JP4152703B2 - 光学フィルムおよび該フィルムからなる光学補償素子、並びに当該補償素子を組み込んだ液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の重合性官能基を有するディスコティック液晶性化合物からなる光学フィルムおよび該光学フィルムを配置した液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物を光学材料へ適用するための研究開発が活発に行われており、既に実用化されているものも数多くある。液晶化合物を光学材料として用いる場合、配向後固定化された液晶の配向構造が、実使用条件下で保持されることが必須となる。液晶の配向構造を保持する方法として、重合性の液晶化合物を用いる方法、高分子液晶物質を用いる方法、更には、重合性の反応基を有する高分子液晶物質を用いる方法が提案されている。
【0003】
重合性の液晶化合物を用いる方法として、特表平11−513019号公報または特表平11−513360号公報には、メソゲンとしてベンゼン環2個あるいは3個をエステル基で結合したものが挙げられている。これらの低分子液晶化合物を光学フィルムの材料として用いる場合には、低分子液晶化合物を加熱溶融し液晶状態で基板フィルム上に塗布する方法が考えられるが、この方法では、光学フィルムに要求される膜の均一性や膜厚精度を達成するのは困難である。また、溶液としてフィルム基板上に塗布する場合には、溶液粘度が低く、塗布自体が困難である場合が多い。従って、前記公報では、自立型の光学フィルムを作製する場合には、ガラスセルの中に液晶材料を充填し、加熱下で紫外線照射を行う等により硬化させた後、ガラス基板を取り除き自立型の光学フィルムとする方法が提案されているが、フィルム基板上に塗布する方法と比較すると煩雑である。
【0004】
上記とは異なる重合性液晶化合物であるディスコティック液晶化合物を用いたものとして、特開平7−306317号公報、特開平7−325221号公報、特開平8−27284号公報、特開平9−104656号公報などが知られているが、これらの公報に記載された重合性基はほとんどが(メタ)アクリロイル基であり、重合・架橋にあたってはいわゆる酸素阻害が起きるため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行う必要があり、補償フィルムの製造を煩雑にしている。(メタ)アクリロイル基以外の重合性基としてビニルオキシ基やオキシラニル(エポキシ)基も例示されているが、ビニルオキシ基は弱酸によっても容易に除去されやすく、またエポキシ基も高反応性のゆえに、合成の最後に過酸を使用して当該基を導入するという困難な方法が採られている。
【0005】
高分子液晶物質を用いる方法として、特開平11−158258号公報に開示されているように、配向保持能に優れた液晶性ポリエステルが提案されている。しかしながら、モバイル機器の普及に伴い、これら液晶性ポリエステルからなる光学フィルムに対して、より厳しい使用環境での配向保持能、より優れた機械的強度が求められている。
【0006】
一方、重合性の反応基を有する高分子液晶物質を用いる方法としては、特開平9−3454号公報等に、高分子主鎖に重合性反応基を導入する方法、側鎖に重合性反応基を有するモノマー単位を導入する方法が提案されているが、これらいずれの方法においても液晶性を低下させるため、機械的強度を十分に高めるまでに多量の重合性反応基の導入には限度があり、他の手法が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(メタ)アクリロイル基のように架橋時に不活性ガス雰囲気を必要とするような煩雑な工程を必要とせず、またエポキシ基のような合成が困難な官能基を含まず合成の容易な重合性のディスコティック液晶性化合物を提供し、液晶配向固定化後の配向保持能および機械的強度に優れた光学フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、合成が容易でありかつ液晶配向性も良好な重合性のディスコティック液晶性化合物について検討した結果、重合性反応基としてオキセタニル基を選定することで得られる重合性のディスコティック液晶性化合物を見いだし、該重合性の液晶性化合物を液晶配向後、重合(架橋)してフィルム化することにより、液晶配向固定化後の配向保持能、機械的強度に優れる新たな光学フィルムを開発したものである。
【0009】
すなわち本発明の第1は、オキセタニル基を有するディスコティック液晶性化合物からなり、当該化合物が液晶状態で形成した配向状態を光および/または熱により架橋固定化したことを特徴とする光学フィルムに関する。
本発明の第2は、前記ディスコティック液晶性化合物の配向がハイブリッド配向であることを特徴とする前記記載の光学フィルムに関する。
本発明の第3は、前記記載の光学フィルムを少なくとも一層有することを特徴とする光学補償素子に関する。
さらに本発明の第4は、前記記載の光学補償素子を少なくとも1枚組み込んだことを特徴とする液晶表示素子に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光学フィルムは、オキセタニル基を有するディスコティック液晶性化合物からなり、当該化合物が液晶状態で形成した配向状態を光および/または熱により架橋固定化することにより得ることができる。
【0011】
本発明に使用されるオキセタニル基を有するディスコティック液晶性化合物は、一般に母核となるディスコティック液晶性化合物(メソゲン)を分子の中心とし、当該ディスコティック液晶性化合物との結合部位とは反対側にオキセタニル基を結合した直鎖のアルキル基、アルコキシ基、ベンゼン環1個から3個程度を単結合、エステル結合基(−CO−O−)やエーテル結合基(−O−)等を介して結合した基等がその側鎖として放射状に置換された構造を有するものである。母核となるディスコティック液晶性化合物(メソゲン)としては、例えば2,3,7,8,12,13−ヘキサヒドロキシトルクセン、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン、2,3,7,8,12,13−ヘキサヒドロキシ−5,10,15−トリオキサトルクセン、ヘキサヒドロキシベンゼン、ロイコキニザリン、1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロキシ−アントラセン−9,10−ジオン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンおよびこれらのアセチル化物などを用いることができる。なかでも、2,3,7,8,12,13−ヘキサヒドロキシトルクセン、3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンおよびこれらの反応性誘導体が好ましい。
