JP4153674B2 - 液晶装置および電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半透過反射型液晶表示装置に適用することで表示のにじみ(ボケ)を改善し、明るく鮮明な透過表示を得ることができるとともに、そのような明るく鮮明な透過表示が可能な液晶装置を備えた電子機器を提供できる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機や電子手帳などの種々の電子機器には表示部として消費電力の少ない液晶表示装置が多用されている。特に近年は表示内容の多用化に伴って、カラー表示が可能な液晶表示装置の需要が高まっている。また、周囲光が弱い場所や暗い場所でも表示を見たいという要求から、バックライト装置が備えられた半透過反射型のカラー液晶表示装置が開発されている。
【0003】
以下に従来の半透過反射型のカラー液晶表示装置の構成例の概要を図面を参照して説明する。
図13(a)(b)は、従来の前方散乱板タイプの半透過反射型カラー液晶表示装置の要部を示す拡大概略断面図である。これらの内、図13(a)は反射型として使用時の例を示す図、図13(b)は透過型として使用時の例を示す図である。
【0004】
図13に示した前方散乱板タイプの液晶表示装置は、一対のガラス基板100、101間に液晶層102が挟持され、一方(図面では上側)のガラス基板101の液晶層102側の表面部分には、カラーフィルタ104が設けられており、他方(図面では下側)のガラス基板100の液晶層102側の表面部分には、半透過反射層103が設けられている。また、ガラス基板101の上面側には、例えば厚さ50〜200μmのトリアリルシアネートなどからなる基材に金属酸化物粒子をフィラーとして分散させた等方的な散乱特性を有する前方散乱フィルム105が透明な粘着材または粘着シート(図示略)を介して貼付され、その上に偏光板106が設けられている。また、ガラス基板100の下面側には位相差板156と、偏光板157が設けられている。さらに、この偏光板157の下面側(位相差板156と反対側)には、バックライト装置160が設けられている。バックライト装置160は、蛍光管160aと、蛍光管160aによる光を反射して導光板160cに導く反射板160bと、導光板160cに導かれた光を液晶パネル側に一様に拡散させる拡散板162と、導光板160cからガラス基板100側とは反対方向に出射される光をガラス基板100側へ反射させる反射板161とから構成されている。
【0005】
このような前方散乱タイプの半透過反射型液晶装置は、周囲光が充分明るい場合には、反射型の表示形態をとるが、このとき図13(a)に示すように入射光L1は、偏光板106、前方散乱フィルム105、ガラス基板101、カラーフィルタ104、液晶層102を通過後、駆動電極を兼ねる半透過反射層103の表面で反射され、反射された光が液晶層102、カラーフィルタ104、ガラス基板101、前方散乱フィルム105、偏光板106を介して液晶装置から出射され、観察者Eに反射光L2として視認される。ここで液晶装置を出射する光は液晶層102の状態によって制御される、即ち、液晶層102における液晶分子の配列状態により反射光の偏光状態が制御され、反射光の偏光状態が偏光板106の偏光軸と一致した場合には偏光板106を透過して所望の色表示がなされることとなる。
【0006】
一方、周囲光が弱い場合には、バックライト装置160を利用する透過型の表示形態をとるが、このとき図13(b)に示すようにバックライト装置160からの入射光L3は、ガラス基板100、偏光板157、位相差板156、半透過反射層103、液晶層102、カラーフィルタ104、ガラス基板101、前方散乱フィルム105、偏光板106を介して液晶装置から出射され、観察者Eに透過光L4として視認される。ここで液晶装置を出射する透過光は、先に述べた反射光と同様に液晶層102の状態によって制御される。
【0007】
ところで、前記図13に示す従来構造において前方散乱フィルム105は、半透過反射層103が鏡面反射性能を有するものである場合に、鏡面独特の特定の方向での強いミラー反射(正反射)を弱め、できるだけ広い範囲で明るい表示を可能とする目的で用いられている。
この種の前方散乱フィルム105は、一般的には厚さ25〜30μm(25〜30×10−6m)程度のアクリル系の樹脂層(例えば屈折率n=1.48〜1.49程度)の内部に粒径4μm(4×10−6m)程度のビーズ(例えば屈折率n=1.4)を多数分散させてなる構造を有するもので、携帯電話用の半透過反射型液晶表示装置、携帯型情報機器等の半透過反射型液晶表示装置には広く用いられているものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の等方的な前方散乱フィルム105は、異なる各画素での異なる情報が使用者の目に認識されるまでの間に混在されてしまう傾向があり、表示のにじみ(ボケ)が生じ易く、また透過型の表示形態のときの表示が暗くなってしまうという問題点を有していた。
【0009】
これは、図13(b)に示すように透過型の表示を行う場合において、入射光L3が半透過反射層103を透過してから使用者の目に届くまでに前方散乱フィルム105で生じる散乱に起因し、隣り合う画素で白表示と黒表示を行っていたとすると、前方散乱フィルム105の散乱作用のために、白表示と黒表示の境界がわかり難くなり易く、表示がにじんでしまう(ボケる)ことに起因しており、また、バックライト装置160からの入射光L3を液晶パネル側に集光した光を液晶装置から出射させる時に前方散乱フィルム105で拡散してしまうために、輝度が低下し、透過型の表示形態のときの表示が暗くなってしまうと本発明者は考えている。
【0010】
また、図13(a)に示すように反射型の表示を行う場合において、入射光L1が半透過反射層103で反射されてから使用者の目に届くまでに前方散乱フィルム105で生じる散乱に起因し、隣り合う画素で白表示と黒表示を行っていたとすると、前方散乱フィルム105の散乱作用のために、白表示と黒表示の境界がわかり難くなり易く、表示がにじんでしまう(ボケる)ことに起因していると、本発明者は考えている。
【0011】
また、カラーフィルタ104を設けてなる液晶表示装置について表示のにじみ(ボケ)について考察すると、色表示の境界が判別し難くなる傾向にあり、混色を生じる恐れがあり、良好な発色性を得られなくなる恐れがある。
【0012】
以上のような背景から本発明者らは、前方散乱フィルムに着目して更に研究を重ねた結果、前方散乱フィルムの散乱性に指向性を持たせるようにすることで液晶表示装置の表示のにじみ(ぼけ)を解消できることを知見し、本願発明に到達した。また、本発明者らが前方散乱フィルムについて研究を重ねた結果、反射表示を行う場合、前方散乱フィルム105に対する入射時の1回目の散乱は表示のにじみ(ボケ)に影響が出にくいが、反射光となって再度前方散乱フィルム105を通過する際の散乱は観察者Eに観察され易く、反射光が前方散乱フィルム105を通過する場合の散乱光が表示のにじみ(ぼけ)や輝度の低下に対して影響が大きく、透過表示を行う場合、バックライト装置160からの光が透過光として前方散乱フィルム105を通過する際の散乱は観察者Eに観察され易く、透過光が前方散乱フィルムを通過する場合の散乱光が表示のにじみ(ぼけ)や輝度の低下に対して影響が大きいことを知見している。
【0013】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、表示のにじみ(ぼけ)および輝度の低下を改善して表示品質を向上させることができ、明るく鮮明な透過表示が可能である液晶装置およびその液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的の1つとする。
また、本発明は、表示のにじみ(ぼけ)および輝度の低下を改善して表示品質を向上させることができ、明るく鮮明な透過表示を可能とすることに加えて、表示のにじみ(ぼけ)を改善して表示品質を向上させることができ、明るく鮮明な反射表示が可能である液晶装置およびその液晶装置を備えた電子機器を提供することを他の目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶装置は、前記課題を解決するために、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、一方の前記基板の前記液晶層側に設けられた半透過反射層と、他方の前記基板の前記液晶層側とは反対側に設けられた指向性前方散乱フィルムと、を具備した液晶パネルと、当該液晶パネルの前記一方の基板の前記液晶層側と反対側に設けられた照明装置とを備え、前記他方の基板の前記液晶層とは反対側から前記他方の基板に入射した光が前記半透過反射層で反射され、前記他方の基板を透過して観察される反射表示と、前記照明装置から出射した光が前記液晶パネルを透過して観察される透過表示とを行う液晶装置であって、前記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの法線と方位角0°の方向とを含む面への入射光の水平投影と該法線とのなす角度を極角θnと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最大値T max となる入射光の方向を(φ1,θ1)と定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最小値T min となる入射光の方向を(φ2,θ2)と定義した時、φ1=φ2+180°±10°の関係を満足し、前記指向性前方散乱フィルムは、(φ1,θ1)の方向が前記反射表示の観察方向側となるように配置されてなり、前記照明装置の光出射方向は、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が(T max +T min )の1/2以上となる入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲内となるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の液晶装置においては、前記指向性前方散乱フィルムと前記照明装置とは、前記照明装置の集光方向が、前記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が強くなるときまたは拡散透過光が弱くなるときの入射光の入射側の方向に合うように設けられたことにより、透過表示を行うときに、照射装置から出射され、さらに集光された光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱が比較的少ない方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0016】
