JP4160921B2 - 硬質被膜被覆工具 - Google Patents

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Description

本発明は硬質被膜被覆工具に係り、特に、被削材の種類に応じて耐溶着性または高温での耐摩耗性に優れた特性を容易に選定できる硬質被膜被覆工具に関するものである。
切削工具等の加工工具の表面に、硬質被膜としてHfN(窒化ハフニウム)膜やCrN(窒化クロム)膜をコーティングすることが、例えば特許文献1に記載されている。また、特許文献2には、超硬合金等の工具母材の表面にTiN膜を設けるとともに、そのTiN膜の上に、HfNにTi(チタン)を所定の割合で添加した(Ti、Hf)N膜をコーティングする技術が記載されている。
特開平5−239624号公報 特許第3249277号公報
ところで、上記HfN膜は、高温での耐摩耗性が優れているため、被加工物との摩擦などで加工中に高温になる高能率加工等の高速加工やドライ加工、或いは難削材に対する切削加工などに使用する工具にコーティングすることが考えられているが、超硬合金等の工具母材との密着性や膜自体の結合力が低いため、剥離等の被膜の損傷で必ずしも十分に満足できる工具寿命の向上効果が得られなかった。また、CrN膜に比較して耐溶着性が劣り、ステンレス鋼や銅合金などの加工には不向きであった。(Ti、Hf)N膜は、Tiの添加で結合力が向上するとともに、TiN膜を介して高い密着性でコーティングできるものの、HfN膜に比較して高温での耐摩耗性が劣る。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、工具母材との密着性が優れているとともに、被削材の種類に応じて耐溶着性または高温での耐摩耗性に優れた特性を容易に選定できる硬質被膜被覆工具を提供することにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、表面に硬質被膜がコーティングされている硬質被膜被覆工具であって、(a) 工具母材の表面にはCrNまたはTiNの中間層が、平均膜厚が0.01〜0.6μmの範囲内となるように設けられているとともに、(b) その中間層の上には、(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜が、平均膜厚が0.5〜4.0μmの範囲内となるように設けられ、(c) その第1硬質被膜の上に、表面を構成するように(Crx 、Hfy )N〔但し、x+y=1、0≦x≦1〕の第2硬質被膜が、平均膜厚が0.05〜2.0μmの範囲内となるように設けられており、(d) これ等の中間層、第1硬質被膜、および第2硬質被膜の全体の平均総膜厚は0.56〜6.6μmの範囲内であることを特徴とする。
第2発明は、第1発明の硬質被膜被覆工具において、前記第1硬質被膜は、CrとHfとを所定の割合で含む(Cr、Hf)Nの単層であることを特徴とする。
第3発明は、表面に硬質被膜がコーティングされている硬質被膜被覆工具であって、(a) 工具母材の表面にはCrNまたはTiNの中間層が、平均膜厚が0.01〜0.6μmの範囲内となるように設けられているとともに、(b) その中間層の上には、(Cr、Hf)Nと前記中間層を構成しているCrNまたはTiNとを、各々の平均膜厚が0.01〜0.50μmの範囲内となるように交互に積層した多層の第1硬質被膜が、全体の平均膜厚が0.44〜7.4μmの範囲内となるように設けられ、(c) その第1硬質被膜の前記(Cr、Hf)Nの上に、表面を構成するように(Crx 、Hfy )N〔但し、x+y=1、0≦x≦1〕の第2硬質被膜が、平均膜厚が0.05〜2.0μmの範囲内となるように設けられており、(d) これ等の中間層、第1硬質被膜、および第2硬質被膜の全体の平均総膜厚は0.5〜10μmの範囲内であることを特徴とする。
