JP4161461B2 - 積層板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属箔張りの積層板を連続的に得ることが可能な、積層板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板の製造に使用される金属箔張りの積層板は、一般にバッチ方式で製造されており、内部や表面に空隙を有するガラスクロス等の基材に樹脂組成物を含浸して製造したプリプレグを所用枚数重ねると共に、その両面に金属箔を重ねたものを、間に金属板等を挟んで複数重ねた後、その重ねたものをまとめて加熱・加圧することにより成形する方法で製造されているが、近年、含浸から成形まで連続的に行い、積層板を連続的に得る方法が検討され実施されるようになっている。
【0003】
この連続的に生産する方法としては、例えば図2に示すように、連続的に供給される基材1に樹脂組成物2を含浸した所要枚数の樹脂含浸基材3と、連続的に供給される金属箔4とを、その両表層に金属箔4,4が配置されるように積層した後、その積層物をラミネートロール5,5で挟んで圧着し、次いでその圧着した圧着物6を引き出しロール9で引っ張って進行させながら、加熱装置7で加熱して圧着物6中の樹脂組成物2を硬化させた後、所定の大きさに切断したり巻き取る方法が行われており、そして、これらのそれぞれの工程を連続して行うことにより、積層板を連続的に得ることが可能になっている。なお、この方法に用いる樹脂組成物2としては、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物2が一般的に用いられている。
【0004】
しかし、積層板を上記のような連続的に生産する方法で製造する場合、積層板に微少な厚みバラツキが生じ、波打ち形状の凹凸が形成される場合があった。そのため、例えば、特開昭61−137743号に記載されたように、加熱装置7で圧着物6を加熱して圧着物6中の樹脂組成物2の硬化を進行させながら、圧着物6をロール10間に挟んで加圧して製造することにより、波打ち形状の凹凸を形成されにくくすることが検討されている。
【0005】
しかし、この圧着物6をロール10間に挟んで加圧して製造する方法の場合、樹脂組成物の硬化があまり進行していない部分をロール10で挟んで加圧した場合には、端部から樹脂組成物が流れ出てしまい、得られる積層板の板厚のバラツキが大きくなるという問題が発生する場合があった。また、硬化がかなり進んだ部分をロール10で挟んで加圧した場合には、得られる積層板の表面の金属箔にスリキズ等が形成されるという問題が発生する場合があった。そのため、波打ち形状の凹凸が形成されにくく、かつ、板厚のバラツキや、表面の金属箔にスリキズ等が形成されにくい積層板の製造方法が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を改善するために成されたもので、その目的とするところは、金属箔張りの積層板を連続的に製造する積層板の製造方法であって、得られる積層板に、波打ち形状の凹凸が形成されにくく、かつ、板厚のバラツキや、表面の金属箔にスリキズ等が形成されにくい積層板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る積層板の製造方法は、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を連続的に供給される基材に含浸した樹脂含浸基材と、連続的に供給される金属箔とを、その両表層に金属箔が配置されるように積層した後、その積層物をラミネートロールで圧着し、次いで、その圧着物を加熱して圧着物中の樹脂組成物の硬化を進行させながら、圧着物と接している部分が変形して接触面積が拡大可能な潰れ円筒状の加圧物であって、樹脂フィルムを巻き取ったもの、又は樹脂をガラスクロスに含浸させて固化したフィルムを巻き取ったもので形成される加圧物を、圧着物の全幅に渡って圧着物の上側に載置して製造することを特徴とする。
【0008】
上記加圧物を、圧着物の上側に複数載置して製造すると好ましい。また、上記加圧物の圧着物と接する部分に、樹脂フィルムが設けられていると好ましく、また、加圧物が、樹脂フィルムを介して圧着物を加熱する加熱装置に固着されていると好ましい。また、上記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム及びポリイミド樹脂フィルムからなる群の中から選ばれた少なくとも1種のフィルムであると好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る積層板の製造方法を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る積層板の製造方法の一実施の形態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は要部斜視図である。
