JP4151011B2 - 高強度コンクリート補強材および該補強材の製法 - Google Patents
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Description
鉄筋コンクリート構造物は、その荷重により内部応力が発生し、鉄筋もこの力を受けるが鉄筋とコンクリートのヤング率すなわち伸び弾性率に差異があるため、鉄筋の伸びにコンクリートが追随しない。そのため、鉄筋の近傍からひび割れが発生し、時間の経過と共にこのひび割れはコンクリート構造物の表面に達することとなる。
するとこのひび割れ個所から酸性の雨が侵入し、本来はアルカリ性であるコンクリートを中性化し、イオン化現象により鉄筋の酸化すなわち錆の発生が始まる。
鉄筋が錆びるとその体積膨張をうながし、ひび割れをさらに助長し、大きくなったひび割れからさらに雨水が侵入することとなり、以上のような悪循環にてコンクリート構造物の劣化と破壊が進むことになる。
本発明は、以上のような従来からの鉄筋コンクリート構造物に関わる課題を解決するために発明されたもので、鉄筋を用いずとも十分な強度と耐久性を発生させるための新規な高強度コンクリート補強材と該補強材を用いたコンクリート構造物の施工法を提供することを目的として開発されたものである。
すなわち本発明は、剛性板材に高強度繊維集合体を固着し、該繊維集合体に補強される母材と親和性の強い材料を均一に固着したことを特徴とする高強度コンクリート補強材であり、その製法である。
1.コンクリート内部に鉄筋を有さないため、既述のような経年変化によるコンクリート
のひび割れを生じない。
2.耐候性に富む高強度板材にてコンクリート表面を覆うため、コンクリートの劣化を防
止することができる。
3.使用する板材によっては、コンクリート構造物を絶縁構造体とすることができ、電力
に関わる個所においては損失電流の防止効果が期待できる。
4.鉄筋を用いないので、塩水によるコンクリートの練り混ぜができ、寒冷地における冬
季施工の実施が可能となる。
図において、1は剛性板材としてのFRP(ガラス繊維強化プラスチック)による外板、2は高強度繊維集合体としての炭素繊維シート、3は補強される母材と親和性の強い材料としての砂、4は打設コンクリートである。5はFRPと炭素繊維シートを固着している接着剤、6は炭素繊維シートと砂を固着している接着剤である。なお炭素繊維シートは、比強度・比弾性率が高く鉄と同等の強度を有しながらも軽量である炭素繊維を用いてストランドおよび編み込みを含んだシート状のものまたはメッシュ状のものである。
本発明の製法は以下の工程により行われる。
1.炭素繊維シートに接着剤を塗布し、接着剤の硬化反応終了時まで常温化にて放置する
。炭素繊維シートは、炭素繊維すなわち有機高分子繊維の段階的な熱処理によって、あ
るいは紡糸したものを熱処理して得られる炭素化した繊維を用いてシート状に構成した
ものであり、そのままでは剛性を有しない。この工程による接着剤の塗布と放置による
硬化により剛性板体となる。接着剤は炭素繊維シートに十分染みこむ程度に塗布するこ
とが肝要である。
2.接着剤硬化面にさらに接着剤を塗布し、接着剤が硬化する前に、粒径選別した砂を均
等に撒いて敷きつめ、塗布した接着剤の硬化終了まで放置する。
実験によれば、図5に示すように砂の粒径によりコンクリートに対する付着力に差異がある。図に示したように粒径0.85mm〜2mmまでの範囲ではコンクリートへの付着は良好であるが、2.5mm以上では付着に劣り、また図には示していないが0.85mm以下でも付着力に劣る結果が出ている。粒径が所定範囲以下では粒状よりも粉体状になり、図3で示す凹凸が小さくなり、コンクリートの付着が悪くなる。また、粒径が所定範囲以上では単位面積当たりの砂個数が減り、砂1個に働く力が大きくなるため同様に付着が悪くなる。
従って、実験結果から推測すれば、有効粒径範囲は0.84mm〜2.4mmであり、好ましくは0.85mm〜2mmの範囲と考えられるが、この範囲に限定するものではない。単位面積(平方センチメートル)当たりの砂付着個数は粒径が大きくなるにつれて減少し、適合範囲は1平方センチメートル当たり95〜20個であるが、この付着個数もこれに限定するものではない。なお、使用する接着剤強度が上がれば単位面積当たりの粒数を減らすことができ、0.84〜10mmの範囲での使用も十分考えられる。
