JP4148789B2 - 液状エポキシ樹脂の分析方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂又はその誘導体の分析方法に関する。さらに詳しくは、エポキシ樹脂又はその誘導体を化学的及び物理的手法により実施されていた既存の分析を液体クロマトグラフ及び/又は超臨界流体クロマトグラフを用いて実施する分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性樹脂の分野では、主として有機オリゴマーが使用され、その用途や特性により種々の樹脂が塗料、電気・電子、建築、土木及び接着剤などの各種の産業分野で広く用いられている。これらの樹脂は、用途・分野によって様々な特性が要求されるため、その特性を発現する様々な要素を精密に制御し提供する事が必要である。それに伴い諸特性を制御するための工程分析や製品分析などに非常に大きな負担が掛かっているのが実情である。
【0003】
例えばエポキシ樹脂は、電気・電子、塗料、建築・土木及び接着等の非常に広範囲な分野で使用されている。エポキシ樹脂では、用途が異なったりあるいは同一用途であっても要求される特性が異なることがあり、それぞれの要求に合わせて厳密な管理がなされている。最も汎用的に用いられているエポキシ樹脂としてビスフェノールA型及びビスフェノールF型エポキシ樹脂を挙げることができるが、それらの樹脂においても各分野で要求される特性に合わせて種々の物性を制御した特定の品質のものが求められている。
【0004】
液状ビスフェノールA型及び液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂が建築・土木分野で使用される場合、従来からの物性の他にエポキシ樹脂硬化剤との反応性やエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との相溶性の向上あるいは、液状樹脂の冬期の結晶化抑制など主として施工時の作業性の安定化に影響を与える諸特性の向上が求められている。このような要求に対して種々の品質を厳密に管理する事により諸特性を改善する事が広く行われている。例えばエポキシ樹脂の力学的特性や作業性には、エポキシ当量や粘度などの一般的な物性もそれぞれの要求に則した、より狭く厳密な管理幅で制御する必要がある。また、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基が変化した種々の官能基を特定の値に制御することによる改善も同時に成されることが多い。具体的には、エポキシ樹脂には、エポキシ基が変化した一般式1に示されるような1,2−グリコール体や一般式2に代表されるクロルヒドリン体等が含有する。それらの官能基が樹脂中に多い場合、エポキシ樹脂硬化剤との反応性やエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との相溶性の向上あるいは、液状樹脂の冬期の結晶化抑制などに影響を与えるため、それらの官能基を積極的に利用する事が広く行われている。しかしながら、それらの官能基が特定の量以上になると力学的特性の低下をもたらすため、その含有量の厳密な管理が必要となる。
【0005】
【化1】
一般式(I)
Figure 0004148789
【0006】
【化2】
一般式(II)
Figure 0004148789
【0007】
更に同じ用途でも使用環境が異なる場合、例えば夏期と冬期の気温の差によって起こるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応性の差をエポキシ樹脂中の1,2−グリコール体やクロルヒドリン体等の含有量を制御することで要求特性に合わせる事なども行われている。
一方、それら液状エポキシ樹脂が電気・電子用途などで使用される場合では、樹脂中の1,2−グリコール体が多いと硬化物の吸水性が増加し硬化物物性に悪影響を及ぼしたり、またクロルヒドリン体等の塩素含有化合物の含有量が多いと電気特性に悪影響を及ぼすためそれらの成分を低く管理する必要がある。
【0008】
このようにいくつもの特性を同時に管理する必要があるばかりでなく、用途が異なれば要求される特性も異なり、さらには同様な用途であっても使用する環境などで求められる特性が異なるなど多品種化していることから、それらを制御・管理するための工程分析や製品分析に対する負担が非常に大きくなっている。
