JP4166808B2 - アワビ・マンナナーゼの遺伝子 - Google Patents

アワビ・マンナナーゼの遺伝子 Download PDF

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Description

本発明は、アワビに由来する新規なマンナナーゼ、該マンナナーゼをコードする遺伝子、この遺伝子から演繹されたこの酵素のアミノ酸配列、及びこれらの利用技術に関する。
マンナンは植物の細胞壁および細胞間マトリクスを構成する構造多糖であり、マンノースを構成単位として含有している。マンナナーゼ(mannanases)はマンナンを特異的に分解する酵素(例えば、β-1,4-マンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナンなどのマンノース間のβ-1,4-結合をランダムに加水分解する酵素)で、これまでに細菌(非特許文献1: Tamaru, Y. et al., Appl. Environ. Microbiol., 61, 4454-4458 (1995); 非特許文献2: Akino, T. et al., Agr. Biol. Chem., 52, 773-779 (1988))、真菌(非特許文献3: Reese, T. et al. Can. J. Microbiol., 11, 167-183 (1965); 非特許文献4: Stalbrand, H., J. Biotechnol., 29, 229-242 (1993))、高等植物(非特許文献5: Shimahara, H. et al., Agr. Biol. Chem., 39, 301-312 (1975); 非特許文献6: Marraccini, P. et al., Planta, 213, 296-308 (2001))および軟体動物(非特許文献7: Yamaura, I. et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 57, 1316-1319 (1993); 非特許文献8: Yamaura, I. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 60, 674-676 (1996); 非特許文献9: Xu, B. et al., J. Biotechnol., 92, 267-277 (2002))から単離されている。マンナナーゼは、紅藻を摂餌する海産の巻貝などの消化液に含まれる。マンナナーゼは、マンノオリゴ糖の生産や紅藻プロトプラストの作成などに有用な酵素であるが、現在は主に微生物起源のものが使用されている。ただし、微生物のマンナナーゼは、その生産性や基質特異性、純度、反応効率などの問題もあり、特に海藻を利用した技術では広く活用されているとは言い難い。
一方、紅藻類を食物としているアワビなどの海産巻貝のマンナナーゼは比活性が高く、マンノオリゴ糖の製造や紅藻プロトプラスト作成に適していると考えられるが、原料の巻貝自身が高価なため産業的利用は困難であり、現在のところ全く利用されていない。また、軟体動物のマンナナーゼの研究例も多くなく、これまでにタマキビガイ、オオタニシ、ムラサキイガイのものがあるに過ぎない。
海藻は、わが国では古くから食用として利用されるだけでなく、種々の医薬品、工業用原料などとして様々に利用されてきたが、近年、健康食品、陸上植物にはみられない特有の生理的機能や生物活性を有する成分が含まれることが見出されるなど、その利用価値が高いと期待されている。また、海藻は、藻場として、さまざまな魚介類の産卵や棲息に好適な環境を提供するなど、海浜域における生物生産や他の生物の生息場所の形成、水産資源の育成に重要な役割を果たしており、海域の水質浄化や光合成により炭酸ガスを吸収するなど、自然環境の保持にも大きな役割を果たしていると考えられている。一般に海藻は、「藻類」に分類され、藻類は酸素を発生する光合成を行う生物の中からコケ植物、シダ植物及び種子植物を除いた残りの全てとされている。海藻は主に、緑藻類(例えば、アオノリ、ヒトエグサ、アオサ、ミルなど)、紅藻類(例えば、アマノリ類やテングサ類など)、褐藻類(例えば、コンブ、ワカメ、ヒジキ、モズクなど)の3つの群に大別される〔非特許文献10: 山田信夫著『海藻利用の科学(改訂版)』成山堂書店(2001-05-28出版; ISBN: 4425827929)及び非特許文献11: 岩槻邦男・馬渡峻輔監修 千原光雄編集『バイオディバーシティ・シリーズ 3 藻類の多様性と系統』裳華房(1999年7月; ISBN 4-7853-5826-2)〕。このように広範な利用が期待されるにもかかわらず、海藻の研究は、海域に生息することとか室内での培養に非常な困難を伴うなどのため、陸上植物などと比較して遅れているのが現状である。
食糧資源としてだけでなく産業的な利用の上からも、増大する海藻需要を満たすためにも、海藻の加工技術、海藻の育種品種改良などの技術を開発することが求められている。例えば、バイオテクノロジーを用いて細胞融合や遺伝子操作などを行う場合、細胞壁を酵素で分解し、プロトプラスト化するなどの技術が必要であるが、海藻の細胞壁は陸上植物のものとは異なり、複雑な多糖で構成されているため、多くの海藻は市販のセルラーゼ製剤では分解することができない。
アワビやサザエなどの海藻を常食としている巻貝類の消化液などの中には、多糖消化酵素が含まれていることは知られている〔非特許文献12: 安斎寛ら、Bull. Coll. Arg. & Vet. Med., Nihon Univ., No. 48, pp.119-127 (1991)〕が、原料のアワビやサザエなどの巻貝類は高価であることや、資源的に大量に得ることが難しいことから、それらから、実際に、マンナナーゼを単離することには成功していなかった。
海藻類や巻貝類を含めた軟体動物の需要が増大するにつれ、その水産加工により生じる不可食部位を大量に廃棄することが必要になっているが、近年では、その処理コスト、廃棄場所などが問題となってきている。環境への悪影響などを解決するため、こうした廃棄物を有用資源化する技術の開発が試みられているが、当該廃棄物を分解処理するに有用な酵素がないという問題があった。こうしたことから、アワビやサザエなどの巻貝類からの消化酵素を利用することは、有望であるが、前記したように、当該酵素は粗酵素の状態の、精製は不十分なもので、その諸性質も不明であり、その利用は不可能であった。
アマノリ属植物のプロトプラスト調製法のひとつとして、アワビの消化液のアセトン粉末が用いられている(非特許文献13: Polne-Fuller, M. et al., J. Phycol., 20, 609-616 (1984); 非特許文献14: Saga, N. et al., Beihefte Zur Nova Hedwigia, 83, 37-43 (1986))が、その品質は、アワビの採取時期や個体差に影響される。その結果としてプロトプラストの収量が不安定になる傾向がある。また、アセトン粉末中のどの成分がどのくらい加えられると高品質なスサビノリのプロトプラストが得られるのかなど、不明な点も未だ多い。このような問題を解消するためには、アワビよりプロトプラストの作出に関わる酵素を単離・精製し、それらの酵素作用とアマノリ属植物のプロトプラスト形成の関係を明らかにすることが重要である。しかしながら、アワビから酵素を単離・精製し、大量に調製することは、アワビの単価を考慮すると経済的に困難である。
Tamaru, Y. et al., Appl. Environ. Microbiol., 61, 4454-4458 (1995) Akino, T. et al., Agr. Biol. Chem., 52, 773-779 (1988) Reese, T. et al. Can. J. Microbiol., 11, 167-183 (1965) Stalbrand, H., J. Biotechnol., 29, 229-242 (1993) Shimahara, H. et al., Agr. Biol. Chem., 39, 301-312 (1975) Marraccini, P. et al., Planta, 213, 296-308 (2001) Yamaura, I. et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 57, 1316-1319 (1993) Yamaura, I. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 60, 674-676 (1996) Xu, B. et al., J. Biotechnol., 92, 267-277 (2002) 山田信夫著『海藻利用の科学(改訂版)』成山堂書店(2001-05-28出版; ISBN: 4425827929) 岩槻邦男・馬渡峻輔監修 千原光雄編集『バイオディバーシティ・シリーズ 3 藻類の多様性と系統』裳華房(1999年7月; ISBN 4-7853-5826-2) 安斎寛ら、Bull. Coll. Arg. & Vet. Med., Nihon Univ., No. 48, pp.119-127 (1991) Polne-Fuller, M. et al., J. Phycol., 20, 609-616 (1984) Saga, N. et al., Beihefte Zur Nova Hedwigia, 83, 37-43 (1986)
本発明は、スサビノリなどの海藻のプロトプラストの作出に利用できる酵素探索の一環としてアワビ消化液に含まれる酵素の特性を明らかにすると共に、当該酵素の遺伝子(cDNA)をクローン化し、大腸菌、酵母、動物細胞などの培養発現系で大量安価に生産可能とする手段を開発提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために、アワビ(abalones)のマンナナーゼを抽出単離して、精製し、その基本的諸性質を明らかにし、さらに研究を進め、該マンナナーゼのcDNAをクローン化することに成功して、アワビ・マンナナーゼをコードする塩基配列を解明し、アワビ・マンナナーゼのアミノ酸配列も解明することに成功した。さらに、当該アワビ由来のマンナナーゼの、クローニングされたcDNAを利用し、大量・安価に調製することを目的とし、大腸菌を用いた発現系の構築にも成功した。本発明は、本知見に基づいている。
本発明では、高純度のアワビ・マンナナーゼが調製され、かくして、該酵素の特性が解明され、さらに精製酵素の調製技術が提供された。本発明では、精製酵素を使用して、その部分アミノ酸配列が解析され、さらに、その部分アミノ酸配列に基づきオリゴヌクレオチドプライマーを合成すると共に、アワビ肝膵臓cDNAライブラリーを作成して、次に、これらのオリゴヌクレオチドプライマーとcDNAライブラリーを用いて、マンナナーゼのcDNAをPCRにより増幅し、この増幅cDNAをクローン化した後、塩基配列を解析し、アワビ・マンナナーゼの遺伝子の構造を決定することに成功し、さらに、この遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を検討することにより、クローン化したcDNAがアワビ・マンナナーゼをコードするものであることを確認した。そして、微生物宿主細胞による発現系の構築、発現産物の取得並びにその特性の確認に成功している。
本発明は、次なる態様を提供する。
〔1〕(1)巻貝のアワビに由来し、下記の特性を有するタンパク質、
(a)作用:本酵素は、ガラクトマンナンを分解して、還元糖を遊離する
(b)基質特異性:本酵素は、ローカストビーンガム(ガラクトマンナン)、コンニャクマンナン(グルコマンナン)およびゾウゲヤシマンナン(直鎖状β-1,4-マンナン)をいずれも良く分解するが、キシラン、アガロース、カルボキシメチルセルロース、デキストランは全く分解しない
(c)分子量:約39,000の単一バンド(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
(d)至適温度:35〜53℃
(e)至適pH:pH6.5〜8.5
(f)N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号3のアミノ酸配列
(g)熱安定性:pH 7.0においては40℃30分間の加熱によっても90%の活性が残存
(2)配列表の配列番号2、9又は16のアミノ酸配列を有しているポリペプチド
(3)配列表の配列番号2又は9のアミノ酸配列において1もしくは複数個(例えば、1〜10個あるいは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有しており、且つ、マンナナーゼ酵素活性を有するポリペプチド
(4)配列表の配列番号2又は9のアミノ酸配列に対して少なくとも50%より高い相同性、60%より高い相同性、70%より高い相同性、80%より高い相同性、90%より高い相同性、95%以上の相同性、あるいは少なくとも98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有しており、且つ、マンナナーゼ酵素活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されたものであることを特徴とするマンナナーゼポリペプチド。
〔2〕(1)上記〔1〕に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(2) 配列表の配列番号1、10又は図11に示されたDNAからなる群から選択された10個以上又は15個以上の連続した塩基配列を有するヌクレオチド配列又はそれと相補的な塩基配列を有するヌクレオチド配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ上記〔1〕の(1)のタンパク質又は上記〔1〕の(2)のポリペプチドの示す生物学的活性を有するか、あるいは上記〔1〕の(3)又は(4)のポリペプチドの示す生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(3) 配列表の配列番号9のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は配列番号10の塩基配列を有するポリヌクレオチドに対して少なくとも50%以上の相同性、60%以上の相同性、70%以上の相同性、80%以上の相同性、90%以上の相同性、95%以上の相同性、あるいは97%以上の相同性を有し、且つ、上記(2)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択されたものであることを特徴とするマンナナーゼポリヌクレオチド。
〔3〕配列番号10の15番塩基から1,148番塩基の塩基配列から成るマンナナーゼ遺伝子、配列番号10の69番塩基から1,145番塩基の塩基配列から成るマンナナーゼ遺伝子、あるいは配列番号15の5番塩基から1,180番塩基の塩基配列から成るマンナナーゼ遺伝子であることを特徴とする上記〔2〕に記載のポリヌクレオチド。
〔4〕上記〔2〕又は〔3〕に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
〔5〕上記〔2〕又は〔3〕に記載のポリヌクレオチド又は上記〔4〕に記載の組換えベクターで宿主細胞を形質転換されて得られたことを特徴とする形質転換された宿主細胞。
〔6〕上記〔5〕に記載の形質転換宿主細胞を培養条件下に維持して、上記〔1〕記載のタンパク質又はポリペプチドを発現せしめることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質又はポリペプチドの製造法。
〔7〕上記〔1〕に記載のタンパク質又はポリペプチド、上記〔2〕に記載のポリヌクレオチド、上記〔4〕に記載の組換えベクター及び上記〔5〕に記載の形質転換宿主細胞からなる群から選択されたものを含有することを特徴とする組成物。
〔8〕組換え又は合成タンパク質あるいはポリペプチド生産のため、配列番号1〜11からなる群から選択された配列の全部あるいはその一部の使用。
〔9〕上記〔1〕に記載のタンパク質又はポリペプチドの一部のフラグメント。
〔10〕上記〔2〕に記載のポリヌクレオチドの一部のフラグメント。
〔11〕上記〔1〕に記載のタンパク質又はポリペプチドで海藻又は植物を処理して断片化された海藻細胞又は植物細胞を取得することを特徴とする海藻又は植物のプロトプラスト作成法。
〔12〕上記〔1〕に記載のタンパク質又はポリペプチドでマンナン含有基質(例えば、海藻など)を処理して加水分解された生成物(藻食性魚貝類用餌、生食・食品加工用素材・機能性食品等用食用材料、薬用材料、肥料、土壌改良剤、染料・潤滑油・化粧品等の添加剤を含めた工業用原料、バイオマスエネルギー源などを含むし、もちろん、抗腫瘍活性や高血圧低下作用等を有する医薬品、肥料、食品、寒天、芳香・消臭剤、入れ歯の歯形の印象剤、マンノオリゴ糖なども含まれる)を取得することを特徴とするマンナン成分加水分解法。
即ち、本発明は、配列番号1の15番塩基から1,148番塩基の配列から成る遺伝子である。本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列から成り、マンナナーゼ酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列から成る遺伝子である。このようなcDNAを適当な発現ベクターに組み込むことにより、大腸菌、酵母、あるいは動物細胞などの発現系によりマンナナーゼを生産することができる。即ち、本発明は上記の遺伝子を導入することにより形質転換された微生物あるいは動物細胞発現系を含む。このような発現系には、当該分野で知られているいかなる発現ベクターを用いても良いが、宿主としては大腸菌、酵母、あるいは昆虫細胞が使用されるが、好ましくは大腸菌あるいは酵母を用いる。このような発現ベクターに上記遺伝子を組み込む方法には特段の制限は無く、通常法によって行うことができる。その際、適宜適当なプロモーター、SD配列、ターミネーター、エンハンサー等を用いることができる。また、本発明は上記遺伝子を導入した発現系である大腸菌、酵母、あるいは動物細胞を培養し、上記遺伝子を発現させることによって、得られた培養物からマンナナーゼを分離することから成るマンナナーゼの製造法を含む。
本発明は、軟体動物のマンナナーゼを産業的に利用する途を拓くものである。本発明は、新規なアワビ・マンナナーゼを精製された形態で提供しており、該アワビ・マンナナーゼのcDNAを提供することにより、同酵素が大腸菌や酵母などの微生物により安価かつ大量に生産することを可能とした。それにより、軟体動物のマンナナーゼを、マンノオリゴ糖の製造、未利用紅藻や紅藻廃棄物の分解、紅藻エキスの製造、紅藻濃縮物の製造、紅藻粉末の製造、紅藻マンナンのオリゴ糖および単糖化、紅藻種苗の生産、紅藻プロトプラストの生産など、様々な用途に使用できるようになった。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
アワビ・マンナナーゼのTOYOPEARL CM-650Mクロマトグラフィーの結果である。タンパク質の溶出は280nmの吸光度で検出し、白丸で示した。酵素活性はPerk-Johnson法で測定し、黒丸で示した。 アワビ・マンナナーゼのハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーの結果である。タンパク質の溶出と酵素活性の検出は図1と同様に行った。 アワビ・マンナナーゼのTOYOPEARL-HW55ゲル濾過の結果である。タンパク質の溶出と酵素活性の検出は図1と同様に行った。図中の写真は、本実施例で精製したアワビ・マンナナーゼのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示している。 アワビ・マンナナーゼの至適pHの測定結果である。最大活性はpH7.5に示され、このpHがアワビ・マンナナーゼの至適pHであることが分かる。 アワビ・マンナナーゼの至適温度の測定結果である。最大活性は45℃に示され、この温度がアワビ・マンナナーゼの至適温度であることが分かる。 アワビ・マンナナーゼの温度安定性の測定結果である。pH7.0において各温度で30分間加熱した後の残存活性を測定した結果、アワビ・マンナナーゼは40℃、30分間の加熱によっても90%の活性が残存し、この温度まで安定であることが分かる。 アワビ・マンナナーゼの基質特異性の測定結果である。アワビ・マンナナーゼはLocust bean gum、Glucomannan、およびβ-1,4-mannanを分解するが、アガロース、キシラン、デキストラン、およびカルボキシメチルセルロースを分解しないことがわかる。 アワビ・マンナナーゼでβ-1,4-マンナンおよびマンノオリゴ糖を分解した際の産物を、薄層クロマトグラフィーで分析した結果である。β-1,4-マンナン、マンノヘキサオース(M6)、マンノペンタオース(M5)はアワビ・マンナナーゼにより、マンノテトラオース(M4)、マンノトリオース(M3)、およびマンノビオース(M2)に分解されることが分かる。M1はマンノース。 アワビ・マンナナーゼにより紅藻スサビノリの葉状体を分解した結果である。葉状体は、10〜20細胞から成る細胞塊に分散されることが分かる。このことは、アワビ・マンナナーゼが紅藻のクローン種苗生産に有効であることを示している。 アワビ・マンナナーゼcDNAの摸式構造を示す図である。 アワビ・マンナナーゼcDNAの塩基配列と演繹アミノ酸配列を示す図である。 プラスミドベクターpET-101 DNAのマップ(環状)を示す。 組換え(リコンビナント)HdManの塩基配列(ヌクレオチド配列)及び推定されるアミノ酸配列を示す。PCRプライマーの位置及び方向を塩基配列の上側に矢印でもって示してある。 組換えHdManの発現レベルを解析した結果を示してある。誘導時間を変えて分析してある。Aは、SDS-PAGEの結果、Bは、ウエスタンブロッティングの結果を示す。Mは、マーカータンパクを示す。 発現せしめられた組換えHdManの菌体内での局在について調べた結果を示す。Aは、SDS-PAGEの結果、Bは、ウエスタンブロッティングの結果を示す。Mは、マーカータンパクを示し、レーン1は全菌体からなる画分、レーン2はペリプラズムタンパク質画分、レーン3は不溶性細胞質画分、レーン4は可溶性細胞質画分を示す。 精製処理された組換えHdManをSDS-PAGE及びウエスタンブロッティングで分析した結果を示す。Aは、SDS-PAGEの結果、Bは、ウエスタンブロッティングの結果を示す。Mは、マーカータンパクを示し、レーン1はNi-NTA アガロース(invitrogen)カラムから溶出された順序で画分1、レーン2は同画分2、レーン3は同画分3、レーン4は同画分4をそれぞれ示す。 組換えHdManの至適pHの測定結果である。-□-は酢酸緩衝液(pH4.5〜6.0)、-○-はリン酸緩衝液(pH6.0〜8.5)、そして-△-はグリシン緩衝液(pH8.5〜10.5)を示す。 組換えHdManの至適温度の測定結果である。10mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)と5mg/mlのLocust bean gumを含む1 mlの反応混液中に、組換えHdManを加え、30分間反応させ、活性を測定した。 組換えHdManの温度安定性の測定結果である。10mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)中、20-60℃で30分間加熱処理した後、残存する活性を30℃で測定した。 組換えHdManの基質特異性の測定結果である。Locust bean gum(●)、Glucomannan(■)、β-1,4-mannan(▲)、アガロース(×)、キシラン(+)、デキストラン(△)、およびカルボキシメチルセルロース(□)について、30℃、pH7.0での分解活性を調べた。活性は、基質、4mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)及び1.0Uの組換えHdManを含有する混合物を30℃でインキュベーションして行った。基質濃度は、それぞれ、locust bean gum: 0.5%、glucomannan: 0.5%、β-1,4-mannan: 0.5%、アガロース: 0.2%、キシラン: 0.2%、デキストラン: 0.2%、およびカルボキシメチルセルロース: 0.6%とした。 組換えHdManでスサビノリ(Porphyra yezoensis)の配偶体(thalli)を酵素処理した結果、得られた藻体を示す。
本発明では、巻貝由来、特にはアワビ由来の酵素マンナナーゼは、当該生物の組織、例えば、内臓や内臓滲出液、特に消化器系の内臓組織や消化液に多く分布していることから、それらから酵素含む抽出液などの粗酵素を得た後、マンナナーゼをそのまま回収する方法などを包含する手法で得ることができる。当該マンナナーゼは、中でもアワビの肝膵臓前部、中腸腺やここから滲出する体液である消化液等から粗酵素液を得ることができる。また、回収したマンナナーゼ含有液を精製する方法としては、マンナナーゼを緩衝液などの冷水溶液に加え、得られたマンナナーゼ液を吸着剤で処理するか、イオン交換あるいはゲルろ過クロマトグラフィー処理して、溶出液を得ることで精製物としてマンナナーゼを得ることができる。例えば、アワビからの粗酵素液の取得は、基本的に穏やかな条件下で実施すべきである。マンナナーゼを含む抽出液を得る場合に、ワーリングブレンダーを用いることもできるが、内臓の適当な部分に切り込みを入れ、この部分から内蔵内に緩衝液又は抽出液を静かに注入して内蔵各部や内臓滲出液と接触させるか、もしくは貝殻から切除した後の組織や組織滲出液に直接緩衝液又は抽出液を加えることによって、マンナナーゼを洗い出すように抽出することもできる。この抽出操作を、必要に応じて数回(2〜5回)繰り返して、目的とするマンナナーゼを含有する抽出液を効率よく回収することができる。この方法によれば、抽出に際して脂質や色素成分などの不純物の溶出量を低減させることができ、高いマンナナーゼ活性を示す抽出液が得られる。マンナナーゼの抽出・精製に使用する緩衝液又は抽出液としては、5〜15mM リン酸ナトリウム(pH7.0)、1〜5mM 炭酸水素ナトリウム(pH7.5)、10〜20mM Tris-HCl (pH7.5)等の中性〜弱アルカリ性に緩衝能を持つ緩衝液が使用可能である。いずれも、4〜10℃に冷却したものを用いることが好ましい。
このようにして得た粗マンナナーゼ酵素液からマンナナーゼの精製を行う場合、粗酵素液はそのままあるいは適当な緩衝液で希釈してから、イオン交換樹脂担体を充填してあるカラムを使用したイオン交換クロマトグラフィーを行う。イオン交換樹脂としては、陽イオン交換タイプのイオン交換樹脂、好ましくはTOYOPEARL CM-650M (東ソー社製)などのカルボキシメチル基を有している担体を使用する陽イオン交換クロマトグラフィー(cation exchange chromatography)が挙げられる。当該陽イオン交換クロマトグラフィー処理は繰り返し行うこともできる。次に、溶出されたマンナナーゼ含有画分は、集められて、適宜濃縮処理されてよい。マンナナーゼ含有液は、吸着剤、例えばハイドロキシルアパタイト(和光純薬工業(株)製)などを使用したカラムクロマトグラフィーを行って精製される。当該吸着剤に吸着させた後、中性pHに調整した、イオン強度0.1〜0.15のNaCl、KCl、Na2HPO4などの溶離液又は緩衝液を加えて、マンナナーゼを吸着剤から溶出させる。吸着剤からの溶出は、直線濃度勾配で行うと、より高純度のマンナナーゼを得ることができる。クロマトグラフィー処理は繰り返し行うこともできる。次に、溶出されたマンナナーゼ含有画分は、集められて、適宜濃縮処理されてよい。次いで、マンナナーゼ含有液は、ゲル濾過クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)により精製される。ゲル濾過の担体としては、親水性ビニルポリマーを基材としたものを好適に使用でき、例えば、TOYOPEARL HW-50F(東ソー社製)などを使用できる。得られたマンナナーゼ含有画分は、集められて、適宜濃縮処理されてよい。こうして得られたマンナナーゼ含有液をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけたところ、分子量約39,000の単一バンドを示すことから、精製アワビ・マンナナーゼは、十分に純品標品であり、その分子量はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動より見て、36kDa〜42 kDa程度であり、酵素は単一のポリペプチドよりなる分子であると考えられる。該アワビ・マンナナーゼのアミノ酸配列を解析した結果、N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号:3 (SEQ ID NO: 3)を有している。該酵素の内部領域の部分アミノ酸配列としては、配列表の配列番号:4〜6 (SEQ ID NO: 4〜6)に記載の配列を有する。
該アワビ・マンナナーゼ精製標品を使用しての酵素特性を調べた結果、次のようなものである:
至適pHは、6.5〜8.5、より好適には6.8〜8.0であり、より具体的には、至適pHは7.5付近である。
至適温度は、35〜53℃、より好適には40〜50℃であり、より具体的には、至適温度は約45℃である。
該アワビ・マンナナーゼは、pH 7.0においては40℃30分間の加熱によっても90%の活性が残存するという熱安定性を有している。
該酵素は、表2に挙げられた試薬の添加で、表2に示す相対活性(%)を示す。すなわち、マンナナーゼの活性はAg+によってほぼ100%阻害され, Co2+, Fe2+, Cu2+によって40〜50%阻害される。
