JP2003128559A - NF−κBに起因する疾患の治療および予防剤 - Google Patents
NF−κBに起因する疾患の治療および予防剤Info
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Abstract
る疾患、例えば虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾
患、ガンの転移浸潤、悪液質等の疾患を治療および予防
することを課題とする。 【解決手段】 NF−κBの核酸結合部位に対するデコ
イ、つまりNF−κBが結合する核酸部位と特異的に拮
抗する化合物を投与することにより、NF−κBによっ
て活性化される遺伝子の発現を抑制し、転写調節因子N
F−κBに起因する疾患、例えば虚血性疾患、炎症性疾
患、自己免疫疾患、ガンの転移浸潤、悪液質等の疾患を
治療および予防する。
Description
トカインや接着因子等の転写調節因子の1つとして知ら
れるNF−κBに起因する様々な疾患の予防又は治療に
関する。詳細にはNF−κBのデコイ、該デコイを含有
するNF−κBに起因する疾患の治療および予防剤なら
びに治療および予防方法に関する。 【0002】 【従来の技術】(背景技術)喘息、ガン、心臓病、自己
免疫疾患およびウイルス感染症などの様々な疾患は、異
なる症状を示すにも拘わらず、1種類または数種類の蛋
白質が、過剰発現あるいは過少発現したことが原因の多
くを占めることが示唆されている。また、蛋白質の発現
には様々な転写活性化因子および転写抑制因子等の転写
調節因子が関与している。転写調節因子の1つとして知
られているNF−κBは、p65とp50のヘテロダイ
マーからなっている。通常は、細胞質内に阻害因子Iκ
Bが結合した形で存在し、核移行が阻止されている。と
ころが、何らかの原因でサイトカインや、虚血、再潅流
といった何らかの刺激が加わるとIκBがリン酸化さ
れ、分解されることにより、NF−κBは活性化されて
核内に移行する。NF−κBは染色体のNF−κB結合
部位に結合することにより、その下流にある遺伝子の転
写を促進する。NF−κBにより制御される遺伝子に
は、例えば、IL−1、IL−6、IL−8などのサイ
トカイン類や、VCAM−1やICAM−1などの接着
因子がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、転写調節因
子NF−κBに起因する疾患、例えば虚血性疾患、炎症
性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移浸潤、悪液質等の疾
患を治療および予防することを課題とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】1つの局面において、本
発明は、NF−κBのデコイを含有するNF−κBに起
因する疾患の治療および予防剤に関する。 【0005】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患、炎症性疾患、自
己免疫疾患である上記の治療および予防剤である。 【0006】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患である上記の治療
および予防剤である。 【0007】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患の再潅流障害、臓
器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再
狭窄である上記の治療および予防剤である。 【0008】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性心疾患の再潅流障害、
心臓移植又は心臓の手術後の予後の悪化、PTCA後の
再狭窄である上記の治療および予防剤である。 【0009】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患がガンの転移・浸潤、悪疫質で
ある上記の治療および予防剤である。 【0010】1つの局面において、本発明は、配列表の
配列番号1に記載された配列の5’末端から8から17
番目で表される配列をもつ核酸およびその変異体を含む
核酸に関する。 【0011】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBのデコイが上記の核酸である上記の治療および
予防剤である。 【0012】好ましい実施形態において、本発明は、上
記のNF−κBのデコイを含有するリポソーム製剤であ
る。 【0013】1つの局面において、本発明は、NF−κ
Bのデコイの有効量を哺乳動物に投与することからなる
NF−κBに起因する疾患の治療および予防方法に関す
る。 【0014】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患、炎症性疾患、自
己免疫疾患である上記の治療および予防方法である。 【0015】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患である上記の治療
および予防方法である。 【0016】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患の再潅流障害、臓
器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再
狭窄である上記の治療および予防方法である。 【0017】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性心疾患の再潅流障害、
心臓移植又は心臓の手術後の予後の悪化、PTCA後の
再狭窄である上記の治療および予防方法である。 【0018】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患がガンの転移・浸潤、悪疫質で
ある上記の治療および予防方法である。 【0019】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBのデコイが請求の範囲第7項記載の核酸である
上記の治療および予防方法である。 【0020】1つの局面において、本発明は、NF−κ
BのデコイのNF−κBに起因する疾患の治療および予
防のための使用に関する。 【0021】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患、炎症性疾患、自
己免疫疾患である上記の治療および予防のための使用で
ある。 【0022】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患である上記の治療
および予防のための使用である。 【0023】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性疾患の再潅流障害、臓
器移植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再
狭窄である上記の治療および予防のための使用である。 【0024】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患が虚血性心疾患の再潅流障害、
心臓移植又は心臓の手術後の予後の悪化、PTCA後の
再狭窄である上記の治療および予防のための使用であ
る。 【0025】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBに起因する疾患がガンの転移・浸潤、悪疫質で
ある上記の治療および予防のための使用である。 【0026】好ましい実施形態において、本発明は、N
F−κBのデコイが上記の核酸である上記の治療および
予防のための使用である。 【0027】 【発明の実施の形態】(発明の開示)前出のサイトカイ
ン類や接着因子の生産の活性化が、虚血性疾患、炎症性
疾患、自己免疫疾患、ガンの転移浸潤、悪液質等の種々
の疾患を引き起こす一つの原因となっていると予測し、
鋭意研究の結果、NF−κBに起因する疾患の治療に
は、NF−κBの核酸結合部位に対するデコイ、つまり
NF−κBが結合する核酸部位と特異的に拮抗する化合
物を投与することによりNF−κBにより活性化される
遺伝子の発現を抑制することが非常に有効であることを
見いだし、本発明を完成した。 【0028】すなわち、本発明は、NF−κBのデコイ
を主成分として含有する、NF−κBに起因する種々の
疾患の治療および予防剤及びその予防治療方法を提供す
るものである。 【0029】本発明の治療予防剤の対象とする疾患は、
NF−κBに起因する疾患、すなわち、転写調節因子N
F−κBが制御する遺伝子の所望しない活性化に起因す
る疾患であり、このような疾患としては、例えば虚血性
疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移・浸潤、
