JP4156894B2 - 高耐熱性ポリエチレン微多孔膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電池用セパレーターに適したポリエチレン微多孔膜、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン微多孔膜は精密濾過膜、電池用セパレーター、コンデンサー用セパレーター、等に使用されている。これらのうち電池用セパレーター、特にリチウムイオン電池用セパレーターとして使用する際には微多孔膜の機械強度や透過性等の一般的特性に加えて、電池内部が過熱した際にセパレーターが溶融して電極を覆う皮膜となり、電流を遮断する事によって電池の安全性を確保するという「ヒューズ効果」が求められている。
【0003】
ポリエチレン微多孔膜の場合には、ヒューズ効果が発現する温度すなわちヒューズ温度は概ね130〜150℃であることが知られており、何らかの理由で電池内部が過熱してもヒューズ温度に達した時点で前記微多孔膜が溶融して電極を皮膜となって覆うので電流が遮断され、電池反応が停止する。ところが温度上昇が極めて急激な場合には、ヒューズ後もさらに電池温度が上昇するために前記皮膜が破れて電流が復帰(ショート)し、電池の安全性を維持することが困難となる。したがって、このような過酷な条件下でも電池の安全性を維持できるような高い耐熱性を持ったポリエチレン微多孔膜の開発が課題とされていた。高い耐熱性を付与する手段として、ポリエチレン微多孔膜を架橋することによって溶融時の機械強度を向上させる方法が開示されている。
【0004】
特許文献1には、ポリオレフィン製のシートを架橋した後に、ポリオレフィンの良溶媒に浸漬してシートを膨潤させ、収縮を防止するか延伸することによって微多孔膜を製造する方法が開示されている。かかる方法では、シートを架橋してから膨潤するため、高いゲル分率のシートを膨潤することが不可能となり、ゲル分率70wt%以上の高い耐熱性を有する微多孔膜が得られないという本質的な問題点があった。また架橋後に膨潤、延伸する工程は、架橋で固定された分子鎖を無理矢理に引き延ばすこととなり、微多孔膜を融点付近の温度に保った場合、引き延ばされた分子鎖が架橋前の状態に戻ろうとするために大きな収縮応力が発生し熱収縮が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、ポリオレフィン製のシートを作成した後、第1の製法ではポリオレフィン製シートを架橋した後に延伸して得られたフィルムを、ポリオレフィンの良溶媒に浸漬してフィルムを膨潤させることによってポリオレフィン微多孔膜を得る方法、または第2の製法として、ポリオレフィンシートを延伸して得られるフィルムを架橋した後に、ポリオレフィンの良溶媒に浸漬してフィルムを膨潤させることによってポリオレフィン微多孔膜を得る方法が開示されている。かかる発明の第1の製法では架橋したシートを延伸しているため、引き延ばされた分子鎖が架橋前の状態に戻る収縮応力が働き、良溶媒で膨潤する時に破膜しやすくなり、微多孔膜としても熱収縮が大きくなるという問題点があった。また、第2の製法では延伸した後に架橋しているが、架橋後に膨潤しているために熱収縮が大きくなる。さらに、ゲル分率が高いフィルムは膨潤が不可能となるため、当該技術ではゲル分率70wt%以上の高い耐熱性を有する微多孔膜が得られないという本質的な問題点があった。
【0006】
一方、本出願人は特許文献3、特許文献4において、高強度かつ耐熱性に優れたポリエチレン微多孔膜を提供する方法を開示した。かかる方法によれば、可塑剤を抽出除去した微多孔膜に対して架橋を施しているため、架橋点は分子の収縮を抑える方向に働き、熱収縮が小さくなるという特徴があった。さらにある範囲の孔径を有する膜に対して架橋を施すことで、鋭敏なヒューズ効果をも有していた。一般に電離放射線によって架橋構造を形成した場合、架橋反応しなかった残存ラジカルが分子鎖を切断することによって経時的な微多孔膜の劣化を引き起こすことが知られており、残存ラジカルによる経時的な劣化のない微多孔膜の開発が望まれていた。
【0007】
特許文献5、特許文献6において、可塑剤抽出後の微多孔膜に架橋構造を形成させた後に、100℃以下で窒素または酸素存在下において残存ラジカルが消失するまで放置する方法が開示されている。かかる方法によれば、電子スピン共鳴装置(ESR)の測定限界までラジカルを消失させることができるが、完全なラジカル消失には至っていないため、例えば溶融強度等に経時劣化が生じるという問題点がある。また、ラジカル消失には架橋後の膜を長時間放置する必要があるため生産性が良くないという問題点があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−329823号公報、
【特許文献2】
特開平7−70354号公報、
【特許文献3】
WO96/27633号公報、
【特許文献4】
特開平10−7831号公報、
