JP4164614B2 - 内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置 - Google Patents

内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸気バルブと排気バルブの少なくとも一方を電磁アクチュエータで駆動する内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、内燃機関の吸排気バルブを電磁アクチュエータで駆動する電磁駆動バルブシステムが実用化に向けて研究されている。この電磁駆動バルブシステムは、バルブの開閉タイミングを電気的に自由に制御でき、理想的な可変バルブタイミング制御を実現できる利点があるが、駆動制御系やセンサ系が故障すると、バルブの開閉タイミングが異常にずれてバルブとピストンが衝突したり、或は、バルブの開閉動作が停止して、気筒内に吸入された燃料がそのまま排出されて排気エミッションが悪化する等の不具合が発生する。
【0003】
そこで、特開平8−200135号公報に示すように、電磁駆動バルブの開弁タイミングと閉弁タイミングをセンサで検出し、その開弁/閉弁タイミングが予め設定された上下限値から外れた時に電磁駆動バルブの異常と判定することが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電磁駆動バルブの開弁/閉弁タイミングは、運転条件等によって大きく変化するため、異常検出を精度良く行うためには、異常判定条件(開弁/閉弁タイミングの上下限値)を運転条件等によって変更する必要があるが、異常判定条件を運転条件等によって変更する構成にすると、演算処理が複雑化して、演算負荷が増加する欠点がある。また、近年の車両では、アクセルセンサやスロットルセンサをそれぞれ2個ずつ設けて、2つのセンサ出力を比較することで、センサ系の異常の有無を判定できるようにしたものがあるが、1つの内燃機関のバルブの総数は少なくないため、全気筒の電磁駆動バルブにセンサを2個ずつ設けると、センサ数が大幅に増加して、コストアップ幅が大きくなるという欠点がある。しかも、電磁駆動バルブの電磁アクチュエータには、空きスペースが少ないため、2つのセンサを搭載するのはスペース的に困難であるという事情もある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、各電磁駆動バルブにそれぞれセンサを1個ずつ設置するだけで、2個ずつ設置した場合とほぼ同様の異常検出を実施することができ、上述した従来の問題を一挙に解決できる内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置は、各電磁駆動バルブにセンサをそれぞれ1個ずつ設置し、各気筒の同じ駆動条件で同時に駆動される複数の電磁駆動バルブのセンサの出力を異常判定手段によって比較して異常の有無を判定するようにしたものである。つまり、各気筒の同じ駆動条件で同時に駆動される複数の電磁駆動バルブは、駆動制御系やセンサ系が正常であれば、開弁/閉弁動作が同じになるため、これらの電磁駆動バルブのセンサの出力はほぼ一致する。従って、これらの電磁駆動バルブのセンサの出力の差がシステムの最大許容誤差範囲を越えていれば、駆動制御系又はセンサ系が異常と判断できる。
【0007】
このように、本発明では、各電磁駆動バルブにセンサをそれぞれ1個ずつ設置するだけで、2個ずつ設置した場合とほぼ同様の異常検出を実施することができ、センサ数を増加させずに済み、コスト性やセンサ搭載性を損なわずに駆動制御系やセンサ系の異常を精度良く検出することができる。しかも、センサの出力を比較して異常検出を行うため、異常検出のための演算処理も簡単であり、演算負荷を軽減できる利点もある。
【0008】
また、本発明は、各気筒の複数の電磁駆動バルブを全て駆動して内燃機関を運転する通常運転モードと、各気筒の複数の電磁駆動バルブのうちの一部を閉弁状態に維持して残りの電磁駆動バルブのみを駆動して内燃機関を運転する片弁運転モードとを運転条件等に応じて切り換えて実行するシステムにおいて、片弁運転モード実行中に、駆動する電磁駆動バルブと、駆動しない電磁駆動バルブとを1サイクル毎に交互に切り換え、駆動する電磁駆動バルブのセンサの出力を、1サイクル前の他方の電磁駆動バルブのセンサの出力と比較して異常の有無を判定するようにしたものである
【0009】
