JP4167328B2 - 薄膜のドライエッチング方法および薄膜半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜のドライエッチング方法および薄膜半導体装置の製造方法に係り、特に、層間絶縁膜を介して交差する多層配線の下層配線のパターニングに最適なドライエッチング方法に関する。また、本発明は、例えば、液晶表示素子に用いる薄膜トランジスタのゲート配線の形成のための金属薄膜のドライエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、基板上に金属配線を形成する方法として、ケミカルドライエッチング装置を用いて、レジストパターンをマスクとして金属薄膜をドライエッチングする方法が知られている。以下、図1に示すフローチャートに基づき、従来のケミカルドライエッチング装置により、例えばガラス基板のような透明絶縁性を有する基板上にモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜の配線を形成する方法について説明する。
【0003】
まず、基板表面にスパッタリングにより形成した金属薄膜上に、レジストを塗布し、次いで、このレジストを露光装置などにより所望のパターンに露光した後、現像装置などにより現像し、エッチング用のレジストマスクを形成する。次に、この基板をエッチング室に搬入し、高真空状態(例えば3Pa以下)までエッチング前排気を行う。しかる後に、エッチング室内を調圧し、そして金属薄膜のエッチングに必要なエッチングガス(四弗化炭素、酸素)を活性化し、この活性化されたエッチングガスを基板表面に導き、基板上の金属薄膜をエッチングする。
【0004】
所定時間エッチングを行なった後、エッチングガスの導入を停止し、次にエッチング室内を前記高真空状態(例えば3Pa以下)に排気し、排気されたエッチング室から金属薄膜の配線が形成された基板を搬出する。
【0005】
ところで、基板上にCVD法などによって堆積される絶縁膜を、絶縁膜を介して交差する多層配線の下層配線は、その端部が上層配線と短絡しやすいこと、あるいは上層配線が下層配線の端部で断線し易いこと等から、下層配線の端面は基板主表面に対して適度なテーパーを有していることが要求される。特に、下層配線の膜厚が300nm以上である場合、その形状制御が重要である。
【0006】
例えば、厚さ400nmのモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜を選択的にエッチングして、側壁テーパ角度30±5°の配線を形成することが要求されている。
【0007】
このようなテーパ形状は、例えばエッチングガス総流量を1000sccmとし、四弗化炭素/酸素ガス比をレジストとモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜とのエッチングレート比が1/3となる比率、たとえば1/2として、30Paでの調圧を行い、800Wのマイクロ波電力を印加し、720秒のプラズマ放電を行うことにより達成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エッチング時間は、次の理由から長時間を要する。
1)ドライエッチング法を用いて金属薄膜をエッチングする場合には、金属薄膜のエッチングが進行し、下地の表面が露出すると、エッチングに寄与する活性ラジカルが、残存する金属薄膜に集中し、その反応を促進する。従って、下地の表面が露出し始めると同時に、金属薄膜のエッチングレートは急速に促進される。ところが、レジストのエッチングレートは、エッチング面積が著しく変化しないため、顕著にエッチングレート変化を示さないので、ジャストエッチング前後でのレジストと金属薄膜とのエッチングレート比が変化する。
【0009】
一方、形成する配線側壁が良好なテーパ角度になるように加工するためには、エッチングの進行に伴うレジストと金属薄膜のエッチングレートを、適度な比率に保つ条件とすれば良いことが知られている。
【0010】
この両方の条件を満足するためには、下地の表面が露出してもエッチングレートが顕著に変化し難い条件、即ちエッチングレートが相対的に遅い条件とする必要がある。また、エッチング時間終了時のテーパ角が所望する角度となるようなレジストと金属薄膜のエッチングレート比が得られるエッチング条件(ガス比、ガス流量、圧力、印加電力、エッチング時間)を、エッチング条件を変化させて加工した配線の形状を確認して選定する必要がある。
【0011】
2)上述のように、エッチングが進行し、下地が露出しはじめるタイミングは、金属薄膜の膜厚やエッチング条件のばらつき、またエッチングレートの基板面内の均一性によって影響を受けるので、基板面内で不均一性を生じる。この不均一性の影響により、十分な時間のエッチングを実施しなければ、基板表面に不要な金属薄膜の残りを発生してしまう。一方、十分過ぎるエッチングを実施した場合には、加工された配線のテーパ角度やパターン寸法精度にばらつきを発生するという問題がある。
【0012】
従って、従来の方法では、金属薄膜のエッチングレートを約40nm/min以下とするという、かなり低速でのエッチング条件を選定し、しかも比較的十分なオーバーエッチングを行なっていた。
【0013】
このようなことから、従来のエッチング方法で、例えばモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜の配線加工を実施した場合には、エッチング前排気に10秒、エッチング前調圧に20秒、エッチング時間として720秒、エッチング後排気に10秒、全体で760秒という長時間を一枚の基板のエッチング処理に費やしていた。
【0014】
一方、薄膜トランジスタ等の電極に角部があると、層間絶縁膜を介して配置される電極間に短絡が生じてしまうが、これを防止する方法として、次の方法が特開平1−158776号に記載されている。
【0015】
即ち、まず、基板上にゲート電極材料を堆積し、このゲート電極材料をレジストパターンをマスクとして用いてパターニングし、テーパ状の側面を有する形状にする第1のエッチングを行う。次いで、レジストのエッチング速度をゲート電極材料のエッチング速度より高めた条件での第2のエッチングを行い、テーパ状の側面を円弧状にする。
【0016】
しかし、この方法によると、特に液晶表示装置等の製造に必要な大面積の基板の場合、ローディング効果が大きいため、第1のエッチングと第2のエッチングの切り替え時期、即ち第1のエッチングの終点の検出が極めて困難である。即ち、第1のエッチング終了時点で既にローディング効果の影響により配線幅にばらつきが生じる恐れがあり、このため最終的に優れた加工寸法精度が得られなくなるという問題がある。
【0017】
本発明の目的は、所望のテーパ角度で、かつ高い加工寸法精度でエッチングを実施することを可能とする薄膜のドライエッチング方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、大面積にわたり優れた加工寸法精度が得られ、且つ高い均一性、再現性が達成される薄膜のドライエッチング方法を提供することにある。