また、本発明の実施の形態に係る液晶装置は、前記課題を解決するために、一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層と、上記一方の基板の液晶層側に設けられた半透過反射層と、上記他方の基板の液晶層側と反対側に設けられた指向性前方散乱フィルムを具備した液晶パネルと、該液晶パネルの一方の基板の液晶層側と反対側に設けられた照明装置とを備えてなり、上記指向性前方散乱フィルムに対してその一面側に配置した光源から光を入射し、上記指向性前方散乱フィルムの他面側に配置した受光部において、上記指向性前方散乱フィルムを透過した全透過光のうち、拡散透過光を除いた平行線透過光を観測した際、上記指向性前方散乱フィルムの法線に対する入射光の入射角度を極角θnと定義し、上記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、平行線透過光の最大透過率をTmax(φ1,θ1)と定義し、平行線透過光の最小透過率をTmin(φ2,θ2)と定義した場合、上記指向性前方散乱フィルムと上記照明装置とは、該照明装置の集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように設けられている。
【0017】
この液晶装置においては、上記指向性前方散乱フィルムと上記照明装置とは、該照明装置の集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように設けられたことにより、透過表示を行うときに、照射装置から出射され、さらに集光された光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱が比較的少ない方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0018】
また、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置において、上記指向性前方散乱フィルムと上記照明装置とは、該照明装置の集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときの入射光の入射側の方位角φ1と極角θ1に合うように設けられていることが、透過表示を行うときに照射装置から出射された光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱ができるだけ少ない方向、すなわち、平行線透過光量ができるだけ多い方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光がさらに効率良く利用されて、輝度をさらに向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質をよりいっそう向上できる。
【0019】
また、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置において、上記液晶パネルと上記照明装置との間に該照明装置からの光を上記液晶パネル側に集光するプリズムシートが一枚以上設けられているものであってもよい。
【0020】
また、本発明の別の液晶装置は、前記課題を解決するために、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、一方の前記基板の前記液晶層側に設けられた半透過反射層と、他方の前記基板の前記液晶層側とは反対側に設けられた指向性前方散乱フィルムと、を具備した液晶パネルと、当該液晶パネルの前記一方の基板の前記液晶層側と反対側に設けられた照明装置と、該照明装置からの光を該液晶パネル側に集光するために該液晶パネルと該照明装置との間に設けられた一枚以上のプリズムシートとを備え、前記他方の基板の前記液晶層とは反対側から前記他方の基板に入射した光が前記半透過反射層で反射され、前記他方の基板を透過して観察される反射表示と、前記照明装置から出射した光が前記液晶パネルを透過して観察される透過表示とを行う液晶装置であって、前記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの法線と方位角0°の方向とを含む面への入射光の水平投影と該法線とのなす角度を極角θnと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最大値T max となる入射光の方向を(φ1,θ1)と定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最小値T min となる入射光の方向を(φ2,θ2)と定義した時、φ1=φ2+180°±10°の関係を満足し、前記指向性前方散乱フィルムは、(φ1,θ1)の方向が前記反射表示の観察方向側となるように配置されてなり、前記プリズムシートの集光方向は、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が(T max +T min )の1/2以上となる入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲内となるように設定されていることを特徴とする。
【0021】
この液晶装置においては、上記指向性前方散乱フィルムと上記プリズムシートとは、該プリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように設けられたことにより、透過表示を行うときに、照射装置から出射され、さらにプリズムシートで集光された入射光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱が比較的少ない方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0022】
また、上記の構成の本発明の液晶装置において、上記指向性前方散乱フィルムと上記プリズムシートとは、該プリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときの入射光の入射側の方位角φ1と極角θ1と合うように設けられていることにより、透過表示を行うときに照射装置から出射され、プリズムシートで集光された入射光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱ができるだけ少ない方向、すなわち、平行線透過光量ができるだけ多い方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光がさらに効率良く利用されて、輝度をさらに向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質をよりいっそう向上できる。
【0023】
また、本発明の実施の形態に係る液晶装置は、上記課題を解決するために、一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層と、上記一方の基板の液晶層側に設けられた半透過反射層と、上記他方の基板の液晶層側と反対側に設けられた指向性前方散乱フィルムを具備した液晶パネルと、該液晶パネルの一方の基板の液晶層側と反対側に設けられた照明装置と、上記液晶パネルと上記照明装置との間に設けられ、上記照明装置からの光を上記液晶パネル側に集光する一枚以上のプリズムシートを備えてなり、上記指向性前方散乱フィルムに対してその一面側に配置した光源から光を入射し、上記指向性前方散乱フィルムの他面側に配置した受光部において、上記指向性前方散乱フィルムを透過した全透過光のうち、拡散透過光を除いた平行線透過光を観測した際、上記指向性前方散乱フィルムの法線に対する入射光の入射角度を極角θnと定義し、上記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、平行線透過光の最大透過率をTmax(φ1,θ1)と定義し、平行線透過光の最小透過率をTmin(φ2,θ2)と定義した場合、上記指向性前方散乱フィルムは、法線方向から入射した入射光が該指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光の平行線透過率をT(0,0)と定義すると10%≦T(0,0)の関係を満足しており、該指向性前方散乱フィルムと上記一枚以上のプリズムシートとは、該プリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムの法線方向に合うように設けられている。
【0024】
この液晶装置においては、上記指向性前方散乱フィルムと上記プリズムシートとは、該プリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムの法線方向に合うように設けられたことにより、透過表示を行うときに、照射装置から出射され、さらにプリズムシートで集光された光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱が比較的少ない法線方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い法線方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0025】
また、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置においては、前記指向性前方散乱フィルムに対してその一面側に配置した光源から光を入射し、前記指向性前方散乱フィルムの他面側に配置した受光部において、前記指向性前方散乱フィルムを透過した全透過光のうち、拡散透過光を除いた平行線透過光を観測した際、前記指向性前方散乱フィルムの法線に対する入射光の入射角度を極角θnと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、平行線透過光の最大透過率をTmax(φ1,θ1)と定義し、平行線透過光の最小透過率をTmin(φ2,θ2)と定義した場合、最小透過率を示す極角と方位角の場合の入射光側を前記液晶パネルの採光側になるように、最大透過率を示す極角と方位角の場合の入射光側を前記液晶パネルの観察方向側になるように、前記指向性前方散乱フィルムを前記液晶パネルに配置されていることが好ましい。
【0026】
