JP4168351B2 - アクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂及びアクリル系感圧接着剤組成物 - Google Patents

アクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂及びアクリル系感圧接着剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂及びアクリル系感圧接着剤組成物に関する。詳しくは、本発明のアクリル系感圧接着剤組成物は、包装、装飾、ラベル(たとえば、フイルムラベル)、粘接着テープ、両面接着テープ等に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系重合体を主成分とするアクリル系感圧接着剤は、無色透明で耐老化性に優れることから広く使用されている。またアクリル系感圧接着剤には、各種用途に応じた接着力、保持力、タック等の粘着特性を付与するために粘着付与樹脂が配合されている。
【0003】
しかし、アクリル系感圧接着剤の粘着付与樹脂として知られているロジン系樹脂、テルペン系樹脂や石油樹脂等は一般に色調が悪く、食品包装用や衛生材料用等の色調を重視する分野等においては使用し難い。一方、水素化ロジン系樹脂(たとえば、無色化したロジン)等は色調には優れるが、保持力、タック、耐光性、耐候性が十分でなく、また非常にコストが高いため実用的でない。また、水素化石油樹脂等は色調に優れ比較的安価であるが、ベースポリマーであるアクリル系重合体との相溶性が悪く、接着性やタックも悪いため実用化されていない。
【0004】
また、アクリル系重合体との相溶性が良く、接着性を向上したアクリル系感圧接着剤の粘着付与樹脂として、フェノール類を含有させて極性を持たせた水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂(特公平7−65020号公報)が知られているが、未水素化の水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂では色調、臭気が悪いため、前記食品包装用や衛生材料用等の分野における要求を満たすことができない。なお、かかる水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂を水素化すれば色調を改善することもできる。しかし、当該水素化物を淡色化するためには芳香環の水素化率を高く(芳香環の水素化率90%以上)設定しなければならないため、得られる水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物とアクリル系重合体との相溶性が悪く、接着性やタックも悪い。一方、アクリル系重合体との良好な相溶性を維持するために芳香環の水素化率を低く設定した場合には既知の技術では十分に色調を改善できず、淡色のものは得られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は接着力、保持力、タック等の粘着特性に優れ、アクリル系重合体と相溶するもので、しかも淡色で実用的な価格のアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂を提供するとともに、当該粘着付与樹脂をアクリル系重合体に配合してなるアクリル系感圧接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物に着目して鋭意検討を行なった結果、特定の手段により水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂を水素化すれば、上記目的に合致したアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂が得られ、また当該粘着付与樹脂が、溶剤型、エマルジョン型のいずれのアクリル系感圧接着剤組成物にも適用できることを見出した。本発明は、かかる新たな知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、C9留分をフェノール類の存在下でカチオン重合して得られる水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物であって、該水酸基価が120以下、該軟化点が70〜150℃であり、水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合の全部と芳香環の0〜50%を水素化したものであり、該水素化物がアクリル系重合体と相溶し、かつ該色調がガードナー3以下であるものを含有してなるアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂および当該粘着付与樹脂エマルジョン、ならびにアクリル系重合体またはアクリル系重合体エマルジョンに、前記アクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂または当該粘着付与樹脂エマルジョンを配合してなる溶剤型およびエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂は、水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂を水素化することにより製造することができる。
【0009】
原料となる水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂としてはナフサのクラッキングにより得たC9留分(たとえば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン類等)を、フェノール類の存在下で、カチオン重合して得られたものを用いる。