つまり、過渡運転時でも、バルブ駆動条件の1サイクル分の変化量は少ないため、片弁運転モード実行中に、駆動する電磁駆動バルブのセンサの出力を、1サイクル前の他方の電磁駆動バルブのセンサの出力と比較して、両センサの出力の差がシステム誤差とバルブ駆動条件の1サイクル分の変化量とを合わせた最大許容誤差範囲を越えていれば、駆動制御系又はセンサ系が異常と判断できる。これにより、片弁運転モード実行中でも、通常運転モード実行時と同じように、各電磁駆動バルブにセンサをそれぞれ2個ずつ設置した場合とほぼ同様の異常検出を行うことができる。
【0010】
ところで、駆動制御系又はセンサ系が異常になった気筒は、バルブの開閉タイミングが異常にずれてバルブとピストンが衝突したり、或は、バルブの開閉動作が停止して、気筒内に吸入された燃料がそのまま排出されて排気エミッションが悪化する等の不具合が発生する。
【0011】
この対策として、請求項のように、異常判定手段により異常と判定された時は、異常時制御手段により、異常気筒への燃料噴射を停止し、且つ、該異常気筒の駆動可能な電磁駆動バルブを閉弁してガスの流動を遮断した状態に保持しながら、残りの正常な気筒で内燃機関を運転するようにすると良い。このようにすれば、駆動制御系やセンサ系の異常によるバルブとピストンの衝突や排気エミッションの悪化を回避しながら、正常な気筒のみで内燃機関の運転を継続することができ、サービス工場までの退避走行が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図2に基づいてエンジン全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の各気筒の吸気ポート12には、電磁駆動式の吸気バルブ13が例えば2個ずつ設けられ、各気筒の排気ポート14には、電磁駆動式の排気バルブ15が例えば2個ずつ設けられている。吸気バルブ13と排気バルブ15は、それぞれ電磁アクチュエータ16,17によって駆動される。また、各気筒の吸気ポート12の近傍には、燃料を噴射する燃料噴射弁18が設けられ、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ19や、エンジン回転数を検出するクランク角センサ20が取り付けられている。これら各種のセンサ出力はエンジン制御回路21に入力され、このエンジン制御回路21によって燃料噴射弁18の燃料噴射量や点火プラグ22の点火時期が制御されると共に、後述するようにして各バルブ13,15の電磁アクチュエータ16,17が制御される。
【0013】
次に、吸気バルブ13の電磁アクチュエータ16の構成を図3に基づいて説明する。尚、排気バルブ15の電磁アクチュエータ17も全く同じ構成である。
吸気バルブ13の弁シャフト23は、軸受部材24を介して上下方向に摺動自在に挿通支持され、その上下動により吸気バルブ13が吸気ポート12を開閉する。弁シャフト23の上部は、エンジン11のシリンダヘッド25に形成されたスプリング収容室26内に突出し、このスプリング収容室26内の下部に収容された閉側スプリング27の押し上げ力によって弁シャフト23が閉弁側(上側)に付勢され、閉弁中は、この閉側スプリング27の押し上げ力によって吸気バルブ13が閉弁状態に保持される。
【0014】
電磁アクチュエータ16は、スプリング収容室26の真上に配置され、エンジン11のシリンダヘッド25にボルト28で固定されている。電磁アクチュエータ16のハウジングは、非磁性の上ハウジング29と非磁性の下ハウジング30とに二分割され、上ハウジング29には、閉側コイル31が装着された閉側コア32が組み付けられ、下ハウジング30には、開側コイル33が装着された開側コア34が組み付けられている。上ハウジング29(閉側コア32)と下ハウジング30(開側コア34)との間には、両者の間隔を一定に保つための非磁性のスペーサ35が挟み込まれ、このスペーサ35の内側空間部に平板状の可動鉄心36が上下動自在に収容されている。この可動鉄心36の中心部には、プランジャ37の上端部が嵌合固定され、このプランジャ37が開側コア34の中心部に形成された貫通孔38に上下方向に摺動自在に挿通されている。このプランジャ37は、スプリング収容室26内に突出して弁シャフト23の真上に同軸状に配置され、スプリング収容室26内の上部に収容された開側スプリング39の押し下げ力によって該プランジャ37が開弁側(下側)に付勢されている。
【0015】
