JP5437583B2 - 金属酸化物の製膜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属酸化物の製膜方法に関し、特に、プラズマ処理を用いることにより、面積抵抗や透明性等のばらつきが少ない金属酸化物の製膜方法に関する。
従来、基材としてのガラス基板の上に、金属酸化物からなる薄膜(以下、金属酸化物薄膜と称する場合がある。)を、蒸着等の手法により形成した透明電極が知られている。
しかしながら、軽量化や薄型化の観点から、ガラス基板にかわって、プラスチックフィルムが代用されている。
このようなプラスチックフィルム上に、金属や金属酸化物薄膜を形成する方法としては、以下の形成方法が知られている。
1)金属あるいは金属酸化物材料の真空蒸着あるいはスパッタリングなどの蒸着法。
2)金属あるいは金属酸化物粒子を有機バインダー中に分散させた溶液を塗布する塗布方法。
しかしながら、これらの形成方法、例えば、蒸着法においては、高真空を要するため製造コストが高くなり、量産性に難点があるという問題が見られた。また、金属あるいは金属酸化物の微粒子溶液を塗布する方法では、得られる金属薄膜や金属酸化物薄膜における導電性等が、蒸着法の場合よりも劣っているという問題が見られた。
一方、金属酸化物薄膜の形成方法として、均質、透明性、材料の選択が広い等の理由により、金属アルコキシドおよびその加水分解物を用いるゾル−ゲル法が知られている。
また、最近では、機能をさらに付与することや物性を改良するために有機化合物を併用することで、無機ポリマーと有機ポリマーが均質化した有機・無機ハイブリット膜の研究も行われている。
しかしながら、ゾル−ゲル法は、熱処理(焼成)工程が必要であり、通常、300℃以上の高温にさらす必要があった。そのため、金属酸化物含有皮膜の連続生産ができずに、生産コストが高くなったり、基材の熱劣化を防止するのに、基材の種類選択に制限されたりする問題が見られた。
そこで、これらの問題点を解決するために、ゾル−ゲル法により金属酸化物薄膜を形成する場合、加熱する代わりに、波長が360nm以下の紫外光を照射して、金属酸化物を結晶化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ゾル−ゲル法により金属酸化物薄膜を形成する際に、予め金属酸化物ゲルを形成し、その後、プラズマ処理を施す方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、金属アルコキシドまたは金属塩を主原料として得られる金属酸化物ゾルから金属酸化物ゲルを形成した後、当該金属酸化物ゲルに、所定のプラズマ処理を施して、基材上に、金属酸化物薄膜を形成する方法である。
特開平9−157855号公報(特許請求の範囲) 特開2000−327310号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1に開示された形成方法では、紫外光の照射時間が長く、基材によってはダメージを受けやすいばかりか、照射露光装置の価格が高くなったり、大面積の均一な薄膜が連続的に生産しにくいという問題が見られた。
また、特許文献2に開示された形成方法では、プラズマ処理を施す前に、金属酸化物ゾルから金属酸化物ゲルを予め形成しなければならず、工程数が増えるばかりか、得られる金属酸化物薄膜の特性(面積抵抗や透明性等)がばらつきやすいという問題が見られた。
そこで、本発明の目的は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、金属酸化物薄膜を形成する際に、予め金属酸化物ゾルから金属酸化物ゲルを形成することなく、金属塩を含む塗膜にプラズマ処理を施すことにより、面積抵抗や透明性等のばらつきが少ない金属酸化物薄膜が得られる形成方法を提供することである。
本発明によれば、基材上に、金属酸化物薄膜を形成する金属酸化物の製膜方法において、基材に、金属塩として、亜鉛及びインジウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属ハロゲン化物と、溶剤として、ニトリル系化合物と、を含有する液状物であって、当該金属塩の濃度が0.01〜15mol/lの液状物を塗布して、塗膜を形成する工程と、塗膜に対して、プラズマ圧力を1.0×10 -3 〜5.0×10 Paの範囲内の値とするとともに、プラズマ源としての酸素、および、前記溶剤に含まれる水、あるいはいずれか一方の酸素源の存在下に、プラズマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする金属酸化物の製膜方法が提供され、上述した課題を解決することができる。
すなわち、所定の金属塩において、予め金属酸化物ゾルから金属酸化物ゲルを形成することなく、プラズマ処理を施すことにより、面積抵抗や透明性等のばらつきが少ない金属酸化物薄膜を得ることができる。
また、亜鉛等を含有する液状物を用いることによって、さらに透明性に優れた導電性または半導電性の金属酸化物薄膜を得ることができる。
また、所定の金属塩濃度の液状物を用いることによって、凝集物が少ない適度な濃度の溶液となり、それから得られる塗膜も均質であり、面積抵抗や透明性のばらつきが少ない金属酸化物薄膜を得ることができる。
さらに、溶剤として、ニトリル系化合物を用いることによって、金属塩を含有する液状物を容易に調製することができる。
