JP4153814B2 - 光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽光発電に使用される光電変換装置の製造方法に関し、特に粒状結晶半導体を用いた光電変換装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の粒状結晶半導体を用いた光電変換装置を図3〜図6に示す。例えば図3に示すように、第1のアルミニウム箔9に開口を形成し、その開口にp型の上にn型表皮部8を持つシリコン球2を挿着し、このシリコン球2の裏側のn型表皮部8を除去し、第1のアルミニウム箔9の裏面側に酸化物絶縁層3を形成し、シリコン球2の裏側の酸化物絶縁層3を除去し、シリコン球2と第2のアルミニウム箔7とを接合する光電変換装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、図4に示すように、基板1上に低融点金属層10を形成し、この低融点金属層10上に第1導電型の粒状結晶半導体2を配設し、この粒状結晶半導体2上に第2導電型のアモルファス半導体層6を上記低融点金属層10との間に絶縁層3を介して形成する光電変換装置が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、図5に示すように、基板1上に高融点金属層11と低融点金属層10と半導体微小結晶粒12とを堆積し、半導体微小結晶粒12を融解させて飽和させた上で徐々に冷却して半導体を液相エビタキシャル成長させることによって多結晶薄膜12を形成する方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
また、図6に示すように、シート状のモジュール基板1上に複数の第1導電型の球状半導体16を導電ぺースト14によって接着された状態で熱可塑性透明柔軟樹脂17中に埋設し、球状半導体16の表面領域に不純物を熱拡散あるいはイオン注入によってドープすることで第2導電型の表面層4を形成する方法が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【0006】
なお、図4、図5、図6において、5は透明導電膜などから成る電極である。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−124179号公報
【特許文献2】
特許第2641800号公報
【特許文献3】
特公平8−34177号公報
【特許文献4】
特開2001−230429号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示すような光電変換装置では、第1のアルミニウム箔9に開口を形成し、その開口にシリコン球2を押し込んでシリコン球2を第1のアルミニウム箔9に接合させる必要があるため、シリコン球2の球径に均一性が要求され、高コストになるという問題があった。また、接合させるときの処理温度がアルミニウムとシリコンとの共晶温度である577℃以下であるため、接合が不安定になるという問題があった。
【0009】
また、図4に示すような光電変換装置によれば、第1導電型の粒状結晶半導体2上に第2導電型のアモルファス半導体層6を設けるため、安定なpn接合を形成するにはアモルファス半導体層6を形成する前に粒状結晶半導体2の表面を十分にエッチングおよび洗浄する必要があった。また、アモルファス半導体層6の光吸収が大きいことに起因して膜厚を薄くしなければならず、アモルファス半導体層6の膜厚が薄い場合、欠陥に対する許容度も小さくなり、洗浄工程や製造環境の管理を厳しくする必要があり、その結果、高コストになるという問題があった。
【0010】
また、図5に示すような光電変換装置によれば、低融点金属層10が第1導電型の液相エピタキシャル多結晶層12中に混入するために性能が落ち、また絶縁体がないために上部電極5と下部電極11との間にリークが発生するという問題があった。
【0011】
また、図6に示すような光電変換装置によれば、第1導電型の球状半導体16の導電性ペースト14との接合部には高濃度層が存在しないため、光子により励起された電子の障壁、いわゆるバックフィールド効果を得ることができず、光電変換効率が低下することが判明した。
【0012】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで高性能な信頼性の高い光電変換装置とその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る光電変換装置の製造方法では、一方の電極となる基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を多数配設して加熱して前記基板と接合した後、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成し、この粒状結晶半導体間にポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布して250℃以下で熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