悪液質等が挙げられる。虚血性疾患としては虚血性臓器
疾患(例えば心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全等の虚
血性心疾患、脳梗塞等の虚血性脳疾患および肺梗塞等の
虚血性肺疾患等)、臓器移植・臓器手術後の予後の悪化
(例えば心移植、心臓手術、腎移植、腎臓手術、肝移
植、肝臓手術、骨髄移植、皮膚移植、角膜移植、肺移植
等の予後の悪化)、再潅流障害、PTCA後の再狭窄等
が挙げられる。炎症性疾患としては腎炎、肝炎、関節炎
等の種々の炎症、急性腎不全、慢性腎不全、動脈硬化等
が挙げられる。また、自己免疫疾患としてはリューマ
チ、多発性硬化症、橋本甲状腺炎等が挙げられる。特に
本発明により得られるNF−κBのデコイを主成分とし
て含有する医薬品は、虚血性疾患の再潅流障害、臓器移
植又は臓器の手術後の予後の悪化、PTCA後の再狭
窄、ガンの転位・浸潤、ガン発生後に伴う体重減少等の
悪液質の治療および予防には好適である。 【0030】本発明で用いられるNF−κBのデコイと
しては、染色体上に存在するNF−κBの核酸結合部位
と特異的に拮抗する化合物であればよく、例えば核酸お
よびその類似体が含まれる。好ましいNF−κBのデコ
イの例としては、核酸配列GGGATTTCCC(配列
表の配列番号1の5’末端から8から17番目の配列)
またはその相補体を含むオリゴヌクレオチド、その変異
体、またはこれらを分子内に含む化合物があげられる。
オリゴヌクレオチドはDNAでもRNAでもよく、また
そのオリゴヌクレオチド内に核酸修飾体または/および
擬核酸を含むものであってもよい。また、これらのオリ
ゴヌクレオチド、その変異体、またはこれらを分子内に
含む化合物は1本鎖でも2本鎖であってもよく、線状で
あっても環状であってもよい。変異体とは上記配列の一
部が、変異、置換、挿入、欠失しているもので、NF−
κBが結合する核酸結合部位と特異的に拮抗する核酸を
示す。さらに好ましいNF−κBのデコイしては、上記
核酸配列を1つまたは数個含む2本鎖オリゴヌクレオチ
ドまたはその変異体があげられる。本発明で用いられる
オリゴヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合部の酸素
原子をイオウ原子で置換したチオリン酸ジエステル結合
をもつオリゴヌクレオチド(S−オリゴ)、または、リ
ン酸ジエステル結合を電荷をもたないメチルホスフェー
ト基で置換したオリゴヌクレオチド等の生体内でオリゴ
ヌクレオチドが分解を受けにくくするために改変したオ
リゴヌクレオチド等が含まれる。 【0031】本発明で用いられるNF−κBのデコイの
製造方法としては、一般的な化学合成法または生化学合
成法を用いることが出来る。例えばNF−κBのデコイ
として核酸を用いる場合、遺伝子工学で一般的に用いら
れる核酸合成法を用いることが出来、例えば、DNA合
成装置を用いて目的のデコイヌクレオチドを直接合成し
てもよいし、またこれらの核酸、それを含む核酸または
その一部を合成した後、PCR法またはクローニングベ
クター等を用いて核酸を増幅してもよい。さらに、これ
らの方法により得られた核酸を、制限酵素等を用いて切
断後、DNAリガーゼ等を用いて結合等を行い目的とす
る核酸を製造してもよい。また、さらに細胞内でより安
定なデコイヌクレオチドを得るために、核酸の塩基、
糖、リン酸部分を例えばアルキル化、アシル化等の化学
修飾を施してもよい。 【0032】本発明により得られるNF−κBのデコイ
を主成分として含有する製剤は、主薬が患部の細胞また
は目的とする組織の細胞内に取り込まれるような製剤で
あれば特に限定されるものではなく、NF−κBのデコ
イ単独で、もしくは慣用の担体と混合して、経口投与、
非経口投与、局所投与ないしは外用の形で投与される。
これらの製剤は溶液、懸濁液、シロップ、リポソーム製
剤、乳剤、シロップ等の液体の投与形態であってもよい
し、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤などの固形の投
与形態であってもよい。必要に応じ、上記製剤には各種
の担体、助剤、安定剤、潤滑剤、その他一般に使用され
る添加剤、例えば乳糖、クエン酸、酒石酸、ステアリン
酸、ステアリン酸マグネシウム、白陶土、蔗糖、コーン
スターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、落下生
油、オリーブ油、カカオバター、エチレングリコールな