従来からそれらの各種の分析はそれぞれ異なった分析手法で実施されているため、個々の分析をそれぞれ行う必要があった。また使用する試薬などが異なっている場合が多く、分析項目別に調整が必要があり、その調整作業が繁雑であるばかりでなく、多種・多量の試薬の使用が必要である事が多い。更に、分析担当者の習熟度が必要であったり、人的な負担が大きいなどの問題点を抱えていた。
それらの問題点を解決するために、従来の各種分析方法に自動化装置を導入して人的な負担を軽減する試みがある。しかしながら個々の分析手法や使用する試薬などが異なっている点などは、従来の手法と変わりが無く根本的な問題解決となっていなかった。
【0009】
また、高速液体クロマトグラフを使用して液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂中の加水分解性塩素や1,2−グリコールを分析する試みも為されている(Schenk C. and Kayen, A.H.M presented at 15th FATIPEC Congress,Amsterdam, 345-360(1980))。しかしながらこの手法では式III及び式IVに示されるようなn=0成分からの生成物のみが対象となっている。通常の有機オリゴマーは、分子量分布を有しておりn=0成分のみではなくn=1、n=2などの他のオリゴマー成分を含有し、さらにn=0と同様にそれらの成分からの生成物も含有している。従って、分子量分布が異なる場合には、それらの成分を含めた形での定量分析が必要であるがその手法は示されていない。
【0010】
【化3】
式(III)
Figure 0004148789
【0011】
【化4】
式(IV)
Figure 0004148789
【0012】
さらに、高速液体クロマトグラフを使用してエポキシ当量の分析する試みも成されている(G.Eppert, G.Lierscher and C. Stief, J Chromatogr, 238, 385-398 (1982))。しかしながら、この手法によるエポキシ当量の分析値は、従来の分析法による分析値と大きく異なっている問題点がある。また、粘度などの物理的な分析手法を用いる項目と化学的な分析手法を用いて分析する項目を同じ分析手法で同時に分析する手法は全く知られていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来用いられている物理的な分析手法を用いる分析項目と化学的な分析手法を用いて分析する項目とを同じ分析手法によって行うべく種々検討した結果、エポキシ樹脂又はその誘導体において化学的及び物理的手法により実施されていた種々の分析を液体クロマトグラフ及び/又は超臨界流体クロマトグラフを用いて実施することにより本発明を完成したもので、本発明の目的は物理的な分析手法による分析項目と化学的な分析手法により分析する分析項目とを同じ分析手法によって行うエポキシ樹脂又はその誘導体の分析方法を提供する。
【0014】
即ち、本願の請求項1の発明の要旨は、次に述べるA)〜C)項の工程を必須とする液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の物理的項目と化学的項目の同時多数項目の分析方法であり、その分析項目がエポキシ当量、粘度、加水分解性塩素含有量、1,2−グリコール含有量、全塩素含有量であり、液状エポキシ樹脂の分析方法である。
A)各分析値が既知の液状エポキシ樹脂を液体クロマトグラフ及び/又は超臨界流体クロマトグラフにより分析し、液状エポキシ樹脂を構成する成分をクロマトグラムのピークとして得る工程。
B)工程A)より得られたクロマトグラムの各ピークの値を説明変数として、既知の分析値との重回帰分析を行い重相関係数が0.99450上になるように相関性の高いピークを選択して、それらピークの回帰係数を求めて既知の分析値との回帰式を得る工程。
C)分析値が未知の液状エポキシ樹脂を液体クロマトグラフ/又は超臨界流体クロマトグラフにより分析し、工程B)より得られた回帰式から同時多数項目の分析値を得る工程。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明について詳細に説明する。
本発明においてエポキシ樹脂又はその誘導体としては平均分子量2000以下のものである。エポキシ樹脂又はその誘導体の平均分子量が2000より大きいと液体クロマトグラフ及び/又は超臨界流体クロマトグラフで分析した時、エポキシ樹脂又はその誘導体を構成する成分の分離が不十分になるので好ましくない。尚、本発明の平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフ(以下GPCと言う)により測定し、標準ポリスチレンの分子量から換算して求めた値である。
