JP4162540B2 - 歯科用咬合器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用咬合器に関し、特に、特定の切歯指導板と顆頭球誘導機構を備えた歯科用咬合器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
歯科用咬合器は、患者の顎の形態の特徴に応じて咬合不正が生じないように、顎の動きを再現しながら調整して義歯等を製作する装置である。歯科用咬合器は、下顎模型が取り付けられる下顎フレームと、上顎模型が取り付けられる上顎フレームとを備える。下顎フレームの後方端部に設けられた脚部には、開閉機構(生体の顎関節部に相当する)を介して、上顎フレームが取り付けられる。
【0003】
開閉機構は、下顎フレームの脚部に互いに対向して設けられた一対の顆頭球(生体の下顎頭に相当する)と、上顎フレームに設けられた顆頭球の案内路(生体の下顎窩に相当する)とによって構成されている。上顎フレームは、左右の顆頭球の中心を結ぶ線分を回転軸として開閉運動を行なう。前記顆頭球の案内路は、上顎フレームの後方端部にあり、上顎フレームの上面で規定される基準面に対し下方に向かって角度α(矢状顆路傾斜角)だけ傾斜した上壁と、後方端部側の後壁とから形成される。顆頭球は、上壁によって顆頭球案内路内を誘導される。
【0004】
また、下顎フレームの前方端部には切歯指導板が設けられ、上顎フレームの前方端部には切歯指導板の上面を接触滑走する切歯指導桿が設けられており、上顎フレームと下顎フレームの間の垂直顎間距離を保持できるようになっている。切歯指導板は、本体フレームと、当該本体フレームに対して軸支された台部を備えており、台部は基準面に対し前方にのみ傾斜可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図8に上顎模型の前歯1と下顎模型の前歯2との関係を模式的に示す。すなわち、咀嚼時の運動方向位を嵌合位、後方位、前方位、の3つに分類して図8に示す。
【0006】
図8(a)は、上下の歯牙の接触面積が最大となる場合である。O1は、前歯1に対する前歯2の相対位置であり、これは、切歯指導桿が切歯指導板上面に接触する接触点が基点Oである場合に対応する。
【0007】
図8(b)は、咀嚼時に後方領域における歯牙及び顆頭球の運動方向位(後方運動領域)を示し、下顎模型の前歯2の位置はR1であり、O1の場合に比べて、前歯2が前歯1よりも相対的に後方に位置している。
【0008】
図8(c)は、咀嚼時に前方領域における歯牙及び顆頭球の運動方向位(前方運動領域)を示し、下顎模型の前歯2の位置はA1であり、O1の場合に比べて前歯2が前歯1よりも相対的に前方に位置している。
【0009】
このように、上顎模型と下顎模型との関係は多様であるところ、従来の歯科用咬合器では、このようなO1からA1への調節及びO1からR1への調節を十分に行うことが困難であり、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することが困難であるという問題があった。
【0010】
また、患者の顎の形態が多様であるため、上下顎模型に傾きが生じ易く、歯列の平面が水平面から傾いてしまう場合があり、このような場合には、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することが一層困難となっていた。
【0011】
そこで、本発明は、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる歯科用咬合器を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による歯科用咬合器は、下顎模型を支持するための下顎フレームと、上顎模型を支持するための上顎フレームを備えた歯科用咬合器であって、前記下顎フレームの後方端部には一対の脚部が備えられ、当該脚部には顆頭球が互いに対向して設けられており、前記下顎フレームの前方端部には切歯指導板が備えられ、前記上顎フレームの後方端部には前記顆頭球の誘導機構が備えられ、前記上顎フレームの前方端部には前記切歯指導板の上面を接触滑走する切歯指導桿が備えられ、前記切歯指導板は、本体フレーム、および当該本体フレームに対して軸支された台部を備え、前記台部の上面が前方及び後方のいずれにも配向可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成されているので、上述のO1からA1への調節及びO1からR1への調節を容易に精度よく行うことができ、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。
