JP4148458B2 - 電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電子機器などの小型電子機器の電源に用いるのに適した電池、特に薄型電池の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器などの電源として用いられる電池には、例えば円筒型のものや角型のものがある。円筒型電池では円筒状に深絞り(円筒絞り)加工した金属缶が使用され、角型電池では直方体状に深絞り(角筒絞り)加工した金属缶が使用される。
【0003】
一方、薄さが要求される例えば携帯情報端末や携帯電話機などの小型の携帯電子機器においては厚みの比較的薄い電池が使用されるが、この種の薄型電池には次のようなタイプのものがある。
▲1▼ 先の深絞り加工による金属缶(深絞り缶)を使用し、これの開口部に金属蓋を嵌合して溶接する構造としたもの(特許文献1)。
▲2▼ 全体の厚みを薄くするために、アルミニウム箔などの金属箔と樹脂とを積層してなるラミネートを外装材として使用したもの(特許文献2)。
▲3▼ 弁当箱のような浅絞りの金属缶(浅絞り缶)を使用し、これの開口部に金属蓋を嵌合して溶接する構造としたもの(特許文献1、3〜5)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−185820号公報
【特許文献2】
特開平8−835596号公報
【特許文献3】
特開平9−213286号公報
【特許文献4】
特開2001−167744号公報
【特許文献5】
特開2001−250517号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、先の携帯情報端末や携帯電話機などの普及に見られるように、電子機器に対する小型軽量化への要望が強くなっており、これに伴ってそれらに搭載される電池についても薄型化への要求が高まっている。
【0006】
しかしながら、先の▲1▼で述べたような従来の薄型電池構造では、電池缶に深絞り缶を用いているため、成形可能なサイズに自ずと一定の限界があった。例えば、現在最も薄い缶は缶厚みが約3mmであり、これ以下の薄い缶を現時点の深絞り加工技術で得るは不可能であるか若しくは極めて困難である。
【0007】
また、仮に3mm以下の金属缶を成形できたとしても深絞り缶の場合は次のような問題がある。
(A) これの厚みを薄くすればするほど、その分だけ開口部の幅(缶の厚み方向の開口幅)が狭くなって電極が挿入しづらくなる。
(B) 缶の開口部を密封する金属蓋には、これに設けられた取付穴に端子が樹脂製の絶縁パッキング(ガスケット)を介して取り付けられるが、開口部の幅が狭くなると、この絶縁パッキングが開口縁により接近することとなるため、開口部に金属蓋を嵌合してレーザー溶接等により接合する際に、金属蓋と缶との溶接熱により絶縁パッキンが溶融しやすくなる。
(C) 深絞り加工では所要の展延性を有する延びやすい材料しか使用できないため、成形可能な金属種が限られるのみならず、成形可能な金属は硬度が小さい金属でもあるため、電池の膨れに対して弱い。したがって、硬度が大きく(つまり硬く)、しかも軽くて強度のある材質のものを、使用したくても使用できないという欠点がある。
【0008】
このため、そのような薄い電池缶を得ようとすると、現状では上記▲2▼で述べたような厚み約100μm以下の金属箔と樹脂とを積層したラミネートフィルムなどの積層材を電池外装材に使用せざるを得ないが、ラミネートフィルムでは、薄さは確保できるものの、金属缶に比べて突き刺しや折り曲げに対する強度が弱いという問題がある。
【0009】
一方、先の▲3▼で述べた浅絞り缶を用いた電池、具体的には例えば特許文献1、3〜5に記載されているような電池では、深絞り缶を用いた電池における上記のような問題点の多くを回避することができる。しかし、この種の電池においても以下のような問題がある。
【0010】
