JP4157658B2 - 油圧−機械式変速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧−機械式変速機に関するものであり、特に、油圧式無段変速から油圧−機械式変速への切換時の衝撃を無くして操作フィーリングの向上を目的とした技術に関する。また、油圧−機械式変速による走行駆動における、高効率な速度域の利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジン動力を一方は遊星歯車機構に伝え、他方は油圧式無段変速装置を介して遊星歯車機構に伝えて合成する構成のミッション装置が油圧−機械式変速機(以下HMTとする。)として同一出願人により提案されており、特願平10−306082号、特願平10−306086号等より出願済みである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術においては、切換クラッチの操作により後進及び低速前進走行域においては油圧式無段変速によるHSTモードの走行を行い、前進中速及び前進高速域においては油圧−機械式無段変速によるHMTモードの走行を行うよう制御している。そして、このHSTモードからHMTモードへの切換は電子制御により行われるため、切換時にミッション部において衝撃が発生した場合には、オペレータにとっては意図しない振動等を感じることとなり操作フィーリング上好ましくない。そこで、このHMT・HSTモード間での切換操作時には、両モードの出力が合成される合流点においてスムーズな切換が行われることが望ましい。また、油圧−機械式無段変速を利用した場合には、各走行速度において運転効率が変化することとなるが、例えばトラクタに搭載するのであれば、プラウ作業速度域において高効率な走行が行えることが望ましい。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、エンジン(20)からの動力を、油圧ポンプ(22)と油圧モータ(23)により構成したHST(21)と遊星歯車機構(10)に伝え、該HST(21)の出力部と、該遊星歯車機構(10)との間に油圧式切換クラッチ(13・14)を配置する油圧−機械式変速装置において、該遊星歯車機構(10)は、サンギヤ(1)、プラネタリーギヤ(2)、出力ギヤ(3)、キャリヤ(4・5)より構成し、前記油圧モータ(23)のモータ出力軸(26)には、前記油圧式切換クラッチ(13・14)の2つのギヤ(11・12)を遊嵌し、該エンジン(20)の回転出力は、エンジン(20)からの入力軸(25)に対して相対回転不能に挿嵌されたサンギヤ(1)を駆動し、該サンギヤ(1)をプラネタリーギヤ(2)を構成する2つのギヤ(2a・2b)の内の一方のギヤ(2a)と噛合し、他方のギヤ(2b)を前記出力ギヤ(3)に噛合し、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)を、該入力軸(25)上に遊嵌されたキャリヤ(4・5)の間で回転自在に支持し、該キャリヤ(4・5)と一体となって公転させ、該キャリア(5)にはキャリアギヤ(6)を固設し、該キャリアギヤ(6)は前記モータ出力軸(26)上のギヤ(11)と噛合し、前記遊星歯車機構(10)の出力ギヤ(3)は入力軸(25)上に遊嵌されたパイプ軸(7)の前端部に固設し、該パイプ軸(7)の後端にギヤ(8)を固設し、HSTモードの駆動系においては、前記油圧式切換クラッチ(13・14)のうち切換クラッチ(14)のみを接続し、前記ギヤ(12)のみを駆動し、該モータ出力軸(26)と平行に配設された合成出力軸(27)のギヤ(15)が、前記モータ出力軸(26)のギヤ(12)と噛合し、該モータ出力軸(26)の回転出力を合成出力軸(27)に伝達し、HMTモードの駆動系においては切換クラッチ(13)を接続し、前記モータ出力軸(26)の回転出力はギヤ(12)には伝達されずにギヤ(11)のみを駆動し、該ギヤ(11)は前記キャリアギヤ(6)と噛合して回転をキャリア(5)に伝達し、前記入力軸(25)のサンギヤ(1)により、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)が自転し、キャリア(5)と一体となって公転し、該入力軸(25)の回転出力と、モータ出力軸(26)の回転出力を合成し、前記パイプ軸(7)のギヤ(8)より前記合成出力軸(27)上のギヤ(16)に伝達し、HSTモードにおける伝達系においては、該モータ出力軸(26)の回転出力を直接に合成出力軸(27)に伝達するが、この場合にも、合成出力軸(27)のギヤ(16)は、逆にギヤ(8)を介して前記パイプ軸(7)を駆動し、該パイプ軸(7)よりプラネタリアギヤ(2a・2b)を駆動し、一方、前記エンジン(20)の入力軸(25)によりサンギヤ(1)、ギヤ(2a)を介してプラネタリアギヤ(2a・2b)を回転駆動しており、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)は入力軸(25)側からと、モータ出力軸(26)側からの回転駆動を受ける為、これらの回転数差を吸収すべくキャリヤ(4・5)とキャリアギヤ(6)が回転されており、該キャリアギヤ(6)よりギヤ(11)が回転し、前記HSTモードとHMTモードの切換えにおいて、2つの油圧式切換クラッチ(13・14)が駆動するギヤ(11)とギヤ(12)回転が、略一致するモータ出力軸(26)回転数となった時点で切換えを行うよう制御するものである。
【0005】
請求項2においては、請求項1記載の油圧−機械式変速装置において、前記油圧式切換クラッチ(13・14)の切換により、機体の中速域以上はHMTモードで出力すべく制御し、該HMTモードにおいて該モータ出力軸(26)の回転が0となり停止するときの機体の走行速度を4〜12km/hとしたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について説明する。図1は本発明にかかるHMTのスケルトン図、図2はHST及びミッション(前部)の断面展開図、図3はミッション(後部)の断面展開図、図4はHSTモード及びHMTモードにおけるポンプ吐出量と合成出力回転数との関係を示す図、図5はHMT走行による駆動効率を示す図である。
【0007】
図1乃至図3において、油圧−機械式変速機(以下HMTとする)の構成について説明する。HMTはHST(油圧式無段変速装置)21および遊星歯車機構10を備えるミッション30により構成されている。図2に示すようにHST21はHSTケース31およびセンタセクション32に内包される油圧ポンプ22および油圧モータ23を備えており、該センタセクション32はミッション30のケース33に固設されている。
【0008】
HST21には駆動源であるエンジン20からの動力を伝達する入力軸25が挿嵌貫通されており、該入力軸25には油圧ポンプ22の可動斜板22aおよびシリンダブロック22bが挿嵌されている。該シリンダブロック22bは入力軸25に相対回動不能に挿嵌されており、入力軸25とともにシリンダブロック22bが駆動される構成になっている。該シリンダブロック22bにはプランジャー22cが複数摺動自在に配設されている。該プランジャー22cの先端には前記可動斜板22aが当接しており、該可動斜板22aの傾斜角を調節することにより、油圧ポンプ22の作動油の吐出量を調節可能に構成されている。油圧ポンプ22により吐出された作動油はセンターセクション32に設けられた油路を介して油圧モータ23に送油される。そして、同様にシリンダブロック、プランジャ等より構成される油圧モータ23を駆動させることによって、該油圧モータ23のモータ出力軸26の回転速度及び回転方向を制御する構成になっている。なお、本実施例では油圧ポンプを可変容量型としているが、油圧ポンプと油圧モータの両方を可変容量型とする構成でも本発明の実施は可能である。
【0009】
