JP4127365B2 - 光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽光発電などに使用される光電変換装置とその製造方法に関し、特に粒状結晶半導体を用いた光電変換装置とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の粒状結晶半導体を用いた光電変換装置を図3〜図6に示す。例えば図3に示すように、第1のアルミニウム箔9に開口を形成し、その開口にp型の上にn型表皮部8を持つシリコン球2を挿着し、このシリコン球2の裏側のn型表皮部8を除去し、第1のアルミニウム箔9の裏面側に酸化物絶縁層3を形成し、シリコン球2の裏側の酸化物絶縁層3を除去し、シリコン球1と第2のアルミニウム箔7とを接合する光電変換装置が開示されている(例えば特開昭61−124179号公報参照)。
【0003】
また、図4に示すように、基板1上に低融点金属層10を形成し、この低融点金属層10上に第1導電型の粒状結晶半導体2を配設し、この粒状結晶半導体2上に第2導電型のアモルファス半導体層6を上記低融点金属層10との間に絶縁層3を介して形成する光電変換装置が開示されている(例えば特許第2641800号公報参照)。
【0004】
また、図5に示すように、基板1上に高融点金属層11と低融点金属層10と半導体微小結晶粒とを堆積し、半導体の微小結晶粒を融解させて飽和させた上で徐々に冷却して半導体を液相エビタキシャル成長させることによって多結晶薄膜12を形成する方法が開示されている(例えば特公平8−34177号公報参照)。
【0005】
また、図6に示すように、シート状のモジュール基板1上に複数の第1導電型の球状半導体16を導電ぺースト14によって接着された状態で熱可塑性透明柔軟樹脂17中に埋設し、球状半導体16の表面復域に不純物を熱拡散あるいはイオン注入によってドープすることで第2導電型の表面層4を形成する方法が開示されている(例えば特開2001−230429号公報参照〉。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示すような光電変換装置では、第1のアルミニウム箔9に開口を形成し、その開口にシリコン球2を押し込んでシリコン球2を第1のアルミニウム箔9に接合させる必要があるため、シリコン球2の球径に均一性が要求され、高コストになるという問題があった。また、接合させるときの処理温度がアルミニウムとシリコンとの共晶温度である577℃以下であるため、接合が不安定になるという問題があった。
【0007】
また、図4に示すような光電変換装置によれば、第1導電型の粒状結晶半導体2上に第2導電型のアモルファス半導体層6を設けるため、安定なpn接合を形成するにはアモルファス半導体層6を形成する前に粒状結晶半導体2の表面を十分にエッチングおよび洗浄する必要があった。また、アモルファス半導体層6の光吸収が大きいことに起因して膜厚を薄くしなければならず、アモルファス半導体層6の膜厚が薄い場合、欠陥に対する許容度も小さくなり、洗浄工程や製造環境の管理を厳しくする必要があり、その結果、高コストになるという問題があった。
【0008】
また、図5に示すような光電変換装置によれば、低融点金属層10が第1導電型の液相エピタキシャル多結晶層12中に混入するために性能が落ち、また絶縁体がないために下部電極11との間にリークが発生するという問題があった。
【0009】
また、図6に示すような光電変換装置によれば、第1導電型の球状半導体16の接合部には高濃度層が存在しないため、光子により励起された電子の障壁、いわゆるバックフィールド効果を得ることができず、光電変換効率が低下することが判明した。
【0010】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで高性能な信頼性の高い光電変換装置の製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る光電変換装置の製造方法によれば、一方の電極となる基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を配設して加熱して接合する工程と、この粒状結晶半導体上に撥液性を有する皮膜を形成する工程と、この粒状結晶半導体上にポリシロキサンとポリカルボシランと無機フィラーと有機溶剤との混合物からなる溶液を塗布して熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填する工程と、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成する工程と、この逆導電型を呈する半導体層に他方の電極を接続して形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
