JP4152693B2 - 気体中の高融点成分の捕集設備及び気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集設備 - Google Patents

気体中の高融点成分の捕集設備及び気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集設備 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体中の他の構成成分に比して高融点の成分を捕集する設備に関する。特に、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、単にPASともいう。)の製造に際し、脱水処理にともなって排気される気体中のジハロゲン化芳香族化合物を捕集するのに好適な設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械的強度や、耐熱性などに優れるとともに、高い剛性を有するエンジニアリング樹脂として、従来より、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、単にPPSともいう。)などのポリアリーレンスルフィド樹脂が知られている。
【0003】
このPASの製造方法には、例えば、特公昭52−12240号公報(p−フェニレンスルフィド重合体の製造方法)や、特開平2−180928号公報(ポリアリーレンスルフィドの製造方法)、特開平6−248077号公報(高分子量ポリアリーレンスルフィドの製造方法)、特開平7−207027号公報(ポリアリーレンスルフィドの製造方法)、特開平7−228698号公報(ポリアリーレンスルフィドの製造方法)に開示される方法などがある。
【0004】
これらの方法は、N−メチル−2−ピロリドン(以下、単にNMPともいう。)などの非プロトン性有機溶媒中において、ポリジクロロベンゼン(PDCB)などのジハロゲン化芳香族化合物と硫化ナトリウムや硫化リチウムなどのアルカリ金属硫化物とを重合反応させることを概要とするものである。そして、これらの方法によってPASを製造するにあたっては、重合反応に先立って、あるいは重合反応に伴って反応物の水分量を調整すると、より高分子量のPASを製造することができることから、一般に、蒸留塔などによって、脱水処理がなされている。
【0005】
しかるに、これらの方法によってPASの製造を連続的に行う場合、反応物が連続的に供給される蒸留塔などから排気される気体中に、ジハロゲン化芳香族化合物などの他の構成成分に比して高融点の成分が混入し、一緒に排気されてしまう。したがって、排気後、かかる気体が冷えると、その中に含まれるジハロゲン化芳香族化合物などが固化し、排気管などに付着して管を閉塞させてしまう虞がある。
【0006】
そこで、現在は、図1に示す回収設備100などによって、気体G中のジハロゲン化芳香族化合物Cの捕集を図っている。
すなわち、捕集設備100においては、まず、仕切弁101A及び101Bのうちの101Aのみを開放することによって、ジハロゲン化芳香族化合物Cの混入する気体Gを、供給管102Aを通して、第1の凝縮器103A内に供給する。この際、この第1の凝縮器103A内は、冷却水などの冷媒IWによって、ジハロゲン化芳香族化合物Cの融点以下の温度に冷却してある。したがって、第1の凝縮器103A内において、気体G中のジハロゲン化芳香族化合物Cは固化し、排気管104Aを通して排気される気体Gは、ジハロゲン化芳香族化合物Cの混入しないものとなる。以上の処理を所定時間行ったら、今度は、仕切弁101Aを閉鎖するとともに、仕切弁101Bを開放し、ジハロゲン化芳香族化合物Cの混入する気体Gを、供給管102Bを通して、第2の凝縮器103B内に供給する(なお、この処理の切り替えは、時間経過を条件とせず、凝縮器103Aから排気される気体Gの温度変化や、凝縮器103Aを通された冷媒IWの温度変化、凝縮器103Aに供給される気体Gの圧力変化、などを条件として行う場合もある。)。この際、この第2の凝縮器103B内は、冷媒IWによって、ジハロゲン化芳香族化合物Cの融点以下の温度に冷却してある。したがって、第2の凝縮器103B内において、気体G中のジハロゲン化芳香族化合物Cは固化し、排気管104Bを通して排気される気体Gは、ジハロゲン化芳香族化合物Cの混入しないものとなる。