どを添加することができる。 【0033】特に、NF−κBのデコイとして核酸また
はその修飾体を用いる場合には、好ましい製剤としては
一般に用いられている遺伝子導入法で用いられる形態、
例えばセンダイウイルス等を用いた膜融合リポソーム製
剤やエンドサイトーシスを利用するリポソーム製剤等の
リポソーム製剤、リポフェクトアミン(ライフテックオ
リエンタル社製)等のカチオン性脂質を含有する製剤ま
たはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター
等を用いるウイルス製剤を用いるのが有利であり、特に
膜融合リポソーム製剤が好ましい。 【0034】リポソーム製剤は、そのリポソームの構造
体が、大きな1枚膜リポソーム(LUV)、多重層リポ
ソーム(MLV)、小さな一枚膜リポソーム(SUV)
のいずれであってもよい。その大きさも、LUVでは2
00から1000nm、MLVでは400から3500
nm、SUVでは20から50nm程度の粒子系をとり
得るが、センダイウイルス等を用いる膜融合リポソーム
製剤の場合は粒子系200から1000nmのMLVを
用いるのが好ましい。 【0035】リポソームの製造方法は、デコイが保持さ
れるものであれば特に限定されるものではなく、慣用の
方法、例えば逆相蒸発法(Szoka,F.ら:Bio
chim.Biophys.Acta,Vol.601
559(1980))、エーテル注入法(Deame
r,D.W.:Ann.N.Y.Acad.Sci.,
Vol.308 250(1978))、界面活性剤法
(Brunner,J.ら: Biochim.Bio
phys.Acta,Vol.455 322(197
6))等を用いて製造することができる。 【0036】リポソーム構造を形成するための脂質とし
てはリン脂質、コレステロール類や窒素脂質等が用いら
れるが、一般的にはリン脂質が好適であり、ホスファチ
ジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグ
リセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチ
ジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリ
ピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチ
ン、リゾレシチン、等の天然リン脂質、あるいはこれら
を常法によって水素添加したものの他、ジセチルホスフ
ェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパル
ミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスフ
ァチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチ
ジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリ
ン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミ
ン、エレオステアロイルホスファチジルセリン等の合成
リン脂質等を使用することができる。 【0037】これらのリン脂質を含む脂質類は単独で用
いることもできるが、2種以上を併用することも可能で
ある。このとき、エタノールアミンやコリン等の陽性基
をもつ原子団を分子内に持つものを用いることにより、
電気的に陰性なデコイヌクレオチドの結合率を増加させ
ることもできる。これらリポソーム形成時の主要リン脂
質の他に一般にリポソーム形成用添加剤として知られる
コレステロール類、ステアリルアミン、α−トコフェロ
ール等の添加剤を用いることもできる。 【0038】このようにして得られるリポソームは患部
の細胞または目的とする組織の細胞内に取り込みを促進
するために、膜融合促進物質、例えばセンダイウイル
ス、不活化センダイウイルス、センダイウイルスより精
製された膜融合促進蛋白質、ポリエチレングリコール等
を加えることができる。 【0039】リポソーム製剤の製造法の例を具体的に説
明すると、たとえば前記したリポソーム形成物質をコレ
ステロール等と共にテトラヒドロフラン、クロロホル
ム、エタノール等の有機溶媒に溶解し、これを適当な容
器に入れて減圧下に溶媒を留去して容器内面にリポソー
ム形成物質の膜を形成する。これにNF−κBのデコイ
を含有する緩衝液を加えて撹拌し、得られたリポソーム