上記光電変換装置の製造方法では、前記絶縁体が250℃以上400℃以下の熱処理により作製されることが望ましい。
【0024】
本発明の光電変換装置の製造方法によれば、基板上に粒状結晶半導体を多数配置して加熱して両者の溶融した合金部によって接合し、この多数の粒状結晶半導体の間に絶縁体を充填した構造において、絶縁体が露出している基板の全面を欠陥なく覆い、なお且つ絶縁体にポリシロキサン及びポリメタロカルボシランの混合物または両者の反応物および無機フィラーから成る有機無機複合体を用いることで、絶縁体におけるクラック発生を防止することにより、従来の光電変換装置と比較して製造マージンが大きく、低コストの製造が可能となる。つまり、粒状結晶半導体をより低い粒径精度で製造すればよく、絶縁体によって正電極と負電極の分離を確実に行うことができ、その結果低コストの製造が可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、請求項1に係る光電変換装置の製造方法によって得られる光電変換装置の一実施形態を示す図である。図1において、1は基板、2は粒状結晶半導体、3はポリシロキサンおよびポリカルボシランの混合物または両者の反応物および無機フィラーから成る絶縁体、4は粒状結晶半導体2とは逆の導電型を呈する半導体層、5は導電層、15は基板1と粒状結晶半導体2の合金層である。
【0026】
基板1はアルミニウムの融点以上の融点を有する金属やセラミックを下地基板とし、例えば鉄、ステンレス、インバー、Fe−Co−Ni系低熱膨張率合金等の鉄合金、ニッケル、アルミナ等のセラミックが用いられる。そして、基板1上にアルミニウムから成る電極層1’を形成した構成とし、アルミニウムから成る層1’には更に第2の添加元素としてシリコン、マグネシウム、マンガン、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、銀、銅から選ばれた1種もしくは複数種の元素を添加してもよく、結晶半導体粒子2の接合時の溶融過多を防止することができる。アルミニウムから成る層1’の膜厚は20μm以上とする。20μm未満では結晶半導体粒子2との接合を行う際に膜厚が不足して十分な接合ができなくなる。
【0027】
図2は基板1としてアルミニウム単体を用いた時の請求項1に係る光電変換装置の製造方法によって得られる光電変換装置の他の実施形態を示す図である。基板1の表層部に合金層15が発生していることを除けば、他は図1と同様であるため以後は図1を用いて説明する。
【0028】
図1の基板1上には、第一導電型の結晶半導体粒子2を多数配設する。この結晶半導体粒子2は、Siにp型を呈するB、Al、Ga等、又はn型を呈するP、As等が微量元素含まれているものである。結晶半導体粒子2の形状としては多角形を持つもの、曲面を持つもの等があり、粒径分布としては均一、不均一を問わないが、均一の場合は粒径を揃えるための工程が必要になるため、より安価にするためには不均一な方が有利である。更に凸曲面を持つことによって光の光線角度の依存性も小さい。
【0029】
結晶半導体粒子2の粒径としては、0.2〜1.0mmがよく、1.0mmを越えると切削部も含めた従来の結晶板型の光電変換装置のシリコン使用量と変わらなくなり、結晶半導体粒子を用いるメリットがなくなる。また、0.2mmよりも小さいと基板1へのアッセンブルがしにくくなるという別の問題が発生する。より好適にはシリコン使用量の関係から0.2〜0.6mmがよい。
【0030】
結晶半導体粒子2を基板1上に多数配設する方法としては、結晶半導体粒子2を基板1の表面に接着して固定する働きを持つ接合助層を形成した後、その上から結晶半導体粒子2を散布し、余分な結晶半導体粒子2を落とすことによって、結晶半導体粒子2を粒径の大小によらずに安定して密に配置し、その後、一定の荷重を結晶半導体粒子2上に掛けて、基板1のアルミニウムと結晶半導体粒子2のシリコンとの共晶温度577℃以上に加熱することによって、接合助層を焼飛させながら基板と結晶半導体粒子の合金層15を介して基板1と結晶半導体粒子2を接合させる。
【0031】