填し、その後この逆導電型を呈する半導体層および絶縁体上に他方の電極となる導電層を形成することを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に係る光電変換装置の製造方法では、一方の電極となる基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を多数配設して加熱して前記基板と接合した後、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成し、この逆導電型を呈する半導体層の上に導電性保護層を形成し、この粒状結晶半導体間にポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布して250℃以下で熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填し、その後この導電性保護層および絶縁体上に他方の電極となる導電層を形成することを特徴とする。
上記光電変換装置の製造方法では、前記250℃以下での熱処理を非酸化雰囲気で行うことが望ましい。
【0020】
上記光電変換装置の製造方法では、前記粒状結晶半導体間にポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布する工程において、一定量のポリイミド溶液を基板上の特定の位置にスポット状もしくはライン状に塗布した後、そのポリイミド溶液を粒状結晶半導体間に浸透させることで基板全体に充填することが望ましい。
【0021】
また上記光電変換装置の製造方法では、前記ポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液の粘度が、固形分10wt%の時25℃で100mPa・s以下であることが望ましい。
【0022】
本発明の光電変換装置によれば、基板上に粒状結晶半導体を多数配置して加熱して両者の溶融した合金部によって接合し、この多数の粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成した構造において、絶縁体が露出している基板の全面を欠陥なく覆うことで、その後形成される他方の電極となる導電層と、一方の電極となる基板との間の絶縁性を確保することができ、なお且つ絶縁体に250℃以下で硬化するポリイミドを用いることで、この多数の粒状結晶半導体上に形成されたPN接合に熱的ダメージを与えることなく、高いPN接合の品質を保ったまま絶縁層を形成できるため、従来の光電変換装置と比較して、低コストで高い変換効率を有する光電変換装置の製造が可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、請求項1に係る光電変換装置の一実施形態を示す図である。図1において、1は基板、2は粒状結晶半導体、3は絶縁体、4は粒状結晶半導体2とは逆の導電型を呈する半導体層、5は導電層、15は基板1と粒状結晶半導体2との合金層である。
また図2は、請求項2に係る光電変換装置の他の一実施形態を示す図である。図2において、6は導電性保護層である。
【0024】
基板1は例えばアルミニウム単体もしくはアルミニウムの融点以上の融点を有する金属やセラミックを下地基板としその上にアルミニウムから成る電極層を形成した複合体を用いることができる。
【0025】
基板1上には、図1に示すように、第一導電型の結晶半導体粒子2を多数配設する。この結晶半導体粒子2は、例えばSiにp型を呈するB、Al、Ga等、又はn型を呈するP、As等が微量元素含まれているものである。結晶半導体粒子2の形状としては多角形を持つもの、曲面を持つもの等があり、粒径分布としては均一、不均一を問わないが、均一の場合は粒径を揃えるための工程が必要になるため、より安価にするためには不均一な方が有利である。さらに凸曲面を持つことによって光の光線角度の依存性も小さい。
【0026】
結晶半導体粒子2の粒径としては、0.2〜1.0mmがよく、1.0mmを越えると切削部も含めた従来の結晶板型の光電変換装置のシリコン使用量と変わらなくなり、結晶半導体粒子を用いるメリットがなくなる。また、0.2mmよりも小さいと基板1へのアッセンブルがしにくくなるという別の問題が発生する。より好適にはシリコン使用量の関係から0.2〜0.6mmがよい。
【0027】
多数の結晶半導体粒子2を基板1上に配設する方法としては、例えば結晶半導体粒子2を基板1の表面に散布した後一定の荷重を結晶半導体粒子2上に掛けながら、基板1のアルミニウムと結晶半導体粒子2のシリコンとの共晶温度577℃以上に加熱することによって、基板と結晶半導体粒子の合金層15を介して基板1と結晶半導体粒子2を接合させる方法が用いられる。
【0028】
なお、合金層15に接触している第1導電型の領域では、基板1の材料であるアルミニウムが拡散してp+層を形成している。しかしながら、単に導電性拡散領域を形成するのであれば、AlとSiとの共晶温度である577℃以下でもできるが、基板1と粒状結晶半導体2の接合が弱いために基板1から粒状結晶半導体2が離脱し、太陽電池としての構造を維持できなくなる。