【0016】
本発明で使用する分析手段としては液体クロマトグラフ(以下LCと言う)及び/又は超臨界流体クロマトグラフ(以下SFCと言う)が好ましい。LC及び/又はSFCとは、固定相及び移動相の相接する二つの相が形成する平衡の場に置いて、各種の化合物をその両相との相互作用(例えば吸着、分配、イオン交換、分子サイズ等)の差によって分離する手法であり、移動相に液体を使用したものをLCと言い、また移動相に超臨界流体を使用したものをSFCと言う
【0017】
また、それらを使用して分析する場合の分析時間は、120分以下好ましくは60分以下、更に好ましくは30分以下である。分析時間が120分よりかかる場合は、従来から実施されていた分析手法に比較して短時間であるという特徴が失われ好ましくない。
【0018】
先ず、本発明のA工程においては、エポキシ樹脂又はその誘導体をLC及び/又はSFCにより分析し、有機オリゴマーを構成する成分をクロマトグラムのピークとして得る。即ちこの工程A)は、分析値が既知のエポキシ樹脂又はその誘導体をLC及び/又はSFCを使用して各種分析値を求めるための標準サンプルとし、そのデータベースとなるべきクロマトグラムを得る工程である。このデータベースを構築するためには、異なった分析値を有する有機オリゴマーを3種類以上、更に好ましくは、4種類以上分析する事が好ましい。
【0019】
本発明の工程B)は、工程A)より得られたクロマトグラムの各ピークの値を説明変数として、既知の分析値との重回帰分析を行う。即ち、工程A)で得られた有機オリゴマーのクロマトグラムの各ピーク値を説明変数とし、そのエポキシ樹脂又はその誘導体の既知の分析値を従属変数として構築したデータベースを統計的解析手法である重回帰分析法を用いて分析する。更に、重回帰分析法以外では、主成分回帰分析(PCR:Principal component regression)やPLS:Partial Least Squares 等の解析手法を使用することも可能である。
【0020】
また、各ピーク値と既知の分析値との相関関係が重相関係数で0.900以上の結果となるような相関性の高いピークを選択する事が必要である。各ピーク値と既知の分析値との相関関係が重相関係数で0.900より小さいと、求めた回帰式と既知の分析値との相関が悪く、精度の高い分析手法とならない。重相関係数で0.900以上の結果となるような相関性の高いピークを選択する方法として、重回帰分析より得られたピークの回帰係数を検定し、危険率が0.05以下となったピークを選択し、再度、重相関係数を求める方法などがあるが、この方法に限定されるものでない。
【0021】
この時使用するクロマトグラムの各ピーク値は、インテグレーターなどのクロマトグラムのデータ処理装置により算出されたピーク面積値、ピーク高さ値、ピーク面積パーセント、ピーク高さパーセントなどが使用される。
【0022】
本発明の工程C)は、分析値が未知のエポキシ樹脂又はその誘導体をLC及び/又はSFCにより分析し、得られたクロマトグラムのピーク値から工程B)により得られた回帰式を利用して各分析値を得る。本発明は工程A)〜C)項の工程を必須とする分析方法及びそれを用いた製造方法であるが、工程A)及び工程B)の回帰式を求める工程は、使用するLC及び/又はSFCの分析システム等の安定性、用いたシステムの性能やシステムの稼働率等によるが、分析値が未知のエポキシ樹脂又はその誘導体を分析するに当たり、その都度実施する必要はない。求めた回帰式は通常6ヶ月以上使用可能であり、従ってこの期間は、工程C)のみで分析値を求める事が可能である。
【0023】
また、本発明の特徴として従来の分析手法で分析された値を基準としているので本発明の分析方法で求められた値は、従来からの分析方法で得られたものと同等と見なす事ができる。更にLC及び/又はSFCでの分析は、試料を適当な溶媒に溶解した後、分析カラムに注入すると言う簡単な処理で分析する事が可能であり人的な負荷を大幅に軽減することができる。
【0024】
本発明のLC及び/又はSFCは、種々の検出器を使用する事ができる。具体的には、紫外可視検出器、蛍光検出器、質量分析計、赤外分析計、示差屈折率計、水素炎イオン検出器、粘度計などが挙げられるがそれらに限定されるものではない。特に、紫外可視検出器とした高速液体クロマトグラフが最も汎用的に使用され、検出感度も良好で特に好ましい。