【0014】
前記切歯指導板は、側翼角調節機構を備えた左右側翼をさらに備えていることが好ましい。左右側翼は、例えば、前記台部に対して軸支されて備えられる。
【0015】
前記切歯指導板は、前記下顎フレームの前方端部に対して、当該切歯指導板の前後双方向において、取り付け可能であることにより、前記台部の上面が前方及び後方のいずれにも配向可能に構成されていてもよい。
【0016】
台部が前方にのみ傾斜可能に本体フレームに対して軸支されている場合において、台部を備える切歯指導板を下顎フレームの前方端部に対して前後逆方向に取り付け可能とすることにより、台部の上面を前方及び後方のいずれにも配向させることができるようになり、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。
【0017】
本発明の歯科用咬合器は、さらに、上下顎模型のホルダを備えており、当該ホルダに取り付けられた上顎模型と下顎模型の歯牙接触面積が最大となる場合における、前記切歯指導桿が前記台部の上面に接触する点を基点Oとしたとき、当該基点Oを中心として、前記台部が前記本体フレームに対して前後に回動可能であることにより、前記台部の上面が前方及び後方のいずれにも配向可能に構成されていてもよい。
【0018】
台部を基点Oを中心として本体フレームに対して前後に回動可能とすることにより、台部の上面を前方及び後方のいずれにも配向させることができるようになり、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。
【0019】
本発明の歯科用咬合器は、台部をその前後の中央付近において本体フレームに対して軸支して構成してもよい。
【0020】
前記顆頭球の誘導機構は、顆頭球の案内路からなり、当該顆頭球の案内路を形成する後方端部側の後壁が肉薄となっていてもよい。
【0021】
このように、顆頭球案内路の後方端部側を肉薄とすることにより、顆頭球案内路が上顎フレームの後方部へ向けて拡張されるので、上述のO1からA1への調節及びO1からR1への調節を容易に精度よく行うことができ、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。すなわち、咬合関係の微調整を行う際に、上弓と下弓が動きやすく、しかもハンドリングが良くなり、これにより技工サイドの製作において利便性に勝る咬合器を提供することができる。
【0022】
また、本発明による歯科用咬合器は、後方端部に一対の脚部であって顆頭球が対向して設けられた脚部を備え、前方端部に切歯指導板を備えた下顎フレームと、後方端部に前記顆頭球の誘導機構を備え、前方端部に前記切歯指導板の上面を接触滑走する切歯指導桿を備えた上顎フレームと、を備えた歯科用咬合器であって、前記下顎フレームの底部は、3つのスクリューによって3点支持されていることを特徴とする。
【0023】
このようにスクリューにより3点支持されているので、各スクリューをそれぞれ回して上下移動させることにより、歯列の平面がほぼ水平面と一致するように補正することができる。
【0024】
本発明の歯科用咬合器は、さらに、上下顎模型のホルダを備えており、当該ホルダが水準器を備えていてもよい。
【0025】
このように水準器を用いてスクリューを回すことにより、歯列の平面が精密に水平面と一致するように容易に補正することができる。水準器を用いることにより、患者に適用した際と同様に位置移動することができ同一条件下での調整作業が可能となる。
【0026】
前記水準器は、内部の気泡の位置変化を示す目盛であって、水平である場合における当該気泡の位置を基準点とし、当該基準点を中心とする同心円状の測定目盛を少なくとも備えるものであってもよい。
【0027】
前記切歯指導桿の端部が3つの凸部を有するように構成してもよい。
【0028】
このように構成することにより、上下顎の歯牙の接触点のずれを防止でき、高精度に調整することができる。
【0029】
本発明の歯科用咬合器は、さらに、リファレンス器具を備えており、当該リファレンス器具は、上下位置目盛が設けられた支持棒と、当該支持棒に対して上下移動及び回転可能に支持されたポインタと、当該支持棒に固定されたマウンティングを備えており、当該ポインタが、スライド及び回転することによって、ポインタの先端部の位置を自在に調節でき、かつ、前記マウンティングが水準器を備えていてもよい。