他方、この第2の凝縮器103B内に気体Gを供給している間、第1の凝縮器103A内を、温水などの熱媒HWによって、ジハロゲン化芳香族化合物Cの融点以上の温度に加温する。したがって、第1の凝縮器103A内で固化していたジハロゲン化芳香族化合物Cは、溶融し、その底部から排出管105Aを通して排出され、捕集される。以上の処理を所定時間行ったら、気体Gの流通を供給管102Aに切り替え、以上と同様の作業を繰り返す。このようにして、気体G中のジハロゲン化芳香族化合物Cの捕集がなされることになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上の捕集設備による場合、気体Gの流通経路の切り替えを要するため、作業が連続的なものとならず、したがって、処理効率の悪いものとなった。また、気体Gを流通させていない間、供給管102A又は102B内に残留する気体Gの温度が低下し、ジハロゲン化芳香族化合物Cが固化・付着してしまうことがあるため、供給管102A,102Bを、保温しておかなければならなかった。このことは、エネルギーの損失となるばかりでなく、設備が複雑なものとなる原因となる。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、処理効率に優れ、しかも比較的簡易な構造の気体中の高融点成分の捕集設備及び気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集設備を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
気体中の他の構成成分に比して高融点の成分を捕集する設備であって、
前記気体が流通する捕集塔と、
この捕集塔内の気体に対して、前記高融点成分の融点以下の温度とされた処理液を投射する処理液投射手段と、
前記処理液との接触により固化された高融点成分と前記処理液とのスラリーを前記捕集塔内の底部に貯留するスラリー貯留部と、
前記スラリーを前記捕集塔内から抜き出すとともに前記処理液投射手段に繋がる循環管と、
この循環管の途中から分岐する分岐管と、
この分岐管を通して抜き出されたスラリーを貯留する分離槽と、
前記分岐管の分岐点と前記処理液投射手段との間において設けられた、前記処理液投射手段へ返送するスラリーを冷却する返送スラリー冷却手段と、
前記返送スラリー冷却手段と前記処理液投射手段との間に設けられた、スラリー濃度調節のために冷媒を混入する冷媒混入手段と、
前記分岐管を通して前記分離槽への抜き出し量を、前記スラリー貯留部のスラリーの液面に応じて調節するスラリー液面調節手段と、
前記分離槽に備えられた、スラリー中の固化している高融点成分を溶融し液状とする溶融手段と、
前記分離槽内において、前記溶融手段によって溶融された高融点成分と処理液との比重差により上下に二相分離された、溶融された高融点成分の相から前記高融点成分を回収する高融点成分回収手段と、
を備えることを特徴とする気体中の高融点成分の捕集設備。
【0011】
<請求項記載の発明>
非プロトン性有機溶媒中において、ジハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造に際し、脱水処理にともなって排気される気体中のジハロゲン化芳香族化合物を捕集する設備であって、
前記気体が流通する捕集塔と、
この捕集塔内の気体に対して、前記ジハロゲン化芳香族化合物の融点以下の温度とされた処理液を投射する処理液投射手段と、
前記処理液との接触により固化されたジハロゲン化芳香族化合物と前記処理液とのスラリーを前記捕集塔内の底部に貯留するスラリー貯留部と、
前記スラリーを前記捕集塔内から抜き出すとともに前記処理液投射手段に繋がる循環管と、
この循環管の途中から分岐する分岐管と、
この分岐管を通して抜き出されたスラリーを貯留する分離槽と、
前記分岐管の分岐点と前記処理液投射手段との間において設けられた、前記処理液投射手段へ返送するスラリーを冷却する返送スラリー冷却手段と、
前記返送スラリー冷却手段と前記処理液投射手段との間に設けられた、スラリー濃度調節のために冷媒を混入する冷媒混入手段と、
前記分岐管を通して前記分離槽への抜き出し量を、前記スラリー貯留部のスラリーの液面に応じて調節するスラリー液面調節手段と、
前記分離槽に備えられた、スラリー中の固化しているジハロゲン化芳香族化合物を溶融し液状とする溶融手段と、