【0010】
フェノール類としては、フェノールまたはクレゾール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のアルキルフェノール類を使用できる。これらのなかでもフェノールが接着性の点で好ましい。これらフェノール類は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。フェノール類の使用量は特に限定されないが、水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水酸基価が、水素化の際に水素化条件等により減少する場合があることを考慮すれば、通常は、得られる水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水酸基価が20〜120の範囲になるようにフェノール類を配合するのが好ましい。その使用量は、通常、前記C9留分100重量部に対して、5〜40重量部程度、好ましくは10〜30重量部である。
【0011】
前記原料である水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化は、以下に示す特定の水素化触媒の存在下、水素化条件を適宜に調整して、得られる水素化物がアクリル系重合体と相溶し、かつ淡色物となるように行う。通常は、該原料の水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合の全部と芳香環の0〜0%程度を水素化する。
【0012】
当該水素化物がアクリル系重合体と相溶するとは、アクリル系重合体100重量部(固形分)と当該水素化物1〜40重量部を混合した場合に、両者が均一に混和し、相分離を起こしていない状態をいう。一般には、相溶している場合にはアクリル系重合体と当該水素化物からなる混合物は無色透明であり、相分離を起こすと白濁した状態になるため、目視で十分判断できる。なお、当該水素化物がアクリル系重合体に部分相溶している場合には少し濁ってるが、こうした部分相溶している状態も相溶している範疇である。また、当該水素化物を含むアクリル系重合体組成物のガラス転移点が、アクリル系重合体のガラス転移点と異なる場合に、当該水素化物がアクリル系重合体と相溶していると判断することができる。通常、相溶している場合にはアクリル系重合体組成物のガラス転移点はアクリル系重合体のガラス転移点より高くなる。その他に、当該水素化物がアクリル系重合体と相溶していることを示す判断基準としては、得られたアクリル系重合体組成物(膜厚35μm)のUV透過率(波長500nm)を測定し、UV透過率が50%以上あれば相溶しているとされる。好ましくは70%以上である。
【0013】
当該水素化物が淡色物となるとは、色調が重視される分野において、当該水素化物をアクリル系重合体に混合してなる組成物が、当該分野で使用できる程度に当該水素化物が淡色化されていることをいう。一般的に淡色化されているとは、当該水素化物の色調がガードナー3程度以下、好ましくはガードナー2以下、より好ましくはガードナー1以下であることをいう。
【0014】
また、オレフィン性二重結合が残存する程度の水素化では脱色が不十分である。なお、芳香環の水素化率は少ないほど極性を有し、接着力が向上する傾向にあるため芳香環の水素化率は0%でもよい。
【0015】
水素化触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、ルテニウム、レニウム、モリブデン等の金属またはこれらの酸化物等に、さらにマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属を含むものを使用する。このようなアルカリ土類金属を含む水素化触媒を水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化に使用することにより、初めて得られる水素化物の水素化率が前記範囲(オレフィン性二重結合の全部と芳香環の0〜80%程度)であっても色調がガードナー1以下のものが得られるようになった。また、かかる水素化触媒は多孔質で表面積の大きなアルミナ、シリカ(ケイソウ土)、カーボン、チタニア等の担体に担持して使用してもよい。これら水素化触媒のなかでもアルカリ土類金属を含むニッケル−ケイソウ土触媒が、水素化率を前記範囲内に調整し易く、色調に優れたものが得られる点で好ましい。このような水素化触媒としては、たとえば、安定化ニッケル−ケイソウ土触媒(「SN−250」、堺化学(株)製)等があげられる。水素化触媒の使用量は、原料樹脂である水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の0.1〜3重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%である。0.1重量%に満たない場合は水素化が進み難く、3重量%を越える場合には水素化が進みすぎる傾向がある。
【0016】
水素化反応の条件は、水素化圧力は通常30〜300Kg/cm2 程度の範囲、反応温度は通常150〜300℃程度の範囲で適宜に調整して行う。好ましくは水素化圧力は100〜200Kg/cm2 であり、反応温度は220〜300℃である。水素化圧力が30Kg/cm2 に満たない場合または反応温度が150℃に満たない場合には水素化が進み難い。水素化圧力が300Kg/cm2 を越える場合には設備上の問題があり、反応温度が300℃を越える場合には分解が起こり軟化点が低下する傾向がある。また反応時間は通常1〜7時間程度、好ましくは2〜6時間である。前記水素化反応は水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂を溶融して、または溶剤に溶解した状態で行う。溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、デカリン等を使用できる。