浅絞り缶を用いた上記の電池では、蓋の外周と缶の開口部周縁とを溶着する手段として、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接などで金属の溶融による溶着(金属溶着)を用いている。この手段を用いる場合、前記電池外装を封止するための金属溶着以外に、電池外部に正負極の電気を取り出すための端子口の少なくとも一方については、その周囲を封止する必要がある。また、電池外装を金属溶着しているために、金属蓋と金属缶とは電気的に短絡された構造となっているから、端子口の封止部分については、同時に確実な絶縁処理が必要になる。このような場合、一般的には樹脂パッキン材を介したカシメ等が用いられるが、カシメ等による封止は、金属の溶融による溶着や樹脂を用いた熱融着による封止と比較すると、漏液や外部からの湿気の侵入に対する信頼性は低い。したがって、先の▲3▼で述べた浅絞り缶を用いた従来の手法では、漏液などに対する電池の信頼性を確保するために少なくとも2つ以上の封止プロセスを必要とする結果、生産性が悪くなると同時に、信頼性を確保するための生産管理項目も多数化・複雑化するという問題がある。
【0011】
これに対して、先の▲2▼で述べたラミネートフィルムを用いた電池(前記特許文献2等参照)では、ラミネートフィルム外装材を樹脂を用いて封止し、この樹脂による封止箇所を介して、電池内に収納された電極体のリード体を直接外部に取り出す構造を採用している。このような構造によると、電池外装の封止プロセスと同時に端子(ここではリード体)周辺部の封止が可能であり、生産性も向上する。
【0012】
しかし、▲2▼で述べたラミネートフィルムを用いた電池では、電池の強度が弱いという前述の問題に加えて、二次電池で必要となる保護回路を設けるにあたっても次のような問題が生じる。すなわち、ラミネートフィルムを用いた電池では、電池外形枠の外側にリード体が飛び出しているため、保護回路とリード体とを接続する箇所が電池外形枠の外側に位置することとなり、その結果、保護回路付きの電池としての体積エネルギー密度が低くなってしまう。なかには、リード体と接続した保護回路を、リード体の部位で電池側に折り曲げて、樹脂による封止部の上に配置させる方法もあるが、そのためのスペースを別途確保したり新たに設けたりする必要があることや、リード体の折り曲げによる保護回路の位置精度を出すのは非常に困難で、生産性が悪いという問題がある。
【0013】
本発明は、電池の薄型化を図るにあたり、以上のような形状、取り付け性、強度、生産性などあらゆる面において発生しうる問題点を一挙に解決できる新規な構造の電池を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、電極体の少なくとも一部が収容される凹部が形成されており且つその開口端の周縁部にフランジ部が設けられてなる缶本体と、同じく電極体の少なくとも一部が収容される凹部が形成されており且つ前記缶本体の凹部の開口端を密封する金属蓋とを備え、前記缶本体と金属蓋とが前記フランジ部において互いに接合一体化されていることにより電池缶が形成されており、この電池缶の内部に、シート状の正極および負極がセパレータを介して積層された電極体と、電解液とが収容されている電池において、次のように構成したことを特徴とする。
【0015】
すなわち、一端側が電池缶内にあって少なくとも正・負極の一方と電気的に接続されたリード体と、前記接合一体化されたフランジ部(缶本体のフランジ部と対向位置する金属蓋の周縁部を含む。本明細書では適宜、この部分を接合フランジ部という。)の表裏両面を含むフランジ面部分の一部に設けられたリード体用の取り出し口とを備え、少なくともリード体用の取り出し口が設けられている側ないし周辺の接合フランジ部を、樹脂を用いた接着により封止し、この樹脂による封止箇所を介してリード体の他端側を電池缶の外部に取り出した構造とする。なお、前記のフランジ面部分とは、接合フランジ部においてその端面(外周面)を除いた部分を意味する。
【0016】
外部に取り出されるリード体は、電池内部において一端側が正・負極と電気的に接続されているが、正極および/または負極が、集電体としての金属箔を有している場合には、この金属箔にリード体を接続する代わりに、前記金属箔の一部を延長して、当該延長部をリード体として用いることができる(請求項2)。
