JP4149169B2 - ねじりコイルばねの取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ねじりコイルばねの取付構造に関し、詳しくは、電動工具、例えばジグソーにおけるクランプ装置の操作レバーを常に回転方向に付勢するために利用されるねじりコイルばねの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動工具では、種々の目的で機器本体に対して回動可能に操作レバーが装着される。例えば、ジグソーでは、ブレードの交換を容易に行うために、ブレードをクランプするクランプ機構を操作レバーにより操作するツールレスクランプ機構が設けられる。
この種の装置の操作レバーは、操作性を向上させるため、自動的に初期位置に戻るようねじりコイルばね等によって付勢される。この際、操作レバーの誤操作を防止するために、操作レバーを付勢するねじりコイルばねは、予めある程度ねじられた状態で取付けられる。具体的に説明すると、操作レバーは、たとえば図11に示すように、操作レバー51を貫通し回転支軸となる取付ネジ52をジグソー本体50の取付部のねじ穴53にねじ込むことによって取り付けられる。その際、ねじりコイルばね54の一端部54aは操作レバー51の装着部51aの係止溝51bに嵌めこまれ、他端部54bはジグソー本体50の装着部55の係合溝55aに嵌め込まれ、この状態でねじ止めされる。この状態では、ねじりコイルばね54は角度θだけねじられたねじり位置に保持され、操作レバー51には回転方向に所定のねじり力が作用する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の組み付け作業は、ねじりコイルばね54の回転方向の付勢力がねじ止め前の操作レバー51にかかってしまうのでいささか厄介である。すなわち、ねじりコイルばね54の付勢力に抗して操作レバー51を所定の位置(ジグソー本体50に対して操作レバー51を取付ける位置)に保持し、この状態でねじりコイルばね54の端部54bを係合溝55aに嵌め込むのに手間取る。特に、この種の部品は小型化が要請されるとともにばねが露出しない構成とされるので、一層、上記の作業性が悪くなっている。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、回動部材を回転付勢するねじりコイルばねを簡単に組み付けることができるようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本出願人は請求項1に記載の発明を創出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、機器本体に対し回動部材を回動自在に組み付ける支軸に嵌装されて該回動部材を回転方向に付勢するねじりコイルばねの取付構造であって、前記ねじりコイルばねは軸線方向の圧縮弾発力が生じる形状に形成され、前記機器本体および回動部材には該ねじりコイルばねの各端部をねじり位置において係止する対をなす係止部が形成され、さらに前記機器本体および回動部材の一方には該ねじりコイルばねの一方の端部が当接したときにその端部をねじり方向に沿って前記ねじり位置まで移動可能に支持する当接部が前記係止部に隣接して形成される。
そして、前記ねじりコイルばねの一方の端部が前記当接部に当接する状態では、前記ねじりコイルばねが軸線方向に第1の長さとなるまで圧縮された状態となり、前記ねじりコイルばねの各端部が前記係止部に係止される状態では、前記ねじりコイルばねが軸線方向に非圧縮の状態又は第1の長さより長い第2の長さとなるまで圧縮された状態となる。
このねじりコイルばねの取付構造では、機器本体に対し回動部材を組み付ける際は、まず、支軸に嵌装されたねじりコイルばねの一端部を当接部がない方の係止部に係止させ、ねじりコイルばねの他端部を当接部に当接させた状態で機器本体に支軸と回動部材を取付ける。このとき、ねじりコイルばねは軸線方向に圧縮された状態とはなるが、その両端部が未だねじり状態となっていないため、回動部材にねじりコイルばねの回転方向の付勢力が作用することはない。支軸と回動部材を機器本体に対して取付けると、上記ねじりコイルばねの他端部をねじり方向に移動操作すると、その他端部が係止部を臨むねじり位置に移動するとともに、弾発力によってねじりコイルばねが軸線方向に伸びて係止部に係合する。したがって、ねじりコイルばねの取付時においては、回動部材にねじりコイルばねの回転方向の付勢力が作用していないため取付作業を容易に行うことができる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記ねじりコイルばねの前記一端部に軸線方向に曲げ返された形状の屈曲部を設けたことを特徴とする。
