JP4155880B2 - 埋設型枠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、埋設型枠工法に用いられる埋設型枠に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、埋設型枠工法には、合板、メタルフォーム、コンクリートパネル等の埋設型枠が用いられてきている(例えば、特許文献1)。これらの埋設型枠には、埋設型枠背面側からの土砂荷重に充分耐えられる耐力が必要とされている。このためコンクリートパネル製の埋設型枠は、鉄筋を配したり、パネルを肉厚にしたりして、重たくなっていて、機械で施工されている。
【0003】
パネル同士の連結や、パネルと支持用枠体(フレーム)の連結にボルトナット等の連結具が用いられ、また、均一勾配や均一面を得る為に極めて正確な墨出しが必要等、作業自体が複雑・煩雑化してきている。
【0004】
近年、熟年労働者の減少や若手労働力の不足といった問題から、施工条件の厳しい山間地等における工事では、種々の合理化が強く求められている。
【0005】
【特許文献】
特開平7−119132
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点について鋭意研究を推し進めていった結果、埋設型枠工法に用いる各部材を軽量化するとともに、各部材同士の連結に連結具を用いずに、簡単容易に組み立てができ、機械施工に頼らず人手で施工できる埋設型枠工法用の埋設型枠を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の埋設型枠によれば、コンクリートパネル、該コンクリートパネルとの押え込み・固定用の凹溝が上面と下面に夫々設けられている水平リブ、該水平リブ同士を拘束するための鋼材とからなること(請求項1)、水平リブ上に設けられたコンクリートパネルとの押え込み・固定用の凹溝形状がくの字状を呈していること(請求項2)、水平リブ上に設けられたコンクリートパネルとの押え込み・固定用のくの字状の凹溝形状が、水平リブの上面と下面とでは凹溝のくの字が逆方向に向いていること(請求項3)、水平リブの両端に夫々、水平リブ同士を拘束するための鋼材用の孔が設けられていること(請求項4)、水平リブの両端に設けられた水平リブ同士を拘束するための鋼材用の孔が、水平リブの一部が埋設型枠の背面側に突出した突起部分に設けられていて、且つ該突起部分同士が該孔に貫入した鋼材によって拘束されること(請求項5)、薄型コンクリートパネルの少なくとも一面が格子状の凸部を有すること(請求項6)、水平リブを拘束するための鋼材が、円形断面のパイプであること(請求項7)を特徴とする。以下、この発明を詳しく説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、埋設型枠工法用の各部材の最大重量が約30Kg以下であることを弟1の特徴とする。本発明の埋設型枠は、コンクリートパネル、水平リブ、水平リブ拘束用鋼材から構成される。コンクリートパネルの最大寸法は約500mm×約690mm×約40mmであり、最大重量は約30Kgである。水平リブの最大寸法は約880mm×約276mm×約100mmであり、最大重量は約30Kgである。水平リブ拘束用鋼材は、円形断面のパイプを使用する場合は、最大寸法はφ約62mm×約584mm、最大重量は約10Kgである。本発明の埋設型枠を構成する各部材の最大重量は約30Kg以下であるため、機械施工を行わずとも人手で容易に施工することができるものである。
【0009】
本発明は、水平リブの上下両面に夫々コンクリートパネル押え込み・固定用の凹溝が設けられていることを第2の特徴とする。押え込み・固定用の該凹溝の設置により、コンクリートパネルの位置決めが容易に行え、該水平リブによって、コンクリートパネルを上下両面から押え込み、固定できるものである。また、連結後のコンクリートパネルの位置ずれが防止できるだけでなく、新たに墨出しを行わなくても次のコンクリートパネルの取り付け位置が定まり、組立てが容易となる。該凹溝構造によりコンクリートパネル同士の連結、および、コンクリートパネルと水平リブとの締結にボルトナット等の金具等を用いる必要がなくなる。コンクリートパネル押え込み・固定用の凹溝が設けられている該水平リブを使用することによって、熟練労働者でなくても容易にコンクリートパネルの位置決めができ、また、金具等による締結等の煩雑な作業をしなくても良い。これによって、作業性の良い効率的な作業が可能となるものである。
【0010】