【0018】
更に、本発明の目的は、短時間で優れた加工寸法精度が確保できる薄膜のドライエッチング方法を提供することにある。
更にまた、本発明の目的は、以上のドライエッチング方法を用いた薄膜半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、被処理薄膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、被処理薄膜を、第1のエッチング条件で、選択的にドライエッチングする第1のエッチング工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、被処理薄膜を、前記第1のエッチング条件とは異なる第2のエッチング条件で、選択的にドライエッチングする第2のエッチング工程とを具備し、前記第1のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記被処理薄膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.75〜1/1.25であり、前記第2のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記被処理薄膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.15〜1/0.25であり、前記第1のエッチング工程から前記第2のエッチング工程への切り替えは、前記マスクに対応しない前記被処理薄膜の下地の少なくとも80%が露出する時点に行われることを特徴とする薄膜のドライエッチング方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、透明基板上に導電性膜を形成する工程と、前記導電性膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、前記導電性膜を、第1のエッチング条件で、選択的にドライエッチングする第1のエッチング工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、前記導電性膜を、前記第1のエッチング条件とは異なる第2のエッチング条件で、選択的にドライエッチングし、ゲート電極を形成する第2のエッチング工程とを具備し、前記第1のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記導電性膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.75〜1/1.25であり、前記第2のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記導電性膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.15〜1/0.25であり、前記第1のエッチング工程から前記第2のエッチング工程への切り替えは、前記マスクに対応しない前記被処理薄膜の下地の少なくとも80%が露出する時点に行われることを特徴とする薄膜半導体装置の製造方法を提供する。
【0021】
以下、本発明のドライエッチング方法について、より詳細に説明する。
本発明の薄膜のドライエッチング方法は、ガス導入を可能にする真空容器内に被処理基体を配置し、真空容器内に1種または2種以上のエッチングガスを導入しつつ、該エッチングガスに高周波やマイクロ波電力等のエネルギーを印加し、それによってプラズマを発生させて、エッチングガスを活性状態とし、薄膜と反応すると薄膜が気化するラジカルを被処理基体上に導き、薄膜をドライエッチングするものである。
【0022】
かかる本発明のドライエッチング方法の特徴は、薄膜とエッチングガスとの反応の進行に伴い、エッチング条件を連続的に1回以上変更してエッチングすることを特徴とする。即ち、本発明のドライエッチング方法は、それぞれエッチング条件の異なる、第1のエッチング条件による第1のエッチング工程と、第2のエッチング条件による第2のエッチング工程とを具備するものである。この場合、エッチング条件は、ガス総流量、ガス比、圧力、印加電力、およびエッチング時間のいずれか、もしくはその2種以上の組み合わせを含むものである。
【0023】
エッチング条件の切り替えは、被処理薄膜の選択的エッチングガ完了する直前に行われる。即ち、薄膜の下地がエッチング面積の少なくとも80%、例えば約90%露出する時点を第1のエッチング工程の終点とし、この終点を検出することにより行うことが出来る。
【0024】
第1のエッチング工程の終点の検出は、真空容器内の圧力変化または真空容器内の発光強度変化を測定することによって判断する、エッチング終点検出機能を用いて、自動的に行うことが出来る。
【0025】
また、薄膜の下地として、第1のエッチング条件でのエッチングレートが、薄膜のエッチングレートの1〜8%となるような材料を選定することが好ましい。
本発明に用いられるドライエッチング装置としては、公知の容量結合型、誘電結合型、あるいはマイクロ波励起型等を適宜用いることができる。
【0026】
そして、被処理基体のエッチングは、次のようにして行われる。まず、真空容器内に表面に被処理薄膜を有する被処理基体を載置し、第1のエッチング条件用のエッチングガスが活性化されたエッチングガスを被処理基体上に導き、被処理薄膜の第1のエッチングを開始する。
【0027】
被処理薄膜の下地が約90%露出する状態まで第1のエッチングを進行させた後、エッチング条件を第2のエッチング条件に切り替え、第2のエッチング条件用のエッチングガスが活性化されたエッチングガスを被処理基体上に導き、被処理薄膜の第2のエッチングを行う。
【0028】
本発明において、下地の露出とは、被処理薄膜の最終のパターン形状(設定値)における下地の露出を100%とした際のエッチング途中での露出の比率である。また、被処理薄膜の最終のパターン形状は、ほぼレジストマスクの形状に対応している。
【0029】
エッチング用ガスとして、被処理薄膜がモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜である場合には四弗化炭素と酸素の混合ガスが用いられ、またアルミニウム(Al)やアルミニウム合金等の場合には塩素系ガス、例えばCl2 やBCl3 などが用いられる。そして、第1のエッチング条件と第2のエッチング条件とでは、その流量、混合比率等を切り替える。
【0030】
特に、第1のエッチング条件は、マスクであるレジストと薄膜とのエッチングレート比が大きく、相対的に薄膜のエッチングレートの大きい、例えば酸素/四弗化炭素比が1よりも大きい条件を選定し、第2のエッチング条件は、レジストと薄膜とのエッチングレート比が小さく、相対的に薄膜のエッチングレートの小さい、例えば酸素/四弗化炭素比が1よりも充分に小さい条件を選定することにより、短時間で、良好な配線側壁テーパ角度と良好な加工精度を有する薄膜のパターンの形成が可能であるという効果がある。そして、この発明は、特に45゜、更には35゜よりも小さく均質な配線側壁テーパ角度を達成するのに好適である。