このように構成することにより、高精度に調整することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1は、実施形態1に係る歯科用咬合器の全体斜視図であり、図2は、上顎フレーム30の右側側面図であり、図3は、図1において、下顎フレーム20の前方端部へ切歯指導板40を取り付ける状態を下方から見た図である。図4は、上下顎模型のホルダを取り付けた状態を示す図である。図10(a)は、図2において、嵌め込み式ジグ38と顆頭球22との関係を下方から見た図である。
【0032】
図1〜図3に示すように、歯科用咬合器10は、下顎フレーム20と、上顎フレーム30を備えている。下顎フレーム20の後方端部には一対の脚部21が備えられ、この脚部21には顆頭球22が互いに対向して設けられている。上顎フレーム30の後方端部には、嵌め込み式ジグ38によって、顆頭球の案内路31が形成されている。顆頭球案内路31は、上顎フレーム30の上面で規定される基準面に対し下方に向かって角度α(矢状顆路傾斜角)だけ傾斜した上壁49と、後方端部側の後壁33と、側壁103とから形成される。角度αは、目盛G(目盛は1°間隔で付されていることが望ましい。あるいは、5°間隔で付されていてもよい。)を備えている。
【0033】
顆頭球22は、上壁49および側壁103によって誘導されながら、顆頭球案内路31を図2中の矢印方向に移動できる。図2および図10(a)に示すように、嵌め込み式ジグ38の下方にはスリット102が備えられており、このスリット102を介して、ねじ100により顆頭球22を固定する。ねじ100はスリット102の縦穴を移動可能となっている。ねじ100は、その先端部で顆頭球22を保持するとともに、ストッパー101によりスリット102を保持する、ダブルストッパー式となっている。
【0034】
なお、図10(b)に示すように、側壁103が図10(a)中矢印Xに示す方向に動くように構成し、所望の位置においてねじ100により顆頭球22を固定するようにしてもよい。このように構成すると、顆頭球22を案内路31に対して相対的に、案内路の進行方向のみならず左右(図10(a)の矢印P)にも調節することができるので、咬合器上の限界運動をあらゆる方向に調節することができる。
【0035】
下顎フレーム20の前方端部には、切歯指導板40が取り付けられている。切歯指導板40は、支持部46と、本体フレーム41と、当該本体フレーム41に対して軸支された台部42と、側翼角調節機構を備えた左右側翼43を備えている。支持部46は、そのA部側が下顎フレーム20の前方端部に対して取り付けられている。本体フレーム41は支持部46上に固定されている。本体フレーム41においては、調節つまみ44によって台部42を前方に配向(傾斜)させるように基準面に対する傾斜角γを調節することができる。台部42には、前方から見て左右対称に左右側翼43が備えられており、左右側翼43はそれぞれ調節つまみ45によって基準面に対する側翼角δを調節することができるようになっている。
【0036】
上顎フレーム30の前方端部には、切歯指導板40の上面(台部42の上面)を接触滑走する切歯指導桿32が設けられており、上顎フレーム30と下顎フレーム20の間の垂直顎間距離を保持できるようになっている。
【0037】
実施形態1においては、切歯指導板40の支持部46が本体フレーム41から前後に延出しており、指示部46のB部側を下顎フレーム20の前方端部に取り付けることも可能となっている点が特徴である。このように、切歯指導板40が下顎フレーム20に対して前後逆方向に取り付け可能な構造となっているので、台部42の上面を前方及び後方のいずれにも配向させることができる。すなわち、図1のようにA部側を下顎フレーム20に取り付ければ、台部42の上面を前方に配向させることができ、一方、B部側を下顎フレーム20に取り付ければ、台部42の上面を後方に配向させることができる。
【0038】
また、実施形態1の他の特徴点として、下顎フレーム20は、スクリュー23、24、25により3点支持されており、各スクリューをそれぞれを回すことにより上下移動させることにより、歯科用咬合器10の基準面を自在に調節することができる。このように、下顎フレーム20の底部をスクリューによる3点支持とし、換言すれば、歯科用咬合器10をスクリューによる3点支持とし、各スクリューの回転によりスクリューを上下移動させて、各支持点における高さを容易に調節できるようにしたので、上下顎模型に傾きが生じ、歯列の平面が水平面からずれるような場合に、歯列の平面がほぼ水平面と一致するように容易に補正することができる。