また、コンクリート該凹溝の形状は直線状であっても良く、または、くの字状であってもよい。但し、該凹溝の形状がくの字状である場合は、くの字状の凸部が水平リブの上下面で逆方向を向いていることがより好ましい。これによって、左右隣合うコンクリートパネルによって形成される接合部分の凸部分が扇形状となり、上下段で該扇形状が千鳥状に形成され、景観的にも優れた効果を与える。
【0011】
本発明は、水平リブの左右両端に夫々突起部が設けられており、水平リブ同士を拘束するための鋼材用の孔が該突起部上に設けられていることを第3の特徴とする。該突起部同士はお互いが該孔に貫入した鋼材によって拘束される様に、該突起部の厚さは水平リブの厚さの半分に設定してある。また、該突起部は水平リブの長軸方向の延長線上にあっても良く、または、垂直方向、即ち埋設型枠の背面側にあっても良い。これによって、コンクリートパネルを押え込み・固定している隣合う水平リブ同士が該突起部上に設けられた孔に貫入した鋼材によって拘束されることができる。
【0012】
本発明は、コンクリートパネルの少なくとも一面に格子状の凸部が設けられていることを第4の特徴とする。該構造によりコンクリートパネルを薄層化しても、該格子状の凸部により、コンクリートパネルの強度的な補強をすることができる。また、該格子状の凸部により景観的な効果をもたらすことができる。尚、本発明では、格子状とは、四角形状だけでなく、菱形形状、三角形状、多角形状、円形状を含むものである。
【0013】
本発明は、組み上げられた埋設型枠のコンクリートパネルによって形成される面(壁面)が複数の凸部分(扇形状)を形成していることを第5の特徴とする。該扇形状は、組み上げられた埋設型枠のコンクリートパネルによって形成される面(壁面)が従来のような平面形状と異なって、応力的に優れている構造である。
【0014】
以下、図面に基づいてさらに説明する。
【0015】
図1は、本発明の埋設型枠を構成する水平リブの一実施形態を示したものである。水平リブの上下両面には夫々コンクリートパネルの押え込み・固定用の凹溝が設けられている。該凹溝は直線状でも良いし、略くの字状でも良い。該凹溝形状が略くの字形状の場合は、水平リブ上下面の略くの字形状の凸部が逆方向がより好ましい。図1は水平リブ上下面の略くの字形状の凸部が逆方向の場合を示している。また、該水平リブの両端には該水平リブ同士を拘束するための突起部が設けられている。該突起部は水平リブの長軸方向の延長線上にあっても良いし、垂直方向、即ち埋設型枠の背面側にあっても良い。該突起部の厚さは、水平リブの厚さの半分の厚さである。該突起部には水平リブ同士を拘束するための鋼材の貫入用の孔が設けられている。図1は該鋼材が円形断面のパイプの場合を示している。
【0016】
図2は、本発明の埋設型枠を構成するコンクリートパネルの一実施形態を示したものである。コンクリートパネルの少なくとも一面に格子状の凸部が設けられている。該凸部は両面に設けても良い。また、図2は格子状として四角形状の場合を示しているが、菱形形状、三角形状、多角形状、円形状であっても良い。
【0017】
図3は、埋設型枠を使用した施工後の一実施形態を示したものである。本発明のコンクリートパネルは、コンクリートパネル押え込み・固定用の溝をその上下両面に有する水平リブによって上下から押え込み・固定し、次に水平リブは、隣合う水平リブ同士が水平リブの両端に設けられた拘束用の突起部上に設けられた水平リブ拘束用の鋼材貫入用の孔に該鋼材を貫入することによって水平リブ同士が拘束されるものである。図1に示した様に水平リブ上下面の略くの字形状の凸部が逆方向の場合、図3に示す様に2枚の左右隣合うコンクリートパネルによって形成される接合部分の凸部分、または接合部分の凹部分(扇形状)が上下の段のそれとは逆方向となり、景観的にも優れた効果をもたらすものである。尚、図3は水平リブ1個上に2枚のコンクリートパネルが装着される場合を示しており、水平リブの全長との兼ね合いによりコンクリートパネルの枚数は任意に設定が可能である。
【0018】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0019】
コンクリートパネルの製造例について説明する。
実施例1
【0020】
実施例2
コンクリートパネルの製造:
上記配合のモルタルを製造し、型枠内に打ち込んだ。充填性、表面状態も良く、脱型後のひび割れもなく、結果は良好であった。
【0021】
コンクリートパネルの曲げ強度試験:
実施例3
実施例2で製造したコンクリートパネルの単体の曲げ試験を実施した。
試験条件
試験方法:1点集中単純曲げ試験
スパン:0.65m
曲げ破壊荷重:1.1tf
破壊モード:圧縮破壊
M=PL/4
=1.1×0.65/4=0.178 t・m