なお、合金層15に接触している第1導電型の領域では、基板1の材科であるアルミニウムが拡散してp+層を形成している。しかしながら、単に導電性拡散領域を形成するのであれば、AlとSiとの共晶温度である577℃以下でもできるが、基板1と粒状結晶半導体2の接合が弱いために基板1から粒状結晶半導体2が離脱し、太陽電池としての構造を維持できなくなる。
【0032】
前述の接合助層の材質としては300℃以上で、基板1と結晶半導体粒子2との接合温度以下で焼飛するものであればよく、酸化雰囲気で処理する場合には、例えばブチラール樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)等の樹脂を溶媒で溶解させた有機系の樹脂が上げられ、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレー法、ディッピング法等の形成方法で基板1の表面上に10〜100μmの厚みに塗布して形成する。
【0033】
絶縁体3は、正極と負極の分離を行うための絶縁材料からなり、ポリシロキサンおよびポリカルボシランを主な成分とする熱硬化性の透明有機無機複合体および無機フィラーから形成される。またポリシロキサンは下記(A)の構造単位からなるが、
(但し、R1およびR2は同一または異なっていてもよく相互に独立に低級アルキル基、フェニル基、水素原子を表す)
耐熱性を上げるためにはR1またはR2の少なくとも1つはフェニル基であることが望ましい。またポリシロキサンは熱硬化後も柔軟性があるためその成分が多いほどクラックが入りにくく、数十μmの厚い絶縁体3を容易に形成できるが、表面強度が低くなり、耐薬品性、耐侯性、密着性も低下する。一方ポリカルボシランは下記(B)の構造単位からなるが、
(但し、R3およびR4は同一または異なっていてもよく相互に独立に低級アルキル基、フェニル基、水素原子、または金属アルコキシル基を表す)
熱硬化性を高めるためにはR3およびR4の少なくとも1つは水素原子であることが望ましい。またポリカルボシランは熱硬化すると剛性の高いポリマーとなるため、その成分が多いとクラックが入りやすく厚い絶縁体3は形成し難くなるが、逆に表面強度が高くなり、耐薬品性、耐侯性、密着性は向上する。
【0034】
絶縁体3の形成性と、表面強度、耐薬品性、耐侯性、密着性を同時に満足するためには、ポリシロキサンに対するポリカルボシランの比率が、重量比で0.1以上2.0以下であることが望ましく、より好適には0.2以上1.0以下がよい。
【0035】
また、ポリシロキサンおよびポリカルボシランの混合物は有機溶媒に溶かして用いるが、有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、へキサン、テトラヒドロフラン等を用いることができ、中でも溶解性、揮発性、毒性、コストの観点からキシレンが望ましい。
【0036】
溶液の濃度は、絶縁体3の形成性と、熱処理後の厚み、粒状結晶半導体2上でのはじき性、粘性等の関係から、20%以上50%以下が適切である。
【0037】
本発明では、上記ポリシロキサンとポリカルボシランとの混合物または両者の反応物にさらに無機フィラーを添加する。この無機フィラーは光屈折率、光透過率、耐候性、対環境性、供給安定性、コストの面からSiO2またはSiO2を含有するガラスから成ることが望ましい。また無機フィラーをSiO2またはSiO2を含有するガラスとすることで、絶縁体3中のエッチング速度を制御でき、粒状結晶半導体と絶縁体の界面に段差を設けることなくエッチングが可能となることから、この粒状結晶半導体上に設ける逆導電型を呈する半導体層およびこの逆導電型を呈する半導体層上に設ける他方の電極の連続性が向上し、その結果高い光電変換効率を発現させることができる。
【0038】
無機フィラーの含有量はポリシロキサンおよびポリカルボシランの総固形分重量に対し0.025以上0.25以下がよい。0.025より少ないと絶縁体におけるクラック発生防止の効果が少なくなり、逆に0.25より多いと結晶半導体粒子2の隙間に充填されにくく絶縁性が劣化するという別の問題が発生する。より好適には0.05以上0.1以下が望ましい。
【0039】
無機フィラ一の平均粒径は0.1μm以上10μm以下であることが望ましい。平均粒径が0.1μmより小さくなると凝集が起こりやすく結晶半導体粒子2の隙間への充填性等の成形性が悪くなり、逆に平均粒径が10μmより大きくても成形性が悪化し絶縁不良の問題が発生する。より好適には無機フィラーの平均粒径は1μm以上8μm以下が望ましい。
