JP3847366B2 - アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた固定性分裂終了細胞増殖剤 - Google Patents
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【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む固定性分裂終了細胞増殖剤に関し、更に詳細には心疾患治療剤に関する。
【0002】
背景技術
生体内細胞は、E.V.カウドリーの分類によれば、その分裂特性により増殖性分裂細胞群、分化性分裂細胞群、可逆性分裂終了細胞群、および固定性分裂終了細胞群の4群に分類される。このうち固定性分裂終了細胞群(fixed post mitotics )は高い分化機能を持ち、現在知られているどの様な刺激によっても再生できないとされ、従って、固定性分裂終了細胞群に属する細胞(以下「固定性分裂終了細胞」という)からなる生体器官は、最も加齢変化を受けやすく、一度損傷すると再生することがほとんど困難であるといわれている。
【0003】
ところで、近年、人口の高齢化に伴って循環器系疾患が増加しており、中でも高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳血管疾患は年々増加している。特に心筋梗塞は突然発症し、それによる致死率はきわめて高い。その成因は血栓または冠攣縮により、心臓の栄養血管である冠動脈が閉塞して、心筋細胞が壊死するためである。心筋細胞は、最終分化した固定性分裂終了細胞の一つであり、細胞周期は常に静止期に制御されている。従って、心筋細胞が壊死して生じた梗塞巣は、急性期心筋梗塞の状態を脱して快方に向かった場合においても、心筋組織の再生は起こらず、梗塞巣が残ったまま症状が固定し、つねに再発の危険がある。また、心筋梗塞再発率と梗塞巣の大きさには相関関係があると言われている。更にまた、心筋症は、発症の頻度こそ低いものの、やはり心筋細胞の壊死が原因で起こる疾患である。しかもその原因が不明であるため、予後の極めて悪い疾患である。
【0004】
また、循環器系疾患の一つである脳血管疾患は、一度発症すると脳内における神経細胞の壊死が起こり、発症前の患者の機能(例えば、歩行機能、言語機能等)を回復することは必ずしも容易ではない。
現在、上記疾患に関しては、治療は対照療法に限られ、根本的治療法が望まれている。
【0005】
一方、ガン抑制遺伝子産物である転写因子Rbおよびp53は細胞周期を負に制御する転写因子であり、これらの因子が存在すると細胞は静止期にとどまり、分裂期には移行できないことが知られている(Goodrich et al., Cell, 67: 293-302, 1991、Yin et al., Cell, 70:937-948, 1992))。しかしながら、ガン抑制遺伝子と固定性分裂終了細胞との関連は、本発明者らが知る限り報告されていない。
【0006】
【発明の概要】
本発明者らは、成熟ラットの心臓において転写因子p53およびRbが発現していること、特にp53については過剰発現していること、をウェスタンブロット法によって確認した(データ示さず)。また、ガン抑制遺伝子である転写因子Rbおよびp53遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、直接生体内の心臓に導入することにより、固定性分裂終了細胞の一つである心筋細胞を増殖させることが可能であることを見いだした。本発明は係る知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、固定性分裂終了細胞の増殖を促し、固定性分裂終了細胞が関係する疾患を根本的に治療する治療剤の提供をその目的とする。
そして、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、一または二以上のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその等価配列を有効成分として含んでなる組成物、である。
【0008】
【発明の具体的説明】
本発明において「ヌクレオチド」とはDNAおよびRNAを含む意味で用いられるものとする。また、本発明において「遺伝子」とは、いわゆる構造遺伝子の他に、プロモーターやオペレーター等のような特定の制御機能を有する領域も含む意味で用いられるものとする。さらに、本発明において「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、特定の機能を持つ配列(以下「センス配列という)に対し相補的な塩基配列を有し、かつセンス配列の機能を阻害するオリゴヌクレオチドをいう。
【0009】
本発明における固定性分裂終了細胞増殖剤に有効成分として含まれるアンチセンスオリゴヌクレオチドに対応するセンス配列は、ガン抑制遺伝子中に存在する。本発明において「ガン抑制遺伝子」とは、ガン細胞のガン形質の発現を抑制する遺伝子をいい、例えば、Rb遺伝子、p53遺伝子、DCC遺伝子、WT1遺伝子、APC遺伝子、NF1遺伝子、NF2遺伝子、VHL遺伝子、IRF−1遺伝子等が挙げられる。ガン抑制遺伝子はRb遺伝子およびp53遺伝子から選択されてもよい。
【0010】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその等価配列を一または二以上有することができる。ここで、二以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドという場合には、異なるガン抑制遺伝子由来の複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドのみならず、同一のガン抑制遺伝子由来の複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドをも含むものとする。