この液晶装置においては、前記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最小透過率を示す極角と方位角の場合の入射光側を上記液晶パネルの採光側になるように、最大透過率を示す極角と方位角の場合の入射光側を上記液晶パネルの観察方向側になるようにして指向性前方散乱フィルムを液晶パネルに配置してなることで、平行線透過光の最小透過率を示す場合の方位角φ2は入射角方向となり、平行線透過光の最大透過率を示す場合の方位角φ1は観察者方向になる。このように配置された指向性前方散乱フィルムを有する液晶装置ならば、反射表示を行うときに指向性前方散乱フィルムに対して入射された光は入射時に強く散乱されるが、液晶パネル内部の半透過反射層により反射された後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に光が散乱される量が少なくなるので、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、表示のにじみ(ボケ)の少ない鮮明な反射表示が得られる。
【0027】
本発明は上記課題を解決するために、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置において、上記一方の基板の液晶層と上記他方の基板の液晶層側に液晶駆動用の電極が設けられてなることを特徴とする。
かかる液晶装置によれば、液晶層を挟む電極により液晶の配向状態を制御し、表示、非表示、中間調表示の切り替えを行うことができる。
【0028】
本発明は上記課題を解決するために、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置において、上記一対の基板のどちらか一方の液晶層側にカラーフィルタを設けてなるものでも良い。
かかる液晶装置によれば、カラーフィルタが設けられたことでカラー表示が可能となり、先のいずれかの構造を採用することで、表示のにじみ(ぼけ)の少ない、明るく鮮明なカラー表示を有するものが得られる。
【0029】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上記いずれかの構成の本発明の液晶装置を表示手段として備えたことを特徴とする。
かかる電子機器は、前述の優れた表示形態の本発明の液晶装置が備えられたことにより、表示のにじみ(ぼけ)の少ない、明るく鮮明な表示を有する表示形態を備えたものを得ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態の液晶装置)
本発明による第1実施形態の液晶装置について、図1〜図3を参照して以下に説明する。図1は、本発明を単純マトリクス型の半透過反射型液晶装置に適用した第1実施形態を示した平面図であり、図2は図1に示した液晶装置のA−A線に沿う部分断面図で、図2(a)は反射型として使用時の例を示す図を示し、図2(b)は透過型として使用時の例を示す図であり、図3は上記液晶装置に内蔵されたカラーフィルタ部分の拡大断面図である。この実施形態の液晶装置10に、液晶駆動用IC、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての液晶表示装置(液晶装置)が構成される。
【0031】
この実施形態の液晶装置10は、平面視略矩形状で、かつ環状のシール材12を介して互いにセルギャップをあけて対向するように貼り付けられた一対の平面視矩形状の基板ユニット13、14と、これらの間に上記シール材12とともに囲まれて挟持された液晶層15と、一方(図2の上側)の基板ユニット13の上面側に設けられた指向性前方散乱フィルム18と位相差板19と偏光板16と、他方(図2の下側)の基板ユニット14の下面側に設けられた位相差板56と偏光板57を備えた液晶パネル11と、この液晶パネル11の下側に設けられたバックライト装置(照明装置)60を主体として構成されている。
基板ユニット13、14のうち、基板ユニット13は観測者側に向いて設けられる表側(上側)の基板ユニットであり、基板ユニット14はその反対側、換言すると裏側(下側)に設けられる基板ユニットである。
【0032】
上記上側の基板ユニット13は、例えばガラス等の透明材料からなる基板17と、基板17の表側(図2では上面側、観測者側)に順次設けられた指向性前方散乱フィルム18、位相差板19及び偏光板16と、基板17の裏側(換言すると液晶層15側)に順次形成されたカラーフィルタ層20、オーバーコート層21と、該オーバーコート層21において液晶層15側の面に形成された液晶駆動用のストライプ状の複数の電極層23を具備して構成されている。
液晶層15は、ツイスト角θtが240度〜255度のネマチック液晶分子から構成されている。
【0033】
なお、実際の液晶装置においては、電極層23の液晶層15側と、後述する下基板側のストライプ状の電極層35の液晶層15側に、各々配向膜が被覆形成されるが、図2ではこれらの配向膜を省略し説明も略するとともに、以下に順次説明する他の実施形態においても配向膜の図示と説明は省略する。また、図2および以下の各図に示す液晶装置の断面構造は、図示した場合に各層が見やすいように各層の厚さを実際の液晶装置とは異なる厚さに調節して示してある。
【0034】
上記上基板側の駆動用の各電極層23は本実施形態ではITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)などの透明導電材料から平面視ストライプ状に形成されたもので、液晶パネル10の表示領域と画素数に合わせて必要本数形成されている。
上記カラーフィルタ層20は、本実施形態では図3に拡大して示すように、上側の基板17の下面(換言すると液晶層15側の面)に、光遮断用のブラックマスク26、カラー表示用のRGBの各パターン27を形成することにより構成されている。また、RGBのパターン27を保護する透明な保護平坦化膜としてオーバーコート層21が被覆されている。
【0035】
このようなブラックマスク26は例えばスパッタリング法、真空蒸着法等により厚さ100〜200nm程度のクロム等の金属薄膜をパターニングして形成されている。RGBの各パターン27は、赤色パターン(R)、緑色パターン(G)、青色パターン(B)が、所望のパターン形状で配列され、例えば、所定の着色材を含有する感光性樹脂を使用した顔料分散法、各種印刷法、電着法、転写法、染色法等の種々の方法で形成されている。
【0036】
一方、下側の基板ユニット14は、ガラスなどの透明材料からなる基板28と、基板28の表面側(図2では上面側、換言すると液晶層15側)に順次形成された半透過反射層31、オーバーコート層33と、該オーバーコート層33の液晶層15側の面に形成されたストライプ状の駆動用の複数の電極層35と、基板28の裏面側(図2では下面側、換言すると液晶層15側と反対側)に順次形成された位相差板56と、偏光板57から構成されている。これらの電極層35においても先の電極層23と同様に液晶パネル10の表示領域と画素数に合わせて必要本数形成されている。
【0037】
次に、本実施形態の半透過反射層31は、AgまたはAlなどの光反射性かつ導電性の優れた金属材料からなり、基板28上に蒸着法あるいはスパッタ法などにより形成されたものである。また、この半透過反射層31は、液晶パネル11の下側に設けられたバックライト装置(照明装置)60の蛍光管などの光源60が発した透過光を通過させるために十分な厚さの半透過反射層、あるいは、反射層の一部に多数の微細な透孔を形成して光透過性を高めた構造など、半透過反射型の液晶表示装置に広く用いられているものを適宜採用することができる。ただし、半透過反射層31が導電材料からなることは必須ではなく、半透過反射層31とは別に導電材料製の駆動用電極層を設け、半透過反射層31と駆動電極を別個に設けた構造を採用して差し支えない。
【0038】
バックライト装置60は、光を照射する線状の蛍光管や複数の白色LED等の光源60aと、この光源60aによる光をもれなく反射して導光板60cに導く反射板60bと、導光板60cに導かれた光を液晶パネル11側に拡散させる拡散板62と、導光板60cから液晶パネル11側とは反対方向に出射される光を液晶パネル11側へ反射させる反射板61とから構成されている。また、拡散板62には、輝度を高める目的で拡散板62から出た光を集める集光手段が設けられている。なお、上記の集光手段は拡散板62に備えられたものに限らず、拡散板62の上方に集光シートとして設けられていてよい。
ここで、光源60aは、常に点灯するのではなく、周囲光(外光)が殆どないような場合だけ、使用者あるいはセンサの指示によって点灯するものである。従って、光源60aが点灯している場合には、図2(b)に示すようにバックライト装置60からの光が半透過反射層31を通過することによって、透過型として機能し透過表示を行うことになる一方、光源60aが消灯している場合には、図2(a)に示すように液晶パネル11の上面側(偏光板16の表面側)から入射した光が半透過反射層31表面で反射することによって、反射型として機能し反射表示を行うことになる。
【0039】
次に、上述の上側の基板ユニット13に付設されている指向性前方散乱フィルム18について以下に詳細に説明する。
本実施形態において用いられる指向性前方散乱フィルム18とは、基本構造の面から見れば、特開2000−035506、特開2000−066026、特開2000−180607等に開示されている指向性を有する前方散乱フィルムを適宜用いることができる。例えば、特開2000−035506に開示されているように、相互に屈折率の異なる2種以上の光重合可能なモノマーまたはオリゴマーの混合物である樹脂シートに、紫外線を斜め方向から照射して特定の広い方向のみを効率良く散乱させる機能を持たせたもの、あるいは、特開2000−066026に開示されているオンラインホログラフィック拡散シートとして、ホログラム用感光材料にレーザを照射して部分的に屈折率の異なる領域を層構造となるように製造したものなどを適宜用いることができる。
【0040】
ここで本実施形態において用いる指向性前方散乱フィルム18は、以下に説明する平行線透過率等の各種パラメータを液晶装置に好適な特定の位置関係としたものである。
まず、図4に示すように平面視矩形状の指向性前方散乱フィルム18を水平に設置するものとする。なお、図4では水平設置状態が説明し易いので水平設置状態で説明するが、指向性前方散乱フィルム18を設置する方向は水平方向に限らず、どの方向でも良く、要は以下に説明する光源Kと受光部Jと指向性前方散乱フィルム18の位置関係(後述の極角θn、方位角φm)を明確に定めることができ、さらに指向性前方散乱フィルム18とバックライト装置60とは、バックライト装置60の集光方向が、指向性前方散乱フィルム18を透過した後述の平行線透過光が最大透過率と最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように配置できれば良い。本実施形態では説明の際に方向の理解が容易な方向として指向性前方散乱フィルム18の水平方向設置を一例にして説明する。
【0041】