【0031】
本発明においては、真空容器内のガス圧は、エッチングの条件により10〜100Paの範囲で設定される。本発明においては、全操作過程を通じて、真空容器内を数Paより低い真空にする必要はなく、従って広域ターボ分子ポンプのような排気能力の大きい真空ポンプを用いる必要はない。
【0032】
ここで、本発明のドライエッチング方法に用いられるエッチング終点検出方法について説明する。
ドライエッチングにおけるエッチング終点の検出方法には、
1.エッチング室内の圧力変化を検出する方法
2.エッチング被膜ごとに選択した波長の発光を検出する方法
がある。
【0033】
いずれの方法も、まず、検出値を電圧変化量に変換し、その電圧変化量を微分したプロファイルを得る。この微分したプロファイルに対し、しきい値1としきい値2を設定し、例えば微分値がしきい値1を越え、しきい値2に達した所を終点として検出する(図2)。
【0034】
また、本発明では、更に精度の良い検出方法を提案する。
まず、図3(a)に示すように、圧力変化および発光強度の検出値を電圧変化量に変換し、それらの電圧変化量を微分して、それぞれの微分曲線(dV/dT、dV´/dT´)を得る。次いで、図3(b)に示すように、それぞれの微分曲線のピーク強度に倍率補正処理を施し、図3(c)に示すように、それらの値を加算したプロファイルを作成する。
【0035】
その後、このプロファイルに対し、図2に示すように、しきい値1としきい値2を設定し、プロファイル曲線がしきい値1を越え、しきい値2に達した時点を終点として検出する。即ち、2種類以上の検出値の加算値を用いてエッチング終点を検出するのである。
【0036】
ここでは、プロファイル曲線のピークの後の出力を検出しているが、ピーク前であっても、またピークを検出してもかまわない。
以上説明したように、本発明のドライエッチング方法では、第1のエッチング工程は、パターン形成に際し薄膜の高速除去を目的としており、第2のエッチング工程は、不要な薄膜の残りの除去と、加工されるパターン寸法の合わせ込みと、更にテーパ角度の合わせ込みを目的としている。このように、本発明のドライエッチング方法では、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程とで、その目的を異ならせているので、短時間で、良好なエッチングを実施することができる。
【0037】
このように、工程ごとにエッチングの目的を分担しているので、エッチング条件の合わせ込みが容易であり、また膜厚やエッチング条件のばらつきに対しても優れた再現性を確保することができる。
【0038】
更に、エッチングレートが大幅に変化する薄膜の下地が露出する時点において、エッチング終点検出機構によりエッチング終点を検出し、エッチング条件を切り替えているので、同一条件でエッチングを実施する際に問題となる、下地の露出によるエッチング状況の変化の影響を考慮する必要がない。また、薄膜の厚さや、膜厚分布などが変動しても、第1のエッチング工程のエッチング時間を、エッチング終点検出機構によって管理し、例えば第2のエッチング時間を第1のエッチング時間の20〜40%に設定することにより、再現性良く、良好な加工寸法精度を得ることができる。
【0039】
特に、高融点金属薄膜の配線パターンを形成する場合に、その下地として第1のエッチング条件でエッチングレートが高融点金属薄膜のエッチングレートに対して、1〜10%となる酸化珪素薄膜を用いると、第2のエッチング条件でのエッチング実施時に、下地膜の極めて近傍では活性ラジカル種が下地膜に反応するので、金属薄膜のエッチングが進行しにくくなり、金属薄膜の下地膜からの高さ方向へのエッチングレートに、下地近傍では遅く、下地から遠ざかる程速いという変化を生じるので、この効果によりテーパエッチングが進行することとなり、その結果、加工精度に優れ、テーパ角度の良好な配線を短時間に形成することが可能である。
【0040】
本発明は、特に、ガラス基板上や酸化珪素上に形成したモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜のような高融点金属薄膜を、レジストパターンをエッチングマスクとして用いて選択的にエッチングすることにより、加工断面の側壁が30±5°となるテーパパターンを有する配線の形成に有効である。そして、基板上に層間絶縁膜を介して交差する多層配線の下層配線として、このような配線を使用することにより、層間ショートや上層配線の断線等ヲ十分に低減することができる。
【0041】
特に、このような配線をチャネルエッチング型やチャネル絶縁型等の逆スタガ型の薄膜トランジスタ(TFT)のゲート電極配線に極めて有利に用いることが出来る。
【0042】
また、本発明は、特に、ローディング効果が激しいエッチング、例えば1200cm2 以上の面積の基板のエッチングに対し、有効に適用される。なお、液晶表示素子における表示画素部のレジストの被覆部の面積が全体の30%、特に20%を下回ると、ローディング効果が顕著になることが確認されている。ここで「表示画素部」としたのは、周辺領域は、レジストの被覆率が表示画素部とは全く異なり、充分に大きくなるため、全体の平均では挙動が説明出来ないからである。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、より具体的に説明する。
図4は、本発明のドライエッチング方法に使用されるケミカルドライエッチング装置を概略的に示す図である。
【0044】
図4において、気密に構成されたエッチング室1内には、被処理基板3がその上に載置されるテーブル4が配置され、対向する位置にパンチングメタルプレート2が配置される。そして、パンチングメタルプレート2の上方にはプラズマ励起空間5を隔てて誘電体板6が配置される。そして、この誘電体板6にはマイクロ波源8に結合された導波管7が結合している。また、プラズマ励起空間5にはエッチングガス供給部9が結合している。
【0045】
ケミカルドライエッチングされる被処理基板3は、エッチング室1内に搬入されて、テーブル4上に載置され、エッチングガスは、エッチングガス供給部9からプラズマ励起空間5に導かれる。そして、マイクロ波源8から導波管7を介してマイクロ波電力を印加することにより、プラズマ励起空間5にプラズマを発生させ、そのガス中のエッチングに寄与する活性ラジカル種をパンチングメタルプレート2を介して基板3上に導き、反応させ、エッチングを行うようになっている。
【0046】
このエッチング室1には、排気配管10が設けられ、排気配管10は、自動制御式スロットルバルブ11を介してブースター付ドライポンプ12に連通している。
【0047】