【0017】
なお、触媒の使用量および反応時間については、反応形式として回分式を採用した場合について説明したが、反応形式としては流通式(固定床式、流動床式等)を採用することもできる。
【0018】
得られた前記水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物の水酸基価は、通常120以下、好ましくは20〜120であり、上限としては100以下、下限としては40以上がより好ましい。水酸基価が20未満の場合には、当該水素化物の芳香環の水素化率が高い場合にアクリル系重合体との相溶性が悪く水酸基による接着性向上の効果が現れにくい。一方、水酸基価が120を越える場合には、アクリル系重合体との相溶性、接着特性は良好なものの、原料の水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂自体の色相が非常に悪いため、当該水素化物の色調改善が非常に困難である。なお、通常、水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂は、その水酸基価が100程度以下のため、その水素化物の水酸基価も100程度以下となる。
【0019】
また、水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物の軟化点は、70〜150℃程度であり、上限としては120℃以下、下限としては80℃以上がより好ましい。また、数平均分子量は、通常500〜1600、好ましくは500〜900である。なお、原料(未水素化物)も、水素化物と同程度の軟化点、数平均分子量である。
【0020】
記本発明の水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物(粘着付与樹脂)は、エマルジョン化して粘着付与樹脂エマルジョンとして用いることもできる。当該粘着付与樹脂をエマルジョン化する方法は、特に限定されず各種の方法を採用できる。たとえば、▲1▼前記粘着付与樹脂をベンゼン、トルエン等の溶剤に溶解し、さらに乳化剤と軟水を添加し、高圧乳化機を用いてエマルジョン化したのち、減圧下に溶剤を除去する方法、▲2▼前記粘着付与樹脂の軟化点が約90℃以下となるよう少量のベンゼン、トルエン等の溶剤を混合し、つづいて乳化剤を練り込み、さらに熱水を徐々に添加してゆき転相乳化させてエマルジョンを得、必要により溶剤を減圧下に除去しもしくは除去せずそのまま使用する方法、または▲3▼オートクレーブ中にて粘着付与樹脂の軟化点以上に昇温して乳化剤を練り込み、熱水を徐々に添加してゆき転相乳化させてエマルジョン化する方法等をあげることができる。なお、得られる粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度は、通常40〜65重量%程度に調製するのが好ましい。
【0021】
前記粘着付与樹脂をエマルジョン化するのに使用する乳化剤としては各種のものを例示でき、たとえば、α−オレフィンスルホン化物、アルキルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアラルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸のハーフエステル塩、ロジン石鹸等のアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤があげられる。また、乳化剤の使用量は特に限定されないが通常、粘着付与樹脂100重量部に対し、固形分換算で1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部である。
【0022】
上記のようにして得られた本発明の水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物からなるアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂または当該粘着付与樹脂のエマルジョンは、一般にアクリル系感圧接着剤に使用されているベースポリマー(アクリル系重合体またはアクリル系重合体エマルジョン)に配合されて、溶剤型またはエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物を構成する。
【0023】
アクリル系重合体に使用されるモノマーとしては、各種(メタ)アクリル酸エステル(なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをいい、以下(メタ)とは同様の意味である)を使用できる。かかる(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等を例示でき、これらを単独もしくは組合せて使用できる。また、得られるアクリル系重合体に極性を付与するために前記(メタ)アクリル酸エステルの一部に代えて(メタ)アクリル酸を少量使用することもできる。さらに、架橋性単量体として(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等も併用しうる。更に所望により、(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘着特性を損なわない程度において他の共重合可能な単量体、たとえば酢酸ビニル、スチレン等を併用しうる。
【0024】
