JP4155751B2 - 電動工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、締付けトルクを調整可能なドライバやドライバドリル等の電動工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の電動工具は、締付けトルクを調整するための部材であるクラッチリングが電動工具本体に回転可能に設けられており、クラッチリングを回転操作することにより締付けトルクを調整できる構成となっている。
【0003】
従来のクラッチリングは、外力に対する機械的強度が要求されるためにポリアミド(PA)やポリカーボネート(PC)あるいはこれらにガラス繊維を添加した硬質合成樹脂製であり、外周面には周方向に滑り止めを主目的とした複数個の凸形状あるいは凹形状部分を設けている。また、同じく外周面には電動工具の締付けトルクの調節状態を明示するための文字や図柄を印刷しているが、使用により消失することがないよう、最近では文字や図柄部分をクラッチリングと同材料の硬質合成樹脂により2色成形しているものもある。
【0004】
この種のクラッチリングを備えた電動工具のトルク調節機構を図8を用いて説明する。モータ軸9に固定されて駆動されるピニオン10は、キャリアA11の支持軸11bに支持されていると共にギヤケースA13に固定されたインターナルギヤA14と噛合しているプラネットギヤA12と噛合している。キャリアA11には次段のサンギヤA11aが形成されており、このサンギヤA11aは、キャリアC15の支持軸15bに支持されていると共にインターナルギヤB16と噛合しているプラネットギヤB17と噛合している。モータ軸9の動力が順次減速伝達されていき、最終段のキャリアC15に形成されたサンギヤC15aまで減速伝達される。サンギヤC15aは、出力軸18にトルクを伝えるキャリア19の支持軸19aに支持されていると共にインターナルギヤC21と噛合しているプラネットギヤC20と噛合している。インターナルギヤC21はギヤケースB23内において回転可能に収納されており、また出力軸18側の端面に軸方向に延びた複数の爪21aを有する形状をしている。ギヤケースB23にはインターナルギヤC21の爪21aと対応可能な箇所にギヤケースB23の軸方向に延びた複数の貫通穴23bを有しており、この貫通穴23b内には爪21aと係合可能なボール22及びボール22とクラッチプレート25との間に位置する円筒形状のローラ24がギヤケースB23の軸方向に移動可能に収納されている。
【0005】
クラッチプレート25は後述するクラッチスプリング26の付勢力によりインターナルギヤC21側に常時付勢されており、このクラッチプレート25及びローラ24を介してボール22は常時インターナルギヤC21側に付勢され、この付勢力によってボール22と爪21aとは係合した状態となる。
【0006】
少なくとも2つの異なる外径寸法部を有する円筒形状をしたギヤケースB23は、大径部分内部に上記キャリア19、インターナルギヤC21等を収納すると共にボール22及びローラ24を収納する貫通穴23bを有する構成をしており、小径部分内部において出力軸18を回転可能に支持すると共に外周部におねじ23aを有する構成をしている。
【0007】
ギヤケースB23の小径部分外周には、おねじ23aと螺合するめねじ27aを有するクラッチ部材27が設けられており、クラッチ部材27は外部操作により回動するクラッチリング1の回動に連動して回動し、クラッチ部材27はおねじ23aとめねじ27aとの螺合によって回動しながらギヤケースB23の軸方向に移動する。クラッチ部材27はクラッチプレート25との間に介在されたクラッチスプリング26の一端を受けており、クラッチ部材27はクラッチスプリング26の軸方向寸法を変化させながらギヤケースB23の軸方向に移動する。なお、クラッチ部材27の外壁部分はコイルスプリング26の内径をガイドするように成形されている。
【0008】
上記したようにクラッチリング1を回動させることにより、クラッチ部材27はギヤケースB23の軸方向に移動しクラッチスプリング26の軸方向寸法を変化させる、すなわちクラッチスプリング26がクラッチプレート25を付勢する軸方向の付勢力が調節される構造となっている。
【0009】