【0039】
さらに、歯科用咬合器10に上顎模型のホルダ90を取り付けた場合について、図4を参照して説明する。ホルダ90は、脚部21に連結されたアーム(上下顎模型のホルダ)91と、アーム91に固定支持される棒状体92と、棒状体92に固定支持され歯科用咬合器10の中央へ向けて略U字に延びた上顎模型保持アーム93からなる。上顎模型保持アーム93には、周知の水準器94が備えられている。なお、上顎模型については図示を省略してある。歯列の平面が水平面から傾いた場合には、水準器94の測定結果を観察しながら、スクリュー23、24、25をそれぞれ回して上下移動させることにより、歯列の平面が精密に水平面と一致するように補正することができる。すなわち、歯科用咬合器10スクリュー23、24、25を上下移動させることにより、歯科用咬合器10の基準面を変化させ、その結果として、ホルダ90に保持された上顎模型の歯列の平面の傾きを補正することができる。
【0040】
前記水準器94には、水準器の目盛を拡大するためのレンズが取り付けられていてもよい。このようにすると、ユーザーの視力が低下していても高精度に調整することができる。
【0041】
さらに、図7に示すように、図2の嵌め込み式ジグ38を、嵌め込み式ジグ78に交換する。嵌め込み式ジグ78は後方端部側の後壁73が肉薄となっており、後壁73、上壁49、および側壁103により顆頭球案内路71が形成されている。例えば、ジグ78の後壁78の厚みは、ジグ38の後壁33の厚みよりも、3mm〜5mm小さいことが好ましい。
【0042】
この嵌め込み式ジグ78に交換した場合には、切歯指導板40の上面(台部42の上面)を後方に配向させる。顆頭球案内路71の後方端部側が肉薄となっており、顆頭球案内路71が上顎フレーム30の後方へ向けて拡張されることにより、上顎フレーム30を下顎フレーム20に対して相対的に前方に配置することが一層容易となる。すなわち、上述の図8におけるO1からR1への調節が一層容易となる。
【0043】
なお、図14に示すように、嵌め込み式ジグは、顆頭球案内路71内を前後に移動可能であり当該移動によって顆頭球を前方から押える作用を有する前壁110を備えた嵌め込み式ジグ78’であってもよい。
【0044】
以下に、図8と図5を参照しながら実施形態1に係る歯科用咬合器10の動作について説明する。
【0045】
図5は、上顎フレーム30の動きと切歯指導板40および切歯指導桿32の配置関係を模式的に示した図である。図8におけるO1、R1、A1は、下顎模型の前歯2の上顎模型の前歯1に対する相対位置である。図5におけるO、R、Aは切歯指導桿32が切歯指導板40上面に接触する接触点であり、図8(a)〜(c)におけるO1、R1、A1の場合にそれぞれ対応している。
【0046】
図8(c)、図5(b)、図2に示すように、切歯指導板40及び案内路31を前方に配向させることにより、前方運動領域を再現することができ、接触点をOからAへ移動させることができる。一方、図8(b)、図5(a)、図7に示すように、切歯指導板40及び案内路71を後方に配向させることにより、後方運動領域を再現することができ、接触点をOからRへ移動させることができる。このように、本発明による歯科用咬合器10を用いれば、嵌め込み式ジグ38及び78を交換するとともに切歯指導板40の配向方向を変えることにより、O1からA1への調節及びO1からR1への調節の双方を容易に精度よく行うことができ、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。
【0047】
上記においては、嵌め込み式ジグを交換することにより、案内路を形成する後方端部側の後壁が肉厚である場合(嵌め込み式ジグ38)に前方運動領域を再現し、肉薄である場合(嵌め込み式ジグ78)に後方運動領域を再現できるようにしたが、これに限定されず、肉薄の嵌め込み式ジグ78を備えた咬合器(ジグは着脱可能であっても、着脱不可であっても、いずれでもよい)において、切歯指導板の配向方向を変えることによって前方運動領域の再現と後方運動領域の再現の双方を実現する場合も、本発明の実施形態である。
【0048】
また、案内路を形成する後方端部側の後壁の厚みをねじ等によって増減できるように構成してもよい。