【0017】
外部に取り出されたリード体の少なくとも外部電気回路と直接あるいは間接的に電気的接続を行うために使用される部位、つまりリード体の他端側の端部は、リード体用の取り出し口と同様にフランジ面部分に位置しているか、もしくはこれと直交する空間内に位置しているのが望ましい(請求項3)。リード体の配線長を短くすることができ、構造の簡素化と材料コストの低減などが図れるからである。リード体の他端側の端部が前記フランジ面部分ではなく、これと直交する空間内に位置してもよいとしたのは、リード体の他端側の端部が例えば保護回路などの外部電気回路の端子に接続されることがあり、そのような場合にはリード体の他端側の端子はフランジ面部分から若干離れた場所に位置することもあるからである。ただし、この場合にも、配線の簡素化等を考慮すると、リード体の他端側の端子は前記フランジ面部分と直交する空間内に位置しているのが望ましい。
【0018】
外部に取り出されたリード体と電気的に接続される出力端子を設ける場合においても同様に、出力端子は、前記フランジ面部分もしくはこれと直交する空間内に配置するのが望ましい(請求項4)。
【0019】
電池の体積エネルギー密度を増加させるためには、リード体用の取り出し口が設けられている側ないし周辺の接合フランジ部以外の接合フランジ部の幅は極力狭い方がよい。このため、そのような接合フランジ部においては、一定のフランジ幅を必要とする樹脂による封止を行うよりも、比較的狭いフランジ幅で接合が可能なレーザー溶接、超音波溶接、抵抗溶接、摩擦撹拌接合、圧接、カシメより選択される少なくとも一つの手段により封止を行うのが望ましい(請求項5)。また、接合フランジ部を形成している缶本体のフランジ部および金属蓋周縁部の少なくとも一方は、その周方向に沿った少なくとも一部の範囲において、接合相手側とさらに重なり合うように、そのエッジ部側を内周側に折り曲げた構造とすることができる(請求項7)。このような構造も、フランジ部の幅を狭くすることができるので、体積エネルギー密度を増加させる手段として有効である。
【0020】
漏液や外部からの湿気の侵入などに対する信頼性を向上させるために、前記レーザー溶接等の手段による封止箇所の電池内面側には、あらかじめ樹脂による接着を施しておくことにより、これらの部分を二重封止構造とするのが望ましい(請求項6)。この場合、先に樹脂による接着を行い、後で溶接等を行うため、溶接等だけでは困難であった、接合部の位置合わせが容易となり、生産性が向上するというメリットもある。また、前記接合フランジ部のエッジ部側を内周側に折り曲げた構造とした場合には、その折り曲げ部分において、缶本体と金属蓋との接合面の少なくとも一部を、樹脂により封止することとしてもよい(請求項8)。このようにすると、樹脂により封止される部位が増加するため、さらに信頼性を向上させることができる。
【0021】
缶本体および金属蓋の形成方法は特に限定されないが、金属板を浅絞り加工することにより作製するのが簡便で好ましい。請求項9に係る電池は、この点に特徴を有するものであり、缶本体および金属蓋の少なくとも一方が金属板を浅絞り加工することにより形成されたものであることによって特徴づけられる。
【0022】
電極体の膨張や電池内圧の上昇による電池缶厚み方向の膨れを抑えるため、金属蓋と、これに対向位置する缶本体の一面(底面)とを、それぞれ電池内部に向かって凸状となるように形成し、その中心の突出方向の変形量を0.05〜0.3mmに設定するのが望ましい(請求項10)。突出量がこれよりも小さいと、電極缶の膨れを防止する効果に乏しく、これよりも大きいと電極体を必要以上に圧迫することととなるだけでなく、缶内容積の低下を生じるので好ましくない。また、膨れを確実に抑制ないし防止できるように、内部に配置される電極体の面積に相当する範囲を凸状に形成するのが好ましい。
【0023】