【0010】
本発明に係る積層板の製造方法の一実施の形態は、図1(a)に示すように、樹脂組成物2を連続的に供給される基材1に含浸した1枚の樹脂含浸基材3と、連続的に供給される2枚の金属箔4,4とを、その両表層に金属箔4,4が配置されるように積層した後、その積層した積層物をラミネートロール5,5で挟んで圧着し、次いでその圧着した圧着物6を引き出しロール9で引っ張って進行させながら、加熱装置7で、圧着物6中の樹脂組成物2が硬化する温度に圧着物6を加熱して硬化させて連続的に製造を行う実施の形態である。
【0011】
なお、加熱装置7内では、圧着物6中の樹脂組成物2が硬化する温度に圧着物6を加熱することにより、圧着物6中の樹脂組成物2の硬化を進行させながら、図1(b)に示すように、圧着物6と接している部分が変形して接触面積が拡大可能な潰れ円筒状の加圧物8を、圧着物6の全幅に渡って圧着物6の上側に載置することにより、加圧物8で圧着物6を全幅に渡って加圧するようになっている。
【0012】
このように、圧着物6中の樹脂組成物2の硬化が進行している時点で、このような加圧物8を圧着物6の上側に載置すると、波打ち形状の凹凸が形成されにくく、かつ、板厚のバラツキや、表面の金属箔にスリキズ等が形成されにくい積層板を得ることが可能になる。
【0013】
これは、樹脂含浸基材3に、樹脂組成物2の付着量のバラツキが生じていた場合であっても、加圧物8を載置することによってこのバラツキによる凹凸が平坦化されるため、このバラツキによって生じる微少な厚みバラツキの発生を抑えることができ、波打ち形状の凹凸が形成されにくくなる。また、加圧物8による加圧は、圧着物6と接している部分が変形して一部吸収されるため、圧着物6に対して過度に力が加わりにくく、得られる積層板は板厚のバラツキが生じにくくなる。
【0014】
更に、加圧物8は、圧着物6と接している部分が変形して接触面積が拡大可能なため、圧着物6が上下に振動した場合には、加圧物8が変形して振動により生じる圧着物6にかかる力を吸収し、従来の変形しないロールで挟む場合と比較して圧着物6にかかる力が減り、得られる積層板の表面の金属箔にスリキズ等が形成されにくくなる。更に、硬化がかなり進んだ部分を加圧した場合であっても、加圧物8による加圧は、圧着物6と接している部分が変形して一部吸収されるため、圧着物6に対して過度に力が加わりにくくなり、得られる積層板の表面の金属箔にスリキズ等が形成されにくくなる。
【0015】
なお、上記加圧物8を圧着物6の上側に載置する位置は、圧着物6中の樹脂組成物2の硬化が進行している部分に載置することが重要である。圧着物6中の樹脂組成物2の硬化が停止した部分に載置しても、樹脂組成物2が平坦化されないため、波打ち形状の凹凸が形成され易くなる。
【0016】
この加圧物8を載置して圧着物6を加圧する圧力は、得られる積層板に波打ち形状の凹凸や、板厚のバラツキや、スリキズ等が形成されにくい圧力に、加圧物8を載置する部分の樹脂組成物2の粘度や、加圧物8の硬度等に応じて適宜調整すれば良く、例えば、幅1m当たり重さ0.2〜1kg程度の加圧物8を載置して加圧する。
【0017】
なお、この実施の形態の加圧物8の圧着物6と接する部分には、樹脂フィルム81が設けられている。このように、加圧物8の圧着物6と接する部分に樹脂フィルム81を設けると、金属箔4と比較して柔らかい樹脂フィルム81が加圧物8による加圧の一部を吸収するため、更に圧着物6に対して過度に力が加わりにくくなり、得られる積層板は、特に表面の金属箔にスリキズが形成されにくくなる。
【0018】
この樹脂フィルム81としては、圧着物6を加熱するときの温度に耐え、かつ、柔軟性を有する樹脂製のフィルムであれば特に限定するものではないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム及びポリイミド樹脂フィルムからなる群の中から選ばれた少なくとも1種のフィルムであると、耐熱性と柔軟性のバランスが優れ好ましい。
【0019】
また、この樹脂フィルム81を、圧着物6を加熱する加熱装置7に固着することにより、樹脂フィルム81を介して加熱装置7に加圧物8を固着すると、加圧物8を圧着物6の全幅に渡って安定して載置することが可能になり好ましい。
【0020】
また、加圧物8は、圧着物6の上側に1つ載置して製造しても良いが、加圧物8を圧着物6の上側に複数載置して製造すると、樹脂組成物2の付着量のバラツキによって生じる凹凸が特に平坦化されるため、波打ち形状の凹凸が特に形成されにくくなり好ましい。