また、本発明の金属酸化物の製膜方法を実施するにあたり、表面処理してある基材として、プライマー処理が施された基材を用いることが好ましい。
このように構成すると、基材に対する金属酸化物薄膜の密着性がさらに向上するとともに、面積抵抗や透明性等のばらつきがさらに少ない金属酸化物薄膜を得ることができる。
本発明の実施形態は、図1(a)〜(d)に例示するように、基材10上に、金属酸化物薄膜14を形成する金属酸化物の製膜方法において、以下の工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする金属酸化物の製膜方法である。
(1)基材に対して、金属塩を含有する液状物を塗布して金属塩を含有する塗膜を形成する工程(以下、単に塗布工程と称する場合がある。)
(2)塗膜に対してプラズマ処理を行う工程(以下、単にプラズマ処理工程と称する場合がある。)
すなわち、本発明の実施形態は、基材上に、金属酸化物薄膜を形成する金属酸化物の製膜方法において、基材に、金属塩として、亜鉛及びインジウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属ハロゲン化物と、溶剤として、ニトリル系化合物と、を含有する液状物であって、当該金属塩の濃度が0.01〜15mol/lの液状物を塗布して、塗膜を形成する工程と、塗膜に対して、プラズマ圧力を1.0×10 -3 〜5.0×10 Paの範囲内の値とするとともに、プラズマ源としての酸素、および、前記溶剤に含まれる水、あるいはいずれか一方の酸素源の存在下に、プラズマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする金属酸化物の製膜方法である。
なお、図1(a)は、基材10を準備する工程を示し、図1(b)は、基材10の上に、金属塩を含有する液状物を塗布して、所定の塗膜12とする工程を示し、図1(c)は、塗膜12を乾燥させてプラズマ被処理物12´とする工程を示し、さらに、図1(d)は、プラズマ被処理物12´に対して、プラズマ処理を施し、金属酸化物薄膜14とする工程を示している。
以下、本発明の金属酸化物の製膜方法に関する実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
1.塗布工程
(1)基材
図1(a)〜(d)に例示する基材10の種類としては、特に制限されるものではなく、例えば、樹脂フィルム、ガラス、セラミック、金属などを使用することができる。
また、樹脂フィルムとしては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式構造含有重合体、芳香族系重合体などが挙げられる。
これらの中でも、汎用性が高いことから、ポリエステルおよびポリアミドからなる基材であることが特に好ましい。
このようなポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレートなどが挙げられる。
また、ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体が挙げられる。
また、基材の厚さとしては特に制約はないが、通常1〜1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる基材の厚さが1μm未満となると、機械的強度や取り扱い性が過度に低下したり、均一な厚さの金属酸化膜を安定的に形成することが困難となったりする場合があるためである。
一方、かかる基材の厚さが1000μmを超えると、逆に取り扱い性が過度に低下したり、得られる金属酸化膜の使用用途が過度に制限されたり、さらには、経済的に不利益となったりする場合があるためである。
したがって、基材の厚さを5〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜200μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、金属酸化物薄膜は、図2(a)に示すように、基材10に直接形成してもよく、あるいは、基材に表面処理を施した後、その処理面に形成してもよい。
このような表面処理としては、例えば、プライマー処理、コロナ処理、火炎処理などが挙げられるが、プライマー処理、すなわち、図2(b)に示すように、基材10にプライマー層18を形成したものを用いることが好ましい。
この理由は、このようなプライマー層を形成した基材を用いることにより、基材に対する金属酸化物薄膜の密着性がさらに向上させることができるためである。
なお、このようなプライマー層を構成する材料としては、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、及びそれらの組み合わせ)、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
また、プライマー層の厚さについても、特に限定されないが、通常0.05μm〜10μmの範囲内の値である。
(2)金属塩を含有する液状物
本発明で用いられる液状物には、通常、金属塩と、溶剤とが含まれる。
ここで、金属塩としては、金属ハロゲン化物が挙げられる。
かかるハロゲン化物としては、塩化物や臭化物が挙げられるが、塩化物がより好ましい。
