからメッシュパターン状に噴霧することにより、メッシュパターン状の導電層を形成し、次いで高温で焼成することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法;及び透明基板上に、導電性微粒子分散液をインクジェットヘッドからメッシュパターン状に噴霧することにより、メッシュパターン状の導電層を形成し、次いで高温で焼成した後、該焼成された電導層上に、さらに金属メッキを施すことを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法にある。
【0017】
上記方法において、導電性微粒子が、金属、合金、金属酸化物又は半金属酸化物の微粒子であることが、良好な導電性を得る上で好ましい。その平均粒径は0.0005〜15μmの範囲、特に0.01〜0.5μmの範囲が、小さい線幅を得るために好ましい。上記導電性微粒子分散液は、一般に導電性微粒子がバインダ及び有機溶剤を含む混合液中に分散されてなるものである。良好な分散状態が得られる。導電性微粒子は、銀、銅又はアルミニウムの微粒子であることが好ましい。上記焼成温度は、一般に、200〜500℃である。金属メッキに使用する金属が、生産性、導電性の観点から、銅であることが好ましい。
【0018】
本発明は、上記のいずれかの製造方法により得られる電磁波シールド性光透過窓材にもある。
【0019】
さらに本発明は、透明基板上に、メッシュパターン状の導電性微粒子からなる導電層が設けられ、該メッシュパターンが線幅5〜15μmで、開口率75〜95%であることを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材にある。
【0020】
上記メッシュパターンの線幅5〜12μmであり、その開口率80〜95%であることが好ましい。その他の好ましい態様は上記方法で述べたものを適用することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法は、透明基板上に、導電性微粒子分散液をインクジェットヘッドからメッシュパターン状に噴霧することにより、メッシュパターン状の導電層を形成することに特徴を有する。そして形成されたメッシュパターン状の導電層は次いで高温で焼成して、バインダ等の有機物を除去し、高導電性の膜することが好ましい。さらに導電性を高めるため、焼成された導電層上に、さらに金属メッキを施すことが好ましい。
【0022】
透明基板としては、透明性(特に、可視光に対して)を有する基板であれば良く、その材料の例として、ガラス;或いはポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるガラス、PET、PC、PMMAが好ましい。
【0023】
この透明基板の厚さは、電磁波シールド性光透過窓材の用途等によっても異なるが、通常の場合1μm〜5mmの範囲、特に10μm〜1mmの範囲にあることが好ましい。特にガラスが好ましい。
【0024】
透明基板上には、導電性微粒子分散液がインクジェットヘッドからメッシュパターン状に噴霧される。
【0025】
上記導電性微粒子分散液は、通常バインダ(樹脂)及び界面活性剤等の添加剤と、有機溶剤との混合液(一般に溶液)に、導電性微粒子を分散させたものである。
【0026】
導電性微粒子としては、金属、合金、金属酸化物又は半金属酸化物の微粒子を挙げることができ、具体的には、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、すず、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属又はこれらの合金、或いはITO等の金属酸化物又は半金属酸化物(導電性酸化物)が好ましい。その平均粒径は0.0005〜15μmの範囲、特に0.01〜0.5μmの範囲が、小さい線幅を得るために好ましい。また導電性微粒子は、インクジェットヘッドより噴霧する際の分散液中に一般に30〜70質量%、特に40〜60質量%の範囲が好ましい。
【0027】
有機溶剤は、一般に、水性キャリア媒体として使用され、例えば水、或いは水と少なくとも1種の水溶性有機溶剤から構成される。水溶性有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、チオジグリコール、モノアセチン、ジアセチン、プロピレングリコール等の多価アルコールを挙げることができ、これらは単独でも2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0028】
有機溶剤として、水を用いない系とする場合は、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;エタノール、IPA等のアルコールを使用することができる。前記水系溶剤にもこれらを適宜用いても良い。
【0029】