逆導電型を呈する半導体層4は例えばSiから成り、気相成長法等で例えばシラン化合物の気相にn型を呈するリン系化合物の気相、又はp型を呈するホウ素系化合物の気相を微量導入して形成する。形成前に粒状結晶半導体2表面のクリーニングのため、ふっ酸硝酸混合液等によるウエットエッチング処理を行うが、周囲に樹脂等の介在物がないため清浄なPN接合を作製することができる。膜質としては結晶質、非晶質、結晶質と非晶質とが混在するのいずれでもよいが、光線透過率を考慮すると結晶質又は結晶質と非晶質とが混在するものがよく、光線透過率については、粒状結晶半導体2がない部分で入射光の一部が半導体層4を透過し、下部の基板1で反射して粒状結晶半導体2に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく粒状結晶半導体2に照射することが可能となる。
【0029】
導電性については、半導体層4中の微量元素の濃度は高くてもよく、例えば1×1016〜1019atoms/cm3台程度である。
【0030】
さらに、半導体層4は粒状結晶半導体2の表面に沿って形成し、粒状結晶半導体2の凸曲面形状に沿って形成することが望ましい。粒状結晶半導体2の凸曲面状の表面に沿って形成することによってpn接合の面積を広くとることができ、粒状結晶半導体2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。なお、その外郭にn型を呈するP、As等、又はp型を呈するB、Al、Ga等が微量含まれている粒状結晶半導体2を用いる場合には、半導体層4はなくてもよく、その上に導電層5を形成してもよい。
【0031】
絶縁体3は、正極と負極の分離を行うための絶縁材料からなり、硬化温度が250℃以下、好適には220℃以下のポリイミドから成る。熱処理温度を250℃以下とすることで、すでに形成されている粒状結晶半導体2と逆導電型を呈する半導体層4との間のPN接合に熱的ダメージを与えることなく粒状結晶半導体2間にポリイミド絶縁体3を充填できるので、PN接合を高品質に保つことができ、高い光電変換効率が得られる。逆に硬化温度が250℃より高いポリイミドではPN接合への熱的ダメージで光電変換効率が劣化する。ポリイミドの硬化温度を下げるには、原料の酸成分またはアミン成分の骨格を変更してもよいし、イミド化反応を促進する塩基性の低温硬化剤を添加してもよいが、低温硬化剤を用いる場合はポリイミドの硬化過程でできるだけ揮発除去できるものを選択することが望ましい。またポリイミドの硬化温度は通常、熱分析または赤外線ピーク比から求めるイミド化率で見積もれるが、イミド化率99%以上になる温度を実質的に硬化温度と見なす事ができる。
【0032】
前記ポリイミドの厚み1μm当たりの光吸収率は、波長400nmのとき20%以下、波長500nmのとき2%以下であることが望ましい。この条件を満たすポリイミドからなる絶縁体3は実質的に透明であり、粒状結晶半導体2上に直接照射しなかった光も、粒状結晶半導体2間に充填された絶縁体3を透過し基板1で反射後再び粒状結晶半導体2で吸収利用できる。
【0033】
絶縁体3の厚みは1μm以上が望ましい。厚みが1μmより薄くになると、絶縁性が不安定になってリーク電流が流れやすくなり耐侯性や密着性等が劣化する。
【0034】
また、前記シロキサン骨格を含有するポリイミドは有機溶媒に溶かして用いるが、有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、o,m,p−メチルフェノール等を用いることができ、中でも溶解性、毒性、コストの観点からN−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミドが望ましい。
【0035】
ポリイミドの塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、浸透法などがあるが、できるだけ粒状結晶半導体2上に形成されている逆の導電型を呈する半導体層4の表面を汚さず、塗布量も必要最少量に留めることができる浸透法が望ましい。浸透法の一例として、例えばディスペンサーを用いて一定量のポリイミド溶液を基板1上の等間隔の特定の位置にスポット状もしくはライン状に供給し、その後塗布されたポリイミド溶液を粒状結晶半導体2間に浸透させることで基板1全体に溶液を充填させる方法が用いられる。この塗布方法により一部の粒状結晶半導体2はポリイミドで必要以上に覆われることになるが、熱処理後のポリイミドが実質的に透明であるため、その後形成される導電層5と半導体層4の一部が接合していれば、特性上ほとんど影響を受けない。
浸透法で効果的に絶縁体3を形成するためには、ポリイミド溶液の粘度は固形分10wt%の時25℃で100mPa・s以下、好適には60mPa・s以下、より好適には40mPa・s以下であることことが望ましい。ポリイミド絶縁体3の厚みを1μm以上にするためには、ポリイミド溶液の塗布濃度は固形分10wt%以上が好ましいが、その時の粘度が100mPa・sより大きいとポリイミド溶液が粒状結晶半導体2間に浸透しにくくなるため、厚みばらつきが生じ絶縁性が不安定になる。