前記分離槽内において、前記溶融手段によって溶融されたジハロゲン化芳香族化合物と処理液との比重差により上下に二相分離された、溶融されたジハロゲン化芳香族化合物の相から前記ジハロゲン化芳香族化合物を回収するジハロゲン化芳香族化合物回収手段と、
を備えることを特徴とする気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集設備。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<本発明の概要>
本発明は、気体中の他の構成成分に比して高融点の成分を捕集する設備であって、気体が流通する捕集塔と、この捕集塔内の気体に対して、高融点成分の融点以下の温度とされた処理液を投射する処理液投射手段と、処理液との接触により固化された高融点成分と処理液とからなるスラリーを、捕集塔内から抜き出す抜き出し手段と、を有することを特徴とするものである。本発明においては、気体が流通する捕集塔を設け、この捕集塔内の気体に対して処理液を投射し、高融点成分が固化されるように構成したので、固化に利用した処理液と固化された高融点成分とでスラリーが形成される。したがって、気体中の高融点成分の固化を行うのと同時並行的に、固化された高融点成分を(スラリーとして)捕集塔内から抜き出すことができる。そして、本発明では、かかる抜き出しを行う抜き出し手段を設けたので、一連の処理が全て連続的に行われることになる。つまり、本発明の捕集設備によれば、気体の流通経路の切り替えを要しない連続的な処理となり、極めて処理効率に優れたものとなる。
【0013】
また、本発明の捕集設備においては、捕集塔内から抜き出されたスラリーが貯留される分離槽と、スラリー中の固化している高融点成分を溶融する溶融手段とが備えられ、溶融された高融点成分と処理液との比重差を利用し、高融点成分が回収される構成とすれば、より好ましいものとなる。この構成によれば、簡易に、かつ確実に高融点成分の回収が図られ、高融点成分を再利用することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の捕集設備は、非プロトン性有機溶媒中において、ジハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造に際し、脱水処理にともなって排気される気体中の他の構成成分に比して高融点の成分、すなわち、ジハロゲン化芳香族化合物を捕集する場合に、特に好ましいものとなる。
【0015】
そこで、以下では、まず、PPSなどのPASの製造方法例について説明し、その後に、その製造に際し、脱水処理にともなって排気される気体中に含まれるジハロゲン化芳香族化合物を回収する設備について、説明する。
【0016】
<PASの製造方法>
PASの製造、本実施の形態ではPPSの製造を連続的に行う場合のフロー図を、図2に示した。
PPSの製造にあたっては、非プロトン性有機溶媒中において、ジハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させる。
【0017】
ここで、非プロトン性有機溶媒としては、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等の非プロトン性の極性有機化合物を、単独溶媒として、又は混合溶媒として、さらには、他の溶媒と混合して、使用することができる。
【0018】
前記アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミド等を使用することができる。
【0019】
前記ラクタム化合物としては、例えば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドン等を使用することができる。
【0020】
前記尿素化合物としては、例えば、テトラメチル尿素、N,N'−ジメチルエチレン尿素、N,N'−ジメチルプロピレン尿素等を使用することができる。
【0021】
前記有機硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホラン等を使用することができる。
【0022】
前記環式有機リン化合物としては、例えば、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホラン等を使用することができる。
【0023】