【0011】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに対応するセンス配列のガン抑制遺伝子中における存在位置は限定されるものではなく、例えば、タンパク質の翻訳開始コドン付近、プロモーター領域(例えば、TATA配列、CAAT配列、GC配列等)付近、構造遺伝子の中間領域または3’末端領域付近等であることができる。
【0012】
一または二以上のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Rb遺伝子の一のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびp53遺伝子の一のアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
また、一または二以上のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび配列番号2に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
【0013】
配列番号1の配列は転写因子Rb遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの一つである。この配列番号1に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、転写因子Rb遺伝子の翻訳開始コドン(ATG)の上流側10塩基対と下流側11塩基対(ATGを含む)とからなる領域(センス配列)に対応する。
配列番号2の配列は転写因子p53遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの一つである。この配列番号2に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、転写因子p53遺伝子の翻訳開始コドン(ATG)の上流側6塩基対と下流側12塩基対(ATGを含む)とからなる領域(センス配列)に対応する。
【0014】
なお、配列番号1および2の配列は、それぞれ、Jacques Hartzfeld et al., J. Exp. Med. Vol.174, October 1991 925-929およびSucai Biet al., Cancer Research, Vol.54, January 15, 1994 582-586に記載されるものである。
【0015】
本発明において「等価配列」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて塩基の付加、挿入、削除、欠失または置換などの改変があっても、改変前の配列と同じ機能を有することを意味し、例えば、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、塩基の付加、挿入、削除、欠失または置換などの改変が生じた塩基配列(特に5’末端および/または3’末端において任意のオリゴヌクレオチドが付加された塩基配列)であって、依然としてセンス配列の機能を阻害するものが挙げられる。配列番号1の配列に任意の塩基配列を付加した配列、および配列番号2の配列に任意の塩基配列を付加した配列は、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの等価配列に含まれる。
【0016】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、脂質を更に含んでいてもよい。脂質は天然由来の脂質であっても合成脂質であってもよい。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤が後述するHVJ法やリポフェクション法により投与されることを意図されている場合には、脂質はリポソームを形成できるものから選択される。リポソームを形成できる脂質としてはリン脂質、糖脂質および中性脂質が挙げられる。
【0017】
リン脂質としては、グリセロリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール等)およびスフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)等が挙げられる。
【0018】
また、糖脂質としては、スフィンゴ糖脂質、グリセロ糖脂質、セレブロシド、グロボシド、ガングリオシド等が挙げられ、中性脂質としてはコレステロール等が挙げられる。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、上記脂質と組み合わせて、形成されたリポソームに電荷を与えるような物質(例えば、ジセチルリン酸、ステアリルアミン)、リポソームの酸化を防止するような物質(例えば、α−トコフェロール)等を含んでいても良い。
【0019】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤においては、前記脂質はリポソームの形態を採ることができる。リポソームは、慣用されている方法、例えば、超音波処理等、によって形成させることができる。この場合、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドがリポソーム内に存在することが好ましい。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤が後述するHVJ法により投与されることを意図されている場合には、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、脂質の他に不活性化したHVJ(Hemmagglutinating Virus of Japan Sendai virus :センダイウイルス)を更に含んでいてもよい。