したがって、ねじりコイルばねの端部をねじり位置に移動操作するときには、この屈曲部を適宜な棒状工具等で円周方向に簡単に押すことができる。
【0007】
ところで、前記係止部は、ねじりコイルばねの端部が嵌り込む凹部として形成するのが美観上からいって好ましく、その凹部に部分的に高さの異なる段差部を形成することで前記当接部を構成することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するために本出願人は請求項3に記載の発明を創出した。すなわち、請求項3に記載の発明は、ハウジングと、操作レバーと、操作レバーをハウジングに対して回動自在に支持する支軸と、支軸に嵌装され操作レバーを初期位置方向に付勢するねじりコイルばねとを有する電動工具である。
ねじりコイルばねは軸線方向に圧縮弾発力が生じる形状に形成される。前記ハウジングおよび操作レバーには、ねじりコイルばねの各端部をねじり位置に係止する対をなす係止部が形成されると共に、ハウジングおよび操作レバーの少なくとも一方には、ねじりコイルばねの一方の端部が当接したときにその端部をねじり方向に沿って前記ねじり位置まで移動可能に支持する当接部が係止部に隣接して形成される。
そして、ねじりコイルばねの一方の端部が当接部に当接する状態では、ねじりコイルばねが軸線方向に第1の長さとなるまで圧縮された状態となり、かつ、操作レバーが初期位置にあるときの操作レバーに作用する付勢力が第1の付勢力となり、ねじりコイルばねの各端部が係止部に係止される状態では、ねじりコイルばねが軸線方向に非圧縮の状態又は第1の長さより長い第2の長さとなるまで圧縮された状態となり、かつ、操作レバーが初期位置にあるときの操作レバーに作用する付勢力が第1の付勢力より大きな第2の付勢力となる。それにより、当接部に当接したねじりコイルばねの一方の端部をねじり位置に移動させると、その一方の端部がねじりコイルばねの弾発力によって係止部に係合する。
この電動工具では、ハウジングに操作レバーを取付時の操作レバーに作用する回転方向の付勢力(ねじりコイルばねの付勢力)を小さくできるため、操作レバーの取付作業を容易化することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1はジグソーの正面図、図2はジグソー前端部のクランプ装置周りを下から見た図である。ジグソー1は本体(機器本体ともいう)2の前端部にブレードBを保持して上下動するクランプ装置3を備えている。クランプ装置3は支軸(支点軸線)となる取付ボルト4を中心として回動可能に設けられた操作レバー5に連動する構成とされている。この操作レバー5が本発明でいう回動部材である。なお、図1中、6は被切断物にあてがうベース、7は本体2を被う樹脂カバーにより形成されたグリップである。
【0010】
図2において操作レバー5は閉じ位置(すなわち、初期位置)にあり、クランプ装置3の係合爪3aと操作レバー5の係合爪5aとが離間している。この状態から操作レバー5を手で操作して図示反時計方向に回動させると係合爪5aと3aが係合し、さらに操作レバー5を回動させるとクランプ装置3が従動してブレード解放動作をするようになっている。なお、図2のクランプ装置3にはブレードが装着されていない。この操作レバー5は、ワンタッチ式のブレード交換を可能にするものであり、安全のためブレード装着部を取巻く馬蹄形となっていて、ジグソー使用時にがたつかないように、常にばね力で閉じ方向に付勢されている。以下、この操作レバー5を付勢するねじりコイルばねの取付構造について詳しく説明する。
【0011】