【0049】
さらに、上記においては、アーム91がこれに対してスライド又は回転により移動可能なポインタ210を備えており、ポインタ210の先端部を移動させて、前方基準点の位置を正確かつ容易に調整できるようにしてもよい。
【0050】
あるいは、本願の歯科用咬合器は、図16に示すようなリファレンス器具300を備えていてもよい。図16に示すように、リファレンス器具300は、上下位置目盛212が設けられた支持棒211と、当該支持棒211に対して上下移動及び回転可能に支持されたポインタ210と、当該支持棒211に固定されたマウンティング213から構成される。マウンティング213には水準器95が設けられている。マウンティング213を図16中の矢印M方向に口の中に差し込み銜え、上顎前歯部若しくは下唇のドライウエットラインに合わせる。水準器95を活用して水平状態を維持しながら、ポインタ210を上下に移動させて、支持棒211においてマウンティング213を基点0mmとして、これから上方に各々の咬合器の種類に応じて設定された前方基準点までの数値に合わせ、ポインタ210の先端部が皮膚上に触れる点を前方基準点としてマーキングする。このようにして、ポインタ210の先端部を上下や左右に移動させて、前方基準点の位置を正確かつ容易に調整することができる。
【0051】
リファレンス器具300を用いて調整する場合において、右側中切歯(前歯)が欠損のときはポインタ210を移動させて左側中切歯を基準として調整することができる。また、上顎中切歯が欠損のときは、口角や下口唇のドライウェットラインを基準として調整することができる。さらに、ポインタ210を黄金分割比の顔面計測に使用することができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図6は、実施形態2に係る歯科用咬合器における切歯指導板60を表す図である。
【0053】
図6に示すように、実施形態2に係る歯科用咬合器は、切歯指導板40に代えて切歯指導板60を備えた点のみが、実施形態1とは異なっている。なお、実施形態1と同様の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
切歯指導板60は、支持部66と、本体フレーム61と、当該本体フレーム61に対して軸支された台部42と、側翼角調節機構を備えた左右側翼43を備えている。支持部66は、その後方側が下顎フレーム20の前方端部に対して取り付けられている。本体フレーム61は支持部66上に固定されている。図6(a)に示すように、本体フレーム61は、調節つまみ64によって台部42を前方に配向(傾斜)させるように基準面に対する傾斜角γ(図6(a)中に示すように1°間隔で目盛が付されていることが好ましい)を調節することができる。また、図6(b)に示すように、本体フレーム61は、調節つまみ64によって台部42を後方に配向(傾斜)させるように基準面に対する傾斜角γを調節することができる。台部42には、前方から見て左右対称に左右側翼43が備えられており、左右側翼43はそれぞれ調節つまみ65によって基準面に対する側翼角を調節することができる。
【0055】
実施形態2においては、台部42が、基点Oを中心として本体フレーム61に対して前後に回動できる点が特徴である。この基点Oは、取り付けられた上顎模型と下顎模型の歯牙接触面積が最大となる場合における、切歯指導桿32が切歯指導板上面に接触する点(図5におけるO)である。
【0056】
実施形態2においても、実施形態1と同様に、台部42の上面が前方だけでなく後方にも配向できるので、O1からA1への調節及びO1からR1への調節の双方を容易に精度よく行うことができ、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。
【0057】
(第3の実施の形態)
図9は、実施形態3に係る歯科用咬合器の全体斜視図である。
【0058】
図9に示すように、実施形態3に係る歯科用咬合器80は、切歯指導板40に代えて切歯指導板81を備えた点のみが、実施形態1とは異なっている。なお、実施形態1と同様の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
切歯指導板81は、周知の切歯指導板であり、支持部82と、本体フレーム41と、台部42と、左右側翼43とを備えている。支持部82は、本体フレーム41から後方にのみ延出しており、台部42は前方にのみ傾斜可能となっている。