次に、ミッション30の構成について説明する。ミッション30はミッションケース33により被装されており、該ミッションケース33には入力軸25、モータ出力軸26、合成出力軸27、副変速軸28、PTO軸53等が平行で前後方向に配設され、回動自在に支持されている。また、ミッションケース33内には遊星歯車機構10が設けられている。遊星歯車機構10は後述するサンギヤ1、プラネタリーギヤ2、出力ギヤ3、そして、遊星歯車機構の加減速手段であるキャリヤ4・5等より構成されている。
【0010】
モータ出力軸26には2つのギヤ11・12が遊嵌されており、該ギヤ11・12の間には油圧クラッチ13・14が介装されて、該油圧クラッチ13・14の何れか一方を接続させることにより、ギヤ11・12の何れか一方に動力が伝達される。前記入力軸25はセンタセクション32を貫通してミッションケース33内に延設しており、該入力軸25上に遊星歯車機構10を有している。
【0011】
入力軸25の回転出力は、入力軸25に対して相対回転不能に挿嵌されたサンギヤ1を回転駆動する。そして、サンギヤ1はプラネタリアギヤ2に刻設された2つのギヤの内の一方であるギヤ2aに噛合し、さらに他方のギヤ2bは出力ギヤ3に噛合している。ここでプラネタリアギヤ2は、入力軸25上に遊嵌されたキャリア4・5に挟まれるようにして回転自在に支持されるとともに、該キャリア4・5と一体となって回転する。また、キャリア5にはギヤ6が固設されており、前記モータ出力軸26上のギヤ11と噛合している。つまり、ギヤ11は遊星歯車機構の加減速手段であるキャリア5に連動連結する手段として機能する。また、遊星歯車機構10の出力ギヤ3は入力軸25上に遊嵌されたパイプ軸7の前端部に形成されており、該パイプ軸7の後端にはギヤ8が相対回転不能に挿嵌されている。
【0012】
以上の構成におけるHMTの制御について説明する。まず、HSTモードの駆動系について説明する。HSTモードにおいては2つの油圧クラッチ13・14のうち、油圧クラッチ14が接続される。これにより、モータ出力軸26の回転出力はギヤ11には伝達されずに、ギヤ12のみを回転駆動する。
【0013】
モータ出力軸26とは平行に合成出力軸27が配設されており、該合成出力軸27上に固設されたギヤ15が前記モータ出力軸26のギヤ12に噛合している。これにより、モータ出力軸26の回転出力がギヤ12・15を介して合成出力軸27に伝達される。合成出力軸27はミッションケース33内を後方に延設して、図3で示すように、合成出力軸27の後部に2つのギヤ17・18を回転不能に挿嵌している。
【0014】
また、合成出力軸27には副変速軸28が並設されており、該副変速軸28にはギヤ60・61が遊嵌されており、該ギヤ60・61が前記ギヤ17・18に噛合して異なる回転数で駆動している。そして、副変速軸28に設けられた副変速クラッチ62を操作することにより、ギヤ60・61何れかの回転駆動力を副変速軸28に伝達するのである。そして、該副変速軸28の後端に刻設されたベベルギヤ69を介して後輪ディファレンシャルに動力が伝達される。
【0015】
また、副変速軸28の前端部には2つのギヤ63・64が固設されており、該ギヤ63・64が前輪出力軸29上に遊嵌されたギヤ65・66に噛合し、該ギヤ65・66を異なる回転数で駆動している。また、前輪出力軸29上には2つの油圧クラッチ67・68が設けられており、該油圧クラッチ67・68のうち何れか一方を接続することにより、ギヤ65・66の何れか一方の回転駆動力を前輪出力軸29に伝達するのである。
【0016】
HSTモードにおいては、以上の駆動系により前輪及び後輪を駆動するものであるが、この駆動系においてはエンジン出力が前後輪にまで伝達されるまでの間に遊星歯車機構10を経由しないモードとなっている。つまり、遊星歯車機構10は空転しており、エンジン出力はHST21により変速された後、副変速されて前後輪に伝達されるのである。
【0017】