閉弁時には、上側の閉側コイル31に電流を流して、可動鉄心36を上側の閉側コア32の下面に吸着保持する。この状態では、プランジャ37の下端部と弁シャフト23の上端部との間に、これらの熱膨張を吸収するための隙間(クリアランス)が開き、吸気バルブ13の閉弁状態が下側の閉側スプリング27の押し上げ力のみによって保持される。
【0016】
一方、開弁時には、下側の開側コイル33に電流を流して、可動鉄心36を下側の開側コア34の上面に吸着保持して、プランジャ37で弁シャフト23を下側の閉側スプリング27に抗して押し下げ、吸気バルブ13を開弁状態に保持する。
【0017】
下ハウジング30の下部中央部には、吸気バルブ13のリフト量を検出する円環状のリフトセンサ40が組み付けられ、このリフトセンサ40の中心部にプランジャ37が挿通されている。プランジャ37の外周面のうち、リフトセンサ40の内周面に対向する部分がテーパ状に形成され、リフトセンサ40の内周面とプランジャ37のテーパ面との隙間寸法に応じた信号がリフトセンサ40から出力される。この場合、プランジャ37(吸気バルブ13)のリフト量に応じてリフトセンサ40の内周面とプランジャ37のテーパ面との隙間寸法が変化するため、リフトセンサ40の出力から吸気バルブ13のリフト量を検出できる。
【0018】
次に、制御系の構成を図1に基づいて説明する。図1は、電子スロットルシステムを搭載した4気筒16バルブエンジンに本発明を適用した場合の制御系の構成例を示している。エンジン制御回路21は、メインコンピュータ41、サブコンピュータ42、バルブ制御用コンピュータ43の3つのコンピュータを備え、各コンピュータ41〜43は、それぞれCPUを内蔵したマイクロコンピュータにより構成され、電源IC44で生成した5V電源により動作する。電源IC44は、バッテリ45からメインリレー46を介して電源が供給され、メインコンピュータ41によって制御されるメインリレードライバ47によって、メインリレー46のオン/オフが駆動される。
【0019】
エンジン制御回路21の入力インターフェース(ESP)48には、クランク角センサ20、アクセルセンサ、スロットルセンサ、リフトセンサ40、エアフロメータ、水温センサ、車速センサ等の各種のセンサの出力信号が入力される。4気筒16バルブエンジンの場合は、16個のリフトセンサ40の出力信号が入力インターフェース48に入力される。また、アクセルセンサとスロットルセンサは、フェイルセーフのためにそれぞれ2個ずつ設けられ、各センサ出力が入力インターフェース48に入力される。
【0020】
メインコンピュータ41は、入力インターフェース48からクランク角センサ20、アクセルセンサ、スロットルセンサ、エアフロメータ、水温センサ、車速センサ等のエンジン運転状態を検出する各種のセンサの信号を読み込み、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁18の燃料噴射量や点火プラグ22の点火時期を演算して、これらを制御すると共に、アイドル回転速度制御(ISC)の実行条件が成立した時に、ISC要求値を演算して、そのISC要求値をサブコンピュータ42とバルブ制御用コンピュータ43に送信する。メインコンピュータ41は、所定周期でウォッチドッグ信号W/Dを電源IC44に出力して一定時間内にリセット信号が返送されてくるか否かで、電源IC44の動作の正常/異常を監視する。
【0021】
サブコンピュータ42は、入力インターフェース48からアクセルセンサとスロットルセンサ等の信号を読み込み、目標スロットル開度を演算して、電子スロットル55のアクチュエータを駆動してスロットル開度を制御すると共に、スロットル開度の情報をメインコンピュータ41とバルブ制御用コンピュータ43に送信する。
【0022】
バルブ制御用コンピュータ43は、吸気/排気バルブ13,15の動作を制御するバルブ制御手段として機能し、入力インターフェース48からリフトセンサ40とアクセルセンサ等の信号を所定周期で読み込み、吸気/排気バルブ13,15のリフト量を演算してバルブ駆動条件(電磁アクチュエータ16,17の通電条件)を演算し、その演算結果に応じて開閉駆動信号をバルブ駆動回路51に出力して電磁アクチュエータ16,17のコイル31,33の通電電流を制御し、吸気/排気バルブ13,15の開閉動作を制御する。このバルブ制御用コンピュータ43は、バルブ駆動条件の演算結果をサブコンピュータ42に送信すると共に、バルブタイミングの情報をメインコンピュータ41とサブコンピュータ42に送信する。
