JP4162342B2 - 透明導電性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明なプラスチックフィルム等の基材上に透明導電膜を形成した透明導電性フィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明導電膜を透明なプラスチックフィルム上に形成したものは、透明導電性フィルムとして、太陽電池や表示素子、光電変換装置等の電極膜として広く用いられている。透光性面状発熱体、帯電防止表示窓のような電気的用途、及び熱線遮断窓や太陽集熱器用選択透過膜のような光学的用途にも用いられ、広範な分野に展開出来る機能を持っている。ここで透明導電性フィルムとは、本来電気絶縁体である透明な高分子樹脂からなるフィルム上に透明性を有しつつ且つ導電性を有する透明導電膜を形成したフィルムである。
上記透明導電膜は、大きな導電性と可視領域での良好な透光性を併せ持ち、更に赤外領域での反射能が高いことが要求されている。一方で、導電膜を大別すると、実用上金属膜と酸化物半導体膜に分けられ、前者の例としては、Au,Ag,Cu,Pd,Pt,Al,Cr,Rh膜等があり、後者の例としては、In2 O3 ,SnO2 ,Cd2 SnO4 ,CdO膜等がある。このうち、銀(Ag)を用いる場合、特に銀の良好な電気伝導性を生かして、電極配線等の選択的な導電膜として利用されることが多くなっている。
【0003】
ここで、金属の薄膜を用いた透明導電膜としては、金によるものは導電性が10〜102Ω/□であり、透明性が70〜80%と良好であるが、下地である例えばポリエステルフィルムとの密着性があまり良くなく、導電性及び透明性はAuよりも多少落ちるがPdの薄膜が実用化されている。ここでこのような金属薄膜を用いた透明導電性膜は金属の薄膜をスパッタリング法で形成することが一般的である。また、酸化物半導体膜を用いた透明導電性膜の例としては、錫をドープした酸化インジウム(Indium Tin Oxide:ITO)が導電性が102〜106Ω/□であり、透明性が80〜88%であるので、SnO2に比較して化学的安定性において若干劣るが、透明性、導電性において優れており、広く用いられている。このITO膜の形成法としては、錫を添加した酸化インジウムを用いた真空蒸着法、スパッタリング法等が用いられている。また、酸化物半導体膜と金属薄膜とのサンドイッチ状の膜である。TiO2 /Ag/TiO2 膜は、導電性及び透明性が、1〜10Ω/□及び75〜85%であり、導電性及び透明性が良好であることが知られている。また、高分子電解質膜の導電性及び透明性は、106 〜1010Ω/□(湿度に依存)及び80〜85%である。
【0004】
このような透明導電性膜は、基材となる高分子ベースフィルム上に透明で且つ導電性を有する薄膜を形成・堆積することによって作成しているが、このような導電膜の形成には、従来から真空蒸着や反応性スパッタリング等の乾式成膜法が主に用いられている。
【0005】
一般に、透明導電膜の導電性は膜厚に比例して高くなるが、透明性は逆の関係となり、膜厚が大きくなるほど不透明の度合いが増加する。また、その度合いは、膜材質によって種々変化する。要するに、導電性と透明性は、膜厚に対して相反する関係にあるので、透明導電膜の膜材質及びそれに用いられる状況に応じて、最適な膜厚を選定する必要がある。金属はその厚さを20nm程度以下にした場合、光の吸収率と反射率が共に低減すると共に、透明性は増加し、所謂透明導電膜としての性質を示すようになる。一方、前述のように導電性と透明性との兼ね合いから透明導電膜の実用厚さは、3〜15nm程度が望ましいと言われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これらの従来の方法により、銀等の金属薄膜をプラスチックフィルム上に堆積して被覆し透明導電膜を形成すると、主としてプラスチックフィルムの耐熱許容温度の制約から、成膜温度を低めに抑えることが必要となるため、両者の密着性が不十分となる場合がある。また、両者の熱膨張率の違いによって、熱応力や熱歪を生じる場合があり、密着性に問題がある。これらの不都合を回避するために、主成膜工程に加えて、下地成膜、保護膜形成等の前処理、後処理を追加して行うことが通常行われているが、この場合には製造工程が複雑化するという問題がある。更に、蒸着やスパッタリングによる成膜を行うには、一定以上の規模の真空装置を必然的に伴うことになるので、設備費が高くなりコストアップになるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、工程を複雑化することなく、また真空設備を必要とすることなく、比較的簡単な設備で製造可能で、且つ良好な密着性を有する透明導電性基材の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法は、金属粒子の表面を有機物で被覆した金属超微粒子を溶媒に分散させた溶液を、透明なプラスチックフィルム上に塗布した後、加熱することにより前記プラスチックフィルム表面に前記金属粒子同士が溶融して結合した透明導電膜を形成することを特徴とする。
【0009】