次に、HMTモードの駆動系について説明する。HMTモードにおいては2つの油圧クラッチ13・14のうち、油圧クラッチ13が接続される。これにより、モータ出力軸26の回転出力はギヤ12には伝達されずに、ギヤ11のみを回転駆動する。そして、ギヤ11は前記キャリア5に固設されたギヤ6に噛合しており、モータ出力軸26の回転出力がキャリア5に伝達される。
【0018】
また、入力軸25の回転出力によりサンギヤ1が回転駆動しており、サンギヤ1の回転出力がプラネタリアギヤ2を介して出力ギヤ3を有するパイプ軸7を駆動する。つまり、プラネタリアギヤ2はサンギヤ1により回転駆動するとともに、キャリア5と一体となって回転するので、入力軸25の回転出力と、HST21による変速後のモータ出力軸26の回転出力が合成されてパイプ軸7に伝達されるのである。
【0019】
そして、パイプ軸7後端のギヤ8が前記合成出力軸27のギヤ16に噛合しているので、合成された出力がパイプ軸7から合成出力軸27に伝達される。以降は、HSTモードと同様に副変速軸28を経て前輪及び後輪を駆動するのである。以上の伝達系によりHMTモードによる前輪及び後輪の駆動が行われる。
【0020】
また、前記入力軸25の後端はPTOクラッチ40を介してPTO入力軸41に伝達される。PTO入力軸41の後端には3つのギヤ42・43・44が相対回転不能に挿嵌され、それぞれPTO副変速軸45に遊嵌されたギヤ46・4748に噛合している。そしてPTO副変速クラッチ49の操作により3段階に変速された出力が、ギヤ50・52を介して回転軸51に伝達され、さらにギヤ52・54を介してPTO軸53に伝達され、作業機等に動力を伝達するよう構成している。
【0021】
次に、本発明に係るHSTモードからHMTモードへの切換タイミングについて説明する。上述の如く本発明に係るHMTにおいては、クラッチ13・14の切換によりHSTモードとHMTモードの切換を行うものであるが、この切換時にミッション30内で衝撃等が発生した場合には、オペレータに意図しない振動を与えることとなる。そこで、クラッチ13・14の切換時に衝撃を発生させずにモードの変更を行う必要がある。
【0022】
まず、HSTモードにおける伝達系においては、前述の如くモータ出力軸26の回転出力が直接合成出力軸27に伝達されるわけであるが、この場合にも、合成出力軸27のギヤ16は、ギヤ8を介して前記パイプ軸7を駆動させている。そして、該パイプ軸7の駆動により出力ギヤ3、ギヤ2bを介してプラネタリアギヤ2が回転駆動される。一方、前記入力軸25の回転出力によりサンギヤ1、ギヤ2aを介してプラネタリアギヤ2が回転駆動される。
【0023】
このため、プラネタリアギヤ2は入力軸25側からと、パイプ軸7側からの回転駆動を受ける為、これらの回転数差を吸収すべくキャリア4・5が回転するのである。つまり、HSTモードにおいてもキャリア5に固設されたギヤ6に駆動されて、モータ出力軸26上のギヤ11は回転駆動しているのである。
【0024】
そして、クラッチ14を切断し、クラッチ13を接続させることによりHMTモードへ切換えられた場合には、モータ出力軸26の回転駆動がギヤ11に伝えられることとなる。そこで、この切換タイミングをHSTモード時におけるギヤ11の回転数と、モータ出力軸26の回転数が同一となった時点で行うよう制御しているのである。つまり、モータ出力軸26の回転速度と遊星歯車機構の加減速手段(キャリア5)に連動連結する手段(ギヤ11)の回転速度が略一致したときに切換クラッチを切りかえるよう構成しているのである。このような制御を行うことで、HSTモードからHMTモードへの切換の前後いおいてギヤ11の回転数が変化しないため、クラッチ13の接続による衝撃が発生せずに、スムーズなHMTモードへの切換が行えるようにしているのである。
【0025】