【0012】
これらの化合物については、C. Destrade,Mol. Cryst. Liq. Cryst., 71, 111(1981),B. Kohne,Angew. Chem., 96, 70(1984),J. M. Lehn,J. Chem. Soc, Chem. Commun., 1794(1085),J. Zhang,J. S. Moore,J. Am. Chem. Soc., 116, 2655(1994) や竹中俊介、”液晶の化学”、化学総説、22、60(1994)に記載されている。また、ディスコティック液晶については、C.Destradeらにより、その分子の配向秩序によってND相(discotic nematic phase)、Dho相(hexagonal ordered columnar phase)、Dhd相(hexagonal disordered columnar phase)、Drd相(rectangular disordered columnar phase)、Dob相(oblique columnar phase)のように分類されている(C.Destrade et al.Mol.Cryst.Liq.Cryst.106、121(1984))。
【0013】
本発明において、これらの分子の配向秩序は特に限定はされないが、配向の容易さの観点から、配向秩序の最も低いND 相を少なくとも有する材料が好ましく、特に好ましいのはND相のみを唯一液晶相として有するものである。
本発明のディスコティック液晶性化合物の合成に使用されるオキセタニル基は、ビニルオキシ基、エポキシ基等の他のカチオン重合性の基と比較して脱離や開環等の副反応が少ないため各種の合成反応が容易になる。
【0014】
オキセタニル基の構造としては下記のものが特に好ましい。
【化1】
【0015】
オキセタニル基を利用した液晶も知られているが、いずれもオキセタニル基の開環重合で得られるポリエーテルを主鎖骨格にするものであり、前述のメソゲンとしてベンゼン環2個あるいは3個を−CO−O−や−O−で結合した基を側鎖として組み込み液晶性を発現させる側鎖型液晶性高分子である(元井正敏、高分子加工、44(1)、12(1995)、 遠藤竜太、元井正敏 他、Polymer Preprints、 Japan、 48(2)、 272(1999)等)。
しかしながらディスコティック液晶性化合物にオキセタニル基を導入した例は知られていない。
【0016】
ディスコティック液晶性化合物に結合させるオキセタニル基を有する化合物の合成法としては、通常の有機化学で用いられる方法を適用することができ、特に限定されるものではない。例えば、まずオキセタニル基部分と必要に応じて液晶化学の分野で一般に用いられているスペーサ部分とをWilliamsonのエーテル合成などの方法や、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの縮合剤を用いるエステル合成法等で合成することができる。さらに、液晶性を制御する目的でアルコール、フェノール、カルボン酸などの各種化合物を次々に反応させることもあり、適宜保護基の活用を考慮してもよい。合成されたオキセタニル基を有する化合物は、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの方法で精製してもよい。特に結晶性がある程度高いものについては、再結晶は有効な手段であり、常温で再結晶が不可能な化合物についても、−20℃などの低温に冷却することで再結晶が可能になることもある。このようにして得られたオキセタニル基を有する化合物は、主に1H−NMR(核磁気共鳴法)などの分析手段により、同定が可能である。
【0017】
前記のスペーサ部分は、単結合または炭素数が1から8の直鎖状炭化水素基である。なお、目的とする化合物が液晶性を持つなら、スペーサ部分は存在せずに、剛直な構造を持つ部分とカチオン重合性基部分が直接結合(単結合)していてもよい。一般に、スペーサ部分が短すぎると液晶性が発現する温度領域が狭くなる恐れがあり、またスペーサ部分が長すぎても、重合・架橋後のフィルムの耐熱性が悪化する恐れがあるため、スペーサ部分の炭素数は2から6であることが好ましい。
【0018】
かくして得られるオキセタニル基を有する化合物は、前記のディスコティック液晶性化合物と反応させることにより本発明のオキセタニル基を結合したディスコティック液晶性化合物を得ることができる。反応は両者の有する官能基の性質とオキセタニル基の反応性を考慮して、通常の有機化学で使用される反応から適宜な条件を選べばよい。なお、オキセタニル基を有する化合物としてオキセタン骨格の合成で得られる化合物を上記のような反応を行わずに直接ディスコティック液晶性化合物と反応させてもよく、また得られたオキセタニル基を結合したディスコティック液晶性化合物は前述のように再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの方法で精製してもよい。
【0019】
こうして得られたオキセタニル基を有するディスコティック液晶性化合物および/または該ディスコティック液晶性化合物を含有するディスコティック液晶性組成物を用い、当該液晶性化合物および/または液晶性組成物が液晶状態で形成した配向状態を光および/または熱により架橋固定化することにより、本発明の光学フィルムが製造される。
当該液晶性組成物としては、当該ディスコティック液晶性化合物と混和し、かつその配向を阻害せず、また本発明の目的を損なわない範囲において種々の化合物を適宜配合することができる。当該液晶性組成物中のディスコティック液晶性化合物の割合は、少なくとも30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが望ましい。ディスコティック液晶性化合物の含有量が30質量%未満では組成物中に占めるディスコティック液晶性化合物の濃度が低くなり、ディスコティック液晶相の発現が困難になる恐れがある。
