JP4159836B2 - NF−κBに起因する疾患の治療および予防剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
(技術分野)
本発明は、サイトカインや接着因子等の転写調節因子の1つとして知られるNF−κBに起因する様々な疾患の予防又は治療に関する。詳細にはNF−κBのデコイ、該デコイを含有するNF−κBに起因する疾患の治療および予防剤ならびに治療および予防方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(背景技術)
喘息、ガン、心臓病、自己免疫疾患およびウイルス感染症などの様々な疾患は、異なる症状を示すにも拘わらず、1種類または数種類の蛋白質が、過剰発現あるいは過少発現したことが原因の多くを占めることが示唆されている。また、蛋白質の発現には様々な転写活性化因子および転写抑制因子等の転写調節因子が関与している。転写調節因子の1つとして知られているNF−κBは、p65とp50のヘテロダイマーからなっている。通常は、細胞質内に阻害因子IκBが結合した形で存在し、核移行が阻止されている。ところが、何らかの原因でサイトカインや、虚血、再潅流といった何らかの刺激が加わるとIκBがリン酸化され、分解されることにより、NF−κBは活性化されて核内に移行する。NF−κBは染色体のNF−κB結合部位に結合することにより、その下流にある遺伝子の転写を促進する。NF−κBにより制御される遺伝子には、例えば、IL−1、IL−6、IL−8などのサイトカイン類や、VCAM−1やICAM−1などの接着因子がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、転写調節因子NF−κBに起因する疾患、例えば虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移浸潤、悪液質等の疾患を治療および予防することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
1つの局面において、本発明は、NF−κBのデコイを含有するNF−κBに起因する疾患の治療および予防剤に関する。
【0005】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患である上記の治療および予防剤である。
【0006】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患である上記の治療および予防剤である。
【0007】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患の再潅流障害、臓器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄である上記の治療および予防剤である。
【0008】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性心疾患の再潅流障害、心臓移植又は心臓の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄である上記の治療および予防剤である。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患がガンの転移・浸潤、悪疫質である上記の治療および予防剤である。
【0010】
1つの局面において、本発明は、配列表の配列番号1に記載された配列の5’末端から8から17番目で表される配列をもつ核酸およびその変異体を含む核酸に関する。
【0011】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBのデコイが上記の核酸である上記の治療および予防剤である。
【0012】
好ましい実施形態において、本発明は、上記のNF−κBのデコイを含有するリポソーム製剤である。
【0013】
1つの局面において、本発明は、NF−κBのデコイの有効量を哺乳動物に投与することからなるNF−κBに起因する疾患の治療および予防方法に関する。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患である上記の治療および予防方法である。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患である上記の治療および予防方法である。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患の再潅流障害、臓器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄である上記の治療および予防方法である。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性心疾患の再潅流障害、心臓移植又は心臓の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄である上記の治療および予防方法である。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患がガンの転移・浸潤、悪疫質である上記の治療および予防方法である。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBのデコイが請求の範囲第7項記載の核酸である上記の治療および予防方法である。