図4は、縦軸をHST21のポンプ吐出量、横軸を合成出力回転数としたグラフを表している。そして、図のグラフG1はポンプ吐出量が−Aから+Aの範囲で変化した場合のHSTモードによるポンプ吐出量と合成出力回転数の関係を表し、グラフG2がHMTモードによるポンプ吐出量と合成出力回転数の関係を表している。つまり、上述したHSTモードからHMTモードへのスムーズな切換操作は、この2つのグラフG1・G2の交点F1 において行うことを示している。
【0026】
また、図で示すように、本発明に係るHMTの制御は、後進及び低速前進走行時には、HSTモードでの走行駆動を行い、中速前進及び高速前進時にはHMTモードによる走行駆動を行うよう制御している。このような制御を行うことで、低速域での微妙な変速を可能とするとともに、後進、前進間の切換をスムーズに行って操作フィーリングを向上させる構成とし、中速または高速前進域においては、HMTモード走行により油圧駆動による出力の損失を低減させて効率のよい走行を行い低燃費化を図っているのである。
【0027】
図のF0 点は、HMTモードにおいてHST21のポンプ出力が0となる点、つまりHST21のモータ出力軸26が回転駆動しない点である。このF0 点においては、エンジン駆動力は入力軸25から遊星歯車機構10を介して合成出力軸27側へ伝達されるが、モータ出力軸26が回転駆動しないため、遊星歯車機構10のキャリア4・5が固定された状態で動力が伝達されることとなる。
【0028】
そして、このF0 点においては、ポンプ出力が0であるから、油圧モータ23が駆動されず、エンジン出力は油圧に変換されることなく、入力軸25から伝達されるため、油圧駆動による損失が低減され、高効率な走行駆動を行える走行域となる。さらに、本発明においては図5に示すように、HMTモードにおいて、該F0 点の走行駆動を行っている場合には、本機の走行速度が約4〜12km/hとなるようにしている。つまり、本発明に係るHMTは、主にトラクタに搭載されて利用されることとなるが、トラクタでの作業では土起こしを行うプラウ作業速度域が略4〜12km/hの範囲内であるため、もっとも作業頻度の高いプラウ作業速度域に高効率なF0 点を合致させることで、さらなる低燃費化が図れるのである。
【0029】
また、本発明に係るHMTにおいては、モータ出力軸26の回転出力は、遊星歯車機構10の加減速手段であるキャリア5を介して加算(または減算)され、合成された出力はパイプ軸7上に形成された中央の出力ギヤ3から取出される構成としている。つまり、従来の構成においては、合成された出力を遊星歯車機構10のキャリア5から取出す構成としていたため、モータ出力軸26が停止している高効率な駆動状態においても、キャリアの回転による攪拌損失等が発生していたが、本構成においては、モータ出力軸26の停止状態においては、キャリアが固定され、遊星歯車機構10の中央に位置する出力ギヤ3の回転により動力が伝達されるため、攪拌損失も小さく高効率な駆動伝達が行えるのである。
【0030】
次に、HMTモードにおける駆動系の異常検出手段について説明する。上述の如く、HMTモードにおいては、エンジン20の動力を一方は入力軸25より遊星歯車機構10に伝達し、他方はHST21を介してモータ出力軸26より遊星歯車機構10に伝達して合成するよう構成している。そして、合成された出力回転数は前記合成出力軸27に伝達されるが、この合成出力軸27より下流側で検出される合成出力回転数、及び、前記モータ出力軸26の回転数を検出することにより異常検出を行う。
【0031】
図2に示すように、前記モータ出力軸26の後端には回転数検出用のギヤ9が固設されており、該ギヤ9の近傍にはモータ出力軸26出力回転数を検出する手段であるセンサ81が設けられている。また、前記合成出力軸27に固設されたギヤ15には、合成出力軸27の出力回転数を検出する手段であるセンサ82が設けらている。ここで、HMTモードにおいては、モータ出力軸26の出力回転数と、入力軸25の出力回転数が遊星歯車機構10において合成された後、合成出力軸27に伝達される構成であるので、前記センサ82は合成出力回転数を検出する手段となるのである。そして、図1に示すように該センサ81・82は、それぞれ制御部90に接続されている。