また、金属塩を構成する金属としては、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)から選ばれる少なくとも1つの金属を含めば良く、Pt、Au、Ag、Cu、Sn、Ga、Ti、Ni、Ge、Cdなどを併用しても良い。
すなわち、ZnおよびInの少なくとも一種を用いると、透明性のある金属酸化膜が得られることから好ましい金属である。
なお、ここでいう透明性とは、可視光線が少なくとも透過することを意味し、より好ましくは、50%以上の透過率を有することである。
また、溶剤としては、金属塩の溶解性が良いことから、アセトニトリルやプロピオニトリルなどのニトリル系化合物が用いられる。
また、本発明の金属酸化物の製膜方法を実施するにあたり、金属塩を含有する液状物として、金属塩の濃度が0.01〜15mol/lの液状物を用いることが好ましい。
この理由は、金属塩の濃度が、0.01mol/l未満となると、得られる塗膜にピンホールが生じやすくなり、得られる金属酸化物薄膜の面積抵抗の値がばらつくことがある
ためである。
一方、金属塩の濃度が、15mol/lを超えると、金属塩が析出することがあり、得られる金属酸化物薄膜が均質なものにならないおそれがあるためである。
したがって、金属塩の濃度を、0.05〜10mol/lの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜5mol/lの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の金属酸化物の製膜方法を実施するにあたり、金属塩を含有する液状物として、粘度(測定温度:25℃)を0.1 〜5000mPa・secの範囲内の値とした液状物を用いることが好ましい。
この理由は、液状物の粘度がこの範囲内にあると、均一な厚さの塗膜を形成するのが容易となるためである。
(3)塗布方法
また、金属塩を含有する液状物を塗布するに際して、公知の塗布方法を採用することがでる。
より具体的には、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、スクイズコーター、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等が挙げられる。液状物を塗布した後は、必要に応じて加熱し、乾燥してもよい。
2.プラズマ処理工程
また、本発明のプラズマ処理は、酸素源の存在下、プラズマ処理を行うことを特徴とする。
(1)プラズマ源
本発明のプラズマ処理に際して、図1(d)に例示するようなプラズマ装置16を用いるとともに、そのプラズマ源としては、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、フルオロカーボンなどを単独または混合して用いることが好ましい。
また、酸素源としては、酸素ガス、水などの酸素原子を含むものを用いることができる。なお、酸素ガスはプラズマ源でもあるので、プラズマ源として酸素を用いる場合は、その他の酸素源は無くてもよい。
なお、図1(d)に例示するプラズマ装置16は、一例であり、イオン源等は省略してあるが、少なくとも高周波電源16aと、上部電極16bと、下部電極16cと、アース16dと、を備えている。
(2)プラズマ圧力
また、プラズマ処理の際のプラズマ圧力を1.0×10-3〜5.0×10Paの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるプラズマ圧力が、1.0×10-3Pa未満の値になると、プラズマ濃度が低すぎるため金属酸化物の製膜に時間がかかるためである。
一方、かかるプラズマ圧力が、5.0×10Paを超えても、発生したプラズマ同士の衝突が起きやすくなるため製膜速度向上はほとんど見られないためである。
したがって、プラズマ処理の際のプラズマ圧力を1.0×10-2〜3.0×10Paの範囲内の値とすることがより好ましい。
(3)多段階プラズマ処理
また、多段階プラズマ処理を行っても良い。その場合、それぞれの段階でプラズマ処理条件を変えることもできるし、同一条件で、プラズマ処理を複数回行うこともできる。
3.その他の工程
金属塩としてハロゲン化物を含有する液状物を用いた場合、プラズマ処理によって、ハロゲン化水素が発生することがある。
その場合、プラズマ処理を施した後に、中和工程及び洗浄工程、あるいはいずれか一方の工程を設けることが好ましい。
(1)中和工程
ここで、中和工程は、金属酸化物薄膜を、例えば、KOHやNaOH等のアルカリ水溶液に浸漬させて行うが、その場合、中和時間を1秒〜10分間として、中和温度を10〜40℃の条件で行えばよい。
(2)洗浄工程
また、洗浄工程を実施するにあたり、例えば、洗浄剤として水を用い、洗浄時間を1分〜10分とし、洗浄温度を10〜100℃で金属酸化物薄膜を洗浄すればよい。
4.積層体
(1)金属酸化物薄膜の厚さ
本発明の金属酸化物の製膜方法によれば、厚さ10〜1000nmの金属酸化物薄膜を容易に得ることができる。
(2)金属酸化物薄膜の面積抵抗
本発明の金属酸化物の製膜方法によれば、表面抵抗率が1×104〜1×1010Ω/□の範囲内の金属酸化物薄膜を容易に得ることができる。
なお、金属酸化物薄膜の面積抵抗の測定方法は、後述する実施例において、詳述する。
(3)金属酸化物薄膜の可視光透過率
本発明の金属酸化物の製膜方法によれば、可視光透過率が50%以上の金属酸化物薄膜を有する基材を容易に得ることができる。
なお、金属酸化物薄膜の可視光透過率の測定方法は、後述する実施例において、詳述する。