ポリイミドの熱処理は窒素またはアルゴン雰囲気等の非酸化雰囲気で行うことが望ましい。非酸化雰囲気で熱処理することでポリイミドの光吸収率が低くなり、基板との密着性も向上する。また粒状結晶半導体2表面が露出している場合に酸化雰囲気で熱処理するとその表面に酸化物層が生成し、その後形成されるPN接合面の品質を劣化させてしまう。
【0036】
導電層5はスパッタリング法や気相成長法等の成膜方法あるいは塗布焼成等によって形成し、SnO2、In2O3、ITO、ZnO、TiO2等から選ばれる1種又は複数の酸化物系膜、又はTi、Pt、Au等から選ばれる1種又は複数の金属系膜を形成する。なお、このような導電層5は透明であることが必要であり、粒状結晶半導体2がない部分で入射光の一部が導電層5を透過し、下部の基板1で反射して粒状結晶半導体2に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく粒状結晶半導体2に照射することが可能となる。
【0037】
導電層5は膜厚を選べば反射防止膜としての効果も期待できる。さらに、導電層5は半導体層4あるいは粒状結晶半導体2の表面に沿って形成し、粒状結晶半導体2の凸曲面形状に沿って形成することが望ましい。粒状結晶半導体2の凸曲面状の表面に沿って形成することによってpn接合の面積を広くとることができ、粒状結晶半導体2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。
図2における導電性保護層6は、半導体層4の熱的ダメージまたは汚染により、その上に形成される導電層5とのオーミック接触がとれなくなることを防止するために半導体層4上に設けた導電性材料からなる薄膜である。導電性材料としては導電層5と同一でもまた異なっていてもかまわないが、実質的に透明であることが望ましい。また導電層5と同様にスパッタリング法や気相成長法等の成膜方法あるいは塗布焼成等によって形成することができる。膜厚は3〜30nmが望ましい。膜厚が3nmより薄いと半導体層4の保護層としての役目を果たさないし、30nmより厚いとその上に形成される他方の電極となる導電層5と基板1との間でのショートの原因となる。
【0038】
また半導体層4あるいは導電層5上に保護層(不図示)を形成してもよい。このような保護層としては透明誘電体の特性を持つものがよく、CVD法やPVD法等で例えば酸化珪素、酸化セシウム、酸化アルミニウム、窒化珪素、酸化チタン、SiO2−TiO2、酸化タンタル、酸化イットリウム等を単一組成又は複数組成で単層又は組み合わせて半導体層4又は導電層5上に形成する。保護層は、光の入射面に設けられるために、透明性が必要であり、また半導体層4又は導電層5と外部との間のリークを防止するために、誘電体であることが必要である。なお、保護層の膜厚を最適化すれば反射防止膜としての機能も期待できる。
【0039】
また、直列抵抗値を低くするために、半導体層4又は導電層5の上に一定間隔のフィンガーやバスバーといったパターン電極(不図示)を設けて直接的又は間接的に半導体層4と接続し、変換効率を向上させることも可能である。
【0040】
【実施例】
次に、本発明の光電変換装置の実施例を説明する。
〔実施例1〕
アルミニウム基板1上に直径0.3〜0.5mmのp型シリコン粒子2を多数設置した後、p型シリコン粒子2が動かないように一定の荷重をかけて押し付けた状態で、N2−H2雰囲気中の630℃で10分間加熱処理してp型シリコン粒子2をアルミニウム基板1に接合させた(接合部15)。
【0041】
次にp型シリコン粒子2の上部表面をクリーニングするために、この基板1を弗酸硝酸混合液(HF:HNO3=1:20)に1分間浸漬して純水で十分洗浄した後、シランガスと微量のP化合物からなる混合ガスを用いたプラズマCVD法により、p型シリコン粒子2上に厚み20nmのn型非晶質シリコン半導体層4を成膜した。
硬化温度が230℃であるポリイミド樹脂のN−メチルピロリドン溶液12wt%品(10wt%希釈時の25℃での粘度は50mPa・s)を、上記シリコン粒子2を接合したアルミニウム基板1上にディスペンサーを用いた浸透法で塗布した。その後窒素雰囲気下250℃−1時間加熱処理しp型シリコン粒子2間のアルミニウム基板1上にポリイミド樹脂の絶縁層3を形成した。得られた絶縁層3の厚みはアルミニウム基板1上で2〜5μmであった。
また上記ポリイミドをガラス基板に塗布し窒素雰囲気下250℃−1時間加熱処理した後、光吸収率を測定したところ、厚み1μm当たりの光吸収率が、波長400nmのとき15%、波長500nmのとき1%であった。
【0042】
次に、その上にスパッタリング法によって厚み100nmのITO膜による導電層5を作製した。
【0043】
フィンガーおよびバスバーからなるパターン電極を設けた後、光電変換率を測定したところ、8.3%と比較的高い値が得られた。また、この試料に対し−40℃〜90℃の温度サイクル試験500サイクルを行ったところ、絶縁体3にクラック、剥がれ等は発生せず、光電変換率も8.1%と特性劣化はほとんど見られなかった。
〔実施例2〕
