JP4152500B2 - 内燃機関及び自動二輪車 - Google Patents

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  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動二輪車等に装備される内燃機関、特に、走行状態に応じてクランク角位相差を設定値よりずらすことにより、出力トルクの大きなピークが得られるようにした内燃機関並びに当該内燃機関を搭載した自動二輪車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から内燃機関は複数の気筒を有し、各気筒の燃焼室内で燃料が燃焼することによりピストンがシリンダ内を摺動し、このピストンの移動がコネクティングロッドを介してクランク軸に伝達されて回転駆動されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のものにあっては、例えば並列2気筒エンジンにおいて、クランクピンの位相配置には360°や180°などがあるが、この位相配置は固定的であり、凹凸を有する路面等では、トルク不足等を生じ、走破性が劣ることがある。
【0004】
そこで、この発明は、凹凸を有する路面等でも、走破性を良好とすることができる内燃機関並びに当該内燃機関を搭載した自動二輪車を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の気筒を有し、各気筒毎にピストンが配設され、該各ピストンがコネクティングロッドを介してクランク軸に連結され、更に、前記気筒毎にクランク軸が分割され、該各クランク軸が、各クランク軸のクランク角位相差を変更させるクランク位相変更装置にて連結された内燃機関において、車体の上下振幅が所定値を越え、車体速度が所定値以下となり、且つ、スロットル開度が低負荷域を越える運転状態の時に、前記各クランク軸のクランク角位相差を、設定値より出力トルクのピークが大きくなる方向にずらすように前記クランク位相変更装置を制御する制御装置を設けた内燃機関としたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の内燃機関を搭載した自動二輪車としたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0008】
[発明の実施の形態1]
図1乃至図6には、この発明の実施の形態1を示す。
【0009】
まず構成を説明すると、図1に示す自動二輪車には、「内燃機関」として4サイクルエンジン1が車体に支持されて配設され、このエンジン1の駆動力がクラッチ及び動力伝達装置2を介して後輪3に伝達されるようになっており、又、前方には前輪4が配置されている。
【0010】
その4サイクルエンジン1は、概念的には図2に示すように構成されており、第1気筒A及び第2気筒Bの直列2気筒を有し、これら第1,第2気筒A,B毎に、それぞれ燃焼室に燃料を供給する吸気弁7a,7b及び燃焼ガスを排気する排気弁8a,8bが配設されると共に、それらの弁7a…を所定のタイミングで開閉させるカム軸9a,9bが設けられている。
【0011】
また、各気筒A,Bには、それぞれピストン10a,10bが設けられ、これらピストン10a,10bがコネクティングロッド11a,11bを介して各気筒A,B毎に分割された、クランク軸12a,12bに連結されて、ピストン10a,10bの往復動がコネクティングロッド11a,11bに回転運動として伝達されるようになっている。
【0012】
さらに、そのクランク軸12a,12bがカム軸駆動伝導帯13a,13bを介して前記カム軸9a,9bに連結されている。
【0013】
そして、その両クランク軸12a,12bの間には、これらのクランク軸12a,12bの位相を変更させるクランク位相変更装置14が配設されている。
【0014】
詳しくは、このクランク位相変更装置14は、図4に示すように、第1気筒Aのクランク軸12aの端部にストレートスプライン12cが形成されると共に、第2気筒Bのクランク軸12bの端部にヘリカルスプライン12dが形成され、これら各スプライン12c,12dにスライド部材15が螺合されて、このスライド部材15を介して両クランク軸12a,12bが連結されている。また、このスライド部材15には、鍔状のピストン部15aが形成され、このピストン部15aがケーシング16のシリンダ室16a内に配設され、このシリンダ室16aを左室16bと右室16cとに仕切っている。このピストン部15aの先端部には、シリンダ室16a内壁との間をシールするOリング17が設けられている。