(4)保護層
また、図2(c)に示すように、金属酸化物薄膜14の上に、保護層20を形成することも好ましい。
例えば、このように保護層20を備えた金属酸化物薄膜14であれば、金属酸化物薄膜に傷がつくことを防止することができる。
なお、保護層としては、例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂から構成してあることが好ましい。
(5)パターニング
また、図2(d)に示すように、金属酸化物薄膜14に対して、パターニングすることも好ましい。
例えば、このようにパターニングした金属酸化物薄膜14´であれば、液晶表示装置やプラズマ表示装置、あるいは有機エレクトロルミネッセンス装置や無機エレクトロルミネッセンス装置の透明電極として、好適に使用することができる。
なお、図2(d)に示す例では、パターニングした金属酸化物薄膜14´の上に、電気絶縁層やカラーフィルタ等を構成する樹脂層22がさらに形成してある例を示している。
[実施例1]
1.金属酸化薄膜の作成
(1)塗布工程
ポリビニルアルコール(Aldrich社製、重量平均分子量10万)を水に溶解させて水溶液(濃度1質量%)とし、それを、スピンコート法(回転数1500rpm)により、基材として、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡製:A−4100)の高平滑表面に塗布し、かかる基材上に、厚さ1μmのプライマー層を形成した。
次いで、ZnCl(関東化学社製、特級)1.02g(7.4mmol)、InCl(Aldrich社製、純度98%)1.65g(7.4mmol)、酸素源としてHO 0.53g(29.6mmol)をアセトニトリル(関東化学社製、特級)40gに溶解させて、金属塩を含有する液状物とした。金属塩濃度は、0.38mol/l(ZnClとInClの合計量、各々0.19mol/l)である。
この金属塩を含有する液状物を、上述した基材のプライマー層表面に、スピンコート法(回転数1500rpm)によって塗布し、室温25℃にて5分間放置して溶媒を乾燥させ膜厚が90nmの金属塩薄膜を得た。
(2)プラズマ処理工程
次いで、プラズマ装置(ヤマトマテリアル社製、PDC200)を用いて塗布面にプラズマ処理を施し、金属塩薄膜から、金属酸化物薄膜を得た。プラズマ処理条件は以下のとおりである。
RF電力(周波数13.56MHz)300W
プラズマ源 Ar、O
ガス流量(ml/min) Ar:100、O:100
プラズマ圧力 20Pa
処理時間 3min
なお、続いて同様の操作を繰り返し、実施例1に関して、合計5点の金属酸化物薄膜の試料を作製し、それらを用いて次の評価を行った。以下、同様である。
2.金属酸化物薄膜の評価
プラズマ処理の効果を確認するために、得られた金属酸化物薄膜の試料(n数=5)について、以下の測定を行った。結果を表1に示す。
(1)酸素含有量
X線光電子分光分析(XPS、アルパック・ファイ社製)を用いて酸素含有量を測定し、その平均値を、金属酸化物薄膜の酸素含有量(モル%)とした。
(2)表面抵抗率の測定
低抵抗値測定器(三菱化学社製、「ロレスター・MCP−T6」)を用いて、金属酸化物薄膜の表面抵抗率を測定した。
(3)光線透過率
金属酸化物薄膜の全光線透過率を、基材を含んだ状態で、紫外可視分光光度計(島津製作所製、「UV−3101PC」)を用いて測定した。
(4)密着性
基材に対する金属酸化物薄膜の密着性を、碁盤目試験(JIS K−5600−5−6)により評価した。なお、密着性評価基準は、JIS K−5600−5−6の試験結果の分類に従った。
[実施例2]
プラズマ処理を行う際のガス流量に関して、Arを100ml/min、Oを5ml/minとした以外は、実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
プラズマ処理を行う際のガス流量に関して、Arを100ml/min、Oを30ml/minとした以外は、実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
プラズマ処理を行う際のガス流量に関して、Arを40ml/min、Oを100ml/minとした以外は、実施例1と同様にして金属酸化薄膜を形成して、評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
プラズマ処理を行う際のガス流量に関して、Arを用いずにOを100ml/minとした以外は、実施例1と同様にして金属酸化薄膜を形成して、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
金属塩を含有する液状物に関して、ZnCl(関東化学社製、特級)2.04g(14.7mmol)と、HO 0.26g(14.7mmol)をアセトニトリル(関東化学社製、特級)40gに溶解させたこと以外は、実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。金属塩(ZnCl)濃度は、0.37mol/lである。評価結果を表1に示す。
[実施例7]
ZnCl(関東化学社製、特級)0.1g(0.74mmol)、InCl(Aldrich社製、純度98%)0.16g(0.74mmol)、酸素源としてHO 0.05g(2.96mmol)をアセトニトリル(関東化学社製、特級)40gに溶解させて、金属塩を含有する液状物とした以外は実施例1と同様にして。金属塩濃度は、0.04mol/l(ZnClとInClの合計量、各々0.02mol/l)である。