図4において、指向性前方散乱フィルム18の右斜め上方奥側から指向性前方散乱フィルム18の中央部の原点Oに向けて、光源(周囲光)Kからの入射光L1を入射する場合を想定する。そして、指向性前方散乱フィルム18の原点Oを通過させて指向性前方散乱フィルム18を透過して直進する透過光を光センサ等の受光部Jにて受光する測定系を想定する。
【0042】
ここで、指向性前方散乱フィルム18への入射光L1の方向を特定するため、図4に示すように0°、90°、180°、270°の座標軸によって指向性前方散乱フィルム18を矩形状に4等分して中央部の原点Oを通過する座標を想定し、(換言すると、指向性前方散乱フィルム18の各辺の中心を座標軸の一端が通過するように4等分し)、この指向性前方散乱フィルム18の表面上に垂直投影される入射光L1の水平方向回転角度(0°の座標軸からの右回りの角度を+、0°の座標軸から左回りの角度を−とする。)を方位角φmと定義する。次に、0°の座標軸と180°の座標軸を含む垂直面(図4に符号M1で示す面)に水平投影される入射光L1の方向に対して指向性前方散乱フィルムの法線Hとのなす角度を入射光L1の極角θnと定義する。換言すると、極角θnとは水平設置した指向性前方散乱フィルム18に対する鉛直面内の入射光L1の入射角度を示し、方位角φmとは入射光L1の水平面内回転角に相当する。
【0043】
この状態において例えば、入射光L1の極角を0°、方位角を0°とした場合は、入射光L1が指向性前方フィルム18に対して図5に示すように直角に入射する(法線方向からの入射する)ことになり、指向性前方散乱フィルム18は図5の符号18に示す状態となり、極角θnを+60°とした場合に光源Kと受光部Jと指向性前方フィルム18との位置関係は図5の符号18Aに示すように指向性前方散乱フィルム18を配置した状態となり、極角θnを−60°とした場合に光源Kと受光部Jと指向性前方散乱フィルム18との位置関係は符号18Bに示すように指向性前方散乱フィルム18を配置した状態となることを意味する。
【0044】
次に、指向性前方散乱フィルム18の一面側(図6(A)では左側)に設置された光源から発せられた入射光L1が図6(A)に示すように指向性前方散乱フィルム18を透過して指向性前方散乱フィルム18の他面側(図6(A)では右側)に抜ける場合、指向性前方散乱フィルム18の一面側(左側)において散乱する光を後方散乱光LRと称し、指向性前方散乱フィルム18を透過する光を前方散乱光と称することとする。そして、指向性前方散乱フィルム18を透過した前方散乱光に関し、入射光L1の進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)L5の光強度について、入射光L1の光強度に対する割合を平行線透過率と定義し、更に、±2゜を越えて周囲側に斜めに拡散する前方散乱光(拡散透過光)LTの光強度について、入射光L1の光強度に対する割合を拡散透過率と定義し、透過光全体の入射光に対する割合を全光線透過率と定義する。以上の定義から、全光線透過率から拡散透過率を差し引いたものが平行線透過率であると定義することができる。以上の説明を更に理解し易くするために、図1にも入射光L1と方位角φと平行線透過光L5の関係を示した。
【0045】
なお、光学の分野においてヘイズ(Haze)と称される透過率尺度も一般的には知られているが、ヘイズとは拡散透過率を全光線透過率で除算して%表示した値であり、本実施形態において用いる平行線透過率とは全く異なる概念の定義である。
【0046】
次に、先の極角θnと方位角φmを用いて平行線透過率の最大透過率を標記する場合、Tmax(φ1,θ1)と標記することと定義し、平行線透過率の最小透過率をTmin(φ2,θ2)と標記することと定義する。また、換言すると、指向性前方散乱フィルムの性質から、最大透過率を示す条件においては最も散乱が弱い条件であり、最小透過率を示す条件においては最も散乱が強い条件である。
【0047】
例えば、仮に極角θn=0°、方位角=0°の時に最大透過率を示す場合に、Tmax(0,0)と標記する。(これは、指向性前方散乱フィルムの法線方向に沿う平行線透過率が最大であることを意味する。換言すると、指向性前方散乱フィルムの法線方向に沿う散乱が最も弱いことを意味する。)また、極角θn=10°、方位角=45°の時に最小透過率を示す場合に、Tmin(10,45)と標記し、この場合はこの方向の散乱が最も強いことを意味する。
【0048】
以上の定義に基づき、液晶装置に適用して好ましい指向性前方散乱フィルム18の各特性について以下に説明する。
前述したように指向性前方散乱フィルム18において、平行線透過率が最大透過率を示す角度は、最も散乱が弱い角度であり、最小透過率を示す角度は、最も散乱が強い角度である。
【0049】
よって換言すると、図2(a)に示すように本実施形態の液晶装置において反射表示を行う場合は、液晶装置10に対する周囲光を入射光L1として利用し、半透過反射層31にて反射した光を観察者が反射光L2として認識すると考えると、図4の座標軸において、光の入射時に散乱が強い方向(換言すると平行線透過率の低い方向)から液晶パネルに入射光L1を入れ、観察者が反射光L2を観察する場合に散乱が弱い方向(換言すると平行線透過率の高い方向)から見れば、表示のにじみ(ボケ)の少ない状態を得ることができると考えられる。これは、本発明者らが知見した、指向性前方散乱フィルム18に対する入射時の1回目の散乱は表示のにじみ(ボケ)に影響が出にくいが、反射光として指向性前方散乱フィルム18を2回目に通過する際の散乱が表示のにじみ(ボケ)に影響が大きいという知見に基づくものである。
【0050】
即ち、本実施形態では反射表示を行う場合、入射光L1が1回目に指向前方性散乱フィルム18を通過する場合には光を散乱した方(拡散透過光が多い方)が、半透過反射層31の正反射(ミラー反射)を防止して広い視野角で明るい表示を得ようとする目的のためには好ましく、更に、液晶装置の内部の半透過反射層31で反射した光が2回目に指向性前方散乱フィルム18を通過する場合には散乱が少ない方が表示のにじみ(ボケ)を少なくする上で好ましいと考えられるからである。従って、指向性前方散乱フィルム18の特性において、最小透過率を示す極角と方位角、換言すると最も散乱が強い入射光の極角と方位角方向(拡散透過率が最大を示す極角と方位角)を液晶装置10の採光側に向けること、換言すると観察者側と反対側に向けることが好ましく、平行線透過率が最大透過率を示す極角と方位角(拡散透過率が最小を示す極角と方位角)、換言すると最も散乱が弱い入射光の極角と方位角方向を液晶装置10の観察者E側に向けることが必要である。
【0051】
ここで図6(B)に、本実施形態において用いる指向性前方散乱フィルム18の断面構造を示し、以上のような極角と方位角の状態について説明する。
本実施形態において用いる指向性前方散乱フィルム18の断面構造モデルは図6(B)に示すように、屈折率がn1の部分と屈折率がn2の部分が指向性前方散乱フィルム18の断面構造において所定の角度を有して斜め方向に層状に交互配置されてなる構造である。この構造の指向性前方散乱フィルム18に斜め方向から適切な極角を有して入射光L1が入射されるとすると、屈折率の異なる各層の境界部分において散乱されるとともに、散乱光の一部が液晶層15を通過して半透過反射層31において反射されるとこの反射光L2が再度液晶層15を通過して指向性前方散乱フィルム18を先程の入射光L1とは異なる極角にて通過しようとするがここでの反射光L2は散乱の少ない状態で指向性前方散乱フィルム18を通過することができる。
【0052】
そして、このような関係を満足させるためには、方位角φ1とφ2の関係として、φ1=φ2±180°であることが最も好ましい。これは、φ2を入射角方向、φ1を観察方向とすることを意味し、実際の液晶装置で適用する場合にこれらの角度が180°異なる。この場合、液晶装置に入射された光は入射時に強く散乱され、半透過反射層31で反射された光は散乱され難いので、表示のにじみ(ボケ)の無い鮮鋭な表示形態が得られる。ただし、前述のような所定の角度を有して斜め方向に層状に交互に屈折率の異なる層が配置される指向性前方散乱フィルム18が組織的に完全に均一ではないことを考慮すると、方位角φ1とφ2の関係としては、φ1=φ2±180°で理想的ではあるが、φ1=φ2±180°の関係を基にして、その角度から(±10)°程度ずれたものまで本発明では包含するものとする。この角度が(±10)゜を超えてずれたものでは表示のにじみ(ボケ)の無い鮮鋭な表示形態が得られ難くなる。
【0053】
次に、先の(Tmax/Tmin)の値が(Tmax/Tmin)≧2の関係を満足することが好ましい。この関係とすることで、入射時に十分な散乱が得られ、明るく鮮鋭な反射表示が得られる。また、この関係を満足させることで、従来から知られている等方性散乱フィルムを用いた場合よりも明るい反射表示を実現できる。
【0054】
次に、極角θ1とθ2を個々に見ると、等方性の散乱フィルムよりも明るい表示を得るためには、−40°≦θ1<0°かつ0°<θ2≦+40°の範囲、より好ましくは−30°≦θ1≦−10°、かつ、10°≦θ2≦30°の範囲とすることが好ましい。
【0055】
次に、指向性前方散乱フィルム18の法線方向の(真正面)の平行線透過率をT(0,0)と定義すると、従来から知られている等方性の散乱フィルムよりも明るい表示を得るためには、θ1=−20°、θ2=20°の場合に、T(0,0)が3%以上、50%以下であることが好ましく、T(0,0)が5%以上、40%以下であることがより好ましい。T(0,0)が3%を下回ると、散乱が強すぎて表示がぼけることとなり、T(0,0)が40%を超えると正面の散乱が弱すぎてミラー反射に近くなる。
【0056】
次に、指向性前方散乱フィルムの方位角φmをφ1±60°(φ2±60°)の範囲と規定した場合、常にθ1で平行線透過率の極大をとり、θ2で平行線透過率の極小値をとるとともに、極大値と極小値の比を1.5以上とすることが好ましい。このような特徴を有しているならば、φ2の一方向のみならず、方位角で±60°までの光を散乱させることができるので、個々の環境下に対応することが容易になり、明るい反射表示を実現できる。
【0057】
次に、最大透過率を示す方位角φ1および最小透過率を示す方位角φ2と直交する方向の極角θnを−40°〜+40°まで変化させた場合、この範囲において平行線透過率が指向性前方散乱フィルムの法線方向の透過率と同等か、あるいは高ければ、液晶装置を横方向から観察しても表示のにじみ(ボケ)の無い鮮鋭な表示を得ることができる。即ち、T(0,0)≦T(φ1±90,θ)の関係を満足し、T(0,0)≦T(φ2±90,θ)の関係を満足するものとすることが好ましい。
【0058】
