JP4156440B2 - 射出成形金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の製品を成形可能な射出成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の射出成形金型は、成形金型の一面当たりの製品の取数をできるだけ多くすることで、成形の効率を高めている。このため、複数の製品を成形する場合には、可動型と固定型との合わせ面に複数の製品に対応したキャビティを設けて成形する。この射出成形金型の場合、各キャビティに共通のスプルーからランナーが分岐されており、スプルーから射出された溶融樹脂がスプルー、ランナー及びゲートを介して各キャビティに充填される。例えば、図8に示すように、隣合う2つのキャビティを備える射出成形金型40においては、一般に、ランナー41はスプルー42からゲート43まで直線状の部分により形成されてT字状をなしている。なお、図8ではすでにキャビティにおいて製品として後述するマッドガード30が成形された状態を示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、成形後の製品をキャビティから取り出す場合、その取り出し方向の制約を受ける場合がある。このような製品として例えば、図7に示すような形状のマッドガードが挙げられる。このマッドガード30は、その縁部に車体の一部に外嵌するための凹状部31を備えている。凹状部31の一端部には袋形状をなす袋状部32を備えている。この袋状部32も含め、凹状部31は射出成形金型を構成する中子44(図8参照)により形成され、中子44は袋状部32に対応する凸部を有している。このため、袋状部32と中子44とが互いに係合する関係にありマッドガード30を中子44から取り外す際にその取り出し方向が制約される。
【0004】
このため、図8においてはマッドガード30の取り出し方向が実線の矢印で示す方向に制約される。この場合、ランナー41がT字状であるためこのランナー41によって成形されたランナー成形部45も同じくT字状である。このため、ランナー成形部45がマッドガード30に繋がった状態で各マッドガード30を取り出そうとしても、ランナー成形部45を互いに引っ張り合うことになり、マッドガード30を取り出すことができない。このため、ゲート43の部分で成形されたゲート成形部46をカットした後に各マッドガード30ごとに取り出すことになる。
【0005】
ところが、マッドガード30をキャビティから取り出す前にゲート成形部46をカットすると、多くの場合きれいにカットすることができず、カットした後に仕上げ処理が必要になる。このため、成形作業の効率が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであって、その目的は、成形する製品の形状に関わらず、キャビティから製品を容易に取り出すことが可能で、成形作業を効率よく行うことができ、成形サイクルを短縮することができる射出成形金型を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、隣合うキャビティに対して共通のスプルーから分岐したランナーを介して溶融樹脂が射出されて、アンダーカットを構成する凹状部を持つキャビティ形状の製品が成形されるようにした固定型と可動型よりな射出成形金型において、前記可動型は第1の可動型と中子としての第2の可動型とを備え、その第2の可動型は前記製品の凹状部を成形する部分を有し且つ型開き時に成形品と共に前記第1の可動型より突き出され、前記ランナー及びゲートは前記固定型と可動型との合わせ面において形成され、前記ゲートはキャビティを挟んで第2の可動型の反対側に位置し、前記ランナーは第1の可動型と第2の可動型とにまたがってスプルー部を頂点とする湾曲状部または屈曲状部を有することを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、湾曲状または屈曲状のランナーにおいて、同形状のランナー成形部が成形される。このため、キャビティにおいて成形された製品がキャビティから取り外される際、湾曲状や屈曲状のランナー成形部が両端の間隔を変更させることで製品の向きをかえることができ、前述した凹凸の係合関係が製品と射出成形金型との間に存在しても、製品の取り出しを可能とする。つまり、製品の形状に関わらず、製品をランナー成形部等と共に容易に取り出すことが可能となる。このため、従来とは異なり、ゲートにおいて成形されたゲート成形部をカットしてから各製品を取り出す必要がなくなる。従って、ゲート成形部をカットした箇所における製品の仕上げ処理等の工程が必要なく、成形作業が効率よく行われ、従来に比べて成形サイクルを短縮することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をマッドガードを成形可能な射出成形金型に具体化した一実施形態を図1〜図4を参照して説明する。また、マッドガードについては図7を参照にして説明する。