【0020】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤が後述するリポフェクション法により投与されることを意図されている場合には、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、脂質の他にリポソームに電荷を与える物質を更に含んでいてもよい。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、更に薬学上許容可能な担体および賦形剤等を含んでいても良い。また、必要によりガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチド以外の有効成分を含んでいても良い。
【0021】
本発明において前記アンチセンスオリゴヌクレオチドはベクターと連結されていてもよい。この場合、アンチセンスヌクレオチドは適当なプロモーターに作動可能に連結されていることが好ましい。ここで「作動可能に」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(RNA)が発現されうることを意味するものとする。
使用できるベクターとしては、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられ、例えば、実験医学,Vol.12 No.15,「遺伝子治療の最前線」,(1994年)に記載されるベクターを用いることができる。
【0022】
本発明において「固定性分裂終了細胞」としては、心筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞、赤血球細胞等が挙げられる。従って、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、上記細胞の増殖剤であることができる。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、非分裂性の心筋細胞の増殖を促すことから、心疾患を根本的に治療することができると考えられる。従って、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、心疾患治療剤であることができる。
ここで「心疾患」は、心筋梗塞、不整脈、心筋症、および慢性心不全等の疾患を含む。従って、本発明による心疾患治療剤は、心筋梗塞、不整脈、心筋症、および慢性心不全等の治療剤であることができる。
【0023】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、非分裂性の神経細胞の増殖を促すことが期待される。従って、脳血管疾患や脊髄断絶等の治療剤であることができる。
本発明において「治療」とは、確定した疾患の治療のみならず予防を含む意味で用いられるものとする。
投与量は、用法、患者の年齢、性別、症状の程度などを考慮して適宜決定されてよく、通常成人1日当り約1g〜約1pg、好ましくは約1mg〜約1μg程度とすることができ、これを1日1回または数回に分けて投与することができる。
【0024】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、HVJリポソーム法によってヒトを含むほ乳類に投与することができる。HVJリポソーム法の詳細は、金田,実験医学,Vol.12 No.2, 78(184),1994や、森下等,実験医学, Vol.12 No.15 158(1928),1994に記載される。本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤中に含まれる脂質がリポソームの形態を採っていないときは、該固定性分裂終了細胞増殖剤を使用する前に慣用される方法によってリポソームを形成させて、上記HVJ法によってほ乳類に投与してもよい。リポソーム内に有効成分であるアンチセンスオリゴヌクレオチドが存在しない場合も同様である。
【0025】
また、上記HVJリポソーム法に限らず、アンチセンスオリゴヌクレオチドを注射等によってそのまま投与する方法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子銃による方法(T. M. Klein et al., Bio/Technology 10, 286-291(1992)) 、リポフェクション法によって投与する方法(Nabel et al.:Science 244 ,1285,1990) 、適当なベクター(例えば、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等)を使う方法等によって、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤をヒトを含むほ乳類に投与することができる。
【0026】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、局所的または一時的細胞増殖の点から、アンチセンスオリゴヌクレオチドが生体内に一過的(transient )に存在する様な態様で投与することが好ましい。このような態様としては、アンチセンスオリゴヌクレオチドを注射等によってそのまま投与する方法、リポフェクション法、HVJリポソーム法、アデノウイルスベクターを用いた方法、ワクシニアウイルスベクターを用いた方法等が挙げられる。
【0027】
本発明による別の面によれば、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその等価配列を投与することを含んでなる、心疾患、脳血管疾患、または脊髄断絶に罹ったヒトを含むほ乳類の治療法が提供される。この治療法においては、前記固定性分裂終了細胞増殖剤を用いて、前記使用態様に準じてアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することができる。