これにより、200℃以下程度の比較的低温で超微粒子同士の強固な結合が生じるため、熱応力や熱歪を生じることなく、プラスチックフィルム上に健全な透明導体膜を高い密着性を持って形成することができる。また、金属超微粒子を分散させた溶液を用いる結果、比較的低温、かつ大気圧下の焼成処理を施すことによって、プラスチックフィルム上に透明導体膜を形成することができる。このため、従来のように真空設備や複雑なプロセスを必要とせずに、透明導電性基材を製造することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の透明導電性フィルムの製造方法は、請求項1において、前記金属粒子は、粒径が1〜20nmであることを特徴とする。これにより、上述した超微粒子の特有の性質を利用することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の透明導電性フィルムの製造方法は、請求項1又は請求項2において、前記金属粒子は、銀の超微粒子であることを特徴とする。これにより、導電性に優れた透明導電性基材を製造できる。さらに、銀とTiO2
の多層膜の透明導電膜を形成すれば、選択透過性に優れた透明導電性基材を製造できる。
【0012】
また、請求項4に記載の透明導電性フィルムは、透明なプラスチックフィルム表面に、表面を有機物で被覆した金属粒子同士を溶融させて結合させた透明導電膜を形成したことを特徴とする。この導電膜は、金属の超微粒子が結合して形成された金属膜であるので、高い導電性を有すると共に、極めて薄い膜とすることができる。これにより、光の透過性と導電性とを兼ね備えた透明導電性フィルムを提供することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5を参照して説明する。
図1は、有機物で被覆された超微粒子を模式的に示す。ここで、金属超微粒子1とは、粒径が1〜100nm(ナノメートル)程度、好ましくは1〜20nm程度の極く微細な金属粒子2であり、その表面が有機物3で被覆されている。この金属超微粒子1は、例えば、有機金属塩又は金属錯体を有機物が分解を開始する温度以上で且つ完全に分解する温度未満で熱分解することにより、有機物で被覆された状態で得られる。具体的には、例えば、金属が銀である銀・超微粒子は、図2に示すように、Myristic酸(ミリスチン酸)又はStearic酸(ステアリン酸)を水酸化ナトリウムで鹸化したものを硝酸銀と反応させて直鎖型脂肪酸塩を合成し、更にこれを窒素気流下で250℃程度で加熱分解して変性させた後、精製することによって、金属粒径が5nm程度で、その周囲を有機物で被覆されたものを製造することができる。また、この金属超微粒子は、金属塩を有機媒体中で加熱分解することによっても形成でき、この場合は金属超微粒子と有機物とがイオン結合した状態を得る。これらの金属超微粒子は有機物で被覆されているので有機溶媒中で良好な均一・分散性が得られる。更にまた、金属超微粒子は、金属を真空中で溶解・蒸発させ、そのガスを冷却することによっても形成できる。
【0014】
そして、本実施の形態では、この銀・超微粒子(金属超微粒子)を出発原料として使用する。この有機物で被覆された金属超微粒子を有機溶媒、例えばシクロヘキサンに分散させて溶液を作製すると、上述したように良好な分散性を有するため、溶媒中に偏析することなく、高濃度の溶液を作製できる。
【0015】
図3に示すように、この溶液をポリエステル製の透明なプラスチックフィルム5上に塗布し、乾燥後、例えば200℃で約30分程度保持して焼成すれば、溶媒は揮発し、焼成により溶融して結合した銀からなる薄膜6をプラスチックフィルム上に形成することが出来る。ここで、銀の超微粒子は通常の銀の融点よりはるかに低い温度で溶融するという超微粒子特有の性質によって、5nm程度の粒径の場合、200℃程度の温度で十分に溶融して相互に融着し、導電性膜を形成する。
なお、この方法によってプラスチックフィルム上に堆積する銀薄層は、その焼成後の厚さを前述の所定の値の範囲(3〜15nm)内に抑えることが出来るように、銀・超微粒子を溶媒に配合するときの超微粒子の粒径及び配合比率を調整する。この透明導電性基材の製造方法において、場合によっては、乾燥工程を省略することもできる。
【0016】
プラスチックフィルムと溶媒は、その組み合わせを適当に選定することによって、プラスチックフィルムの表層の一部が溶媒によって軟化(一部溶出)し、乾燥時には両者の混じりあった所謂アロイ(ミキシング)状態になる。それに伴って、プラスチックフィルムの表層内部に銀・超微粒子の一部が侵入するので、形成された銀薄膜とプラスチックフィルムの最表層は一体化し、両者の密着性は極めて良好なものとなる。これにより、従来法でしばしば観察されている密着性の低さに起因する不都合を回避できる。
このように、溶媒によってプラスチックフィルムの表層の一部が溶出する組み合わせを採用するようにすれば、銀・超微粒子は熱処理後プラスチックフィルム表層内部に侵入した状態で一体化する。
【0017】
また、溶媒に熱可塑性樹脂系接着剤を混合し、この混合体に該銀・超微粒子を分散した溶液を、プラスチックフィルム上に塗布してその後加熱昇温すれば、接着剤がプラスチックフィルムと結合して一体化するので、これに伴って銀・超微粒子の一部がプラスチックフィルム中に取り込まれる。これにより、プラスチックフィルムと強固に結合した極めて密着性の良い銀薄膜層を得ることが出来る。
【0018】