【0021】
加圧物8を形成する材質としては、圧着物6の上側に載置したときに、圧着物6と接している部分が変形して接触面積が拡大可能なものであれば特に限定するものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム等の樹脂フィルムを巻き取ったものや、これら等の樹脂をガラスクロス等に含浸させて固化したフィルムを巻き取ったものが挙げられる。なお、樹脂をガラスクロスに含浸させて固化したフィルムを巻き取ったものを用いると、強度が比較的優れるため、長期間安定して圧着物6を全幅に渡って加圧することができ好ましい。
【0023】
本発明で用いられる基材1としては、内部や表面に空隙を有し、樹脂組成物2を含浸可能なものであれば特に限定するものではなく、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の繊維を使用したクロス及びペーパーが挙げられる。なお、基材1がガラス繊維製のクロス(ガラスクロス)又はペーパー(ガラスペーパー)の場合、得られる積層板の耐熱性が優れ好ましい。なお、この基材1の厚みとしては、0.03〜0.4mmが一般的である。
【0024】
また、本発明で用いられる樹脂組成物2としては、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物2であれば特に限定するものではなく、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の樹脂の単独、変性物、混合物等が挙げられる。なお樹脂組成物2には、ラジカル重合型熱硬化性樹脂とともに、必要に応じて、スチレン、ジアリルフタレート等のラジカル重合性モノマー、無機、有機の充填材や、充填材の沈降防止剤等を適宜に配合していても良い。
【0025】
また、本発明で用いられる金属箔4としては、連続的に供給することが可能な長尺の金属製の箔であれば特に限定するものではなく、銅箔、ニッケル箔等が挙げられ、この金属箔4の厚みとしては、0.012〜0.07mmが一般的である。
【0026】
また、樹脂含浸基材3及び金属箔4を積層した積層物をラミネートロール5で圧着する条件としては特に限定するものではなく、用いた基材1の種類や樹脂組成物2の粘度等に応じて適宜調整して行う。また、加熱装置7で圧着物を加熱する温度、時間等の条件は、用いた樹脂組成物2が硬化する条件や、その硬化させたい硬化程度に応じて適宜調整して行う。なお、切断した後、更にこの積層板の硬化を進める為に加熱するようにしてもよい。
【0027】
なお、上記の実施の形態は、積層する樹脂含浸基材3の枚数が1枚の実施の形態を説明したが、積層する樹脂含浸基材3の枚数は特に限定するものではなく、得ようとする積層板の厚みに応じて適宜調整すれば良い。なお、積層する樹脂含浸基材3が複数枚の場合には、樹脂含浸基材3間にも金属箔4を積層するようにしても良い。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
ラジカル重合型熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物として、ビニルエステル樹脂[昭和高分子株式会社製、品名S510]を100重量部と、ラジカル開始剤(クメンハイドロパーオキサイド)を1重量部と、難燃性充填材(アンチモン)を1重量部と、を配合し、混合した後、0.1気圧で30分減圧脱泡した樹脂組成物を用いた。また、基材として厚さ0.18mmのガラスクロス[旭シュエーベル株式会社製、品名7628]を、金属箔として厚み18μmの銅箔[日鉱グールドフォイル株式会社製、品名JTC]を用いた。また、加圧物として、フッ素樹脂をガラスクロスに含浸させて固化した幅1.1mのフィルムを、400g巻き取ったものを用いた。なおこのフィルムを巻き取ったものは、圧着物の上側に載置したときには、圧着物と接している部分が変形して接触面積が拡大可能なものである。
【0029】
そして、図1に示すような装置を用いて、1m幅のガラスクロスを2m/分の速度で連続的に供給しつつ、上記樹脂組成物をガラスクロスに含浸して樹脂含浸基材を1枚得た後、その両表層に銅箔を配して積層し、次いでその積層物をラミネートロールで圧着した後、加熱装置で105℃、15分加熱して硬化させ、次いで切断して、板厚0.2mmの両面銅張り積層板を得た。
【0030】