上記水系溶剤で使用されるバインダは、一般に使用されるが、導電性微粒子の分散性が保持できれば有機溶剤及び添加剤だけでバインダは使用しなくても良い。バインダは、一般に導電性微粒子の分散剤の役目を担うものであり、例えばランダム重合体及び構造重合体(例、ブロック共重合体、枝分かれ重合体)、或いはグラフト重合体を挙げることができる。重合体の例としては、スチレン、置換スチレン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸との共重合体を挙げることができる。このような重合体としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系のいずれでも良い。更にポリビニルアルコール等の水溶性樹脂も使用することができる。
【0030】
また水を含まない有機溶剤系で使用するバインダとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、アクリル樹脂としてスチレン、置換スチレン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸との共重合体が好ましい。これらの樹脂は酸価の高いものが好ましい。これにより導電性微粒子の分散性を向上させることができる。
【0031】
界面活性剤としては、シロキサン構造を有するシリコーン系界面活性剤、フッ素原子含有界面活性剤を挙げることができ、例えば特開平11−43639号公報の一般式で表される化合物を挙げることができる。
【0032】
例えばポリエステル修飾シロキサン、非イオン性シロキサンポリオキシアルキレン、シロキサンブロックとオキシアルキレンブロックからなる共重合体等を挙げることができる。
【0033】
導電性微粒子及び有機溶剤、さらに適宜バインダ、界面活性剤、分散剤を混合し、続いて該微粒子を分散または脱凝集することによって行う。この工程は、水平小型ミル(horizontal mini mill)、ボールミル(ballmill )、磨砕機で行うことができる。あるいは、混合物を、水性キャリア媒体である有機溶剤中の導電性微粒子の均一分散体を作るために、少なくとも100psiの液圧で液体ジェットインタラクションチャンバーにある複数のノズルに通過させることで達成することができきる。
【0034】
導電性微粒子分散液は、一般に、インクジェット用のインクと同様に濃縮状態で作製することが望ましく、これにより製造プロセスおよび装置の効率を最大限にすることができる。濃縮された導電性微粒子分散液は、インクジェットプリント装置で使用する際に適当な濃度に希釈される。希釈は、水および(または)適当な溶媒を添加することで行う。希釈することで、導電性微粒子分散液を用途に合わせて所定の粘度、色、飽和密度、およびプリント領域付着量に調製する。
【0035】
導電性微粒子分散液を、インクジェットによりメッシュパターン状に噴霧する際、下記の条件により噴霧作業性、噴霧状態が影響を受ける。
【0036】
即ち、インク(即ち導電性微粒子分散液)特性噴射速度、インク滴の分離長(separation length )、インク滴サイズ、流れ安定性は、インクの表面張力および粘性によって著しく影響を受ける。インクジェットプリント装置で使用するのに適当な導電性微粒子分散液(顔料系インクジェットインクと言える)は、約15dyne/cmから約70dyne/cm、好ましくは15dyne/cmから約35dyne/cmの範囲内の表面張力を有することが好ましい。許容できる粘度は20cps以下であり、好ましくは約1.0cpsから約15.0cpsまでの範囲内である。導電性微粒子分散液は、吐出状態の幅広い範囲に対応可能な物理的特性、すなわちサーマル式のインクジェットプリント装置の駆動電圧およびパルス幅、ドロップオンデマンド方式の装置またはコンティニュアス方式の装置のいずれか一方のピエゾ素子の駆動周期、さらにノズルの形状および寸法に対応する特性を有する。
【0037】
インクジェットプリント装置の記録方式としては、一般にコンティニュアス方式を用いるが、他のどのようなインクジェット記録方式も用いることができる。例えばオンデマンド型方式があげられる。オンデマンド型方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型、ピエゾ電気式ドロップオンデマンド等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができる。特開平11−43639号公報(例、図1)に記載のインクジェット記録装置も利用することができる。
【0038】
コンティニュアス方式とは、インク(導電性微粒子分散液)に圧力をかけ、連続してインクを噴射させる方式である。ノズルは圧電素子により一定間隔で振動することで液滴の形成を助けている。インク液滴の経路には帯電電極と偏光電極が配されている。インク液滴は帯電電極を通過する際に選択的に帯電され、帯電した液滴は偏向電極により軌道が曲げられる。帯電した液滴と帯電しない液滴は、その軌道が異なるため、被記録剤に着弾し、画像を形成する液滴と、ガターにより回収される液滴に分離される。
【0039】