ここで、一例として、プラスチックフィルムをポリエステルで作製したとする。ポリエステルは、テレフタル酸とエチレングリコールとを重縮合して得られるポリエチレンテレフタレート(PET)をフィルム状に加熱延伸加工して作製する。したがって、PET用の接着剤を応用することが出来る。PETフィルム用接着剤としては、既に種々のものが市販されており、例えば、輝化学工業株式会社製で主成分がポリエステルの商品名S−400、S−424、S−550、S−430がある。これらS−400、S−424、S−550、S−430の望ましい被着体は、それぞれPET/PET、銅/PET、PET/PET、PP/PETである。
【0019】
また、銀・超微粒子膜に他の膜を追加して形成することもできる。例えば、上述したように、銀膜の上下をTiO2 膜で挟んでサンドイッチ構造にした場合に、最適な選択透過性を示すので、このサンドイッチ構造を形成するために、銀膜を本発明により形成し、一方TiO2 膜を、Tiを含む有機ガス中に一定時間暴露することによって形成することができる。このサンドイッチ構造の具体例とその光学特性を図4に示す。
【0020】
図5は、本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムの製造装置を示す図である。透明なプラスチックフィルム11は、巻出し機12から巻出されて巻取り機13により巻取られるようになっており、これによりプラスチックフィルム11は、所定の走行経路に沿って連続的に走行するようになっている。巻出し機12から巻出されたプラスチックフィルム11は、先ず、塗布装置としての塗布槽14に収容された溶液15にその一方の面を接触させつつ走行する。これにより、銀・超微粒子を溶媒に分散させた溶液15がプラスチックフィルム11の一方の面(表面)に塗布される。溶液15には、必要に応じて熱可塑性樹脂系接着剤が混合される。
【0021】
次いで、溶液15を塗布されたプラスチックフィルム11は、乾燥装置としてのファンを備えた乾燥部16で乾燥された後、加熱装置としての焼成室17内を走行し、ここで200℃程度の温度で約30分程度加熱される。これにより、該プラスチックフィルム上の溶媒は揮発し超微粒子状の銀が相互に融着・結合した薄膜がプラスチックフィルム11上に形成される。この薄膜は極めて薄いので透明性を有し、透明導電膜となる。上記焼成室17の上部には局部排気を行うため排気口18が設けられている。その後、プラスチックフィルム11は巻取り機13に巻き取られる。
なお、一般に、溶液15の塗布に要する時間と乾燥、焼成に要する時間にはかなりの差があるので、その程度に応じて、乾燥部16、焼成室17の通過時間を調整出来る機構を組み込むことが必要である。
【0022】
この透明導電性フィルムの製造装置においては、特別な真空処理室は不要なので、従来の真空蒸着法やスパッタリング法の製造装置に比べて、はるかに安価な装置とすることができる。また、連続的に透明導電性基材を製造することができるので、高い製造効率を得ることができる。
なお、上記製造装置において、場合によっては、乾燥装置を省略することもできる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、比較的低い温度で、しかも大気圧状態で超微粒子を分散させた溶液から、プラスチックフィルム上に金属粒子同士が溶融して結合した透明導電膜を形成することが出来る。従って、従来法のように工程を複雑化することなく、従来、蒸着法やスパッタリング法で必要としていた真空装置を必要とすることなく、簡便かつ安価に透明導電性フィルムを製造することができる。また、超微粒子を用いるので、透明導電膜のプラスチックフィルムに対する密着性を向上させることができ、かつ熱膨張差に起因する熱応力、熱歪を大幅に低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】超微粒子の構造を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基材上に形成した透明導電膜を模式的に示す図である。
【図3】銀・超微粒子の製造工程を示す図である。
【図4】銀膜の上下をTiO2 膜で挟んだサンドイッチ構造の具体例とその光学特性を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムの製造装置を示す図である。
【符号の説明】
1 有機物で被覆された超微粒子
2 金属粒子
3 有機物
5 基材
6 透明導電膜
11 プラスチックフィルム
14 塗布槽(塗布装置)
15 溶液
16 乾燥部(乾燥装置)
17 焼成室(加熱装置)
Claims (4)
- 金属粒子の表面を有機物で被覆した金属超微粒子を溶媒に分散させた溶液を、透明なプラスチックフィルム上に塗布した後、加熱することにより前記プラスチックフィルム表面に前記金属粒子同士が溶融して結合した透明導電膜を形成することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。
- 前記金属粒子は、粒径が1〜20nmであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
- 前記金属粒子は、銀の超微粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
- 透明なプラスチックフィルム表面に、表面を有機物で被覆した金属粒子同士を溶融させて結合させた透明導電膜を形成したことを特徴とする透明導電性フィルム。
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