また、エッチング室1には、エッチング室1内の圧力を測定するための圧力計13及びエッチング室内の発光強度を検出する光センサ14が接続されている。そして、これら圧力計13及び光センサ14の出力に基づいて演算処理を行なう演算処理部15、この演算処理部15の演算結果に基づいてスロットルバルブ11を制御するスロットバルブ制御部16、演算処理部15の演算結果に基づいてマイクロ波源8を制御するマイクロ波源制御部17、及び演算処理部15の演算結果に基づいてエッチングガス供給部9からのガス供給量を制御するガス制御部18とを備えている。
【0048】
以上のように構成されるケミカルドライエッチング装置を用いた薄膜のドライエッチングは、次のように行われる。
まず、例えばガラス基板等の表面にスパッタリング装置などを用いて被処理薄膜を形成し、この被処理薄膜の上に、レジスト塗布装置などによりレジストを塗布し、露光装置などにより感光した後、現像装置などにより現像処理を行って、エッチング用のレジストマスクを形成する。この被処理基板3をエッチング室1のテーブル4上に置き、第1のエッチング条件でのエッチングガスを導入しつつ、マイクロ波電源8からマイクロ波を供給する。このとき、全処理ガスの総流量、ガスの混合比率、ガス圧力、供給電力は、レジストと薄膜とのエッチングレート比率が例えば1/0.75〜1/1.25となり、薄膜のエッチングレートが10〜300nm/minとなる条件を、予め設定しておく。
【0049】
このプラズマ放電は、薄膜の下地表面が基板表面積の約90%となる時点を検出可能なエッチング終点検出機構により管理され、この機能での終点検出信号により、自動的に停止する。この第1のエッチング工程により、薄膜は、最終的に望まれるテーパパターンのテーパ角度よりも5〜10°大きい角度でエッチングされる。
【0050】
プラズマ放電が停止した後、第1のエッチング条件でのガス供給が停止され、第2のエッチング条件でのエッチングガスが導入され、再びマイクロ波電源8からマイクロ波を供給して、第2のエッチング工程を実施する。
【0051】
第2のエッチング条件としての全処理ガスの総流量、ガスの混合比率、ガス圧力、供給電力は、レジストと薄膜とのエッチングレート比率が例えば1/0.15〜1/0.25となり、薄膜のエッチングレートが第1のエッチング条件でのエッチングレートの30〜45%となる条件を予め設定しておく。ここで、ガス圧力は特に第1のエッチング条件よりも10Pa以上高圧とすれば、第1のエッチング条件にて選定したガスの種類や総流量などを変更する必要がなく、ガスの混合比率と供給電力の変更だけで、条件の選定が可能であるという効果がある。
【0052】
第2のエッチング工程のプラズマ放電時間は、第1のエッチング工程でプラズマ放電時間の20〜40%となるように設定すれば、加工された薄膜のテーパ角度を目標値とすることができ、加工寸法精度を良好にすることができるという効果がある。
【0053】
【実施例1】
実施例1
図4に示すケミカルドライエッチング装置を用いて、図5に示すフローチャートに従って、図6に示すように、酸化珪素膜上にモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜からなる配線を形成した。
【0054】
まず、図6(a)に示すように、外形寸法が550×650mmのガラス基板21上に形成された酸化珪素薄膜22上に、スパッタリングにより400nm厚にモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜23を形成し、次いで、モリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜23上に、レジスト塗布装置などによりレジストを塗布し、露光装置などにより感光した後、現像して、エッチング用のレジストマスク24を形成した。そして、この基板21をエッチング室1に搬入し、テーブル4上に載置した。
【0055】
次に、エッチング室1内を、高真空状態(例えば3Pa以下)までエッチング排気を行い、次いで、第1のエッチングに必要なエッチングガスである四弗化炭素と酸素を、本実施例の場合、四弗化炭素流量:445sccm、酸素流量:555sccnとなるように、エッチングガス供給部9の流量制御機構を用いて導入し、エッチング室1に取り付けられた圧力計13からの信号により、設定圧力と同圧となるように動作する自動スロットルバルブ11を用いて、設定圧力30Paにエッチング室1の内部が安定維持するように調圧を行った。
【0056】
このとき、上述の圧力の安定状態を維持するまでに20秒を必要とした。
次に、この状態で、自動スロットルバルブ11の開度を固定し、マイクロ波電源8からマイクロ波を、予め設定した電力である800Wとなるように印加し、プラズマ励起空間5でエッチングガスプラズマを発生させ、エッチングに寄与する活性ラジカル種をパンチングメタルプレート2を介して基板3上に導き、反応を開始し、図6(b)に示すように、モリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜23のエッチングを行った。ここで、自動スロットルバルブ11の開度を固定したのは、開始したエッチングの終点の検出を、エッチング室1の圧力変化量を用いて行うためである。
【0057】
この実施例では、エッチングの終点検出を、エッチング室1の圧力変化量を用いて行なった。即ち、圧力計13からの出力を演算処理部15にて微分処理し、図2に示すような微分値曲線を得る。ここでは、エッチングが進行し、薄膜23の下地が露出し始め、下地膜22の表面の約95%の領域において不要な薄膜が除去された状態になる時点を終点として検出できるよう、しきい値1及びしきい値2をそれぞれ0.1V、0.05Vに設定した。そして、微分値曲線がしきい値1を越え、しきい値2に到達した時点を終点とし、マイクロ波源制御部17の指示に基づいてマイクロ波電力の印加を停止し、図6(c)に示す時点で第1のエッチングを終了した。尚、この実施例において第1のエッチングは、薄膜23の厚さが400nmの場合、230秒を必要とした。
【0058】
以上説明した第1のエッチング条件(エッチングガスの総流量、ガス比、圧力、印加電力、しきい値等)は、予め、レジスト24と薄膜23のエッチングレート比率が1よりも大きい1/0.8となり、しかも薄膜23のエッチングレートが100nm/minとなる条件を実験により選定して設定した。
【0059】
この状態でのエッチングパターンの形状は、図6(c)に示すように、最終的な目標のテーパ角度30°に対して、約40°となっており、また完全なパターン形成には至っていない。
【0060】
この実施例では、その終点検出に圧力計13を用いて行なったが、光センサ14の出力に基づくものであっても、また圧力計13及び光センサ14の出力を併用するものであってもかまわない。特に、圧力計13及び光センサ14の出力に基づく場合は、例えば図3に示すように、出力補正された両者の微分値曲線の合成曲線に基づいて、予め設定されたしきい値に基づいて終点検出が成される。この場合のしきい値1及び2は、それぞれ上記したのと同様に0.1V、0.05Vに設定され、薄膜23の厚さが400nmの場合、第1のエッチングには230秒を必要とした。