【0023】
このバルブ制御用コンピュータ43は、エンジン運転条件等に応じて各気筒の吸気/排気バルブ13,15の駆動方法を通常運転モード又は片弁運転モードに切り換える。通常運転モードは、中負荷・高負荷運転時に実行され、各気筒の合計4個の吸気/排気バルブ13,15を全て駆動してエンジン11を運転する。この通常運転モードでは、2個の吸気バルブ13を同じ駆動条件で同時に駆動し、同様に、2個の排気バルブ15を同じ駆動条件で同時に駆動する。一方、片弁運転モードは、低負荷運転時に燃費向上を狙って実行され、各気筒の吸気/排気バルブ13,15をそれぞれ1個ずつ閉弁状態に維持して、各気筒の吸気/排気バルブ13,15をそれぞれ1個ずつ駆動してエンジン11を運転する。更に、片弁運転モード実行中は、駆動する吸気/排気バルブ13,15と、駆動しない吸気/排気バルブ13,15とを1サイクル毎に交互に切り換える。
【0024】
バルブ駆動回路51には、過電流/断線検出回路52が内蔵され、過電流又は断線を検出した時に、その情報をバルブ制御用コンピュータ43に送信する。バルブ制御用コンピュータ43は、バルブ駆動回路51から過電流/断線情報を受信した時に、バルブ用リレードライバ53にオフ信号を出力してバルブ用リレー54をオフし、バルブ駆動回路51の電源をオフして、吸気/排気バルブ13,15の開閉動作を停止する。
【0025】
サブコンピュータ42、バルブ制御用コンピュータ43及び入力インターフェース48は、それぞれ所定周期でウォッチドッグ信号W/Dをメインコンピュータ41に出力してリセット信号が返送されてくるか否かで、メインコンピュータ41の動作の正常/異常を監視する。
【0026】
バルブ制御用コンピュータ43は、内蔵するROM(図示せず)に記憶された図4の異常監視プログラムを実行することで、電磁駆動バルブシステムの正常/異常を判定する異常判定手段としても機能する。本プログラムは、バルブ駆動条件の演算周期と同期して起動され、又は、バルブ駆動条件を所定回数演算する毎に起動される。
【0027】
本プログラムが起動されると、まずステップ101で、現在の運転モードが片弁運転モードであるか否かを判定し、各気筒の合計4個の吸気/排気バルブ13,15を全て駆動する通常運転モードであれば、ステップ102に進み、各気筒の同じ駆動条件で同時に駆動される2個のバルブのリフトセンサ40の出力を比較する。通常運転モードでは、各気筒の2個の吸気バルブ13が同じ駆動条件で同時に駆動されると共に、2個の排気バルブ15も同じ駆動条件で同時に駆動される。従って、ステップ102では、各気筒の2個の吸気バルブ13のリフトセンサ40の出力を比較すると共に、各気筒の2個の排気バルブ15のリフトセンサ40の出力を比較し、各センサ出力の差がシステムの最大許容誤差範囲に相当する所定範囲内であるか否かで正常/異常を判定する。
【0028】
通常運転モードでは、各気筒の2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)は、それぞれ同じ駆動条件で同時に駆動されるため、駆動制御系やセンサ系が正常であれば、開弁/閉弁動作が同じになり、2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力はほぼ一致する。従って、2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力の差がシステムの最大許容誤差範囲に相当する所定範囲以内であれば、駆動制御系及びセンサ系が正常と判断して本プログラムを終了する。
【0029】
これに対し、2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力の差がシステムの最大許容誤差範囲に相当する所定範囲を越えていれば、駆動制御系又はセンサ系が異常と判断してステップ103に進み、フェイル処理を実行する。このフェイル処理では、異常と判断された気筒(異常気筒)への燃料噴射を停止し、且つ、該異常気筒の駆動可能なバルブを閉弁してガスの流動を遮断した状態に保持しながら、残りの正常な気筒の吸気/排気バルブ13,15を通常運転モードで駆動する。この機能が特許請求の範囲でいう異常時制御手段としての役割を果たす。更に、フェイル処理では、警告ランプ(図示せず)を点灯又は点滅させて運転者に知らせると共に、異常情報を不揮発性メモリ(例えばバックアップRAM)に記憶する。