以上、各種の非プロトン性有機溶媒の中でも、N−アルキルカプロラクタム及びN−アルキルピロリドンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が特に好ましい。本実施の形態では、NMPを使用する。
【0024】
アルカリ金属硫化物と重合反応させるジハロゲン化芳香族化合物としては、特に限定されるものではないが、パラジクロロベンゼン(PDCB)を50モル%以上含むものを使用するのが好ましい。本実施の形態では、PDCBを使用する。
【0025】
ジハロゲン化芳香族化合物の投入量は、ジハロゲン化芳香族化合物/系内に存在する硫黄比が、0.9〜1.5(モル比)となるようにするのが好ましく、0.95〜1.2となるようにするのが特に好ましい。
【0026】
ジハロゲン化芳香族化合物と重合反応させるアルカリ金属硫化物は、硫黄化合物とアルカリ金属水酸化物とを反応させて得ることができる。硫黄化合物は、特に、その種類が限定されるものではないが、硫化水素を使用するのが好ましい。本実施の形態では、硫化水素を使用する。また、アルカリ金属水酸化物も、特に、その種類が限定されるものではない。例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等を使用することができる。ただし、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。本実施の形態では、水酸化ナトリウムを使用する。したがって、本実施の形態では、硫化水素と水酸化ナトリウムとの反応により硫化ナトリウムが得られ、この硫化ナトリウムがアルカリ金属硫化物として利用される。
【0027】
ジハロゲン化芳香族化合物と硫黄化合物とを重合反応させる反応容器としては、例えば、1リットルのステンレス製オートクレーブ(攪拌翼として、パドル翼を備え、回転数300〜700rpm)を挙げることができる。重合温度は、220〜260℃とするのが好ましく、重合時間は1〜6時間とするのが好ましい。
【0028】
本実施の形態では、この工程において(重合反応にともなって)、蒸留塔において反応液を脱水し、重合反応系における水分量を調節する。この脱水は、水分量がアルカリ金属硫化物1モル当たり、0.3〜5モル程度になるまで行うのが好ましい。なお、この際排気される気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集方法については、後述する。
【0029】
重合反応の後処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、図2に示すように、反応液を冷却後、遠心分離や濾過等してPPS及び塩化ナトリウムと溶剤(NMP)とに分離し、分離された溶剤は、溶剤回収工程に供して再利用できる状態にする。他方、PPS及び塩化ナトリウムは、溶解して、例えば、有機溶剤や、水などでいわゆる溶融洗浄する。この溶融洗浄によって発生した塩化ナトリウムの水溶液は、廃水処理し、あるいは塩化ナトリウムを回収して再利用に供する。他方、溶融洗浄したPPSケーキは、乾燥した後、熟成することにより重合させてPPS粉体とする。
【0030】
<回収装置>
次に、本発明を具体化した設備例として、特に、非プロトン性有機溶媒中において、ジハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造に際し、脱水処理にともなって排気される気体中のジハロゲン化芳香族化合物を捕集する設備例について説明する。
【0031】
図3に、本実施の形態の捕集設備1を示した。
本捕集設備1においては、まず、ジハロゲン化芳香族化合物Cの混入する気体Gを、供給管31を通して、捕集塔2内に供給する。供給された気体Gは、捕集塔2内を、上方へ流通する。この流通する気体Gに対しては、スプレーノズルなどの処理液投射手段3から処理液Tが、投射される。処理液Tは、ジハロゲン化芳香族化合物Cの融点以下の温度となるように調節されている。したがって、処理液Tとの接触により、気体G中のジハロゲン化芳香族化合物Cは固化することになる。固化したジハロゲン化芳香族化合物Cは、処理液TとでスラリーRを形成し、一時的に捕集塔2の底部に貯留される。
【0032】
処理液Tとしては、例えば、水などの冷媒IWを使用することができる。本実施の形態では、循環管34を通して循環させられ、冷媒IWによって濃度調節されたスラリーRを使用している。なお、この循環形態については、後に詳説する。
【0033】