【0061】
第1のエッチングの終了と同時に、第1のエッチングに使用したエッチングガスと同種類のエッチングガスである四弗化炭素および酸素の流量を、第2のエッチング条件であるCF4 流量:200sccm、O2 流量:800sccmとなるように、エッチングガス供給部9の流量制御機構を使用して切り替え導入し、エッチング室1に取り付けられた圧力計13からの信号が設定圧力と同圧となるように動作する自動スロットルバルブ11を用いて、設定圧力100Paにエッチング室1の内部が安定維持するように、調圧を行った。
【0062】
上記圧力の安定状態を維持するまでに20秒を要した。
次に、この状態で、マイクロ波電源8からマイクロ波電力を、予め設定した電力である500Wとなるように印加し、エッチングガスプラズマを発生させ、エッチングに寄与する活性ラジカルと基板表面との反応を開始し、図6Dに示すように、薄膜23のエッチングを引続き行った。この場合、第1のエッチング所要時間であった230秒に対して、20%に相当する46秒が放電継続時間となるようにして、第2のエッチングを終了した。
【0063】
ここで、放電継続時間は、第1のエッチング終点検出時に第1のエッチング所要時間がわかるので、このデータを基に、この時間の20%に相当する時間を自動的に第2のエッチング時間として設定できるようになっている。
【0064】
以上説明した第2のエッチング条件(エッチングガスの総流量、ガス比、圧力、印加電力)は、予め、第1のエッチングガスと同種類のガスを使用してレジスト24と薄膜23のエッチングレート比率は、レジスト24のエッチングレート1に対して薄膜23のエッチングレートが1よりも充分に小さい0.15となり、しかも薄膜23のエッチングレートが、第1のエッチング条件でのエッチングレートに比べて半分以下と充分に小さい33%となる条件を、実験により選定して設定した。
【0065】
この状態でのエッチングパターン形状は、図6Eに示すように、最終的な目標のテーパ角度30°に対して基板全面において30±3°以内、設計配線幅10μmに対して基板全面において10±0.2μmとなっており、極めて良好な薄膜配線加工がされた。
【0066】
第2のエッチングの終了と同時に、エッチング室の到達真空度が例えば3Pa以下となるまで、エッチング後排気を行い、エッチング室1から基板3を搬出する。なお、エッチング後排気に要する時間は、十分な排気能力を有するブースター付ドライポンプ12を使用して10秒であった。
【0067】
以上のように、本実施例のエッチング方法によれば、従来のエッチング方法では760秒を要していたのが、336秒と大幅に短縮することができた。
また、本実施例では、第1のエッチング条件でのエッチングレートが、モリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜23のエッチングレートの6%である酸化珪素薄膜22を下地としているので、第2のエッチング実施時に、第1のエッチングにより下地が露出した場所では、下地薄膜22のエッチングも進行する。従って、合金薄膜23のエッチングレートは、下地薄膜22により影響を受ける。このような下地薄膜の影響による被処理薄膜のエッチングレートの変化を図7に示す。図中、曲線aは下地がSiO2 の場合、曲線bは下地がガラスの場合をそれぞれ示す。
【0068】
図7に示すように、エッチングが進行して下地薄膜に近づくと、被処理薄膜のエッチングレートが遅くなる。これは、次のような現象に基づくものである。即ち、エッチングが進行して、下地薄膜22が部分的に露出すると、下地薄膜22のエッチングが進行する。その結果、エッチング反応に寄与する活性ラジカル種が下地薄膜22のエッチングのために消費されてしまい、第2のエッチング実施時には、合金薄膜23の下地膜22の近傍でのエッチングレートの遅延が発生する。
【0069】
この効果を利用すると、第2のエッチング実施時に合金薄膜23の高さ方向におけるエッチングレートの変化が作用して、第1のエッチング終了時に約40°であったテーパ角度は、第2のエッチングによって30±3°以内に変化し、しかも加工されたパターン幅のエッチング進行による退行が最小限に抑制されるので、設計配線幅10μmに対して基板3の全面において、10±0.2μmという良好なパターン変換差での薄膜配線の形成が可能となる。
【0070】
本実施例では、エッチング条件を2種類の切り替えとしているが、3種類以上の条件を切り替えても良い。
また、本実施例では、ガス総流量を切り替えずにガス比と圧力、印加電力、エッチング時間を切り替えているが、切り替える条件は、少なくともガス総流量、ガス比、圧力、印加電力、エッチング時間のいずれかもしくはその組み合わせであればよい。
【0071】
更に、本実施例では、エッチング終点検出にエッチング室の圧力変化量を用いているが、エッチング室の発光強度の変化量、更には両者の併用であっても構わない。
【0072】
極めて高い精度が要求される場合は、圧力変化量と発光強度の変化量とを併用することが望ましく、装置並びに工程の簡略化には圧力変化量又は発光強度の変化量に基づく処理が望ましい。
【0073】
本実施例に係るエッチング方法は、ケミカルドライエッチング方法のみに適用されるものではなく、他の例えばプラズマエッチング方法であってもよい。
また、本実施例では、第1のエッチング終点検出時点を、不要部分の薄膜が95%除去された時点としているが、80%以上のの範囲であれば、エッチング
終点検出の設定を変更することも可能である。
【0074】
要するに、本実施例は、第1のエッチング工程において、薄膜の不要部分のエッチングを高速で実施し、第2のエッチング工程において、薄膜下地の活性ラジカル種の消費を利用して、薄膜の高さ方向へのエッチングレート勾配を設けることにより、加工寸法精度、薄膜エッチング残り、およびエッチングパターンのテーパ角度調整を行うものである。
【0075】
特に、モリブデン・タンタル合金(MoTa)では、その薄膜のエッチングには、主として弗素ラジカルの影響が大であるが、この実施例の如く、モリブデン・タングステン合金(MoW)のような柱状結晶合金では、弗素ラジカルとともにレジストのエッチングに影響する酸素ラジカルの影響が大であるため、本発明が極めて好適に使用される。
【0076】
実施例2
図4に示すケミカルドライエッチング装置を用いて、図8に示すフローチャートに従って、図9に示すように、ガラス基板上にモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜からなる配線を形成した。
【0077】