【0030】
一方、前述したステップ101で、現在の運転モードが片弁運転モードであると判断された場合は、ステップ104に進み、駆動する吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力を、1サイクル前の他方の吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力と比較して、センサ出力の差が所定範囲内であるか否かで正常/異常を判定する。
【0031】
片弁運転モードでは、駆動する吸気バルブ13(排気バルブ15)と、駆動しない吸気バルブ13(排気バルブ15)とを1サイクル毎に交互に切り換えるため、駆動する吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力を、1サイクル前の他方の吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力と比較すれば、片弁運転モードでも、2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)の駆動中のリフトセンサ40の出力を比較することができる。また、過渡運転時でも、バルブ駆動条件の1サイクル分の変化量は少ないため、片弁運転モード実行中に、駆動する吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力を、1サイクル前の他方の吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力と比較して、両センサ出力の差がシステム誤差とバルブ駆動条件の1サイクル分の変化量とを合わせた最大許容誤差範囲に相当する所定範囲内であれば、駆動制御系及びセンサ系が正常と判断することができる。
【0032】
これに対し、両センサ出力の差がシステム誤差とバルブ駆動条件の1サイクル分の変化量とを合わせた最大許容誤差範囲に相当する所定範囲を越えていれば、駆動制御系又はセンサ系が異常と判断してステップ105に進み、フェイル処理を実行する。このフェイル処理では、異常と判断された気筒(異常気筒)への燃料噴射を停止し、且つ、該異常気筒の駆動可能なバルブを閉弁してガスの流動を遮断した状態に保持しながら、残りの正常な気筒の吸気/排気バルブ13,15を片弁運転モード又は通常運転モードで駆動する。この機能が特許請求の範囲でいう異常時制御手段としての役割を果たす。このフェイル処理でも、警告ランプ(図示せず)を点灯又は点滅させて運転者に知らせると共に、異常情報を不揮発性メモリ(例えばバックアップRAM)に記憶する。
【0033】
尚、ステップ102,104で用いる異常判定条件(所定範囲)は固定値でも良いが、異常判定精度を高めるために、バルブ駆動条件やエンジン運転条件に応じて異常判定条件(所定範囲)をマップ等で可変設定するようにしても良い。
【0034】
以上説明した本実施形態によれば、通常運転モード実行中に、各気筒の同じ駆動条件で同時に駆動される2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)は、駆動制御系やセンサ系が正常であれば、開弁/閉弁動作が同じになるという特性に着目し、各気筒の2個の吸気バルブ13(2個の排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力の差がシステムの最大許容誤差範囲に相当する所定範囲以内であるか否かで正常/異常を判定するようにしたので、各バルブ13,15にリフトセンサ40をそれぞれ1個ずつ設置するだけで、2個ずつ設置した場合とほぼ同様の異常検出を実施することができ、リフトセンサ40の数を増加させずに済み、コスト性やリフトセンサ40の搭載性を損なわずに駆動制御系やセンサ系の異常を精度良く検出することができる。しかも、2個のリフトセンサ40の出力を比較して異常検出を行うため、異常検出のための演算処理も簡単であり、演算負荷を軽減できる利点もある。
【0035】