【0011】
図2に示すように、射出成形金型10は、固定型11と可動型12とを備えている。固定型11及び可動型12は、密着した状態でその合わせ面において一対のマッドガード30(図7参照)に対応した2つの隣合うキャビティ13を形成する。
【0012】
可動型12は第1の可動型12a及び中子としての第2の可動型12bとを備えている。第1の可動型12aは、キャビティ13のうちマッドガード30における一方の表面部を成形する部分を構成し、一方、第2の可動型12bは、キャビティ13のうち凹状部31を成形する部分を構成する。マッドガード30の他方の表面部は固定型11により成形される。
【0013】
図1及び図2に示すように、固定型11には、溶融樹脂の流路となるスプルー14が形成されている。また、スプルー14からキャビティ13への溶融樹脂の流路を形成するランナー15及びゲート16は固定型11と可動型12との合わせ面において形成されている。
【0014】
ランナー15は湾曲状に形成されており、第1の可動型12aと第2の可動型12bとにまたがってU字状部15aを備えている。また、ランナー15は、角がない曲線形状で構成されている。スプルー14は、U字状部15aの中心部(頂点部)に位置している。このため、スプルー14を境にした両キャビティ13側においてランナー15は対称となっている。ゲート16は、サイドゲート方式が採用されており、キャビティ13を挟んで第2の可動型12bの反対側の位置にゲート16が設けられている。
【0015】
次に、本実施形態に係る射出成形金型を用いたマッドガードの製造方法について説明する。
図2に示すように、まず、固定型11と可動型12とが密着した状態の射出成形金型10にスプルー14から図示しない射出機により溶融樹脂が射出される。スプルー14から射出された樹脂は、ランナー15及びゲート16を通ってキャビティ13に充填される。これにより、キャビティ13においてマッドガード30が成形されるとともに、スプルー14、ランナー15及びゲート16においてスプルー成形部17、ランナー成形部18及びゲート成形部19が成形される。ランナー成形部18は、ランナー15の形状と同形状で、U字状部18aを備える湾曲状に形成される。
【0016】
次に、成形されたマッドガード30を取り出すために、図示しない駆動手段の駆動によって可動型12が退避させられ、固定型11と可動型12とが離れる。この際、成形されたマッドガード30及びランナー成形部18は図1に示すように可動型12に付着した状態にある。そして、図示しない駆動手段により第2の可動型12bが押し出され、図3に示すように第1の可動型12aから第2の可動型12bが突出し、マッドガード30の取り出しが可能な状態となる。
【0017】
次に、第2の可動型12bから一対のマッドガード30を取り出すが、上記のようにマッドガード30の形状は凹状部31を備え、さらには、凹状部31の先端において袋状部32を備える形状である。このため、第2の可動型12bから図1における下方側へ向かって取り外そうとしても、袋状部32とその袋状部32を成形する第2の可動型12bの凸部とが係合しているため取り外すことができない。また、無理に取り外そうとするとマッドガード30を破損する虞がある。このため、マッドガード30を破損することなく取り出すには同図に実線の矢印で示す斜め外側の方向に向かって取り出すことになる。
【0018】
この際、ランナー成形部18等が繋がったままの状態で取り外すわけであるが、従来のような直線状のランナー成形部の場合、マッドガード30を上記矢印の方向に取り外そうとするとその直線状のランナー成形部を製品であるマッドガード30が引っ張り合ってしまう。このため、いずれのマッドガード30も取り出すことができない。しかし、本実施形態では、ランナー成形部18がU字状部18aを備えるため、図4に示すようにU字状部18aが拡がるようにして、ランナー成形部18の両端の間隔を拡げながらマッドガード30を取り出すことができる。そして、取り出した後にゲート成形部19においてカットして最終的な製品としてのマッドガード30が完成する。
【0019】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)射出成形金型10には、U字状部15aを備えた湾曲状のランナー15が形成されている。そして、そのランナー15において同じくU字状部18aを備えた湾曲状のランナー成形部18が成形される。このため、成形されたマッドガード30がキャビティ13から取り外される際、湾曲状のランナー成形部18が両端の間隔を拡げることでマッドガード30の向きをかえることができ、マッドガード30の袋状部32と第2の可動型12bとの間に係合関係が存在しても、マッドガード30の取り外しを可能とする。このため、従来とは異なり、ゲート16において成形されたゲート成形部19をカットしてから各マッドガード30を取り出す必要がなくなる。従って、ゲート成形部19をカットした箇所におけるマッドガード30の仕上げ処理等の工程が必要なくなり、従来に比べて成形サイクルを短縮することができる。