図1に示したねじりコイルばね8は、詳しくは図3および図4に示す形状とされ、圧縮ばねとしても機能するようにピッチが設定されている。コイル部8aの両端部8b,8cはアーム状に張り出しており、その先端部にはコイル軸線とほぼ平行にコイル部8aの中央部に向けて曲げ返されてなる屈曲部が形成されている。前記操作レバー5は、図1、図5および図6に示した略馬蹄形状であり、取付ボルト4が貫通孔5bに挿通されることよって回動自在に支持されるようになっている。この貫通孔5bと同心位置に、ねじりコイルばね8の下側半分程を収納できる装着部5cが形成され、さらに、ねじりコイルばね8の端部8cを所定のねじり位置に保持するための溝状係止部5dが設けられている。
【0012】
取付ボルト4により操作レバー5を取り付ける相手部材は、本例の場合ジグソー本体のギヤケース9である。図7および図8に示すように、ギヤケース9の下面側には、取付ボルト4用のねじ穴9aと、ねじりコイルばね8の上側半分程を収納できる装着部9bが同心状に形成される。この装着部9bはその外周部の一部が側方に膨出した形状とされ、そこにねじりコイルばね8の端部8bが嵌り込むことができるようになっている。また、装着部9bには装着部9bの一部に段差を形成する当接部9cが設けられている。当接部9cの高さ寸法は、ねじりコイルばね8の圧縮変形量に応じて設定されている。したがって、ねじりコイルばね8の端部8bが当接部9cに当接する状態で操作レバー5をギヤケース9に組付けても、ねじりコイルばね8が軸線方向に圧縮することで操作レバー5の組付けには支障が生じないようになっている。また、前記装着部5cと装着部9bの高さ寸法は、ねじりコイルばね8の無負荷状態の寸法を考慮して設定されている。すなわち、ねじりコイルばね8の両端部8b,8cが装着部9b,5cの係止部に係止されてねじり位置にある状態では、ねじりコイルばね8が若干圧縮された状態となるように前記装着部5cと装着部9bの高さ寸法が設定される。このため、ねじりコイルばね8が装着部9b,5cに装着された状態では、ねじりコイルばね8の両端部8b,8cが装着部9b,5cの床面に当接し、ねじりコイルばね8はがたつくことなく装着部9b,5cに装着される。なお、当接部9cは上面がフラットに形成され、この上面に隣接する側壁部がねじりコイルばね8の端部8bが係止する係止部9dとなっている。
【0013】
つぎに、上記構成の作用を説明する。本体2のギヤケース9に対し操作レバー5を組み付ける際には、貫通孔5bに挿通した取付ボルト4(支軸)にねじりコイルばね8を嵌装し、その一端部8cを、操作レバー5の溝状係止部5dに嵌めこんでおく。この状態で取付ボルト4をギヤケース9のねじ穴9aにねじ込むことで操作レバー5をギヤケース9に対して回動自在に取り付ける。このとき、図10(a)に拡大して示すように、ねじりコイルばね8の端部8bは当接部9cに当接し、ねじりコイルばね8は軸線方向に圧縮された状態となる。当接部9cに当接した端部8bは起立する屈曲部が露出しているため外部から操作し易くなっている。このときの端部8bの位置は図9に示されている。端部8bが図9に示す位置にあるときは、ねじりコイルばね8は回転方向にねじられていないため、操作レバー5には回転方向の付勢力が作用していない状態となっている。
その後、上記の端部8bを棒状の工具を使ってねじり方向に移動操作すると、その端部8bは係止部9dを臨むねじり位置に移動するとともに(図2参照)、その弾発力によってねじりコイルばね8が軸線方向に伸びて端部8bが装着部9bの奥まではまり込み、係止部9dに係合される。この状態が図2,図10(b)に示されている。
【0014】
以上説明したように、取付時に操作レバー5にはねじりコイルばね8の回転方向の付勢力が作用していないため、操作レバー5をギヤケース9に取り付ける作業を容易に行うことができる。また、ねじり位置で係止されたねじりコイルばね8は、その圧縮変形量の分だけ深く装着部9bに嵌り込むため、両端部8b,8cが装着部9b,5cの係止部から外れることが防止される。これによって、ねじりコイルばね8の両端部8b,8cを短くしても確実に係止され、ねじりコイルばね8ひいては取付構造のコンパクト化に寄与する。
【0015】
なお、上述の実施形態は、ジグソーの操作レバーを付勢するねじりコイルばねの例であったが、このほかにも種々の電動工具に本発明を適用することができる。本発明が適用可能な電動工具の例としては、電動丸鋸のセーフティカバー、チェーンソーのブレーキレバー、ルーターの昇降ロックレバー等が備える付勢機構のねじりコイルばね取付部構造として利用することができる。さらに、各種回動部材を付勢するねじりコイルばね取付部構造として広く利用することができる。
