JP4166364B2 - 美爪料 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、安定性に優れ、塗膜のつや及び化粧持ちの良好な美爪料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、美爪料においては、有機・無機粉体を安定に分散させるため、ゲル化剤を添加している。しかし、ゲル化剤のみで系を安定に保持するために、これを大量に配合すると、のび、滑らかさなどの官能、使用性を著しく低下させてしまうという欠点があった。そこでゲル化剤の配合量を少なくするため、粉体を界面活性剤、シリコーン化合物で処理することにより、粉体の分散性、沈降性を改善し、系を安定にする試みがなされてきた。
しかしながら、界面活性剤で処理した粉体を用いた場合には、美爪料は溶剤成分が多いため、界面活性剤が溶剤中へ溶出し、溶出した界面活性剤の作用により化粧持ちが悪くなるという欠点があった。また、シリコーン化合物で処理した粉体を用いた場合、粉体の沈降防止能力が充分ではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこでフルオロアルキル基を有する化合物で表面を処理した粉体を用いることにより、粉体の分散性、沈降性等の安定性や化粧持ちが良好な美爪料は得られたが、樹脂溶液によっては、表面処理粉体との親和性に劣るものもあり、その結果塗膜のつやは必ずしも満足できない場合があった。従って、分散性、沈降性等の安定性に優れ、しかも塗膜のつや及び化粧持ちが良好な美爪料が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、特定のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物処理粉体を含有することによって、処理粉体と樹脂溶液との親和性が向上し、粉体の分散性が向上する結果、少量の粉体で化粧効果を出すことができるため、より塗膜のつやが良好になり、反対に、粉体を多量に配合しても、塗り易さ等の使用性への影響が少なく、安定性に優れ、化粧持ちが良好な美爪料が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明はパーフルオロポリエーテルジアルキルリン酸及びその塩、パーフルオロポリエーテルジアルキル硫酸及びその塩、パーフルオロポリエーテルジアルキルカルボン酸及びその塩から選択される、分子量が300以上であるパーフルオロポリエーテル基を有する化合物で処理した粉体を含有することを特徴とする美爪料を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される処理粉体は、特定のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物で基材粉体を処理したものであり、この特定のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物とは、パーフルオロポリエーテルジアルキルリン酸及びその塩、パーフルオロポリエーテルジアルキル硫酸及びその塩、パーフルオロポリエーテルジアルキルカルボン酸及びその塩から選択される。これらの化合物はパーフルオロポリエーテル基を含有し、かつ粉体表面と親和性を持つためのリン酸基及び硫酸基及びカルボキシル基から選択される極性基を二個有するものである。これらの極性基を二個有することで親和性が向上する。
また、パーフルオロポリエーテル基とは、パーフルオロアルキレン又はパーフルオロアルキルと結合しているエーテル酸素が少なくとも2以上有する基をいうこととする。従って、本発明に係るパーフルオロポリエーテルアルキルリン酸及びその塩には、特開平5−39209号公報及び特開平5−58841号公報に記載のようなエーテル酸素を一つしか持たないパーフルオロオキシアルキル基を含有する化合物は含まれない。
パーフルオロポリエーテル基の分子量は300以上であり、好ましくは500以上であり、好ましい上限は概ね7000程度である。300未満では、撥水・撥油性の付与を十分に行うことができない。
【0006】
パーフルオロポリエーテル部分を構成する好ましいパーフルオロオキシアルキレン基には、例えばパーフルオロオキシメチレン基、パーフルオロオキシエチレン基、パーフルオロオキシイソプロピレン基、パーフルオロオキシn−プロピレン基などが挙げられる。これらから少なくとも1以上が選択され且つ重合してパーフルオロポリエーテル基を構成する。
この中で、特に好ましいパーフルオロポリエーテル基は下記一般式(1)、(2)で表わされる基である。
【0007】
−(X)CFO(CF2CF(CF3)O)(CF2CF2O)m(CF2O)nCF(X)− …(1)
−(X)CFO(CF2CF2CF2O)(CF2CF2O)m(CF2O)nCF(X)− …(2)
(但し、分子量は300以上であり、より好ましくは500以上であり、l、mは0以上の整数を示し、nは1以上の整数を示し、l=m≠0であり、l/n=1〜100であり、より好ましくは20〜40であり、m/n=0.1〜50であり、より好ましくは0.2〜20であり、Xは同一又は異なっても良く、F又はCF3である。)
尚、パーフルオロポリエーテル基が2種以上のパーフルオロオキシアルキレン基を含有する場合において、それぞれ同種のものが連続重合している場合に限られず、ランダム重合或いはブロック重合でも構わない。
【0008】
更に、本発明に係るパーフルオロポリエーテル基を有する化合物と基材粉体との固着力の観点から、前記化合物から粉体との親和性を有する極性基が容易に離脱しないことが必要であり、そのために前記化合物には、少なくとも1以上のオキシアルキレン基を含むことが好ましい。より好ましくは、1〜2である。3以上のオキシアルキレン基が存在すると前記化合物の撥水・撥油性が劣ったものとなるからである。同様に固着力の点で、オキシアルキレン基に加え更に、アルキレン基を含ませてもよい。アルキレン基の好ましい炭素数は2以下である。