【0032】
そして、制御部90はセンサ81よりモータ出力軸26の出力回転数を検出するとともに、この検出結果より合成出力回転数を演算するのである。つまり、エンジン回転数より求められる入力軸25の回転数は、サンギヤ1、プラネタリアギヤ2、出力ギヤ3のギヤ比により変速されてパイプ軸7に伝達される。さらに、検出したモータ出力軸26の出力回転数がギヤ11・6のギヤ比により変速されてキャリア5に加算されるため、この加算を加味したパイプ軸7の回転数が求められるのである。そして、ギヤ8・16のギヤ比より合成出力軸27に伝達される合成出力回転数が演算により求められるのである。
【0033】
また、前述の如く、合成出力軸27にもセンサ82が設けられているので、このセンサ82により検出した合成出力回転数と、上記演算より求めた合成出力回転数とを比較するのである。そして、この比較によりそれぞれの合成出力回転数が異なる場合には、HMT変速装置に異常が発生していることとなる。異常原因としては、前記クラッチ13・14の断接が正常に行われていない場合や、キャリア4・5が正常に駆動していない場合等が挙げられる。
【0034】
上述した実施例においては合成出力回転数の検出手段としてセンサ82を合成出力軸27に設ける構成としているが、このセンサ82を前記前輪駆動軸29に遊嵌されたギヤ66等に設けることにより、前記副変速軸28における合成出力回転数を検出する構成としてもよい。つまり、合成出力回転数の検出手段は合成出力軸27より下流側に位置する何れかの軸に設ければよく、前記センサ81の検出結果より演算で求めた合成出力回転数と、合成出力軸27より下流側で検出される合成出力回転数とを比較すればよいのである。ただし、センサ81の検出結果より行う演算においては、センサ82をギヤ66等に設けた場合には、副変速装置の変速比を加味する必要がある。
【0035】
このようにセンサ82を合成出力軸27より下流側に設けることにより、HMT変速装置に発生した異常を検出することが可能であり、また、前記副変速クラッチ62等の異常も併せて検出することが可能である。さらに、後輪及び前輪の回転軸に、より近い位置で合成出力回転数を検出する構成となるので、車速の検出センサとして機能し、速度計としての利用が可能となるのである。
【0036】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成したので、以下のような効果を奏するものである。
請求項1においては、エンジン(20)からの動力を、油圧ポンプ(22)と油圧モータ(23)により構成したHST(21)と遊星歯車機構(10)に伝え、該HST(21)の出力部と、該遊星歯車機構(10)との間に油圧式切換クラッチ(13・14)を配置する油圧−機械式変速装置において、該遊星歯車機構(10)は、サンギヤ(1)、プラネタリーギヤ(2)、出力ギヤ(3)、キャリヤ(4・5)より構成し、前記油圧モータ(23)のモータ出力軸(26)には、前記油圧式切換クラッチ(13・14)の2つのギヤ(11・12)を遊嵌し、該エンジン(20)の回転出力は、エンジン(20)からの入力軸(25)に対して相対回転不能に挿嵌されたサンギヤ(1)を駆動し、該サンギヤ(1)をプラネタリーギヤ(2)を構成する2つのギヤ(2a・2b)の内の一方のギヤ(2a)と噛合し、他方のギヤ(2b)を前記出力ギヤ(3)に噛合し、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)を、該入力軸(25)上に遊嵌されたキャリヤ(4・5)の間で回転自在に支持し、該キャリヤ(4・5)と一体となって公転させ、該キャリア(5)にはキャリアギヤ(6)を固設し、該キャリアギヤ(6)は前記モータ出力軸(26)上のギヤ(11)と噛合し