まず、図9(a)に示すように、実施例1と同様にガラス基板31上にスパッタリングによりモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜32を形成し、次いでモリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜32上に、レジスト塗布装置などによりレジストを塗布し、露光装置などにより感光した後、現像して、エッチング用のレジストマスク33を形成した。そして、この基板をエッチング室に搬入し、テーブル4上に載置した。
【0078】
次に、エッチング室1内を、高真空状態(例えば3Pa以下)までエッチング前排気を行い、次いで、第1のエッチングに必要なエッチングガスである四弗化炭素と酸素を、本実施例の場合、四弗化炭素流量:445sscm、酸素流量:555sccmとなるように、エッチングガス供給部9の流量制御機構を用いて導入し、エッチング室1に取り付けられた圧力計13からの信号により、設定圧力と同圧となるように動作する自動スロットルバルブ11を用いて、設定圧力30Paにエッチング室1の内部が安定維持するように調圧を実施した。
【0079】
このとき、上述の圧力の安定状態を維持するまでに20秒を必要とした。
次に、この状態で、自動スロットルバルブ11の開度を固定し、マイクロ波電源8からマイクロ波電力を、予め設定した電力である800Wとなるように印加し、プラズマ励起空間5でエッチングガスプラズマを発生させ、エッチングに寄与する活性ラジカル種をパンチングメタルプレート2を介して基板3上に導き、反応を開始し、図9(b)に示すように、モリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜32のエッチングを行った。
【0080】
ここで、自動スロットルバルブ11の開度を固定したのは、開始したエッチングの終点の検出を、エッチング室1の圧力変化量を用いて行うためである。
この実施例では、エッチングの終点検出を、エッチング室1の圧力変化量を用いて行なった。即ち、圧力計13からの出力を演算処理部15にて微分処理し、図2に示すような微分値曲線を得る。ここでは、エッチングが進行し、薄膜32の下地が露出し始め、基板31の表面の約90%の領域において不要な薄膜が除去された状態になる時点を終点として検出できるよう、しきい値1及びしきい値2をそれぞれ、0.1V、0.07Vに設定した。
【0081】
そして、微分値曲線がしきい値1を越え、しきい値2に到達した時点を終点とし、マイクロ波源制御部17の指示に基づいてマイクロ波電力の印加を停止し、図9(c)に示す時点で第1のエッチングを終了した。尚、この実施例において第1のエッチングは、薄膜23の厚さが400nmの場合、220秒を必要とした。
【0082】
以上説明した第1のエッチング条件(エッチングガスの総流量、ガス比、圧力、印加電力、エッチング時間)は、予め、レジスト33と薄膜32のエッチングレート比率が1/0.8となり、しかも薄膜32のエッチングレートが100nm/minとなる条件を実験により選定して設定した。
【0083】
この状態でのエッチングパターンの形状は、図9(c)に示すように、最終的な目標のテーパ角度30°に対して約40°となっているとともに、さらにエッチング形状断面が末広がりとなっていて、その幅は、目的とする幅10μmよりも約1μm広くなっている。
【0084】
第1のエッチングの終了と同時に、第1のエッチングに使用したエッチングガスと同種類のエッチングガスである四弗化炭素および酸素の流量を、第2のエッチング条件である四弗化炭素流量:200sccm、酸素流量:800sccmとなるように、エッチングガス供給部9の流量制御機構を使用して切り替え導入し、エッチング室に取り付けられた圧力計13からの信号が設定圧力と同圧となるように動作する自動スロットルバルブ11を用いて、設定圧力100Paにエッチング室1の内部が安定維維するように、調圧を実施した。
【0085】
上記圧力の安定状態を維持するまでに20秒を要した。
次に、この状態で、マイクロ波電源8からマイクロ波電力を、予め設定した電力である500Wとなるように印加し、エッチングガスプラズマを発生させ、エッチングに寄与する活性ラジカル種と基板表面との反応を開始し、図9Dに示すように、薄膜32のエッチングを引続き行った。この場合、第1のエッチング所要時間であった220秒に対して20%に相当する44秒が放電継続時間となるようにして、第2のエッチングを終了した。
【0086】
ここで、放電継続時間は、第1のエッチング終了検出時に第1のエッチング所要時間がわかるので、このデータを基に、この時間の20%に相当する時間を自動的に第2のエッチング時間として設定できるようになっている。
【0087】
以上に説明した第2のエッチング条件(エッチングガスの総流量、ガス比、圧力、印加電力)は、予め、第1のエッチングガスと同種類のガスを使用してレジスト33と薄膜32のエッチングレート比率が1/0.15となり、しかも薄膜のエッチングレートが第1のエッチング条件でのエッチングレートの33%となる条件を、実験により選定して設定した。
【0088】
この状態でのエッチングパターン形状は、図9(e)に示すように、最終的な目標のテーパ角度30°に対して基板全面において30±3°以内、設計配線幅10μmに対して基板全面において10±0.2μmとなっており、極めて良好な薄膜配線加工がされた。
【0089】
第2のエッチングの終了と同時に、エッチング室の到達真空度が例えば3Pa以下となるまで、エッチング後排気を行い、エッチング室1から基板3を搬出する。なお、エッチング後排気に要する時間は、十分な排気能力を有するブースター付ドライポンプ12を使用して10秒であった。
【0090】
以上のように、本実施例のエッチング方法によれば、従来のエッチング方法では760秒を要していたのが、324秒と大幅に短縮することができた。
また、本実施例では、第1のエッチング条件でのエッチングレートが、モリブデン・タングステン合金(MoW)薄膜32のエッチングレートと比較してほとんど無視できるガラスを下地としているので、第2のエッチング実施時に、第1のエッチングにより下地が露出した場所では、下地薄膜のエッチングが進行しない。下地薄膜のエッチングが進行しないということは、エッチング反応に寄与する活性ラジカル種が下地に消費されないことなので、第2のエッチング実施時には、合金薄膜の下地膜近傍でのエッチングレートの遅延が発生しない。したがって、第2のエッチング実施時に合金薄膜の高さ方向におけるエッチングレートの変化は生じない。このことは、図7からも明らかである。
【0091】
そこで本実施例では、第1のエッチングの終点検出時点での薄膜除去率が、実施例1に比較して5%小さい値となるように終点検出ポイントを早くしている。そうすることにより、第1のエッチング終了時点でのエッチング断面を末広がりとして、第1のエッチング終了時に約40°であったテーパ角度を、第2のエッチングによって30±3°以内に変化させ、しかも加工されたパターン幅のエッチング進行による退行が最小限に抑制されるようにして、設計配線幅10μmに対して基板全面において10±0.2μmという良好なパターン変換差での薄膜パターンの形成が可能となる。
【0092】
実施例3