【0028】
本発明による更に別の面によれば、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、特に、固定性分裂終了細胞増殖剤の製造における使用、が提供される。
【0029】
【実施例】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1 アンチセンスオリゴヌクレオチドの調製
転写因子Rbおよびp53のアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製した。配列は転写因子Rbに関しては、前掲Jacques Hartzfeld et al.の文献に記載の、転写因子p53に関しては、前掲Sucai Biet al.の文献に記載の配列をアンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いた。調製したオリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1および2に記載される。オリゴヌクレオチドの合成は、上記文献に記載される方法に従って行った。
【0030】
実施例2 HVJ−リポソームの調製
(1)HVJの調製
HVJ(Hemmagglutinating Virus of Japan Sendai virus; Z strain)は有精の鶏卵漿尿液中で増殖させた。HVJは、大阪大学細胞生体工学センター細胞構造機能研究部門助教授金田安史氏より入手したものを使用した。(このHVJは、同助教授より誰でも分譲を受けることが可能である)。
これを27000×gで40分間遠心分離してHVJを集め、BSS(−)(137mM NaCl,5.4mM KCl,10mM Tris−HCl pH7.6)に4℃で一晩懸濁した。この操作を少なくとも2回繰り返した後4℃で保存し、精製後1週間以内に使用した。HVJ懸濁液のA5401単位はタンパク質1mg/mlの含有量および15000HAU/mlの融合能に相当する。
【0031】
(2)脂質の調製
ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、およびコレステロールを重量比1:4.8:2で混合し、この10mgをテトラヒドロフラン溶液とし、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去してフラスコ表面に膜状に保持した。これに実施例1において調製した転写因子Rbおよびp53アンチセンスオリゴヌクレオチド(15μM)を含む緩衝液(BSS;137mM NaCl,5.4mMKCl,13mM Tris−HCl pH7.6)200μlを加え、撹拌および超音波処理でリポソームを調製した。
【0032】
(3)HVJ−リポソームの調製
(1)において精製したHVJを、3分間、UV照射(110erg/mm2/sec)することによって不活性化した。(2)において調製したリポソーム懸濁液(0.5ml、10mgの脂質を含む)をHVJ(35000HAU)と混合して2mlのBSS溶液とし、4℃で10分間インキュベートし、次いで37℃で30分間静かに撹拌した。リポソームに結合していないHVJをショ糖密度勾配遠心でHVJ−リポソーム混合物から除去した。HVJ−リポソームはショ糖密度勾配遠心を行うと最上層に位置するので、最上層を分取して以下の実験に用いた。
【0033】
実施例3 ラット心臓へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与
Sprague−Dawleyラット(300〜400g;チャールズリバー社)をペントバルビタールナトリウムで麻酔し、人工呼吸下で左胸部を開胸した。実施例2において調製した転写因子Rbおよびp53のアンチセンスオリゴヌクレオチド(15μM)を含むHVJ−リポソーム混合物20〜30μlを30G注射針を用いて直接心尖部に注入した。胸部を縫合して、ゲージに解放し、2日後に4%パラホルムアルデヒドで潅流固定後に心臓を摘出し、次いでパラフィン標本を作成して増殖細胞核抗原(PCNA)に対する免疫染色を実施した。PCNAとは、細胞周期のG1期からS期にかけて特異的に核内に発現するタンパク質サイクリンと同一のタンパク質であり、細胞増殖のマーカーとなる。
【0034】
結果は図1に示される通りであった。PCNA陽性細胞の全処理細胞に対する割合はアンチセンスオリゴヌクレオチド処理群で38.921%、非処理群(コントロール群)で2.442%であった。アンチセンスオリゴヌクレオチド処理された心筋細胞がS期に移行したことが示された。
【0035】
【配列表】
【0036】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1および2のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した心筋細胞と未処理の細胞についてPCNA免疫染色した結果を示した図である。
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む固定性分裂終了細胞増殖剤に関し、更に詳細には心疾患治療剤に関する。
【0002】
背景技術
生体内細胞は、E.V.カウドリーの分類によれば、その分裂特性により増殖性分裂細胞群、分化性分裂細胞群、可逆性分裂終了細胞群、および固定性分裂終了細胞群の4群に分類される。このうち固定性分裂終了細胞群(fixed post mitotics )は高い分化機能を持ち、現在知られているどの様な刺激によっても再生できないとされ、従って、固定性分裂終了細胞群に属する細胞(以下「固定性分裂終了細胞」という)からなる生体器官は、最も加齢変化を受けやすく、一度損傷すると再生することがほとんど困難であるといわれている。
【0003】