これら(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体のガラス転移温度は特に制限はされないが、通常は−90〜0℃程度であり、上限としては−10℃以下、下限としては−80℃以上とするのが好ましい。ガラス転移温度が0℃よりもあまりにも高い場合にはタックが低下し、−90℃よりもあまりにも低い場合には接着力が低下する傾向がある。また、分子量は特に限定されないが、通常、重量分子量が20万〜100万程度である。
【0025】
前記アクリル系重合体は、各種公知の方法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用でき、反応温度は通常50〜85℃程度、反応時間は1〜8時間程度とされる。また、アクリル系重合体の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられ、溶液濃度は通常40〜60重量%程度とされる。
【0026】
一方、アクリル系重合体エマルジョンは、一般的な乳化重合により製造することができる。たとえば、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーの一括仕込み重合法、モノマー逐次添加重合法、、シード重合法等を採用できる。またアクリル系重合体エマルジョンに用いられる乳化剤としては前記アニオン系乳化剤、部分ケン化ポリビニルアルコール等の各種のものを使用でき、その使用量はアクリル系重合体100重量部に対して通常0.1〜5重量部程度、好ましく0.1〜3重量部である。アクリル系重合体エマルジョンの固形分濃度は、通常40〜70重量%程度に調製するのが好ましい。
【0027】
本発明の溶剤型のアクリル系感圧接着剤組成物の組成比は、固形分換算量でアクリル系重合体100重量部に対して、前記粘着付与樹脂の1〜40重量部程度である。粘着付与樹脂の使用量の上限として30重量部以下、下限としては5重量部以上が好ましい。一方、エマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物の組成比は、固形分換算量でアクリル系重合体エマルジョン100重量部に対して、前記粘着付与樹脂エマルジョン1〜40重量部程度である。粘着付与樹脂エマルジョンの使用量の上限として20重量部以下、下限としては3重量部以上が好ましい。粘着付与樹脂または粘着付与樹脂エマルジョンの使用量が前記範囲に満たない場合には十分な粘着特性を付与することが困難となる。前記使用量を越える場合には相溶性の低下のみならず接着剤組成物が固くなり接着力及びタックも低下するため好ましくない。
【0028】
なお、溶媒型のアクリル系感圧接着剤組成物は、前記アクリル系重合体および粘着付与樹脂に、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等の架橋剤を加えることにより、凝集力、耐熱性を更に向上させることもできる。これら架橋剤のなかでも、特にポリイソシアネート化合物を使用するのが好ましく、その具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の各種公知のものがあげられる。さらに、必要に応じて充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種公知の粘着付与樹脂を適宜に使用することもできる。
【0029】
また、エマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物は必要に応じて消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種公知の粘着付与樹脂のエマルジョンを併用することもできる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、接着力、凝集力(保持力)、タック等の粘着特性に優れ、淡色であって、しかもアクリル系重合体との相溶性に優れた粘着付与樹脂および粘着付与樹脂エマルジョンを提供でき、また当該粘着付与樹脂または粘着付与樹脂エマルジョンを用いた溶剤型またはエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物を提供できる。また、本発明の粘着付与樹脂を用いたアクリル系感圧接着剤組成物は、粘着付与樹脂としてロジン系樹脂等を用いたものに比べて、保持力、タック、耐光性、耐候性に優れ、紙等との接着性もよい。さらには、粘着付与樹脂の原料が石油等から得られる安価な芳香族留分であり、実用的な価格のものを提供することができる。また、エマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物は、大気汚染がないこと、安全衛生に優れていること及び省資源に適すること等の種々の利点を有する。
【0031】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中、部は重量基準である。
【0032】
製造例1(アクリル系重合体の製造)
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に酢酸エチル57部、トルエン33部、アクリル酸ブチル97部およびアクリル酸3部を仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が約75℃となるまで昇温した。次いで、あらかじめアゾビスイソブチロニトリル0.5部および酢酸エチル10部を仕込んだ滴下ロートから約3時間を要して系内に滴下し、更に5時間同温度に保って重合反応を完結させ、固形分49.6%、粘度(23℃)11000cpsのアクリル系重合体を得た。
【0033】
製造例2(アクリル系重合体エマルジョンの製造)