【0060】
実施形態3では、切歯指導板81は周知の構成であるが、下顎フレーム20の底部が3つのスクリュー23、24、25によって3点支持されている点が特徴となっている。
【0061】
実施形態1と同様に、実施形態3においても、スクリューにより3点支持されているので、各スクリューをそれぞれ回して上下移動させることにより、歯列の平面がほぼ水平面と一致するように補正することができる。また、水準器を用いてスクリューを回すことにより、歯列の平面が精密に水平面と一致するように容易に補正することができる。
【0062】
(第4の実施の形態)
図11は、実施形態4に係る歯科用咬合器の全体斜視図である。
【0063】
図11に示すように、実施形態4に係る歯科用咬合器120は、顆頭球案内路31に代えてガイド部材36により構成される顆頭球案内路31’を備えた点のみが、実施形態1とは異なっている。なお、実施形態1と同様の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
ガイド部材36は、上顎フレーム30’の後方端部に備えられ、顆頭球22を前後に案内する顆頭球案内路31’を構成する。ガイド部材36も、後方端部側の後壁が肉薄となっており、顆頭球案内路31’が上顎フレーム30’の後方へ向けて拡張されている。ガイド部材36を回転させることによって、顆頭球案内路31’を前傾又は後傾させることができるようになっており、ガイド部材36を適宜回転させた後は、ねじ37、39によって固定する。
【0065】
実施形態4においても、顆頭球案内路31’が上顎フレーム30’の後方へ向けて拡張されているとともに、ガイド部材36を回転させることによって顆頭球案内路31’を前傾又は後傾させることができるので、上述のO1からR1への調節及びO1からA1への調節の双方を容易に精度よく行うことができ、上下顎歯牙の咬合関係を高精度に調整することができる。
【0066】
(第5の実施の形態)
図12及び図13は、切歯指導桿32の切歯指導板側の端部の形状を示す図であり、図12(a)は実施形態1の場合の前方から見た図、図12(b)は側方から見た図、図13(a)は実施形態5の場合の前方から見た図、図13(b)は側方から見た図である。
【0067】
図13(a)(b)に示すように、実施形態5においては、端部が3つの鋭利な凸部ア、イ、ウを有する切歯指導桿32’を用いた点のみが実施形態1と異なっている。切歯指導桿32’は、凸部ア、イ、ウの先端部で切歯指導板40の上面(台部42の上面)に接している。凸部ア、ウの先端部は、台部42に対して左右側翼43の角度を調節する際に軸となる部位、すなわち、台部42と左右側翼43の交差部位にそれぞれ接しており、当該交差部位に沿って動くことができる。また、凸部ア、ウの先端部は、側方運動時に左右側翼43上を接触滑走する。
【0068】
このように構成することにより、図12の場合に比べて、上下顎の歯牙の接触点のずれを防止でき、高精度に調整することができる。すなわち、図12の場合に比べて、接触点での角度と寸法のずれを防止でき、各歯牙の構成要素を一層正確に調整することができる。凸部ア、イ、ウの先端部は鋭利であるので、上弓と下弓の高さに変化が生じることがなく、歯牙や歯牙の高さにくるいが生じることを防止することができ、上顎フレームと下顎フレームの間の垂直顎間距離を正確に保持することができる。また、上顎が上がった際でも上下顎の歯牙の接触点がずれることがなく、高精度に調整することができる。
なお、切歯指導桿の端部の鋭利な凸部は、図13のような3つである場合に限られず、4つ以上であってもよい。
【0069】
(第6の実施の形態)
実施形態6においては、水準器として図15に示す水準器194を用いた点のみが実施形態1と異なっている。図15(a)は水準器194を前方から見た図、図15(b)は上方から見た図である。
【0070】
図15(a)(b)に示すように、水準器194は、内部の気泡195の位置変化を示す目盛であって、歯列の平面が水平である場合における当該気泡の位置を基準点Xとし、当該基準点Xを中心とする同心円状の測定目盛196と、歯列の平面の傾き方向を示す測定目盛197を備えている。
【0071】
このように構成することにより、歯列の平面が水平である場合を基準点Xとして、上下顎模型を取り付ける位置を測定目盛196、197によって把握することができる。また、測定目盛196、197の値を記録しておき、スクリューを回転させて当該値となるように調整すれば、調整を一層容易かつ正確に再現することができる。