ところで、近年、人口の高齢化に伴って循環器系疾患が増加しており、中でも高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳血管疾患は年々増加している。特に心筋梗塞は突然発症し、それによる致死率はきわめて高い。その成因は血栓または冠攣縮により、心臓の栄養血管である冠動脈が閉塞して、心筋細胞が壊死するためである。心筋細胞は、最終分化した固定性分裂終了細胞の一つであり、細胞周期は常に静止期に制御されている。従って、心筋細胞が壊死して生じた梗塞巣は、急性期心筋梗塞の状態を脱して快方に向かった場合においても、心筋組織の再生は起こらず、梗塞巣が残ったまま症状が固定し、つねに再発の危険がある。また、心筋梗塞再発率と梗塞巣の大きさには相関関係があると言われている。更にまた、心筋症は、発症の頻度こそ低いものの、やはり心筋細胞の壊死が原因で起こる疾患である。しかもその原因が不明であるため、予後の極めて悪い疾患である。
【0004】
また、循環器系疾患の一つである脳血管疾患は、一度発症すると脳内における神経細胞の壊死が起こり、発症前の患者の機能(例えば、歩行機能、言語機能等)を回復することは必ずしも容易ではない。
現在、上記疾患に関しては、治療は対照療法に限られ、根本的治療法が望まれている。
【0005】
一方、ガン抑制遺伝子産物である転写因子Rbおよびp53は細胞周期を負に制御する転写因子であり、これらの因子が存在すると細胞は静止期にとどまり、分裂期には移行できないことが知られている(Goodrich et al., Cell, 67: 293-302, 1991、Yin et al., Cell, 70:937-948, 1992))。しかしながら、ガン抑制遺伝子と固定性分裂終了細胞との関連は、本発明者らが知る限り報告されていない。
【0006】
【発明の概要】
本発明者らは、成熟ラットの心臓において転写因子p53およびRbが発現していること、特にp53については過剰発現していること、をウェスタンブロット法によって確認した(データ示さず)。また、ガン抑制遺伝子である転写因子Rbおよびp53遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、直接生体内の心臓に導入することにより、固定性分裂終了細胞の一つである心筋細胞を増殖させることが可能であることを見いだした。本発明は係る知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、固定性分裂終了細胞の増殖を促し、固定性分裂終了細胞が関係する疾患を根本的に治療する治療剤の提供をその目的とする。
そして、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、一または二以上のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその等価配列を有効成分として含んでなる組成物、である。
【0008】
【発明の具体的説明】
本発明において「ヌクレオチド」とはDNAおよびRNAを含む意味で用いられるものとする。また、本発明において「遺伝子」とは、いわゆる構造遺伝子の他に、プロモーターやオペレーター等のような特定の制御機能を有する領域も含む意味で用いられるものとする。さらに、本発明において「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、特定の機能を持つ配列(以下「センス配列という)に対し相補的な塩基配列を有し、かつセンス配列の機能を阻害するオリゴヌクレオチドをいう。
【0009】
本発明における固定性分裂終了細胞増殖剤に有効成分として含まれるアンチセンスオリゴヌクレオチドに対応するセンス配列は、ガン抑制遺伝子中に存在する。本発明において「ガン抑制遺伝子」とは、ガン細胞のガン形質の発現を抑制する遺伝子をいい、例えば、Rb遺伝子、p53遺伝子、DCC遺伝子、WT1遺伝子、APC遺伝子、NF1遺伝子、NF2遺伝子、VHL遺伝子、IRF−1遺伝子等が挙げられる。ガン抑制遺伝子はRb遺伝子およびp53遺伝子から選択されてもよい。
【0010】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその等価配列を一または二以上有することができる。ここで、二以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドという場合には、異なるガン抑制遺伝子由来の複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドのみならず、同一のガン抑制遺伝子由来の複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドをも含むものとする。
【0011】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに対応するセンス配列のガン抑制遺伝子中における存在位置は限定されるものではなく、例えば、タンパク質の翻訳開始コドン付近、プロモーター領域(例えば、TATA配列、CAAT配列、GC配列等)付近、構造遺伝子の中間領域または3’末端領域付近等であることができる。
【0012】
一または二以上のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Rb遺伝子の一のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびp53遺伝子の一のアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
また、一または二以上のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび配列番号2に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
【0013】