本実施例は、本発明を液晶表示装置に使用される薄膜トランジスタの作製に適用した例である。
【0093】
図10および図11に示すプロセスに従って、ガラス基板上に薄膜トランジスタを作製した。
まず、図10(a)に示すように、外形寸法550×650mmのガラス基板100の一主面上に、スパッタリングにより、厚さ400nmのモリブデン・タングステン合金(MoW)膜200を形成する。次いで、図10(b)に示すように、モリブデン・タングステン合金(MoW)膜200をパターニングして、ゲート配線を含むゲート電極300を形成する。このモリブデン・タングステン合金(MoW)膜200のパターニングは、実施例2に示すように、図4に示すケミカルドライエッチング装置を用いて、図8に示すフローチャートに従って行った。
【0094】
その結果、パターニングの要する時間は、従来のエッチング方法では760秒を要していたのが、約320秒と大幅に短縮することができた。また、設計配線幅10μmに対して、基板全面において10±0.2μmという良好なパターン変換差でのゲート電極300の形成が可能となった。しかも、テーパ角度は30°の設定に対して基板各所で30±3°以内に制御されていた。
【0095】
次に、4層連続CVD法により、厚さ150nmのSiO2 膜400、厚さ150nmのSiNX 膜500、厚さ50nmの非晶質シリコン膜600、およびを厚さ300nmのSiNX 膜700を順次成膜する。
【0096】
次に、図10(d)に示すように、SiNX 膜700をパターニングして、エッチングストッパ層800を形成する。
その後、図10(e)に示すように、全面に厚さ50nmの低抵抗非晶質シリコン膜(n+ a−Si膜)900をCVD法によって形成する。そして、図11(f)に示すように、SiNX 膜500、非晶質シリコン膜600およびを低抵抗非晶質シリコン膜900を島状にパターニングする。
【0097】
次に、ITO(Indium Tin Oxide)膜をスパッタリング法により全面に形成した後、図11(g)に示すように、ITO膜をパターニングし、表示画素電極1000を形成する。更に、アルミニウム膜をスパッタリング法により全面に形成した後、パターニングし、ドレイン電極を兼ねる信号線1100、および表示画素電極1000に接続されたソース電極1200を形成して、図11(h)に示すように、薄膜トランジスタが完成する。
【0098】
以上のように、本実施例によると、ガラス基板上への薄膜トランジスタの作製において、ゲート線の形成に、本発明の2段階エッチングを用いているため、短時間で精度良く、ゲート線の形成が可能である。
【0099】
しかも、ゲート電極300が均一なテーパ状に形成されるため、ゲート絶縁膜を成すSiO2 膜400及びSiNX 膜500を介してゲート電極300と交差して配置される信号線1100の断線不良、層間の短絡に起因する製造歩留りの低下を大幅に低減することができた。
【0100】
特に、液晶TFT基板のように、大判で、かつ配線同士の間隔が粗と部分と密の部分とが存在する場合には、ローディング効果により、2段階エッチングにおける第1のエッチングの終点の検出が困難であるが、本発明の2段階エッチングでは、第1のエッチングの終点を、被処理薄膜の選択的エッチングが完了する直前とし、即ち、薄膜の下地がエッチング面積の約90%露出する時点とすることにより、ローディング効果の影響なしに、正確に、第1のエッチングの終点の検出が可能である。
【0101】
以上の実施例1〜3では、エッチング条件を2種類の切り替えとしているが、3種類以上の条件を切り替えてもよい。
また、以上の実施例では、ガス総流量を切り替えずにガス比と圧力、印加電力、エッチング時間を切り替えているが、切り替える条件は、少なくともガス総流量、ガス比、圧力、印加電力、エッチング時間のいずれかもしくはその組み合わせであればよい。
【0102】
さらに、以上の実施例ではエッチング終点検出にエッチング室の圧力変化量を用いているが、エッチング室の発光強度の変化量を用いても良く、また両者を併用するのであってもかまわない。
【0103】
このエッチング方法は、ケミカルドライエッチング方法のみに適用されるものではなく、他の例えばプラズマエッチング方法であってもよい。
また、本実施例では、第1のエッチング終点検出時点を不要薄膜が90%除去された時点としているが、80〜100%の範囲であれば、エッチング終点検出の設定を変更することも可能である。
【0104】
要するに、以上の実施例は、第1のエッチング工程において、薄膜の不要部分のエッチングを高速で実施し、エッチング未完了のエッチング断面を末広がりの形状とし、第2のエッチング工程において、薄膜の高さ方向への均一なエッチングレート勾配でのエッチングを実施することにより、加工寸法精度や、薄膜エッチング残り、エッチングパターンのテーパ角度調整を行うものである。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の薄膜のドライエッチング方法によれば、第1のエッチング工程はパターン形成に不要な薄膜の高速除去を目的としており、第2のエッチング工程は、不要な薄膜の残りの除去、加工されるパターン寸法の合わせ込み、およびテーパ角度の合わせ込みを目的としているので、短時間に良好なエッチングを行うことができる。
【0106】
また、被処理薄膜の選択的エッチングが完了する直前に、即ち、エッチングレートが大幅に変化する薄膜の下地が露出する時点において、エッチング終点検出機構により、エッチング条件を切り替えるので、従来のように同一条件でのエッチング実施時に問題となる下地の露出によるエッチング状況の変化の影響を考慮したエッチング条件の選定の必要がない。また、薄膜の厚さや、膜厚分布などが変動しても、第1のエッチング時間をエッチング終点検出機構によって管理し、常に第2のエッチング時間を第1のエッチング時間の20〜40%に設定することにより、再現性良く、良好なエッチングパターンを得ることができる。
【0107】
特に、高融点金属薄膜の配線パターンを形成する場合に、その下地として第1のエッチング条件でエッチングレートが高融点金属薄膜のエッチングレートに対して、1〜10%となる酸化珪素薄膜を用いると、第2のエッチング条件でのエッチング実施時に、下地膜の極めて近傍では活性ラジカル種が下地膜に反応するので、金属薄膜のエッチングが進行しにくくなり、金属薄膜の下地膜からの高さ方向へのエッチングレートに、下地近傍では遅く下地から遠ざかる程速いという変化を生じるが、この効果によりテーパエッチングが進行することとなり、その結果、加工精度に優れ、テーパ角度の良好な配線を短時間に形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のドライエッチング方法のフローチャート図。
【図2】エッチング終点の検出方法を説明する図。
【図3】他のエッチング終点の検出方法を説明する図。
【図4】本発明のドライエッチング方法に使用されるケミカルドライエッチング装置を概略的に示す図。
【図5】実施例1に係るドライエッチング方法のフローチャート図。