【0040】
無機フィラーの光屈折率は1.4以上1.7以下であることが望ましい。
無機フィラーの光屈折率が1.4より小さいかまたは1.7より大きい場合は、ポリシロキサンとポリカルボシランとの混合物または両者の反応物の光屈折率との差が大きくなり絶縁体3の表面反射率が高くなるため、結晶半導体粒子2に直接照射されなかった光を有効利用することができず光電変換率が低下する。より好適には無機フィラーの光屈折率は1.5以上1.6以下が望ましい。
【0041】
また、ポリシロキサン及びポリカルボシランと無機フィラーと有機溶媒との混合物から成る溶液を塗布する前に、粒状結晶半導体2上に撥液性を有する皮膜を形成する。その撥液性により熱処理後、粒状結晶半導体2上にポリシロキサン及びポリカルボシランと無機フィラーとの混合物が付着することを防ぐ結果、開口率が上り、変換効率が向上する。撥液性を有する皮膜としては、長鎖のアルキル基やパーフルオロアルキル基を有する化合物を用いることができ、特にフッ素系シランカップリング剤は有効である。
【0042】
ポリシロキサンおよびポリカルボシランと無機フィラーと有機溶媒との混合物から成る溶液を基板1上に塗布した後の硬化のための熱処理温度は、250℃以上400℃以下が望ましい。熱処理温度が250℃より低いと、CVD等により粒状結晶半導体2上に逆導電型を呈する半導体層4を設ける際、絶縁体3が加熱されることでガスが発生し、半導体層4の特性を劣化させる。逆に熱処理温度が400℃を越えると、絶縁体3中の有機成分が激しく揮散しはじめるためクラックが入り、かつ褐色〜黒色に着色して透光性が失われる。
【0043】
粒状結晶半導体2に直接照射されなかった光も有効利用するためには、絶縁体3の400〜800nmの波長の光に対する透過率は70%以上とするこ
とが必要である。
【0044】
絶縁体3の厚みは3μm以上250μm以下が望ましい。厚みが3μm以下になると、絶縁性が不安定になってリーク電流が流れやすくなるし、逆に厚みが250μmを越えると、クラックが発生し易くなって耐侯性や密着性等が劣化する。
【0045】
絶縁体3の硬度は鉛筆硬度でHB以上4H以下が望ましい。鉛筆硬度でHBより低いと耐薬品性等が低くなり、例えばCVD等により粒状結晶半導体2上に逆導電型を呈する半導体層4を設ける際、絶縁体3が破壊されるし、逆に鉛筆硬度で4Hより大きくなると、絶縁体3を形成する時にクラックが発生し、変換効率が低下する。
【0046】
半導体層4は例えばSiから成り、気相成長法等で例えばシラン化合物の気相にn型を呈するリン系化合物の気相、又はp型を呈するホウ素系化合物の気相を微量導入して形成する。膜質としては結晶質、非晶質、結晶質と非晶質とが混在するもののどれでもよいが、光線透過率を考慮すると結晶質又は結晶質と非晶質とが混在するものがよく、光線透過率については、粒状結晶半導体2がない部分で入射光の一部が半導体層4を透過し、下部の基板1で反射して粒状結晶半導体2に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく粒状結晶半導体2に照射することが可能となる。
【0047】
導電性については、層中の微量元素の濃度は高くてもよく、例えば1×1016〜1021atm/cm3台程度である。
【0048】
更に、半導体層4は粒状結晶半導体2の表面に沿って形成し、粒状結晶半導体2の凸曲面形状に沿って形成することが望ましい。粒状結晶半導体2の凸曲面状の表面に沿って形成することによってpn接合の面積を広く稼ぐことができ、粒状結晶半導体2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。なお、その外郭にn型を呈するP、As等、又はp型を呈するB、Al、Ga等が微量含まれている粒状結晶半導体2を用いる場合には、半導体層4はなくてもよく、その上に導電層5を形成してもよい。
【0049】
導電層5はスパッタリング法や気相成長法等の成膜方法あるいは塗布焼成等によって形成し、SnO2、In2O3、ITO、ZnO、TiO2等から選ばれる1種又は複数の酸化物系膜、又はTi、Pt、Au等から選ばれる1種又は複数の金属系膜を形成する。なお、このような導電層5は透明であることが必要であり、粒状結晶半導体2がない部分で入射光の一部が導電層5を透過し、下部の基板1で反射して粒状結晶半導体2に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく粒状結晶半導体2に照射することが可能となる。