【0025】
また、紫外可視検出器を使用した場合、検出器の1波長または2波長以上の測定波長を用い、主成分のピークが検出器の上限を超えず且つ不純物成分のピークが検出可能な条件で測定することが必要である。主成分のピークが検出器の上限を超えてしまうと正確な分析ができない恐れがある。また、微量成分が十分な検出感度で測定できないと分析精度が劣る恐れがある。例えば、微量成分を十分な検出感度で分析した時、主成分のピークが検出器の上限を超えてしまう場合は、微量成分の測定波長と主成分の測定波長を変えて微量成分が検出可能な測定波長と主成分が検出器の上限を超えない測定波長の2つの波長を使用する事により十分な精度で分析する事ができる。
【0026】
次に、本発明の分析方法を工程分析として用いる有機オリゴマーの製造方法について、説明する。
本発明の分析方法は、いくつもの分析項目を同時に分析でき、且つ分析作業に要する人的な負担が軽減できるのでコスト的に有利であり、また目標とする製品を確実に生産するために有効な手法である。この工程分析は、生産のライン中に自動サンプリング装置などを取り付けるオンラインでの工程分析も可能であり、また、サンプリング後分析を実施するオフラインでの工程分析でも可能である。
【0027】
本発明の有機オリゴマーの分析方法及びそれを用いた有機オリゴマーの製造方法は、エポキシ樹脂及びその誘導体に適用する事が有効である。分析項目でエポキシ当量、粘度及び/又は軟化点、加水分解性塩素含有量、1,2−グリコール含有量、全塩素含有量等の2つ以上の項目が同時に分析可能であり、更にその他の項目、例えばゲルタイムやポットライフ等の硬化性の指標となる項目も分析する事ができる。また、ここで言うエポキシ樹脂誘導体とは、エポキシ樹脂中に存在するエポキシ基や水酸基の一部もしくは、すべてを他の化合物で変性したものを指す。具体的には、フェノール類、カルボン酸類、アミン類、酸無水物類などとエポキシ樹脂との反応物を言う。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、それに先立ち分析用の試料について参考例として説明を行う。
【0029】
参考例1
表1に示す分析値の市販の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製)を本発明の実施例で使用する有機オリゴマーとした。尚、GPCにより平均分子量を測定した結果、すべて400以下であった。また、表1中に記載の各分析項目の分析方法(従来法)を下記に示した。
【0030】
(エポキシ当量) JIS K−7236に記載の方法。即ち、試料をクロロホルム10mLに溶解し、無水酢酸20mL、20%の臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mLをそれぞれ加えて、電位差滴定装置を用いて0.1mol/L過塩素酸酢酸標準液で滴定する。
【0031】
(粘度) JIS K−7233に記載の方法。即ち、500mLの円筒缶に樹脂400gをはかりとって、25±0.2℃の恒温水槽で5時間放置して恒温にする。回転粘度計のローターを樹脂に浸漬して測定を行う。
【0032】
(加水分解性塩素) JIS K−6755に記載の方法。即ち、試料を2−ブトキシエタノール25mLに溶解し、120g/L水酸化ナトリウムの2−ブトキシエタノール溶液25mLを加えて室温で30分反応させる。次いで電位差滴定装置を用いて0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定する。
【0033】
(全塩素) JIS K−7246に記載の方法。即ち、試料を2−ブトキシエタノール25mLに溶解し、1mol/L水酸化カリウムの1,2−プロパンジオール溶液25mLを加えて、ホットプレート上で10分間加熱還流下で反応させる。室温まで冷却後、50mLの無水酢酸を加えて、電位差滴定装置を用いて0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定する。
【0034】