、前記遊星歯車機構(10)の出力ギヤ(3)は入力軸(25)上に遊嵌されたパイプ軸(7)の前端部に固設し、該パイプ軸(7)の後端にギヤ(8)を固設し、HSTモードの駆動系においては、前記油圧式切換クラッチ(13・14)のうち切換クラッチ(14)のみを接続し、前記ギヤ(12)のみを駆動し、該モータ出力軸(26)と平行に配設された合成出力軸(27)のギヤ(15)が、前記モータ出力軸(26)のギヤ(12)と噛合し、該モータ出力軸(26)の回転出力を合成出力軸(27)に伝達し、HMTモードの駆動系においては切換クラッチ(13)を接続し、前記モータ出力軸(26)の回転出力はギヤ(12)には伝達されずにギヤ(11)のみを駆動し、該ギヤ(11)は前記キャリアギヤ(6)と噛合して回転をキャリア(5)に伝達し、前記入力軸(25)のサンギヤ(1)により、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)が自転し、キャリア(5)と一体となって公転し、該入力軸(25)の回転出力と、モータ出力軸(26)の回転出力を合成し、前記パイプ軸(7)のギヤ(8)より前記合成出力軸(27)上のギヤ(16)に伝達し、HSTモードにおける伝達系においては、該モータ出力軸(26)の回転出力を直接に合成出力軸(27)に伝達するが、この場合にも、合成出力軸(27)のギヤ(16)は、逆にギヤ(8)を介して前記パイプ軸(7)を駆動し、該パイプ軸(7)よりプラネタリアギヤ(2a・2b)を駆動し、一方、前記エンジン(20)の入力軸(25)によりサンギヤ(1)、ギヤ(2a)を介してプラネタリアギヤ(2a・2b)を回転駆動しており、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)は入力軸(25)側からと、モータ出力軸(26)側からの回転駆動を受ける為、これらの回転数差を吸収すべくキャリヤ(4・5)とキャリアギヤ(6)が回転されており、該キャリアギヤ(6)よりギヤ(11)が回転し、前記HSTモードとHMTモードの切換えにおいて、2つの油圧式切換クラッチ(13・14)が駆動するギヤ(11)とギヤ(12)回転が、略一致するモータ出力軸(26)回転数となった時点で切換えを行うよう制御するので、HSTモードからHMTモードへの切換の前後において加減速手段及び加減速手段に連動連結する手段の回転数が変化しないため、切換クラッチの断接による衝撃が発生せずに、スムーズなHST・HMTモード間の切換が行える構成となった。また、回転速度が略一致している為にクラッチ切換時の吸収エネルギー量は非常に小さく(略0)、クラッチをコンパクトに構成でき、コスト低減が可能となった。
【0037】
請求項2においては、請求項1記載の油圧−機械式変速装置において、前記油圧式切換クラッチ(13・14)の切換により、機体の中速域以上はHMTモードで出力すべく制御し、該HMTモードにおいて該モータ出力軸(26)の回転が0となり停止するときの機体の走行速度を4〜12km/hとしたので、本発明に係るHMTを、トラクタに搭載して利用した場合には、トラクタでの作業では土起こしを行うプラウ作業速度域が略4〜12km/hの範囲内であるため、もっとも作業頻度の高いプラウ作業速度域に高効率な速度域を合致させることで、さらなる低燃費化が図れるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるHMTのスケルトン図である。
【図2】 HST及びミッション(前部)の断面展開図である。
【図3】 ミッション(後部)の断面展開図である。
【図4】 HSTモード及びHMTモードにおけるポンプ吐出量と合成出力回転数との関係を表す図である。
【図5】 HMT走行による駆動効率を示す図である。
【符号の説明】
10 遊星歯車機構
13 油圧クラッチ
14 油圧クラッチ
21 HST
25 入力軸
26 モータ出力軸
27 合成出力軸
Claims (2)