配列番号1の配列は転写因子Rb遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの一つである。この配列番号1に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、転写因子Rb遺伝子の翻訳開始コドン(ATG)の上流側10塩基対と下流側11塩基対(ATGを含む)とからなる領域(センス配列)に対応する。
配列番号2の配列は転写因子p53遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの一つである。この配列番号2に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、転写因子p53遺伝子の翻訳開始コドン(ATG)の上流側6塩基対と下流側12塩基対(ATGを含む)とからなる領域(センス配列)に対応する。
【0014】
なお、配列番号1および2の配列は、それぞれ、Jacques Hartzfeld et al., J. Exp. Med. Vol.174, October 1991 925-929およびSucai Biet al., Cancer Research, Vol.54, January 15, 1994 582-586に記載されるものである。
【0015】
本発明において「等価配列」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて塩基の付加、挿入、削除、欠失または置換などの改変があっても、改変前の配列と同じ機能を有することを意味し、例えば、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、塩基の付加、挿入、削除、欠失または置換などの改変が生じた塩基配列(特に5’末端および/または3’末端において任意のオリゴヌクレオチドが付加された塩基配列)であって、依然としてセンス配列の機能を阻害するものが挙げられる。配列番号1の配列に任意の塩基配列を付加した配列、および配列番号2の配列に任意の塩基配列を付加した配列は、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの等価配列に含まれる。
【0016】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、脂質を更に含んでいてもよい。脂質は天然由来の脂質であっても合成脂質であってもよい。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤が後述するHVJ法やリポフェクション法により投与されることを意図されている場合には、脂質はリポソームを形成できるものから選択される。リポソームを形成できる脂質としてはリン脂質、糖脂質および中性脂質が挙げられる。
【0017】
リン脂質としては、グリセロリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール等)およびスフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)等が挙げられる。
【0018】
また、糖脂質としては、スフィンゴ糖脂質、グリセロ糖脂質、セレブロシド、グロボシド、ガングリオシド等が挙げられ、中性脂質としてはコレステロール等が挙げられる。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、上記脂質と組み合わせて、形成されたリポソームに電荷を与えるような物質(例えば、ジセチルリン酸、ステアリルアミン)、リポソームの酸化を防止するような物質(例えば、α−トコフェロール)等を含んでいても良い。
【0019】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤においては、前記脂質はリポソームの形態を採ることができる。リポソームは、慣用されている方法、例えば、超音波処理等、によって形成させることができる。この場合、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドがリポソーム内に存在することが好ましい。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤が後述するHVJ法により投与されることを意図されている場合には、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、脂質の他に不活性化したHVJ(Hemmagglutinating Virus of Japan Sendai virus :センダイウイルス)を更に含んでいてもよい。
【0020】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤が後述するリポフェクション法により投与されることを意図されている場合には、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、脂質の他にリポソームに電荷を与える物質を更に含んでいてもよい。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、更に薬学上許容可能な担体および賦形剤等を含んでいても良い。また、必要によりガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチド以外の有効成分を含んでいても良い。
【0021】
本発明において前記アンチセンスオリゴヌクレオチドはベクターと連結されていてもよい。この場合、アンチセンスヌクレオチドは適当なプロモーターに作動可能に連結されていることが好ましい。ここで「作動可能に」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(RNA)が発現されうることを意味するものとする。