【0009】
上記のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物は、パーフルオロポリエーテルジアルキルリン酸及びその塩、パーフルオロポリエーテルジアルキル硫酸及びその塩、パーフルオロポリエーテルジアルキルカルボン酸及びその塩が挙げられるが、中でも好ましくはパーフルオロポリエーテルジアルキルリン酸又はその塩であって、より好ましくは下記一般式(3)、(4)で表わされる化合物である。
【0010】
【化1】
Figure 0004166364
【0011】
【化2】
Figure 0004166364
【0012】
(但し、パーフルオロポリエーテル基の分子量は300以上であり、より好ましくは500以上であり、m/n=0.1〜50であり、より好ましくは0.2〜20であり、rは1〜2であり、qは1又は2である。)
【0013】
本発明の特定のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物で処理を施す粉体としては、従来化粧用粉体として用いられている粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造、等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、燐酸カルシウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー、魚鱗箔等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ウレタンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、蛋白質粉末、微結晶繊維粉末等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、タール色素、レーキ等の有機着色料と雲母チタン等無機粉体との有機−無機複合粉体等の上記粉体の一種または二種以上を複合化したもの等が挙げられる。
【0014】
粉体を特定のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物で表面処理する方法は、特に制限されず、通常の粉体表面被覆処理方法を適用することができる。例えば、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶剤(有機媒体あるいは極性溶媒)に溶解または分散し、粉体と混合し、その後溶剤を除去、乾燥することによって容易に処理粉体を得ることができる。
尚、上記処理後、粉体にパーフルオロポリエーテル基を有する化合物をより強く吸着させるために、高温で焼き付けても良い。また、表面処理にあっては粉体を同時に2種以上混合して処理することもできる。
【0015】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、そのほかのフッ素系化合物、シリコーン系油剤、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤などの公知のコーティング剤で同時に又は重ねて処理してもよい。
【0016】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物による処理量は、その種類によって異なるが、粉体の0.1〜50重量%(以下、単に「%」で示す。)、特に0.5〜20%が好ましい。少なすぎると十分な効果が得られず、多すぎると顔料本来の特性が失われてしまう恐れがある。
このようにして得られた処理粉体の配合量は、全組成中0.01〜50%が好ましく、更に0.1〜25%が好ましい。
【0017】
本発明の美爪料は、上記の構成成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、剤型を保持するためや目的に応じて、通常化粧料に使用される成分を配合することができる。例えば皮膜形成剤、可塑剤、成膜助剤、色材等の被膜形成成分、真溶剤、助溶剤、希釈剤等の溶剤、その他、ゲル化剤、粘度鉱物等の粘度調整剤、沈降防止剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、水溶性成分、美容成分、香料等を各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
皮膜形成剤としては、通常美爪料に使用されるものであれば特に制限されることはなく、例えばニトロセルロース、アルキッド樹脂、アクリル系樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、トルエンスルホンアミドエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル系、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル系、カンフル等が挙げられる。配合量は2〜10%が好ましい。
溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル系、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系、トルエン等の芳香族系等の溶剤が挙げられる。配合量は50〜85%が好ましい。
美容成分としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ビタミン類、生薬等が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記粉体を未処理であるいは前記特定のパーフルオロポリエーテル化合物を除く処理剤、例えば、フッ素系油剤、シリコーン系油剤、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施したものを適宜配合することができる。
【0018】