【0020】
1つの局面において、本発明は、NF−κBのデコイのNF−κBに起因する疾患の治療および予防のための使用に関する。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患である上記の治療および予防のための使用である。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患である上記の治療および予防のための使用である。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性疾患の再潅流障害、臓器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄である上記の治療および予防のための使用である。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患が虚血性心疾患の再潅流障害、心臓移植又は心臓の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄である上記の治療および予防のための使用である。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBに起因する疾患がガンの転移・浸潤、悪疫質である上記の治療および予防のための使用である。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明は、NF−κBのデコイが上記の核酸である上記の治療および予防のための使用である。
【0027】
【発明の実施の形態】
(発明の開示)
前出のサイトカイン類や接着因子の生産の活性化が、虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移浸潤、悪液質等の種々の疾患を引き起こす一つの原因となっていると予測し、鋭意研究の結果、NF−κBに起因する疾患の治療には、NF−κBの核酸結合部位に対するデコイ、つまりNF−κBが結合する核酸部位と特異的に拮抗する化合物を投与することによりNF−κBにより活性化される遺伝子の発現を抑制することが非常に有効であることを見いだし、本発明を完成した。
【0028】
すなわち、本発明は、NF−κBのデコイを主成分として含有する、NF−κBに起因する種々の疾患の治療および予防剤及びその予防治療方法を提供するものである。
【0029】
本発明の治療予防剤の対象とする疾患は、NF−κBに起因する疾患、すなわち、転写調節因子NF−κBが制御する遺伝子の所望しない活性化に起因する疾患であり、このような疾患としては、例えば虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移・浸潤、悪液質等が挙げられる。虚血性疾患としては虚血性臓器疾患(例えば心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全等の虚血性心疾患、脳梗塞等の虚血性脳疾患および肺梗塞等の虚血性肺疾患等)、臓器移植・臓器手術後の予後の悪化(例えば心移植、心臓手術、腎移植、腎臓手術、肝移植、肝臓手術、骨髄移植、皮膚移植、角膜移植、肺移植等の予後の悪化)、再潅流障害、PTCA後の再狭窄等が挙げられる。炎症性疾患としては腎炎、肝炎、関節炎等の種々の炎症、急性腎不全、慢性腎不全、動脈硬化等が挙げられる。また、自己免疫疾患としてはリューマチ、多発性硬化症、橋本甲状腺炎等が挙げられる。特に本発明により得られるNF−κBのデコイを主成分として含有する医薬品は、虚血性疾患の再潅流障害、臓器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭窄、ガンの転位・浸潤、ガン発生後に伴う体重減少等の悪液質の治療および予防には好適である。
【0030】