インクである導電性微粒子分散液は長期間にわたる優れた保存安定性を有し、さらにインクジェット装置内で目詰まりを生ずることはない。フィルム等の透明基板へのインクの固定は、加熱することで重合体ラテックス等のバインダを合体させることによって素早くかつ正確に行うことができる。
【0040】
上記のようにして得られた本発明の導電性微粒子分散液は、上記のインクジェット装置を用いて、透明基板上にメッシュパターン状に噴霧され、乾燥される。こうして形成されるメッシュパターンの線幅は、一般に30μm以下、好ましくは5〜15μmで、特に5〜12μmを有する。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。
【0041】
線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。
【0042】
上記噴霧、乾燥されたメッシュ(導電層)は、一般に高温で焼成される。
【0043】
この焼成工程を説明するための模式図が、図1に示されている。透明基板1上に、導電性微粒子2とこれを被覆又は付着した有機成分3とがインクジェットヘッドから噴霧により設けられ、ついで焼成することにより有機成分3は除去され導電性微粒子2同士が付着又は融着する。これにより電気抵抗の高い有機成分が除去され、電気抵抗低い金属粒子のみ残るため、抵抗値が低い導電層が得られる。従って、得られる窓材の電磁波シールド効果が向上する。尚、この焼成工程を行う場合は、できるだけ高温(好ましくは400〜500℃)で行うことが有利であるので、透明基板はガラス等の耐熱性の材料を用いることが好ましい。
【0044】
得られた導電層の層厚は、特に限定されるものではないが、一般に0.5〜100μmの範囲である。この導電層の厚さは、薄過ぎると電磁波シールド性が低下するので好ましくなく、厚過ぎると得られる電磁波シールド性光透過窓材自体の厚さに影響を及ぼすと共に、視野角を狭くしてしまうことから、0.5〜100μmの範囲にするのが好ましい。
【0045】
さらに低い抵抗値にして、電磁波シールド効果を高めたい場合には、導電層上にメッキ層を形成することが好ましい。この場合、導電層の厚さを、低い値に抑えることができる。
【0046】
メッキ処理に使用される材料としては、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、銀及び金を挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種以上の合金として使用しても良い。メッキ処理としては、通常の液相メッキ(電解メッキ、無電解メッキ等)により一般に行われる。
【0047】
メッキ層の厚さは、一般に0.1〜10μmの範囲、2〜5μmが好ましい。厚さが1μm未満では、電磁波シールド効果付与が充分でなく、10μmを超えるとメッキ層が幅方向に広がりやすくなり、線幅が太くなる傾向になる。
【0048】
本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法においては、所望により防眩層等、他の層を設けるための工程をさらに行っても良い。防眩層は、たとえば黒化処理、即ち金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系インキの塗布、により形成することができる。
【0049】
上記本発明の製造方法により得られる、本発明の電磁波シールド性光透過窓材は、例えば図2に示す様な正面図を有する。透明基板1上に格子状の導電層5が形成されている。この導電層の線幅が、5〜15μmであることが好ましく、特に5〜12μmであることが好ましい。この導電層の表面にメッキ層を形成しても良い。
【0050】
本発明の製造方法であるインクジェットにより導電層を形成することにより、線幅を極めて小さくすることが可能である。その際前記のようにインクジェット印刷に使用される導電性微粒子分散液は、前記の組成及び粘度を有することが好ましい。線幅を小さくすることにより、ディスプレイの画素に対してモアレの発生を抑えることができ、透明性を向上させる開口率も大きくすることができる。また単にインクジェットで印刷するとの極めて簡単な操作で、導電層を設けることが可能であり、さらに印刷原板の作製無しに自由にパターンの形成が可能であることから、生産性の極めて高い方法であると言うことができる。また上記線幅の小さい電磁波シールド性光透過窓材は今まで得られなかったものであり、新規な窓材と言うことができる。
【0051】
本発明の窓材の導電層上又はメッキ層がある場合はその上の表面抵抗率は、3Ω/□以下が好ましく、特に1Ω/□以下が好ましい。表面抵抗率が3Ω/□を超えると導電性が不充分で電磁シールド効果が満足でるものではない。
【0052】
本発明の窓材も、前述のように75%以上であり、一般に75〜95%、特に80〜95%の範囲が好ましい。
【0053】