- エンジン(20)からの動力を、油圧ポンプ(22)と油圧モータ(23)により構成したHST(21)と遊星歯車機構(10)に伝え、該HST(21)の出力部と、該遊星歯車機構(10)との間に油圧式切換クラッチ(13・14)を配置する油圧−機械式変速装置において、該遊星歯車機構(10)は、サンギヤ(1)、プラネタリーギヤ(2)、出力ギヤ(3)、キャリヤ(4・5)より構成し、前記油圧モータ(23)のモータ出力軸(26)には、前記油圧式切換クラッチ(13・14)の2つのギヤ(11・12)を遊嵌し、該エンジン(20)の回転出力は、エンジン(20)からの入力軸(25)に対して相対回転不能に挿嵌されたサンギヤ(1)を駆動し、該サンギヤ(1)をプラネタリーギヤ(2)を構成する2つのギヤ(2a・2b)の内の一方のギヤ(2a)と噛合し、他方のギヤ(2b)を前記出力ギヤ(3)に噛合し、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)を、該入力軸(25)上に遊嵌されたキャリヤ(4・5)の間で回転自在に支持し、該キャリヤ(4・5)と一体となって公転させ、該キャリア(5)にはキャリアギヤ(6)を固設し、該キャリアギヤ(6)は前記モータ出力軸(26)上のギヤ(11)と噛合し、前記遊星歯車機構(10)の出力ギヤ(3)は入力軸(25)上に遊嵌されたパイプ軸(7)の前端部に固設し、該パイプ軸(7)の後端にギヤ(8)を固設し、HSTモードの駆動系においては、前記油圧式切換クラッチ(13・14)のうち切換クラッチ(14)のみを接続し、前記ギヤ(12)のみを駆動し、該モータ出力軸(26)と平行に配設された合成出力軸(27)のギヤ(15)が、前記モータ出力軸(26)のギヤ(12)と噛合し、該モータ出力軸(26)の回転出力を合成出力軸(27)に伝達し、HMTモードの駆動系においては切換クラッチ(13)を接続し、前記モータ出力軸(26)の回転出力はギヤ(12)には伝達されずにギヤ(11)のみを駆動し、該ギヤ(11)は前記キャリアギヤ(6)と噛合して回転をキャリア(5)に伝達し、前記入力軸(25)のサンギヤ(1)により、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)が自転し、キャリア(5)と一体となって公転し、該入力軸(25)の回転出力と、モータ出力軸(26)の回転出力を合成し、前記パイプ軸(7)のギヤ(8)より前記合成出力軸(27)上のギヤ(16)に伝達し、HSTモードにおける伝達系においては、該モータ出力軸(26)の回転出力を直接に合成出力軸(27)に伝達するが、この場合にも、合成出力軸(27)のギヤ(16)は、逆にギヤ(8)を介して前記パイプ軸(7)を駆動し、該パイプ軸(7)よりプラネタリアギヤ(2a・2b)を駆動し、一方、前記エンジン(20)の入力軸(25)によりサンギヤ(1)、ギヤ(2a)を介してプラネタリアギヤ(2a・2b)を回転駆動しており、前記プラネタリアギヤ(2a・2b)は入力軸(25)側からと、モータ出力軸(26)側からの回転駆動を受ける為、これらの回転数差を吸収すべくキャリヤ(4・5)とキャリアギヤ(6)が回転されており、該キャリアギヤ(6)よりギヤ(11)が回転し、前記HSTモードとHMTモードの切換えにおいて、2つの油圧式切換クラッチ(13・14)が駆動するギヤ(11)とギヤ(12)回転が、略一致するモータ出力軸(26)回転数となった時点で切換えを行うよう制御することを特徴とする油圧−機械式変速装置。
- 請求項1記載の油圧−機械式変速装置において、前記油圧式切換クラッチ(13・14)の切換により、機体の中速域以上はHMTモードで出力すべく制御し、該HMTモードにおいて該モータ出力軸(26)の回転が0となり停止するときの機体の走行速度を4〜12km/hとしたことを特徴とする油圧−機械式変速装置。
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