次に、極角θnが−60°≦θ≦+60°の範囲において、平行線透過率T(φ,θ)が2%以上であり、50%以下であることが好ましい。即ち、2%≦T(φ,θ)≦50%、但し−60°≦θ≦+60°の関係を満足することが好ましい。 このような関係とすることで、明るく、表示のにじみ(ボケ)の無い鮮鋭な反射表示を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態の液晶装置においては、図2(b)に示すように透過表示を行うことができるものであるので、バックライト装置60の光源60aから出射された光を液晶装置10に対する入射光L3として利用し、半透過反射層31を透過した光を観察者が透過光L4として認識すると考えると、図4の座標軸において、観察者が透過光L4を観察する場合に散乱が弱い方向(換言すると平行線透過率の高い方向)から見れば、表示のにじみ(ボケ)の少ない状態を得ることができると考えられる。これは、本発明者らが知見した、バックライト装置60からの光が透過光として指向性前方散乱フィルム18を通過する際の散乱が表示のにじみ(ぼけ)や輝度の低下に対して影響が大きいという知見に基づくものである。ここで観察者が透過光L4を観察する場合に散乱が弱い方向(換言すると平行線透過率の高い方向)とは、図4の座標軸において、観察者が反射光L2を観察する場合に散乱が弱い方向(換言すると平行線透過率の高い方向)と同じ方向である。
【0060】
即ち、透過表示を行う場合、バックライト装置60の光源60aから出射され入射光L3が半透過反射層31を通過後、指向前方性散乱フィルム18を通過する場合には散乱が少ない方が表示のにじみ(ボケ)を少なくする上で好ましいと考えられるからである。
【0061】
さらに、本実施形態の液晶装置においては、指向性前方散乱フィルム18とバックライト装置60とは、該バックライト装置60の出射方向(バックライト装置の集光方向)が、図4の座標軸において入射光L1が指向性前方散乱フィルム18を透過した上記平行線透過光が最大透過率Tmaxを示すときと最小透過率Tminを示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように設けられている。
図2(b)に示すように本実施形態の液晶装置において透過表示を行う場合は、照射装置60の光源60aから出射され、さらに拡散板62を通過した入射光L3は液晶パネル11内部の半透過反射層31を通過した後に指向性前方散乱フィルム18を通過する際に散乱が比較的少ない方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向に透過光L4として多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかもバックライト装置60からの入射光L3が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0062】
また、指向性前方散乱フィルム18とバックライト装置60とは、バックライト装置60の出射方向が、入射光L1が指向性前方散乱フィルム18を透過した上記平行線透過光が最大透過率を示すときの入射光の入射側の方位角φ1と極角θ1に合うように設けられていることがより好ましい。このような構成とすることにより、図2(b)示すように透過表示を行うときに照射装置60から出射され、さらに拡散板62を通過した入射光L3は液晶パネル11内部の半透過反射層31を通過した後に指向性前方散乱フィルム18を通過する際に散乱ができるだけ少ない方向、すなわち、平行線透過光量ができるだけ多い方向に透過光L4として多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光がさらに効率良く利用されて、輝度をさらに向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質をよりいっそう向上できる。
【0063】
(第2実施形態の液晶装置)
図7に示すものは、本発明に係る液晶装置の第2実施形態の液晶装置40を示す断面図である。
この実施形態の液晶装置40は、先の図1〜図3を基に説明した第1実施形態の液晶装置10に設けられていたバックライト装置60の拡散板62に代えて、液晶パネル11とバックライト装置60の拡散板62との間に、輝度を高める目的で拡散板62から出た光を集めるプリズムシート(集光シート)71を一枚設けた半透過反射型の単純マトリクス構造のものであって、その他の基本的な構造において第1実施形態と同様な部分には同一符号を付してそれら構成要素の説明を省略し、以下に異なる構成要素を主体に説明する。
【0064】
本実施形態の液晶パネル40において第1実施形態の構造と異なるのは、バックライト装置60にプリズムシート71が設けられた点である。
本実施形態で用いられるプリズムシート71とは、基本構造の面から見れば、特表平11−500071等に開示されている輝度増強フィルムを適宜用いることができる。このプリズムシート71は、ベース又は基板72上に設けられた第1の層73に一連の突出部74と溝75とが交互に形成されてなるものである。
【0065】
ベース又は基板72は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ガラス又はこれらの組み合わせ等から形成されている。第1の層73は、例えば、オリゴマー樹脂層に所望のミクロ溝構造を形成した後、上記オリゴマー樹脂の標準ガラス転位温度に等しい温度において該第1の層73を熱処理し、得られるポリマーのガラス転移温度を該熱処理において約333Kを越えるまでに高めること等により形成されたものである。上記オリゴマー樹脂は、エポキシジアクリレート、臭素改質エポキシジアクリレート、イソボニルアクリレート、メチルメタクリレート、シクロヘキシルクロロアクリレート、2−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、スチレン、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェノキシエチルアクリレート、トリブロモフェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、アルコキシ化エポキシジアクリレート、臭素改質アルコキシル化エポキシジアクリレート又はこれらの組み合わせ等が用いられる。
【0066】
ここで本実施形態において用いるプリズムシート71は、上記課題を解決するために、指向性前方散乱フィルム18との位置関係を半透過反射型液晶装置に好適な特定の位置関係としたものである。
本実施形態の指向性前方散乱フィルム18とプリズムシート71とは、プリズムシート71の集光方向が、図4の座標軸において指向性前方散乱フィルム18の一面側から入射させた入射光L1が指向性前方散乱フィルム18を透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光L1の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように設けられている。
【0067】
指向性前方散乱フィルム18とプリズムシート71とが上記のような条件を満たすような位置関係にする手段としては、プリズムシート71の突出部74の両側の斜面の傾斜角度を変更するか、あるいは突出部74の頂部の角度を変更する方法等を挙げることができ、本実施形態では図7に示すように突出部74の両側の斜面のうちバックライト装置60の光源60aと向き合う斜面74aが急斜面とされており、他方の斜面(観察者E)と向き合う斜面74bが緩斜面とされている。
【0068】
また、指向性前方散乱フィルム18とプリズムシート71とは、プリズムシート71の集光方向が、指向性前方散乱フィルム18の一面側から入射させた入射光L1が指向性前方散乱フィルム18を透過した平行線透過光が最大透過率を示すときの入射光L1の入射側の方位角φ1と極角θ1合うように設けられているのがより好ましい。
【0069】
本実施形態の液晶装置において、透過表示を行う場合は、照射装置60の光源60aから出射され、さらに拡散板62により液晶パネル11側に拡散された入射光L3はプリズムシート71で集光され、さらにこの集光された入射光L3は液晶パネル11内部の半透過反射層31を通過した後に指向性前方散乱フィルム18を通過する際に散乱が比較的少ない方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向に透過光L4として多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかもバックライト装置60からの入射光L3が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
本実施形態の液晶装置において、反射表示を行う場合は、先に述べた第1実施形態の液晶装置と同様にして反射表示を行うことができ、反射表示のにじみ(ボケ)に関して先の第1実施形態の液晶装置と同等の効果を得ることができる。
【0070】
(第3実施形態の液晶装置)
図8に示すものは、本発明に係る液晶装置の第3実施形態の液晶パネル50を示す断面図である。
この実施形態の液晶装置50は、先の図7を基に説明した第2実施形態の液晶装置40の液晶パネル11とバックライト装置60の拡散板62との間に設けられていたプリズムシート(集光シート)71に代えてプリズムシート(集光シート)81、91を設け、指向性前方散乱フィルム18の法線方向の平行線透過光の透過率が以下の関係を満足するように設けられた半透過反射型の単純マトリクス構造のものであって、その他の基本的な構造において第2実施形態と同様な部分には同一符号を付してそれら構成要素の説明を省略し、以下に異なる構成要素を主体に説明する。
【0071】
本実施形態の液晶装置50において第2実施形態の構造と異なるのは、液晶パネル11とバックライト装置60の拡散板62との間に二枚のプリズムシート81が設けられ、かつこれらのプリズムシート81の構造が第2実施形態で用いたプリズムシート71と異なり、指向性前方散乱フィルム18は法線H方向から入射した入射光が該指向性前方散乱フィルム18を透過した平行線透過光の平行線透過率をT(0,0)と定義すると10%≦T(0,0)の関係を満足するものである点である。
【0072】
本実施形態で用いられる各プリズムシート81は、基本構造の面から見れば、特表平11−500071等に開示されている輝度増強フィルムを適宜用いることができる。プリズムシート81は、ベース又は基板82上に設けられた第1の層83に一連の突出部84と溝85とが交互に形成されてなるものである。また、プリズムシート81を構成する各構成部材の材質は、第2実施形態で用いたプリズムシート71を構成する各構成部材の材質と同様のものが用いられる。
【0073】
ここで本実施形態において用いる二枚のプリズムシート81は、上記課題を解決するために、指向性前方散乱フィルム18との位置関係を半透過反射型液晶装置に好適な特定の位置関係としたものである。