使用できるベクターとしては、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられ、例えば、実験医学,Vol.12 No.15,「遺伝子治療の最前線」,(1994年)に記載されるベクターを用いることができる。
【0022】
本発明において「固定性分裂終了細胞」としては、心筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞、赤血球細胞等が挙げられる。従って、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、上記細胞の増殖剤であることができる。
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、非分裂性の心筋細胞の増殖を促すことから、心疾患を根本的に治療することができると考えられる。従って、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、心疾患治療剤であることができる。
ここで「心疾患」は、心筋梗塞、不整脈、心筋症、および慢性心不全等の疾患を含む。従って、本発明による心疾患治療剤は、心筋梗塞、不整脈、心筋症、および慢性心不全等の治療剤であることができる。
【0023】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、非分裂性の神経細胞の増殖を促すことが期待される。従って、脳血管疾患や脊髄断絶等の治療剤であることができる。
本発明において「治療」とは、確定した疾患の治療のみならず予防を含む意味で用いられるものとする。
投与量は、用法、患者の年齢、性別、症状の程度などを考慮して適宜決定されてよく、通常成人1日当り約1g〜約1pg、好ましくは約1mg〜約1μg程度とすることができ、これを1日1回または数回に分けて投与することができる。
【0024】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、HVJリポソーム法によってヒトを含むほ乳類に投与することができる。HVJリポソーム法の詳細は、金田,実験医学,Vol.12 No.2, 78(184),1994や、森下等,実験医学, Vol.12 No.15 158(1928),1994に記載される。本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤中に含まれる脂質がリポソームの形態を採っていないときは、該固定性分裂終了細胞増殖剤を使用する前に慣用される方法によってリポソームを形成させて、上記HVJ法によってほ乳類に投与してもよい。リポソーム内に有効成分であるアンチセンスオリゴヌクレオチドが存在しない場合も同様である。
【0025】
また、上記HVJリポソーム法に限らず、アンチセンスオリゴヌクレオチドを注射等によってそのまま投与する方法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子銃による方法(T. M. Klein et al., Bio/Technology 10, 286-291(1992)) 、リポフェクション法によって投与する方法(Nabel et al.:Science 244 ,1285,1990) 、適当なベクター(例えば、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等)を使う方法等によって、本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤をヒトを含むほ乳類に投与することができる。
【0026】
本発明による固定性分裂終了細胞増殖剤は、局所的または一時的細胞増殖の点から、アンチセンスオリゴヌクレオチドが生体内に一過的(transient )に存在する様な態様で投与することが好ましい。このような態様としては、アンチセンスオリゴヌクレオチドを注射等によってそのまま投与する方法、リポフェクション法、HVJリポソーム法、アデノウイルスベクターを用いた方法、ワクシニアウイルスベクターを用いた方法等が挙げられる。
【0027】
本発明による別の面によれば、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその等価配列を投与することを含んでなる、心疾患、脳血管疾患、または脊髄断絶に罹ったヒトを含むほ乳類の治療法が提供される。この治療法においては、前記固定性分裂終了細胞増殖剤を用いて、前記使用態様に準じてアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することができる。
【0028】
本発明による更に別の面によれば、ガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、特に、固定性分裂終了細胞増殖剤の製造における使用、が提供される。
【0029】
【実施例】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1 アンチセンスオリゴヌクレオチドの調製
転写因子Rbおよびp53のアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製した。配列は転写因子Rbに関しては、前掲Jacques Hartzfeld et al.の文献に記載の、転写因子p53に関しては、前掲Sucai Biet al.の文献に記載の配列をアンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いた。調製したオリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1および2に記載される。オリゴヌクレオチドの合成は、上記文献に記載される方法に従って行った。
【0030】
実施例2 HVJ−リポソームの調製
(1)HVJの調製