第1発明の硬質被膜被覆工具においては、CrNまたはTiNの中間層の存在で超硬合金や高速度工具鋼等の工具母材に対する密着性が向上する一方、(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜は、膜自体の結合力が高いとともに、中間層を構成しているCrNやTiN、或いは第2硬質被膜を構成している(Crx 、Hfy )Nとの密着性が良いため、被膜全体として工具母材に対する付着強度が向上する。また、表面を構成している第2硬質被膜は(Crx 、Hfy )Nで、被削材の種類や加工条件などに応じて混晶比x、yを適当に選定することにより、HfNによる高温での耐摩耗性を重視した工具や、CrNによる耐溶着性を重視した工具を容易に提供できるとともに、上記付着強度の向上と相まって工具寿命が実質的に向上する。
なお、上記混晶比y=1とした場合の第2硬質被膜はHfNとなり、その結合力は低いが、(Cr、Hf)Nから成る第1硬質被膜の存在で第2硬質被膜(HfN)の膜厚を例えば2μm程度以下にすることができるため、HfNの結合力に関する問題が抑制される。
た、中間層の平均膜厚は0.01〜0.6μmの範囲内で、第1硬質被膜の平均膜厚は0.5〜4.0μmの範囲内で、第2硬質被膜の平均膜厚は0.05〜2.0μmの範囲内で、それ等の全体の平均総膜厚は0.56〜6.6μmの範囲内であるため、優れた付着強度や高温での耐摩耗性、或いは耐溶着性が得られる。
第3発明の硬質被膜被覆工具は、第1硬質被膜が(Cr、Hf)Nと中間層を構成しているCrNまたはTiNとを交互に積層した多層構造を成している点が第1発明と相違するだけで、第1発明と同様の効果が得られる。加えて、第1硬質被膜が多層構造であるため靱性が向上し、加工時の振動に対する付着強度が一層向上する。
本発明は、エンドミルやフライス、ドリル、バイト等の切削工具に好適に適用されるが、転造加工用の工具など切削加工以外の工具にも適用され得る。それ等の工具に着脱可能に取り付けられて使用されるスローアウェイチップにも適用され得ることは勿論である。
工具母材としては、超硬合金や高速度工具鋼が好適に用いられるが、超硬合金以外の超硬質工具材料や他の工具材料を用いることもできる。
第1硬質被膜の(Cr、Hf)NのCrとHfの割合は、例えば1:1に設定されるが、何れか一方が0とならない範囲で適宜変更することが可能である。第1発明の第1硬質被膜は、(Cr、Hf)Nの単層であっても良いが、(Cr、Hf)Nを複数積層することも可能で、CrとHfの割合(混晶比)が異なる複数種類の(Cr、Hf)Nを積層することもできる。多層構造の第3発明についても、CrとHfの割合が異なる複数種類の(Cr、Hf)Nを積層することができる。
中間層や第1硬質被膜、第2硬質被膜の形成手段としては、アーク放電イオンプレーティング法等のアーク放電PVD法が好適に用いられるが、他の成膜技術を採用することもできる。
中間層を構成しているCrNまたはTiNは、工具母材との密着性を高めるためのもので、平均膜厚が0.01〜0.6μmの範囲内が適当であり、0.01μmよりも薄いと密着性が損なわれ、0.6μmよりも厚いと耐摩耗性が損なわれる。第2硬質被膜を構成している(Crx 、Hfy )Nは、耐溶着性を高めたり高温での耐摩耗性を高めたりするもので、平均膜厚が0.05〜2.0μmの範囲内が適当であり、0.05μmよりも薄いと耐溶着性や高温での耐摩耗性が損なわれ、2.0μmよりも厚いと、混晶比yが大きい場合は結合力の不足から強度が損なわれ、混晶比xが大きい場合は耐摩耗性が損なわれる可能性がある。
第1硬質被膜を構成している(Cr、Hf)Nは、上記中間層と第2硬質被膜との密着性を高めるためのもので、第1発明では、平均膜厚が0.5〜4.0μmの範囲内が適当であり、0.5μmよりも薄いと密着性が損なわれ、4.0μmよりも厚いと内部応力が高くなって膜内の密着性が損なわれる。多層構造の第3発明では、2種類の層の各々の平均膜厚は0.01〜0.50μmの範囲内が適当で、0.01μmよりも薄いと多層構造による靱性が損なわれ、0.50μmよりも厚いと多層化による相乗効果が損なわれる。また、第1硬質被膜の全体の平均膜厚は0.44〜7.4μmの範囲内が適当で、0.44μmよりも薄いと靱性の向上効果が十分に得られず、7.4μmよりも厚いと内部応力が高くなって膜内の密着性が損なわれる。