本発明の電池1では、保護回路を設ける場合のスペースとしたり、電池缶の内部からリード体を導出する場合の封止性を確保するなどのため、缶本体のフランジ部の一部(後述する実施例では第1フランジ部分32a。図1、図2参照。)または接合フランジ部の一部を、他の部分のフランジ部(同じく、第2フランジ部分32b)または接合フランジ部の幅に比べて1mm以上幅広の幅広フランジ部または幅広接合フランジ部とするのが望ましい(請求項11)。この場合において、前者を後者よりも具体的にどの程度幅広にするかは、電池全体のサイズや保護回路のサイズ等を考慮して決定する。通常は、幅広分は1mm以上6mm以下に設定する。また、上記接合フランジ部、つまり缶本体のフランジ部またはこれに対向する金属蓋のフランジ部に出力端子を設けることもできる。その場合、後述するリード体用の取り出し口の場合と同様に、出力端子は、幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に設けるのが望ましい。
【0024】
本発明の電池においては、シート状の正極と負極とがセパレータを介して積層され捲回された断面が長円形状の捲回電極体を用いることができる。その場合、捲回電極体の捲回軸が幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に平行となるようにし且つ正極および/または負極の捲回終端が幅広フランジ部または幅広接合フランジ部の側に位置するようにした状態で、捲回電極体を電池缶内に収容するのが望ましい(請求項12)。捲回電極体をこのように配置すれば、正極および/または負極の捲回終端が幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に接近するので、正極あるいは負極と先の保護回路などとを接続する場合に、接続に必要となるリード体の長さを短くすることができ、電池缶内の容積を有効に利用することができる。
【0025】
一端側が正極または負極の少なくとも一方に接続されたリード体の他端側を電池缶の外部に取り出すが、その取り出し口は、封止性を確保するなどのために前記幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に設けるのが望ましい(請求項13)。この場合にも、先に述べた電極体の配置とすることにより、リード体の長さを短くすることができる。正極および負極の少なくとも一方に、集電体として金属箔を用いた場合、リード体ではなく、当該金属箔の一部を幅広フランジ部または幅広接合フランジ部の側に導出することができることは先に述べた通りである。
【0026】
缶本体の一部、またはこれに対向する金属蓋の一部には、電池内圧が所定圧以上に上昇したときに電池内圧を外部に開放する安全弁を設けることが望ましい(請求項14)。この安全弁を設ける方法としては、プレス加工により切り込みを形成するなどの方法をとることができる。
【0027】
【作用】
本発明の電池によれば、少なくともリード体用の取り出し口が設けられている側ないし周辺のフランジ部(接合フランジ部)を、樹脂を用いた接着により封止し、この樹脂による封止箇所を介してリード体の他端側を電池缶の外部に取り出す構造としたので、缶本体と金属蓋との接合一体化と同時プロセスによりリード体取り出し部(リード体用の取り出し口の周辺部)を封止することができ、したがって生産性が向上する。また、樹脂による封止を行うことにより、リード体取り出し部の優れた封止信頼性および絶縁性を確保することができる。電池の薄型化は、缶本体および金属蓋の各凹部の深さを所定範囲内のものとすることで、容易に達成できる。
【0028】
保護回路付きの電池として構成する場合には、リード体用の取り出し口を、保護回路を設置する接合フランジ部と同じ接合フランジ部のフランジ面部分(表裏の両面を含む)の一部に設けることにより、非常に効率良く保護回路を収納することができるので、保護回路付きの電池としての体積エネルギー密度も増加する。この場合、先述のラミネートフィルムを用いた電池のように、フランジ部に保護回路を設置する際に電池外形枠の外側に飛び出したリード体の部位を折り曲げる必要はない。
【0029】