本発明で用いられるNF−κBのデコイとしては、染色体上に存在するNF−κBの核酸結合部位と特異的に拮抗する化合物であればよく、例えば核酸およびその類似体が含まれる。好ましいNF−κBのデコイの例としては、核酸配列 GGGATTTCCC(配列表の配列番号1の5’末端から8から17番目の配列)またはその相補体を含むオリゴヌクレオチド、その変異体、またはこれらを分子内に含む化合物があげられる。オリゴヌクレオチドはDNAでもRNAでもよく、またそのオリゴヌクレオチド内に核酸修飾体または/および擬核酸を含むものであってもよい。また、これらのオリゴヌクレオチド、その変異体、またはこれらを分子内に含む化合物は1本鎖でも2本鎖であってもよく、線状であっても環状であってもよい。変異体とは上記配列の一部が、変異、置換、挿入、欠失しているもので、NF−κBが結合する核酸結合部位と特異的に拮抗する核酸を示す。さらに好ましいNF−κBのデコイしては、上記核酸配列を1つまたは数個含む2本鎖オリゴヌクレオチドまたはその変異体があげられる。本発明で用いられるオリゴヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合部の酸素原子をイオウ原子で置換したチオリン酸ジエステル結合をもつオリゴヌクレオチド(S−オリゴ)、または、リン酸ジエステル結合を電荷をもたないメチルホスフェート基で置換したオリゴヌクレオチド等の生体内でオリゴヌクレオチドが分解を受けにくくするために改変したオリゴヌクレオチド等が含まれる。
【0031】
本発明で用いられるNF−κBのデコイの製造方法としては、一般的な化学合成法または生化学合成法を用いることが出来る。例えばNF−κBのデコイとして核酸を用いる場合、遺伝子工学で一般的に用いられる核酸合成法を用いることが出来、例えば、DNA合成装置を用いて目的のデコイヌクレオチドを直接合成してもよいし、またこれらの核酸、それを含む核酸またはその一部を合成した後、PCR法またはクローニングベクター等を用いて核酸を増幅してもよい。さらに、これらの方法により得られた核酸を、制限酵素等を用いて切断後、DNAリガーゼ等を用いて結合等を行い目的とする核酸を製造してもよい。また、さらに細胞内でより安定なデコイヌクレオチドを得るために、核酸の塩基、糖、リン酸部分を例えばアルキル化、アシル化等の化学修飾を施してもよい。
【0032】
本発明により得られるNF−κBのデコイを主成分として含有する製剤は、主薬が患部の細胞または目的とする組織の細胞内に取り込まれるような製剤であれば特に限定されるものではなく、NF−κBのデコイ単独で、もしくは慣用の担体と混合して、経口投与、非経口投与、局所投与ないしは外用の形で投与される。これらの製剤は溶液、懸濁液、シロップ、リポソーム製剤、乳剤、シロップ等の液体の投与形態であってもよいし、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤などの固形の投与形態であってもよい。必要に応じ、上記製剤には各種の担体、助剤、安定剤、潤滑剤、その他一般に使用される添加剤、例えば乳糖、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、白陶土、蔗糖、コーンスターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、落下生油、オリーブ油、カカオバター、エチレングリコールなどを添加することができる。
【0033】
特に、NF−κBのデコイとして核酸またはその修飾体を用いる場合には、好ましい製剤としては一般に用いられている遺伝子導入法で用いられる形態、例えばセンダイウイルス等を用いた膜融合リポソーム製剤やエンドサイトーシスを利用するリポソーム製剤等のリポソーム製剤、リポフェクトアミン(ライフテックオリエンタル社製)等のカチオン性脂質を含有する製剤またはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター等を用いるウイルス製剤を用いるのが有利であり、特に膜融合リポソーム製剤が好ましい。
【0034】
リポソーム製剤は、そのリポソームの構造体が、大きな1枚膜リポソーム(LUV)、多重層リポソーム(MLV)、小さな一枚膜リポソーム(SUV)のいずれであってもよい。その大きさも、LUVでは200から1000nm、MLVでは400から3500nm、SUVでは20から50nm程度の粒子系をとり得るが、センダイウイルス等を用いる膜融合リポソーム製剤の場合は粒子系200から1000nmのMLVを用いるのが好ましい。
【0035】
リポソームの製造方法は、デコイが保持されるものであれば特に限定されるものではなく、慣用の方法、例えば逆相蒸発法(Szoka,F.ら:Biochim.Biophys.Acta,Vol.601 559(1980))、エーテル注入法(Deamer,D.W.:Ann.N.Y.Acad.Sci.,Vol.308 250(1978))、界面活性剤法(Brunner,J.ら: Biochim.Biophys.Acta,Vol.455 322(1976))等を用いて製造することができる。
【0036】
リポソーム構造を形成するための脂質としてはリン脂質、コレステロール類や窒素脂質等が用いられるが、一般的にはリン脂質が好適であり、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、リゾレシチン、等の天然リン脂質、あるいはこれらを常法によって水素添加したものの他、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルセリン等の合成リン脂質等を使用することができる。