また、当接部を設ける部材は、ギヤケース(機器本体)側に限られず、操作レバー側に設けても良い。
【0016】
以上、本発明の一実施形態を詳細に説明したが、これは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
なお、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態に係るジグソーの正面図である。
【図2】 図1の矢印II−II視図であり、ジグソーの前端部を示す。
【図3】 ねじりコイルばねの拡大正面図である。
【図4】 ねじりコイルばねの拡大下面図である。
【図5】 操作レバーの一部破断背面図である。
【図6】 操作レバーの平面図である。
【図7】 ギヤケース単品の下面図であり、図1の矢印VII−VII方向から見た場合に相当する。
【図8】 図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】 ジグソーの前端部を示す図である。
【図10】 ねじりコイルばねの作用を説明する図である。
【図11】 従来例に係る操作レバーとねじりコイルばねの取付構造を説明する分解斜視図である。
【符号の説明】
1:ジグソー
2:本体(機器本体)
4:取付ボルト(支軸)
5:操作レバー(回動部材)
8:ねじりコイルばね
9:ギヤケース
9c:当接部
9d:係止部
Claims (3)
- 機器本体に対し回動部材を回動自在に組み付ける支軸に嵌装されて該回動部材を回転方向に付勢するねじりコイルばねの取付構造であって、
前記ねじりコイルばねは軸線方向の圧縮弾発力が生じる形状に形成され、
前記機器本体および回動部材には、該ねじりコイルばねの各端部をねじり位置において係止する対をなす係止部が形成され、
前記機器本体および回動部材の一方には、該ねじりコイルばねの一方の端部が当接したときにその端部をねじり方向に沿って前記ねじり位置まで移動可能に支持する当接部が前記係止部に隣接して形成され、
前記ねじりコイルばねの一方の端部が前記当接部に当接する状態では、前記ねじりコイルばねが軸線方向に第1の長さとなるまで圧縮された状態となり、
前記ねじりコイルばねの各端部が前記係止部に係止される状態では、前記ねじりコイルばねが軸線方向に非圧縮の状態又は第1の長さより長い第2の長さとなるまで圧縮された状態となり、
前記当接部に当接したねじりコイルばねの一方の端部をねじり位置に移動させると、その一方の端部がねじりコイルばねの弾発力によって前記係止部に係合することを特徴とするねじりコイルばねの取付構造。 - 前記ねじりコイルばねの前記一端部に軸線方向に曲げ返された形状の屈曲部を設けた請求項1に記載のねじりコイルばねの取付構造。
- ハウジングと、操作レバーと、操作レバーをハウジングに対して回動自在に支持する支軸と、支軸に嵌装され操作レバーを初期位置方向に付勢するねじりコイルばねとを有する電動工具であって、
前記ねじりコイルばねは軸線方向に圧縮弾発力が生じる形状に形成され、
前記ハウジングおよび操作レバーには、前記ねじりコイルばねの各端部をねじり位置に係止する対をなす係止部が形成され、
ハウジングおよび操作レバーの少なくとも一方には、前記ねじりコイルばねの一方の端部が当接したときにその端部をねじり方向に沿って前記ねじり位置まで移動可能に支持する当接部が前記係止部に隣接して形成され、
前記ねじりコイルばねの一方の端部が前記当接部に当接する状態では、前記ねじりコイルばねが軸線方向に第1の長さとなるまで圧縮された状態となり、かつ、操作レバーが初期位置にあるときの操作レバーに作用する付勢力が第1の付勢力となり、
前記ねじりコイルばねの各端部が前記係止部に係止される状態では、前記ねじりコイルばねが軸線方向に非圧縮の状態又は第1の長さより長い第2の長さとなるまで圧縮された状態となり、かつ、操作レバーが初期位置にあるときの操作レバーに作用する付勢力が第1の付勢力より大きな第2の付勢力となり、
前記当接部に当接したねじりコイルばねの一方の端部をねじり位置に移動させると、その一方の端部がねじりコイルばねの弾発力によって前記係止部に係合することを特徴とする電動工具。
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