本発明の電池においては、缶本体に凹部を形成し、これの開口端の周縁部に、金属蓋と接合一体化されることにより電池缶内を気密および液密の状態に保ちうるフランジ部を設けたので、機器への着脱作業を容易化する手段として、前記接合一体化されたフランジ部(接合フランジ部)を利用することができる。例えば、機器において電池を取り付ける部分に、電池缶の接合フランジ部に対応するガイド部を形成しておけば、このガイド部に前記接合フランジ部を挿入してスライドさせるだけで機器への着脱操作が行えるようになる。したがって、機器への取り付け性に優れ、しかも使用後の廃棄時に機器からの分離が容易な電池を実現することが可能となる。
【0030】
缶本体の開口端の周縁部に設けたフランジ部において缶本体と金属蓋との接合を行う構成としたので、例えば接合の一部をレーザー溶接により行う場合でも、当該溶接部から比較的離れた位置にその他の部品材料が隔離された状態となる。したがって、絶縁パッキングや電極、セパレータなど、電池を構成している各種部品への熱影響を回避することが可能となる。また、缶本体のフランジ部の全周にわたり、樹脂を介して金属蓋を接着(例えば熱接着)することとした場合には、溶接に比べて低コストで、しかも効率良く電池を製造することも可能となる。
【0031】
本発明では、浅絞り加工により得られる皿状の缶本体を使用することが好ましく、これにより厚さが3mm以下の電池缶を比較的容易に作ることができる。その際、深絞り缶を用いた場合のような材料面の制約を受けることが少ないから、さまざまな材料の中から必要とする特性を持った材料を比較的自由に選択することが可能である。したがって、全体の厚さが3mm以下でありながら、突き刺しや折り曲げ、膨れなどに十分に耐えうる電池、言い換えれば耐突き刺し、耐折り曲げ、耐膨れなどの点で優れた電池を比較的容易に得ることができる。以上の点は、金属蓋についても同様である。
【0032】
金属蓋と、これに対向位置する缶本体の一面(図1に示した例では、凹部31の底面31d)とを、それぞれ電池内部に向かって凸状となるように形成し、その中心の突出方向の変形量を0.05〜0.3mmに設定した場合には、これにより電極体の膨張や電池内圧の上昇による電池缶厚み方向の膨れを効果的に抑えることができる。
【0033】
リード体の取り出し部(取り出し口)が位置する側のフランジ部ないし接合フランジ部の幅を、他の部分のフランジ部または接合フランジ部の幅に比べて1mm以上幅広にすると、この幅広の部分つまり幅広フランジ部ないし幅広接合フランジ部に保護回路を取り付けることができる。したがって、保護回路を設ける場合に、例えば、ラミネートフィルムを用いた電池の場合のように保護回路用のスペースを別途確保するといった必要がない。
【0034】
電極体として先に述べたような捲回電極体を使用し、これの捲回軸が幅広フランジ部または幅広く接合フランジ部に平行で且つ正極および/または負極の捲回終端を幅広フランジ部または幅広接合フランジ部の側に位置するように、捲回電極体を電池缶内に収容した場合には、正極および/または負極の捲回終端部にリード体を接続することで、幅広フランジ部または幅広接合フランジ部の側にリード体を最短距離で導出させることができ、同時に正極および/または負極に対するリード体の接続しろ(通常は溶接により接続されるので溶接しろ)も小さくできる。
【0035】
正極および/または負極に集電体として金属箔を用いた場合には、捲回終端から金属箔の一部分を延長することにより、当該延長部をリード体として利用することができる。この場合はリード体を別途設ける必要がない。また、どちらか一方のリード体と缶本体または/および金属蓋とを電気的に接続させ、缶本体または/および金属缶を一方の電極と導通させてもよく、缶本体または/および金属蓋を電極端子として利用することもできる。この場合、リード体と缶本体または/および金属蓋との接続は、抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶接などの接合方法を利用するのが好ましく、缶本体または金属蓋のどちらか一方と接続し、さらに、缶本体と金属蓋とを、抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶接、ネジ止め、カシメ又は金属片を介した接続などにより導通させる構成としてもよい。正極または/および負極の集電体として金属箔を用いた場合には、リード体ではなく、当該金属箔を缶本体または/および金属蓋に接続してもよい。