以上の工程にて、炭素繊維シート面に砂が一面に固着した板状体が形成される。
反対側の面をFRP板材面に押しあて、放置硬化させる。
この工程により、FRP、炭素繊維シート、砂の3者が一体化した板状体が形成され、高強度コンクリート補強材が完成する。
本例の使用時は、一般の型枠の代わりとして木品を用いてコンクリート打設を行う。
すなわち、任意に選択した間隔にて適宜支持部材を用いて本品を地上に対向立設する。
このとき、砂固着面が対向する位置とする。
次ぎに、生コンクリートを本品板体間に注入し、所定時間の放置にてコンクリート固化を行う。生コンクリートは砂粒間に入り込んで固化するため、木品とコンクリートとは一体化する。
一般的なコンクリート打設は、型枠を設けてこの型枠間に生コンクリートを注入し、固化後に型枠を除去する作業が必要であるが、木発明によるコンクリート補強材はその剛性ゆえ型枠としての機能を有し、施工後においては補強主体となることから脱枠を要せず、1作業工程を減ずることができる。なお、図4は本発明の他例を示すものである。
前例が単なるシート状の炭素繊維を用いたのに対し、本例は一定間隔の切り欠き部分を有する略格子状のシートを併用したもので、炭素繊維シートの上に本シートを接着し、さらに本シート上に粒径選別した砂を接着剤にて固着したものであり、効果は前例と同様である。
鉄筋を用いずにコンクリート強度を保つためには他の何らかの手段が必要となるが、コンクリート構造体の外面に高強度部材を固着させることを発想し、実現化したのである。単にコンクリート構造物に接着剤を介してシートを貼着するだけでは、シートとコンクリート面との結合力が不十分であり、つまりコンクリートに対するシートの付着力が弱く、実験の結果その剥離現象を生じさせるに至った。
これを解消するため、シートにさらに粒状物を固着させて微細な凹凸面を形成し、この凹凸面にコンクリートを親和させることにより、満足できる結果となることを見いだし、また粒状物の粒径が重要なファクターであることを知るに至ったのである。
しかしながら、シートのみでは型枠代用性に劣るため、シートにさらにFRPなどの剛性材料を固着させることで、当初の目的を達成できることを認知し、本発明が創案されたのである。以上のことから、本発明は従来法と異なる画期的な内容であり、種々の利点を有するものとなった。なお、剛性板材としてはFRP以外に木材や他の合成樹脂など他の剛性素材を用いることができ、高強度部材は炭素繊維シート以外を用いてもよい。補強される母材と親和性の強い材料としては砂以外に、ガラスの小粒状物など他の物質も利用可能である。既述のFRPは平板以外に、曲面を有する任意形状の板体としての利用も可能である。また、FRP外面に着色や彫刻などを施すことで、都市景観の改善にも寄与することができる。以上のごとく、本発明により耐久性および耐候性に富み、劣化の防止効果も有するコンクリート構造物を得るためのコンクリート補強材とこの補強材の製法を得る ことができる。
2 炭素繊維シート
3 砂
4 打設コンクリート
5 接着剤
6 接着剤
7 格子状シート
8 切り欠き部
9 接着剤
Claims (2)
- 剛性板材に高強度繊維集合体を固着し、該繊維集合体上に、一定間隔の切り欠き部分を有 する略格子状シートを固着し、本シート上に、補強される母材と親和性の強い材料を均一に固着したことを特徴とする高強度コンクリート補強材。
- 1.炭素繊維シートに接着剤を塗布し、接着剤の硬化反応終了時まで常温下にて放置す
る。
2.接着剤硬化面にさらに接着剤を塗布し、一定間隔の切り欠き部分を有する略格子状
シートを固着する。
3.以上のシート上にさらに接着剤を塗布し、接着剤硬化前に、粒径選別した砂を均等
に撒いて敷きつめ、塗布した接着剤の硬化終了まで放置する。
4.剛性板材に接着剤を塗布し、硬化前に前記処理後の炭素繊維シートを、砂固着面の
反対側の面を剛性板材に押しあて、放置硬化させる。
以上の工程よりなることを特徴とする高強度コンクリート補強材の製法。
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