HVJ(Hemmagglutinating Virus of Japan Sendai virus; Z strain)は有精の鶏卵漿尿液中で増殖させた。HVJは、大阪大学細胞生体工学センター細胞構造機能研究部門助教授金田安史氏より入手したものを使用した。(このHVJは、同助教授より誰でも分譲を受けることが可能である)。
これを27000×gで40分間遠心分離してHVJを集め、BSS(−)(137mM NaCl,5.4mM KCl,10mM Tris−HCl pH7.6)に4℃で一晩懸濁した。この操作を少なくとも2回繰り返した後4℃で保存し、精製後1週間以内に使用した。HVJ懸濁液のA5401単位はタンパク質1mg/mlの含有量および15000HAU/mlの融合能に相当する。
【0031】
(2)脂質の調製
ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、およびコレステロールを重量比1:4.8:2で混合し、この10mgをテトラヒドロフラン溶液とし、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去してフラスコ表面に膜状に保持した。これに実施例1において調製した転写因子Rbおよびp53アンチセンスオリゴヌクレオチド(15μM)を含む緩衝液(BSS;137mM NaCl,5.4mMKCl,13mM Tris−HCl pH7.6)200μlを加え、撹拌および超音波処理でリポソームを調製した。
【0032】
(3)HVJ−リポソームの調製
(1)において精製したHVJを、3分間、UV照射(110erg/mm2/sec)することによって不活性化した。(2)において調製したリポソーム懸濁液(0.5ml、10mgの脂質を含む)をHVJ(35000HAU)と混合して2mlのBSS溶液とし、4℃で10分間インキュベートし、次いで37℃で30分間静かに撹拌した。リポソームに結合していないHVJをショ糖密度勾配遠心でHVJ−リポソーム混合物から除去した。HVJ−リポソームはショ糖密度勾配遠心を行うと最上層に位置するので、最上層を分取して以下の実験に用いた。
【0033】
実施例3 ラット心臓へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与
Sprague−Dawleyラット(300〜400g;チャールズリバー社)をペントバルビタールナトリウムで麻酔し、人工呼吸下で左胸部を開胸した。実施例2において調製した転写因子Rbおよびp53のアンチセンスオリゴヌクレオチド(15μM)を含むHVJ−リポソーム混合物20〜30μlを30G注射針を用いて直接心尖部に注入した。胸部を縫合して、ゲージに解放し、2日後に4%パラホルムアルデヒドで潅流固定後に心臓を摘出し、次いでパラフィン標本を作成して増殖細胞核抗原(PCNA)に対する免疫染色を実施した。PCNAとは、細胞周期のG1期からS期にかけて特異的に核内に発現するタンパク質サイクリンと同一のタンパク質であり、細胞増殖のマーカーとなる。
【0034】
結果は図1に示される通りであった。PCNA陽性細胞の全処理細胞に対する割合はアンチセンスオリゴヌクレオチド処理群で38.921%、非処理群(コントロール群)で2.442%であった。アンチセンスオリゴヌクレオチド処理された心筋細胞がS期に移行したことが示された。
【0035】
【配列表】
【0036】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1および2のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した心筋細胞と未処理の細胞についてPCNA免疫染色した結果を示した図である。
Claims (9)
- Rb遺伝子およびp53遺伝子からなる群から選択される一種または二種のガン抑制遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含んでなる、固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- Rb遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、p53遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドとを有効成分として含んでなる、請求項1に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- Rb遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1に記載されるヌクレオチド配列からなり、p53遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号2に記載されるヌクレオチド配列からなる、請求項1または2に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- 脂質を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- 脂質をリポソームの形態で含む、請求項4に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- 不活性化したHVJ(センダイウイルス)を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- 心疾患治療剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- 心疾患が、心筋梗塞、不整脈、心筋症、または慢性心不全である、請求項7に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
- 心疾患が、心筋症である、請求項8に記載の固定性分裂終了心筋細胞増殖剤。
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