該酵素の基質特異性は、ローカストビーンガム(Locust bean gum; ガラクトマンナン)、コンニャク(Konjak)マンナン(グルコマンナン)およびゾウゲヤシ(ivory nut)マンナン(直鎖状β-1,4-マンナン)に作用させた結果、それらはいずれも良く分解される(図7)。しかし、キシラン、アガロース、カルボキシメチルセルロース、デキストランは全く分解しない。また、Locust bean gumを基質とした際のKm値は約0.8 mg/mlと見積られるというものである。
ところで、ローカストビーンガムとはカロブ樹(carob tree: Ceratonia siliqua)の種子の胚乳部分より製造される水溶性天然高分子多糖類で、主成分はガラクトマンナンである。
ゾウゲヤシマンナンとはゾウゲヤシ(Phytelephas macrocarpa)の実より製造される天然多糖類で、主成分は直鎖状β-1,4-マンナンである。
アワビ・マンナナーゼの比活性は11.5U/mgを得ることが可能(マンナナーゼ活性は、5mg/mlのLocust bean gum(ガラクトマンナン)を含む1mlの10 mM Na-phosphate (pH 7.0)中30℃で測定したが、マンナナーゼ作用により遊離した還元糖をPark-Johnson法により定量するもので、1分間の反応により1μmoleのマンノースに相当する還元糖を生成する酵素量を1 Uとした)。
本明細書において「アワビ・マンナナーゼポリペプチド」(又はアワビ・マンナナーゼタンパク質)とは、それぞれ既知のマンナナーゼとは相違するアミノ酸配列を有するものであって、触媒活性領域(ドメイン)及び/又はマンナン結合領域(ドメイン)を有しているペプチドであって、本発明で開示されている新規なペプチドを指している。該マンナナーゼは、少なくとも触媒領域(ドメイン)を有しており、マンノース含有多糖を分解する活性を示すということを特徴としている。上記した特徴的な領域(ドメイン)の全部あるいはその一部をその一体性を損なわない範囲で保有するものは、本発明で意図するマンナナーゼの範囲内にあると考えてよい。本発明の代表的なアワビ・マンナナーゼポリペプチドとしては、配列表の配列番号:1(SEQ ID NO:1)あるいは配列番号:10(SEQ ID NO:10)のDNAでコードされて産生されるポリペプチド、例えば配列表の配列番号:2(SEQ ID NO:2)、配列番号:9(SEQ ID NO:9)あるいは配列番号:11(SEQ ID NO:11)のアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列を有するポリペプチド(トランケーションミュータントを含む)が挙げられ、例えば、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列のうちの少なくとも5〜377個(あるいは360〜377個又は5〜358個)の連続したアミノ酸残基を有し且つ酵素活性あるいは同等の抗原性などといった実質的に同等の生物学的活性を有するもの、あるいはそれらの特徴を有し且つ配列表のSEQ ID NO:2に存在する各ドメインのいずれか一つと少なくとも50%より高い相同性、あるいは少なくとも60%より高い相同性、あるいは少なくとも70%より高い相同性、あるいは少なくとも80%より高い相同性、あるいは少なくとも90%より高い相同性、あるいは少なくとも95%以上の相同性、あるいは少なくとも98%以上の相同性を有するものなどで、新規なものが挙げられる。
本発明のアワビ・マンナナーゼポリペプチドとしては、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列又はSEQ ID NO:11のアミノ酸配列の、全部又は一部を含む連続したアミノ酸残基、あるいは該SEQ ID NO:2, 9及び11のアミノ酸配列のうちの連続したアミノ酸残基5個以上、好ましくは10個以上、また好ましくは20個以上、さらに好ましくは40個以上、より好ましくは60個以上、また好ましくは80個以上、さらに好ましくは100個以上、もっと好ましくは120個以上、また好ましくは140個以上、さらに好ましくは160個以上、もっとも好ましくは180個以上、また好ましくは200個以上を有するものが挙げられる。本発明のアワビ・マンナナーゼ関連ポリペプチドとしては、SEQ ID NO:2, 9及び11から成る群から選ばれたアミノ酸配列の一部または全部を有していてもよい(開始コドンに対応するMetを欠いていてもよい)。こうした配列を有するものは、トランケートされたポリペプチド(トランケーションミュータント)を含めてすべて包含されてよい。アワビ・マンナナーゼのトランケーションミュータントポリペプチドとしては、(a) SEQ ID NO:9のアミノ酸配列のポリペプチドに関して、そのN末端側より、1〜100個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜50個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜30個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜25個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜20個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜15個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜10個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、あるいは、1〜5個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、並びに、(b) SEQ ID NO:9のアミノ酸配列のポリペプチドに関して、そのC末端側より、1〜100個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜50個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜30個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜25個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜20個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜15個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、1〜10個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるもの、あるいは、1〜5個のアミノ酸残基を欠失せしめてある残りのポリペプチドからなるものから選択されたものを包含してよい。
本発明では、「遺伝子組換え技術」(又は「遺伝子工学的手法」ともいう)を利用して所定の核酸を単離・配列決定したり、組換え体を作製したり、所定のペプチドを得ることができる。本明細書中使用できる遺伝子組換え技術としては、当該分野で知られたものが挙げられ、例えばJ. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2nd Edition, 1989; ISBN 0-87969-309-6 & 3rd Edition, 2001; ISBN 0-87969-577-3); Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc. (updatable since 1987, Last updated: April, 2003; ISBN: 0-471-50338-X); D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995);日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、東京化学同人 (1992); "Methods in Enzymology" series, Academic Press, New York、例えば R. Wu ed., ibid., Vol. 68 (Recombinant DNA), (1980); R. Wu et al. ed., ibid., Vol. 100 (Recombinant DNA, Part B) & 101 (Recombinant DNA, Part C), (1983); R. Wu et al. ed., ibid., Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), (1987); J. H. Miller ed., ibid., Vol. 204, (1991); R. Wu ed., ibid., Vol. 216 (Recombinant DNA, Part G), (1992); R. Wu ed., ibid., Vol. 217 (Recombinant DNA, Part H) & 218 (Recombinant DNA, Part I), (1993); P. M. Conn ed., ibid., Vol. 302 (Green Fluorescent Protein), (1999); S. Weissman ed., ibid., Vol. 303 (cDNA Preparation and Characterization), (1999); Miriam M. Ziegler and Thomas O. Baldwin ed., ibid., Vol. 305 (Bioluminescence and Chemiluminescence, Part C), (2000); Joseph C. Glorioso and Martin C. Schmidt ed., ibid., Vol. 306 (Expression of Recombinant Genes in Eukaryotic Systems), (1999); Jeremy Thorner, Scott D. Emr and John N. Abelson ed., ibid., Vol. 326 (Applications of Chimeric Genes and Hybrid Proteins, Part A), Vol. 327 (Applications of Chimeric Genes and Hybrid Proteins, Part B) & Vol. 328 (Applications of Chimeric Genes and Hybrid Proteins, Part C), (2000); Christine Guthrie and Gerald R. Fink ed., ibid., Vol. 350 (Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology, Part B) & Vol. 351 (Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology, Part C), (2002); Dan E. Robertson and Joseph P. Noel ed., ibid., Vol. 388 (Protein Engineering), (2004)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法が挙げられる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
本明細書中、「相同性」とは、ポリペプチド配列(あるいはアミノ酸配列)又はポリヌクレオチド配列(あるいは塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同志の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出することができる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である (例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988); Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994); von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press, New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M-Stockton Press, New York, (1991) 等) 。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin, J. Bishop (Ed.), Guide to Huge Computers, Academic Press, San Diego, (1994); Carillo, H. & Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) 等に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ (Devereux, J. et al., Nucleic Acids Research, 12(1): 387 (1984))、BLAST (Basic Local Alignment Search Tool, Altschul S.F. et al., J. Mol. Biol. Vol. 215, pp. 403-410 (1990); 例えば、protein-protein BLAST (BLASTP), nucleotide-nucleotide BLAST (BLASTN), bl2seq program (v. 2.0.12); Tatusova TA and Madden TL., FEMS Microbiol Lett., 174(2):247-50 (1999 May 15)など)、FASTA (Atschul, S. F. et al., J. Mol. Biol., 215: 403 (1990))等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、以下に記載するような如何なるポリペプチドを指すものであってもよい。ポリペプチドの基本的な構造は周知であり、当該技術分野において非常に数多くの参考書及びその他の刊行物に記載がある。こうしたことに鑑み、本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合又は修飾したペプチド結合により互いに結合しているような2個又はそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又は任意のタンパク質を意味する。本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、当該分野において、例えばペプチド、オリゴペプチドあるいはペプチドオリゴマーとも称せられる短い鎖のもの、及びタンパク質と一般的に言われ、多くの形態のものが知られている長い鎖のものの両方を通常意味してよい。ポリペプチドは、しばしば、通常、天然型アミノ酸(天然に存在しているアミノ酸: あるいは遺伝子でコードされるアミノ酸)と称されるアミノ酸以外のアミノ酸を含有していてもよい。ポリペプチドは、また末端アミノ酸残基を含めて、その多くのアミノ酸残基が翻訳された後にプロセッシング及びその他の改変(あるいは修飾)されるといった天然の工程によるのみならず、当業者に周知の化学的改変技術によっても、上記のポリペプチドはそれが改変(修飾)できることは理解されよう。該ポリペプチドに加えられる改変(修飾)については、多くの形態のものが知られており、それらは当該分野の基礎的な参考書及びさらに詳細な論文並びに多数の研究文献にも詳しく記載されており、これらは当業者に周知である。幾つかのとりわけ常套的な改変・修飾としては、例えばアルキル化、アシル化、エステル化、アミド化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、リン酸化、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化、水酸化及びADP-リボシル化等が挙げられ、例えばT. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, Second Edition, W. H. Freeman and Company, New York, (1992); B.C.Johnson (Ed.), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, Academic Press, New York, (1983); Christopher T. Walsh, Posttranslational Modifications of Proteins, Robert & Company Pub. (ISBN: 0-9747077-3-2); Seifter et al., "Analysis for Protein Modifications and nonprotein cofactors", Methods in Enzymology, 182: 626-646 (1990); Rattan et al., "Protein Synthesis, Posttranslational Modification and Aging", Ann. N. Y. Acad. Sci., 663: p.48-62 (1992)等の記載を参照できる。
本明細書中、「ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(polymerase chain reaction)」又は「PCR」とは、一般的に、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うようなサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR法で用いられるプライマーは、鋳型内部の増幅されるべきヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、該増幅されるべきヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用することができる。5'端側のプライマーとしては、少なくとも開始コドンを含有するか、あるいは該開始コドンを含めて増幅できるように選択することができるし、好ましい。また、3'端側のプライマーとしては、少なくともターミネーションコドン(ストップコドン)を含有するか、あるいは該ターミネーションコドンを含めて増幅できるように選択することが好ましい。プライマーは、通常、5個以上の塩基、好ましくは10個以上の塩基からなるオリゴヌクレオチド、さらに好ましくは15〜45個の塩基、より好ましくは18〜35個の塩基からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。本PCRには、逆転写PCR (polymerase chain reaction coupled reverse transcription; RT-PCR), RACE (cDNA末端の迅速増幅; rapid amplification of cDNA ends), 逆PCR (reverse PCR)などの技術も含まれる。
PCR反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えば R. Saiki, et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki, et al., Science, 239: 487 (1988); H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press (1989); D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); M. A. Innis et al. ed., "PCR Protocols: a guide to methods and applications", Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (Ed.), "PCR: a practical approach", IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002 (1988);佐々木博己編集、実験医学別冊注目のバイオ実験シリーズ〔ここまでできるPCR最新活用マニュアル〕、羊土社、2003年(ISBN 4-89706-412-0)などに記載された方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR 法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもでき、LA PCR (Long and Accurate PCR)(TAKARA BIO Inc.)、Hot Start PCR法(TAKARA BIO Inc.)も含まれる。
PCR反応は、代表的な場合には、例えば鋳型(例えば、mRNAを鋳型にして合成されたDNA; 1st strand DNA)と所定の遺伝子に基づいてデザインされたプライマーとを、10×反応緩衝液 (DNAポリメラーゼに添付されている)、dNTPs (デオキシヌクレオシド三リン酸dATP, dGTP, dCTP, dTTPの混合物)、Taq DNA Polymerase, TaKaRa Ex TaqTM, TaKaRa LA TaqTM, PyrobestTM DNA Polymerase (TAKARA BIO Inc.)などから選択されたDNAポリメラーゼ及び脱イオン蒸留水と混合する。混合物を、例えば、Applied Biosystems 9800 Fast サーマルサイクラー、GeneAmpTM 9700 PCR system やGeneAmpTM 2400 PCR system (Applied Biosystems 社)などの自動サーマルサイクラーを用いて一般的なPCRサイクル条件下にそのサイクルを25〜60回繰り返すが、増幅のためのサイクル数は適宜目的に応じて適当な回数とすることができる。PCR サイクル条件としては、例えば、変性90〜95℃ 5〜100秒、アニーリング40〜60℃ 5〜150秒、伸長65〜75℃ 30 〜300秒のサイクル、好ましくは変性 94℃ 15秒、アニーリング 58℃ 15秒、伸長 72℃ 45秒のサイクルが挙げられるが、アニーリングの反応温度及び時間は適宜実験によって適当な値を選択できるし、変性反応及び伸長反応の時間も、予想されるPCR産物の鎖長に応じて適当な値を選択できる。アニーリングの反応温度は、通常プライマーと鋳型DNAとのハイブリッドのTm値に応じて変えることが好ましい。伸長反応の時間は、通常1000bpの鎖長当たり1分程度がおおよその目安であるが、より短い時間を選択することも場合により可能である。
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドを含めたポリヌクレオチド(又は核酸)は、David M.J. Lilley and James E. Dahlberg ed., "Methods in Enzymology", Vol. 211 (DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA), Academic Press, New York (1992, ISBN: 0-12-182112-9) (M. H. Caruthers, G. Beaton, J. V. Wu and W. Wiesler, "Chemical synthesis of deoxyoligonucleotides and deoxyoligonucleotide analogs", pp. 3-20 など)に記載された既知の方法、例えば、フォスフォトリエステル法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 5956 (1984))、フォスフォジエステル法、フォスファイト法、フォスフォアミダイト法(Nucleic Acid Res., 12: 4539 (1984))、フォスフォネート法(Nucleic Acid Res., 14: 5399 (1986))などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、自動化された合成装置を用いて行うことができ、該装置は市販されており、例えば、Applied Biosystems 3400 DNA合成機、ABI 3900 ハイスループット核酸合成機(Applied Biosystems社)、H-8 DNA 合成装置(和光純薬工業)などが挙げられる。該オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよいし、場合によっては、マーカーの付された塩基を含有していてよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴDNA、オリゴRNA等のオリゴヌクレオチド、および該オリゴヌクレオチドの誘導体(誘導体オリゴヌクレオチド)等が包含されてよい。
ハイブリダイゼーション技術は、相補的な一本鎖の核酸をハイブリダイズさせること及びそれを利用するもので、所定の核酸を同定したり、単離したり、鎖の長さや核酸の量を解析したり、所定遺伝子の解析、遺伝子制御についての情報取得などをするのに利用することができる。該ハイブリダイゼーションは、上記「遺伝子組換え技術」を開示する文献記載の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができ、例えば、J. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2nd Edition, 1989 & 3rd Edition, 2001)などに記載されている方法に準じて行うことができる。典型的なハイブリダイゼーション利用技術としては、サザンブロティング、ノーザンブロティング、ドット/スロットブロティング、コロニー/プラークブロティング、in situ ハイブリダイゼーション、DNAアレイを含めたマイクロアレイなどが挙げられる。代表的な手法では、例えば、ハイブリダイゼーションは、DNA, RNAなどの核酸を含有しているサンプルをナイロンフィルター、ニトロセルロースフィルターなどの膜を含めた担体に転写せしめ、必要に応じ変成処理、固定化処理、洗浄処理などを施した後、その担体(例えば、膜など)に転写せしめられたものを、必要に応じ変成させた標識プローブDNA 断片と、ハイブリダイゼーション用緩衝液中で反応させて行われる。
ハイブリダイゼーション処理は、普通約35〜約80℃、より好適には約50〜約65℃で、約15分間〜約36時間、より好適には約1〜約24時間行われるが、適宜最適な条件を選択して行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーション処理は、約55℃で約18時間行われる。ハイブリダイゼーション用緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、Rapid-hyb Hybridization Buffer(Amersham Biosciences社)などを用いることができる。転写した担体(例えば、ポジティブチャージナイロンメンブレンなど)の変成処理としては、アルカリ変性液を使用する方法が挙げられ、その処理後中和液や緩衝液で処理するのが好ましい。また担体(例えば、膜など)の固定化処理としては、固定化法としては、例えば、UV法、アルカリ法、ベーキング法などが挙げられる。UV法では、UVクロスリンカーなどを使用でき、ブロットした面をUV照射する。アルカリ法では、0.4 N NaOH溶液に浸したろ紙などの上に、ブロットしたメンブレンの面を置き、1〜10分処理するなどし、処理後は十分な中性バッファー(2×SSCなど)でメンブレンを洗浄して中性にする。ベーキング法では、普通約40〜約100℃、より好適には約70〜約90℃で、約15分間〜約24時間、より好適には約1〜約4時間ベーキングすることにより行われるが、適宜好ましい条件を選択して行うことができる。例えば、フィルター、メンブレンなどの担体をろ紙で軽くはさみ、約80℃のオーブンで30分〜2時間インキュベートするなどで固定化が行われる。転写した担体(例えば、膜など)の洗浄処理としては、当該分野で普通に使用される洗浄液、例えば1M NaCl、1mM EDTAおよび0.1% sodium dodecyl sulfate (SDS)含有50mM Tris-HC1緩衝液,pH8.0などで洗うことにより行うことができる。ナイロンフィルターなどの膜を含めた担体としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、Hybond-N+ (Amersham Biosciences社)などのメンブレンなどが挙げられる。