電動工具使用時には、コイルスプリング26の付勢力を調節して滑りトルクを適宜選択するが、選択された滑りトルクより大きな負荷が出力軸18に加わると、インターナルギヤC21の爪21aがコイルスプリング26の付勢力に抗してボール22を軸方向に移動し、インターナルギヤC21が回転し始めるために出力軸18に動力が伝わらなくなる。すなわち、上述したようにコイルスプリング26の圧縮量を調節することにより出力軸18への伝達トルクを調節することができ、大きな伝達トルクを出力軸18へ与える場合には、クラッチスプリング26の軸方向寸法を小さくさせる、すなわち圧縮させる如くクラッチリング1を回動させ、小さな伝達トルクを出力軸18へ与える場合には、クラッチスプリング26の軸方向寸法を延ばす如くクラッチリング1を回動させることにより達成することができる。
【0010】
また、ドライバドリルの場合には、滑りトルクを設定しない状態、すなわちドリルモードの状態が得られることが必要であるが、これはクラッチスプリング26を全圧縮状態とする、クラッチ部材27の一部をクラッチプレート25に当接させる等の手段によって、ボール22が軸方向に移動しない状態として爪21aとボール22との係合を維持しインターナルギヤC21の回転を阻止するようにすることによって達成される。
【0011】
なお、クラッチリング1とギヤケースB23との間には、クラッチリング1の外力による回動は許容するがクラッチリング1が回動自在となるのを阻止する目的でクラッチリング1に設けた凹部と係合する凸部を設けた板ばね28が配設されており、コイルスプリング26の付勢によりクラッチリング1が期せずして回動してしまうことがないよう回転方向に節度を持たせてある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにクラッチリング1には回転方向に節度を持たせてあり、締付けトルク選択操作時にはこれに抗してクラッチリング1を回動させなければならないため、ある程度の操作力が必要となる。また、締付けトルクを増加させる場合の選択操作ではコイルスプリング26を圧縮させていくことになるため、更なる操作力が要求される。そこで、従来からクラッチリング1の外周面には確実な把握が可能になるよう、周方向に凸形状あるいは凹形状の滑り止め形状が設けられているが、十分な滑り止め機能を得ようとした場合、材質が母材と同等の硬質合成樹脂製であるために滑り止め形状が掌に強く作用し、快適な把握ができないという問題がある。
【0013】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、必要十分な滑り止め機能を有すると共に掌に受ける感触が優しい、すなわち確実で快適なトルク調節ができる電動工具を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、モータと、該モータにより回転駆動される工具保持部と、前記モータを収容し、前記工具保持部の後方に設けられるモータハウジング部と、作業者が把持して締め付けトルクを調整するために、前記工具保持部と前記モータハウジング部との間で前記モータハウジング部に対して回動可能に設けられたクラッチリングと、を有する電動工具において、前記クラッチリングは、母材と、該母材よりも低硬度の外装体とを有し、前記母材はその外周に複数の溝部を有し、前記外装体は、前記クラッチリングの周方向において隣合う位置にある前記母材より半径方向に突出する突出部を有し、前記溝部を充填するように該突出部を設けることにより、前記クラッチリングの外周の表面には、前記母材と前記突出部とが周方向に交互に配されており、前記外装体の後方に前記外装体よりも半径方向に突出する輪状部を前記母材と一体に設け、前記外装体の端部を前記母材に埋め込み、前記外装体を前記クラッチリングの工具保持部側の端部で連結したことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明になる電動工具の一実施形態を図1〜図7を用いて説明する。なお、図1は本発明電動工具の一実施形態を示す斜視図、図2は本発明電動工具を構成するクラッチリングの一実施形態を示す斜視図、図3は図2のクラッチリングの展開図、図4は本発明電動工具の一実施形態を示す要部拡大断面図、図5はクラッチリングの一実施形態を示す図4のA−A線断面図、図6は図2に示すクラッチリングの左側面図、図7は本発明電動工具の一実施形態を示す要部拡大平面図であり、上記した従来の電動工具と同一構成の部位には同一の符号を付したので説明を省略する。