【特許文献5】
特開平11−302434号公報、
【特許文献6】
特開平11−302435号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題点を解決し、残存ラジカルによる経時劣化問題が無く、かつ機械強度、透過性に優れた高耐熱性ポリエチレン微多孔膜、及び生産性に優れた該微多孔膜の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、抽出前の膜に対して架橋処理を施し、所定の温度にて加熱処理を施すことにより、驚くべき事に従来技術では不可能であった、機械強度と透過性を低下させることなく経時的な強度劣化を無くすことが可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
[1](1)ポリエチレンと、少なくとも1成分の可塑剤からなるゲル状延伸膜を作成する工程、(2)該ゲル状延伸膜に少なくとも1回の電離放射線照射による架橋処理を施す工程、(3)該架橋処理膜を125℃以上の温度で加熱処理する工程、(4)該加熱処理膜に含まれる可塑剤を抽出除去する工程、をこの順で有することを特徴とするポリエチレン微多孔膜の製造方法、
【0011】
[2] 架橋処理が電子線照射であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン微多孔膜の製造方法、である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のポリエチレン微多孔膜について説明する。
ポリエチレン微多孔膜の膜厚は1〜500μmが好ましく、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜50μmである。膜厚が1μm未満ではその機械強度が十分ではなく、500μmより大きいと電池の小型軽量化に支障が生じる。
【0013】
ポリエチレン微多孔膜の気孔率は20〜80%であり、好ましくは30〜60%である。気孔率が20〜80%の範囲であれば、十分な透過性と十分な機械強度と有する微多孔膜が得られる。
ポリエチレン微多孔膜の25μm換算透気度は、2000秒/100cc/25μm以下が好ましい。25μm換算透気度とは、JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計で得られる値に25(μm)/膜厚(μm)を乗じた値である。25μ換算透気度が2000秒/100cc/25μm以下であれば、電池用セパレーターとして十分な透過性が得られる。
【0014】
ポリエチレン微多孔膜の平均孔径は、後述する測定方法で0.001〜0.2μmであり、好ましくは0.005〜0.1μm、より好ましくは0.01〜0.05μmである。平均孔径が0.001μmより小さいと透過性が充分ではなく、平均孔径が0.2μmより大きいとヒューズ効果が緩慢になる。
架橋構造の確認方法は、特に限定されないが、例えば160℃の溶融状態における引張試験によって、架橋点間分子量を測定することで確認することができる(特許文献4参照)。
【0015】
ポリエチレン微多孔膜のゲル分率は1%以上であり、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは40%以上である。ゲル分率が1%未満は、微多孔膜の溶融時の強度発現の観点から好ましくない。ゲル分率の上限については特に限定はないが、例えば電子線照射による架橋の場合、過度の照射は微多孔膜の強度低下を招く恐れがあるため概ね80%を目安としてその架橋構造をコントロールすることが好ましい。
【0016】
ポリエチレン微多孔膜の溶融突き刺し強度は0.01N以上であり、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.2N以上、さらに好ましくは0.4N以上である。高い耐熱性を発現するために0.01N以上が好ましい。
ポリエチレン微多孔膜の溶融突き刺し強度保持率は、40%以上であることが必要であり、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。経時劣化により、溶融突き刺し強度保持率が40%以下では、電池の使用状況によっては十分な安全性を保つことができない。
【0017】
ポリエチレン微多孔膜の常温突き刺し強度は3N/25μm以上が好ましく、より好ましくは4N/25μm以上、さらに好ましくは4.5N/25μm以上、さらにより好ましくは5N/25μm以上である。常温突き刺し強度が3N/25μm以上であれば脱落した活物質等によってセパレーターが短絡することがない。
ポリエチレン微多孔膜の収縮残存率は15%以上が好ましく、より好ましくは18%以上、さらに好ましくは20%以上、さらにより好ましくは22%以上である。収縮残存率が15%以上であれば、ポリエチレン微多孔膜が溶融した時の収縮が小さくなるため、電池用セパレーターとして使用した場合にショートしにくくなるため電池の安全性向上につながる。