上記アルカリ変性液、中和液、緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、アルカリ変性液としては、例えば、0.5M NaOHおよび1.5M NaClを含有する液などを挙げることができ、中和液としては、例えば、1.5M NaCl含有0.5M Tris-HCl緩衝液, pH8.0などを挙げることができ、緩衝液としては、例えば、2×SSPE(0.36M NaCl、20mM NaH2PO4および2mM EDTA)などを挙げることができる。またハイブリダイゼーション処理に先立ち、非特異的なハイブリダイゼーション反応を防ぐために、必要に応じて転写した担体(例えば、膜など)はプレハイブリダイゼーション処理することが好ましい。このプレハイブリダイゼーション処理は、例えば、プレハイブリダイゼーション溶液〔50% formamide、5×Denhardt's溶液(0.2 %ウシ血清アルブミン、0.2 % polyvinyl pyrrolidone)、5×SSPE、0.1% SDS、100μg/ml 熱変性サケ精子DNA〕などに浸し、約35〜約50℃、好ましくは約42℃で、約4〜約24時間、好ましくは約6〜約8時間反応させることにより行うことができるが、こうした条件は当業者であれば適宜実験を繰り返し、より好ましい条件を決めることができる。ハイブリダイゼーションに用いる標識プローブDNA断片の変性は、例えば、約70〜約100 ℃、好ましくは約100 ℃で、約1〜約60分間、好ましくは約 5分間加熱するなどして行うことができる。
ハイブリダイゼーション完了後、フィルターなどの担体を十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をしたDNA断片以外の核酸を取り除くなどしてから検出処理をすることができる。例えば、メンブレンなどを十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をした標識プローブDNA断片以外の標識プローブを取り除くなどされる。フィルターなどの担体の洗浄処理は、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いて行うことができ、例えば、0.1% SDS含有0.5×SSC (O.15M NaCl、15mM クエン酸)溶液などで洗うことにより実施できる。
ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で行うことができるが、本明細書でストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度に関し、約15〜約50mM、好ましくは約19〜約40mM、より好ましくは約19〜約20mMで、温度については約35〜約85℃、好ましくは約50〜約70℃、より好ましくは約60〜約65℃の条件を示す。例えば、ストリンジェントな条件のハイブリダイゼーションとは、DNAを固定したフィルターを使用し、0.7〜1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、約65℃で核酸鎖を互いに反応させた後、(0.1〜2)×SSC溶液(1×SSC液=150mmol/L NaCl及び15mmol/Lクエン酸ナトリウム含有水溶液)を用いて、約65℃で当該フィルターを洗浄処理することを含むものであってよい。
ハイブリダイズした核酸は、代表的にはオートラジオグラフィーにより検出することができるが、当該分野で用いられる方法の中から適宜適切な手法を選択して検出などされる。プローブとしては、DNA、オリゴDNA、RNAなどを好適に使用でき、[α-32P]などの放射性同位体(RI)標識化合物(例えば、redivue [α-32P]dCTP(Amersham Biosciences社)など)、耐熱性アルカリフォスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセイン(FI)標識ヌクレオチド(例えば、FI標識dUTPなど)、ビオチン−アビジン系標識ヌクレオチド、ジゴキシン標識ヌクレオチドなどを使用して標識することができるが、これらには限定されず、当該分野で知られたものあるいはその改変体を選択して使用することもできる。標識方法としては、直接標識、間接標識、3'-末端標識(ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ(TdT)などを使用する)、5'-末端標識(T4 ポリヌクレオチド・キナーゼなどを使用する)、ランダムプライム法、ニックトランスレーション法、RNAトランスクリプション法(RNAポリメラーゼなどを使用する)などが挙げられるが、当該分野で知られたものあるいはその改変法などを制限なく適用できる。
検出したシグナルに相当する核酸バンドは、必要であれば、適切な緩衝液、例えば、SM溶液(100mM NaClおよび10mM MgSO4含有50mM Tris-HCl緩衝液、pH7.5)などに懸濁し、ついでこの懸濁液を適度に希釈するなどして、それから所定の核酸を単離・精製したり、そしてさらなる増幅処理にかけることができる。
本明細書において、得られたPCR産物などの核酸(DNAを含む)は、通常1〜2%アガロースゲル電気泳動にかけて、特異なバンドとしてゲルから切り出し、例えば、SUPRECTM-EZ(タカラバイオ(株))などの市販の抽出キットを用いて抽出する。抽出されたDNAは適当な制限酵素で切断処理されることができ、必要に応じ精製処理したり、さらには必要に応じ5'末端をT4ポリヌクレオチド・キナーゼなどによりリン酸化した後、pUC18などのpUC系ベクターといった適当なプラスミドベクターにライゲーションし、適当なコンピテント細胞を形質転換する。クローニングされたPCR産物はその塩基配列を解析される。PCR 産物のクローニングには、例えば、p-Direct (Clontech社), pCR-ScriptTM SK(+) (Stratagene社), pGEM-T (Promega社), pAmpTM (Gibco-BRL社)などの市販のプラスミドベクターを用いることが出来る。宿主細胞の形質転換は、宿主形質転換可能な手法であれば制限なく適用できるが、当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができ、例えばファージベクターを使用したり、カルシウム法、ルビジウム/カルシウム法、カルシウム/マンガン法、TFB 高効率法、FSB 凍結コンピテント細胞法、迅速コロニー法、エレクトロポレーションなどで行うことができる(D. Hanahan, J. Mol. Biol., 166: 557, 1983 など)。目的とするDNAを単離・取得するためには、RT-PCR, 3'-RACE, 5'-RACEを適用することが出来る。RACEは、例えば、M. A. Innis et al. ed., "PCR Protocols" (M. A. Frohman, "a guide to methods and applications"), pp.28-38, Academic Press, New York (1990)などに記載された方法に従って行うことができる。
所定の核酸を保有する、ファージ粒子、組換えプラスミド、ファージミド、組換えベクターなどは、当該分野で普通に使用される方法でそれを精製分離することができ、例えば、グリセロールグラジエント超遠心分離法(T. Maniatis et al. ed., "Molecular Cloning, a laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory, 2nd ed. 78, 1989)、電気泳動法などにより精製することができる。ファージ粒子などからは、当該分野で普通に使用される方法でDNAを精製分離することができ、例えば、得られたファージなどをTM溶液(10mM MgSO4含有50mM Tris-HCl 緩衝液、pH7.8)などに懸濁し、DNase IおよびRNase Aなどで処理後、20mM EDTA、50μg/ml Proteinase K及び0.5 %SDS混合液などを加え、約65℃、約1時間保温した後、これをフェノール抽出ジエチルエーテル抽出後、エタノール沈殿によりDNAを沈殿させ、次に得られたDNAを70%エタノールで洗浄後乾燥し、TE溶液(10mM EDTA含有10mM Tris-HC1緩衝液、pH8.0)に溶解するなどして得られる。
本発明の標的酵素のポリペプチドのアミノ酸配列解析より得られた情報を基にして適当なプライマー(又はプローブ)を設計し、前記プライマー(又はプローブ)と、目的とする生物〔例えば、軟体動物(例えば、アワビなど)〕由来の試料(例えば、総RNA若しくはpoly(A)+ RNA画分(mRNA画分)、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてPCR又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得することができるし、さらに、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドが、例えば、実施例1に記載の方法により、マンナナーゼ活性を示すことを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。一旦、本発明の標的酵素ポリペプチドのアミノ酸配列の情報及び/又は当該酵素ポリペプチドをコードする核酸(又はポリヌクレオチド)の塩基配列の情報が得られたなら、該情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブを利用し、例えば、(1)PCRを用いた方法、(2)常法の遺伝子組換え技術を用いる方法(すなわち、cDNAライブラリーで形質転換した形質転換株から、所望のcDNAを含む形質転換株を選択する方法)、又は(3)化学合成法などで該核酸(又はポリヌクレオチド)を製造することができるが、該製造方法は、特にそれに限定されるものではない。一つの具体的な態様では、標的とする所定の塩基配列からなるDNAが一旦取得され、その塩基配列が決定された後は、該塩基配列の5'端および3'端の塩基配列に基づいたプライマー(縮重プライマーを含む)を調製し、当該軟体動物の組織または細胞に含まれるmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーを用いてDNAの増幅を行うことにより、該標的DNAを取得することができる。また、標的の所定塩基配列よりなるDNAの全長あるいは一部をプローブとして、軟体動物の組織または細胞に含まれるmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーに対してコロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、該標的DNAを取得することができる。決定されたDNAの塩基配列に基づいて、ホスフォアミダイト法などを利用して合成でき、例えば、ABI 3900 ハイスループット核酸合成機(Applied Biosystems社)等のDNA合成機で化学合成することにより、該標的DNAを取得することもできる。
本発明のDNAの調製は、mRNAから製造することができる。mRNAは、市販のもの(例えば、Stratagene社, Invitrogen社, Clontech社など)を用いてもよいし、組織(例えば、肝臓、膵臓など)又は細胞から調製(精製)してもよい。組織又は細胞から全RNAを調製する方法としては、グアニジン・HCl法、チオシアン酸グアニジン(イソチオシアン酸グアニジン)法、チオシアン酸グアニジン−塩化セシウム遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホット・フェノール法〔Methods in Enzymology, 152, 215-261 (1987)〕、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法〔Methods in Enzymology, 154, 3 (1987)〕、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロフォルム(acid guanidinium thiocyanate- phenol/chloroform; AGPC)法〔Analytical Biochemistry, 162, 156-159 (1987)、村松正實及び山本雅編、実験医学別冊(改訂第4版)〔新遺伝子工学ハンドブック〕、pp.20-23及びpp.32-34、羊土社(2003)〕等が挙げられる。また、全RNAからpoly(A)+ RNAとしてmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法(J. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989; ISBN 0-87969-309-6))等が挙げられる。所望により、ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAを更に分画することもできる。さらに、市販のキット、例えば、TRIzol Reagent (Invitrogen Corp.社)、ConcertTM RNA Purification Products, FastTrackTM mRNA Isolation Kit(Invitrogen社)、QuickPrep Total RNA Extraction Kit及びRNA Extraction Kit (Amersham Biosciences社)、EASYPrep RNA、OligotexTM-dT30 <Super>、OligotexTM-dT30 <Super> mRNA Purification Kit及びOligotexTM-MAG mRNA Purification Kit (TAKARA BIO Inc.)、ISOGEN及びPoly(A)+ Isolation Kit from Total RNA(ニッポン・ジーン(株))等を用いることによりmRNAを調製できる。また、mRNAを抽出しなくても、市販されている抽出精製済みのmRNAを用いることもできる。
調製した組織mRNA又は細胞mRNAからcDNAあるいはcDNAライブラリーを作製する。調製されたpoly(A)+ RNA画分を、例えば、ランダムプライマー、オリゴdTプライマー、及び/又はカスタム合成したプライマーの存在下で、逆転写酵素(reverse transcriptase)反応を行ない、ファーストストランドcDNAを合成する。この合成は、常法によって行なうことができるし、市販のキット、例えば、MarathonTM cDNA Amplification Kit (Clontech社)、GeneRacerTM Kit (Invitrogen社)などを使用して合成できる。cDNA作製法としては、例えば、好適にデザインされたオリゴdTプライマー存在下、dNTPs及びその他の試薬を含有している反応用混合物中で、鋳型poly(A)+ RNAをAMV Rreverse Transcriptaseでもって逆転写することでDNAファーストストランド合成ができる。得られたDNA:RNAハイブリッドを鋳型に、セカンドストランド合成がなされる。該セカンドストランド合成は、dNTPs及びその他の試薬を含有している反応用混合物中で、前記ファーストストランド合成で得られたDNA:RNAハイブリッド含有液にセカンドストランド合成酵素カクテル(例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAリガーゼ、大腸菌RNase Hを含有している)を反応させて、セカンドストランドcDNAを合成し、その後T4 DNAポリメラーゼを作用させてds cDNAにブラントエンドを作る。ブラントエンド化されたds cDNAには、T4 DNAリガーゼの作用で、以下のRACEにおいて好適なようにデザインされたアダプターを付加(ライゲーション)せしめる。得られたアダプターがライゲーションされたcDNAを鋳型に、標的酵素ポリペプチドのアミノ酸配列(代表的には部分アミノ酸配列)の情報を基にして設計されたプライマー及び該アダプターにハイブリダイス可能なプライマーを使用して、RACE PCRを行なって、5'cDNA断片及び3'cDNA断片を作製する。プライマーは縮重プライマーを好適に使用できる。5'cDNA断片は、5'-RACE PCRにより得られた5'-RACE産物の特性決定により、3'cDNA断片は、3'-RACE PCRにより得られた3'-RACE産物の特性決定により、それぞれ確認でき、その配列解析の結果に基づき、クローニングにより全長cDNAを作製できる。所望により、前記DNAを制限酵素等で切断し、接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。また、ゲノムDNAから目的とするDNA断片を得ることもできる。
cDNAライブラリー作製法としては、例えば、J. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2nd Edition, 1989; ISBN 0-87969-309-6 & 3rd Edition, 2001; ISBN 0-87969-577-3)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばSuperScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning (with GatewayTM Technology) (Invitrogen Corp.社)、TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Amersham Biosciences社)、cDNA Synthesis Kit (ZAP-cDNATM Synthesis Kit) (Stratagene社)、cDNA Library Construction Kit (TAKARA BIO Inc.)を用いる方法等が挙げられる。
cDNAライブラリーを作製するためのクローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、Uni-ZAPTM XR, ZAP ExpressTM及びHybriZAPTM 2.1 vectors〔Stratagene社〕、pBluescript II SK(+)〔Nucleic Acids Research, 17, 9494 (1989)〕、λDASHTMII、λFIXTMII、λEMBL3、λZAPTMII(Stratagene社)、λgt10、λgt11、λTriplEx2(BDバイオサイエンス・クロンテック(Clontech)社)、pcD2〔Mol. Cell. Biol., 3, 280 (1983)〕およびpUC18〔Gene, 33, 103 (1985)〕等を挙げることができる。
宿主微生物としては、大腸菌(Escherichia coli: E. coli)に属する微生物であればいずれのものでも用いることができるが、通常はE. coli K12株又はそれ由来のものである。具体的には、E. coli XL1-Blue MRF'〔Stratagene社、Strategies, 5, 81 (1992)〕、E. coli C600〔Genetics, 39, 440 (1954)〕、E. coli Y1088〔Science, 222, 778 (1983)〕、E. coli Y1090〔Science, 222, 778 (1983)〕、E. coli NM522〔J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)〕、E. coli K802〔J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)〕、E. coli JM105〔Gene, 38, 275 (1985)〕等が用いられる。
解析用cDNAライブラリーとしては、そのまま使用してもよいが、不完全長cDNAの割合を下げ、なるべく完全長cDNAを効率よく取得するために、菅野らが開発したオリゴキャップ法〔Gene, 138, 171, (1994)、Gene, 200, 149 (1997)、蛋白質核酸酵素, 41, 603 (1996)、実験医学, 11, 2491 (1993)、cDNAクローニング, 羊土社 (1996)、遺伝子ライブラリーの作製法, 羊土社 (1994)〕を用いて調製したcDNAライブラリーを用いてもよい。
本発明の標的酵素をコードしているポリヌクレオチド(核酸)の取得は、標的タンパク質のアミノ酸配列の解析により解明された部分アミノ酸配列(あるいは標的ポリヌクレオチド(核酸)の塩基配列)を基に、プライマーを設計し、上記のようにして取得した一本鎖cDNAまたはcDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことで達成できる。プライマーは縮重プライマーであってもよい。代表的なプライマーは、例えば、標的mRNAの一部の塩基配列において、5'末端側の塩基配列に相当するセンスプライマー及び3'末端側の塩基配列に相当するアンチセンスプライマー(アンチセンスオリゴヌクレオチド)等を挙げることができる(mRNAにおいてウラシルに相当する塩基は、オリゴヌクレオチドプライマーにおいてはチミジンとなる)。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーとしては、両者の融解温度(Tm)および塩基数が極端に変わることのないオリゴヌクレオチドで、5〜60塩基、好ましくは10〜50塩基数のものが挙げられる。誘導体オリゴヌクレオチドとしては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に交換されたもの、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3'-P5'ホスフォアミデート結合に変換されたもの、オリゴヌクレオチド中のリポースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたもの、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換されたもの、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾールウラシルで置換されたもの、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換されたもの、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたもの、オリゴヌクレオチド中のリボースが2'-メトキシエトキシリボースで置換されたもの等が挙げられる〔細胞工学, 16, 1463 (1997)〕。
増幅断片が得られた場合、該断片を適当なプラスミドにサブクローニングする。サブクローニングは、増幅断片をそのまま、あるいは制限酵素やDNAポリメラーゼで処理後、常法によりベクターに組込むことにより行うことができる。例えばサブクローニングは、宿主として大腸菌を用いプラスミドベクターなどを用いて行うことができる。ベクターとしては、pBluescript SK(-)(Stratagene社)、pBluescript II SK(+)(Stratagene社)、pDIRECT〔Nucleic Acids Research, 18, 6069 (1990)〕、pPCR-ScriptTM Amp SK(+) (Stratagene社)、pPCR-ScriptTM Cam SK(+) (Stratagene社)、pT7Blue (Novagen社)、pETBlue-1 Blunt (Novagen社)、pSTBlue-1 Blunt (Novagen社)、pCRII (Invitrogen社)、pCR-TRAP(GeneHunter社)等を挙げることができる。PCR増幅断片は、市販のキット、例えばPCR-ScriptTM Amp Cloning Kit (Stratagene社)、pCMV-ScriptTM PCR Cloning Kit (Stratagene社)、Seamless TM Cloning Kit (Stratagene社)、TaKaRa LA PCRTM in vitro Cloning Kit (TAKARA BIO Inc.)、TaKaRa LA PCRTM Kit Ver.2.1 (TAKARA BIO Inc.)等を使用してクローニングなどをしてよい。標的DNAは、サブクローニングなどにより大量に得ることも可能であり、サブクローニングにより得られたDNAも、上記と同様にして遠心分離、電気泳動、フェノール抽出、エタノール沈殿などの方法により精製分離できる。遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーなどを含めた核酸サンプルから目的核酸をスクリーニングする処理は、ハイブリダイゼーション処理などを利用することにより繰り返して行うことができる。DNAは、必要に応じてクローニングでき、例えば、プラスミド、λファージ、コスミド、P1ファージ、F因子、YACなども利用できる。
塩基配列の決定は、ダイデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)〕、例えばM13ダイデオキシ法など、Maxam-Gilbert法などを用いて行うことができるが、市販のシークエンシングキット、例えばTaqダイプライマーサイクルシークエンシングキットなどを用いたり、自動塩基配列決定装置、例えば蛍光DNAシーケンサー装置(ABI PRISMTM 377 DNAシークエンサー(PE/Applied Biosystems社)等)などを用いて行うことができる。得られた塩基配列をアミノ酸配列に翻訳することにより、このDNAがコードするポリペプチドのアミノ酸配列を得ることができる。得られた塩基配列をGenBankTM、EMBL等の塩基配列データベース中の塩基配列とBLAST、FASTA等の相同性解析プログラムを用いて比較することにより、得られた塩基配列が新規な塩基配列かどうか、また得られた塩基配列と相同性をもつ塩基配列を検索することができる。また塩基配列より得られたアミノ酸配列をSwissProt、PIR、GenPept等のアミノ酸配列データベースと比較することにより、その塩基配列がコードするポリペプチドと相同性をもつポリペプチド、例えばアワビとは別の生物種での相当する遺伝子に由来するポリペプチドや同じような活性や機能をもつと推定されるファミリータンパク質を検索することができる。
本発明の当該マンナナーゼ又はポリペプチドをコードする核酸は、代表的には配列表のSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:9あるいはSEQ ID NO:10で表されるペプチド及びその一部の連続したアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するもの、例えば、配列表のSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7あるいはSEQ ID NO:9で表される塩基配列の少なくともペプチドコード領域により構成される塩基配列を含有するもの(各特徴的なドメインのみをコードするもの及びトランケーションミュータントをコードするものも包含する)、コード配列に開始コドン(Metをコードするコドン)及びターミネーションコドン(終止コドン)を付加したもの、また、該塩基配列がコードするタンパク質と少なくとも50%の相同性を有するアミノ酸配列を持ち且つSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:9あるいはSEQ ID NO:11のアミノ酸配列のうちの少なくとも特徴的な連続したアミノ酸残基を有し、尚且つ酵素活性あるいは同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチドをコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。当該コードする核酸(ポリヌクレオチド)は、上記したアワビ・マンナナーゼポリペプチド(又はアワビ・マンナナーゼタンパク質)(トランケーションミュータントを含む)をコードするものであり、例えば、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列又はSEQ ID NO:11のアミノ酸配列の、全部又は一部を含む連続したアミノ酸残基をコードするものなど(トランケーションミュータントをコードするものも含められる)が挙げられる。該コードする核酸(ポリヌクレオチド)は、それを発現させる場合の宿主細胞に応じて、使用コドンを当該宿主細胞に適したコドンに置き換えられているものも含められてよい。
本明細書において、核酸(又はポリヌクレオチド)は、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNA、DNA:RNAハイブリッド、合成DNAなどであり、またゲノムDNA、ゲノミックDNAライブラリー、軟体動物組織・細胞由来のcDNA、合成cDNA、合成RNAのいずれであってもよい。核酸の塩基配列は、修飾(例えば、付加、除去、置換など)されることもでき、そうした修飾されたものも包含されてよい。核酸は、本発明で記載するペプチドあるいはその一部をコードするものであってよく、好ましいものとしてはDNAが挙げられる。また核酸は、対象ポリペプチド(タンパク質)、例えばアワビ・マンナナーゼ酵素、あるいはその部分配列と同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチド(それと実質的に同一のアミノ酸配列を含有するものを含むし、それと高い相同性又は同一性を有するものも含まれてよい)をコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。本明細書で「高い相同性」といった場合、当該対象配列の長さにもよるが、例えば50%以上、さらには60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、あるいは90%以上、そして特定の場合には95%以上で、特に好ましくは97%以上であってよい。該「同効の塩基配列」とは、例えばストリンジェントな条件で興味のある配列を有するものにハイブリダイズするものであってよく、例えば当該塩基配列のうちの連続した5個以上の塩基配列、好ましくは10個以上の塩基配列、より好ましくは15個以上の塩基配列、さらに好ましくは20個以上(ある場合には30個以上又は40個以上)、さらに45個以上(ある場合には50個以上又は60個以上)の塩基配列とハイブリダイズし、当該ポリペプチドと実質的に同等のアミノ酸配列をコードするものなどが挙げられる。核酸は、化学合成によって得ることも可能である。その場合断片を化学合成し、それらを酵素により結合することによってもよい。