プラズマCVD法により、p型シリコン粒子2上に厚み20nmのn型非晶質シリコン半導体層4を成膜した後、その上にスパッタリング法によって厚み10nmのITO膜による導電性保護膜6を作製した他は実施例1と同様にして光電変換装置を作製した。得られた絶縁層3の厚みは実施例1と同等であった。光電変換率を測定したところ、8.5%と比較的高い値が得られた。また、この試料に対し−40℃〜90℃の温度サイクル試験500サイクルを行ったところ、絶縁体3にクラック、剥がれ等は発生せず、光電変換率も8.4%と特性劣化はほとんど見られなかった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る光電変換装置によれば、基板に接合した粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成し、その上に導電層を形成した構造において、ポリイミドからなる絶縁体をその粒状結晶半導体の下部において逆導電型を呈する半導体層と導電層の間に介在させることから、粒状結晶半導体上に清浄な広いPN接合面を確保でき、よって従来の光電変換装置と比較して、低コストで高い変換効率を有する光電変換装置の製造が可能となる。
【0045】
また、請求項7に係る光電変換装置の製造方法によれば、粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成した後、ポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布し非酸化性雰囲気下250℃以下で熱処理することによってこの粒状結晶半導体間にポリイミド絶縁体を充填することから、粒状結晶半導体上に形成されたPN接合に熱的ダメージを与えることなく高いPN接合の品質を保ったまま絶縁層を形成でき、従来の光電変換装置と比較して、低コストで高い変換効率を有する光電変換装置の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光電変換装置の他の一実施形態を示す断面図である。
【図3】従来例1の光電変換装置を示す断面図である。
【図4】従来例2の光電変換装置を示す断面図である。
【図5】従来例3の光電変換装置を示す断面図である。
【図6】従来例4の光電変換装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・基板
2・・・・一導電型を呈する粒状結晶半導体
3・・・・絶縁体
4・・・・逆導電型を呈する半導体層
5・・・・導電層
6・・・・導電性保護層
15・・・アルミニウムとシリコンとの合金層
Claims (5)
- 一方の電極となる基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を多数配設して加熱して前記基板と接合した後、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成し、この粒状結晶半導体間にポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布して250℃以下で熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填し、その後この逆導電型を呈する半導体層および絶縁体上に他方の電極となる導電層を形成することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
- 一方の電極となる基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を多数配設して加熱して前記基板と接合した後、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成し、この逆導電型を呈する半導体層の上に導電性保護層を形成し、この粒状結晶半導体間にポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布して250℃以下で熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填し、その後この導電性保護層および絶縁体上に他方の電極となる導電層を形成することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
- 前記250℃以下での熱処理を非酸化雰囲気で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換装置の製造方法。
- 前記粒状結晶半導体間にポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液を塗布する工程において、一定量のポリイミド溶液を基板上の特定の位置にスポット状もしくはライン状に塗布した後、そのポリイミド溶液を粒状結晶半導体間に浸透させることで基板全体に充填することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換装置の製造方法。
- 前記ポリイミドを有機溶剤に溶かした溶液の粘度が、固形分10wt%の時25℃で100mPa・s以下であることを特徴とする請求4に記載の光電変換装置の製造方法。
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