【0016】
図1に示す電動工具は、図示しないモータを収納するモータハウジング部4と、モータの駆動を制御するスイッチ5が設けられたハンドル部6とを有する構成をしており、ハンドル部6下部には駆動源である電池7を着脱可能に保持する構成をしている。モータハウジング部4の前方には図示しないモータとほぼ同軸上に設けられ、モータの回転動力を受けて回転する先端工具を着脱可能な工具保持部8が設けられており、この工具保持部8とモータハウジング部4との間にはモータハウジング部4に回転可能に支持されたクラッチリング1が設けられている。
【0017】
クラッチリング1は、図2〜図7に示すように母材2と該母材2の外周面の一部に配設される外装体3とにより構成されている。母材2はポリカーボネート(PC)にガラス繊維を添加した硬質合成樹脂製であり、図5に示すように母材2の内周にはクラッチ部材27の半径方向外周に突出した3本の突出部27bと嵌合する3本の内周溝2cが設けられ、クラッチ部材27をクラッチリング1と連動して回動させる構造となっている。また、母材2の外周には周方向に等間隔で12本の溝2aが形成されており、溝2aを充填するように12本の外装体3が配設されている。外装体3は母材2よりも硬度の低い合成樹脂エラストマー製であり、母材2を外装体成形金型内に挿入した状態で一体成形される。このように、母材2に設けた溝2aに外装体3を埋め込むように一体成形することにより、母材2と外装体3が一体に接着され、クラッチリング1の操作中に両者が剥離するのを防止することができる。
【0018】
クラッチリング1の外周面に硬度の異なる材料すなわち母材2と外装体3が交互に配設されることになり、締付けトルク選択操作時にクラッチリング1を把握したとき、掌は外装体3に十分に接触することになるが、外装体3は常温でゴム状弾性を有するエラストマー製であるため、掌に受ける感触が優しく、十分な滑り止め効果を得ることができる。
【0019】
また図2、図3及び図6に示すように、本実施形態では外装体3をクラッチリング1の軸方向前方で連結してあるが、このように外装体3を連結することで一つの形状として一度に射出成形することができ、射出成形時のゲート数を減らして材料費を低減できるのと同時に型構造を単純化して金型費用も安価にでき、製造コストを低減することができるので実用的である。なお、この場合、連結するのは母材2の外側でなくても良く、母材2の内側で連結し、内側から射出成形しても一向に差支えない。
【0020】
また、本実施形態では外装体3をクラッチリング1の回動軸に対してモータ側が半径方向外側に位置するよう傾斜させた形状としたので、クラッチリング1を把握するとき、太い方すなわちモータ側をより力の入る人差し指と親指で握り、細い方すなわちチャック側を小指側で握るようにすれば、より力を加えやすくなり、効果的に滑り止め効果を得られるようになる。
【0021】
また、外装体3の表面にクラッチリング1の回動軸と平行に延びる溝3aを設けたことにより、クラッチリング1を把握したとき、掌が外装体3に接触する面積が大きくなり、滑り止め効果を向上させることができる。
【0022】
また、図に示すように外装体3が母材2よりも半径方向外側に突出する複数の突出部3bを有するような構成としたことにより、掌が外装体3に接触する面積が大きくなり、滑り止め効果が向上する。更に、母材2よりも半径方向外側に突出した突出部3bの角部をR形状3cとしたことにより、掌に受ける感触をより優しくすることができる。なお、上述したようにクラッチリング1には回転方向に節度を持たせてあり、締付けトルク選択操作時にはこれに抗してクラッチリング1を回動させなければならないため、ある程度の操作力が必要となる。また、締付けトルクを増加させる場合の選択操作ではコイルスプリング26を圧縮させていくことになるため、更なる操作力が要求されるが、母材2よりも突出した外装体3の突出部3bによって、クラッチリング1を回転させる操作力がクラッチリング1に伝達し易く、クラッチリング1の回転操作の操作性を向上させることができると共に、突出部3bの角部にR形状がないと、クラッチリング1の操作時に掌から受ける力が集中し、長期間に亘る使用により角部が損傷して外装体3に亀裂が入り易いが、突出部3bの角部にR形状3cを設けたことで掌から受ける力を緩和でき、亀裂が入りにくくなり、寿命も伸びる。