本発明に係わる遺伝子の塩基配列を基に遺伝子工学的に常用される方法を用いることにより、所定のポリペプチドのアミノ酸配列中に適宜、1個ないし複数個(例えば、1〜10個あるいは1〜5個)以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した相当するポリペプチドを製造することができる。こうした変異・変換・修飾法としては、例えば日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法 II」、p105(広瀬進)、東京化学同人(1986); 日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、p233(広瀬進)、東京化学同人(1992); R. Wu, L. Grossman, ed., "Methods in Enzymology", Vol. 154, p. 350 & p. 367, Academic Press, New York (1987); R. Wu, L. Grossman, ed., "Methods in Enzymology", Vol. 100, p. 457 & p. 468, Academic Press, New York (1983); J. A. Wells et al., Gene, 34: 315, 1985; T. Grundstroem et al., Nucleic Acids Res., 13: 3305, 1985; J. Taylor et al., Nucleic Acids Res., 13: 8765, 1985; R. Wu ed., "Methods in Enzymology", Vol. 155, p. 568, Academic Press, New York (1987); A. R. Oliphant et al., Gene, 44: 177, 1986 などに記載の方法が挙げられる。例えば合成オリゴヌクレオチドなどを利用する位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法) (Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10: 6487, 1987; Carter et al., Nucl. Acids Res., 13: 4331, 1986), カセット変異導入法 (cassette mutagenesis: Wells et al., Gene, 34: 315, 1985), 制限部位選択変異導入法 (restriction selection mutagenesis: Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London Ser A, 317: 415, 1986),アラニン・スキャンニング法 (Cunningham & Wells, Science, 244: 1081-1085, 1989), PCR変異導入法, Kunkel法, dNTP[αS]法(Eckstein),亜硫酸や亜硝酸などを用いる領域指定変異導入法等の方法が挙げられる。また、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもでき、例えば、RTS 500 (Rapid Translation System)(Roche Diagnostics Corp.)などを使用することができる。
本発明のポリペプチドは、例えばJ. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2nd Edition, 1989; ISBN 0-87969-309-6 & 3rd Edition, 2001; ISBN 0-87969-577-3); Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc. (updatable since 1987, Last updated: April, 2003; ISBN: 0-471-50338-X)等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、本発明のDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。宿主細胞としては、細菌、酵母、動物細胞、軟体動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。典型的な態様では、全長cDNAをもとにして、必要に応じて、該ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。該DNA断片、または全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、本発明のポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自律複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、本発明のポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
該DNA断片は、そのままあるいは適当な制御配列を付加したDNA断片として、または適当なベクターに組込み、そして宿主細胞又は宿主動物あるいは宿主植物に導入して、所定の遺伝子を発現する形質転換された細胞又はトランスジェニック動物あるいはトランスジェニック植物を作成することができる。動物としては、軟体動物が挙げられるが、哺乳動物や昆虫であってもよく、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、カイコなどが含まれてよい。好ましくは、マウスなどの動物の受精卵に該DNA 断片を導入して、トランスジェニック動物を作成することができる。所定の遺伝子産物の確認を、当該外来遺伝子をトランスフェクションした、適当な宿主細胞(原核細胞、真核細胞、昆虫細胞、軟体動物細胞など)、例えば、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌(例えばアスペルギルス属菌など)、293T細胞、CHO細胞、COS細胞、Sf21などを用いて行うことができる。
外来遺伝子を宿主細胞に導入する方法としては、宿主細胞に遺伝子を導入する方法であればどのような方法でも用いることができ、当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができ、例えばリン酸カルシウム法(例えば、F. L. Graham et al., Virology, 52: 456, 1973; 村松正實及び山本雅編、実験医学別冊(改訂第4版)〔新遺伝子工学ハンドブック〕、pp.152-156、羊土社(2003)など)、リポフェクション法(村松正實及び山本雅編、実験医学別冊(改訂第4版)〔新遺伝子工学ハンドブック〕、pp.157-162、羊土社(2003)など)、DEAE-デキストラン法(例えば、D. Warden et al., J. Gen. Virol., 3: 371, 1968など)、エレクトロポレーション法(例えば、E. Neumann et al., EMBO J, 1: 841, 1982; 横田崇, 新井賢一編集、実験医学、別冊バイオマニュアルシリーズ4〔遺伝子導入と発現・解析法〕, p.23、羊土社、1994年; 村松正實及び山本雅編、実験医学別冊(改訂第4版)〔新遺伝子工学ハンドブック〕、pp.163-165、羊土社(2003)など)、マイクロインジェクション法〔横田崇, 新井賢一編集、実験医学、別冊バイオマニュアルシリーズ4〔遺伝子導入と発現・解析法〕, pp.36-42、羊土社、1994年; 村松正實及び山本雅編、実験医学別冊(改訂第4版)〔新遺伝子工学ハンドブック〕、pp.179-182、羊土社(2003)など〕、ウイルス感染法、ファージ粒子法などが挙げられる。こうして所定の遺伝子をトランスフェクションされた宿主細胞の産生する遺伝子産物は、それを解析することもできる。
所定の遺伝子など(本発明で得られたDNAなど)を組込むベクター(プラスミドを含む)としては、好適には遺伝子工学的に常用される宿主細胞(例えば、大腸菌、枯草菌等の原核細胞宿主、酵母、糸状菌(例えばアスペルギルス属菌など)、293T細胞、CHO細胞、COS細胞等の真核細胞宿主、Sf21等の昆虫細胞宿主、植物など)中で該DNAが発現できるものであればどのようなベクター(プラスミドを含む)でもよいが、目的に適合するように作製(構築)されたものであってもよい。もちろん、市販のキットや試薬に添付のものから選んで使用することもできる。こうした配列内には、例えば選択した宿主細胞で発現するのに好適に修飾されたコドンが含まれていることができるし、制限酵素部位が設けられていることもできるし、目的とする遺伝子の発現を容易にするための制御配列、促進配列など、目的遺伝子を結合するのに役立つリンカー、アダプターなど、さらには抗生物質耐性などを制御したり、代謝を制御したりし、選別・分離・検出などに有用な配列(タグ、ハイブリドタンパク質や融合タンパク質をコードするものも含む)等を含んでいることができる。細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有してなる組換えベクターは原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子、および転写終結配列より構成されたベクターであることが好ましい。なお、ベクターには、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターは、リボソーム結合配列(例えば、シャイン−ダルガーノ(Shine-Dalgarno)配列(SD配列))と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したものを用いることが好ましい。プロモーターとしては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。適当なプロモーターとしては、例えば、トリプトファンプロモーター(trp)、ラクトースプロモーター(lac)、リポプロテインプロモーター(lpp)、λファージ PL プロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SV40レートプロモーター、MMTV LTRプロモーター、RSV LTRプロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーター等、さらにGAL1、GAL10プロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等を挙げることができる。さらにCYC1, HIS3, ADH1, PGK, PHO5, GAPDH, ADC1, TRP1, URA3, LEU2, EN0, TP1, AOX1等の制御系を使用することもできる。また、トリプトファンプロモーター(trp; Ptrp)を2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、トリプトファン・ラクトースプロモーター(tac)、lacT7プロモーター、letIプロモーター〔Gene, 44, 29 (1986)〕のように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
所望ポリペプチドをコードするDNAのトランスクリプションを促進するためエンハンサーをベクターに挿入することができ、そうしたエンハンサーとしてはプロモーターに働いてトランスクリプションを促進する作用を持つ、通常約10〜100 bpのcis作用を持つエレメントのものが挙げられる。多くのエンハンサーが、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、インシュリンなどの哺乳動物遺伝子から知られている。代表的には、真核細胞感染性ウイルスから得られるエンハンサーが好適に使用でき、例えばレプリケーションオリジンのレート領域にあるSV40エンハンサー (100-270 bp)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサー, ポリオーマのレプリケーションオリジンのレート領域にあるエンハンサー、アデノウイルスのエンハンサーなどの例が挙げられる。また、必要に応じて、宿主にあったシグナル配列を付加することもでき、それらは当業者によく知られているものを使用できる。本発明のポリペプチドをコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、目的とするポリペプチドの生産率を向上させることができる。本発明の組換えベクターにおいては、本発明のDNAの発現には必ずしも転写終結配列は必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
発現用ベクターとしては、例えばpBR322、pUC18, pUC19, pUC118, pUC119, pSP64, pSP65, pTZ-18R/-18U, pTZ-19R/-19U, pGEM-3, pGEM-4, pGEM-3Z, pGEM-4Z, pGEM-5Zf(-), pGEMEX-1(Promega社), pBC KS (Stratagene社), pBC SK (Stratagene社), pBluescriptTM SK (Stratagene社), pBluescriptTM II SK (Stratagene社), pBluescriptTM II KS (Stratagene社), pBS (Stratagene社), pAS, pKK223-3(Amersham Pharmacia Biotech社), pMC1403, pMC931, pKC30, pRSET-B (Invitrogen社), pSE280(Invitrogen社), pBTrp2(Boehringer Mannheim社), pBTac1(Boehringer Mannheim社), pBTac2(Roche社), pGEX(Amersham Biosciences社), pQE series(QIAGEN社), pET Expression System (Novagen社), SV40ベクター、ポリオーマ・ウイルスベクター、ワクシニア・ウイルスベクター、レトロウイルスベクター, pcD, pcD-SRα, CDM8, pCEV4, pME18S, pBC12BI, pSG5 (Stratagene社), YIp型ベクター、YEp型ベクター、YRp型ベクター、YCp型ベクターなどが挙げられ、それらから誘導されたものが含まれてよく、例えばpGPD-2, pUB110, pHSG399 pRS403 pRS404 pRS405 pRS406などが含まれてよい。
宿主細胞としては、宿主細胞が大腸菌の場合、例えば大腸菌K12株に由来するものが挙げられ、例えば、NM533, XL1-Blue, C600, DH1, DH5, DH11S, DH12S, DH5α, DH10B, HB101, MC1061, JM109, STBL2, B834株由来としては、BL21(DE3)pLysSなどが挙げられる。上記した宿主微生物を使用することもできる。宿主細胞が酵母の場合、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属菌などである。より具体的には、サッカロミセス・セレビッシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、Kluyveromyces株、CandidaTrichoderma reesia、その他の酵母株などを挙げることができる。具体的には、サッカロミセス・セレビッシエAH22R-などを挙げることができる。酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を挙げることができる。プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MF1プロモーター、CUP1プロモーター等を挙げることができる。組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods in Enzymology, 194: 182 (1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 1929 (1978)〕、酢酸リチウム法〔J. Bacteriology, 153: 163 (1983)〕、Hinnen, A. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929 to 1933 (1978)記載の方法等を挙げることができる。
宿主細胞が糸状菌の場合、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フサリウム(Fusarium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ムコール(Mucor)属、ノイロスポラ(Neurospora)属、トリコデルマ(Trichoderma)属菌などが挙げられる。より具体的には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)などを挙げることができる。さらに具体的には、アスペルギルス・ニガーND48、アスペルギルス・ニガー1208-160、アスペルギルス・オリゼ ATCC 91002、アスペルギルス・オリゼIFO5240、アスペルギルス・アワモリIFO4033などを挙げることができる。糸状菌を宿主細胞として用いる場合には、発現用ベクターとしては、糸状菌のエンハンサー塩基配列の1個または複数個を有するもの、糸状菌の産生するアルカリプロテアーゼ(Alp)の発現に係るプロモーター領域を有するもの、糸状菌のエンハンサー塩基配列の1個または複数個を糸状菌で機能するプロモーター領域に導入したもの、シグナルペプチド領域が、該Alp の分泌に係るシグナル配列領域又は該ラクトナーゼのシグナル配列領域であるように構成できるものなどが挙げられる。糸状菌での発現に適した発現用ベクターとしては、アスペルギルス・オリゼのα−グルコシダーゼ遺伝子(agdA)プロモーター上のエンハンサー配列とプロモーター領域をもつものが挙げられる。該エンハンサー配列を導入するプロモーターとしては、糸状菌において機能するものであれば特に制限されないが、具体的には、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、セロビオハイドラーゼ、アセトアミダーゼ等の加水分解酵素遺伝子、3-ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ等の解糖系酵素遺伝子のプロモーターが挙げられる。好適なプロモーターは、アスペルギルス属のα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼの遺伝子から単離することができる。より好適には、アスペルギルス・オリゼのα-グルコシダーゼ遺伝子のプロモーターが挙げられる。そのプロモーターは、部分配列であっても糸状菌におけるプロモーターとしての機能を有する限り含まれる。
さらに、本発明で好適に使用できる発現プラスミドは、上述の如く改良された糸状菌で機能するプロモーターと、ターミネーターを有し、宿主の形質転換体の選択に好適なマーカー遺伝子を有し、大腸菌で複製可能なDNA領域を有するものである。当該エンハンサー配列のプロモーターへの導入部位は、プロモーター領域であれば特に制限されるものではない。ターミネーターは、糸状菌において機能するものであれば特に制限されないが、例えば、アスペルギルス・オリゼのα-グルコシダーゼ遺伝子のターミネーター、あるいは、その部分配列を含むターミネーターがより好適に用いられる。好ましい選択マーカーとしては、硝酸還元酵素(niaD)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argB)、トリプトファンシンターゼ(trpC)、アセトアミダーゼ(amdS)の遺伝子が挙げられる。より好適な選択マーカー遺伝子は、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)である。これらのプラスミドは、プロモーターとターミネーターの間に設けられた制限酵素認識サイトを利用して、本発明の発現させるべき目的のタンパク質をコードするDNA断片を挿入される。
使用するに好適な発現用ベクターとしては、例えば特開平09-9968号公報、特開平5-268972号公報などに開示のもの、あるいはそれから公知の技術で誘導されたものが挙げられる。例えば、プラスミドpNLH2 、pNAN8142などが好適に使用できる。遺伝子を連結する場合、遺伝子間にアダプターDNAとして合成DNAを用いることもできる。該合成DNAとしては、両遺伝子のフレームが一致し、目的とする遺伝子の活性が失われないものであればいかなるものでもよい。例えば、APアーゼ遺伝子プロモーターと、翻訳開始部位および/または分泌シグナルを用いた目的遺伝子の発現は、該APアーゼ遺伝子由来部位と目的とする遺伝子のフレームが一致するように融合遺伝子を作製することによって行われる。APアーゼの分泌シグナルを翻訳開始コドンの下流にフレームを合わせて連結されることにより、目的物質を菌体外に分泌生産させることができる。プロモーターの機能が失われない限りは、一部のDNA断片を欠失させても差し支えない。また、プロモーターおよび翻訳開始部位の機能を変化させるように、例えば、発現力が増加するようにプロモーターおよび翻訳開始部位を含む領域のDNA塩基配列を改変したものであっても好都合に用いることができるし、プロモーターおよび翻訳開始部位の機能に関係しない領域のDNA塩基配列を改変させて用いることも可能である。
APアーゼ遺伝子のプロモーター有しており且つ翻訳開始部位および/または分泌シグナルをコードする領域の下流に連結した目的ポリペプチド遺伝子を有するベクターを導入するための宿主としては、その遺伝子が作動、発現する生物ならばどのようなものであってもよい。好ましくは、例えば酵母、糸状菌などの真核微生物より適宜選択される。これら宿主に遺伝子を導入する形質転換法としては、例えばプロトプラスト形質転換法などが挙げられる。例えば、適当な細胞壁溶解酵素を用いて調製したプロトプラスト化した細胞に、塩化カルシウム、ポリエチレングリコールなどの存在下DNAを接触させるなどの方法で形質転換を行うことができる。また、形質転換法としては、エレクトロポレーション法(例えば、E. Neumann et al., "EMBO J", Vo. 1, pp.841 (1982)など)、マイクロインジェクション法、遺伝子銃により打ち込む方法などが挙げられる。形質転換された細胞を効率良く分離するためには、宿主内で機能する適切な選択マーカー遺伝子を持つプラスミドに該融合遺伝子を挿入した後、該プラスミドで宿主を形質転換してよい。該選択マーカー遺伝子としては、形質転換された細胞を選択的に分離できるものであるならどのようなものも使用可能である。代表的なものとしては、例えばハイグロマイシンB耐性遺伝子などを挙げることができる。普通、宿主は、選定された選択マーカーについての機能的遺伝子を有しない株を用いなければならない。
宿主細胞が動物細胞の場合、例えばアフリカミドリザル線維芽細胞由来のCOS-7細胞、COS-1細胞、CV-1細胞、ヒト腎細胞由来293細胞、ヒト表皮細胞由来A431細胞、ヒト結腸由来205細胞、マウス線維芽細胞由来のCOP細胞、MOP細胞、WOP細胞、チャイニーズ・ハムスター細胞由来のCHO細胞、CHO DHFR-細胞、ヒトHeLa細胞、マウス細胞由来C127細胞、マウス細胞由来NIH 3T3細胞、マウスL細胞、9BHK、HL-60、U937、HaK、Jurkat細胞、その他の形質転換されて得られたセルライン、通常の二倍体細胞、インビトロの一次培養組織から誘導された細胞株などが挙げられる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, "II EXPRESSION OF PROTEINS IN INSECT CELLS USING BACULOVIRUS VECTORS", John Wiley & Sons Inc. (updatable since 1987, Last updated: April, 2003; ISBN: 0-471-50338-X); O'Reilly, D.R., Miller, L.K. and Luckow, V.A., "Baculovirus Expression Vectors: a Laboratory Manual", W. H. Freeman and Company, New York (1992)等に記載された方法によって、本発明のポリペプチドを発現することができる。
昆虫細胞に遺伝子を導入するためのベクターとしては、バキュロウイルス(Baculovirus)、カイコ核多角体病ウイルス(Bombyx mori nuclear polyhedrosis virus)、アウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)及びそれに由来するものが挙げられる。また、組換え遺伝子導入ベクターを使用することができ、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社)等を挙げることができる。昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperda (caterpillar), Aedes aegypti (mosquito), Aedes albopictus (mosquito), Drosophila melangaster (fruitfly), カイコ幼虫あるいはカイコ培養細胞、例えばBM-N細胞など、High5 (Invitrogen社)が挙げられる (例えば、Luckow et al., Bio/Technology, 6: 47-55 (1988); Setlow, J. K. et al. (ed.), Genetic Engineering, Vol. 8, pp.277-279, Plenum Publishing, 1986; Maeda et al., Nature, 315: pp.592-594 (1985))。組換えウイルスの調製、昆虫細胞への上記ベクターの導入(上記バキュロウイルス共導入を含む)方法は、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7413 (1987)〕等などによって達成できる。
植物細胞を宿主細胞として使用する場合には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクターなどを利用することができる。植物細胞用発現ベクターは当該分野で広く知られている。プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等を挙げることができる。宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等を挙げることができる。組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59-140885号公報、特開昭60-70080号公報、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60-251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)法(特許第2606856、特許第2517813)等を挙げることができる。本発明の遺伝子工学的手法においては、当該分野で知られたあるいは汎用されている制限酵素、逆転写酵素、DNA 断片をクローン化するのに適した構造に修飾したりあるいは変換するための酵素であるDNA 修飾・分解酵素、DNA ポリメラーゼ、末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、DNA リガーゼなどを用いることが出来る。制限酵素としては、例えば、R. J. Roberts, Nucleic Acids Res., 13: r165, 1985; S. Linn et al. ed. Nucleases, p. 109, Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York, 1982; R. J. Roberts, D. Macelis, Nucleic Acids Res., 19: Suppl. 2077, 1991などに記載のものが挙げられる。遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、J. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2nd Edition, 1989; ISBN 0-87969-309-6 & 3rd Edition, 2001; ISBN 0-87969-577-3); Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc. (updatable since 1987, Last updated: April, 2003; ISBN: 0-471-50338-X)に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合ポリペプチド発現等を行うことができる。糖あるいは糖鎖が付加されたポリペプチドを得る目的で、酵母、動物細胞、昆虫細胞または植物細胞を宿主として発現させることができる。