本発明の電磁波シールド性光透過窓材は、前述のように電磁波シールド性に優れ、モアレの発生がほとんどなく、また開口率も高いことから透明性にも優れている。このため、本発明の窓材が、プラズマディスプレー(PDP)の前面フィルムとして好適であり、また病院等の電磁波シールド性を必要とされる建築物の窓材料(例えば貼着用フィルム)等として有利に使用することができる。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
下記の配合の導電性微粒子分散液を混合後、分散させ、次いで濃度調製することにより調製した。
(導電性微粒子分散液の配合)
銅微粒子(平均粒径0.20μm) 50質量部
アクリル樹脂 20質量部
ポリビニルアルコール 30質量部
水 適宜
透明基板としてガラス基板(厚さ3mm)の上に、上記の配合の導電性微粒子分散液をインクジェットプリント装置を用いてメッシュパターン状に印刷した。
【0055】
室温で30分間乾燥後、400℃で30分間焼成を行い、導電層を形成した。
【0056】
得られた導電層は、図2に示す形状を有し、メッシュパターンの線幅が8μm、ドット(線で囲まれた正方形)1個の大きさは1辺が234μmの正方形状であり、ドット配列は正方格子状である。導電層の厚さは、焼成後で10μmであった。
【0057】
こうして本発明の電磁波シールド性光透過性窓材を得た。
【0058】
得られた窓材について下記の物性を測定した。
1)表面抵抗率(Ω/□)
得られた窓材の導電層又はメッキ層上の表面抵抗率をロレスタAP(三菱化学(株)製)を用いて、四端子法により測定した。
2)電界シールド効果(dB)
窓材を15×15cmに裁断し、周波数100MHzの条件でKEC法により測定した。測定にはシールド特性評価装置(アンリツ(株)製)を用いた。
3)磁界シールド効果(dB)
前記電界シールド効果の測定と同様に行った。
4)開口率(%)
日立分光光度計(U−4000;(株)日立製作所製)を用いて波長550nmの光線透過率を測定し、空気界面での反射ロスをキャンセルして開口率とした。
【0059】
得られた結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
【発明の効果】
本発明の電磁波シールド性光透過窓材は、電磁波シールド性に優れ、モアレの発生がほとんどなく、また開口率も高いことから透明性にも優れている。このため、本発明の窓材は、プラズマディスプレーパネル(PDP)の前面フィルムとして好適であり、また病院等の電磁波シールド性を必要とされる建築物の窓材料(例えば貼着用フィルム)等として有利に使用することができる。また本発明の製造方法は上記のような優れた性能の窓材を簡易に、高い生産性で製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電層の形成方法の一例を説明するための概略図である。
【図2】本発明の電磁波シールド性光透過窓材の一例の平面図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 導電微粒子
3 有機成分
5 導電層
Claims (9)
- 透明基板上に、導電性微粒子分散液をインクジェットヘッドからメッシュパターン状に噴霧することにより、メッシュパターン状の導電層を形成し、次いで200〜500℃の温度で焼成する電磁波シールド性光透過窓材の製造方法であって、
導電性微粒子分散液は、導電性微粒子が、バインダ及び水を含む混合液中に分散されてなるものであり、
バインダとして、アクリル樹脂、及びポリビニルアルコールを使用することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。 - アクリル樹脂が、スチレン、置換スチレン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種と(メタ)アクリル酸との共重合体である請求項1に記載の製造方法。
- 導電性微粒子の平均粒径が、0.01〜0.5μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 導電性微粒子分散液における導電性微粒子の含有量が、40〜60質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 導電性微粒子分散液がさらに水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 導電性微粒子が、金属、合金、金属酸化物又は半金属酸化物の微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 導電性微粒子が、銀、銅又はアルミニウムの微粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記焼成された導電層上に、さらに金属メッキを施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 金属メッキに使用する金属が、銅である請求項8に記載の製造方法。
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