にさらに所望により前記した膜融合促進物質を加えた
後、リポソームを単離する。このようにして得られるN
F−κBのデコイを含有するリポソームは適当な溶媒中
に懸濁させるか、或いはいったん凍結乾燥したものを適
当な溶媒に再分散させて治療に用いることができる。膜
融合促進物質はリポソーム単離後、使用までの間に加え
てもよい。 【0040】この様にして得られたNF−κBのデコイ
を主成分として含有する製剤における、デコイの含有割
合は、NF−κBに起因する疾患を有効に阻止できる量
が含有されていれば特に限定されず、適用疾患、適用部
位、投与形態および投与方法に応じて種々設定すること
ができる。 【0041】この様にして得られるNF−κBを主成分
として含有する医薬品は、疾患の種類、使用するデコイ
の種類等により各種の方法で投与することができ、例え
ば虚血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患およびガンの
転移・浸潤、悪液質においては血管内投与、疾患部位に
塗布、疾患部位内に投与または疾患部位に血管内投与等
する事ができる。さらに具体的な例としては、たとえば
臓器梗塞等でPTCAを行う場合には、同時またはその
前後に患部血管に投与する事ができ、また、臓器移植等
では移植する臓器を予め本願で用いられる製剤で処置し
て用いてもよい。また、たとえば変形関節炎リュウマチ
等では直接関節内に注入して用いることもできる。 【0042】NF−κBのデコイの投与量は、年齢その
他患者の条件、疾病の種類、使用するデコイの種類等に
より適宜選択されるが、例えば血液内投与、筋肉内投
与、関節内投与等では一般には1回あたり10から1
0、000nmoleを1日1回から数回投与する事が
できる。 【0043】(発明を実施するための最良の形態)以下
に本発明の実施例によりさらに具体的に説明する。 【0044】 【実施例】(実施例1:NF−κBのデコイ(デコイオ
リゴヌクレオイド)の合成)DNA合成機でS−オリゴ
用いて、それぞれ下記の塩基配列を持つNF−κBのデ
コイオリゴヌクレオチドおよびスクランブルデコイオリ
ゴヌクレオチド(NF−κBのデコイヌクレオチドと同
じ塩基組成を持つが配列がランダムなヌクレオチド)を
合成した。これらのヌクレオチドを80度、30分加熱
した後、室温に2時間かけて室温まで冷却し、2本鎖D
NAを得た。NF−κBデコイオリゴヌクレオチド 【0045】 【化1】 【0046】スクランブルデコイオリゴヌクレオチド 【0047】 【化2】 【0048】(実施例2:リポソーム製剤の製造)フォ
スファチジルセリン、フォスファチジルコリンおよびコ
レステロールを重量比1:4.8:2(合計10mg)
をテトラヒドロフランに溶解させた。ロータリーエバポ
レーターを用いて、この脂質溶液からテトラハイドロフ
ランを除去し、脂質をフラスコ表面に付着させた。この
フラスコに、実施例1で得られたNF−κBデコイオリ
ゴヌクレオチド(0.7mg)を含む生理食塩水(BS
S;139mM NaCl,5.4mM KCl,10
mM Tris−HCl,pH7.6)200mlに加
え、常法により、攪拌及び超音波処理し、NF−κBの
デコイオリゴヌクレオチドを含むリポソーム懸濁液を調
製した。得られたリポソーム懸濁液(0.5ml,10
mgの脂質を含有)に、精製したセンダイウイルス(Z
株:10000 hemaglutinating u
nits)を使用する3分前にUV照射(110erg
/mm2/sec)で不活化したものを混合し、BSS
で合計4mlとした。混合物を4℃で5分間保持した
後、37℃で穏やかに30分間振とうした。スクロース
密度勾配遠心により、リポソームに結合していないセン
ダイウイルスを除いた後、最上層を採取し、BSSで濃
度を調節し、8μMのNF−κBデコイオリゴヌクレオ
チドが封入されたリポソーム製剤を得た。同様にNF−
κBデコイオリゴヌクレオチドの代わりに実施例1で得
られたスクランブルデコイオリゴヌクレオチドを用いて
製剤を得た。 【0049】(実施例3:再灌流モデル実験) (1)実験方法 9−10週齢のSDラットをペントバルビタールナトリ
ウムで麻酔した後、気道に近接した左頸動脈にカニュー
レを挿入し心臓の大動脈弁の近傍(冠動脈の流入口の近
く)に留置した。さらに、気管にカニューレをほどこ
し、人工呼吸器につないで人工呼吸をおこなった。その
後、左胸部肋間を切開し、ラット心臓の左前下行枝を糸
で結紮し、虚血を作成した。30分後、結紮した糸を切