【0018】
次に本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法について説明する。
本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法は、(1)ゲル状延伸膜を作成する工程(以下、ゲル状延伸膜作成工程と称す。)(2)該ゲル状延伸膜に少なくとも1回の架橋処理を施す工程(以下、架橋工程と称す。)、(3)該架橋処理膜を110℃以上の温度で加熱処理する工程(以下、ラジカル失活工程と称す。)、(4)該加熱処理膜に含まれる可塑剤を抽出除去する工程(以下、抽出工程と称す。)に分けることができる。ここで、ゲル状とはポリエチレンと、少なくとも1成分の可塑剤からなる組成物を指している。ゲル状延伸膜とは、ポリエチレンの分子鎖が少なくとも1軸方向に配向した状態にあるゲル状組成物を指す。
【0019】
(ゲル状延伸膜作成工程)
ゲル状延伸膜を作成する方法は特に限定されないが、例えばポリエチレンと可塑剤を溶融混練した後に冷却固化させたシートを少なくとも1軸方向に延伸する方法、またはポリエチレンシートを少なくとも1軸方向に延伸した後、該延伸膜を可塑剤で膨潤させる方法等が利用できる。
使用するポリエチレンはエチレンを主体とした結晶性の重合体である高密度ポリエチレンもしくはエチレンとα−オレフィンとの共重合体が好ましく、さらにこれらにポリプロピレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンラバー(EPR)等のポリオレフィンを30wt%以下の割合でブレンドしたものでも差し支えない。
【0020】
ポリエチレンの重量平均分子量は10万以上が好ましく、より好ましくは20万以上1000万以下の範囲である。ブレンドや多段重合等の手段によって使用するポリマーの重量平均分子量を好ましい範囲に調節しても差し支えない。
ゲル状組成物を作成する際に使用する可塑剤とは、ポリエチレンに対して膨潤性のある液体であり、例えば流動パラフィンなどの炭化水素、低級脂肪族アルコール、低級脂肪族ケトン、窒素含有機化合物、エーテル、グリコール、低級脂肪族エステル、シリコンオイルなどであり、これらを単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0021】
(架橋工程)
架橋工程としては、ゲル状延伸膜に対して少なくとも一回の架橋処理を施すことができる。架橋処理の方法としては、紫外線や電子線、ガンマ線に代表される電離放射線照射が挙げられるが、このうち電子線照射による方法が好ましい。
電子線照射を行うときの線量は、1〜200Mradが好ましく、より好ましくは2Mrad〜100Mrad、特に好ましくは5Mrad〜50Mradである。線量が小さすぎると十分な架橋密度が得られず、線量が大きすぎると微多孔膜が劣化して機械強度が低下する場合がある。
【0022】
一般に電子線照射によってポリエチレン微多孔膜に架橋を施す場合、電子線照射時の温度が高いほど架橋効率が高くなり、前記したような劣化、すなわち架橋と同時に起こる分子鎖切断による瞬時強度低下等が少なくなることが知られている。しかしながら、このような高温で照射を行うと劣化ではなくポリエチレン微多孔膜の溶融のために透過性や機械強度が損なわれる事があるため、十分な高温で電子線照射を行うには大きな困難があった。本発明が従来技術と大きく異なる特徴の一つは、気孔を有する通常のポリエチレン微多孔膜ではなく、気孔(あるいはその前駆体構造)が可塑剤等で充填され、かつ、延伸配向された「ゲル状延伸膜」を電子線照射の対象とする点にあり、例えば気孔(あるいはその前駆体構造)を有する通常のポリエチレン微多孔膜では透過性の低下等を誘発するような高温(例えばヒューズ温度近辺やそれ以上の高温)においても前記トレードオフを危惧することなく電子線照射を行うことが可能であり、より高い架橋効率を達成する事が出来る。したがって、従来技術よりも高透過性でかつ高強度なポリエチレン微多孔膜を製造することが可能である。
【0023】
前記観点より、照射時の温度は特に制限されないが、例えば室温以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、110℃以上がより更に好ましい。
照射雰囲気は特に制限されないが、瞬時強度低下を少なくするため例えば酸素濃度100ppm以下の窒素雰囲気で行うことが好ましい。なお、本発明のゲル状延伸膜は気孔(あるいはその前駆体構造)が可塑剤等で充填されているため、ポリエチレン微多孔膜に照射する従来技術と比較して同じ照射雰囲気であっても酸素との接触確率が大幅に低いという利点を有する。
照射時の加速電圧も特に制限されないが、たとえば膜厚30μm程度の微多孔膜に照射を行う場合は、200kV程度の加速電圧で良好に架橋処理を行うことができる。
【0024】
(ラジカル失活工程)