本発明の硬質被膜被覆工具は、第2硬質被膜を構成している(Crx 、Hfy )Nの混晶比xを大きくすると、CrNの作用で耐溶着性が向上し、ステンレス鋼や銅合金等の溶着し易い被削材に対する切削加工に好適に用いられ、混晶比yを大きくすると、HfNの作用で高温での耐摩耗性が向上し、加工によって工具温度が高くなる高能率加工等の高速加工やドライ加工、難削材に対する切削加工などに対して好適に用いられるが、その他の加工にも使用できることは勿論である。混晶比x、yは0〜1.0の範囲で適当に設定されるが、例えば0.3〜0.7の範囲で設定すれば、耐溶着性および高温での耐摩耗性を共に高いレベルで満足する硬質被膜被覆工具を提供することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された硬質被膜被覆工具としてのスローアウェイチップ10を説明する図で、(a) は斜視図、(b) は表層部の断面図である。このスローアウェイチップ10は、ホルダ等を介して旋盤の刃物台などに取り付けられて旋削加工等に使用されるもので、平面視において略菱形形状を成しており、平行な一対の辺が切れ刃20として用いられるとともに、平面視の中央部には取付ボルトが挿通させられる取付穴22が設けられている。また、上下反転して使用できるように、反対側の面(図1(a) における裏側の面)についても、平行な一対の辺が切れ刃20として用いられるようになっている。
上記スローアウェイチップ10は、超硬合金製の工具母材12を主体として構成されており、その工具母材12の表面には、アーク放電イオンプレーティング法によりCrNから成る中間層14、(Cr、Hf)Nから成る第1硬質被膜16、および(Crx 、Hfy )Nから成る第2硬質被膜18が順番に積層して設けられ、その第2硬質被膜18が表面を構成している。中間層14の平均膜厚は0.01〜0.6μmの範囲内で、本実施例では0.2μm程度であり、第1硬質被膜16の平均膜厚は0.5〜4.0μmの範囲内で、本実施例では2.0μm程度であり、第2硬質被膜18の平均膜厚は0.05〜2.0μmの範囲内で、本実施例では1.0μm程度であり、それ等の全体の平均総膜厚は0.56〜6.6μmの範囲内で、本実施例では3.2μm程度である。第1硬質被膜16の(Cr、Hf)Nは、CrとHfとを例えば1:1等の所定の割合で含む窒化物の単層であり、第2硬質被膜18は(Crx 、Hfy )Nの単層で、混晶比x、yはx+y=1で、被削材の種類や加工条件等により耐溶着性を重視するか高温での耐摩耗性を重視するかによって適宜定められる。すなわち、HfNは高温での耐摩耗性が優れている一方、CrNは耐溶着性が優れているため、被削材の種類などに応じて混晶比x、yを適当に設定することにより優れた耐久性が得られるようになるのであり、本実施例ではCrおよびHfを共に含むように、0<x<1、0<y<1の範囲内で設定されている。
図2は、上記アーク放電イオンプレーティング法によって中間層14、第1硬質被膜16、および第2硬質被膜18を形成するアーク放電イオンプレーティング装置50の一例を説明する概略構成図(模式図)で、多数のワークすなわち工具母材12を保持しているワーク保持具52、そのワーク保持具52を略垂直な回転中心まわりに回転駆動する回転装置54、工具母材12に負のバイアス電圧を印加するバイアス電源56、工具母材12などを内部に収容している処理炉としてのチャンバ58、チャンバ58内に所定の反応ガスを供給する反応ガス供給装置60、チャンバ58内の気体を真空ポンプなどで排出して減圧する排気装置62、第1アーク電源64、第2アーク電源66等を備えている。反応ガス供給装置60は、本実施例では窒化物であるCrNや(Cr、Hf)N、(Crx 、Hfy )Nを形成するために窒素ガス(N2 )を供給するようになっている。