(1,2−グリコール) 試料をクロロホルム25mLに溶解し、0.2mol/L過よう素酸のメタノール溶液を加えて、室温で2時間反応させる。反応後、冷水100mL、10%硫酸水溶液5mLを加え、更に20%よう化カリウム水溶液20mLを加えて、でんぷん溶液を指示薬として0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定する。同時に空試験を実施して、空試験との滴定量の差をサンプル量で除した値を1,2−グリコール(meq/100g)とした。
【0035】
【表1】
Figure 0004148789
【0036】
実施例1(有機オリゴマーのLC分析)
表1の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を0.100gはかりとりアセトニトリル10mlにて溶解した。溶解した試料をオートサンプラ−にセットしてインジェクションボリュウム5μLでLC分析を実施した。図1に参考として試料番号8のLCクロマトグラム及びクロマトグラム上で得られたピークに番号を付記して示した。また、試料番号1〜8の各ピーク番号の面積値を表2に示した。尚、分析条件は以下のとおりである。
【0037】
HPLC分析装置:アジレントテクノロジーズ シリーズ1100
検出器:紫外可視検出器 測定波長285nm
カラム:インタクト社製 カデンツァ CD−C18 長さ50mm×内径4.6mm
移動相:水/メタノール(グラジエント分析)
メタノール60%→18分→メタノール100%
【0038】
【表2】
Figure 0004148789
【0039】
(回帰式を求める工程)
1.エポキシ当量
表1に示した試料番号1〜8のエポキシ当量とLCで求めた表2の各ピークの面積値とに関して重回帰分析を実施し、最も良好な重相関係数となるようなピークを求めた。その結果、ピーク▲1▼、ピーク▲3▼、ピーク▲5▼、ピーク▲7▼、ピーク▲8▼、ピーク▲9▼を選択すると重相関係数0.99997を得た。さらに、下記重回帰式(I)で示されるa〜aの係数を求める。
重回帰式(I)
エポキシ当量(g/eq)=a×ピーク▲1▼面積値+a×ピーク▲3▼面積値+a×ピーク▲5▼面積値+a×ピーク▲7▼面積値+a×ピーク▲8▼面積値+a×ピーク▲9▼面積値+a
この重回帰式(I)を使用して試料番号1〜8のエポキシ当量を求めて、表1に示した従来法によるエポキシ当量の分析値との比較を表3に示した。
【0040】
【表3】
Figure 0004148789
【0041】
2.粘度
表1に示した試料番号1〜8の粘度とLCで求めた表2の各ピークの面積値とに関して重回帰分析を実施し、最も良好な重相関係数となるようなピークを求めた。その結果、ピーク▲1▼、ピーク▲3▼、ピーク▲5▼、ピーク▲7▼、ピーク▲8▼、ピーク▲9▼を選択すると重相関係数0.99984を得た。さらに、下記重回帰式(II)で示されるb〜bの係数を求める。。
重回帰式(II)
粘度(mPa・s)=b×ピーク▲1▼面積値+b×ピーク▲3▼面積値+b×ピーク▲5▼面積値+b×ピーク▲7▼面積値+b×ピーク▲8▼面積値+b×ピーク▲9▼面積値−b
の重回帰式(II)を使用して試料番号1〜8の粘度を求めて、表1に示した従来法による粘度の分析値
との比較を表4に示した。
【0042】
【表4】
Figure 0004148789
【0043】
3.加水分解性塩素
表1に示した試料番号1〜8のエポキシ当量とLCで求めた表2の各ピークの面積値とに関して重回帰分析を実施し、最も良好な重相関係数となるようなピークを求めた。その結果、ピーク▲2▼、ピーク▲5▼、ピーク▲6▼を選択すると重相関係数0.99999を得た。さらに、下記重回帰式(III)で示されるc〜cの係数を求める。
重回帰式(III)
加水分解性塩素(%)=c×ピーク▲2▼面積値+c×ピーク▲5▼面積値+c×ピーク▲6▼面積値+c
この重回帰式(III)を使用して試料番号1〜8の加水分解性塩素を求めて、表1に示した従来法による加水分解性塩素の分析値との比較を表5に示した。
【0044】
【表5】
Figure 0004148789
【0045】
4.全塩素
表1に示した試料番号1〜8の全塩素とLCで求めた表2の各ピークの面積値とに関して重回帰分析を実施し、最も良好な重相関係数となるようなピークを求めた。その結果、ピーク▲2▼、ピ−ク▲4▼、ピーク▲5▼、ピーク▲6▼、ピーク▲7▼を選択すると重相関係数0.99997を得た。さらに、下記重回帰式(IV)で示されるd〜dの係数を求める。
重回帰式(IV)
全塩素(%)=d×ピーク▲2▼面積値+d×ピーク▲4▼面積値+d×ピーク▲5▼面積値+d×ピーク▲6▼面積値+d×ピーク▲7▼面積値−d