【0020】
ディスコティック液晶性組成物に含有できる化合物としては、例えば、少なくとも1個のカチオン重合性基を有する化合物(ただし、本発明のディスコティック液晶性化合物を除く。)、フィルム形成能を有する各種高分子、ネマチック液晶性、コレステリック液晶性またはディスコティック液晶性を示す各種の低分子液晶性化合物あるいは高分子液晶性化合物などが挙げられる。また、本発明のディスコティック液晶性化合物および/またはディスコティック液晶性組成物にコレステリック液晶性を発現させる目的で、液晶性の有無を問わず各種の光学活性化合物を配合することもできる。これらの中でもカチオン重合性官能基が結合した化合物は、本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を架橋させる際に、ディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を構成するオキセタニル基と共架橋できるため好ましい。また、架橋後の液晶フィルムの熱安定性を損なわない範囲で、非架橋性の低分子化合物や各種高分子材料を組成物として含ませることも可能である。
【0021】
本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物は、光カチオン発生剤および/または熱カチオン発生剤(以下、両者を合わせてカチオン発生剤ということがある。)を含有することが望ましい。
本発明に使用できるカチオン発生剤について説明する。
本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物は、オキセタニル基を結合したディスコティック液晶性化合物からなるため、その架橋(重合)にはカチオン発生剤の添加が好ましい。これらのカチオン発生剤は、光および/または熱などの外部刺激でカチオンを発生しうる化合物が望ましく、例えばトリクロロメチル基やキノンジアジド基を有する化合物、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩等が挙げられる。必要によっては各種の増感剤を併用してもよい。
【0022】
光カチオン発生剤とは、適当な波長の光を照射することによりカチオンを発生できる化合物を意味し、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系などを例示することが出来る。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェート、ボレートなどが好ましく用いられる。具体的な化合物としては、Ar3S+SbF6 -、Ar3P+BF4 -、Ar2I+PF6 -(ただし、Arはフェニル基または置換フェニル基を示す。)などが挙げられる。また、スルホン酸エステル類、トリアジン類、ジアゾメタン類、β−ケトスルホン、イミノスルホナート、ベンゾインスルホナートなども用いることができる。
【0023】
熱カチオン発生剤とは、適当な温度に加熱されることによりカチオンを発生できる化合物であり、例えば、ベンジルスルホニウム塩類、ベンジルアンモニウム塩類、ベンジルピリジニウム塩類、ベンジルホスホニウム塩類、ヒドラジニウム塩類、カルボン酸エステル類、スルホン酸エステル類、アミンイミド類、五塩化アンチモン−塩化アセチル錯体、ジアリールヨードニウム塩−ジベンジルオキシ銅、ハロゲン化ホウ素−三級アミン付加物、などを挙げることができる。
【0024】
また、ルイス酸などのカチオンを発生する化合物を予め添加したディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を調製し、液晶配向形成後、あるいは液晶配向形成と同時にオキセタニル基を重合させる方法を採ることも出来るが、液晶配向工程と重合工程を分離できた方が、十分な液晶配向と架橋度(重合度)とを両立できることが多く、実際には以下に示すように熱あるいは光などにより顕在化するカチオン発生剤を用いることがより好ましい。
【0025】
熱カチオン発生剤を用いる場合には、熱カチオン発生剤の活性化温度(通常用いられる指標としては、50%解離温度)よりも低い温度でディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物の配向のための熱処理を行い、ついで本工程において活性化温度以上に加熱することにより、用いた熱カチオン発生剤を解離させ、発生したカチオンによりオキセタニル基を反応させることが出来る。この方法のメリットとしては、熱処理設備のみにより液晶配向と重合反応を行うことが出来る点が挙げられる。しかしながら、化合物の種類や液晶性組成物の組成比等によっては、熱(温度の違い)のみにより配向と重合の工程を分離しているため、配向時に若干重合反応が進行してしまったり、あるいは重合工程においても十分反応が進行しない場合が考えられる。したがって熱カチオン発生剤を利用する場合には、当該工程の反応制御を厳密に行う必要がある。
【0026】
光カチオン発生剤を用いた場合、液晶配向のための熱処理を暗条件(光カチオン発生剤が解離しない程度の光遮断条件)で行えば、ディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物は配向段階で重合や分解をすることなく、十分な流動性をもって配向することが出来る。この後、適当な波長光を発する光源からの光を照射することによりカチオンを発生させ、ディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を重合させればよい。
【0027】
これらのカチオン発生剤のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物中への添加量は、用いるディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物の構造や、オキセタニル基当量、液晶の配向条件などにより異なるため一概には言えないが、ディスコティック液晶性化合物に対して、通常100質量ppm〜20質量%、好ましくは1000質量ppm〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜7質量%、最も好ましくは0.5質量%〜5質量%の範囲である。100質量ppmよりも少ない場合には、発生するカチオンの量が十分でなく重合が進行しないおそれがあり、また20質量%よりも多い場合には、ディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物の液晶性が低下して液晶の配向が不完全になったり、得られるフィルム中に残存するカチオン発生剤の分解残存物等が多くなり耐光性などが悪化するおそれがあるため、どちらの場合も好ましくない。