【0050】
透明導電層5は膜厚を選べば反射防止膜としての効果も期待できる。更に、導電層5は半導体層4あるいは粒状結晶半導体2の表面に沿って形成し、粒状結晶半導体2の凸曲面形状に沿って形成することが望ましい。粒状結晶半導体2の凸曲面状の表面に沿って形成することによってpn接合の面積を広く稼ぐことができ、粒状結晶半導体2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。
【0051】
半導体層4あるいは導電層5上に保護層(不図示)を形成してもよい。このような保護層としては透明誘電体の特性を持つものがよく、CVD法やPVD法等で例えば酸化珪素、酸化セシウム、酸化アルミニウム、窒化珪素、酸化チタン、SiO2−TiO2、酸化タンタル、酸化イットリウム等を単一組成又は複数組成で単層又は組み合わせて半導体層4又は導電層5上に形成する。保護層は、光の入射面に接しているために、透明性が必要であり、また半導体層4又は導電層5と外部との間のリークを防止するために、誘電体であることが必要である。なお、保護層の膜厚を最適化すれば反射防止膜としての機能も期待できる。
【0052】
また、直列抵抗値を低くするために、半導体層4又は導電層5の上に一定間隔のフィンガーやバスバーといったパターン電極(不図示)を設けて直接的又は間接的に半導体層4と接続し、変換効率を向上させることも可能である。
【0053】
【実施例】
次に、本発明の光電変換装置の製造方法の実施例を説明する。
〔実施例〕アルミニウム合金をステンレス基材上に50μmの厚みで冷間圧着で形成した基板1に、接合助層としてブチラール樹脂を有機溶媒で溶解させた溶液を、ドクターブレードを用いて50μmの厚みに塗布した。その上に直径0.3〜0.5mmのp型シリコン粒子2を数回散布して接合助層にp型シリコン粒子2を十分に接着させ、その後基板1を傾けて余分なp型シリコン粒子2を取り除いた。その後、p型シリコン粒子2が動かないように一定の荷重をかけて押し付けた状態で、大気中の630℃で10分間加熱処理してp型シリコン粒子2をアルミニウム合金に接合させた(接合部15)。
【0054】
その上にフッ素系撥液剤を塗布して室温で乾燥させた。その後ポリシロキサンとポリカルボシランとガラスフィラーとキシレンを重量比で1:1:0.15:4に混合した溶液を前述のp型シリコン粒子2が覆い被さる程度に塗布して室温で乾燥させた後、330℃で30分間加熱処理した。ガラスフィラーとしては平均粒径2.2μm、光屈折率1.5の、SiO2、B2O3、ZnO、Al2O3を主成分とするガラスを用いた。得られた透明なポリシロキサン−ポリカルボシラン−ガラスフィラー複合体3は、p型シリコン粒子2が密集している部分では約150μm、密集していない部分で約20μmの厚みがあった。
【0055】
また同条件でガラス基板上に作製したポリシロキサン−ポリカルボシラン−ガラスフィラー複合体は、鉛筆硬度が2Hであり、400〜800nmの波長の光に対する透過率は80%以上であった。p型シリコン粒子2の上部表面をクリーニングするために、前述のp型シリコン粒子2間をポリシロキサン−ポリカルボシラン−ガラスフィラー複合体3で充填した基板1を弗酸硝酸混合液(HF:HNO3=1:20)に1分間浸漬して純水で十分洗浄した。
【0056】
次にシランガスと微量のP化合物からなる混合ガスを用いたプラズマCVD法により、p型シリコン粒子2上に厚み50nmのn型結晶質シリコンと非晶質シリコンとの混晶の半導体層4を成膜し、その上にスパッタリング法によって厚み100nmのITO膜5を作製した。
【0057】
フィンガーおよびバスバーからなるパターン電極を設けた後、光電変換率を測定したところ、10.5%と比較的高い値が得られた。またこの試料に対し−40℃〜90℃の温度サイクル試験500サイクルを行ったところ、絶縁体3にクラック、剥がれ等は発生せず、光電変換率も10.2%と特性劣化はほとんど見られなかった。
〔比較例1〕
絶縁体3としてポリシロキサンとポリカルボシランとガラスフィラーとキシレンを重量比で1:0:0.075:2に混合した溶液を用いる以外は、実施例と同様にして試料を作製した。透明でクラック、剥がれ等の欠陥のない試料が得られたが、同条件で作製したガラス基板上の絶縁体の鉛筆硬度はHであった。初期光電変換率は8.2%であったが、この試料を−40℃〜90℃の温度サイクル試験500サイクルを行ったところ、絶縁体3にクラックが発生し、光電変換率は0%となった。