【0015】
また、そのケーシング16は、第2気筒Bのクランク軸12bに形成されたフランジ部12eによりスラスト方向への移動が規制されるようになっている。
【0016】
そして、それら両クランク軸12a,12bには、油路12f,12gが形成され、これら油路12f,12gはスライド部材15に形成された油路15b,15cを介して前記シリンダ室16aの左室16b及び右室16cに連通されるようになっていると共に、両クランク軸12a,12bの油路12f,12gは、シリンダブロック18に形成された油路18a,18bに連結されることにより、図示省略のオイル供給源からオイルがシリンダ室16aの左室16b及び右室16cに供給されるようになっている。また、そのスライド部材15には、内部に前記両クランク軸12a,12bの間に位置するシール用圧入プレート19が配設され、このプレート19により、両クランク軸12a,12bの間が気密状態で仕切られるようになっている。
【0017】
そのシリンダ室16aの左室16b及び右室16cに供給された油圧の差により、スライド部材15がスラスト方向に移動されると、その移動量に応じて、第1気筒Aのクランク軸12aに対して第2気筒Bのクランク軸12bが所定角度進角又は遅角し、両クランク軸12a,12bのクランク角位相差が設定値よりずれるようになっている。
【0018】
さらに、その4サイクルエンジン1には、図2に示すように、クラッチ及び動力伝達装置2に車速センサ22と、クランク軸12aのクランク角を検出するパルサーセンサ25が配置され、又、フライホイールマグネット23にエンジン回転数センサ24と、クランク軸12bのクランク角を検知するパルサーセンサ26とが配置されると共に、図3に示すようにスロットル弁開度センサ27及びシフト段センサ28が設けられ、更に、車体側に図1に示すように車体上下振センサ29が設けられ、これら各センサ22…が図3に示すように制御装置31に接続されている。
【0019】
そして、これらセンサ22…からの信号が制御装置31に入力され、この制御装置31からの電気信号がクランク位相制御装置32に入力され、油圧により前記クランク位相変更装置14が制御されるようになっている。また、その制御装置31からの電気信号が燃料供給量補正装置33に入力され、この燃料供給量補正装置33により燃料供給装置34が機械的あるいは電気的に制御されるようになっている。さらに、その制御装置31からの信号により、クランク角位相に対応して点火装置35が制御されるようになっている。すなわち、制御装置31は、第1気筒Aの点火はパルサーセンサ25の信号に基づき、第2気筒Bの点火はパルサーセンサ26の信号に基づき、それぞれのピストン10a,10bが上死点に達成するタイミングに対して所定のクランク角位相差で、点火装置31を介してそれぞれの気筒の不図示の点火プラグにスパークを発生させる。
【0020】
次に、作用について説明する。
【0021】
車両走行中に、順次各センサ22…からの信号が制御装置31に入力され、車体上下動センサ29による車体の上下振幅が所定値を越え、車速センサ22による車体速度が所定値以下(中速域より小さい)、且つ、スロットル弁開度センサ27によるスロットル開度が少なくとも低負荷域を越える運転状態の時において、制御装置31からクランク位相制御装置32に信号が送られてクランク位相変更装置14が制御されて、上下振幅が大きい程、両クランク軸12a,12bのクランク角位相差が設定値よりずらされる。
【0022】
具体的には、シリンダ室16aの左室16b又は右室16cに所定量のオイルが送られることにより、左室16b内及び右室16c内の圧力差により、スライド部材15がスラスト方向に所定量移動する。これにより、その移動量に応じて、第2気筒Bのクランク軸12bが第1気筒Aのクランク軸12aに対して所定角度進角又は遅角し、両クランク軸12a,12bのクランク角位相差が設定値より所定量ずらされる。この場合、パルサーセンサ25,26により、クランク軸12a,12bのクランク角が検知されてクランク角位相差が設定値より所定量ずらされるよう常にフィードバック制御される。
【0023】
上記運転状態からはずれるようになる場合には、徐々にクランク角位相差を設定値に戻す。
【0024】