【0028】
前記のカチオン発生剤の中では、光でカチオンを発生しうる光カチオン発生剤は、前記のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物が液晶相を発現する任意の温度でカチオンを発生させて重合を行うことができるため、特に好ましい。
【0029】
次に、本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を用いた光学フィルムの製造方法について説明する。光学フィルム製造の方法としてはこれらに限定されるものではないが、下記の方法に示される各工程を踏むことが望ましい。
【0030】
本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を配向させ、配向構造を架橋固定化した層(以下、液晶フィルムということがある)からなる光学フィルムは、配向基板上に形成されたままの形態(配向基板/(配向膜)/液晶フィルム)、配向基板とは異なる透明基板フィルム等に液晶フィルムを転写した形態(透明基板フィルム/液晶フィルム)、または液晶フィルムに自己支持性がある場合には液晶フィルム単層形態(液晶フィルム)のいずれの形態であってもよい。
【0031】
本発明に用いることのできる配向基板としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルムおよびこれらフィルムの一軸延伸フィルム等が例示できる。
【0032】
これらフィルムは製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物に対して十分な配向能を示すものもあるが、配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合には、必要によりこれらのフィルムを適度な加熱下に延伸する、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行う、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行う、酸化珪素等の斜方蒸着処理、あるいはこれらを適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いても良い。また表面に規則的な多数の微細溝を設けたアルミニウム、鉄、銅などの金属板や各種ガラス板等も配向基板として使用することができる。
【0033】
配向基板として光学的に等方でない、あるいは得られる光学フィルムが最終的に目的とする使用波長領域において不透明な配向基板を使用した場合は、配向基板上で形成された形態から光学的に等方なフィルムや最終的に使用される波長領域において透明な基板上に転写した形態も使用しうる。該転写方法としては、例えば特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルム層を粘・接着剤を介して、配向基板とは異なる他の透明な基板を積層した後に、必要により粘・接着剤に硬化処理を施し、該積層体から配向基板を剥離することで液晶フィルムのみを転写する方法等を挙げることができる。
【0034】
前記透明な基板としては、例えばフジタック(富士写真フィルム(株)製品)、コニカタック(コニカ(株)製品)などのトリアセチルセルロースフィルム、TPXフィルム(三井化学(株)製品)、アートンフィルム(JSR(株)製品)、ゼオネックスフィルム(日本ゼオン(株)製品)、アクリプレンフィルム(三菱レーヨン(株)製品)等が挙げられ、また必要によっては透明な基板として偏光板を使用することもできる。これら基板は接着性や耐候性の向上のために、鹸化処理やコロナ放電処理等の各種表面処理を施したものであってもよい。さらに、石英板やガラス板を使用することもある。なお、前記の偏光板は保護層の有無を問わず使用することができる。
【0035】
転写に使用される粘・接着剤は光学グレードのものであれば特に制限はなく、例えば、アクリル系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系およびこれらの混合物系や、熱硬化型および/または光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができる。
【0036】
前記反応性のものの反応(硬化)条件は、粘・接着剤を構成する成分、粘度や反応温度等の条件により変化するため、それぞれに適した条件を選択して行えばよい。例えば、光硬化型の場合は後述の光カチオン発生剤の場合と同様な光源を使用し同様な照射量でよく、電子線硬化型の場合の加速電圧は、通常25kV〜200kV、好ましくは50kV〜100kVである。
【0037】
本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物から形成される光学フィルムは、ディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物を溶融状態で配向基板上に塗布する方法や、ディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物の溶液を配向基板上に塗布する方法等により製造することができる。すなわち、配向基板上に塗布された塗膜は乾燥、熱処理(液晶の配向)および光照射および/または加熱処理(重合)を経て光学フィルムが製造される。
【0038】