(1)水44.46部
(2)アニオン系乳化剤(商品名ハイテノールS、固形分50%、第一工業製薬(株)製)0.90部、
(3)アクリル酸ブチルエステル43.90部およびアクリル酸1.36部
(4)触媒(過硫酸カリウム)0.23部、pH調整剤(重ソウ)0.11部および水9.04部
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた四つ口フラスコ中、70℃の窒素ガス気流下で、上記(1)および(2)を溶解した後、攪拌下に上記(3)および(4)の合計の1/10量を添加し70℃で窒素ガス気流下にて30分間予備反応を行ない、その後、(3)および(4)の合計の9/10量を2時間かけて滴下し、滴下重合を行なった。(3)および(4)の全量を滴下し終った後、1時間完結反応を70℃で行ない室温に冷却後、100メッシュ金網ろ過を行ないながら取り出し、固形分45.7%のアクリル系重合体のエマルジョンを得た。
【0034】
実施例1(粘着付与樹脂)
未水素化のフェノール変性芳香族系炭化水素樹脂(「ネオポリマーE−100(軟化点90℃,色調15ガードナー,水酸基価73)」、日本石油化学(株)製)100部と安定化ニッケル−ケイソウ土触媒(「SN−250」、堺化学(株)製)0.5部をオートクレーブに仕込み、水素圧200kg/cm2 、反応温度280℃、反応時間5時間の条件下に、水素化反応を行った。反応終了後、得られた樹脂をシクロヘキサン300部に溶解し、ろ過により触媒を除去した。その後、攪拌羽根、還流コンデンサー、温度計、温度調節器及び圧力表示計の取り付けられた1リットル容のセパラブルフラスコにろ液を入れ、200℃、20torrまで徐々に昇温・減圧して溶媒を除去し、数量平均分子量538、軟化点92℃、色調1ガードナー以下、芳香環の水素化率15%、水酸基価69のフェノール変性芳香族系炭化水素樹脂の水素化物(粘着付与樹脂)98部を得た。得られた粘着付与樹脂の物性を表1に示す。
【0035】
なお、水素化率は、原料樹脂及び得られた水素化樹脂の 1H−NMRの7ppm付近に現れる芳香環のH−スペクトル面積から以下の式に基づき算出した。水素化率={1−(水素化樹脂のスペクトル面積/原料樹脂のスペクトル面積)}×100(%)。軟化点は、JIS K 2531の環球法による。また、色調は、180℃に溶融後ガードナースタンダードカラー(G)により目視判定した。
【0036】
また、粘着付与樹脂の相溶性は、製造例1で得られたアクリル重合体80重量部と粘着付与樹脂20重量部をトルエンに溶解した溶液をサイコロアプリケーター(150μm)でガラス板上に塗工厚が35μmとなるように塗工した後、循風乾燥機中で乾燥し、トルエンを除去した後、目視により、以下の基準で評価した。
○−−−透明で相溶している。
△−−−少し濁っていて部分相溶している。
×−−−白濁していて相溶していない。
【0037】
実施例2(粘着付与樹脂)
実施例1において、触媒量を0.5部から1.0部、水素圧を200Kg/cm2 から180Kg/cm2 、反応時間を5時間から3時間にそれぞれ変更した他は、実施例1と同様にして粘着付与樹脂を製造した。得られた粘着付与樹脂の物性を表1に示す。
【0038】
実施例3(粘着付与樹脂)
実施例1において、未水素化のフェノール変性芳香族系炭化水素樹脂(「ネオポリマーE−100」、日本石油化学(株)製)を、(「ハイレジンPM−130(軟化点128.5℃,色調9ガードナー,水酸基価25)」,東邦化学(株)社製)に代えた他は、実施例1と同様にして粘着付与樹脂を製造した。得られた粘着付与樹脂の物性を表1に示す。
【0039】
比較例1(粘着付与樹脂)
粘着付与樹脂として、未水素化のフェノール変性芳香族系炭化水素樹脂(「ネオポリマーE−100」、日本石油化学(株)社製)を用いた。粘着付与樹脂の物性を表1に示す。
【0040】
比較例2(粘着付与樹脂)
粘着付与樹脂として、芳香族系炭化水素石油樹脂の水素化物(「アルコンM−100」、荒川化学工業(株)製)を用いた。粘着付与樹脂の物性を表1に示す。
【0041】
比較例3(粘着付与樹脂の製造)
未水素化のフェノール変性芳香族系炭化水素樹脂(「ハイレジンPM−90(軟化点89.5℃,色調11ガードナー,水酸基価67」、東邦化学(株)製)100部とニッケル−ケイソウ土触媒(「N−113」、日揮化学(株)製)3部をオートクレーブに仕込み、水素圧200kg/cm2 、反応温度250℃、反応時間5時間の条件下に、水素化反応を行った。反応終了後、得られた樹脂をシクロヘキサン300部に溶解し、ろ過により触媒を除去した。その後、攪拌羽根、還流コンデンサー、温度計、温度調節器及び圧力表示計の取り付けられた1リットル容のセパラブルフラスコにろ液を入れ、200℃、20torrまで徐々に昇温・減圧して溶媒を除去し、粘着付与樹脂を製造した。得られた粘着付与樹脂の物性を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0004168351
【0043】
実施例4(アクリル系感圧接着剤組成物)
製造例1で得たアクリル系重合体80部(固形分換算)と実施例1で得られた水素化フェノール変性芳香族系炭化水素樹脂(粘着付与樹脂)20部を十分混練したのち、ポリイソシアネート系化合物(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートL」)1.8部を添加し、架橋型アクリル系感圧接着剤組成物を得た。
【0044】
実施例5〜6、比較例4〜6(アクリル系感圧接着剤組成物)
実施例4において、表2に示すように粘着付与樹脂の種類を実施例2〜3または比較例1〜3で得られたものに代えた他は、実施例4と同様に行い架橋型アクリル系感圧接着剤組成物を得た。
【0045】