本実施の形態では、処理液投射手段3を、気体Gの流通方向に2つ備える形態としたが、これに限る趣旨ではない。例えば、流通方向に1つとすることも、3つ、4つ、あるいはそれ以上とすることもできる。また、流通方向に関して同じ位置に、つまり2つ以上の処理液投射手段3を並べて備えることもできる。ジハロゲン化芳香族化合物Cの固化を確実に行うことができるよう、適宜修正することができる。
【0034】
また、本実施の形態では、下方から上方へ流通するジハロゲン化芳香族化合物Cを含む気体Gに対して、上方から下方に向けて処理液Tを投射する形態としが、これに限る趣旨ではない。例えば、側方へ流通するジハロゲン化芳香族化合物Cを含む気体Gに対して、上方から下方に向けて処理液Tを投射することなどもできる。気体G中のジハロゲン化芳香族化合物Cが、固化されて、処理液TとでスラリーRを形成することになる形態であればよい。
【0035】
他方、ジハロゲン化芳香族化合物Cの除去された気体Gは、エリミネーター11によってミストが除去された後、排気管32を通して排気される。エリミネーター11に対しては、供給管33を通して噴射ノズル5から温水などの熱媒HWが吹きかけられる。これにより、エリミネーター11に付着したジハロゲン化芳香族化合物Cが溶融除去され、目詰まりが防止される。
【0036】
捕集塔2の底部に貯留されたスラリーRは、捕集塔2の底部に接続された循環管34を通して抜き出され、かかる循環管34の途中から分岐する分岐管35を通して、後述する分離槽6に送られる。分岐管35の途中には、仕切弁21が備えられており、この仕切弁21の開閉によって、分離槽6への抜き出し量が調節される。仕切弁21の開閉は、スラリーRの液面にあわせて、つまり液面が所定の位置より上昇したときにのみ開放されるようになっている。
【0037】
分離槽6への抜き出しがなされなかったスラリーRは、循環管34の途中に備えられた冷却装置7によって冷却された後、そのまま循環管34を通して、処理液投射手段3から、気体Gに対して、処理液Tとして、投射される。
【0038】
処理液Tとして投射するスラリーRは、その濃度調節のために、循環管34の途中において、冷媒IWが混入される。これにより、処理液投射手段3からの投射が円滑になされることになる。なお、冷媒IWの混入量は、仕切弁22によって調節するようになっている。また、以上のスラリーRの循環は、循環管34の途中に備えられた循環ポンプPによってなされるようになっている。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、スラリーRの一部を循環させて処理液Tとして利用した。しかし、スラリーRは、その全てを抜き出してしまい、処理液Tは、冷媒IWのみによるものとすることもできる。ただし、本形態によるほうが、冷媒IWの量が少量で足り、効率的である。
【0040】
分離槽6に供給されたスラリーRは、供給管36を通して供給されるスチームSによって、加温されるようになっている。これにより、スラリーR中に存在する固化されたジハロゲン化芳香族化合物Cが溶融され、液状になる。なお、復水(スチームドレン)Dは、途中にドレントラップ41が備わるドレン管39を通して、図示しないドレンタンクに回収される。
【0041】
ジハロゲン化芳香族化合物Cは液状になると、その比重差により、冷媒IWと二相分離される。本実施の形態では、冷媒IWとして冷却水を使用したので、ジハロゲン化芳香族化合物Cは、分離槽6の底部に沈むことになる。
【0042】
分離槽6の底部に沈んだジハロゲン化芳香族化合物Cは、抜き出し管37によって、分離槽6から抜き出される。抜き出し管37は、その途中で分岐管37Aとバランス用分岐管37Bとに分岐され、バランス用分岐管37Bは、分離槽6の頂部に接続されている。抜き出し管37により、分離槽6から抜き出されたジハロゲン化芳香族化合物Cの一部が分岐管37Aを通して系外に排出される。残部がバランス用分岐管37Bにより分離槽6内のC液レベルLが保持される。すなわち、ジハロゲン化芳香族化合物Cとの界面Lの位置を基準に、つまり界面Lが所定値よりも高位になっている場合は、ジハロゲン化芳香族化合物Cが系外に排出されるように、界面Lが所定値よりも低位になっている場合は、ジハロゲン化芳香族化合物Cは抜き出されないようになる。
【0043】
分離槽6には、その上側側部に、冷媒IWの排出管38が接続されている。冷媒IWの液面が所定位置以上になると、冷媒IWが、排出管38を通して、廃液Wとして、系外に排出される。なお、図中の40は、分離槽6と捕集塔2とを連通する連通管である。