前記溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物や該液晶性組成物を構成する成分等を溶解でき、適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限は無く、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸メトキシプロピル、乳酸エチルなどのエステル系、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤等を溶液に添加しても良い。さらに、着色を目的として液晶性の発現を妨げない範囲内で二色性染料や通常の染料や顔料等を添加することもできる。
【0039】
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法などを挙げることができる。塗布の後に、ヒーターや温風吹きつけなどの方法による溶媒除去(乾燥)工程を入れても良い。
【0040】
続いて、必要なら熱処理などにより液晶配向を形成し、光照射および/または加熱処理で重合(架橋)を行う。この加熱処理では、使用したディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物の液晶相発現温度範囲に加熱することにより、該液晶性組成物が本来有する自己配向能により液晶を配向させる。熱処理の条件としては、用いるディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜200℃、好ましくは20〜150℃の範囲である。あまり低温では、液晶の配向が十分に進行しないおそれがあり、また高温では、オキセタニル基や基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜30分、好ましくは10秒〜10分の範囲である。3秒よりも短い熱処理時間では、液晶の配向が十分に完成しないおそれがあり、また30分を超える熱処理時間では、生産性が極端に悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。該液晶性組成物が熱処理などにより液晶の配向が完成したのち、そのままの状態で配向基板上の液晶性組成物を重合反応により硬化させる。本発明における重合(架橋)工程とは、完成した液晶配向を重合(架橋)反応により液晶配向状態を固定化することであり、より強固な膜とすることを目的としている。
【0041】
光カチオン発生剤を用いた場合、カチオンを発生させるためには、適当な波長の光を発する光源からの光を照射すればよい。光照射の方法としては、用いる光カチオン発生剤の種類や量により照射波長、照射強度、照射時間等の最適値が異なるが、光カチオン発生剤の吸収波長領域付近にスペクトルを有するようなメタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザー、シンクロトロン光源などの光源からの光を照射し、光カチオン発生剤を解裂させる。光照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ/cm2、好ましくは10〜1000mJ/cm2の範囲である。ただし、光カチオン発生剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、あるいはディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物自身に光源波長の吸収能がある場合などにはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、あるいは吸収波長の異なる2種以上の光カチオン発生剤を混合して用いるなどの方法を採ることも出来る。
【0042】
光照射の時の温度は、前述の液晶を配向させる時の加熱温度範囲、すなわち通常10〜200℃、好ましくは20〜150℃の範囲で行えば十分である。また、本発明に用いられるディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性組成物は、カチオン重合性であるため、ラジカル重合と異なり空気中の酸素による重合阻害が起きないので不活性ガス雰囲気下で重合を行う必要もない
【0043】
以上のような工程により製造した液晶フィルムは、十分強固な膜になっている。具体的には、重合反応によりディスコティック液晶が3次元的に結合され、重合前に比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。本発明は、液晶配向という緻密な配向制御と、熱的・機械的強度の向上という相反する目的を同時に達成できる方法を提供する意味で工業的な意義が大きい。
【0044】
なお、本発明のディスコティック液晶性化合物またはディスコティック液晶性化合物からなるディスコティック液晶性組成物は、必要に応じて配合する化合物を適宜選定することにより、その配向構造を制御することができ、ネマチック配向、ねじれネマチック配向、コレステリック配向、ネマチックハイブリッド配向等を固定化した光学フィルムを製造することが可能であり、その配向構造によって種々の用途がある。
【0045】
これらの光学フィルムのなかで、例えばネマチック配向、ねじれネマチック配向を固定化した光学フィルムは位相差フィルムとして機能し、STN、TN、OCB、HAN、VA、MVA、IPS等の透過型、反射型または半透過型液晶表示素子の光学補償素子として使用できる。コレステリック配向を固定化した光学フィルムは、輝度向上用の偏光反射フィルム、反射型のカラーフィルター、選択反射能に基因する視角による反射光の色変化を生かした各種の装飾フィルムなどに利用できる。またネマチックハイブリッド配向を固定化したフィルムは、正面から見たときのリターデーションを利用して、位相差フィルムや波長板として利用でき、またリターデーション値の向き(フィルムの傾き)による非対称性を生かしてTN型液晶表示素子の光学補償素子(視野角改善フィルム)などに利用できる。また、1/4波長板機能を有する光学フィルムは、偏光板と組み合わせ、反射型の液晶表示素子やEL表示素子の反射防止フィルターとして用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げ本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお実施例で用いた各分析法は以下の通りである。
(1)化学構造決定
400MHzの1H−NMR(日本電子社製JNM−GX400)で測定した。
(2)光学顕微鏡観察