【0037】
これらのリン脂質を含む脂質類は単独で用いることもできるが、2種以上を併用することも可能である。このとき、エタノールアミンやコリン等の陽性基をもつ原子団を分子内に持つものを用いることにより、電気的に陰性なデコイヌクレオチドの結合率を増加させることもできる。これらリポソーム形成時の主要リン脂質の他に一般にリポソーム形成用添加剤として知られるコレステロール類、ステアリルアミン、α−トコフェロール等の添加剤を用いることもできる。
【0038】
このようにして得られるリポソームは患部の細胞または目的とする組織の細胞内に取り込みを促進するために、膜融合促進物質、例えばセンダイウイルス、不活化センダイウイルス、センダイウイルスより精製された膜融合促進蛋白質、ポリエチレングリコール等を加えることができる。
【0039】
リポソーム製剤の製造法の例を具体的に説明すると、たとえば前記したリポソーム形成物質をコレステロール等と共にテトラヒドロフラン、クロロホルム、エタノール等の有機溶媒に溶解し、これを適当な容器に入れて減圧下に溶媒を留去して容器内面にリポソーム形成物質の膜を形成する。これにNF−κBのデコイを含有する緩衝液を加えて撹拌し、得られたリポソームにさらに所望により前記した膜融合促進物質を加えた後、リポソームを単離する。このようにして得られるNF−κBのデコイを含有するリポソームは適当な溶媒中に懸濁させるか、或いはいったん凍結乾燥したものを適当な溶媒に再分散させて治療に用いることができる。膜融合促進物質はリポソーム単離後、使用までの間に加えてもよい。
【0040】
この様にして得られたNF−κBのデコイを主成分として含有する製剤における、デコイの含有割合は、NF−κBに起因する疾患を有効に阻止できる量が含有されていれば特に限定されず、適用疾患、適用部位、投与形態および投与方法に応じて種々設定することができる。
【0041】
この様にして得られるNF−κBを主成分として含有する医薬品は、疾患の種類、使用するデコイの種類等により各種の方法で投与することができ、例えば虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患およびガンの転移・浸潤、悪液質においては血管内投与、疾患部位に塗布、疾患部位内に投与または疾患部位に血管内投与等する事ができる。さらに具体的な例としては、たとえば臓器梗塞等でPTCAを行う場合には、同時またはその前後に患部血管に投与する事ができ、また、臓器移植等では移植する臓器を予め本願で用いられる製剤で処置して用いてもよい。また、たとえば変形関節炎リュウマチ等では直接関節内に注入して用いることもできる。
【0042】
NF−κBのデコイの投与量は、年齢その他患者の条件、疾病の種類、使用するデコイの種類等により適宜選択されるが、例えば血液内投与、筋肉内投与、関節内投与等では一般には1回あたり10から10、000nmoleを1日1回から数回投与する事ができる。
【0043】
(発明を実施するための最良の形態)
以下に本発明の実施例によりさらに具体的に説明する。
【0044】
【実施例】
(実施例1:NF−κBのデコイ(デコイオリゴヌクレオイド)の合成)
DNA合成機でS−オリゴ用いて、それぞれ下記の塩基配列を持つNF−κBのデコイオリゴヌクレオチドおよびスクランブルデコイオリゴヌクレオチド(NF−κBのデコイヌクレオチドと同じ塩基組成を持つが配列がランダムなヌクレオチド)を合成した。これらのヌクレオチドを80度、30分加熱した後、室温に2時間かけて室温まで冷却し、2本鎖DNAを得た。
NF−κBデコイオリゴヌクレオチド
【0045】
【化1】
【0046】
スクランブルデコイオリゴヌクレオチド
【0047】
【化2】
【0048】
(実施例2:リポソーム製剤の製造)
フォスファチジルセリン、フォスファチジルコリンおよびコレステロールを重量比1:4.8:2(合計10mg)をテトラヒドロフランに溶解させた。ロータリーエバポレーターを用いて、この脂質溶液からテトラハイドロフランを除去し、脂質をフラスコ表面に付着させた。このフラスコに、実施例1で得られたNF−κBデコイオリゴヌクレオチド(0.7mg)を含む生理食塩水(BSS;139mM NaCl,5.4mM KCl,10mM Tris−HCl,pH7.6)200mlに加え、常法により、攪拌及び超音波処理し、NF−κBのデコイオリゴヌクレオチドを含むリポソーム懸濁液を調製した。得られたリポソーム懸濁液(0.5ml,10mgの脂質を含有)に、精製したセンダイウイルス(Z株:10000 hemaglutinating units)を使用する3分前にUV照射(110erg/mm2/sec)で不活化したものを混合し、BSSで合計4mlとした。混合物を4℃で5分間保持した後、37℃で穏やかに30分間振とうした。スクロース密度勾配遠心により、リポソームに結合していないセンダイウイルスを除いた後、最上層を採取し、BSSで濃度を調節し、8μMのNF−κBデコイオリゴヌクレオチドが封入されたリポソーム製剤を得た。同様にNF−κBデコイオリゴヌクレオチドの代わりに実施例1で得られたスクランブルデコイオリゴヌクレオチドを用いて製剤を得た。