そのようにクランク角位相差を設定値よりずらすことにより、出力トルクの大きなピークが得られるようになり、路面の凹凸を走破できるようになる。
【0025】
すなわち、「車体上下動センサ29による車体の上下振幅が所定値を越え」としたのは、連続する凹凸路面走行時は車体振動が増大するためであり、「車速センサ22による車体速度が所定値以下(中速域より小さい)」としたのは、凹凸路面を走行するときには中速域以下の場合が殆どであり、又、「スロットル弁開度センサ27によるスロットル開度が少なくとも低負荷域を越える運転状態の時」としたのは、連続する凹凸路面走行時は、大きな走破トルクがないと乗り切れないためである。
【0026】
かかる状態の時には、スロットル開度が少なくとも低負荷域を越えており、所定以上の出力がエンジン1より導き出せる状態の上、さらにクランク角位相差を設定値よりずらすので複数気筒A,Bからの出力トルク変動の位相がずれ、出力トルクの大きなピークが得られるようになり、路面の凹凸を走破できるようになる。
【0027】
ここで、両クランク軸12a,12bのクランク角位相差を設定値より所定量ずらすことにより、出力トルクの大きなピークが得られるようになる点について、図5及び図6を用いて説明する。
【0028】
すなわち、両クランク軸12a,12bのクランク角位相差の設定値が図5(A)に示すように、360°であるとすると、この場合の第1,第2気筒A,Bの吸気弁7a,7b及び排気弁8a,8bの開閉タイミング及び点火タイミングは図6(A)の(a)及び(b)に示すようになる。即ちエンジン1はクランク軸12a,12bが1回転毎の等間隔で爆発燃焼が発生する。その場合のエンジントルクは、図6の(B)に示すように、第1気筒Aのトルク特性曲線がa、第2気筒Bのトルク特性曲線がbに示すようになり、これら両気筒A,Bの合成トルクの特性曲線がcに示すようになる。
【0029】
そして、この状態から、上記のようにクランク角位相差を上記設定値360°より所定量ずらし、図5の(B)のように、クランク角位相差を270°とすると、クランク軸12bとピストン10bがコネクティングロッド11bで、クランク軸12bとカム軸9bがカム軸駆動伝達帯13bでそれぞれ連結されているので、第2気筒Bのピストン10bが上死点に到達する上死点タイミング及び開閉タイミング、さらに点火タイミングは制御装置31により制御されて(c)に示すようになり、第2気筒Bのトルク特性曲線は図中二点鎖線で示すdのように、特性曲線bより図中左側にずれる。これにより、第1気筒Aのトルク特性曲線aの波形と、第2気筒Bのトルク特性曲線dの波形との山・谷の位置が略一致することにより、合成トルクの特性曲線eは二点鎖線に示すようにピークPが大きくなる。これにより、出力トルクの大きなピークPが得られるようになり、路面の凹凸を走破できるようになる。
【0030】
一方、シフト装置を有する車両においては、シフト段センサ28によるシフト段が所定値以下で、且つ、スロットル弁開度センサ27によるスロットル開度が所定値以上、あるいはスロットル開度の開速度が所定値以上の時、エンジン回転数センサ24によるエンジン回転数が所定以上の割合で低下する時、クランク角位相差を設定値よりずらす。このエンジン回転数の低下割合が大きい程、ずらし量を大きくする。これにより、上記と同様に出力トルクの大きなピークが得られる。
【0031】
これは路面の凸部を前輪4あるいは後輪3が乗り越えようとする時、負荷が瞬間的に増大し、エンジン回転数が低下する。これを捕らえてクランク角位相差を設定値よりずらし、大きな出力トルクのピークが得られるようにするので、凸部を乗り越えることができる。
【0032】
なお、制御装置31はクランク軸12a,12bそれぞれに対応したパルサーセンサ25,26からの信号により点火制御しており、クランク角位相差が変化しても特別な演算は必要がない。パルサーセンサ25のみで点火制御する場合には、クランク角位相差の変化量に対応して演算し、各気筒においてピストン10a,10bが上死点に到達するタイミングに対して所定のクランク角位相差でそれぞれ点火できるようにする。
【0033】
[発明の実施の形態2]
図7には、この発明の実施の形態2を示す。
【0034】
