JP4151186B2 - 縦置き密閉型圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和装置あるいは冷蔵庫などに用いられる縦置き密閉型圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の縦置き密閉型圧縮機について、圧縮機外部への油吐出量低減および密閉容器内部での油量確保に関する技術は多数開示されている。
【0003】
このうち例えば、特開平9−264282号公報に開示されているものは、図6に示すように、密閉容器101内部に、圧縮機構部106と、電動機部102とを設置し、この電動機部102の回転子103と、前記圧縮機構部106との間に、クランク軸107と一体に回転する分離盤108を設置している。これにより、電動機部102と圧縮機構部106と固定子104の圧縮機構部側コイルエンド105との間の内側空間109に飛散する潤滑油を、この分離盤108によって圧縮機構部側コイルエンド105の内周に衝突させ、冷媒ガスと分離させようとするものである。
【0004】
また、別の技術として、特開平3−124991号公報に開示されているものは、図7に示すように、電動機部102と圧縮機構部106と固定子104の圧縮機構部側コイルエンド105との間の内側空間109を、リブ110によって密閉容器101の他の内部空間と隔離している。これにより、前記内側空間109に飛散する潤滑油の冷媒ガスによる吹き上げを抑制し、油吐出量を低減しようとするものである。
【0005】
これらの技術により、圧縮機外部への油吐出量低減および密閉容器内部での油量確保を図り、圧縮機自体の信頼性を高めるとともに、冷凍サイクル全体の成績係数を高めようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では、油吐出低減量が不十分であったり、上記従来例のように、油分離作用のために、分離盤108、あるいはリブ110を別に設ける必要があり、コストアップとなっていた。
【0007】
また、上記いずれの従来例においても、分離された潤滑油を密閉容器下部の潤滑油溜めに戻す方法が明記されておらず、結局は、分離された潤滑油が冷媒ガスとともに密閉容器外部へ吐出されてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、比較的容易な構成により、圧縮機外部への油吐出量低減および密閉容器内部での油量確保を図ることができる信頼性の高い縦置き密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、電動機部と圧縮機構部と固定子の圧縮機構部側コイルエンドとの間の内側空間の容積を大きくするとともに、前記圧縮機構部の吐出孔を、少なくともその一部または全部を前記圧縮機構部側コイルエンドの内周に相対させたものである。これにより、前記内側空間の冷媒ガスの平均流速を抑えることができるとともに、圧縮機構部から吐出された冷媒ガスを圧縮機構部側コイルエンド内周に当てることができるので、この内側空間に飛散する潤滑油が、前記圧縮機構部側コイルエンド内周に表面張力による滴化を促され、油分離効果を高め、油吐出量を低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、密閉容器底部に潤滑油溜め室を設け、前記密閉容器内部上方に固定子と回転子とから構成される電動機部と、下方にこの電動機部によって駆動される圧縮機構部とを設置し、前記固定子の圧縮機構部側コイルエンドの内周径を、上側に比べて下側を大きくするとともに、前記圧縮機構部の吐出孔を、少なくともその一部または全部を前記圧縮機構部側コイルエンドの内周に相対させ、密閉容器内部を圧縮機構部によって、潤滑油溜め室と、電動機部が設置された電動機室とに仕切るとともに、前記圧縮機構部上軸受けの半径方向外周に、潤滑油溜め室と電動機室とを連通する複数個の連通孔を円周状に設け、固定子の圧縮機構部側コイルエンドの下側内周径を、前記複数個の連通孔の径方向幅中央部径と同等とし、さらに固定子の圧縮機構部側コイルエンドを軸方向に波形状にするとともに、この波形状のコイルエンドの凸部を、前記圧縮機構部の複数個の連通孔位置と一致させたものである。そしてこの構成によれば、圧縮機構部側コイルエンド内周に付着した潤滑油が、前記波形状のコイルエンド凸部に集まり、この下端から前記圧縮機構部の複数個の連通孔を通って落下し、確実に密閉容器底部の潤滑油溜め室へ戻すことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の実施の形態に加えて、固定子に設けられた切り欠きと、波形状のコイルエンドの凹部の位置を一致させたものである。そしてこの構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、冷媒ガスが前記波形状のコイルエンドの凹部から固定子の切り欠きを通りやすくなり、密閉容器底部の潤滑油溜め室へ落下する潤滑油と、冷媒ガスとの通路が混ざりにくくなり、より油分離効果を高めることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施例1)