なお、加熱装置内では、加熱して圧着物中の樹脂組成物の硬化を進行させながら、加圧物を圧着物の全幅に渡って圧着物の上側に載置することにより、加圧物で圧着物を全幅に渡って加圧して製造した。なお加圧物を、圧着物の進行方向に沿って50cm間隔で配設することにより、圧着物の上側に複数載置して製造した。そして、加圧物の圧着物と接する部分には、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを設け、更にこのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを加熱装置に固着した装置を用いて製造した。
【0031】
(実施例2)
加圧物として、フッ素樹脂をガラスクロスに含浸させて固化した幅1.1mのフィルムを、200g巻き取ったものを用いたこと以外は実施例1と同様にして両面銅張り積層板を得た。なおこのフィルムを巻き取ったものは、圧着物の上側に載置したときには、圧着物と接している部分が変形して接触面積が拡大可能なものである。
【0032】
(比較例1)
加圧物を圧着物の上側に載置せず、無加圧で圧着物中の樹脂組成物の硬化を進行させたこと以外は実施例1と同様にして両面銅張り積層板を得た。
【0033】
(比較例2)
加圧物に代えて、重さ2.5kgの金属ロールを圧着物の上側に載置したこと以外は実施例1と同様にして両面銅張り積層板を得た。なお、この金属ロールは、圧着物の上側に載置しても圧着物と接している部分が変形せず、接触面積が拡大しないものである。
【0034】
(評価、結果)
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張り積層板の、波打ち形状の凹凸の発生の有無と、スリキズの発生の有無と、板厚のバラツキを評価した。その評価方法としては、波打ち形状の凹凸の発生の有無は目視で1000枚検査し、観察された比率を求めた。また、スリキズの発生の有無は目視で100枚検査し、観察された場合は×とし、観察されない場合は○とした。また、板厚のバラツキは、JIS規格C6481に準じて10枚測定し、中央部と端部の差が30μm以上の場合は×とし、30μm未満の場合は○とした。
【0035】
その結果は表1に示したとおり、各実施例は比較例1と比べて、波打ち形状の凹凸の発生が少なく、かつ、比較例1と同様に、板厚のバラツキや、表面の銅箔にスリキズ等が形成されにくいことが確認された。また、各実施例は比較例2と比べて、板厚のバラツキや、表面の銅箔にスリキズ等が形成されにくいことが確認された。すなわち、各実施例は、波打ち形状の凹凸の発生、スリキズの発生及び板厚のバラツキの全てが優れていたが、各比較例は、いずれかの特性が劣ることが確認された。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明に係る積層板の製造方法は、圧着物を加熱して圧着物中の樹脂組成物の硬化を進行させながら、圧着物と接している部分が変形して接触面積が拡大可能な潰れ円筒状の加圧物であって、樹脂フィルムを巻き取ったもの、又は樹脂をガラスクロスに含浸させて固化したフィルムを巻き取ったもので形成される加圧物を、圧着物の全幅に渡って圧着物の上側に載置して製造するため、得られる積層板に、波打ち形状の凹凸が形成されにくく、かつ、板厚のバラツキや、表面の金属箔にスリキズ等が形成されにくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層板の製造方法の一実施の形態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は要部斜視図である。
【図2】従来の積層板の製造方法を説明する正面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 樹脂組成物
3 樹脂含浸基材
4 金属箔
5 ラミネートロール
6 圧着物
7 加熱装置
8 加圧物
81 樹脂フィルム
9 ロール
Claims (2)
- ラジカル重合型熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を連続的に供給される基材に含浸した樹脂含浸基材と、連続的に供給される金属箔とを、その両表層に金属箔が配置されるように積層した後、その積層物をラミネートロールで圧着し、次いで、その圧着物を加熱して圧着物中の樹脂組成物の硬化を進行させながら、圧着物と接している部分が変形して接触面積が拡大可能な潰れ円筒状の加圧物であって、樹脂フィルムを巻き取ったもの、又は樹脂をガラスクロスに含浸させて固化したフィルムを巻き取ったもので形成される加圧物を、圧着物の全幅に渡って圧着物の上側に載置して製造することを特徴とする積層板の製造方法。
- 加圧物を、圧着物の上側に複数載置して製造することを特徴とする請求項1記載の積層板の製造方法。
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