この実施の形態2は、各気筒において、シリンダに不図示の排気口、排気口を配した2気筒2サイクルエンジンの場合について示す。図7は各気筒においてピストンが上死点に到達するタイミングを示している。あるいは、各気筒ではピストンが上死点になるタイミングに対して所定のクランク角位相差で点火がなされるので、点火タイミングを示しているとしても、爆発燃焼のタイミングを示しているとしても良い。同図の(A)では、両気筒のクランク軸のクランク角位相差が設定値すなわち180°の場合に、各気筒の各点火タイミングが(a),(b)のようになっており、点火タイミングは間隔L1で等間隔となっている状態を示す。この状態から、両気筒のクランク軸のクランク角位相差を設定値よりずらすと各気筒においてピストンが上死点に到達するタイミングが変化するので点火タイミングも変化させられ、図7の(B)に示すようになる。この場合の第1気筒の点火タイミングは、図7(B)の(a)に示すように、図7(A)の(a)の場合と同じであるが、第2気筒の点火タイミングは、図7(B)の(b)に示すようにずれ、各気筒の各点火タイミングは、図7(A)、(B)を合成した(c)に示すように間隔がL2,L3(L2≠L3)となる。
【0035】
従って、各気筒の点火タイミングの間隔L2となり接近し、この部分の燃焼により出力トルクの大きなピークが発生し、上記と同様に凹凸路面の走破性が向上する。
【0036】
なお、上記実施の形態では、2気筒の内燃機関についてこの発明を適用したが、これに限らず、3気筒等でも良いことは勿論である。なおさらに、点火装置のない4サイクルディーゼルエンジンにおいては、クランク軸、カム軸及びカム軸伝導帯を各気筒毎に独立に形成し、各気筒のクランク軸の間にクランク位相変更装置を配置するのみで良い。同様に2サイクルディーゼルエンジンにおいては、クランク軸を各気筒毎に独立に形成し、各気筒のクランク軸の間にクランク位相変更装置を配設するのみで良い
【0037】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1又は2に記載された発明によれば、クランク角位相差を設定値よりずらすことにより、出力トルクの大きなピークを得ることができ、凹凸路面の走破性等を向上させることができる。
【0038】
さらに、請求項1又は2に記載された発明によれば、車体の上下振幅が所定値を越え、車体速度が所定値以下の条件の時が、凹凸の路面を走行している状態であり、且つ、スロットル開度が低負荷域を越える運転状態の時でなければ、所定以上の出力(凹凸路面を走破できる出力)が内燃機関より導き出せないからであり、かかる場合に、各クランク軸のクランク角位相差を設定値より出力トルクのピークが大きくなる方向にずらすことにより、凹凸路面走行時に自動的に出力トルクの大きなピークを得ることができ、凹凸路面の走破性を向上させることができる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】同実施の形態に係る4サイクルエンジンの概略図である。
【図3】同実施の形態に係る4サイクルエンジンの制御系のブロック図である。
【図4】同実施の形態に係るクランク位相変更装置の断面図である。
【図5】同実施の形態に係るクランク角位相を示す説明図である。
【図6】同実施の形態に係り、(A)はバルブ開閉タイミング、(B)はトルクを示すグラフ図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る2サイクルエンジンの点火タイミングを示す図である。
【符号の説明】
1 4サイクルエンジン(内燃機関)
12a,12b クランク軸
10a,10b ピストン
11a,11b コネクティングロッド
14 クランク位相変更装置
22 車速センサ
27 スロットル弁開度センサ
29 車体上下動センサ
31 制御装置
A 第1気筒
B 第2気筒

Claims (2)

  1. 複数の気筒を有し、各気筒毎にピストンが配設され、該各ピストンがコネクティングロッドを介してクランク軸に連結され、更に、前記気筒毎にクランク軸が分割され、該各クランク軸が、各クランク軸のクランク角位相差を変更させるクランク位相変更装置にて連結された内燃機関において、
    車体の上下振幅が所定値を越え、車体速度が所定値以下となり、且つ、スロットル開度が低負荷域を越える運転状態の時に、前記各クランク軸のクランク角位相差を、設定値より出力トルクのピークが大きくなる方向にずらすように前記クランク位相変更装置を制御する制御装置を設けたことを特徴とする内燃機関。
  2. 請求項1記載の内燃機関を搭載したことを特徴とする自動二輪車。
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