り、再灌流を開始した後すぐに実施例2で作成したリポ
ソームに封入したNF−κBデコイヌクレオチドおよび
スクランブルデコイヌクレオチドを1.5ml/ラット
で冠動脈の流入口の近くに留置したカニューレにより投
与した。その後、閉胸し、気管も縫合し生存放置してお
く。24時間後、ラットを再度麻酔し、心臓を取り出
し、生理食塩水で洗浄した後、ラット心室を6切片に切
断し、TTC(塩化テトラゾリウム)染色を行った。6
切片の写真を取り、それぞれ画像解析を行った。なお、
梗塞領域は以下の式に従って算出した。 【0050】梗塞率(%)=6切片の梗塞面積の和/6
切片の面積の和×100 なお、統計計算は多重間比較(Anova)にて実施し
た。 【0051】(2)結果 結果を表1に示した。無処置群とスクランブルデコイ投
与群においては、両間にほぼ同程度の心筋梗塞の発生が
観察されたが、NF−κBデコイヌクレオチド投与群で
はその発生が19%と、無処置群並びにスクランブルデ
コイ投与群に比し梗塞が有意(P<0.01)に抑制さ
れていた。 【0052】 【表1】 【0053】なお、梗塞直前投与においても同様に抑制
効果が得られた。 【0054】(実施例4:ガン転移の抑制) (1)実験方法 7週令のC57BL/6系雌性マウスに、マウス細網肉
腫M5076細胞1×104個を静脈内投与し、その2
4時間後に、実施例2と同様にして製造したNF−κB
デコイヌクレオチド0.2ml(6nmoles)を静
脈内投与した。コントロール群には生理食塩水0.2m
lを投与した。M5076の静脈内投与後14日目に解
剖し、肝臓表面上の腫瘍結節数を実体顕微鏡下で計数し
た。一群当たり10匹のマウスを用いた。統計学的解析
には、Kruskal−Wallisの検定及びDun
nettの多重比較検定を用いた。 【0055】(2)結果 コントロール群の腫瘍結節数が、平均値166、中央値
173(116〜198)であったのに対しNF−κB
デコイ投与群では、平均値29、中央値27(19〜5
4)であり、NF−κBデコイ投与群とコントロール群
との間には危険率1%以下で有意な差が認められた。 【0056】(実施例5:悪液質の抑制) (1)実験方法 7週令のBALB/c系雄性マウスに、マウス結腸ガン
Colon26の2mm角の腫瘍片を皮下移植し、その
7日目からNF−κBデコイまたはスクランブルデコイ
各0.2ml(6nmoles)を腫瘍内に投与し、経
時的に体重及び腫瘍重量を計測した。また、13日目に
解剖し、副睾丸脂肪及び腓腹筋を摘出し、その重量を測
定した。さらに、残ったすべての臓器及び腫瘍を除いた
カルカス湿重量を測定した。腫瘍重量は、各腫瘍の長径
及び短径より以下の式にて腫瘍重量を計算した。 【0057】腫瘍重量(mg)=長径×短径2/2 一群当たり10匹のマウスを用いた。統計学的解析に
は、一元配置分散分析及びDunnettの多重比較検
定を用いた。 【0058】(2)結果 担癌群においては腫瘍の増殖に伴い、体重、副睾丸脂肪
重量、腓腹筋重量及びカルカス湿重量の有意な減少が認
められた。NF−κBデコイ投与群では、体重を47
%、副睾丸脂肪重量を42%、腓腹筋重量を60%及び
カルカス湿重量を52%改善させたが、スクランブルデ
コイ投与群では全く回復作用を示さなかった。腫瘍重量
には明らかな作用は認められなかった。 【0059】 【発明の効果】NF−κBが結合する核酸部位と特異的
に拮抗する化合物であるデコイを投与することによっ
て、転写調節因子NF−κBに起因する疾患、例えば虚
血性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ガンの転移浸
潤、悪液質等の疾患の治療および予防し得る。 【0060】 【配列表】 【0061】 【化3】
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 NF−κBのデコイを含有するNF−κ
Bに起因する疾患の治療および予防剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002263431A JP4159836B2 (ja) | 1995-05-12 | 2002-09-09 | NF−κBに起因する疾患の治療および予防剤 |
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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