本実施形態の指向性前方散乱フィルム18と二枚のプリズムシート81とは、二枚のプリズムシート81の集光方向が、指向性前方散乱フィルム18の法線H方向に合うように設けられている。
【0074】
指向性前方散乱フィルム18と二枚のプリズムシート81とが上記のような条件を満たすような位置関係にする手段としては、各プリズムシート81の突出部84の両側の斜面の傾斜角度を変更するか、あるいは突出部84の頂部の角度を変更する方法、二枚のプリズムシート81を積層する際に、上側(液晶パネル11側)のプリズムシート81の溝85の延びる方向と下側(拡散板62側)のプリズムシート81の溝85の延びる方向が異なるように配置する方法等を挙げることができ、本実施形態では図8に示すように各プリズムシート81の突出部84の頂部の角度が90度とされ、突出部84の両側の斜面84a、84bが同じ傾斜角度とされており、上側のプリズムシート81の溝85の延びる方向と下側のプリズムシート81の溝85の延びる方向(上側のプリズムシート81の突出部84の稜線の延びる方向と下側のプリズムシート81の突出部84の稜線の延びる方向)が方位角方向で90度異なるように配置されている。
【0075】
本実施形態の液晶装置50において、透過表示を行う場合は、照射装置60の光源60aから出射され、さらに拡散板62により液晶パネル11側に拡散された入射光L3はプリズムシート81、81で集光され、さらにこの集光された入射光L3は液晶パネル11内部の半透過反射層31を通過した後に指向性前方散乱フィルム18を通過する際に散乱が比較的少ない方向(指向性前方散乱フィルム18の法線方向)、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向(指向性前方散乱フィルム18の法線方向)に透過光L4として多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかもバックライト装置60からの入射光L3が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。また、本実施形態の液晶装置において、反射表示を行う場合は、先に述べた第1実施形態の液晶装置と同様にして反射表示を行うことができ、反射表示のにじみ(ボケ)に関して先の第1実施形態の液晶装置と同等の効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施形態の液晶装置50においては、上側のプリズムシート81の溝85の延びる方向と下側のプリズムシート81の溝85の延びる方向(上側のプリズムシート81の突出部84の稜線の延びる方向と下側のプリズムシート81の突出部84の稜線の延びる方向)が方位角方向で90度異なるように配置されており、この二枚のプリズムシート81と指向性前方散乱フィルム18とが半透過反射型液晶装置に好適な上記の特定の位置関係で配置されているので、液晶パネルの正面方向(図4の法線Hに沿った方向)から透過表示を見たときに、明るく鮮明な表示が得られるという利点がある。
【0077】
なお、これまで説明した第1、第2、第3実施形態においては、単純マトリクス型の半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を2端子型スイッチング素子あるいは3端子型スイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型の半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。
それらのアクティブマトリクス型の液晶表示装置に適用した場合、図2、図7、図8に示すストライプ状の電極に代えて、一方の基板側に共通電極を設け、他方の基板側に多数の画素電極を画素毎に設け、各画素電極を個々に3端子型のスイッチング素子である薄膜トランジスタで駆動する型のTFT(薄膜トランジスタ)駆動型の構造、一方の基板側にストライプ状の電極を設け、他方の基板側に画素毎に画素電極を設け、これらの画素電極を個々に2端子型の線形素子である薄膜ダイオードで駆動する2端子型線形素子駆動型の液晶表示装置などに適用できるのは勿論であり、これらのいずれの型の液晶表示装置に対しても、本発明は上記指向性前方散乱フィルムを上記した特定の方向に配置し、さらに上記指向性前方散乱フィルムと上記照明装置とは、該照明装置の集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように、より好ましくは上記照明装置の集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときの入射光の入射側の方位角φ1と極角θ1に合うように設けられるのみで適用可能であるので、極めて容易に種々の形態の液晶表示装置に適用することができる特徴を有する。また、上記のいずれの型の液晶表示装置に対しても、本発明は上記指向性前方散乱フィルムを上記した特定の方向に配置し、さらに上記指向性前方散乱フィルムと上記プリズムシートとは、該プリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように、より好ましくは上記照明装置の集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときの入射光の入射側の方位角φ1と極角θ1に合うように、あるいは上記指向性前方散乱フィルムの法線方向と合うように設けられるのみで適用可能であるので、極めて容易に種々の形態の液晶表示装置に適用することができる特徴を有する。
【0078】
また、これまで説明した第1、第2、第3実施形態においては、上側の基板17と、指向性前方散乱フィルム18との間に位相差板が一枚設けられた半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を、位相差板が複数枚設けた半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。また、上記の実施形態においては、下側の基板28の照明装置60側に位相差板と偏光板を設けた半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を、下側の基板28の照明装置60側に位相差板と偏光板を設けていない半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。
【0079】
(電子機器の実施形態)
次に、上記の第1〜第3の実施形態の液晶パネル10、40、50のいずれかを備えた電子機器の具体例について説明する。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。
図9(a)において、符号200は携帯電話本体を示し、符号201は上記の液晶パネル10、40、50のいずれかを用いた液晶表示部を示している。
図9(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。
図9(b)において、符号300は情報処理装置、符号301はキーボードなどの入力部、符号303は情報処理装置本体、符号302は上記の液晶パネル10、40、50のいずれかを用いた液晶表示部を示している。
【0080】
図9(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。
図9(c)において、符号400は時計本体を示し、符号401は上記の液晶パネル10、40、50のいずれかを用いた液晶表示部を示している。
図9(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、上記の液晶パネル10、40、50のいずれかを用いた液晶表示部を備えたものであるので、表示にじみ(ボケ)がなく、明るく鮮明な表示が得られ、表示品質の優れたものとなる。
【0081】
【実施例】
「試験例1」
透過型のホログラム技術で作製した指向性前方散乱フィルムを用いて透過率の測定試験を行った。
水平に設置した(50×40)mmの平面視長方形状の指向性前方散乱フィルムの表面中心部に(ハロゲン)ランプの光源(指向性前方散乱フィルムから300mm離れた位置に設置)から光を入射し、指向性前方散乱フィルムの裏面側にCCDからなる受光素子を有する受光部(指向性前方散乱フィルムから300mm離れた位置に設置)を、光源からの入射光に対して正視対向する方向に各々設置し、光源の極角と方位角を図4に示すように規定し、受光部において2度視野で平行線透過率を測定した。
【0082】
光源の極角θn(指向性前方散乱フィルムの法線に対する入射光の入射角度)を±60゜の範囲で調整し、極角の角度毎の平行線透過率(%)を測定した結果を図10に示す。また、方位角φmについては、0゜、+30゜、+60°、+90°、+180°(いずれも図4に示す右回り方向)と、−30゜、−60°、−90°(いずれも図4に示す左回り方向)のいずれのデータについても計測し、図10にまとめて記載した。
【0083】
図10に示す結果から、0°と180°の場合の測定結果が全く同一曲線になり、平行線透過光の最大透過率Tmaxと最小透過率Tminとの関係は、(Tmax/Tmin)≒50:6≒8.33となり、本発明で望まれる2を超える値を示した。次に、全体的に散乱強度を強めた別の指向性前方散乱フィルムを用いて同様の透過率の測定試験を行った結果を図11に示す。図11に示す特性を見ると、平行線透過光の最大透過率Tmaxと最小透過率Tminとの関係は、(Tmax/Tmin)≒12:3≒4であり、本発明で望まれる2を超える値を示した。
【0084】
また、図10と図11に示すいずれの例の指向性前方散乱フィルムにおいても、方位角φmが±60°の範囲において、概ね、極大と極小の数値がほぼ同じ角度に存在することが明らかになった。例えば、図10に示す結果から、極大値は極角θnが−(30)°の場合、極小値は極角θnが+(23)゜の場合、図11に示す結果から、極大値は極角θnが−(20)°の場合、極小値は極角θnが+(18)゜の場合であった。
【0085】
次に、図10、図11に示す例の指向性前方散乱フィルムにおいて、方位角φmが±90°の場合、いずれの例においても極角θnが0の場合に一番透過率が低い、言い換えれば、入射時の散乱が強い(拡散透過光が多い)ことも判明した。また、図10、図11に示す例の指向性前方散乱フィルムにおいて、全ての条件の場合の透過率においていずれも2〜50%の範囲に入っていることも明らかである。
【0086】
図12は、従来の等方性前方散乱フィルム(大日本印刷(株)製商品名:IDS−16K)を用いて構成された半透過反射型液晶装置の試料において、極角と透過率の関係を方位角毎に測定した結果を示すものである。試験に際し、先の第1の試験例と同じ液晶装置を用い、指向性前方散乱フィルム(異方性前方フィルム)を今回使用の等方性散乱フィルムに変更して測定した結果である。