(M:破壊曲げモーメント、P:荷重、L:試験スパン)
【0022】
コンクリートパネルの凹部のせん断強度試験:
実施例4
実施例2で製造したコンクリートパネルの凹部のせん断強度試験を実施した。
試験条件
試験方法:押し抜きせん断試験
載荷面積:16×16cm
破壊荷重:470kgf
破壊モード:押し抜きせん断破壊
τ=P/A
=440/(4×16×1)=7.3 kg/cm2
(τ:せん断応力、P:荷重、A:断面積)
【0023】
FEM弾性解析:
実施例5
図3で示した扇形状の壁面と、平らな壁面とについてFEM弾性解析をおこなった。
解析条件
解析モデル:コンクリートパネルを扇形状に水平リブに差し込むモデル(扇形状モデル、図4参照)、およびコンクリートパネルが平面をなすモデル(平面状モデル、図5)。
コンクリートパネル、および水平リブ:8節点アイソパラメトリック固体要素を用いる。弾性係数35000N/mm2、ポアソン比0.167を与える。
接触面(コンクリートパネルの挿込面):2節点ギャップ要素を用いる。ギャップが閉じていて圧縮に対して抵抗し、引張に対しては抵抗しない特性を与える。実際の部材と解析モデルとの相違点の処理:
コンクリートパネルの厚さを40mmと均等として、形状を単純化する。
水平リブ同士の接合面をなくし、水平リブは一体構造とする。
鋼材は構造体の自重を受け持つことが主たる外力となるものと考え、モデルから削除。
載荷荷重:モデル裏面に対して垂直方向に0.05N/mm2の等分布圧力を与える。
解析プログラム:有限要素法解析プログラムCOMSOM/M Ver.2.7
【0024】
実施例5で行ったFEM解析によって得られた結果を示す。
本解析にて、液圧相当の等分布荷重が作用する場合、コンクリートパネルを扇形状に水平リブに差し込む型枠とコンクリートパネルが平面を成す型枠との力学的挙動について比較を行った結果、扇形状にコンクリートパネルを設置することで、液圧に対する構造的効果があった。
【0025】
【発明の効果】
本発明により、機械を使用せずとも人手で容易・簡単に施工ができるとともに、強度的にも優れた埋設型枠を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る埋設型枠を構成する水平リブの一実施形態を示す上面図、前面図、背面図、下面図、断面図である。
【図2】本発明に係る埋設型枠を構成するコンクリートパネルの一実施形態を示す前面図、背面図、側面図、断面図である。
【図3】本発明に係る埋設型枠を使用した施工後の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】本発明に係る埋設型枠のFEM弾性解析に用いたコンクリートパネルを扇形状に水平リブに差し込むモデル(扇形状モデル)である。
【図5】本発明に係る埋設型枠のFEM弾性解析に用いたコンクリートパネルが平面をなすモデル(平面状モデル)である。
【符号の説明】
1;水平リブ
2;コンクリートパネル嵌合用の溝
3;突起部に設けられた鋼材貫入用の孔
4;コンクリートパネル
5;格子状の凸部
6;水平リブ拘束用の鋼材
Claims (7)
- コンクリートパネル、該コンクリートパネルとの押え込み・固定用の凹溝が上面と下面に夫々設けられている水平リブ、該水平リブ同士を拘束するための鋼材とからなることを特徴とする埋設型枠。
- 水平リブ上に設けられたコンクリートパネルとの押え込み・固定用の凹溝形状がくの字状を呈していることを特徴とする請求項1記載の埋設型枠。
- 水平リブ上に設けられたコンクリートパネルとの押え込み・固定用のくの字状の凹溝形状が、水平リブの上面と下面とでは凹溝のくの字が逆方向に向いていることを特徴とする請求項2記載の埋設型枠。
- 水平リブの両端に夫々、水平リブ同士を拘束するための鋼材用の孔が設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2、及び請求項3記載の埋設型枠。
- 水平リブの両端に設けられた水平リブ同士を拘束するための鋼材用の孔が、水平リブの一部が埋設型枠の背面側に突出した突起部分に設けられていて、且つ該突起部分同士が該孔に貫入した鋼材によって拘束されることを特徴とする請求項4記載の埋設型枠。
- コンクリートパネルの少なくとも一面が格子状の凸部を有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、および請求項5記載の埋設型枠。
- 水平リブを拘束するための鋼材が、円形断面のパイプであることを特徴とする請求項1、及び請求項6記載の埋設型枠。
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