この重回帰式(IV)を使用して試料番号1〜8の全塩素を求めて、表1に示した従来法による全塩素の分析値との比較を表6に示した。
【0046】
【表6】
Figure 0004148789
【0047】
5.1,2−グリコール
表1に示した試料番号1〜8の1,2−グリコールとLCで求めた表2の各ピークの面積値とに関して重回帰分析を実施し、最も良好な重相関係数となるようなピークを求めた。その結果、ピ−ク▲1▼、ピーク▲2▼を選択すると重相関係数0.99450を得た。さらに、下記重回帰式(V)で示されるe〜eの係数を求める。
重回帰式(V)
全塩素(%)=e×ピーク▲1▼面積値+e×ピーク▲2▼面積値+e
この重回帰式(V)を使用して試料番号1〜8の1,2−グリコールを求めて、表1に示した従来法による1,2−グリコールの分析値との比較を表7に示した。
【0048】
【表7】
Figure 0004148789
【0049】
(未知試料の測定)
未知試料としてYD−127(L/N297020 東都化成株式会社製)、YD−128(L/N298500 東都化成株式会社製)、YD−128S(L/N298178 東都化成株式会社製)の3種類の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂をLCにより測定し、前記で求めた重相関式よりエポキシ当量、粘度、加水分解性塩素含有量、1,2−グリコール含有量、全塩素含有量の各分析値を求めた。得られた結果を表8に示した。また、一人の作業員がすべての結果を得るまでに要した時間は、LCのコンディショニングを含めて約1.6時間であり、実質の作業時間は約20分であった。
【0050】
比較例1
実施例1の(未知試料の測定)で使用した3種類の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用して従来の分析法により分析し、エポキシ当量、粘度、加水分解性塩素含有量、1,2−グリコール含有量、全塩素含有量の各分析値を求めた。得られた結果を表8に示した。また、一人の作業員がすべての結果を得るまでに要した時間は、約6時間であり、実質の作業時間は約4時間であった。
【0051】
【表8】
Figure 0004148789
【0052】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂又はその誘導体の分析方法及びそれを用いた製造方法によれば、従来から実施されていた分析手法に比較して短時間でしかも人的な負荷が劇的に低減でき、さらに分析に用いる試薬等の大幅な削減が可能で有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂のLCクロマトグラム及びクロマトグラム上で得られたピークに番号を付記して示したものである。

Claims (2)

  1. 次に述べるA)〜C)項の工程を必須とする液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の物理的項目と化学的項目の同時多数項目の分析方法であり、その分析項目がエポキシ当量、粘度、加水分解性塩素含有量、1,2−グリコール含有量、全塩素含有量である事を特徴とする液状エポキシ樹脂の分析方法。
    A)各分析値が既知の液状エポキシ樹脂を液体クロマトグラフ及び/又は超臨界流体クロマトグラフにより分析し、液状エポキシ樹脂を構成する成分をクロマトグラムのピークとして得る工程。
    B)工程A)より得られたクロマトグラムの各ピークの値を説明変数として、既知の分析値との重回帰分析を行い重相関係数が0.99450上になるように相関性の高いピークを選択して、それらピークの回帰係数を求めて既知の分析値との回帰式を得る工程。
    C)分析値が未知の液状エポキシ樹脂を液体クロマトグラフ/又は超臨界流体クロマトグラフにより分析し、工程B)より得られた回帰式から同時多数項目の分析値を得る工程。
  2. 液体ビスフェノールA型及び液体ビスフェノールF型エポキシ樹脂の液体クロマトグラフ及び/又は超臨界液体クロマトグラフによる分析が検出器を可視紫外検出器とした高速液体クロマトグラフであって、その検出器の1波長または2波長以上の測定波長を用い主成分のピークが検出器の上限を超えず、且つ、不純物成分のピークが検出可能な条件で測定する請求項1記載の液状エポキシ樹脂の分析方法。
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