【0020】
(2)スプルー14がランナー15の中心部(頂点部)に設けられており、スプルー14を境にした両キャビティ13側におけるランナー15の形状が左右対称である。このため、キャビティ13に同時に溶融樹脂を充填する機能を備えるとともに、ランナー15を固定型11や可動型12に刻設等により形成することが容易である。
【0021】
(3)溶融樹脂の流路であるランナー15は曲線形状からなる。このため、溶融樹脂を充填させる際、その溶融樹脂がランナー15をスムーズに流れる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0022】
○ ランナー15は、U字状部15aを備える形状であったが、湾曲状または屈曲状に形成されているならば特にその形状については限定されない。例えば、図5に示すようにV字状部20を備えるランナー15や図6に示すコ字状部21を備えるランナー15であってもよい。これらの場合も成形されたランナー成形部は両端の間隔を変更することができるため、係合関係が存在するような場合であっても製品の取り外しを可能とし、上記実施形態と同じく成形サイクルを短縮することができる。
【0023】
○ 上記実施形態では、ランナー成形部18が両端の間隔を拡げることで成形された製品の取り外しを可能にしていたが、成形された製品の凹凸形状や凹凸の位置等の係合関係によっては両端の間隔を狭めることで製品の取り出しが行われてもよい。
【0024】
○ スプルー14はランナー15が備えるU字状部15aの中心部(頂点部)に位置する構成に限らない。例えば、図1におけるスプルー14の位置よりも上部の位置にスプルーを設け、該位置からU字状部15aに繋がるスプルーであってもよく、特にスプルーの位置については限定されない。ただし、スプルーから各キャビティ13までの距離が同じであることが好ましい。
【0026】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記ランナーは前記スプルーを境にした両キャビティ側において対称に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形金型。
【0027】
(2)前記ランナーは曲線形状からなることを特徴とする請求項1及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の射出成形金型
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、成形する製品の形状に関わらず、キャビティから製品を容易に取り出すことが可能で、成形作業を効率よく行うことができ、成形サイクルを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マッドガードが成形された可動型の模式平面図。
【図2】図1のA−A線における射出成形金型の模式断面図。
【図3】製品を取り出す際の射出成形金型の模式断面図。
【図4】製品の取り外しを示す説明図。
【図5】別例における射出成形金型の模式平面図。
【図6】別例における射出成形金型の模式平面図。
【図7】マッドガードの模式斜視図。
【図8】従来の射出成形金型を示す模式平面図。
【符号の説明】
10…射出成形金型、12b…中子としての第2の可動型、13…キャビティ、14…スプルー、15…ランナー、15a…U字状部、18…ランナー成形部、30…製品としてのマッドガード。

Claims (1)

  1. 隣合うキャビティに対して共通のスプルーから分岐したランナーを介して溶融樹脂が射出されて、アンダーカットを有する凹状部を持つキャビティ形状の製品が成形されるようにした固定型と可動型よりなる射出成形金型において、
    前記可動型は第1の可動型と中子としての第2の可動型とを備え、その第2の可動型は前記製品の凹状部を成形する部分を有し且つ型開き時に成形品と共に前記第1の可動型より突き出され、前記ランナー及びゲートは前記固定型と可動型との合わせ面において形成され、前記ゲートはキャビティを挟んで第2の可動型の反対側に位置し、前記ランナーは第1の可動型と第2の可動型とにまたがってスプルー部を頂点とする湾曲状部または屈曲状部を有することを特徴とする射出成形金型。
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