更に、本実施形態では、片弁運転モード実行中に、駆動する吸気バルブ13(排気バルブ15)と、駆動しない吸気バルブ13(排気バルブ15)とを1サイクル毎に交互に切り換え、駆動する吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力を、1サイクル前の他方の吸気バルブ13(排気バルブ15)のリフトセンサ40の出力と比較して、両センサ出力の差がシステム誤差とバルブ駆動条件の1サイクル分の変化量とを合わせた最大許容誤差範囲に相当する所定範囲以内であるか否かによって正常/異常を判定するようにしたので、片弁運転モード実行中でも、通常運転モード実行時と同じように、各バルブ13,15にリフトセンサ40をそれぞれ2個ずつ設置した場合とほぼ同様の異常検出を行うことができる。
【0036】
しかも、異常と判定された時に、異常気筒への燃料噴射を停止し、且つ、該異常気筒の駆動可能なバルブを閉弁してガスの流動を遮断した状態に保持しながら、残りの正常な気筒の吸気/排気バルブ13,15を駆動してエンジン11を運転するようにしたので、駆動制御系やセンサ系の異常によるバルブとピストンの衝突や排気エミッションの悪化を回避しながら、正常な気筒のみでエンジン11の運転を継続することができ、サービス工場までの退避走行が可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、図4の異常監視プログラムをバルブ制御用コンピュータ43で実行するようにしたが、これ以外の車載コンピュータ、例えばサブコンピュータ42やメインコンピュータ41等で実行するようにしても良い。
【0039】
その他、本発明は、エンジンの気筒数、バルブ数を問わず適用でき、また、吸気バルブと排気バルブのいずれか一方のみを電磁駆動バルブで構成したシステムにも適用でき、また、バルブ制御用コンピュータ41を複数個設けても良く、或は、リフトセンサ40の構成を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジン制御系のブロック図
【図2】エンジンの構造を概略的に示す縦断面図
【図3】吸気バルブと電磁アクチュエータの構造を示す縦断面図
【図4】異常監視プログラムの処理を流れを示すフローチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気ポート、13…吸気バルブ、14…排気ポート、15…排気バルブ、15,16…電磁アクチュエータ、21…エンジン制御回路、23…弁シャフト、27…閉側スプリング、31…閉側コイル、32…閉側コア、33…開側コイル、34…開側コア、36…可動鉄心、37…プランジャ、39…開側スプリング、40…リフトセンサ、41…メインコンピュータ、42…サブコンピュータ、43…バルブ制御用コンピュータ(バルブ制御手段,異常判定手段,異常時制御手段)、51…バルブ駆動回路。

Claims (2)

  1. 内燃機関の各気筒の吸気バルブと排気バルブの少なくとも一方を、電磁アクチュエータで駆動されるバルブ(以下「電磁駆動バルブ」という)で構成し、且つ、各気筒に同じ駆動条件で同時に駆動される複数の電磁駆動バルブを設けた内燃機関において、
    各電磁駆動バルブにそれぞれ1個ずつ設けられ、各電磁駆動バルブの動作状態を検出するセンサと、
    各気筒の同じ駆動条件で同時に駆動される複数の電磁駆動バルブのセンサの出力を比較して異常の有無を判定する異常判定手段と
    各気筒の複数の電磁駆動バルブを全て駆動して内燃機関を運転する通常運転モードと、各気筒の複数の電磁駆動バルブのうちの一部を閉弁状態に維持して残りの電磁駆動バルブのみを駆動して内燃機関を運転する片弁運転モードとを運転条件等に応じて切り換えて実行するバルブ制御手段とを備え、
    前記バルブ制御手段は、片弁運転モード実行中に、駆動する電磁駆動バルブと駆動しない電磁駆動バルブとを1サイクル毎に交互に切り換え、
    前記異常判定手段は、片弁運転モード実行中に、駆動する電磁駆動バルブのセンサの出力を1サイクル前の他方の電磁駆動バルブのセンサの出力と比較して異常の有無を判定することを特徴とする内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置。
  2. 前記異常判定手段により異常と判定された時に、異常気筒への燃料噴射を停止し、且つ、該異常気筒の駆動可能な電磁駆動バルブを閉弁してガスの流動を遮断した状態に保持しながら、残りの正常な気筒で内燃機関を運転する異常時制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の電磁駆動バルブの異常診断装置。
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