【0036】
さらに、上記のように捲回電極体の捲回終端部にリード体を電気的に接続して幅広フランジ部または幅広接合フランジ部の側に導出させた場合には、正極および/または負極に対するリード体の接続しろ(溶接される場合は溶接しろ)を最小化でき、また集電体である金属箔の捲回終端側を一部延長して幅広フランジ部または幅広接合フランジ部の側に導出させた場合には、正極および/または負極に対する溶接それ自体を不要化できるから、いずれの場合においても、その分だけ電極活物質の塗布面積を増やすことができる。捲回電極体の捲回始端部またはそこから捲回終端部に到るまでの中間部分の幅方向端部にリード体を接続した場合には、当該リード体の厚み分だけ捲回電極体の厚みが増加することは避けられないが、上記の構成によれば、そのようなリード体の接続による厚み増加を回避することができる。したがって、リード体の厚み分だけ捲回電極体の厚み、ひいては電池の厚みを薄くすることができ、あるいはリード体の厚み分だけ捲回数を増やすことができる。
【0037】
缶本体の一部、またはこれに対向する金属蓋の一部に、安全弁として、プレス加工により形成された切り込みを設けておけば、電池内圧が所定圧以上に上昇したときに当該切り込み部が破れて、この部分から電池内圧が外部に開放されることとなる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0039】
〈電池缶〉
電池缶、すなわち缶本体および金属蓋には、例えば、鉄板、ニッケル板、アルミニウム板、これらの金属の合金板、マグネシウム合金板、ステンレス鋼板、ニッケルメッキを施した圧延鋼板、ニッケルメッキを施したステンレス鋼板などを用いることができる。強度および軽量である点を重視する場合には、高強度材料でしかも軽量な、Hv(ビッカース硬さ)70以上のアルミニウム合金や、マグネシウム合金を使用するのが好ましい。また、電解液に対する耐腐食性を重視する場合には、ニッケルメッキを施した圧延鋼板やステンレス鋼板を使用するのがよい。さらに、金属蓋については、缶本体との接合面側に缶本体と同じ材質のものを使用し、反対側の面には、強度および軽さの点で優れる積層材であるクラッド材(例えばニッケルを積層してなるニッケルクラッド材)を使用することもできる。
【0040】
缶本体および金属蓋の板厚は、いずれも0.2mm以下とすることができ、0.15mm程度とするのがより好ましい。後述する実施例に係る電池(図1ないし図3参照)では、缶本体および金属蓋の板厚は0.15mmである。本発明の電池では、浅絞り加工により缶本体を形成するので、先に述べたような高強度で硬い材料を使用することができ、その結果、板厚を上記のように薄くしても電池膨れに十分に耐えることができる。
【0041】
電池の総厚みL3(図3参照)は3mm以下とすることができる。また、図2に示すように、電池形状を平面視で長方形とする場合には、その長辺部の長さL4は65mm以上、短辺部の長さL5は34mm以上とすることができる。図1ないし図3に例示した電池では、後述するように、L3=2.8mm、L4=90mm、L5=55mmである。図示例の電池の全体形状は角型であるが、円盤型あるいは丸型であってもよい。
【0042】
金属蓋は、板状のものであってもよいし、缶本体と同様に凹部とフランジ部とを有するものであってもよい。後者の場合は、金属蓋のフランジ部と缶本体のフランジ部とを接合一体化するので、両フランジ部の外形は同じか又は略同じ(例えば、一方のフランジ部のエッジ部側のみを折り曲げるような場合)でなければならないが、凹部の深さや厚み方向の断面形状は金属蓋と缶本体とで必ずしも同じである必要はなく、異なっていてもよい。
【0043】
〈電極体〉