【0023】
また、本実施形態では外装体3の最大外径よりも大きな輪状部2bを母材2の外周に母材2と一体で形成し、外装体3の終端部に突部3dを設けて、突部3dが輪状部2b内に埋め込まれる構成としたことにより、母材2と外装体3との接着力が一層向上し、クラッチリング1の操作中に両者が剥離するのを長期間に亘って防止することができるようになる。すなわち、より長期間の使用に耐えるクラッチリングを提供することができる。
【0024】
また、図2、図3及び図4で示されるようにクラッチリング1の工具保持部8側の端部において、母材2よりも外装体3が工具保持部8側に突出しない構成としたことにより、工具保持部8の回転操作時に工具保持部8に外装体3が接触すること等を抑制し、母材2から外装体3が剥離してしまうことを抑制するようにしている。また、このような構成とすることによって、クラッチリング1の工具保持部8側の端部において外装体3に外力が加わったとしても、外装体3が母材2より剥離してしまうことを抑制することができる。
【0025】
なお、図7に示すようにクラッチリング1の母材2の輪状部2bには数字及び絵柄2dが表示されており、モータハウジング部4上に設けられた目印部4aが指し示す数字あるいは絵柄が締付けトルクの調節状態を明示する構成となっている。
【0026】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば、必要十分な滑り止め機能を有すると共に掌に受ける感触が優しい、すなわち確実で快適なトルク調節ができる電動工具を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明電動工具の一実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明電動工具を構成するクラッチリングの一実施形態を示す斜視図。
【図3】図2のクラッチリングの展開図。
【図4】本発明電動工具の一実施形態を示す要部拡大断面図。
【図5】本発明電動工具を構成するクラッチリングの一実施形態を示す図4のA−A線断面図。
【図6】図2に示すクラッチリングの左側面図。
【図7】本発明電動工具の一実施形態を示す要部拡大平面図。
【図8】従来の電動工具の一例を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
1はクラッチリング、2は母材、2aは溝、2bは輪状部、3は外装体、3aは溝、3bは突出部、3cはR形状、3dは突部、4はモータハウジング部、5はスイッチ、6はハンドル部、7は電池、8は工具保持部である。
Claims (2)
- モータと、
該モータにより回転駆動される工具保持部と、
前記モータを収容し、前記工具保持部の後方に設けられるモータハウジング部と、
作業者が把持して締め付けトルクを調整するために、前記工具保持部と前記モータハウジング部との間で前記モータハウジング部に対して回動可能に設けられたクラッチリングと、
を有する電動工具において、
前記クラッチリングは、母材と、該母材よりも低硬度の外装体とを有し、
前記母材はその外周に複数の溝部を有し、
前記外装体は、前記クラッチリングの周方向において隣合う位置にある前記母材より半径方向に突出する突出部を有し、
前記溝部を充填するように該突出部を設けることにより、前記クラッチリングの外周の表面には、前記母材と前記突出部とが周方向に交互に配されており、
前記外装体の後方に前記外装体よりも半径方向に突出する輪状部を前記母材と一体に設け、
前記外装体の端部を前記母材に埋め込み、
前記外装体を前記クラッチリングの工具保持部側の端部で連結したことを特徴とする電動工具。 - 前記外装体の前方の端部において、前記母材よりも前記外装体が前記工具保持部側に突出しないように構成されることを特徴とする請求項1記載の電動工具。
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