【0072】
【発明の効果】
本発明の歯科用咬合器を用いれば、高精度かつ簡便に上下顎歯牙の咬合関係を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1に係る歯科用咬合器の全体斜視図である。
【図2】 図1における上顎フレームの右側側面図である。
【図3】 図1において、下顎フレームへ切歯指導板を取り付ける状態を下方から見た図である。
【図4】 図1において、上下顎模型のホルダを取り付けた状態を示す図である。
【図5】 上顎フレームの動きと切歯指導板および切歯指導桿の配置関係を模式的に示す図である。
【図6】 実施形態2に係る歯科用咬合器における切歯指導板である。
【図7】 実施形態1に係り、顆頭球案内路の後方端部側の後壁が肉薄である咬合器における上顎フレームの右側側面図である。
【図8】 上顎模型の前歯と下顎模型の前歯との関係を模式的に示す図である。
【図9】 実施形態3に係る歯科用咬合器の全体斜視図である。
【図10】 (a)は、図2において、嵌め込み式ジグと顆頭球との関係を下方から見た図であり、(b)は側壁が動いた状態を模式的に示す図である。
【図11】 実施形態4に係る歯科用咬合器の全体斜視図である。
【図12】 実施形態1に係る切歯指導桿の切歯指導板側の端部の形状を示す図であり、(a)は前方から見た図、(b)は側方から見た図である。
【図13】 実施形態5に係る切歯指導桿の切歯指導板側の端部の形状を示す図であり、(a)は前方から見た図、(b)は側方から見た図である。
【図14】 嵌め込み式ジグの異なる例を示す図である。
【図15】 実施形態6に係る水準器を示す図である。
【図16】 歯科用咬合器が備えるリファレンス器具の全体斜視図である。
【符号の説明】
10・・・歯科用咬合器、20・・・下顎フレーム、30・・・上顎フレーム、
21・・・脚部、22・・・顆頭球、31、71・・・顆頭球の案内路
40、60・・・切歯指導板、32、32’・・・切歯指導桿
46、66・・・支持部、41、61・・・本体フレーム、42・・・台部、
44、45、64、65・・・調節つまみ、94、194・・・水準器
Claims (6)
- 下顎模型を支持するための下顎フレームと、上顎模型を支持するための上顎フレームと、を備えた歯科用咬合器であって、
前記下顎フレームの後方端部には一対の脚部が備えられ、当該脚部には顆頭球が互いに対向して設けられており、前記下顎フレームの前方端部には切歯指導板が備えられ、
前記上顎フレームの後方端部には前記顆頭球の誘導機構が備えられ、前記上顎フレームの前方端部には前記切歯指導板の上面を接触滑走する切歯指導桿が備えられ、
前記切歯指導板は、本体フレーム、および当該本体フレームに対して軸支された台部を備え、
前記台部の上面が前方及び後方のいずれにも配向可能に構成されている歯科用咬合器。 - 前記切歯指導板は、前記下顎フレームの前方端部に対して、当該切歯指導板の前後双方向において、取り付け可能であることにより、前記台部の上面が前方及び後方のいずれにも配向可能に構成されている請求項1記載の歯科用咬合器。
- さらに、上下顎模型のホルダを備えており、
当該ホルダに取り付けられた上顎模型と下顎模型の歯牙接触面積が最大となる場合における、前記切歯指導桿が前記台部の上面に接触する点を基点Oとしたとき、当該基点Oを中心として、前記台部が前記本体フレームに対して前後に回動可能であることにより、前記台部の上面が前方及び後方のいずれにも配向可能に構成されている請求項1記載の歯科用咬合器。 - 前記顆頭球の誘導機構は、顆頭球の案内路からなり、
当該顆頭球の案内路を形成する後方端部側の後壁が肉薄となっている請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用咬合器。 - 前記切歯指導桿の端部が3つの凸部を有している請求項1〜4の歯科用咬合器。
- さらに、リファレンス器具を備えており、
当該リファレンス器具は、上下位置目盛が設けられた支持棒と、当該支持棒に対して上下移動及び回転可能に支持されたポインタと、当該支持棒に固定されたマウンティングを備えており、
当該ポインタが、スライド及び回転することによって、ポインタの先端部の位置を自在に調節でき、
かつ、前記マウンティングが水準器を備えることを特徴とする請求項1記載の歯科用咬合器。
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