図1において、密閉容器1内部上方に電動機部2と、下方に圧縮機構部9とが設置されている。電動機部2は、反圧縮機構部側コイルエンド4と、圧縮機構部側コイルエンド5とを有する固定子3と、回転子6とから構成されている。前記回転子6にはクランク軸8が圧入固定されており、電動機部2の回転駆動力を前記圧縮機構部9に伝達する。この圧縮機構部9は、円筒状の気室を有するシリンダ11と、前記クランク軸8の偏心軸部に回転自在に嵌合されたピストン13と、前記シリンダ11の気室を仕切るベーン(図示せず)と、シリンダ11の軸方向両端に設置された上軸受け10、下軸受け12とから構成される。
【0014】
上記構成により、圧縮機構部9の吸入孔(図示せず)から吸入された低圧冷媒ガスが、シリンダ11内で圧縮され、高圧冷媒ガスとなって、一旦、上軸受け10に設置されたマフラー17内に吐出される。このマフラー17の吐出孔18は、前記圧縮機構部側コイルエンド5の内周に相対させているので、電動機部2と圧縮機構部9と圧縮機構部側コイルエンド5との間の内側空間19に吐出される。その後、冷媒ガスは主に固定子3の切り欠き7を通り、吐出管21から圧縮機外部へ吐出される。
【0015】
一方、密閉容器1底部には、潤滑油溜め室14が設けられており、ここに溜められた潤滑油が、クランク軸8の回転とともに、このクランク軸8に設けられた油孔15を通って、圧縮機構部9の各摺動部を潤滑した後、上軸受け10とクランク軸8との間の潤滑油排出孔16から排出され、その後圧縮機構部9外周に設けられた連通孔20を通って、再び潤滑油溜め14に戻る。
【0016】
また、前記固定子3の圧縮機構部側コイルエンド5は、上側の内周径φDaに比べて、下側の内周径φDbをテーパ状に拡大しているので、圧縮機構部9から冷媒ガスが吐出される内側空間19の容積を大きくとることができる。
【0017】
上記構成により、前記内側空間19での冷媒ガスの平均流速を抑えることができとともに、前記圧縮機構部9から吐出された冷媒ガスを前記圧縮機構部側コイルエンド5内周に当てることができるので、この内側空間19に飛散する潤滑油が、前記圧縮機構部側コイルエンド5の内周に表面張力による滴化を促され、油分離効果を得ることができる。また、滴化した潤滑油は、重力により圧縮機構部側コイルエンド5下端から落下し、圧縮機構部9外周に設けられた連通孔20を通って、再び密閉容器1底部の潤滑油溜め室14に戻る。したがって、圧縮機外部への油吐出量を低減できるとともに、密閉容器1内部での十分な油量確保を図ることができる。
【0018】
ちなみに、クランク軸1回転当たりの圧縮機構部の吸入容積25立方cm、密閉容器の内周径φ125mmの縦置き単気筒回転式密閉型圧縮機を用いて、JIS B8600−A区分条件、電動機に印加する電源周波数が60Hzにおける圧縮機外部へ吐出される潤滑油量を測定した。その結果、圧縮機構部側コイルエンドの内周径が上側、下側ともφDa=φDb=64mmの場合、冷媒ガスに対する潤滑油量は0.8重量%であったのに対して、本発明の実施例の場合、圧縮機構部側コイルエンドの下側内周径をφDb=95mmに拡大すると、0.4重量%と半減することができた。
【0019】
図2および図3において、密閉容器1内部を圧縮機構部9によって、潤滑油溜め室14と、電動機部2が設置された電動機室22とに仕切るとともに、前記圧縮機構部9の上軸受け10の半径方向外周に、前記潤滑油溜め室14と電動機室22とを連通する複数個の連通孔20を円周状に設けている。また、固定子3の圧縮機構部側コイルエンド5の下側内周径φDbを、前記圧縮機構部の複数個の連通孔20の内周径φDc以上かつ外周径φDd以下としている。
【0020】
上記構成によれば、圧縮機構部側コイルエンド5下端から落下した潤滑油は、圧縮機構部9の複数個の連通孔20を通りやすくなるので、より確実に密閉容器1底部の潤滑油溜め室14へ戻すことができる。
【0021】
図4において、密閉容器1内部を圧縮機構部9によって、潤滑油溜め室14と、電動機部2が設置された電動機室22とに仕切るとともに、前記圧縮機構部9の上軸受け10の半径方向外周に、前記潤滑油溜め室14と電動機室22とを連通する複数個の連通孔20を円周状に設けている。また、固定子3の圧縮機構部側コイルエンド5を軸方向に波形状にするとともに、この波形状のコイルエンドの凸部5aを、前記圧縮機構部9の複数個の連通孔20位置と一致させている。
【0022】