[テープの性能試験]
実施例4〜5または比較例4〜6で調製した架橋型アクリル系感圧接着剤組成物を、厚さ38μmのポリエチレンフィルムにサイコロ型アプリケーターにて乾燥膜厚が30μm程度となるように塗布し、ついで該接着剤組成物中の溶剤を除去して糊厚30μmのテープを作成した。得られたテープを7日間放置し熟成した後、以下の試験方法により性能を評価した。性能試験の結果を表2に示す。
【0046】
(常温接着力):得られたテープ(25mm×100mm)をポリエチレン板に貼り付け、万能引張試験機を使用して20℃、300mm/分の条件における180゜剥離強度(Kg/25mm)を測定した。
【0047】
(保持力):得られたテープ(25mm×25mm)をステンレス板に貼り付け、昇温クリープテスターを用いて1kg荷重し、60℃から毎分2℃のペースで昇温を行い、重りが落下したときの温度(℃)を測定した。
【0048】
(タック):JIS Z 0237に記載のJ.Dow法により傾斜角30度、測定温度20℃の条件で測定した。表2の数字はボールNo.14の転がり距離(cm)を示す。
【0049】
(耐光性):得られたテープの表面に15cm離れたところからキセノン光を24時間照射した後、タックを上記と同様の方法に測定した。
【0050】
【表2】
Figure 0004168351
【0051】
実施例7
(1)粘着付与樹脂エマルジョンの調製
実施例1で得られた粘着付与樹脂100部をトルエン60部に100℃にて約1時間かけて溶解した後、80℃まで冷却してアニオン系乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を固形分換算で3部および水160部を添加し75℃にて1時間強攪拌し予備乳化を行なった。得られた予備乳化物を高圧乳化機(マントンガウリン社製)により300kg/cm2 の圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物200部を仕込み、50℃、100mmHgの条件下に6時間減圧蒸留を行ない固形分50%の粘着付与樹脂のエマルジョンを得た。
【0052】
(2)エマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物の調製
上記(1)で得られた粘着付与樹脂のエマルジョン10部(固形分換算)と製造例2で得られたアクリル系重合体のエマルジョン90部(固形分換算)を混合し、さらに、アクリル系の増粘剤としてプライマルASE−60(日本アクリル社製)0.5部(固形分換算)を添加しアンモニア水にて増粘させてエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物を得た。
【0053】
実施例8〜9、比較例7〜9
実施例7(1)において、粘着付与樹脂の種類を表3に示すように実施例2〜3または比較例1〜3で得られたものに代えた他は、実施例7と同様にして粘着付与樹脂のエマルジョンを調製し、また実施例7(2)と同様にしてエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物を調製した。
【0054】
[テープの性能試験]
前記架橋型アクリル系感圧接着剤組成物の性能試験に用いたテープを作成した方法と同様の方法により、実施例8〜9または比較例8〜9で調製したエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物を用いて、性能試験用のテープを作成した。得られたテープにより、前記常温接着力、保持力、タック、耐光性の性能評価を行った。性能試験の結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
Figure 0004168351

Claims (5)

  1. C9留分をフェノール類の存在下でカチオン重合して得られる水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物であって、該水酸基価が120以下、該軟化点が70〜150℃であり、水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂のオレフィン性二重結合の全部と芳香環の0〜50%を水素化したものであり、該水素化物がアクリル系重合体と相溶し、かつ該色調がガードナー3以下であるものを含有してなるアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂。
  2. 前記水酸基含有芳香族系炭化水素樹脂の水素化物の色調がガードナー1以下である請求項1に記載のアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂。
  3. 請求項1または2に記載のアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂をエマルジョン化したものを含有してなるアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂エマルジョン。
  4. アクリル系重合体100重量部に対して、固形分換算量で請求項1または2に記載のアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂1〜40重量部を配合してなる溶剤型のアクリル系感圧接着剤組成物。
  5. アクリル系重合体のエマルジョン100重量部に対して、固形分換算量で請求項に記載のアクリル系感圧接着剤用粘着付与樹脂エマルジョン1〜40重量部を配合してなるエマルジョン型のアクリル系感圧接着剤組成物。
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