〔比較例2〕
絶縁体3としてポリシロキサンとポリカルボシランとガラスフィラーとキシレンを重量比で0:1:0.075:2に混合した溶液を用いる以外は、実施例と同様にして試料を作製した。絶縁体3全面にクラックが発生し、光電変換率も0%となった。
〔比較例3〕
絶縁体3としてポリシロキサンとポリカルボシランとガラスフィラーとキシレンを重量比で1:1:0:4に混合した溶液を用いる以外は、実施例と同様にして試料を作製した。絶縁体3全面にクラックが発生し、光電変換率も0%となった。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る光電変換装置の製造方法によれば、シリコンから成る粒状結晶半導体間に充填する絶縁体が、ポリシロキサンとポリカルボシランとの混合物または両者の反応物と無機フィラーとから成ることから、粒状結晶半導体間を埋め、クラック、剥がれ等の欠陥の発生を防止し、安定した信頼性を有する良好な絶縁体を形成でき、よって信頼性の高い光電変換装置を提供することができる。
【0059】
また、請求項1に係る光電変換装置の製造方法によれば、一方の電極を有する基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を配設して加熱して接合する工程と、この粒状結晶半導体上に撥液性を有する皮膜を形成する工程と、この粒状結晶半導体上にポリシロキサンとポリカルボシランと無機フィラーと有機溶剤との混合物からなる溶液を塗布して熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填する工程と、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成する工程と、この逆導電型を呈する半導体層に他方の電極を接続する工程と、を含むことから、粒状結晶半導体間を埋め、クラック、剥がれ等の欠陥の発生を防止し、安定した信頼性を有する良好な絶縁体を形成でき、よって信頼性の高い光電変換装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光電変換装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】従来例1の光電変換装置を示す断面図である。
【図4】従来例2の光電変換装置を示す断面図である。
【図5】従来例3の光電変換装置を示す断面図である。
【図6】従来例4の光電変換装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・基板
1’・・・アルミニウムから成る電極層
2・・・・第一導電型の粒状結晶半導体
3・・・・絶縁体
4・・・・逆導電型の半導体層
5・・・・導電層
6・・・・アモルファス半導体層
7・・・・第2のアルミニウム箔
8・・・・n形表皮部
9・・・・第1のアルミニウム箔
10・・・低融点金属層
11・・・高融点金属層
12・・・第一導電型の液相エピタキシャル多結晶層
13・・・第二導電型の多結晶あるいはアモルフアス層
14・・・導電性ぺースト
15・・・基板のアルミニウムと粒状結晶半導体のシリコンとの合金層
16・・・第一導電型の球状半導体
17・・・熱可塑性透明柔軟樹脂
Claims (2)
- 一方の電極となる基板上に一導電型を呈する粒状結晶半導体を配設して加熱して接合する工程と、この粒状結晶半導体上に撥液性を有する皮膜を形成する工程と、この粒状結晶半導体上にポリシロキサンとポリカルボシランと無機フィラーと有機溶剤との混合物からなる溶液を塗布して熱処理することによってこの粒状結晶半導体間に絶縁体を充填する工程と、この粒状結晶半導体上に逆導電型を呈する半導体層を形成する工程と、この逆導電型を呈する半導体層に他方の電極を接続して形成する工程と、を含むことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
- 前記絶縁体が250℃以上400℃以下の熱処理により作製されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造方法。
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-
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