上記構成によれば、圧縮機構部側コイルエンド5内周に付着した潤滑油が、前記波形状のコイルエンドの凸部5aに集まり、この下端から前記圧縮機構部9の複数個の連通孔20を通って落下し、より確実に密閉容器1底部の潤滑油溜め室14へ戻すことができる。
【0023】
(実施例2)
図5に示す実施例において、実施例1に示した構成と同一箇所については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0024】
同図において、固定子3に設けられた複数個の切り欠き7と、圧縮機構部側コイルエンド5の波形状のコイルエンドの凹部5bの位置を一致させている。
【0025】
上記構成によれば、上記実施例1記載の発明の作用に加えて、冷媒ガスが前記波形状のコイルエンドの凹部5bから固定子3の切り欠き7を通りやすくなり、密閉容器1底部の潤滑油溜め室14へ落下する潤滑油と、冷媒ガスとの通路が混ざりにくくなり、より油分離効果を高めることができる。
【0026】
なお、上記実施例は、縦置き密閉型ロータリー圧縮機を用いて説明したが、例えば縦置き密閉型スクロール圧縮機など、他の方式の圧縮機でも同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
また、上記実施例において、圧縮機構部側コイルエンドの内周径は、上側に比べて下側をテーパ状に大きくしたとして説明したが、段階状に大きくしても同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
また、上記実施例において、圧縮機構部の半径方向外周に設けた複数個の連通孔は、上軸受けの素材の鋳抜き孔として説明したが、ドリルなどの加工孔を円周状に設けても同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、圧縮機構部側コイルエンド内周に付着した潤滑油が、前記波形状のコイルエンド凸部に集まり、この下端から前記圧縮機構部の複数個の連通孔を通って落下し、より確実に密閉容器底部の潤滑油溜め室へ戻すことができる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、冷媒ガスが前記波形状のコイルエンドの凹部から固定子の切欠き部を通りやすくなり、密閉容器底部の潤滑油溜め室へ落下する潤滑油と、冷媒ガスとの通路が混ざりにくくなり、より油分離効果を高めることができる。
【0031】
以上、説明したように、比較的容易な構成により、圧縮機外部への油吐出量低減および密閉容器内部での油量確保を図ることができる信頼性の高い縦置き密閉型圧縮機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例を示す縦置き密閉型圧縮機の縦断面図
【図2】 本発明の第1の実施例を示す縦置き密閉型圧縮機の要部縦断面図
【図3】 図2のX−X’断面図
【図4】 本発明の第1の実施例を示す縦置き密閉型圧縮機の固定子と圧縮機構部連通孔との位置関係を示す斜視図
【図5】 本発明の第2の実施例を示す縦置き密閉型圧縮機の固定子と圧縮機構部連通孔との位置関係を示す斜視図
【図6】 第1の従来例を示す縦置き密閉型圧縮機の縦断面図
【図7】 第2の従来例を示す縦置き密閉型圧縮機の縦断面図
【符号の説明】
3 固定子
5 圧縮機構部側コイルエンド
5a 圧縮機構部側コイルエンド凸部
5b 圧縮機構部側コイルエンド凹部
7 切り欠き
9 圧縮機構部
10 上軸受け
14 潤滑油溜め
18 吐出孔
19 内側空間
20 連通孔
22 電動機室
Claims (2)
- 密閉容器底部に潤滑油溜め室を設け、前記密閉容器内部上方に固定子と回転子とから構成される電動機部と、下方にこの電動機部によって駆動される圧縮機構部とを設置し、前記固定子の前記圧縮機構部側コイルエンドの内周径を、上側に比べて下側を大きくするとともに、前記圧縮機構部の吐出孔を、少なくともその一部または全部を前記圧縮機構部側コイルエンドの内周に相対させ、前記密閉容器内部を圧縮機構部によって、潤滑油溜め室と、電動機部が設置された電動機室とに仕切るとともに、前記圧縮機構部上軸受けの半径方向外周に、前記潤滑油溜め室と電動機室とを連通する複数個の連通孔を円周状に設け、前記固定子の圧縮機構部側コイルエンドの下側内周径を、前記複数個の連通孔の径方向幅中央部の径と同等とした縦置き密閉型圧縮機であって、固定子の圧縮機構部側コイルエンドを軸方向に凸部を設けるとともに、このコイルエンドの凸部を、前記圧縮機構部の複数個の連通孔位置と一致させた縦置き密閉型圧縮機。
- 固定子に設けられた切り欠きと、コイルエンドの凹部の位置を一致させた請求項1記載の縦置き密閉型圧縮機。
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