【0049】
(実施例3:再灌流モデル実験)
(1)実験方法
9−10週齢のSDラットをペントバルビタールナトリウムで麻酔した後、気道に近接した左頸動脈にカニューレを挿入し心臓の大動脈弁の近傍(冠動脈の流入口の近く)に留置した。さらに、気管にカニューレをほどこし、人工呼吸器につないで人工呼吸をおこなった。その後、左胸部肋間を切開し、ラット心臓の左前下行枝を糸で結紮し、虚血を作成した。30分後、結紮した糸を切り、再灌流を開始した後すぐに実施例2で作成したリポソームに封入したNF−κBデコイヌクレオチドおよびスクランブルデコイヌクレオチドを1.5ml/ラットで冠動脈の流入口の近くに留置したカニューレにより投与した。その後、閉胸し、気管も縫合し生存放置しておく。24時間後、ラットを再度麻酔し、心臓を取り出し、生理食塩水で洗浄した後、ラット心室を6切片に切断し、TTC(塩化テトラゾリウム)染色を行った。6切片の写真を取り、それぞれ画像解析を行った。なお、梗塞領域は以下の式に従って算出した。
【0050】
梗塞率(%)=6切片の梗塞面積の和/6切片の面積の和×100
なお、統計計算は多重間比較(Anova)にて実施した。
【0051】
(2)結果
結果を表1に示した。無処置群とスクランブルデコイ投与群においては、両間にほぼ同程度の心筋梗塞の発生が観察されたが、NF−κBデコイヌクレオチド投与群ではその発生が19%と、無処置群並びにスクランブルデコイ投与群に比し梗塞が有意(P<0.01)に抑制されていた。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、梗塞直前投与においても同様に抑制効果が得られた。
【0054】
(実施例4:ガン転移の抑制)
(1)実験方法
7週令のC57BL/6系雌性マウスに、マウス細網肉腫M5076細胞1×104個を静脈内投与し、その24時間後に、実施例2と同様にして製造したNF−κBデコイヌクレオチド0.2ml(6nmoles)を静脈内投与した。コントロール群には生理食塩水0.2mlを投与した。M5076の静脈内投与後14日目に解剖し、肝臓表面上の腫瘍結節数を実体顕微鏡下で計数した。一群当たり10匹のマウスを用いた。統計学的解析には、Kruskal−Wallisの検定及びDunnettの多重比較検定を用いた。
【0055】
(2)結果
コントロール群の腫瘍結節数が、平均値166、中央値173(116〜198)であったのに対しNF−κBデコイ投与群では、平均値29、中央値27(19〜54)であり、NF−κBデコイ投与群とコントロール群との間には危険率1%以下で有意な差が認められた。
【0056】
(実施例5:悪液質の抑制)
(1)実験方法
7週令のBALB/c系雄性マウスに、マウス結腸ガンColon26の2mm角の腫瘍片を皮下移植し、その7日目からNF−κBデコイまたはスクランブルデコイ各0.2ml(6nmoles)を腫瘍内に投与し、経時的に体重及び腫瘍重量を計測した。また、13日目に解剖し、副睾丸脂肪及び腓腹筋を摘出し、その重量を測定した。
さらに、残ったすべての臓器及び腫瘍を除いたカルカス湿重量を測定した。腫瘍重量は、各腫瘍の長径及び短径より以下の式にて腫瘍重量を計算した。
【0057】
腫瘍重量(mg)=長径×短径2/2
一群当たり10匹のマウスを用いた。統計学的解析には、一元配置分散分析及びDunnettの多重比較検定を用いた。
【0058】
(2)結果
担癌群においては腫瘍の増殖に伴い、体重、副睾丸脂肪重量、腓腹筋重量及びカルカス湿重量の有意な減少が認められた。NF−κBデコイ投与群では、体重を47%、副睾丸脂肪重量を42%、腓腹筋重量を60%及びカルカス湿重量を52%改善させたが、スクランブルデコイ投与群では全く回復作用を示さなかった。腫瘍重量には明らかな作用は認められなかった。
【0059】
【発明の効果】
NF−κBが結合する核酸部位と特異的に拮抗する化合物であるデコイを投与することによって、転写調節因子NF−κBに起因する疾患、例えば虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移浸潤、悪液質等の疾患の治療および予防し得る。
【0060】
【配列表】
【0061】
【化3】
Claims (3)
- 下記塩基配列を有する二本鎖NF-κBデコイオリゴヌクレオチド。
- チオリン酸ジエステル結合を持つオリゴヌクレオチド(S-オリゴ)である、請求項1に記載の二本鎖NF-κBデコイオリゴヌクレオチド。
- 請求項1または2に記載の二本鎖NF-κBデコイオリゴヌクレオチドを封入したセンダイウイルスリポソーム。
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