【図6】実施例1に係るドライエッチング方法を工程順に示す断面図。
【図7】下地薄膜の影響による被処理薄膜のエッチングレートの変化を示す特性図。
【図8】実施例2に係るドライエッチング方法のフローチャート図。
【図9】実施例2に係るドライエッチング方法を工程順に示す断面図。
【図10】実施例3に係る薄膜トランジスタの製造工程を示す断面図。
【図11】実施例3に係る薄膜トランジスタの製造工程を示す断面図。
【符号の説明】
1…エッチング室
2…パンチングメタルプレート
3…被処理基板
4…テーブル
5…プラズマ励起空間
6…誘電体板
7…導波管
8…マイクロ波源
9…エッチングガス供給部
10…排気配管
11…自動制御式スロットルバルブ
12…ブースター付ドライポンプ
13…圧力計
14…光センサ
15…演算処理部
16…スロットバルブ制御部
17…マイクロ波源制御部
18…ガス制御部。
Claims (15)
- 被処理薄膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、被処理薄膜を、第1のエッチング条件で、選択的にドライエッチングする第1のエッチング工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、被処理薄膜を、前記第1のエッチング条件とは異なる第2のエッチング条件で、選択的にドライエッチングする第2のエッチング工程とを具備し、前記第1のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記被処理薄膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.75〜1/1.25であり、前記第2のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記被処理薄膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.15〜1/0.25であり、前記第1のエッチング工程から前記第2のエッチング工程への切り替えは、前記マスクに対応しない前記被処理薄膜の下地の少なくとも80%が露出する時点に行われることを特徴とする薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第1のエッチング条件と第2のエッチング条件の切り替えを、前記第1のエッチング工程の終点を検出して行うことを特徴とする請求項1に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第1のエッチング条件では、前記被処理薄膜のエッチングレートが10〜300nm/minであり、前記第2のエッチング条件では、前記被処理薄膜のエッチングレートが、前記第1のエッチング条件におけるエッチングレートの25〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第2のエッチング条件におけるエッチング時間は、前記第1のエッチング条件におけるエッチング時間の20〜40%であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第2のエッチング条件における圧力は、前記第1のエッチング条件における圧力よりも10Pa以上高圧であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第1のエッチングの終点は、エッチング雰囲気の圧力変化量により検出することを特徴とする請求項2に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第1のエッチングの終点は、前記被処理薄膜の周囲の発光強度変化量により検出することを特徴とする請求項2に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 前記第1のエッチングの終点は、2種類以上の検出値の加算値を用いて検出されることを特徴とする請求項2に記載の薄膜のドライエッチング方法。
- 透明基板上に導電性膜を形成する工程と、前記導電性膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、前記導電性膜を、第1のエッチング条件で、選択的にドライエッチングする第1のエッチング工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いて、前記導電性膜を、前記第1のエッチング条件とは異なる第2のエッチング条件で、選択的にドライエッチングし、ゲート電極を形成する第2のエッチング工程とを具備し、前記第1のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記導電性膜とのエッチングレート比率が、レジストパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.75〜1/1.25であり、前記第2のエッチング条件では、前記レジストパターンと前記導電性膜とのエッチングレート比率が、レジス トパターンのエッチングレート1に対する被処理薄膜のエッチングレートで、1/0.15〜1/0.25であり、前記第1のエッチング工程から前記第2のエッチング工程への切り替えは、前記マスクに対応しない前記被処理薄膜の下地の少なくとも80%が露出する時点に行われることを特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
- 前記第1のエッチング条件と第2のエッチング条件の切り替えを、前記第1のエッチング工程の終点を検出して行うことを特徴とする請求項9に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
- 前記第2のエッチング工程に引き続いて、絶縁膜を配置する工程と、前記絶縁膜上に第2導電性膜を堆積する工程とを含むことを特徴とする請求項9に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
- 前記導電性膜の側壁テーパ角は45°よりも小さいことを特徴とする請求項11に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
- 前記導電性膜の側壁テーパ角は35°よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
- 前記第2のエッチング工程は、前記第1のエッチング工程に要する時間に基づいて設定されることを特徴とする請求項9に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
- 前記導電性膜は薄膜トランジスタのゲート電極用であることを特徴とする請求項9に記載の薄膜半導体装置の製造方法。
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