第1アーク電源64は、中間層14を構成しているCrNや第1硬質被膜16を構成している(Cr、Hf)N、第2硬質被膜18を構成している(Crx 、Hfy )Nの構成物質であるCrから成る第1ターゲット68をカソードとして、アノード70との間に所定のアーク電流を通電してアーク放電させることにより、第1ターゲット68からCrを蒸発させるもので、蒸発したCrは正(+)の金属イオンになって負(−)のバイアス電圧が印加されている工具母材12の表面に付着する。また、第2アーク電源66は、第1硬質被膜16を構成している(Cr、Hf)Nや第2硬質被膜18を構成している(Crx 、Hfy )Nの構成物質であるHfから成る第2ターゲット72をカソードとして、アノード74との間に所定のアーク電流を通電してアーク放電させることにより、第2ターゲット72からHfを蒸発させるもので、蒸発したHfは正(+)の金属イオンになって負(−)のバイアス電圧が印加されている工具母材12の表面に付着する。上記第1ターゲット68および第2ターゲット72は、ワーク保持具52を挟んで略水平方向の対称位置に配置されている。
そして、予め排気装置62で排気しながらチャンバ58内が所定の圧力に保持されるように反応ガス供給装置60から窒素ガスを供給しつつ、バイアス電源56により工具母材12に所定のバイアス電圧を印加し、回転装置54によりワーク保持具52を所定の回転速度で回転させながら、CrNの中間層14や(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜16、(Crx 、Hfy )Nの第2硬質被膜18をそれぞれ所定の膜厚で連続して形成する。具体的には、中間層14を形成する際には、第1アーク電源64をON(通電)し、第1ターゲット68とアノード70との間でアーク放電させてCrを蒸発させることにより、工具母材12の表面にCrNの中間層14を0.2μmの狙い膜厚で形成する。第1硬質被膜16を形成する際には、第1アーク電源64および第2アーク電源66を共にON(通電)し、第1ターゲット68とアノード70との間でアーク放電させてCrを蒸発させるとともに、第2ターゲット72とアノード74との間でアーク放電させてHfを蒸発させることにより、上記中間層14の上に(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜16を2.0μmの狙い膜厚で形成する。また、第2硬質被膜18を形成する際には、第1アーク電源64および第2アーク電源66を共にON(通電)し、第1ターゲット68とアノード70との間でアーク放電させてCrを蒸発させるとともに、第2ターゲット72とアノード74との間でアーク放電させてHfを蒸発させることにより、上記第1硬質被膜16の上に(Crx 、Hfy )Nの第2硬質被膜18を1.0μmの狙い膜厚で形成する。第1アーク電源64および第2アーク電源66のアーク電流の大きさにより、CrおよびHfの混晶比を調整できる。
ここで、本実施例のスローアウェイチップ10は、工具母材12の表面にCrNの中間層14が設けられるとともに、その中間層14の上に(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜16が設けられ、その第1硬質被膜16の上に(Crx 、Hfy )Nの第2硬質被膜18が設けられているため、中間層14の存在で超硬合金製の工具母材12に対する密着性が向上する一方、第1硬質被膜16は、膜自体の結合力が高いとともに、中間層14を構成しているCrNや第2硬質被膜18を構成している(Crx 、Hfy )Nとの密着性が良いため、被膜全体として工具母材12に対する付着強度が向上する。なお、第2硬質被膜18の混晶比yの比率が高いと、第2硬質被膜18の結合力が低くなるが、(Cr、Hf)Nから成る第1硬質被膜16の存在で第2硬質被膜18の膜厚が1μm程度と薄くされているため、混晶比yの比率が高い場合でも結合力が問題となる可能性は少ない。