本発明では当該マンナナーゼ遺伝子(当該マンナナーゼ及びそのミュータント(変異体)、修飾体、誘導体などの関連遺伝子を含む)あるいはマンナナーゼを発現できる組換えDNA分子を宿主に移入し、当該マンナナーゼを発現させ、目的とする当該マンナナーゼを得る方法が提供される。こうして本発明によれば、当該マンナナーゼの遺伝子を実質的に発現する組換え体あるいはトランスフェクタント及びその製造法、さらにはその用途も提供される。
本発明のアワビ由来のペプチドあるいはポリペプチド(又はタンパク質)は、1個以上のアミノ酸残基が同一性の点で天然のものと異なるもの、1個以上のアミノ酸残基の位置が天然のものと異なるものであってもよい。本発明のアワビ由来のペプチドは、所定のポリペプチドのアミノ酸配列中に適宜、1個ないし複数個(あるいは数個)以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した相当するポリペプチドであってよく、アワビ・マンナナーゼに特有なアミノ酸残基が1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個あるいは1〜5個など)欠けている欠失類縁体(トランケーションミュータントを含む)、特有のアミノ酸残基の1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個あるいは1〜5個など)が他の残基で置換されている置換類縁体、1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個あるいは1〜5個など)のアミノ酸残基が付加されている付加類縁体も包含する。
次に、アミノ酸の置換、欠失、あるいは挿入は、しばしばポリペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化を生ぜしめないし、こうした場合、その置換、欠失、あるいは挿入を施されたポリペプチドは、そうした置換、欠失、あるいは挿入のされていないものと実質的に同一であるとされるであろう。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換体としては、そのアミノ酸が属するところのクラスのうちの他のアミノ酸類から選ぶことができうる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファン、メチオニンなどが挙げられ、極性(中性)としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどが挙げられ、陽電荷をもつアミノ酸(塩基性アミノ酸)としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどが挙げられ、陰電荷をもつアミノ酸(酸性アミノ酸)としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
天然のアワビ・マンナナーゼの特徴であるドメイン構造あるいは基質結合能が維持されていれば、上記のごとき変異体は、全て本発明に包含される。また本発明のペプチドあるいはポリペプチドは天然のアワビ・マンナナーゼと実質的に同等の一次構造コンフォメーションあるいはその一部を有しているものも含まれてよいと考えられ、さらに天然のものと実質的に同等の生物学的活性を有しているものも含まれてよいと考えられる。さらに天然に生ずるミュータント(変異体)の一つであることもできる。本発明のアワビ由来のタンパク質(又はペプチドあるいはポリペプチド)は、例えば、配列表のSEQ ID NO:2のアミノ酸配列、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列及びSEQ ID NO:11のアミノ酸配列から成る群から選ばれたアミノ酸配列に対し、60%、場合によっては70%より高い相同性を有しているものが挙げられ、好ましくはそれに対し、80%あるいは90%以上の相同アミノ酸配列を有するもの、より好ましくはそれに対し、95%あるいは98%以上の相同アミノ酸配列を有するものが挙げられる。本発明のアワビ由来のタンパク質の一部のものとは、該アワビ由来のタンパク質の一部のペプチド(すなわち、該タンパク質の部分ペプチド)であって、本発明の、アワビマンナナーゼと実質的に同等な活性を有するものであればいずれのものであってもよい。例えば、該本発明のタンパク質の部分ペプチドは、該アワビマンナナーゼの構成アミノ酸配列のうち少なくとも5個以上、好ましくは20個以上、さらに好ましくは50個以上、より好ましくは70個以上、もっと好ましくは100個以上、ある場合には200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられ、好ましくはそれらは連続したアミノ酸残基に対応するものであるか、あるいは、例えば、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11で示されるアミノ酸配列のうち対応する領域に対する相同性に関して、上記と同様の相同性を有するものが挙げられる。
本明細書において、「実質的に同等」とはタンパク質の活性、例えば、糖鎖結合性、酵素活性、生理的な活性、生物学的な活性が実質的に同じであることを意味する。さらにまた、その用語の意味の中には、実質的に同質の活性を有する場合を包含していてよく、該実質的に同質の活性としては、特定の糖鎖結合性、多糖分解活性などを挙げることができる。該実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に同質であることを示し、例えば、生理的に、酵素的に、あるいは生物学的に同質であることを示す。例えば、酵素活性などの活性が、同等(例えば、約0.001〜約1000倍、好ましくは約0.01〜約100倍、より好ましくは約0.1〜約20倍、さらに好ましくは約0.5〜約2倍) であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的な要素は異なっていてもよい。
また、遺伝子組換え法で製造する時に融合ポリペプチド(融合タンパク質)として発現させ、生体内あるいは生体外で、所望のポリペプチドと実質的に同等の生物学的活性を有しているものに変換・加工してもよい。遺伝子工学的に常用される融合産生法を用いることができるが、こうした融合ポリペプチドはその融合部を利用してアフィニティクロマトグラフィーなどで精製することも可能である。こうした融合ポリペプチドとしては、ヒスチジンタグに融合せしめられたもの、あるいは、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、マルトース結合タンパク (MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン (TRX)又はCre Recombinaseのアミノ酸配列に融合せしめられたものなどが挙げられる。同様に、ポリペプチドは、ヘテロジーニアスなエピトープのタグを付加され、該エピトープに特異的に結合する抗体を用いてのイムノアフィニティ・クロマトグラフィーによる精製をなし得るようにすることもできる。より適した実施態様においては、ポリヒスチジン(poly-His)又はポリヒスチジン-グリシン(poly-His-Gly)タグ、また該エピトープタグとしては、例えば AU5, c-Myc, CruzTag 09, CruzTag 22, CruzTag 41, Glu-Glu, HA, Ha.11, KT3, FLAG (registered trademark, Sigma-Aldrich), Omni-probe, S-probe, T7, Lex A, V5, VP16, GAL4, VSV-Gなどが挙げられる (Field et al., Molecular and Cellular Biology, 8: pp.2159-2165 (1988); Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5: pp.3610-3616 (1985); Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6): pp.547-553 (1990); Hopp et al., BioTechnology, 6: pp.1204-1210 (1988); Martin et al., Science, 255: pp.192-194 (1992); Skinner et al., J. Biol. Chem., 266: pp.15163-15166 (1991); Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: pp.6393-6397 (1990)など)。
さらに融合ポリペプチドとしては、検出可能なタンパク質となるようなマーカーを付されたものであることもできる。より好適な実施態様においては、該検出可能なマーカーは、ビオチン/ストレプトアビジン系のBiotin Avi Tag、螢光を発する物質などであってよい。該螢光を発する物質としては、オワンクラゲ(Aequorea coerulescens)、Aequorea victoreaなどの発光クラゲ由来の緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)、それを改変した変異体(GFPバリアント)、例えば、EGFP (Enhanced-humanized GFP), AcGFP1タンパク質, rsGFP (red-shift GFP), 黄色螢光タンパク質(yellow fluorescent protein: YFP), 緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP), 藍色螢光タンパク質(cyan fluorescent protein: CFP), 青色螢光タンパク質(blue fluorescent protein: BFP), ウミシイタケ(Renilla reniformis)由来のGFP、珊瑚礁に生息するカイメンの一種(Discosoma)に由来する赤色蛍光タンパク質、例えば、BD Living Colors DsRed-Monomer(DsRed-Monmerあるいは単量体DsRed)(Clontech社)などが挙げられる。宮脇敦史編、実験医学別冊ポストゲノム時代の実験講座3〔GFPとバイオイージング〕、羊土社 (2000年)などの記載を参照することができる。また、上記融合タグを特異的に認識する抗体(モノクローナル抗体及びそのフラグメントを含む)を使用して検出を行うこともできる。こうした融合ポリペプチドの発現及び精製は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
当該マンナナーゼ又はポリペプチドをコードする核酸(ポリヌクレオチド、例えば、DNA)(単に、マンナナーゼ遺伝子ともいう)は、レポーター遺伝子と組み合わされて使用されるものであってもよい。典型的な場合、レポーター遺伝子はレポータータンパク質を発現するようなものである。レポータータンパク質としては、組換えDNA技術によって作成された組換え遺伝子が、いつどこでどのくらいできているのかを比較的簡単に確認できるようにレポーター遺伝子により産生されるものを指してよく、例えば、特定の基質と反応して発光あるいは発色する酵素や、励起光によって蛍光を発する蛍光蛋白質などが含まれてよいが、それには限定されず所要の目的を達成できるものであれば制限なく使用できる。レポータータンパク質は当該分野で各種のものが知られており、また市販物として簡単に入手できるので、そうしたものの中から適宜適切なものを選択して使用できる。上記した光や色を測定することで組換え遺伝子の発現を見ることができるものが好適に使用できる。通常、レポーター遺伝子自体には、可視化する以外の機能は想定されていないものであってよい。様々な生物の遺伝子がプロモーターの活性や蛋白質の挙動を知るためのレポーター遺伝子として利用されており、そうしたものはすべて包含されてよい。このレポーター遺伝子は、ある遺伝子のプロモーターの下流に連結し、その融合遺伝子の産生物の活性を測定する事によって元の遺伝子の発現の有無や、その発現の強さを知るために用いられる遺伝子であってよい。レポーター遺伝子の産物としては、活性の測定が容易であるとか、細胞毒性がないとか、組織または個体レベルでの染色による検出が可能であるなどといったものであることも好ましい。代表的なものとしては、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、Discosoma sp. Red Fluorescent Protein (DsRed)、上記したGFP及びその改変体又は類縁体、ベータグルクロニダーゼ (GUS)、lacZ、ルシフェラーゼなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のDNAを組み込んだ組換え発現ベクターを保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物より該ポリペプチドを採取することにより、該ポリペプチドを製造することができる。本発明で得られる形質転換された細胞を培養する場合の各種条件は、使用する菌株など細胞の種類により異なるが、一般的には培地に関しては、該形質転換細胞が同化したり、資化することが可能な炭素源や窒素源などを含有する培地を使用する。炭素源としては、該形質転換細胞が同化したり、資化することができるものであればどのようなものでもよいが、例えば、グルコース、シュクロース、フラクトース、糖蜜、でんぷん、可溶性でんぷん、デンプン加水分解物、デキストリンなどの糖類あるいは炭水化物、パラフィン類などが挙げられ、さらに、酢酸、クエン酸、酪酸、フマール酸、安息香酸などの有機酸類、メタノール、エタノール、ブタノール、グリセリンなどのアルコール類、オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸およびそのエステル類、大豆油、菜種油、ラード油などの油脂類などが挙げられ、それらは単独又は混合して用いることができる。窒素源としては、資化することができるものであればどのようなものでもよいが、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩類、尿素、ペプトン、カザミノ酸、コーンステイープリカー、コーングルテンミール、カゼイン加水分解物、ふすま、酵母エキス、乾燥酵母、各種発酵菌体およびその消化物、大豆粉、大豆粕および大豆粕加水分解物、綿実粉、肉エキス、その他の有機または無機の窒素含有物などが挙げられ、それらは単独又は混合して用いることができる。培地には、無機塩類、ミネラル、ビタミン、微量金属塩などの栄養素を任意に適宜加えることもできる。無機塩類としては、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸塩類、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸マンガンなどのマンガン塩類などが挙げられ、他の栄養源として、麦芽エキスなども挙げられる。その他、当該分野で一般的に使用されるものを適宜選択して用いることができる。培養は通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うが、好気条件下で深部培養するのが一般に有利で、好気的に行なう場合、通常、培養時間2時間〜20日程度であり、好ましくは16時間〜14日程度であり、さらに好ましくは1〜10日程度で、培地のpH 3〜9、培養温度、10〜50℃で行なう。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているものを適宜選択して使用できるほか、それを改変したものも使用でき、例えば、RPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association, 199: 519 (1967)〕、EagleのMEM培地〔Science, 122: 501(1952)〕、ダルベッコ改変MEM培地〔Virology, 8: 396 (1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biolog ical Medicine, 73: 1 (1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。さらに、例えば、dhfr遺伝子を選択マーカーとして利用した場合、MTX濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、本発明のポリペプチドをコードするDNAを増幅させ、より高い発現を得られる細胞株を得ることができる。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているものを適宜選択して使用できるほか、それを改変したものも使用でき、例えば、TNM-FH培地(Pharmingen社)、Sf-900 II SFM培地(Life Technologies社)、ExCell400、ExCell405(JRH Biosciences社)、Grace's Insect Medium〔Nature, 195: 788 (1962)〕等を用いることができる。培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているものを適宜選択して使用できるほか、それを改変したものも使用でき、例えば、ムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチドの生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法などがあり、使用する宿主細胞や、生産させるポリペプチドの構造を変えることにより、該方法を選択することができる。宿主細胞内に生産されるポリペプチドを宿主細胞外に積極的に分泌させる手法は知られており、例えば、ポールソンらの方法〔J. Biol. Chem., 264: 17619 (1989)〕、ロウらの方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 8227 (1989)、Genes Develop., 4: 1288 (1990)〕、または特開平5-336963号公報、WO94/23021等に記載の方法などを参考にできる。例えば、遺伝子組換えの手法を用いて、本発明のポリペプチドの活性部位を含むポリペプチドの手前にシグナルペプチドを付加した形で発現させることにより、本発明のポリペプチドを宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。また、特開平2-227075号公報に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
さらに、遺伝子導入した動物または植物の細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された動物個体(トランスジェニック軟体動物)または植物個体(トランスジェニック植物)を造成し、これらの個体を用いて本発明のポリペプチドを製造することもできる。形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、該ポリペプチドを生成蓄積させ、該動物個体または植物個体より該ポリペプチドを採取することにより、該ポリペプチドを製造することができる。
本発明の当該アワビ・マンナナーゼポリペプチド(タンパク質)及びそのミュータント、修飾体、誘導体などは、上記で説明したような分離・精製処理を施すことができる。本発明では、「断片」、「誘導体」及び「類縁体」なる用語は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:9あるいはSEQ ID NO:11のポリペプチド、SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:1の配列のうちの塩基番号55〜1134の配列あるいはSEQ ID NO:10の配列から転写されたmRNAによりコードされるポリペプチド、又はゲノミックDNAによりコードされるポリペプチドに関連して、その「断片」、「誘導体」又は「類縁体」と称した場合、このようなポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能又は活性を有しているポリペプチドを意味する。従って、類似体にはトランケーションミュータント(SEQ ID NO:2のポリペプチドより導かれるトランケートされたポリペプチド)、プロタンパク質部分が切断されて活性ポリペプチドを産生するような、活性化できるプロタンパク質等が包含される。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、天然ポリペプチド又は合成ポリペプチドでよい。特定の好ましい態様では、これは組換えポリペプチドである。
一方では、本発明は上記したポリペプチドをコードするDNA配列、そして天然の特性の全部あるいは一部を有する当該アワビマンナナーゼタンパク質のポリペプチド、さらにその類縁体あるいは誘導体(トランケーションミュータントを包含する)をコードするDNA配列も包含する。本発明のポリヌクレオチドは、アミノ末端に付加アミノ酸又はカルボキシル末端に付加アミノ酸を加えた成熟タンパク質、又は成熟タンパク質に内在するポリペプチド(例えば、成熟形態で一つ以上のポリペプチド鎖を有する場合)のアミノ酸をコードしているものであることができる。このような配列は、前駆体から成熟形態のタンパク質へのプロセッシングにおいても何らかの働きをなすものであってよく、例えば、タンパク質の移動や輸送を促進したり、タンパク質の半減期を延長もしくは短縮したり、又はタンパク質を操作してその検出もしくは産生を容易にすることができるものであってよい。一般的には、例えば、付加アミノ酸は、細胞酵素によりプロセッシングされ、成熟タンパク質から取り除かれる。1又はそれ以上のプロ配列と融合した成熟形態ポリペプチドを有する前駆タンパク質は、不活性形態ポリペプチドであることができる。プロ配列が除去されると、このような不活性前駆体は、通常活性化される。プロ配列のいくつか又は全ては、活性化の前に除去できる。通常、このような前駆体はプロタンパク質と称される。本発明のポリペプチドは、成熟タンパク質、マーカー配列又はレポ−ター配列を付加してある成熟タンパク質であってよい。また、該プロ配列は通常活性形態ポリペプチド及び成熟形態ポリペプチドを産み出すようなプロセッシングの段階で除去されることができる。
所定の遺伝子産物を発現している形質転換体はそのまま利用可能であるが、その細胞ホモジュネートとしても利用できるし、所定の遺伝子産物を単離して用いることもできる。
本発明で得られる形質転換された細胞により産生されるポリペプチド(酵素)は、各種原料、例えば細胞培養液、細胞培養破砕物などを含めた、形質転換体細胞などの酵素産生材料から、従来公知の方法にしたがって得ることができる。例えば、培地中に蓄積された場合には、遠心分離または濾過によって目的物質を含む上澄液を得る。一方、目的物質が菌体など細胞中に蓄積される場合には、培養後、遠心分離または濾過などの公知の方法で細胞などを集め、細胞を尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤及び/又はトリトン X-100(商品名)、ツウィーン-20 (商品名)などの界面活性剤を含む緩衝液に懸濁し、冷所で撹拌したのち遠心分離等により目的物質の蛋白質を含む上澄液を得たり、細胞を緩衝液に懸濁したのち、ガラスビーズによる粉砕、フレンチプレス、超音波処理、凍結融解あるいは酵素処理等で細胞を破砕したのち遠心分離、ろ過等により上清液を得るなどの方法が適宜用いられる。
前記上清液から目的蛋白質を分離・精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組合わせて行うことができ、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、エタノールを使用するなどの溶媒沈澱法、セファデックスなどによるゲルろ過法、例えばジエチルアミノエチル基あるいはカルボキシメチル基などの塩基性基あるいは酸性基を持つ担体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー法、例えばブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して得ることができる。また封入体として得られた場合には、可溶化処理、例えば、塩酸グアニジン、尿素といった変成剤で処理して可溶化する。可溶化液は希釈または透析することにより、該ポリペプチドを正常な立体構造に戻すこと(リフォールディング)ができ、次に、上記と同様の単離精製法により該ポリペプチドの精製標品を得ることができる。必要に応じては、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどの還元剤存在下に処理して活性型酵素とすることもできる。
本発明のポリペプチド(タンパク質)及びその一部のペプチドの合成には、当該ペプチド合成分野で知られた方法、例えば液相合成法、固相合成法などの化学合成法を使用することができる。こうした方法では、例えばタンパク質あるいはペプチド合成用樹脂を用い、適当に保護したアミノ酸を、それ自体公知の各種縮合方法により所望のアミノ酸配列に順次該樹脂上で結合させていく。縮合反応には、好ましくはそれ自体公知の各種活性化試薬を用いるが、そうした試薬としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどカルボジイミド類を好ましく使用できる。生成物が保護基を有する場合には、適宜保護基を除去することにより目的のものを得ることができる。例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することができ、また、Advanced ChemTech社、Perkin-Elmer社、Amersham Biosciences社、Protein Technologies社、Applied Biosystems社、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明のペプチド(又はポリペプチド)は、それが遊離型のものとして得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で塩に変換することができ、またそれらは塩として得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で遊離型のものあるいは他の塩に変換することができる。
酵素としては酵素産生細胞をそのまま用いることが出来るし、粗酵素、精製酵素または固定化酵素として用いることができる。固定化酵素としては、当該分野で知られた方法で酵素又は酵素産生細胞などを固定化したものが挙げられ、共有結合法や吸着法といった担体結合法、架橋法、包括法などにより固定化できる。また、微生物菌体のアルギン酸ゲルへの固定化も好適に用いることができる。例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネートなどの縮合剤を必要に応じて使用し、固定化できる。またモノマーを重合反応でゲル化させて行うモノマー法、通常のモノマーよりも大きな分子を重合させるプレポリマー法、ポリマーをゲル化させて行うポリマー法などが挙げられ、ポリアクリルアミドを用いた固定化、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、寒天、κ-カラギーナンなどの天然高分子を用いた固定化、光硬化性樹脂、ウレタンポリマーなどの合成高分子を用いた固定化などが挙げられる。酵素や微生物菌体の固定化技術及びその利用は、例えば、千畑一郎編「固定化酵素」、p75 、講談社サイエンティフィック(1975年);千畑一郎編「固定化生体触媒」、p67 、講談社サイエンティフィック(1986年);鈴木智雄監修「微生物工学技術ハンドブック」、朝倉書店(1990 年5月);今中忠行編「Maruzen Advanced Technology <生物工学編> 微生物工学」、p180〜194 、丸善株式会社(平成5年9月30日)、日本生化学会編「新生化学実験講座13バイオテクノロジー」、p50〜54、東京化学同人(ISBN: 4-8079-1079-5)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる。それらの手法は、本発明の目的に合わせて公知の手法に独自の改変改良を加えたものであることもできる。
本発明では、アワビ・マンナナーゼをコードするDNAあるいはアワビ・マンナナーゼのシグナルペプチド領域を含んでいるコードDNA(又はその誘導体DNA)又はそれを挿入したベクターを導入されたマンナナーゼ産生形質転換体の培養物、その細胞、または細胞処理物、及び該形質転換体から得られた組換えマンナナーゼなどに、マンナン含有基質を接触せしめ、得られた加水分解物又はその塩を反応系から分離することにより、マンナンが消化を受けた産物又はその塩の製造法が提供されるのである。