[参考例8]
ZnCl(関東化学社製、特級)61.2g(455mmol)を溶剤として水(和光純薬(株)製、精製水)40gに溶解させて金属塩を含有する液状物とし、乾燥を100℃で5分間行った以外は実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。金属塩濃度は、11.4mol/lである。
[参考例9]
ZnCl(関東化学社製、特級)1.02g(7.4mmol)をメタノール(関東科学(株)製、特級)100gに溶解させて金属塩を含有する液状物とした以外は実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。金属塩濃度は、0.07mol/lである。
[参考例10]
ZnCl(関東化学社製、特級)1.02g(7.4mmol)と、酸素源としてHO 0.13g(7.4mmol)をメタノール(関東科学(株)製、特級)100gに溶解させて金属塩を含有する液状物とした以外は実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。金属塩濃度は、0.07mol/lである。
[実施例11]
実施例1で使用した基材にプライマー層を形成しないでPETフィルムをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成して、評価した。
[比較例1]
インジウムn-ブトキサイド2gをブタノール10gに溶かして、実施例1で用いたプライマー層を備えた基材のプライマー層表面に、スピンコート(回転数1500rpm)で塗布し、乾燥してインジウムオキサイドのゲル膜を形成した。このゲル膜を実施例1と同様の条件でプラズマ処理を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0005437583
表1に示したように、実施例1〜11で得られた薄膜の酸素含有率は30〜48モル%であり、また表面抵抗率の値からも金属酸化物薄膜が生成していることが確認できた。また、表面抵抗率及び可視光透過率のばらつきが小さい膜が得られた。
それに対して、比較例1において、金属酸化物薄膜は得られたものの、実施例の金属酸化物薄膜に比べて、表面抵抗率及び可視光透過率の測定において、測定値の最小値と最大値との差が大きかった。
以上詳述したように、本発明の金属酸化物薄膜の製膜方法によれば、表面抵抗等のばらつきが少ない薄膜を効率的に提供できるようになった。
したがって、本発明によれば、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置等の透明電極として、好適な積層体を効率的に供給することができる。
図1(a)〜(d)は、本発明の金属酸化物薄膜の製膜方法を説明するために供する図である。 図2(a)〜(d)は、本発明の金属酸化物薄膜の製膜方法により得られた積層体を説明するために供する図である。
符号の説明
10:基材
12:金属塩を含有する液状物(塗膜)
12´:金属塩を含有する液状物の乾燥膜(プラズマ被処理物)
14:金属酸化物薄膜
14´:パターニングされた金属酸化物薄膜
16:プラズマ処理装置
16a:交流電源
16b:電極(上部電極)
16c:電極(下部電極)
16d:アース
18:プライマー層
20:保護膜
22:樹脂膜

Claims (5)

  1. 基材上に、金属酸化物薄膜を形成する金属酸化物の製膜方法において、
    前記基材に、金属塩として、亜鉛及びインジウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属ハロゲン化物と、溶剤として、ニトリル系化合物と、を含有する液状物であって、当該金属塩の濃度が0.01〜15mol/lの液状物を塗布して、塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜に対して、プラズマ圧力を1.0×10 -3 〜5.0×10 Paの範囲内の値とするとともに、プラズマ源としての酸素、および、前記溶剤に含まれる水、あるいはいずれか一方の酸素源の存在下に、プラズマ処理を行う工程と、
    を含むことを特徴とする金属酸化物の製膜方法。
  2. 前記溶剤としてのニトリル系化合物に、酸素源としての水を溶解させてなることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物の製膜方法。
  3. 前記基材として、プライマー処理が施された基材を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物の製膜方法。
  4. 前記ニトリル系化合物として、アセトニトリルまたはプロピオニトリルを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属酸化物の製膜方法。
  5. 前記プラズマ処理を施した後、中和工程および洗浄工程あるいは、いずれか一方の工程を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属酸化物の製膜方法。
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