オリンパス光学社製の偏光顕微鏡BX−50を用いて、オルソスコープ観察およびコノスコープ観察を行った。また、液晶相の同定はメトラーホットステージ(FP−80)上で加熱しながらテクスチャー観察することにより行った。
(3)偏光解析
(株)溝尻光学工業所製エリプソメーターDVA−36VWLDを用いて行った。リターデーションの値は550nmの波長におけるものを採用した。
(4)膜厚測定
(株)小坂研究所製高精度薄膜段差測定器ET−10を主に用いた。また、干渉波測定(日本分光社製 紫外・可視・近赤外分光光度計V−570)と屈折率のデータから膜厚を求める方法も併用した。
【0047】
[合成例1]
2,3,7,8,12,13−ヘキサヒドロキシトルクセンの合成
攪拌機、還流冷却器を付けた5L三ツ口フラスコに、3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロピオン酸300gおよびポリリン酸1500gを入れ、窒素雰囲気下、65℃で30分反応させた。反応後冷却してから脱イオン水2000mLを徐々に添加した。室温で2時間攪拌後、5L分液ロートにフラスコ内容物を移し、クロロホルム600mLで抽出を6回行った。クロロホルム抽出液を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、5,6−ジメトキシインダノン−1を170g得た。得られた5,6−ジメトキシインダノン−1を170gおよびポリリン酸エチル850gを攪拌機、還流冷却器を付けた3L三ツ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら140℃に加熱し2時間反応後、フラスコを氷冷しながらエタノール 1Lを徐々に添加した。室温で1時間攪拌後、沈殿物を吸引濾過で回収した。この回収物をアセトンで洗浄した後、50℃の真空乾燥器で一夜乾燥し、2,3,7,8,12,13−ヘキサメトキシトルクセンの粗結晶140gを得た。得られた粗結晶をジメチルホルムアミド溶媒から回収率99%で再結晶した。
【0048】
トルエン400mLの入った攪拌機、還流冷却器付き1L三ツ口フラスコに得られた2,3,7,8,12,13−ヘキサメトキシトルクセン40.0gを加えて懸濁させ、攪拌下、氷冷しながら三臭化ホウ素187gを逐次添加した。ついでフラスコを60℃から徐々に120℃まで昇温し、昇温後同温度で3時間反応させた。途中生成する臭化水素等はアルカリ水溶液を入れたトラップに吸収させた。
【0049】
反応終了後、フラスコを室温まで冷却し、メタノール200mLを徐々に加えた。この際多量に発生する臭化水素、臭化メチル、メチルボレート等は−78℃に冷却したトラップ、アルカリトラップ等で回収処理した。ついでアセトニトリルで洗浄してから高減圧下、60℃にて揮発分を除去し、2,3,7,8,12,13−ヘキサヒドロキシトルクセン(下記式)の結晶25.3gを得た。
【0050】
【化2】
【0051】
(合成例2)
2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの合成
氷冷した2Lの三ツ口フラスコに、硫酸第二鉄6水塩460gおよびイオン交換水200mLを入れ、溶解後、1,2−ジメトキシベンゼン59.0gを添加した。その後、水冷下で濃硫酸900mLを徐々に添加した。24時間後、氷水10L中に徐々に注ぎ、5時間後、反応混合物を濾過し、2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレンの粗結晶50.1gを得た。
トルエン900mLの入った攪拌機、還流冷却器付き3L三ツ口フラスコに得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレンの粗結晶50.1gを加えて懸濁させ、攪拌下、氷冷しながら三臭化ホウ素300gを徐々に添加した。次いでフラスコを60℃から徐々に120℃まで昇温し、昇温後同温度で3時間反応させた。途中生成する臭化水素等はアルカリ水溶液を入れたトラップに吸収させた。
反応終了後、フラスコを室温まで冷却し、メタノール200mLを徐々に加えた。この際多量に発生する臭化水素、臭化メチル、メチルボレート等は−78℃に冷却したトラップ、アルカリトラップ等で回収処理した。次いで高減圧下、60℃にて揮発分を除去し、アセトニトリルとジクロロメタンの混合溶媒で洗浄し、2、3、6、7、10、11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(下記式)の結晶30.1gを得た。
【0052】
【化3】
【0053】
(合成例3)
4−[7−(3−エチル−3−オキセタニル)−1,6−ジオキサヘプチル]安息香酸の合成
2Lの三ツ口フラスコに、東亜合成(株)製OXT−101(3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン)46.3g、1,4−ジブロモブタン250.3gおよびヘキサン375mLを仕込み、2gのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドを含む500mLの33%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、5時間攪拌した。その後さらに80℃で1時間還流させた後、500mLの脱イオン水を加え、分液し、水層から160mLのヘキサンで3回抽出した。有機層と抽出層を合わせて、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶剤を減圧で留去した。得られた透明な液体をさらに減圧蒸留して、109℃/4mmHg(532Pa)の留分として、3−[(4−ブロモブトキシ)メチル]−3−エチルオキセタン 44.5gを得た。なお、得られた化合物の構造は、1H−NMRで確認した。
1Lの三ツ口フラスコに、3−[(4−ブロモブトキシ)メチル]−3−エチルオキセタン 40g、p−ヒドロキシ安息香酸エチル 26.7g、炭酸カリウム24.1gを入れ、250mLのジメチルホルムアミドを加えて溶液とし、溶液が濁ったまま80℃に加熱して4時間攪拌し、溶媒を減圧で、その後真空(80℃)で留去する。得られた黄色オイル状物に水酸化ナトリウム10gを75mLの脱イオン水と75mLのメタノールに溶かした溶液を加え、2時間半加熱還流する。1規定塩酸をpHが3程度になるまで加えて析出した白色沈殿を濾過、真空乾燥して、4−[7−(3−エチル−3−オキセタニル)−1,6−ジオキサヘプチル]安息香酸44.1gを得た。