本製造法において、使用する形質転換体、特には形質転換された微生物は、液体培地に菌株を培養して得られた培養物、培養液から分離した菌体、あるいは菌体または培養物を処理して得られる乾燥菌体、もしくは固定化菌体などのいずれの形態のものも用いることができ、さらに該形質転換体から単離された酵素はそれを粗製のものも、精製したものも、また固定化されたものなどのいずれの形態のものも用いることができる。
操作は回分式、半回分式、または、連続式のいずれでも行なうことができる。使用するマンナン含有基質(あるいはマンノース含有多糖基質又はマンノース含有糖鎖基質)の濃度は、特に、限定されず、好適な結果が得られる範囲を適宜選択できる。反応温度は、通常、10〜60℃であるが、好ましくは20〜50℃、より好ましくは30〜47℃である。反応時間は、回分式の場合、通常、数時間から7日間である。反応系のpHは、通常、3〜9程度であるがより好ましくは6〜8である。
本発明の当該マンナナーゼなどのポリペプチド等は、本発明で同定された当該マンナナーゼタンパク質等の、生物学的活性などの機能(例えば、マンナンへの結合、マンノース含有糖鎖分解活性などの触媒活性など)を促進する化合物(促進剤)や阻害する化合物(阻害剤)又はそれらの塩をスクリーニングするための試薬として有用である。かくして、本発明の当該マンナナーゼタンパク質などのポリペプチド、その一部のペプチド又はそれらの塩を用いた、本発明の当該マンナナーゼタンパク質といったポリペプチド、その一部のペプチド(トランケーション・ミュータント(変異体)を含む)又はそれらの塩などの生物学的活性などの機能(例えば、マンナン親和性、糖鎖分解活性など)を促進する化合物(促進剤又はアゴニスト)や阻害する化合物(阻害剤又はアンタゴニスト)又はそれらの塩のスクリーニング方法も提供される。
該スクリーニングでは、例えば(i) 本発明のポリペプチド、その一部のペプチド又はそれらの塩(該ポリペプチドを発現する形質転換体を含んでいてもよい、以下同様)などに適当な基質を接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などに基質及び試験試料を接触させた場合との比較を行う。具体的には、上記スクリーニングでは、当該生物学的活性(例えば、各マンノース含有糖鎖と当該マンナナーゼ活性を持つポリペプチドとの間の相互作用に関連した活性、タンパク分解活性など)を測定して、比較する。
基質としては、各マンナナーゼの基質となることのできるものであれば何れのものであってよい。例えば、公知のマンナナーゼの基質として知られているものの中から選んで用いることができるが、好ましくはマンナン、マンノース含有多糖、マンノース含有糖鎖化合物、合成された化合物などを使用できる。基質は、そのまま使用できるが、好ましくはフルオレッセインなどの蛍光、酵素や放射性物質で標識したものを使用できる。
試験試料としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、糖含有化合物、合成化合物、発酵生産物、植物抽出物、藻類抽出物、動物などの組織抽出物、細胞抽出物などが挙げられる。試験試料に使用される試験化合物の例には、好ましくは抗マンナナーゼ抗体、酵素阻害剤、各種インヒビター活性を有する化合物、特には合成化合物などを含んでいてよい。これら化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該スクリーニングは、通常の結合活性あるいは酵素活性の測定法に準じて実施することができ、例えば当該分野で公知の方法などを参考にして行うことができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬等を使用したり、そこで説明した操作等に準じて行うことができる。使用ペプチドなどは、活性化剤で処理したり、その前駆体を活性型のものに予め変換しておくこともできる。測定は通常Tris-HCl緩衝液、リン酸塩緩衝液などの反応に悪影響を与えないような緩衝液等の中で、例えば、pH約4〜約10 (好ましくは、pH約6〜約8)において行うことができる。これら個々のスクリーニングにあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該マンナナーゼあるいはそれと実質的に同等な活性を有するポリペプチドあるいはペプチドに関連した測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、"Methods in Enzymology" series, Academic Press 社(USA)発行)など参照〕。
別の面では、本発明はアワビ・マンナナーゼタンパク質ファミリーに属する天然型(ネイティブ)のマンナナーゼポリペプチド(特には、内在性(endogenous)マンナナーゼ活性ポリペプチド)に関し、該マンナナーゼポリペプチドに関連付けられる活性(例えば、マンナン結合性あるいはマンンース含有糖鎖分解活性など)を有し且つSEQ ID NO:2のアミノ酸配列、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列及びSEQ ID NO:11のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列のうちの、(1)触媒活性コアドメイン、(2)マンナン結合ドメイン、(3)マンナン認識ドメイン、及び/又は(4) トランケーション・ミュータント(変異体)からなる群から選択された連続したアミノ酸残基を少なくとも有するポリペプチドの一種であり且つ天然の当該アワビマンナナーと実質的に同等な活性を有することを特徴とするポリペプチドまたはその塩、より好ましくは当該アワビマンナナーゼまたはその塩と、実質的に同等な活性を有するか、あるいは実質的に同等の一次構造コンフォメーションを持つ該ポリペプチドの少なくとも一部あるいは全部を有するポリペプチドを、大腸菌などの原核生物あるいは動物細胞などの真核生物で発現させることを可能にするDNAやRNAなどの核酸に関する。またこうした核酸、特にはDNAは、(a)配列表のSEQ ID NO:2のアミノ酸配列、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列及びSEQ ID NO:11のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列またはその断片をコードできる配列あるいはそれと相補的な配列、(b)該(a)のDNA 配列またはその断片とハイブリダイズすることのできる配列、及び(c)該(a)又は(b)の配列にハイブリダイズすることのできる縮重コードを持った配列であることができる。ここでハイブリダイズの条件としては、ストリンジェントな条件であることができる。こうした核酸で形質転換され、本発明の該ポリペプチドを発現できる大腸菌などの原核生物あるいは動物細胞などの真核生物も本発明の特徴をなす。
本発明のDNA 配列は、これまで知られていなかった哺乳動物のタンパク質のアミノ酸配列に関する情報を提供しているから、こうした情報を利用することも本発明に包含される。こうした利用としては、例えば当該アワビマンナナーゼ及び関連ポリペプチドをコードする軟体動物、好ましくは巻貝や二枚貝(特に好ましくはアワビ及びその仲間、サザエ、タマキビを含む)などの、ゲノムDNA及びcDNAの単離及び検知のためのプローブの設計などが挙げられる。
本明細書中で開示した標的酵素タンパク質及びそれに関連したタンパク質、そのフラグメント、さらにはDNAを含めた核酸(mRNAやオリゴヌクレオチドを含む)は、それらを単独あるいは有機的に使用し、更にはアンチセンス法、モノクローナル抗体を含めた抗体、トランスジェニク藻類などの技術とも適宜組合わせて、ゲノミックス及びプロテオミックス技術に応用できる。かくして、一塩基多型(SNP; single nucleotide polymorphisms)を中心とした遺伝子多型解析、核酸アレイ、タンパク質アレイを使用した遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、タンパク質間相互作用解析、生理機能解析、制御薬物感受性解析をすることが可能となる。例えば、核酸アレイ技術では、cDNAライブラリーを使用したり、PCR 技術で得たDNAを基板上にスポッティング装置で高密度に配置して、ハイブリダイゼーションを利用して試料の解析が行われる。該アレイ化は、針あるいはピンを使用して、あるいはインクジェトプリンティング技術などでもって、スライドガラス、シリコン板、プラスチックプレートなどの基板のそれぞれ固有の位置にDNAが付着せしめられることによりそれを実施することができる。該核酸アレイ上でのハイブリダイゼーションの結果得られるシグナルを観察してデータを取得する。該シグナルは、螢光色素などの標識(例えば、Cy3, Cy5, BODIPY, FITC, Alexa Fluor dyes(商品名), Texas red(商品名)など)より得られるものであってよい。検知にはレーザースキャナーなどを利用することもでき、得られたデータは適当なアルゴリズムに従ったプログラムを備えたコンピューターシステムで処理されてよい。また、タンパク質アレイ技術では、タグを付された組換え発現タンパク質産物を利用してよく、二次元電気泳動(2-DE)、酵素消化フラグメントを含めての質量分析(MS)(これにはエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization: ESI), マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(matrix-assisted laser desorption/ionization: MALDI)などの技術が含まれ、MALDI-TOF分析計、ESI-3連四重極分析計、ESI-イオントラップ分析計などを使用してよい)、染色技術、同位体標識及び解析、画像処理技術などが利用されることができる。したがって、本発明には上記で得られるあるいは利用できる標的酵素及びそれに対する抗体に関連したソフトウエア、データベースなども含まれてよい。本発明のcDNAをプローブなどとして用いれば、例えばノーザン・ブロティング、サザン・ブロティング、in situ ハイブリダイゼーションなどにより組織中での当該マンナナーゼmRNAの発現や当該マンナナーゼタンパク質遺伝子自体などを検出・測定でき、その酵素活性の役割、酵素産生機構などに関連して生起する生物学的過程(プロセス)等の研究の発展に貢献できる。当該マンナナーゼタンパク質に関連した代謝及び発現制御の解明にも役立つ。
本明細書中、「抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望の当該マンナナーゼポリペプチド及び関連ペプチド断片に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種エピトープに対する特異性を持つ抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab')2, Fab'及びFabといったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。特に好ましい本発明の抗体は、天然型の当該マンナナーゼポリペプチドを特異的に識別できるものであり、例えば、公知のマンナナーゼ類タンパク質とは区別してそれを認識できるものである。本発明のマンナナーゼの特徴的な配列、例えばSEQ ID NO:2のアミノ酸配列のうちのSEQ ID NO:3に存在する連続したアミノ酸配列、SEQ ID NO:4〜6のいずれかの配列、該マンナナーゼの触媒活性コアドメインの特徴的な配列を実質的に維持しているものなどを特異的に認識できる抗体なども挙げられる。
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なった抗原決定基(エピトープ)に対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来やイムノグロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる。
モノクローナル抗体を製造する好適な方法は、G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495-497 (1975)); J.J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); Edward Harlow and David Lane (ed.), "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988; ISBN: 0-87969-314-2)あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)を参照できる。
以下、モノクローナル抗体を例に挙げて、抗体の作製につき詳しく説明する。本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術(例えば、G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495-497 (1975))など)を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、上記で記載してあるように、当該マンナナーゼポリペプチド又はそれから誘導された断片を単離したものを用いることもできるが、決定された当該マンナナーゼのアミノ酸配列情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することができる。代表的には配列表のSEQ ID NO:2に存在するアミノ酸残基のうちの連続した少なくとも5個のアミノ酸を有するペプチドが挙げられる。
抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。例えば、免疫原として用いる抗原は、当該マンナナーゼを断片化したもの、あるいはそのアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。また、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
活性化結合基としては、(1)活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1-ベンゾトリアゾールエステル基、N-スクシンイミドエステル基など、(2)活性化ジチオ基、例えば2-ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCGなどが挙げられる。
2.免疫原性抗原による動物の免疫
免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座 14 、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座 12 、分子免疫学 III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年; D Catty (ed.)、"Antibodies: a practical approach", Vol. 1 & 2, IRL Press, Oxford, England (1989)などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジュバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジュバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原ペプチドあるいはその関連ペプチド断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜約400μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体等を包含する。
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えばP3-NS-1-Ag4-1 (NS-1, Eur. J. Immunol., 6: 511-519, 1976)、SP-2/0-Ag14 (SP-2, Nature, 276: 269-270,1978)、マウスミエローマ MOPC-21セルライン由来のP3-X63-Ag8-U1 (P3U1, Curr. topics Microbiol. Immunol., 81: 1-7, 1978 )、P3-X63-Ag8 (X63, Nature, 256: 495-497, 1975 )、P3-X63-Ag8-653 (653, J. Immunol., 123: 1548-1550, 1979)などを用いることができる。8-アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM培地(DMEM培地)、RPMI-1640培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシン、ゲンタマイシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS)、グルタミン、2-メルカプトエタノールなどを適宜加え、さらに8-アザグアニン(例えば5〜45μg/ml)を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのちRPMI-1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
上記2.の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地)、DMEM培地、RPMI-1640 培地などの細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを0.5〜2ml加えることができ、分子量が1,000〜8,000のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が1,000〜4,000のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどを少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球): ミエローマ細胞株の割合は、例えば 1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは4:1〜7:1とすることができる。融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI-1640培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS含有MEM培地、RPMI-1640培地などの培地(所謂HAT培地)が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとに HAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA)、酵素免疫分析(ELISA)、蛍光免疫分析(FIA)などの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。
目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS 含有MEM培地、RPMI-1640培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNAは、上記したようにして発現ベクターに入れ、宿主細胞に入れることができる。該DNAは、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、他の特定の動物の重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク質合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている(Millstein et al., Nature, 305: pp.537-539 (1983); WO93/08829; Traunecker et al., EMBO J., 10: pp.3655-3659 (1991); Suresh et al., "Methods in Enzymology", Vol. 121, pp.210 (1986))。さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab 、Fab'、F(ab')2 といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体を用い、抗原抗体反応を行わせることにより、本発明の標的ポリペプチドまたは該ポリペプチドを含む組織あるいはサンプル(試料)を免疫学的に検出することができる。
免疫学的に検出および定量する方法としては、蛍光抗体法、酵素免疫測定法(ELISA法)、放射免疫測定法(RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法等の免疫組織化学染色法(ABC法、CSA法等)、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、免疫沈降法、サンドイッチELISA法〔富山朔二ら(編)、「単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック)」、講談社(1987; ISBN: 4061535021); 日本生化学会(編)、「続生化学実験講座5、免疫生化学研究法」、東京化学同人(1986; ISBN: 4807910396); 安東民衛ら(著)、「単クローン抗体実験操作入門」講談社(1991; ISBN: 406153520X)〕等が挙げられる。蛍光抗体法とは、標的ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織に、本発明の抗体を反応させ、さらにフルオレッセイン・イソチオシアネート(FITC)等の蛍光物質でラベルした抗マウスIgG抗体あるいはその断片を反応させた後、蛍光色素をフローサイトメーターで測定する方法である。酵素免疫測定法(ELISA法)とは、該ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織に、本発明の抗体を反応させ、さらにペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素標識あるいはビオチン-アビジン系標識等を施した抗マウスIgG抗体あるいは結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する方法である。RIAとは、該ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織に、本発明の抗体を反応させ、さらに放射標識を施した抗マウスIgG抗体あるいはその断片を反応させた後、シンチレーションカウンター等で測定する方法である。免疫細胞染色法、免疫組織染色法とは、該ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織に、該ポリペプチドを特異的に認識する抗体を反応させ、さらにFITC等の蛍光物質、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素標識あるいはビオチン-アビジン系標識等を施した抗マウスIgG抗体あるいはその断片を反応させた後、顕微鏡を用いて観察する方法である。
ウェスタンブロッティング法とは、該ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織の抽出液をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動〔Antibodies-A Laboratory Manual, Cold SpringHarbor Laboratory,(1988)〕で分画した後、該ゲルをPVDF膜あるいはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に該ポリペプチドを特異的に認識する抗体を反応させ、さらにFITC等の蛍光物質、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素標識あるいはビオチン-アビジン系標識等を施した抗マウスIgG抗体あるいはその断片を反応させた後、確認する方法である。ドットブロッティング法とは、該ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織の抽出液をニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に本発明の抗体を反応させ、さらにFITC等の蛍光物質、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素標識あるいはビオチン-アビジン系標識等を施した抗マウスIgG抗体あるいは結合断片を反応させた後、確認する方法である。免疫沈降法とは、本発明のポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織の抽出液を該ポリペプチドを特異的に認識する抗体と反応させた後、プロテインG-セファロース等イムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる方法である。サンドイッチELISA法とは、標的ポリペプチドを特異的に認識する抗体で、抗原認識部位の異なる2種類の抗体のうち、あらかじめ一方の抗体をプレートに吸着させ、もう一方の抗体をFITC等の蛍光物質、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素標識あるいはビオチン-アビジン系標識等で標識しておき、抗体吸着プレートに、該ポリペプチドを細胞内あるいは細胞外に発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞または組織の抽出液を反応させた後、標識した抗体を反応させ、標識物質に応じた反応を行う方法である。
抗体などの標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス(例えば活性化ガラス、多孔質ガラスなど)、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス、合成材料からなる固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られる抗原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;H. V. Vunakis et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 70 (Immunochemical Techniques, Part A), Academic Press, New York (1980); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 73 (Immunochemical Techniques, Part B), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 74 (Immunochemical Techniques, Part C), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 84 (Immunochemical Techniques, Part D: Selected Immunoassays), Academic Press, New York (1982); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 92 (Immunochemical Techniques, Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods), Academic Press, New York (1983); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 178 (Antibodies, Antigens, and Molecular Mimicry), Academic Press, New York (1989); M. Wilchek et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 184 (Avidin-Biotin Technology), Academic Press, New York (1990); J. J. Langone et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 203 (Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B: Anibodies and Antigens, Nucleic Acids, Polysaccharides, and Drugs), Academic Press, New York (1991)などあるいはそこで引用された文献 (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)〕。