【0044】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、処理効率に優れ、しかも比較的簡易な構造の気体中の高融点成分の捕集設備又は気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集設備となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の捕集設備の構成図である。
【図2】 PAS製造のフロー図である。
【図3】 本実施の形態の捕集設備の構成図である。
【符号の説明】
1…本実施の形態の捕集設備、2…捕集塔、3…処理液投射手段、6…分離槽、100…従来の捕集設備、103A,103B…凝縮器、C…ジハロゲン化芳香族化合物、G…気体、HW…熱媒、IW…冷媒、P…循環ポンプ、R…スラリー、T…処理液。

Claims (2)

  1. 気体中の他の構成成分に比して高融点の成分を捕集する設備であって、
    前記気体が流通する捕集塔と、
    この捕集塔内の気体に対して、前記高融点成分の融点以下の温度とされた処理液を投射する処理液投射手段と、
    前記処理液との接触により固化された高融点成分と前記処理液とのスラリーを前記捕集塔内の底部に貯留するスラリー貯留部と、
    前記スラリーを前記捕集塔内から抜き出すとともに前記処理液投射手段に繋がる循環管と、
    この循環管の途中から分岐する分岐管と、
    この分岐管を通して抜き出されたスラリーを貯留する分離槽と、
    前記分岐管の分岐点と前記処理液投射手段との間において設けられた、前記処理液投射手段へ返送するスラリーを冷却する返送スラリー冷却手段と、
    前記返送スラリー冷却手段と前記処理液投射手段との間に設けられた、スラリー濃度調節のために冷媒を混入する冷媒混入手段と、
    前記分岐管を通して前記分離槽への抜き出し量を、前記スラリー貯留部のスラリーの液面に応じて調節するスラリー液面調節手段と、
    前記分離槽に備えられた、スラリー中の固化している高融点成分を溶融し液状とする溶融手段と、
    前記分離槽内において、前記溶融手段によって溶融された高融点成分と処理液との比重差により上下に二相分離された、溶融された高融点成分の相から前記高融点成分を回収する高融点成分回収手段と、
    を備えることを特徴とする気体中の高融点成分の捕集設備。
  2. 非プロトン性有機溶媒中において、ジハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造に際し、脱水処理にともなって排気される気体中のジハロゲン化芳香族化合物を捕集する設備であって、
    前記気体が流通する捕集塔と、
    この捕集塔内の気体に対して、前記ジハロゲン化芳香族化合物の融点以下の温度とされた処理液を投射する処理液投射手段と、
    前記処理液との接触により固化されたジハロゲン化芳香族化合物と前記処理液とのスラリーを前記捕集塔内の底部に貯留するスラリー貯留部と、
    前記スラリーを前記捕集塔内から抜き出すとともに前記処理液投射手段に繋がる循環管と、
    この循環管の途中から分岐する分岐管と、
    この分岐管を通して抜き出されたスラリーを貯留する分離槽と、
    前記分岐管の分岐点と前記処理液投射手段との間において設けられた、前記処理液投射手段へ返送するスラリーを冷却する返送スラリー冷却手段と、
    前記返送スラリー冷却手段と前記処理液投射手段との間に設けられた、スラリー濃度調節のために冷媒を混入する冷媒混入手段と、
    前記分岐管を通して前記分離槽への抜き出し量を、前記スラリー貯留部のスラリーの液面に応じて調節するスラリー液面調節手段と、
    前記分離槽に備えられた、スラリー中の固化しているジハロゲン化芳香族化合物を溶融し液状とする溶融手段と、
    前記分離槽内において、前記溶融手段によって溶融されたジハロゲン化芳香族化合物と処理液との比重差により上下に二相分離された、溶融されたジハロゲン化芳香族化合物の相から前記ジハロゲン化芳香族化合物を回収するジハロゲン化芳香族化合物回収手段と、
    を備えることを特徴とする気体中のジハロゲン化芳香族化合物の捕集設備。
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