架橋処理後のゲル状延伸膜に残存しているラジカルを失活させるために、架橋処理後のゲル状延伸膜を、少なくとも1軸方向に拘束した状態で加熱処理する。架橋工程と同様に、例えば従来技術においてポリエチレン微多孔膜にあえて高温での加熱処理を行った場合、ポリエチレン微多孔膜の溶融のために透過性や機械強度が損なわれる事があった。一方、本発明はゲル状延伸膜に対して加熱処理を行うために透過性の低下等を危惧することなく十分な高温での加熱処理を行うことが出来る。ただし、本発明は溶融による透過性の低下については効果的に防止するものの、高温での配向緩和による機械強度の低下についてはこの限りではないため、加熱処理の上限温度および時間については機械強度と溶融突き刺し強度保持率を参照しながら調整することが望ましい。
【0025】
加熱処理の温度は、110℃以上で、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは130℃以上である。より具体的に加熱処理の温度範囲としては、好ましくは120℃以上200℃以下、より好ましくは125℃以上160℃以下である。また、ゲル状延伸膜の架橋工程中にラジカル失活工程を行うことも可能である。
加熱処理の時間は、1秒以上10分以下が好ましく、5秒以上5分以下がより好ましく、10秒以上3分以下が更に好ましく、20秒以上1分以下がより更に好ましい。加熱温度が110℃未満でも10分以上の加熱処理を行うことによってラジカルを失活させることができる場合があるが、10分以上の加熱処理時間は生産性の観点から好ましくない。
【0026】
(抽出工程)
抽出方法としては特に限定されないが、可塑剤としてパラフィン油やジオクチルフタレートを使用する場合には塩化メチレンやメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶媒で抽出したあと、得られた微多孔膜のヒューズ温度以下で加熱乾燥することによって除去することができる。また、可塑剤にデカリン等の低沸点化合物を使用する場合は微多孔膜を加熱乾燥するだけで除去することが可能である。いずれの場合も膜の収縮による物性低下を防ぐため、膜を拘束することが好ましい。以上の製法によって得られたポリエチレン微多孔膜は、寸法安定性を高めるため必要に応じて熱処理に供してもよい。
【0027】
以下、本発明を実施の形態に基づいてさらに詳細に説明する。実施例において示す試験方法は次の通りである。
(1)膜厚(μm)
デジタル定圧厚さ測定器(東洋精機製:形式B−1、測定子径φ5mm、測定圧62.4kPa)にて測定した。
(2)気孔率(%)
20cm角のサンプルを微多孔膜から切り取り、その体積と重量を求め、得られた結果から次式を用いて計算した。
気孔率(%)=100×(体積(cm3) −重量(g) /0.95)/体積(cm3)
【0028】
(3)平均孔径(μm)
微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定して、次式より平均孔径d(μm)を求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
ここで、ν:空気の分子速度(m/sec)、Rliq:水の透過速度定数(m3/(m2・sec・Pa))、Rgas:空気の透過速度定数(m3/(m2・sec・Pa))、η:水の粘度(Pa・sec)、Ps:標準圧力(=101325Pa)である。
(4)透気度(秒/100cc/25μm)
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製:型式G−B2C)で得た値に25(μm)/膜厚(μm)を乗じて求めた。
【0029】
(5)ゲル分率(%)
ASTM D2765に基づき、微多孔膜の沸騰パラキシレン中での12時間可溶分抽出後の重量変化より、抽出前の試料の質量に対する抽出後の残存質量の比として次式により求めた。
ゲル分率(%)=100×残存質量(g)/試料質量(g)
(6)常温突き刺し強度(N)
測定温度25℃において、カトーテック製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/secの条件で突き刺し試験を行い、最大突き刺し荷重を突き刺し強度(N)とした。突き刺し強度に25(μm)/膜厚(μm)を乗じることによって25μ換算常温突き刺し強度とした。
【0030】
(7)溶融突き刺し強度(N)
ポリエチレン微多孔膜を内径13mm、外径25mmのSUS製ワッシャ2枚の間に挟み込み、周囲をクリップで留めたあとあらかじめ160℃に加熱したシリコンオイル(信越化学工業:KF−96−10CS)中に浸漬し、一分間サンプルを溶融させた後に、シリコンオイル中のサンプルに対して、(5)と同様の方法で溶融突き刺し強度(N)を測定した。溶融突き刺し強度に25(μm)/膜厚(μm)を乗じることによって25μ換算溶融突き刺し強度とした。
(8)溶融突き刺し強度保持率(%)