本明細書中、「アワビ」とは、腹足綱(Gastropoda)前鰓亜綱(Prosobranchia)古腹足目(Vetigastropoda)オキナエビス超科(Pleurotomarioidea)ミミガイ科(Haliotidae)の巻貝の総称で、標準和名:鮑、あわび、英名: giant abalone、学名: Haliotis (Nordotis) discusである。日本国内に生息するアワビは、クロアワビ(クロガイ、オガイ、学名: Haliotis discus discus、英名: Disk abalone)、エゾアワビ(Haliotis discus hannai又はNordotis discus hannai (Ino, 1951))、マダカアワビ(アオガイ: Haliotis madaka)、メガイアワビ(ビワガイ: Haliotis gigantea)、トコブシ(Haliotis diversicolor aquatilis)などがあり、これらは該アワビに含められてよい。本明細書中の軟体動物には、腹足綱及び二枚貝綱に属する動物が含まれてよく、以下の巻貝類、二枚貝類が包含されてよい。サザエ(栄螺)は、腹足綱前鰓亜綱古腹足目ニシキウズ超科(Trochoidea)リュウテンサザエ科(Turbinidae)の巻貝で、英名: horned turban、学名: Turbo (Batillus) cornutusである。これに類するものとしては、シドニーサザエ(英名: Shidoni-Sazae、学名: Turbo torquatus)、リュウテンサザエ(龍天栄螺、英名: tapestry turban、学名: Turbo petholatus)、ツヤサザエ(英名: crown turban、学名: Turbo cidaris)、ナタールサザエ(英名: natal turban、学名: Turbo cidaris natalensis)、チョウセンサザエ(英名: silver-mouth turban、学名: Turbo argyrostomus)、ヒダトリサザエ(英名: squamose turban、学名: Turbo squamosus)、コガタマキミゾサザエ(英名: filose turban、学名: Turbo cailletii)、コシダカサザエ(英名: Koshidaka-Sazae、学名: Turbo stenogyrus)、クリイロサザエ(英名: chestnut turban、学名: Turbo castanea)、ニシキサザエ(錦栄螺、英名: Nishiki-Sazae、学名: Turbo excellens)などが包含される。タマキビは、腹足綱前鰓亜綱盤足目(Discopoda)タマキビ超科(Littorinoidea)タマキビガイ科(Littorinidae)の貝で、英名: periwinkle、学名: Littorina breviculaである。これに類するものとしては、エゾタマキビガイ(学名: Littorina squalida)などが包含される。タツナミガイは、腹足綱後鰓亜綱(Opisthobranchia)無楯目(Anaspidea)アメフラシ超科(Aplysioidea)アメフラシ科(Aplysiidae)の貝で、英名: Tatsunami-Gai、学名: Dolabella auriculariaである。アメフラシは、腹足綱後鰓亜綱(Opisthobranchia)無楯目(Anaspidea) アメフラシ科(Aplysiidae)の生物で、英名: aplysia kurodai、学名: Aplysia kurodaiである。ムラサキイガイは、二枚貝綱(Bivalvia)翼形亜綱(Pteriomorphia)イガイ目(Mytiloida)イガイ超科(Mytiloidea (Mytilacea))イガイ科(Mytilidae)の貝で、英名: common blue mussel、学名: Mytilus edulis Linnaeusである。その他、アカガイ(赤貝、Scapharca broughtonii (Schrenck))、サルボウ(モガイ、Ark shell、Scapharca bcrenata)、トリガイ(Japanese Cockle、Fulvia mutica)、バイガイ(Balylonia japonica (Reeve))、バカガイ(Hem clam、Mactra chinensis)、ハマグリ(蛤、hard clam、Meretrix lusoria)、ホタテガイ(帆立貝、Scallop、Pationopecten yessoensis)、ミルガイ(海松喰、Keen's gaper、Tresus keenae)、ロコガイ(チリあわび、英文名: chilean abalone、学名: Concholepas concholepas、ローカル名: Loco (ロコ))、ロカテ(チリサザエ、英文名: topshell、学名: Thais chocolata、ローカル名: Caracol Locate (カラコール・ロカテ))、ソフトハマグリ(トゥンバオ、英文名: Solid Semele、学名: Semele solida Gray、ローカル名: Tumbao (トゥンバオ))、ホワイトクラム(クレンゲ、英文名: pacific clam (while clam)、学名: Gari solida、ローカル名: Culengue (クレング))、ラパスガイ(英文名: limpet、学名: Sissurella spp、ローカル名: Lapa)、マテガイ(ナバハ、英文名: razor shall、学名: Ensis macha、ローカル名: Navaja)などが含まれてよい。
海藻は、主な有用成分として多糖類が含まれ、そのなかにはマンナンも挙げられる。よって、マンナン含有基質(あるいはマンノース含有多糖基質又はマンノース含有糖鎖基質)の代表的なものとしては、海藻が挙げられる。海藻は、上記したように、緑藻類(例えば、アオノリ、ヒトエグサ、アオサ、ミルなど)、紅藻類(例えば、アマノリ類やテングサ類など)、褐藻類(例えば、コンブ、ワカメ、ヒジキ、モズクなど)を包含している。特に、紅藻類は、基質として有望視されている。海藻は当該マンナナーゼで処理することにより、該海藻に含有される有用成分の抽出処理、廃棄海藻から有益産物への変換処理、藻類プロトプラストの形成などの応用において有利である。例えば、海藻から抽出された多糖類は、寒天、芳香・消臭剤、入れ歯の歯形の印象剤、化粧品の成分など幅広く利用することができる。また、多糖類の一種であるフコイダンやアルギン酸カリウムなどの抗腫瘍活性や高血圧低下作用等を有する物質の利用を図るのに役立つと期待される。
海藻は、主な有用成分として多糖類が含まれ、海藻から抽出された多糖類は、寒天、芳香・消臭剤、入れ歯の歯形の印象剤、化粧品の成分、などとして有用で、多糖類の一種であるフコイダンやアルギン酸カリウムなどには、抗腫瘍活性や高血圧低下作用等が確認されつつあり、海藻由来多糖類は有用性が高い。海藻より当該マンナナーゼを作用させて得られた産物は、藻食性魚貝類用餌、生食・食品加工用素材・機能性食品等用食用材料、薬用材料、肥料、土壌改良剤、染料・潤滑油・化粧品等の添加剤を含めた工業用原料、バイオマスエネルギー源等に利用できる。
本明細書中、海藻には緑藻類、紅藻類、褐藻類が包含され、原始紅藻(Protoflorideophycidae (Bangiophycidae))や真正紅藻亜綱(Florideophycidae)に属するものを包含している紅藻植物(Rhodophyta)、
例えば、ウシケノリ目(Bangiales)ウシケノリ属(Bangia)やアマノリ属(Porphyra)に属するもの(例えば、アサクサノリ(Porphyra tenera Kjellman)、スサビノリ(Porphyra yezoensis Ueda)など)、テングサ目(Gelidiales)に属するもの(例えば、Gelidiella (シマテングサ属), Gelidium (テングサ属、例えば、マクサ(Gelidium elegans Kuetzing, G. amansii Lamouroux)、オニクサ(Gelidium japonicum (Harvey) Okamura)、オオブサ(Gelidium pacijicum)など), Pterocladia (オバクサ属、例えば、オバクサ(Pterocladiella tenuis (Okamura) Shimada)など), Ptilophora (ヒラクサ), Yatabella (ヤタベグサ)など)、スギノリ目(Gigartinales) に属するもの(例えば、Ahnfeltiopsis (オキツノリ属、ハリガネ属), Calosiphonia (ヌメリグサ属), Catenella (イソモッカ属), Caulacanthus (イソダンツウ属), Ceratodictyon (カイメンソウ属), Chondrus (ツノマタ属), Eucheuma (キリンサイ属), Gelidiopsis (テングサモドキ属), Gigartina (スギノリ属), Gracilaris (オゴノリ属、例えば、オゴノリ(Gracilaria verrucosa)など), Halarachnion (ススカケベニ属), Hypnea (イバラノリ属), Mastocarpus (イボノリ属), Mazzaella (アカバギンナンソウ属), Meristotheca (トサカノリ属), Phacelocarpus (キジノオ属), Platoma (ニクホウノオ属), Plocamiumn (ユカリ属), Portieria (Chondracoccus) (ナミノハナ属), Rhodoglossum (イボギンナン属), Sarcodia (アツバグサ属), Schizymenia (ベニスナゴ属), Schmitzia (ホウノオ属), Solieria (ミリン属), Stenogramma (ハスジグサ属), Tylotus (ナミイワタケ属)など)、イギス目(Ceramiales)に属するもの(例えば、Acanthophora (トゲノリ属), Acrocystis (ツクシホウヅキ属), Acrosorium (ハイウスバ属), Acrothamnion (リュウノタマ属), Amansia (ウスバヒオドシ属), Antithamnion (フタツガサネ属), Ardissonula (ヒヨクソウ属), Benzaitenia (ベンテンモ属), Bostrychia (コケモドキ属), Brachioglossum (ヒゲムラサキ属), Callithamnion (キヌイトグサ属), Caloglossa (アヤギヌ属), Campylaephora (エゴノリ属、例えば、エゴノリ(Campylaephora hypnaeoides J. Agardh)など), トゲイギス, Ceramium (イギス属、例えば、イギス(Ceramium kondoi Yendo) など), Chondria (ユナ属), Congregatocarpus (ノコハノリ属), Dasya (ダジア属), Delesseria (ヌメハノリ属), Delesseriopsis (ウスムラサキ属), Digenea (マクリ属), Enantiocladia (アイソメグサ属), Enelithosiphonia (マキイトグサ属), Euptilota (ヨツガサネ属), Griffithsia (カザシグサ属), Herpochondria (ニクサエダ属), Herposiphonia (ヒメゴケ属), Heterosiphonia (イソハギ属), Hypoglossum (ベニハノリ属), Leveillea (ジャバラノリ属), Marionella (ハブタエノリ属), Martensia (アヤニシキ属), Melanamansia (ヒオドシグサ属), Membranoptera (ホソベニヤバネグサ属), Murrayella (ナガミグサ属), Myriogramme (スジギヌ属), Neoholmesia (スズシロノリ属), Neoptilota (カタワベニヒバ属), Nithophyllum (ウスバノリ属), Phycodrys (カシワバコノハノリ属), Platysiphonia (ヒゲウスバ属), Polysiphonia (イトグサ属), Pterosiphonia (ハネグサ属), Ptilota (クシベニヒバ属), Reinboldiella (チリモミジ属), Rhodomela (フジマツモ属), Schizoseris (ベニヤハズ属), Sorella (ウスベニ属), Spermathamnion (ヒビダマ属), Spyridia (ウブゲグサ属), Symphyocladia (イソムラサキ属), Tolypiocladia (イトクズグサ属), Vidalia (カエリナミ属)など)、
褐藻植物(Phaeophyta)、
例えば、イソガワラ目(Ralfsiales)イソガワラ科(Ralfsiaceae)に属するもの(例えば、Analipus (マツモ属、例えば、マツモ(Analipus japonicus (Harvey) Wynne; Heterochordaria abietina)など), Diplura (クロハンモン属), Endoplura (キンイロハンモン属), Heteroralfsia (イシツギゴビア属), Ralfsia (イソガワラ属)など)、ナガマツモ目(Chordariales)に属するもの(例えば、Acrothrix (ニセモズク属), Chordaria (ナガマツモ属), Cladosiphon (オキナワモズク属、例えば、オキナワモズク(Cladosiphon okamuranus Tokida)など), Elachista (ナミマクラ属), Eudesme (ニセフトモズク属), Halothrix (ソメワケグサ属), Ishige (イシゲ属), Leathesia (ネバリモ属), Myrionema, Nemacystis (モズク属、例えば、モズク(Nemacystus decipiens (Suringar) Kuckuck)など), Papenfussiella (クロモ属), Petrospongium (シワノカワ属), Sphaerotrichia (イシモズク属), Stilophora (ヒモマクラ属), Tinocladia (フトモズク属、例えば、フトモズク(Tinocladia crassa (Suringar) Kylin)など)、コンブ目(Laminariales)に属するもの(例えば、Agarum (アナメ属), Alaria (チガイソ属, アイヌワカメ), Arthrothamnus (ネコアシコンブ属), Chorda (ツルモ属), Costaria (スジメ属), Cymathaere (ミスジコンブ属), Ecklonia (カジメ属), Eckloniopsis (アントクメ属), Eisenia (アラメ属), Hedophyllum (クロシオメ属), Kjellmaniella (トロロコンブ属), Laminaria(コンブ属、例えば、マコンブ(Laminaria japonica Areschoug)、リシリコンブ(L. ochotensis Miyabe)など), Pseudochorda (ニセツルモ属), Undaria (ワカメ属、例えば、ワカメ(Undaria pinnatifida (Harvey) Suringar)など)、ヒバマタ目(Fucales)に属するもの(例えば、Coccophora (スギモク属), Cystoseira (ウガノモク属), Fucus (ヒバマタ属), Hizikia (ヒジキ属、例えば、ヒジキ(Hizikia fusiformis (Harvey) Okamura)など), Hormophysa (ヤバネモク属), Pelvetia (エゾイシゲ属), Sargassum (ホンダワラ属), Turbinaria (ラッパモク属)など)、
緑藻植物(Chlorophyta) 、
例えば、Chlorella (クロレラ属)、Dunaliella (ドウナリエラ属)、アオサ目(Ulvales)に属するもの(例えば、Blidingia (ヒメアオノリ属), Enteromorpha (アオノリ属、例えば、スジアオノリ(Enteromorpha prolifera (Mueller) J.Agardh)、ボウアオノリ(E. intestinalis (Linnaeus) Nees), ヒラアオノリ(E. compressa (Linaeus) Nees)、ウスバアオノリ(E. linza (Linnaeus) J. Agardh)、ボウアオノリ(E. intestinalis (Linnaeus) Nees)など), Kornmannia (モツキヒトエグサ属), Ulva (アオサ属、例えば、アナアオサ(Ulva pertusa Kjellman)など), Ulvaria (クロヒトエグサ属),ミル(Codium fragile (Suringar) Hariot)、ヒトエグサ(Monostroma nitidum Wittrock)など)が包含される。
マンナナーゼは、マンナンからマンノビオースやマンノトリオースなど、食品添加物や医薬品素材として付加価値の高いマンノオリゴ糖を生成する産業上有用な酵素である。さらに、マンナナーゼは、一部の海藻の細胞壁を構成するヘミセルロースの一つであるマンナンを分解することから、海藻のプロトプラストの作出に有用な酵素であると考えられる。
本発明では、スサビノリなどの海藻のプロトプラストの作出に利用できる酵素探索の一環としてエゾアワビ消化液中に含まれるマンナナーゼを単離・精製し、その基本的酵素特性を分析することに成功した。さらに海藻類のプロトプラストの作出に利用するエゾアワビ由来のマンナナーゼを大量・安価に調製する観点から、エゾアワビ由来のマンナナーゼのcDNAをクローニングし、大腸菌を用いた発現系の構築にも成功した。例えば、シグナルペプチドを除くHdManをコードしているcDNAを組み込んだpET-101プラスミドベクターと宿主大腸菌BL21(DE3)を用いて発現系を構築し、組換えHdManの発現に成功している。結果は、1,000 mlの大腸菌培養液から比活性2.12 U/mgの組換えHdManが0.66 mg得られている。組換えHdManはエゾアワビ天然HdManと比較して至適温度、至適pH、温度安定性に若干の違いが見られたが、エゾアワビ天然HdManと同様スサビノリを細胞塊に分散することが確認されている。
植物細胞のプロトプラストの作出は、細胞融合、DNAや細胞小器官の細胞からの抽出ならびにそれらの細胞への導入、細胞の観察、変異体の作出など利用価値の高い基礎技術であり(能登谷正浩 編、「有用海藻のバイオテクノロジー」、pp. 62-72(荒木利芳、プロトプラストの単離技術)、恒星社厚生閣、東京(1997))、研究のみならず育種の分野にも利用可能である。アマノリ属植物においても、プロトプラストは、形質転換(羽土 真 ほか、水産増殖,51,355-360 (2003))、細胞融合(Mizukami, Y. et al., Aquaculture, 108, 193-205 (1992))、in situ ハイブリダイゼーション(Shimizu, Y. et al., J. Appl. Phycol., 16, 329-333 (2004))などの実験に利用されている。また、プロトプラストをストレス下で再生させ藻体の選抜を繰り返すことでストレス耐性の品種を選抜育種することが報告されている(谷田圭亮 ほか、兵庫水試研報,29,17-23 (1991);増田恵一 ほか、月刊海洋,27,655-660 (1995))。海苔養殖で扱われているアマノリ属植物の葉状の配偶体は単相世代であり、交雑の効果は顕著に現れてこないため(Suto, S., Bull. Jap. Soc. Sci. Fish., 29, 739-748 (1963))、このようなプロトプラストを用いた選抜育種は重要な技術である。また、現在、海苔養殖の種苗はカキ殻糸状体として供給されるが、半年間の培養期間を必要とし、この間の大変な労力と経費を解消するため、プロトプラストを直接養殖用の種苗として利用することも考えられている(川村嘉応 ほか、月刊海洋,27,661-665 (1995))。こうした利用に本発明の技術は応用されよう。
上記したようなプロトプラストを用いた研究や育種を可能にするためには、高品質のプロトプラストを高収率で安定に調製するための方法を確立しなければならない。そのため、プロトプラストの作出に用いる酵素の種類や、最適濃度などについて、純化した酵素を用いた詳細な検討が必要であり、このような実験に、本発明で得られたHdManは応用できると期待される。さらに、スサビノリのプロトプラストの作出においてその効果が認められるキシラナーゼなど、エゾアワビマンナナーゼ以外のプロトプラストの作出に関わる酵素との組合せた利用についても研究が可能となる。
明細書及び図面において、用語は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。代表的な用語の意味を以下に示す。
タンパク質、ペプチドなどのアミノ酸配列に関しては:
A:アラニン(Ala) M:メチオニン(Met)
C:システイン(Cys) N:アスパラギン(Asn)
D:アスパラギン酸(Asp) P:プロリン(Pro)
E:グルタミン酸(Glu) Q:グルタミン(Gln)
F:フェニルアラニン(Phe) R:アルギニン(Arg)
G:グリシン(Gly) S:セリン(Ser)
H:ヒスチジン(His) T:スレオニン(Thr)
I:イソロイシン(Ile) V:バリン(Val)
K:リジン(Lys) W:トリプトファン(Trp)
L:ロイシン(Leu) Y:チロシン(Tyr)
ヌクレオチド配列に関しては:
A:アデニン G:グアニン C:シトシン T:チミン
Y:シトシン又はチミン N: グアニン、アデニン、シトシン又はチミン
R: アデニン又はグアニン
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。以下の実施例において、特に指摘が無い場合には、具体的な操作並びに処理条件などは、DNA クローニングではJ. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2nd Edition, 1989; ISBN 0-87969-309-6 & 3rd Edition, 2001; ISBN 0-87969-577-3)及び D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); 特にPCR法では、H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989; D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995)及びM. A. Innis et al. ed., "PCR Protocols", Academic Press, New York (1990)に記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品等を使用している。
本実施例では海産巻貝としてアワビを用いた。なお、本方法を用いればアワビ以外にも、サザエ、タマキビ、タツナミガイ、アメフラシ、ムラサキイガイ、などからもマンナナーゼを単離できる。
中型エゾアワビ(殻長7×8 cm)20個から得た粗酵素液(約40ml)を、10 mM Na-phosphate (pH 7.0)に平衡化してあるTOYOPEARL CM-650Mカラム(東ソー(株)、2.5×26.5 cm)に供した。その結果、マンナナーゼ活性は主に画分63-68に溶出した(図1)。TOYOPEARL CM-650Mに吸着したマンナナーゼ高活性画分(画分63-68)を集め、もう一度同じTOYOPEARL CM-650Mカラムで再クロマトグラフィーを行った後、活性画分を10 mM Na-phosphate (pH 7.0)に透析し、同溶液に平衡化してあるハイドロキシアパタイトカラム(1.5 x 20 cm)に供した。その結果、マンナナーゼは画分57-63に溶出した(図2)。上記クロマトグラフィーで得られた高活性画分(画分57-63)をApollo Centrifugal Concentrator 20ml (Apollo, MA USA)を用いて約3mlに濃縮した後、この濃縮物をTOYOPEARL HW-50Fカラム(東ソー(株)、2×90 cm)でゲル濾過した。その結果、マンナナーゼは画分76-79に溶出した(図3)。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によれば、このように精製したマンナナーゼは分子量約39,000の単一バンドを示した(図3中の写真)。上記の方法で精製したアワビ・マンナナーゼの比活性は11.5U/mg、収量は1.59%であり、粗酵素からの精製度は約143.1倍であった(表1)。なお、マンナナーゼ活性は、5mg/mlの Locust bean gum(ガラクトマンナン)を含む1mlの10 mM Na-phosphate (pH 7.0)中30℃で測定した。即ち、一定時間ごとに反応液の0.1mlを分取し、あらかじめ100℃で加熱してある0.5 mlの0.1% SDSに加えることにより反応を停止し、マンナナーゼ作用により遊離した還元糖をPark-Johnson法により定量した。1分間の反応により1μmoleのマンノースに相当する還元糖を生成する酵素量を1 Uとした。以上のように、アワビ・マンナナーゼは各種クロマトグラフィーを行うことにより高純度に精製された。
実施例1で得たアワビ・マンナナーゼの酵素活性のpH依存性を調べた。即ち、酢酸ナトリウム(pH 4.5-6.0)、リン酸ナトリウム(pH 6.0-8.5)、およびグリシン-NaOH(pH 8.5-10.5)で所定のpHに調整した5mg/mlのLocust bean gumを含む1mlの反応混液に、アワビ・マンナナーゼ約0.5Uを加えて酵素反応を行い、反応生成物である還元糖を定量することにより活性値を算出した。その結果、アワビ・マンナナーゼの至適pHは7.5付近であることが明らかになった(図4)。次に、実施例1で得たアワビ・マンナナーゼの酵素活性の温度依存性を調べた。即ち、10mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)と5mg/mlのLocust bean gumを含む1 mlの反応混液中に、アワビ・マンナナーゼを約0.5U加え15-60℃で活性を測定した。その結果、アワビ・マンナナーゼの至適温度は約45℃であることが明らかになった(図5)。また、pH 7.0においては40℃30分間の加熱によっても90%の活性が残存した(図6)。
実施例1で得たアワビ・マンナナーゼの活性におよぼす各種試薬の影響を調べた。その結果、表2に示すようにアワビ・マンナナーゼの活性はAg+によってほぼ100%阻害され, Co2+, Fe2+, Cu2+によって40〜50%阻害されることが分かった。
本実施例では、実施例1で得たアワビ・マンナナーゼの基質特異性を調べた。即ち、実施例1で得たアワビ・マンナナーゼを、Locust bean gum(ガラクトマンナン)、Konjakマンナン(グルコマンナン)およびivory nutマンナン(直鎖状β-1,4-マンナン)に作用させた。その結果、それらはいずれも良く分解されることが分かった(図7)。また、Locust bean gumを基質とした際のKm値は約0.8 mg/mlと見積られた。一方、キシラン、アガロース、カルボキシメチルセルロース、デキストランは全く分解しなかった。
本実施例では、実施例1で得たアワビ・マンナナーゼによりβ-1,4-マンナンあるいはマンノオリゴ糖を分解した際にどのような生成物が得られるかを分析した。即ち、β-1,4-マンナン、マンノヘキサオース、マンノペンタオース、マンノテトラオース、マンノトリオースおよびマンノビオース(いずれもMegazyme社)を4 mM Na-phosphate (pH 7.0)に5 mg/mlになるように懸濁あるいは溶解し、0.5U/ml のアワビ・マンナナーゼを加えて分解し、その反応物を薄層クロマトグラフィーで分析した。その結果、図8に示すように、アワビ・マンナナーゼは、β-1,4-マンナンを分解して主にマンノテトラオース、マンノトリオース、およびマンノビオースを生成した。また、マンノヘキサオースをマンノテトラオース、マンノトリオース、マンノビオースに、マンノペンタオースをマンノトリオースとマンノビオースに分解したが、マンノテトラオース、マンノトリオース、およびマンノビオースを分解しないことが明らかになった。この結果は、アワビ・マンナナーゼがβ-1,4-マンナンからマンノテトラオース、マンノトリオース、およびマンノビオースを製造する酵素製剤として有効であることを示している。
本実施例では、実施例1で得たアワビ・マンナナーゼを紅藻スサビノリの葉状体に作用させ、細胞分散能があることを確認した。即ち、葉長約5 mmのスサビノリ(P. yezoensis)葉状体を1.5 mlのテストチューブに入れ、ここにアワビ・マンナナーゼを5U、および0.7Mソルビトールを含む人工海水1mlを加えて22℃のインキュベーター中で分解した。その結果、スサビノリの葉状体は10〜20細胞から成る細胞塊に分解・分散されることが明らかになった(図9)。このことは、アワビ・マンナナーゼが紅藻細胞間の接着構造多糖であるマンナンを分解し、細胞間接着力を低下させる能力を有することを示している。
本実施例では、実施例1で得たアワビ・マンナナーゼの部分アミノ酸配列を決定し、さらにcDNAをクローニングした。即ち、精製したアワビ・マンナナーゼのN末端アミノ酸配列をABI社製Procise492型プロテインシーケンサーで分析した。その結果、N末端27残基のアミノ酸配列はAsp Arg Leu Ser Val Gln Gly Asn His Phe Val Lys Gly Gly Gln Lys Val Phe Leu Ser Gly Ala Asn Leu Ala Ala Val〔配列番号3〕と同定された。さらに、タンパク質内部領域のアミノ酸配列を明らかにするために、ABI社製4700型質量分析計によりde novo解析を行った。その結果、Asp Phe Leu Arg〔配列番号4〕、Asn His Tyr Ser Asp Ala Cys〔配列番号5〕、Asp Thr Trp Ala His Lys〔配列番号6〕の配列が決定された。