【0054】
(合成例4)
4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸クロリドの合成
1Lの三ツ口フラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸エチル66g、6−ブロモヘキサノール108g、炭酸カリウム82gおよびN,Nージメチルホルムアミド400mLを入れ、120℃で5時間攪拌した。攪拌後冷却してから反応混合物を水1Lに注ぎ、1Lの酢酸エチルで抽出し、水200mLで2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過を行った。溶媒を減圧濃縮後、メタノール300mLに溶解し、水酸化カリウム34gのメタノール溶液80mLを徐々に滴下し2時間加熱還流した。冷却後生じた結晶を濾別し、結晶を水1Lに溶解した。濃塩酸70mLを加え、析出した結晶を減圧濾過し、脱イオン水で洗浄した。この結晶を乾燥し、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸95.3gを得た。攪拌機、還流冷却管付き300mL三ツ口フラスコに、得られた4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸23.8gおよびジオキサン100mL、N、N−ジメチルアニリン14.5gを入れた後、50℃に昇温し、攪拌しながらアクリル酸クロリド10.9gとジオキサン50mLの溶液を30分かけて逐次添加した。添加後、さらに50℃で2時間加熱攪拌を行ったのち、反応液を脱イオン水1Lに注ぎ、結晶を析出させた。この析出物を濾過した後、ヘキサン200mLで洗浄、乾燥し、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸25.0gを得た。
500ml三ツ口フラスコに上記で得た4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸25.0gと塩化チオニル50mlを入れ、2時間加熱還流した。反応終了後、過剰の塩化チオニルをアルカリトラップを付して減圧下留去し、ヘキサン200mlで洗浄、乾燥後、4−(6−アクリロイルヘキシルオキシ)安息香酸クロリド25.3gを得た。この酸クロリドは熱的に不安定なため精製が難しいので未精製のまま使用した。
【0055】
(合成例5)
オキセタニル基を結合したディスコティック液晶性トルクセン誘導体の合成
撹拌機、冷却管付き1L三つ口フラスコに、合成例1で得た2,3,7,8,12,13−ヘキサヒドロキシトルクセン17.3g、4−ノニルオキシ安息香酸(試薬)26.1g、合成例3で得た4−[7−(3−エチル−3−オキセタニル)−1,6−ジオキサヘプチル]安息香酸36.5gおよびステアリン酸(試薬)5.6g、4−ジメチルアミノピリジン5.8gおよびジクロロメタン400mLを入れ、ジシクロヘキシルカルボジイミド51.3gをジクロロメタン200mLに溶解した溶液を室温下に徐々に加えた後、1昼夜攪拌反応を行った。
生成した固体を濾別し、濾液を1規定塩酸500mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500mLおよび飽和塩化ナトリウム水溶液500mLで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去しオキセタニル基を結合した液晶性トルクセン誘導体(下記式)65.0gを得た。得られたトルクセン誘導体の1H−NMR分析から仕込み通りの組成を有することが確認された。このトルクセン誘導体は、60℃以上の温度でネマチック・ディスコティック(ND)相を示し、ND相は少なくとも150℃までは存在していたが、それ以上の温度ではトルクセン誘導体の変質が起きたようで、等方相転移温度は確認できなかった。
【0056】
【化4】
【0057】
(合成例6)
オキセタニル基を結合したディスコティック液晶性トリフェニレン誘導体の合成
撹拌機、冷却管付き1L三ツ口フラスコに、合成例2で得た2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン10.0g、4−[7−(3−エチル−3−オキセタニル)−1,6−ジオキサヘプチル]安息香酸57.1gおよび4−ジメチルアミノピリジン4.5gおよびジクロロメタン300mLを入れ、ジシクロヘキシルカルボジイミド40.1gをジクロロメタン250mLに溶解した溶液を室温下に徐々に加えた後、1昼夜攪拌反応を行った。
生成した固体を濾別し、濾液を1規定塩酸250mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液250mLおよび飽和塩化ナトリウム水溶液250mLで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去しオキセタニル基を結合した液晶性トリフェニレン誘導体(下記式)47.5gを得た。生成物の1H−NMR分析からトリフェニレンに結合していた水酸基に基づく水素が消失し、代わりに同数のオキセタニル基が結合していることがわかった。
【0058】
【化5】
【0059】
(合成例7)
アクリロイル基を結合したディスコティック液晶性トリフェニレン誘導体の合成
合成例6と同様の三ツ口フラスコに、2,3,7,8,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン10.0g、トリエチルアミン19.7gおよび1、2−ジメトキシエタン400mLを入れ、合成例4で得た4−(6−アクリロイルヘキシルオキシ)安息香酸クロリド57.5gを1,2−ジメトキシエタン200mLに溶解した溶液を50℃で徐々に添加し、同温度で3時間攪拌した。冷却後、メチルエチルケトン500mLと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLを加え、分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去してアクリロイル基を結合した液晶性トリフェニレン誘導(下記式)体45.1gを得た。
【0060】
【化6】
【0061】
[実施例1]