100気圧での酸素とラジカルとの接触確率が、大気圧に比べて100倍になると仮定して、1000日後の空気中における微多孔膜の経時劣化の指標とした。(高圧空気加速試験)具体的には、耐圧オートクレーブ内に微多孔膜を入れ、圧縮空気で9.8(MPa)に加圧し、25℃で10日間保管した後に、微多孔膜の溶融突き刺し強度を測定した。
【0031】
(9)収縮残存率
内径54mm、外径86mm、厚さ2mmの円形の金枠2枚の間にフッ素ゴム2枚を介して微多孔膜のサンプルを挟み込み、周囲をクリップで固定した。この状態の膜を160℃のシリコンオイル(信越化学工業:KF-96-10CS)に1分間浸漬して熱処理を行い、未架橋部分の配向を除去した。次に金枠の内径に沿ってサンプルを切り出し、改めて160℃のシリコンオイルに1分間浸漬し、このときのサンプルの収縮残存率を、サンプルの長径aと短径bから次式より計算した。
収縮残存率(%)=(ab/542 )×100
(10)吸収線量
電子線照射装置内の照射位置において、フィルム線量計にて測定した線量を被照射試料の吸収線量とした。
【0032】
【実施例1】
重量平均分子量28万の高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm3)38.25重量部、重量平均分子量35万のポリエチレン(密度0.92g/cm3)6.75重量部、パラフィン油(松村石油研究所:P350P)55重量部を35mmの2軸押出機を用いて200℃で溶融混練し、ハンガーコートダイから30℃に温度調整した冷却ロール上にキャストして厚さ1800μmのゲル状シートを作成した。このシートを連続式の同時2軸延伸機を用いて7X7倍に延伸することによってゲル状延伸膜を作成した。次に該ゲル状延伸膜を金枠に拘束し、バッチ式の電子線照射装置を用いて加速電圧250kV、25℃にて架橋処理を行ったあと130℃に温調したオーブンに投入して30秒間加熱し、ラジカル失活処理を行った。次に膜を金枠で拘束した状態で塩化メチレンでパラフィン油を抽出除去し、ポリエチレン微多孔膜を作成した。
【0033】
【実施例2】
粘度平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン(密度0.94g/cm3)5.5重量部、重量平均分子量が28万の高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm3)24.5重量部、パラフィン油(松村石油研究所:P350P)70重量部、ポリエチレン100重量部あたり0.375重量部の酸化防止剤を35mmの二軸押出機を用いて200℃で溶融混練し、ハンガーコートダイから30℃に温度調整した冷却ロール上にキャストして厚さ1200μmのゲル状シートを作成した。このシートを連続式の同時2軸延伸機を用いて7×7倍に延伸することによってゲル状延伸膜を作成した。次に該ゲル状延伸膜を連続式の電子線照射装置を用いて加速電圧120kV、110℃、ライン速度6m/minにて架橋処理を行った。次に連続式のテンター延伸機をもちいて、温度130℃、ライン速度9m/minで30秒間加熱し、ラジカル失活処理を行った後、塩化メチレンでパラフィン油を抽出除去し、ポリエチレン微多孔膜を作成した。
【0034】
【比較例1】
実施例1において架橋処理後にラジカル失活処理を行わずにポリエチレン微多孔膜を作成した。
【0035】
【比較例2】
実施例1と同様の方法でゲル状延伸膜を作成した後、金枠に拘束した状態で塩化メチレンでパラフィン油を抽出除去した後に、バッチ式の電子線照射装置を用いて加速電圧250kV、25℃にて架橋処理を行った。次に金枠に拘束した状態で130℃に温調したオーブンに30秒間投入したところ、膜が溶融して透気性が失われたため気孔率等の物性が測定できなかった。
このように作成された微多孔膜を用いて上記の試験方法で試験した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明に係るポリエチレン微多孔膜は高い機械強度と耐熱性を有し、かつ残存ラジカルによる経時劣化がまったく無いために、特に電池用セパレーターとして使用する事により従来よりもさらに電池の安全性を高めることが可能となる。
Claims (2)
- (1)ポリエチレンと、少なくとも1成分の可塑剤からなるゲル状延伸膜を作成する工程、
(2)該ゲル状延伸膜に少なくとも1回の電離放射線照射による架橋処理を施す工程、
(3)該架橋処理膜を125℃以上の温度で加熱処理する工程、
(4)該加熱処理膜に含まれる可塑剤を抽出除去する工程、
をこの順で有することを特徴とするポリエチレン微多孔膜の製造方法。 - 架橋処理が電子線照射であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン微多孔膜の製造方法。
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