また、表面を構成している第2硬質被膜18は(Crx 、Hfy )Nで、被削材の種類や加工条件などに応じて混晶比x、yを適当に選定することにより、HfNによる高温での耐摩耗性を重視したチップや、CrNによる耐溶着性を重視したチップを容易に提供できるとともに、前記付着強度の向上と相まって工具寿命が実質的に向上する。
また、本実施例ではアーク放電イオンプレーティング装置50を用いてCrNの中間層14、(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜16、および(Crx 、Hfy )Nの第2硬質被膜18を形成するため、工具母材12をチャンバ58内に保持したままアーク電源64、66のON、OFFを切り換えたりアーク電流を調整したりするだけで、それ等の中間層14、第1硬質被膜16、および第2硬質被膜18をそれぞれ高い膜厚精度で連続して形成することができる。
また、中間層14の平均膜厚は0.2μm程度で、第1硬質被膜16の平均膜厚は2.0μm程度で、第2硬質被膜18の平均膜厚は1.0μm程度で、被膜全体の平均総膜厚は3.2μm程度であるため、特に優れた付着強度や高温での耐摩耗性、或いは耐溶着性が得られる。
なお、上記実施例では中間層14としてCrNが設けられていたが、CrNの代わりにTiNを用いることも可能で、その場合は、アーク放電イオンプレーティング装置50のターゲットとして、前記Crの第1ターゲット68およびHfの第2ターゲット72の他に、Tiから成る第3ターゲットを設け、必要に応じてアーク放電によりTiを蒸発させるようにすれば良い。
また、前記実施例では(Cr、Hf)N単層の第1硬質被膜16が設けられていたが、図3に示すスローアウェイチップ30のように、(Cr、Hf)N層32aと、中間層14と同じCrN層32bとを交互に積層した多層構造の第1硬質被膜32を採用することもできる。これ等の(Cr、Hf)N層32aおよびCrN層32bの各々の平均膜厚は0.01〜0.50μmの範囲内で、本実施例では0.3μm程度である一方、中間層14の上には(Cr、Hf)N層32aが位置するとともに、第1硬質被膜32の最上部も(Cr、Hf)N層32aとなるように奇数層設けられ、本実施例では11層設けられており、全体の平均膜厚は3.3μm程度である。そして、中間層14の平均膜厚は0.2μm程度で、第2硬質被膜18の平均膜厚は1.0μm程度であり、第1硬質被膜32を含む被膜全体の平均総膜厚は4.5μm程度である。
本実施例では、前記第1実施例と同様の効果が得られるのに加えて、第1硬質被膜32が(Cr、Hf)N層32aとCrN層32bとを交互に積層した多層構造を成しているため靱性が向上し、切削加工時の振動に対する硬質被膜の付着強度が一層向上する。
上記スローアウェイチップ30についても、CrNの中間層14および第1硬質被膜32のCrN層32bの代わりにTiNを用いることが可能である。
次に、本発明の効果を明らかにするために本発明者等が行った試験結果を説明する。図4は、比較的溶着し易い銅合金に対して切削加工を行った場合に、溶着または被膜の剥離等により加工不可となるまでの切削距離(工具寿命)を調べた結果である。使用工具は、φ8の超硬2枚刃のエンドミルで、硬質被膜として3μmのTiCN被膜、CrN被膜を設けた2種類の従来品と、前記スローアウェイチップ10の硬質被膜と同じ構成、すなわち工具母材12の表面に0.2μmのCrNの中間層14が設けられるとともに、その中間層14の上に2.0μmの(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜16が設けられ、その第1硬質被膜16の上に1.0μmの(Crx 、Hfy )Nの第2硬質被膜18が設けられた本発明品とを用いた。本発明品の第2硬質被膜18の混晶比は、x=0.7でy=0.3であり、耐溶着性を高くするためにCrの割合が大きくされている。
(加工条件)
被削材:C1100(銅合金)
切削速度:74m/min(2950min-1
送り速度:0.04mm/t(260mm/min)
切り込み量:t=0.5mm
切削方式:側面切削
切り込み深さ(軸方向):12mm