本発明の美爪料には、ネイルエナメル、エナメルトップコート、エナメルベースコート等を挙げることができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を挙げて更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0020】
製造例1:処理酸化チタン1
ビーカーに2−プロパノールを500gと下記に示すパーフルオロポリエーテルジアルキルリン酸5gを入れ、攪拌しながら酸化チタン95gを添加する。室温で十分攪拌した後、80℃にて1時間混合後、減圧乾燥し、パーフルオロポリエーテル化合物5%処理酸化チタンを得た。
【0021】
(HO)2(O=)PO(CH2CH2O)rCH2CF2O(CF2CF2O)m(CF2O)nCF2CH2(OCH2CH2rOP(=O)(OH)2 …(5)
(式中、m/n=1.8、r=1〜2、パーフルオロポリエーテルジアルキルリン酸の平均分子量は1050であり、パーフルオロポリエーテル基の平均分子量は606である。)
製造例2〜5
製造例1と同様の方法で処理して、パーフルオロポリエーテル化合物3%処理酸化鉄(製造例2:処理酸化鉄2)、パーフルオロポリエーテル化合物5%処理雲母チタン(製造例3:処理雲母チタン3)、パーフルオロポリエーテル化合物1%処理ウレタンパウダー(製造例4:処理ウレタンパウダー4)、パーフルオロポリエーテル化合物3%処理酸化鉄処理雲母チタン(製造例5:処理酸化鉄処理雲母チタン5)、パーフルオロポリエーテル化合物1%処理コンジョウ(製造例6:処理コンジョウ6)を得た。
【0022】
製造比較例1:処理酸化チタン7
イソプロピルアルコールにジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸を溶解し、この中に酸化チタンを添加攪拌後、イソプロピルアルコールを揮発させて、5%界面活性剤処理酸化チタンを得た。
【0023】
製造比較例2:処理酸化チタン8
イソプロピルアルコールにメチルハイドロジェンポリシロキサンを溶解し、この中に酸化チタンを添加攪拌後、イソプロピルアルコールを揮発させて、5%シリコーン処理酸化チタンを得た。
【0024】
製造比較例3:処理酸化チタン9
酸化チタンに水を加えてスラリー状態とし、これにフルオロアルキルリン酸エステルエタノールアミン塩に水を加え攪拌してエマルション状態としたものを注加・混合した後、静置し、洗浄、濾過、乾燥することにより5%フルオロアルキル基含有化合物処理粉体を得た。
【0025】
実施例1〜5及び比較例1〜6 ネイルエナメル
表1に示すネイルエナメルを調製し、分散性、沈降性、塗膜のつや及び化粧持ちについて評価した。その結果も併せて表1に示した。
【0026】
【表1】
Figure 0004166364
【0027】
(製法)
成分1〜9をデスパにて混合撹拌する。これに成分10〜19を添加し、デスパで10分間混合撹拌し美爪料を得た。
【0028】
(試験方法)
分散性
製造直後の美爪料について、以下の基準により評価した。
◎:良好
○:わずかに凝集
△:凝集
×:非常に凝集
沈降性
美爪料を50℃の恒温槽に1ヶ月放置した後、以下の基準により評価した。
◎:沈降無し
○:わずかに沈降
△:沈降
×:非常に沈降
【0029】
塗膜のつや及び化粧持ち
各試料について、パネル10人(手の爪100部位)による使用テストを行い、塗膜のつや、化粧持ち(剥がれ難さ、かけ難さ)について、(1)絶対評価基準を用いて5段階に評価し、各試料ごとの評点の平均値を(2)4段階評価基準を用いて評価した。
(1)絶対評価基準
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
(2)4段階評価基準
◎:4.0〜5.0点
○:3.0〜4.0点未満
△:2.0〜3.0点未満
×:1.0〜2.0点未満
【0030】
表1の結果から明らかなように、本発明の美爪料は分散性が良好で、50℃に1ヶ月放置後も凝集せず、しかも塗膜のつや及び化粧持ちも良好なものであった。これに対し比較品は分散性、沈降性、化粧持ち及び塗膜のつやの全ての点で良好なものはなかった。
【0031】
実施例6 ネイルエナメル
(成分) (%)
1.ニトロセルロース 12
2.アルキッド樹脂 10
3.クエン酸アセチルトリブチル 5
4.dl−カンフル 1
5.有機変性ヘクトライト 1
6.酢酸エチル 15
7.酢酸ブチル 残量
8.イソプロピルアルコール 5
9.赤色202号 0.1
10.処理酸化チタン1 3
11.処理酸化鉄処理雲母チタン5 5
12.処理コンジョウ6 0.1
13.処理雲母チタン3 10
(製法)
上記成分1〜13を混合溶解する。
以上のようにして得られたネイルエナメルは、顔料の分散性、沈降性、化粧持ち及び塗膜のつやに優れるものであった。
【0032】
実施例7 ベースコート
Figure 0004166364
(製法)
上記成分1〜12を混合溶解する。
以上のようにして得られたベースコートは、顔料の分散性、沈降性、化粧持ち及び塗膜のつやに優れるものであった。
【0033】
実施例8 トップコート
Figure 0004166364
(製法)
上記成分1〜9を混合溶解する。
以上のようにして得られたトップコートは、顔料の分散性、沈降性、化粧持ち及び塗膜のつやに優れるものであった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の美爪料は、顔料の分散性、経時による沈降等の安定性も良好であり、しかも塗膜のつや及び化粧持ちにおいて良好な品質を有するものである。

Claims (1)

  1. 次の一般式(3)
    Figure 0004166364
    (但し、パーフルオロポリエーテル基の分子量は300以上であり、m/n=
    0.1〜50であり、rは1〜2であり、qは1又は2である。)
    で表される化合物で処理した粉体を含有することを特徴とする美爪料。
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