紫外線照射までの工程はすべて銀塩写真用赤色光下で行った。
合成例5で得たオキセタニル基を結合した液晶性トルクセン誘導体2.5gを25mlの1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶かし、トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製、試薬)0.2gを加えた後、孔径0.45μmのポリテトラフロオロエチレン製フィルターで不溶分を濾過して液晶性組成物溶液を調製した。
この溶液を、表面をレーヨン布によりラビング処理した厚み50μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)上にスピンコート法を用いて塗布し、60℃のホットプレート上で乾燥させた。得られたPENフィルム上の液晶性組成物層を100℃に加熱しながら、空気雰囲気下、高圧水銀ランプにより積算照射量450mJ/cm2の紫外線光を照射した後、冷却して硬化した液晶性組成物層(液晶フィルム)を得た。
【0062】
基板として用いたPENフィルムは大きな複屈折を持ち光学用フィルムとして好ましくないため、得られた液晶フィルムを紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亜合成(株)製)を介して、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムに転写し光学フィルムaを得た。すなわち、PENフィルム上の重合させた液晶性組成物層の上に、UV−3400を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムでラミネートして、TACフィルム側から400mJ/cm2の紫外線を照射して接着剤を硬化させた後、PENフィルムを剥離し本発明の光学フィルムaを得た。
【0063】
得られた光学フィルムaを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションなどがないモノドメインの均一なネマチック液晶配向が観察され、正面から見たとき一軸性のネマチック配向と同様なリターデーション(60nm)を有していたが、ラビング方向に沿って斜めから観察したとき、見かけのリターデーションは傾ける方向により異なる値を示し、液晶性組成物層が厚み方向で配向の傾きを変えたハイブリッド配向していることがわかった。さらに光学フィルムaの液晶性組成物層部分のみをかきとり、DSCを用いてガラス転移点(Tg)を測定したところ、Tgは105℃であった。また光学フィルムaの液晶性組成物層表面の鉛筆硬度はH程度であり、充分に強固な膜が得られた。
光学フィルムaを2枚用い、TFT電極を有する90度ねじれの液晶セル(TN型液晶セル)に対し、図1のような配置で補償を行った。その結果、光学フィルムaが無い場合に比べ、著しく視野角の広い表示が得られることが分かった。
【0064】
[実施例2]
実施例1のトルクセン誘導体に代えて合成例6で得たオキセタニル基を結合した液晶性トリフェニレン誘導体を用いた以外は実施例1と同様に行い光学フィルムbを得た。
得られた光学フィルムbを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションなどがないモノドメインの均一なネマチック液晶配向が観察され、そのリターデーションは103nmであった。さらに光学フィルムbの液晶性組成物層部分のみをかきとり、DSCを用いてガラス転移点(Tg)を測定したところ、Tgは110℃であった。また光学フィルムbの液晶性組成物層表面の鉛筆硬度はH程度であり、充分に強固な膜が得られた。
【0065】
[比較例1]
合成例7で得たアクリロイル基を結合した液晶性トリフェニレン誘導体を10質量%のメチルエチルケトン溶液とし、該溶液に、光重合開始剤としてトリフェニレン誘導体に対して2質量%となるようにミヒラーケトン+ベンゾフェノン(1:1質量比)を加えた。その溶液を用いる以外は実施例1と同様に行い、光学フィルムcを得た。
得られた光学フィルムcを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションなどがないモノドメインの均一なネマチック液晶配向が観察され、そのリターデーションは110nmであった。さらに光学フィルムcの液晶性組成物層部分のみをかきとり、DSCを用いてガラス転移点(Tg)を測定したところ、Tgは75℃であった。また光学フィルムcの液晶性組成物層表面の鉛筆硬度はB〜2B程度であった。
【0066】
[実施例3]
実施例1、2および比較例1で得た光学フィルムa〜cを10cm×10cmの大きさに切り出し、洗浄したガラス板にTACフィルム面がガラス板側となるように粘着剤で貼合し、80℃の高温槽内に1週間放置した後、変化の度合を見たところ、光学フィルムaおよびbは何の変化も見られなかったが、光学フィルムcは表面は悪化していた。
このことから光学フィルムcは、空気中での架橋のため、酸素阻害を受けて架橋が十分に進行せず、それがDSCによる低Tgおよび本試験による耐熱性の低下結果として現れたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いた液晶表示装置の模式図である。
【符号の説明】
1 :上側偏光板
2 :光学フィルムa
3 :粘着剤を有するトリアセチルセルロースフィルム
4 :TN型液晶セル
5 :下側偏光板
6、10:偏光板の透過軸
7 :ポリエチレンナフタレートフィルムのラビング方向に対応する方向
8、9:電極基板のラビング方向
Claims (4)
- オキセタニル基を有するディスコティック液晶性化合物からなり、当該化合物が液晶状態で形成した配向状態を光および/または熱により架橋固定化したことを特徴とする光学フィルム。
- 前記ディスコティック液晶性化合物の配向がハイブリッド配向であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
- 請求項1または2記載の光学フィルムを少なくとも一層有することを特徴とする光学補償素子。
- 請求項3記載の光学補償素子を少なくとも1枚組み込んだことを特徴とする液晶表示素子。
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