切り込み深さ(径方向):0.4mm
切削油剤:水溶性
図4から明らかなように、本発明品によれば、従来のTiCNやCrNの硬質被膜に比較して、付着強度を含めた耐溶着性に関する工具寿命が一層向上する。
図5は、本発明品(前記実施例のスローアウェイチップ10と同じ)と、超硬合金の工具母材の表面に3.0μmの膜厚でTiN被膜を設けた従来品とを用いて、難削材である鉄−銅系焼結金属材料に対して以下の加工条件で切削加工を行い、工具寿命に達するまでの切削距離(耐久性)を調べた結果で、本発明品の第2硬質被膜18の混晶比は、x=0.2でy=0.8であり、高温での耐摩耗性を高くするためにHfの割合が大きくされている。
(加工条件)
被削材:鉄−銅系焼結金属
(JIS Z2550の参照記号P2011Z)
切削速度:V=120m/min
送り速度:f=0.2mm/rev
切り込み量:t=0.5mm
切削油剤:水溶性
切削方式:NC旋盤を用いた連続旋削加工
寿命判定:逃げ面摩耗幅0.2mm
図5から明らかなように、本発明品によれば、従来のTiNの硬質被膜に比較して約4倍の工具寿命が得られることが分かる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例であるスローアウェイチップを説明する図で、(a) は斜視図、(b) は表層部の断面図である。 図1のスローアウェイチップの硬質被膜をコーティングする際に好適に用いられるアーク放電イオンプレーティング装置の一例を説明する概略構成図である。 本発明の他の実施例を説明する図で、図1の(b) に相当する断面図である。 本発明品および従来品を用いて、銅合金に切削加工を行って耐溶着性(耐久性)を調べた結果を示す図である。 本発明品および従来品を用いて、鉄−銅系焼結金属材料に旋削加工を行って耐久性を調べた結果を示す図である。
符号の説明
10、30:スローアウェイチップ(硬質被膜被覆工具) 12:工具母材 14:中間層 16、32:第1硬質被膜 18:第2硬質被膜

Claims (3)

  1. 表面に硬質被膜がコーティングされている硬質被膜被覆工具であって、
    工具母材の表面にはCrNまたはTiNの中間層が、平均膜厚が0.01〜0.6μmの範囲内となるように設けられているとともに、
    該中間層の上には、(Cr、Hf)Nの第1硬質被膜が、平均膜厚が0.5〜4.0μmの範囲内となるように設けられ、
    該第1硬質被膜の上に、表面を構成するように(Crx 、Hfy )N〔但し、x+y=1、0≦x≦1〕の第2硬質被膜が、平均膜厚が0.05〜2.0μmの範囲内となるように設けられており、
    これ等の中間層、第1硬質被膜、および第2硬質被膜の全体の平均総膜厚は0.56〜6.6μmの範囲内である
    ことを特徴とする硬質被膜被覆工具。
  2. 前記第1硬質被膜は、CrとHfとを所定の割合で含む(Cr、Hf)Nの単層である
    ことを特徴とする請求項1に記載の硬質被膜被覆工具。
  3. 表面に硬質被膜がコーティングされている硬質被膜被覆工具であって、
    工具母材の表面にはCrNまたはTiNの中間層が、平均膜厚が0.01〜0.6μmの範囲内となるように設けられているとともに、
    該中間層の上には、(Cr、Hf)Nと前記中間層を構成しているCrNまたはTiNとを、各々の平均膜厚が0.01〜0.50μmの範囲内となるように交互に積層した多層の第1硬質被膜が、全体の平均膜厚が0.44〜7.4μmの範囲内となるように設けられ、
    該第1硬質被膜の前記(Cr、Hf)Nの上に、表面を構成するように(Crx 、Hfy )N〔但し、x+y=1、0≦x≦1〕の第2硬質被膜が、平均膜厚が0.05〜2.0μmの範囲内となるように設けられており、
    これ等の中間層、第1硬質被膜、および第2硬質被膜の全体の平均総膜厚は0.5〜10μmの範囲内である
    ことを特徴とする硬質被膜被覆工具。
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