次に、アワビ・マンナナーゼのcDNAをクローニングするために、アワビ肝膵臓から定法に従いmRNAを調製した。アワビのTotal RNA抽出は、次のように行った。アワビ内臓組織(5g)を4M GTC溶液(4M GTC, 25mM クエン酸ナトリウム(pH7.0), 0.5%サルコシル)(50ml)でホモジナイズ処理した後、2M 酢酸ナトリウム(5ml, pH4.0)を加え均一化し、次に等量の水飽和フェノールを加えて均一化し、遠沈管に分注後、クロロホルム・イソアミルアルコール(50:1)を1/5量加えボルテックスし、氷上に15分間静置し、次に4℃で遠心(5000g, 20min)して遠心上層を回収後、等量のイソプロパノール、1/2量の0.8Mクエン酸ナトリウム-1.2M NaClを加えて、室温で10分間放置後、4℃で遠心(5000g, 10min)して、上清を捨て、次に得られた沈殿を4M GTC溶液を加え溶解し、イソプロパノール, 1/2量0.8Mクエン酸ナトリウム-1.2M NaClを加え、-20℃で30分間静置後、4℃で遠心(12000rpm、10min)して上清を捨て、得られた沈殿を80%エタノールで洗浄してから、4℃で遠心(12000rpm、10min)し、Total RNAサンプルを得た。
Total RNAサンプルからmRNAを精製するには、OligotexTM-dT30<Super> (TaKaRa、日本)を使用して行った。操作は当該キットのプロトコルに従った。試料溶液にOligotex-dT30<Super>を加え、終濃度0.8M 程度のNaCl存在下、37℃でpoly(A)-oligo(dT)30間にハイブリッドを形成させた後、mRNA-Oligotex複合体を回収し、次にこの複合体に滅菌水、あるいは低塩濃度のバッファーを加えて65℃、5分間の熱処理を行い、mRNAを溶出する。
こうして得られたmRNAから逆転写反応によりcDNAを作成した。さらに、決定した上記N末端配列(Asp Arg Leu Ser Val Gln Gly Asn His Phe Val Lys Gly Gly Gln Lys Val Phe Leu Ser Gly Ala Asn Leu Ala Ala Val〔配列番号3〕)と内部アミノ酸配列(Asp Thr Trp Ala His Lys〔配列番号6〕)に基づき、表3に示すPCR用の縮重プライマーを合成した。配列表の配列番号7及び8(SEQ ID NOs:7 & 8)のプライマーとMarathonTM cDNA Amplification Kit (Clontech社)を使用し、配列表の配列番号7及び8(SEQ ID NOs:7 & 8)のプライマーと当該キットに添付のプライマー類(CDS Primer, Marathon cDNA Adaptor, AP1 Primer, AP2 Primer)でもってファーストストランド合成、セカンドストランド合成、アダプターライゲーション、5'-RACE PCR及び3'-RACE PCRを実施した(操作は当該キットに添付のユーザーマニュアルにしたがって行った)。その結果、本酵素のほぼ全体をコードするcDNAを増幅できた。なお、Fw1プライマーは本酵素のN-末端領域のアミノ酸配列に基づいて合成した順方向プライマーであり、Rv1プライマーは本酵素のC末端領域のアミノ酸配列に基づいて合成した逆方向プライマーである。本酵素の非翻訳領域までを含む広範囲の塩基配列領域を5'-RACEおよび3'-RACE法により増幅して、本酵素のN-末端からC-末端までを完全に含むcDNAの塩基配列を決定した。
クローニングベクターおよび宿主菌は、次のようである。すなわち、クローニングベクターはpT7-Blue (Novagen社)を用い、このベクターにアワビ・マンナナーゼ遺伝子(HdMan)をサブクローニングした。そして、そのクローニングしたベクター名は「HdMan-pT7」と名づけた。サブクローニングの宿主菌はE. coli JM109株を使用した。
このようにして決定したアワビ・マンナナーゼcDNAの構造模式図および全塩基配列を図10と図11(配列表の配列番号10(SEQ ID NO: 10)参照)にそれぞれ示す。アワビ・マンナナーゼcDNAの全長は1,232bpから成り、その15番塩基から1,148番塩基までの1,134bpが翻訳領域で、377アミノ酸をコードしている。そのうち、翻訳領域の5'末端15番塩基から69番塩基までの57bpは翻訳開始コドンおよび18アミノ酸残基から成るシグナルぺプチドをコードしていた。従って、成熟酵素は359アミノ酸残基から成ると結論される。なお、5'端14塩基部分と3'端84塩基部分が非翻訳領域で、3'末端には6塩基から成るpoly(A)とその13塩基上流にはAATAAAのポリアデニル化シグナル配列が認められる。このことは、本cDNAが真核細胞生物起源であることを示すものである。本明細書で開示されているようにして、当該アワビ・マンナナーゼcDNAを発現ベクターに組み込んで宿主細胞で発現させて、アワビ・マンナナーゼの産生を確認できる。
〔アワビ・マンナナーゼの大腸菌による発現〕
本実施例では、上記で得られたアワビ・マンナナーゼ(以下、単に「HdMan」と略記する場合もある)のcDNAクローンを用いてHdManの大腸菌発現系を構築し、組換え(リコンビナント: recombinant)タンパク質を発現させた。
〔材料と方法〕
1.大腸菌による発現系の構築
アワビ・マンナナーゼ(HdMan)の大腸菌による発現は、Champion pET Directional TOPO Expression Kit (Invitorogen)を用いて行った。
1)発現用cDNA断片のPCRによる増幅
発現用ベクターに組み込むためのcDNA断片を調製するため、前章で得られたFL-cDNAを鋳型とし、PCRを行った。PCR反応にはPyrobest DNA Polymerase (TaKaRa)を用いた。PCR反応混液の組成は、Pyrobest DNA Polymeraseを0.25 μl (1.25 U)、10×Pyrobest Buffer IIを5 μl、2.5 mM dNTP Mixtureを4 μl、各プライマーを10 pmol、プラスミドDNAを50 ngおよび滅菌蒸留水を加え全量が50 μlになるよう調製した。反応条件は(1)95℃ 30秒間、(2)55℃、60秒間、(3)72℃ 90秒間を1サイクルとして、これを30回繰り返す条件で行った。サーマルサイクラーはGene Amp PCR System 9700 (Applied Biosystems)を用いた。
2)PCR産物のクローニング
i)発現ベクターへのライゲーション
PCR産物は、Champion pET Directional TOPO Expression Kitを用いてプラスミドベクターpET-101(図12)へ組み込んだ。具体的には、PCR産物4 μlに、TOPO 101 vector 0.5 μl、Salt solution 0.5 μlを加え、25℃で5分間インキュベートした。ライゲーション反応は氷冷することにより停止した。
ii)大腸菌の形質転換
発現用の宿主大腸菌としては、E. coli BL21(DE3) (Stratagene)を用いた。具体的には、-80℃で凍結した120 μlのコンピテント細胞E. coli BL21(DE3)を氷上で穏やかに融解した。これにプラスミドDNA溶液を静かに加えて氷冷下で30分間静置し、プラスミドを菌体の表面に付着させた。次に42℃で45秒間インキュベートし、宿主大腸菌にプラスミドを取り込ませた。その後、直ちに2分間氷冷し、SOC培地250 μlを加えて、90 rpm、37℃で1時間振とうした。反応後、適当量の培養液を、あらかじめ50 μlのX-gal (5-Bromo-4-Chloro-3-Indolyl β-D-Galactoside) (20 mg/ml)および25 μlのIPTG (Isopropyl β-D-Thiogalactopyranoside) (200 mg/ml)を塗布しておいたLB寒天培地(50 μg/mlアンピシリン含有)にスプレッダーで塗布し、37℃で一晩倒置培養した。
2.ウエスタンブロッティング
試料タンパク質をSDS-PAGEで分離した後、アクリルアミドゲルを10分間Transfer buffer(0.1 M Tris - 0.192 M glycine - 20% methanol)に浸して平衡化させた。セミドライブロッター(ATTO)に陽極から順にTransfer bufferに浸したろ紙3枚、ニトロセルロース膜(ADVANTEC)、平衡化したアクリルアミドゲルおよびTransfer bufferに浸したろ紙3枚をセットし、120 mAで60分間通電し、ニトロセルロース膜にタンパク質を転写した。転写後、タンパク質非局在部分を20 mlのBlocking溶液(20 mM Tris-HCl(pH 7.5) - 150 mM NaCl - 0.05% Tween20 - 2% スキムミルク)中で15分間振とうしてブロッキングした後、0.2%のスキムミルクを含むTTBS溶液(20 mM Tris-HCl(pH 7.5) - 150 mM NaCl - 0.05% Tween20)で適宜稀釈した2〜5 mlの1次抗体を加えて90分間浸透した。反応後、ニトロセルロース膜はTTBS溶液で3回洗浄した後、0.2%のスキムミルクを含むTTBS溶液で適宜稀釈した2〜5 mlの2次抗体を加え、90分間振とうした。次に、ニトロセルロース膜をTTBS溶液で3回洗浄した後、化学発光基質SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(PIERCE)に浸し、化学発光による検出を行った。抗体は、1次抗体としてAnti-Hisを、2次抗体としてAnti-rabbit IgG(SIGMA)を用いた。
3.組換えHdManの性状
組換えHdManの性状の分析は、実施例2および4で示した方法で行った。また、大腸菌で発現したHdManを用いたスサビノリの葉状の配偶体の酵素処理は、加える酵素の量を0.5 Uとしたこと以外は実施例6で示した方法と同条件で行った。
〔結果〕
1.HdManの大腸菌発現系の構築
pET-101プラスミドベクターに挿入するcDNAを調製するため、シグナルペプチドをコードする領域を除く5'末端領域に、ライゲーションに必要な配列 (CACC)および開始コドン(ATG)を導入するように設計したフォワードプライマーEPF(配列表の配列番号12(SEQ ID NO: 12))およびリバースプライマーEPR(配列表の配列番号13(SEQ ID NO: 13))を設計し(表4)、それらを用いて PCR を行った。
その結果、約1,000塩基対のcDNAが増幅された。このPCR増幅断片はpET-101プラスミドベクターにライゲーションした。この組換えpET-101がpET-101プラスミドベクターとHdManの組換え体であることを確認するためE. coli JM109 (TaKaRa)に導入した後、塩基配列の決定を行った(図13、配列表の配列番号15(SEQ ID NO: 15)参照)。決定された塩基配列より、発現されるタンパク質はpET-101に由来するHisタグを含む32残基のアミノ酸配列から成るペプチド領域がC末端に付加された、358残基のアミノ酸配列からなることが推定された(配列表の配列番号16(SEQ ID NO: 16)参照)。また、そのアミノ酸配列から発現されるタンパク質の分子量は43,296と算出された。
2.HdManの発現の確認
HdManが大腸菌内において発現可能であるかどうかを検討した。上述した組換えpET-101を導入した大腸菌BL21(DE3)のシングルコロニーを釣菌して、100 mlの2×YT培地(50 μg/mlアンピシリン含有)に植菌し、150 rpm、15℃で振とう培養した。吸光度600 nm において濁度が0.6になってからIPTGを終濃度0.5 mMになるよう添加して、さらに培養した。この時、IPTG添加直前、また、培養2、4、6、10、14、18、22および24時間経過ごとに培養液の一部を分取し、遠心分離して集めた菌体ペレットをSDS-PAGEの試料緩衝液に懸濁した後、SDS-PAGEに供した(図14-A)。また、ウエスタンブロッティングにより、目的のタンパク質の発現を確認した(図14-B)。その結果、SDS-PAGEでは発現タンパク質と考えられる明らかなバンドは認められなかったが、ウエスタンブロッティングでは、分子量約43,000にHdManと考えられるタンパク質バンドが検出された。また、その発現はIPTG誘導開始6時間後から確認された。18時間経過後には、HdManの分解物と思われる複数のバンドが確認された。
3.HdManの大量発現および精製
組換えpET-101を保有する大腸菌BL21(DE3)を1,000 mlの2×YT培地(50 μg/mlアンピシリン含有)に植菌し、150 rpm、15℃で振とう培養した。吸光度600 nm において濁度が0.6になってからIPTGを終濃度0.5 mMになるよう添加し、さらに12時間培養した。菌体は5,000 × g、5分間の遠心分離により集め、20 mlの0.75 M ショ糖緩衝液(0.1 mM Tris-HCl(pH7.8)- 0.75 M ショ糖)に懸濁した後、0.2 mlのリゾチーム溶液(2% リゾチーム - 0.1 mM Tris-HCl(pH 7.8)- 0.75 M ショ糖)を加え、静かに撹拌した。氷上に10分間置いた後、40 mlの2.5 mM EDTA(pH7.8)を少しずつ静かに撹拌しながら加えた。氷上に10分間置いた後、50 mlの遠沈管に分注し、12,000 × g、10分間遠心分離した。得られた上清はペリプラズムタンパク質画分として回収した。また、沈殿したスフェロプラストは、細胞を破壊するため、20 mlのTris-HCl緩衝液(10 mM Tris-HCl(pH 7.8) - 0.5 M NaCl)を加え、ピペットでよく撹拌した。さらに、超音波処理を数回繰り返し、細胞を破壊した後、12,000 × g、10分間遠心分離した。得られた沈殿は、不溶性細胞質画分として、また、上清は可溶性細胞質画分として回収した。
目的のタンパク質の局在について確認するため、ショ糖緩衝液に懸濁した菌体、ペリプラズムタンパク質画分、不溶性細胞質画分、可溶性細胞質画分をそれぞれSDS-PAGEの試料緩衝液で溶解した後、SDS-PAGE(図15-A)およびウェスタンブロットに供した(図15-B)。その結果、ショ糖緩衝液に懸濁した菌体、不溶性細胞質画分、可溶性細胞質画分に、組換えHdManと考えられるタンパク質が含まれていることが確認された。そこで、可溶性細胞質画分に含まれている組換えHdManの精製を試みた。
可溶性細胞質画分をNi-NTA アガロース(invitrogen)を充填したカラムに供し、His タグを持つ組換えHdManを吸着後、洗浄緩衝液(20 mM イミダゾール - 20 mM Tris-HCl (pH 7.8) - 0.5 M NaCl)で洗浄した。次にに溶出緩衝液(150 mM イミダゾール - 20 mM Tris-HCl (pH 7.8) - 0.5 M NaCl)を加え溶出した。溶出液は0.5 mlずつのフラクションとして回収し、全量で2 mlの溶出液を採取し、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットに供した。その結果、Niカラムから溶出した組換えHdManを含む溶出液中には、SDS-PAGEにより複数のバンドが確認された(図16-A)。また、ウェスタンブロットでAnti-His抗体で検出したところ、組換えHdManと考えられる分子量約43,000のバンドの他に、その分解物と考えられる複数のバンドが検出された(図16-B)。このときNiカラムから溶出した総タンパク量は0.66 mgであり、比活性は2.12 U/mgであった。
4.組換えHdManの性状
組換えHdManの至適pHはpH 8.0であり(図17)、至適温度は40℃であった(図18)。また、pH 7.0においては40℃以上の温度では著しく失活、35℃では30分間の加熱によっても97%の活性が残存した(図19)。組換えHdManはエゾアワビの消化液より精製したHdMan(エゾアワビ天然HdMan)と同じくLocust bean gumのほか、グルコマンナン、直鎖状β-1,4-マンナンを分解したが、キシラン、アガロース、カルボキシルメチルセルロース、デキストランはまったく分解しなかった(図20)。次に、組換えHdManがエゾアワビ天然HdManと同じくスサビノリの葉状の配偶体を断片化することを確認するために、組換えHdManを藻体に作用させた。その結果、4日間の酵素処理で藻体が断片化されることを確認した(図21)。しかし、エゾアワビ天然HdManで藻体を処理したときほど小さな細胞塊は生じなかった。
〔考察〕
シグナルペプチドを除くHdManをコードしているcDNAをPCRにより増幅し、これを組み込んだpET-101プラスミドベクターと宿主大腸菌BL21(DE3)を用いた発現系を構築し、HdManの発現を試みた結果、IPTG 誘導下で、可溶性細胞質画分にHdManの発現が確認された。発現したタンパク質が目的のものであるか否かは、ウエスタンブロッティングにより確認を行い、分子量約43,000に組換えHdManと考えられるバンドが検出された。これは、アミノ酸配列から算出した分子量43,296とほぼ一致した。
上記実施例では、組換えHdManをNiカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。その結果、0.66 mgのタンパク質が溶出された。得られた組換えHdManは、マンナナーゼ活性を有することが確認された。その比活性は2.12 U/mgであり、これはエゾアワビ天然HdManと比較して約5分の1の比活性であった。これは、SDS-PAGEパターンでも明らかであるように、精製が不十分であるためだと考えられる。
組換えHdManの基質特異性は、エゾアワビ天然HdManと同様であり、Locust bean gumのほか、グルコマンナン、直鎖状β-1,4-マンナンを分解し、キシラン、アガロース、カルボキシルメチルセルロース、デキストランは全く分解しなかった。また、組換えHdManは、スサビノリの葉状の配偶体を断片化することが確認された。エゾアワビ天然HdManで処理したときと比較して、藻体の断片化はあまり進まなかった。これは酵素の量がエゾアワビ天然HdMan を用いた処理と比べ10分の1しか入っていないためであると考えられ、酵素の量を増やすことによりエゾアワビ天然HdManと同様に藻体を細胞塊に断片化できると期待される。
ところで、組換えHdManの至適pH、至適温度および熱安定性はエゾアワビ天然HdManと比較して若干の相違があった。すなわち、至適pHは、エゾアワビ天然HdManの至適pHがpH 7.5であるのに対して、組換えHdManではpH 8.0とアルカリ性に偏り、至適温度はエゾアワビ天然HdManでは45℃であるのに対して、組換えHdManでは40℃と低くなっていた。また、温度安定性はエゾアワビ天然HdManでは、pH 7.0において40℃で30分間の加熱によっても90%の活性が残存したのに対して、組換えHdManでは、pH 7.0において40℃で30分間の加熱では26.5%の活性しか残存せず、熱安定性の低下が認められた。これらは、原核生物である大腸菌を用いて真核生物であるエゾアワビ由来のマンナナーゼを発現させたため、立体構造の形成や翻訳後修飾が正常に行われていないためとの可能性が考えられる。
また、組換えHdManの大腸菌による発現量は低いものであった。これは、エゾアワビと大腸菌の間で使用されるコドンの頻度に偏りがあって互いに異なっているために翻訳が妨げられているのではないかとも推測される。例えば、大腸菌による発現系において、目的遺伝子中に使用頻度の低いコドンが多く使われることによって、発現の低下の原因となることが知られている(Sorensen, M. A. et al., J. Mol. Biol., 207, 365-377 (1989); Zhang, S. et al., Gene, 105, 61-72 (1991))。また、大腸菌において、アルギニン(Arg)コドンのAGA、AGG、CGG、CGA、イソロイシン(Ile)コドンのAUA、ロイシン(Leu)コドンのCUA、GlyコドンのGGA、プロリン(Pro)コドンのCCCはほとんど使用されないことが知られている(Ikemura, T., J. Mol. Biol., 146, 1-21 (1981))。一方、HdManをコードするcDNA中にアルギニンは8残基存在するが、これをコードするコドンには大腸菌において使用頻度が非常に低いコドンAGAが3つ、AGGが1つ、CGGが1つ含まれる。また、19残基あるイソロイシンの内3残基で、28残基あるロイシンの内3残基で使用頻度が低いコドンが使用されていた。
また、ウエスタンブロッティングで確認された組換えHdManの分解も発現量低下の一因となっているとも考えられる。
以上のように、組換えHdManは、エゾアワビ天然HdManとわずかに性状が異なるものの、エゾアワビ天然HdManと同様、その至適pHは海水のpHに近く、至適温度は他の軟体動物由来のマンナナーゼと比較して低いなど、スサビノリのプロトプラストの作出用酵素のひとつとして利用できる特性を持つと考えられる。
本発明で、組換えDNA技術を用いてHdManを大腸菌により発現することに成功している。効率の良い組換えHdManの発現のために、例えば、温度やIPTGの濃度など大腸菌の培養や誘導条件、発現ベクターなど、より適切なものや条件を選択するのが好ましいことが判明した。また、ムラサキイガイのマンナナーゼにおいて大量の発現が成功している、メタノール代謝酵母(Pichia pastoris)を用いた発現系(Xu, B. et al., Eur. J. Biochem., 269, 1753-1760 (2002))など大腸菌以外の宿主系を使用することも有効である可能性があると考えられる。さらに、宿主-ベクター系に適したコドンに置換えた遺伝子を使用することも好ましい可能性があることに注意されるべきでもある。
また、効率的なスサビノリのプロトプラストの作出のためは、HdManと他の酵素類を組み合わせるなどの様々な実験を行う必要があるが、そのためにエゾアワビ天然HdManを大量に調製することは、アワビの単価を考慮すると困難である。したがって、HdManを大腸菌などによる大量発現系で大量、安価かつ簡便に調製することは重要である。
本発明のマンナナーゼは、新規なアミノ酸配列を有し、巻貝類由来のマンナナーゼに関する遺伝的情報を提供するものである。本発明のマンナナーゼは、巻貝類に由来しており、水産加工、水産関係バイオテクノロジーにおいてその利用価値が高く、大量に入手可能なマンナンの利用、オリゴ糖の生産、飼料効率を高めるための飼料添加剤製造、海藻プロトプラスト形成などの用途に広く利用できると共に、本発明は養殖や水産加工に伴なう廃棄物の有効利用や資源化の実現に有用である。本発明の方法により、高品質のマンナナーゼを製造することができる。しかも、本発明の方法は、大量生産に適しているので、コストの面でも優れている。本発明の製造方法によれば、従来と比較して、簡便な操作で高純度のマンナナーゼを、短時間で得ることができる。それ故、本発明の技術は、上記優れた特質を有し、産業上の利用性も高いし、特徴あるマンナナーゼの効率的な製造手段を与えるもので極めて有用である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
SEQ ID NO: 7, Description of Artificial Sequence: Oligonucleotide to act as a primer for PCR; y stands for c or t at position 3; n does for g, a, c or t at positions 6, 12 and 15; and r does for a or g at positions 9, 18 and 21
SEQ ID NO: 8, Description of Artificial Sequence: Oligonucleotide to act as a primer for PCR; y stands for c or t at position 1; r does for a or g at positions 4 and 16; and n does for g, a, c or t at positions 7 and 13
SEQ ID NO: 12, Description of Artificial Sequence: Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 13, Description of Artificial Sequence: Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 14, Description of Artificial Sequence: Designed fusion protein for HdMan
SEQ ID NO: 15, Description of Artificial Sequence: Designed polynucleotide to act as an expression gene for HdMan

Claims (10)

  1. (1)巻貝のアワビに由来し、下記の特性を有するタンパク質、
    (a)作用:本酵素は、ガラクトマンナンを分解して、還元糖を遊離する
    (b)基質特異性:本酵素は、ローカストビーンガム(ガラクトマンナン)、コンニャクマンナン(グルコマンナン)およびゾウゲヤシマンナン(直鎖状β-1,4-マンナン)をいずれも良く分解するが、キシラン、アガロース、カルボキシメチルセルロース、デキストランは全く分解しない
    (c)分子量:約39,000の単一バンド(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)
    (d)至適温度:45℃
    (e)至適pH:pH6.5〜8.5(最適pH:pH7.5)
    (f)N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号3のアミノ酸配列
    (g)熱安定性:pH 7.0においては40℃30分間の加熱によっても90%の活性が残存
    又は
    (2)配列表の配列番号2、9又は16のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    であることを特徴とするマンナナーゼポリペプチド。
  2. (1)請求項1の(2)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
    (2)配列表の配列番号1又は10に示されたDNAからなる群から選択された塩基配列を有するヌクレオチド配列又はそれと相補的な塩基配列を有するヌクレオチド配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ請求項1の(1)のタンパク質又は請求項1の(2)のポリペプチドの示すマンナナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
    からなる群から選択されたものであることを特徴とするマンナナーゼポリヌクレオチド。
  3. 配列番号10の15番塩基から1,148番塩基の塩基配列から成るマンナナーゼ遺伝子、配列番号10の69番塩基から1,145番塩基の塩基配列から成るマンナナーゼ遺伝子、あるいは配列番号15の5番塩基から1,180番塩基の塩基配列から成るマンナナーゼ遺伝子であることを特徴とする請求項2に記載のポリヌクレオチド。
  4. 請求項2又は3に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
  5. 請求項2若しくは3に記載のポリヌクレオチド又は請求項4に記載の組換えベクターで宿主細胞を形質転換されて得られ、且つ、請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチドを発現することを特徴とする形質転換された宿主細胞。
  6. 請求項5に記載の形質転換宿主細胞を培養条件下に維持して、請求項1記載のタンパク質又はポリペプチドを発現せしめることを特徴とする請求項1記載のタンパク質又はポリペプチドの製造法。
  7. 請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチド、請求項2に記載のポリヌクレオチド、請求項4に記載の組換えベクター及び請求項5に記載の形質転換宿主細胞からなる群から選択されたものを含有することを特徴とする海藻プロトプラスト作製組成物。
  8. 請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチド生産のため、配列番号1〜16からなる群から選択された配列の使用。
  9. 請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチドで海藻又は植物を処理して断片化された海藻細胞又は植物細胞を取得することを特徴とする海藻又は植物のプロトプラスト作成法。
  10. 請求項1に記載のタンパク質又はポリペプチドでマンナン含有基質を処理して加水分解された生成物を取得することを特徴とするマンナン成分加水分解法。
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