【0087】
図12に示す結果から、平行線透過光の透過率はいずれの方位角でもほとんど変化が見られず、ほぼ1つの曲線に重なるとともに、極角が0°の場合を最大として極角を+領域か−領域に変化させても数%程度しか変化しないことが明らかである。この結果から、等方性前方散乱フィルムを半透過反射型液晶装置に用い反射表示を行っても、本発明の効果が得られないことが明らかである。
【0088】
「試験例2」
次に、先の試験の極角θ1と極角θ2を種々変化させた場合の指向性前方散乱フィルムと、照明装置を用いた半透過反射型カラー液晶表示装置(先の図10に示す測定に用いた指向性前方散乱フィルムと図7に示すような照明装置を用いた半透過反射型カラー液晶表示装置)を用いて反射表示を行ったときの輝度を蛍光灯点灯下のオフィスにおいて比較した。輝度としては、従来品の等方性前方散乱フィルムと、照明装置を用いた半透過反射型カラー液晶表示装置(先の図12に示す測定に用いた等方性散乱フィルムと、図7に示すような照明装置を用いた半透過反射型カラー液晶表示装置)の反射表示と比較し、従来品の半透過反射型カラー液晶表示装置よりも明るく認識できたものを〇、同等のものを△、暗いものを×として以下の表1に示した。
【0089】
「表1」
θ1(°) -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
θ2(°) 0 0 0 0 0 0 0 0 0
評価結果 × × × × × △ △ △ ×
θ1(°) -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
θ2(°) 10 10 10 10 10 10 10 10 10
評価結果 × × × × △ 〇 〇 〇 ×
θ1(°) -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
θ2(°) 20 20 20 20 20 20 20 20 20
評価結果 × × × × △ 〇 〇 〇 ×
θ1(°) -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
θ2(°) 30 30 30 30 30 30 30 30 30
評価結果 × × × × △ 〇 〇 〇 ×
θ1(°) -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
θ2(°) 40 40 40 40 40 40 40 40 20
評価結果 × × × × × △ △ △ ×
【0090】
表1に示す測定結果から明らかなように、平行線透過光が最大となる場合(拡散透過光が最小となる場合)の極角θ1が、−40°≦θ1≦0°の範囲、0°≦θ2≦40°の範囲であれば従来品と同程度の明るさを確保でき、−30°≦θ1≦−10°の範囲、10°≦θ2≦30°の範囲であれば従来品よりも明るさに優れている反射表示が得られる半透過反射型の液晶表示装置が提供できることがわかる。
【0091】
「試験例3」
指向性前方散乱フィルムの法線方向の平行線透過率T(0,0)を種々の値に変えた指向性前方散乱フィルムを用意し、この指向性前方散乱フィルムを備えた液晶表示装置の反射表示の明るさを蛍光灯点灯下のオフィスにおいて比較した。比較した従来品は先の試験例で用いたものと同じである。従来品の等方性前方散乱フィルムを用いた半透過反射型カラー液晶表示装置よりも明るく認識できたものを〇、同等のものを△、暗いものを×として以下の表2に示した。
【0092】
「表2」
T(0,0) 3% 5% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
評価結果 △ 〇 〇 〇 〇 〇 △ ×
表2に示す結果から明らかなように、3%≦T(0,0)≦50%、より好ましくは5%≦T(0,0)≦40%の範囲であれば、実際の使用環境下において従来よりも反射表示が明るい半透過反射型カラー液晶表示装置を提供できることが明らかである。 次に、図10、図11に示す結果から、指向性前方散乱フィルムの方位角φmをφ1±60°かつφ2±60°の範囲で規定した場合、常にθ1において平行線透過率の極大(言い換えれば拡散透過率の極小)を示し、θ2において平行線透過率の極小(言い換えれば拡散透過率の極大)を示すことも明らかである。
【0093】
「試験例4」
次に、透過型のホログラム技術で作製した指向性前方散乱フィルムを多数枚用意し、(Tmax/Tmin)の値を種々の値に調整した場合の半透過反射型のカラー表示装置の反射表示の明るさを先の従来品の等方性散乱フィルムを用いた半透過反射型液晶表示装置と比較した結果を以下の表3に記載した。従来品の半透過反射型の液晶表示装置に比べて2倍以上明るく認識できた場合は◎、従来品よりも明るく認識できたものは〇、同等の場合は△、暗い場合は×とした。
【0094】
「表3」
表3に示す結果から、先に説明した平行線透過率の極小値と極大値の比が2以上である場合に特に明るく認識できたことが明らかである。
【0095】
「試験例5」
指向性前方散乱フィルムにおいて平行線透過率が最小値(言い換えれば拡散透過率が最大値)または平行線透過率が最大値(言い換えれば拡散透過率が最小値)をとる時の方位角をφ2またはφ1とすると、φ2±60°、φ1±60°の範囲で極角θnを変化させて測定した透過光特性の極大値と極小値の比を測定した。この比を変化させて半透過反射型カラー液晶表示装置の反射表示の明るさを蛍光灯点灯下のオフィスにおいて比較した。比較した従来品は先の試験例で用いたものと同じである。従来品の等方性前方散乱フィルムを用いた半透過反射型カラー液晶表示装置よりも明るく認識できたものを〇、同等のものを△、暗いものを×として以下の表4に示した。
【0096】
「表4」
表4に示す結果から、極大値/極小値の値は1.5以上が好ましいことが明らかになった。即ち、指向性前方散乱フィルムの方位角φmをφ1±60°かつθ2±60°の範囲で規定した場合、平行線透過率の極小値と極大値の比が1.5以上であることが明らかである。
【0097】
「試験例6」
指向性前方散乱フィルムにおいて、極角θnを−60°≦θ≦+60°としたとき、平行線透過率Tの最大値と最小値を変化させて、半透過反射型カラー液晶表示装置の反射表示の明るさを蛍光灯点灯下のオフィスにおいて比較した。比較した従来品は先の試験例で用いたものと同じである。従来品のの等方性前方散乱フィルムを用いた半透過反射型カラー液晶表示装置よりも明るく認識できたものを〇、同等のものを△、暗いものを×として以下の表5に示した。
【0098】
「表5」
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 1% 1% 1% 1% 1% 1%
評価結果 × × △ △ △ ×
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 2% 2% 2% 2% 2% 2%
評価結果 × 〇 〇 〇 〇 〇
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 5% 5% 5% 5% 5% 5%
評価結果 △ 〇 〇 〇 〇 〇
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 10% 10% 10% 10% 10% 10%
評価結果 △ 〇 〇 〇 〇 △
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 20% 20% 20% 20% 20% 20%
評価結果 × 〇 〇 △ △ ×
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 30% 30% 30% 30% 30% 30%
評価結果 × △ △ × × ×
最大透過率Tmax 60% 50% 40% 30% 20% 10%
最小透過率Tmin 40% 40% 40% 40% 40% 40%
評価結果 × × × × × ×
【0099】
表5に示す結果から、最大値/最小値≧2を満足し、かつ、2%以上、50%以下の透過率が必要であることがわかる。
【0100】
「試験例7」
先の図10に示す測定に用いた指向性前方散乱フィルムと、図7に示すようなプリズムシート(米国3M製商品名:輝度向上フィルムBEF)付き照明装置を用いた半透過反射型カラー液晶表示装置を用い、このプリズムシートを集向させる方向が(i)方位角(指向性前方散乱フィルムの面内方向の角度(方位角φm))がφ=0度のときと、(ii)φ=30度のときの、それぞれの場合に極角方向(指向性前方フィルムの法線に対する角度(極角θn方向))をα=−40度から+20度の範囲で変更したときの透過表示の輝度を暗室において比較した。輝度としては、従来品の等方性前方散乱フィルム(先の図12に示す測定に用いた指向性前方散乱フィルム)と、図7に示すようなプリズムシート(米国3M製商品名:輝度向上フィルムBEF)付き照明装置を用いた半透過反射型カラー液晶表示装置の透過表示と比較し、従来品の半透過反射型カラー液晶表示装置よりも明るく認識できたものを〇、同等のものを△、暗いものを×として以下の表6に示した。図10に示す測定に用いた指向性前方散乱フィルムの平行線透過光特性における最大透過率Tmaxは50%であり、最小透過率Tminは5%であることから、(Tmax+Tmin)/2=27.5%となる。
なお、従来品の半透過反射型カラー液晶表示装置の輝度は、10cd/m2 であった。
【0101】
「表6」
【0102】
上記表6に示した結果からプリズムシートの集光方向を方位角=0度で、極角=−40度〜0度の範囲としたものは、いずれも平行線透過率が上記(Tmax+Tmin)/2=27.5%より大きく、従来品の半透過反射型カラー液晶表示装置によりも透過時の明るさが明るく認識できることがわかる。また、プリズムシートの集光方向を方位角=30度で、極角=−40度〜0度の範囲としたものは、いずれも平行線透過率が上記(Tmax+Tmin)/2=27.5%より大きく、当方的な散乱特性を示す前方散乱フィルムを用いた従来品の半透過反射型カラー液晶表示装置によりも透過時の明るさが明るく認識できることがわかる。
以上のことからプリズムシートの集光方向を、指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)が1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角及び極角の範囲に合うようにすることで、従来品の半透過反射型カラー液晶表示装置よりも明るい透過表示を実現できることがわかる。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の液晶装置によれば、上記指向性前方散乱フィルムと、上記照明装置又はプリズムシートとは、該照明装置又はプリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最大透過率を示すときと最小透過率を示すときの和(Tmax+Tmin)の1/2以上を示すときの入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲に合うように設けられたことにより、透過表示を行うときに、照射装置から出射され、さらに集光された光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱が比較的少ない方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0104】
また、上記10%≦T(0,0)なる関係を満足する指向性前方散乱フィルムを有する液晶装置において、さらにこの指向性前方散乱フィルムと上記プリズムシートとは、該プリズムシートの集光方向が、上記指向性前方散乱フィルムの法線方向に合うように設けられたことにより、透過表示を行うときに、照射装置から出射され、さらにプリズムシートで集光された光は液晶パネル内部の半透過反射層を通過した後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に散乱が比較的少ない法線方向、すなわち、平行線透過光量が比較的多い法線方向に多く出射されることとなり、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、しかも照明装置からの光が効率良く利用されて、輝度を向上させることができ、表示のにじみ(ボケ)が少なく、明るく鮮明な透過表示が得られ、表示品質を向上できる。
【0105】
また、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置において、上記指向性前方散乱フィルムを透過した平行線透過光が最小透過率を示す極角と方位角の場合の入射光側を上記液晶パネルの採光側になるように、最大透過率を示す極角と方位角の場合の入射光側を上記液晶パネルの観察方向側になるようにして指向性前方散乱フィルムを液晶パネルに配置してなるようにしたものにあっては、平行線透過光の最小透過率を示す場合の方位角φ2は入射角方向となり、平行線透過光の最大透過率を示す場合の方位角φ1は観察者方向になる。このように配置された指向性前方散乱フィルムを有する液晶装置ならば、指向性前方散乱フィルムに対して入射された光は入射時に強く散乱されるが、液晶パネル内部の反射層により反射された後に指向性前方散乱フィルムを通過する際に光が散乱される量が少なくなるので、表示のにじみ(ボケ)に対する影響は少なく、表示のにじみ(ボケ)の少ない鮮明な反射表示が得られる。
【0106】
更に、前述の種々構造の液晶装置を有する電子機器であるならば、表示のにじみ(ボケ)がなく、明るく鮮明な表示が得られ、鮮鋭な高品位の画像表示を行うことができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る第1実施形態の液晶パネルの平面図である。
【図2】 図1に示す液晶パネルのA−A線に沿う部分断面略図で、図2(a)は反射型として使用時の例を示す図、図2(b)は透過型として使用時の例を示す図である。
【図3】 図3は図2に示す液晶パネルのカラーフィルタ部分を示す拡大断面図である。
【図4】 図4は指向性前方散乱フィルムと光源と受光部と極角と方位角と平行線透過光の位置関係を示す説明図である。
【図5】 図5は指向性前方散乱フィルムと光源と受光部の位置関係を示す説明図である。
【図6】 図6(A)は指向性前方散乱フィルムに対する入射光と平行線透過光、拡散透過光、並びに後方散乱光と前方散乱光の関係を示す説明図、図6(B)は指向性前方散乱フィルムの断面構造の一例と入射光及び反射光の関係を示す説明図である。
【図7】 図7は本発明に係る第2実施形態の液晶装置の断面図である。
【図8】 図8は本発明に係る第3実施形態の液晶装置の断面図である。
【図9】 本発明の電子機器の応用例を示すもので、図9(a)は携帯型電話機を示す斜視図、図9(b)は携帯型情報処理装置の一例を示す斜視図、図9(c)は腕時計型電子機器の一例を示す斜視図である。
【図10】 図10は実施例において測定された極角と透過率の関係の第1の例を方位角毎に測定した結果を示す図である。
【図11】 図11は実施例において測定された極角と透過率の関係の第2の例を方位角毎に測定した結果において、平行線透過率の極小値と極大値の比が4の場合の測定結果を示す図である。
【図12】 図12は比較例において測定された極角と透過率の関係を方位角毎に測定した結果を示す図である。
【図13】 図13は従来の前方散乱板タイプの半透過反射型液晶装置の要部を示す拡大概略断面図で、図13(a)は反射型として使用時の例を示す図、図13(b)は透過型として使用時の例を示す図である。
【符号の説明】
θn…極角、
φm…方位角、
K…光源、
J…受光部、
LT…拡散透過光、
L1、L3…入射光、
L2…反射光、
L4…透過光、
L5…平行線透過光、
Tmax(φ1,θ1)…最大透過率、
Tmin(φ2,θ2)…最小透過率、
10、40、50…液晶装置、
11…液晶パネル、
17、28…基板、
18…指向性前方散乱フィルム、
20…カラーフィルタ層、
23、35…電極層、
31…半透過反射層、
60…照明装置、
62…拡散板、
71、81…プリズムシート、
200…携帯電話本体、
300…携帯型情報処理機器、
400…腕時計型電子機器。
Claims (7)
- 一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、一方の前記基板の前記液晶層側に設けられた半透過反射層と、他方の前記基板の前記液晶層側とは反対側に設けられた指向性前方散乱フィルムと、を具備した液晶パネルと、当該液晶パネルの前記一方の基板の前記液晶層側と反対側に設けられた照明装置とを備え、
前記他方の基板の前記液晶層とは反対側から前記他方の基板に入射した光が前記半透過反射層で反射され、前記他方の基板を透過して観察される反射表示と、
前記照明装置から出射した光が前記液晶パネルを透過して観察される透過表示とを行う液晶装置であって、
前記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの法線と方位角0°の方向とを含む面への入射光の水平投影と該法線とのなす角度を極角θnと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最大値T max となる入射光の方向を(φ1,θ1)と定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最小値T min となる入射光の方向を(φ2,θ2)と定義した時、
φ1=φ2+180°±10°の関係を満足し、
前記指向性前方散乱フィルムは、(φ1,θ1)の方向が前記反射表示の観察方向側となるように配置されてなり、
前記照明装置の光出射方向は、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が(T max +T min )の1/2以上となる入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲内となるように設定されていることを特徴とする液晶装置。 - 前記指向性前方散乱フィルムと前記照明装置とは、前記照明装置の光出射方向が、(φ1,θ1)の方向と一致するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
- 一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、一方の前記基板の前記液晶層側に設けられた半透過反射層と、他方の前記基板の前記液晶層側とは反対側に設けられた指向性前方散乱フィルムと、を具備した液晶パネルと、当該液晶パネルの前記一方の基板の前記液晶層側と反対側に設けられた照明装置と、該照明装置からの光を該液晶パネル側に集光するために該液晶パネルと該照明装置との間に設けられた一枚以上のプリズムシートとを備え、
前記他方の基板の前記液晶層とは反対側から前記他方の基板に入射した光が前記半透過反射層で反射され、前記他方の基板を透過して観察される反射表示と、
前記照明装置から出射した光が前記液晶パネルを透過して観察される透過表示とを行う液晶装置であって、
前記指向性前方散乱フィルムの面内方向の入射光角度を方位角φmと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの法線と方位角0°の方向とを含む面への入射光の水平投影と該法線とのなす角度を極角θnと定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最大値T max となる入射光の方向を(φ1,θ1)と定義し、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が最小値T min となる入射光の方向を(φ2,θ2)と定義した時、
φ1=φ2+180°±10°の関係を満足し、
前記指向性前方散乱フィルムは、(φ1,θ1)の方向が前記反射表示の観察方向側となるように配置されてなり、
前記プリズムシートの集光方向は、前記指向性前方散乱フィルムの平行線透過率が(T max +T min )の1/2以上となる入射光の入射側の方位角φmと極角θnの範囲内となるように設定されていることを特徴とする液晶装置。 - 前記指向性前方散乱フィルムと前記プリズムシートとは、前記プリズムシートの集光方向が、(φ1,θ1)の方向と一致するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
- 前記一方の基板の液晶層側と前記他方の基板の液晶層側に液晶駆動用の電極が設けられてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液晶装置。
- 前記一対の基板のどちらか一方の液晶層側にカラーフィルタが設けられてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の液晶装置。
- 前記請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液晶装置を表示手段として備えたことを特徴とする電子機器。
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