本発明の電池では、シート状の正極と負極との間にセパレータを介装した積層構造の電極体を使用する。電極体の積層構造としては、(1)正極−セパレータ−負極の積層体を一単位とし、これを複数枚重ねた構造、(2)帯状の積層体を交互に折り畳むようにして重ねた構造、(3)帯状の積層体を渦巻き状に捲回した上で断面長円形状となるように、すなわち薄型の電池缶内に収めることができるように偏平状に押しつぶし変形させた構造などが考えられるが、生産効率、電池缶内容積の有効利用、リード体等の外部への引き出しなどを総合的に勘案すると、(3)の構造とするのが望ましい。ただし、上記の(1)や(2)の構造を排除するものではない。
【0044】
例えば、リチウムイオン二次電池に本発明を適用する場合、電極体の構成材料としては、以下のようなものを使用することができる。まず、正極材料としては、例えば、LiCoO2 などのリウチムコバルト酸化物、LiMn2 O4 などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2 などのリチウムニケッル酸化物、LiNiO2 のNiの一部をCoなどの他の元素で置換したLiCox Ni(1-x) O2 (0<x<1)などの酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸などの金属酸化物などを用いることができる。
【0045】
また、負極材料としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の燃焼体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイドなどの炭素材料や、SnOx 、SiOx などのLiを挿入可能な金属酸化物や、金属窒素物などを用いることができる。
【0046】
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる微多孔膜、ポリエチレン、ポリブチルテレフタレート、セルロースなどからなる不織布などを用いることができる。
【0047】
〈電解液〉
電解液としては、例えば、非水溶媒に対して電解質塩を0.1〜2.0モル/リットル程度溶解させてなる非水電解液を用いることができる。この場合の非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネートなどの炭酸エステルや、γ−ブチルラクトン、酢酸メチルなどのエステル類を用いることができる。また、これら以外にも、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、スルホランなどの含硫黄化合物、含窒素化合物、含珪素化合物、含フッ素化合物、含リン酸化合物などを単独でまたは2種以上混合した非水溶媒を用いることができる。一方、前記の電解質塩としては、例えば、LiPF6 、LiClO4 、LiBF4 、LiAsF6 、LiCn F2n+1SO3 (n≧1)、(Cm F2m+1SO2 )(Cn F2n+1SO2 )NLi(m≧1、n≧1)、(RfOSO2 )2 NLi〔Rfは炭素数が2以上のハロゲン化アルキル基である。このRfは同一であってもよいし、異なるものであってもよいし、Rf同士が互いに結合していてもよく、例えばポリマー状に結合していてもよい。〕などを用いることができる。なお、電池の内圧を抑制したり、過充電特性、貯蔵特性、サイクル特性などを向上させる目的で、アルキルベンゼン、フルオロベンゼン、アニソールなどの芳香族化合物、1,3−プロパンスルトンなどの環状スルトンを電解液に含有させてもよい。
【0048】
【実施例】
(実施例)
図1ないし図3は、本発明を角型のリチウムイオン二次電池(以下、単に電池という)に適用した例を示したものである。これらの図面においては、電池の総厚み、電池缶の板厚、電極体の厚み等は実際の厚みよりも誇張して示してある。
【0049】
図示例の電池1は、凹部31を有する缶本体3と、この缶本体3の凹部31の開口端を密封する金属板4とからなる平面視で長方形の電池缶2を有する。電池缶2内には電極体5や図示しない電解液などが収容されている。
【0050】
電極体5は、シート状の正極51とシート状の負極52とを、セパレータ53を間にして積層したうえで渦巻き状に捲回したのち、全体を電池缶2内に収容できるように電池缶2の内部空間(凹部31)の断面形状に合わせて断面長円形状に押しつぶし変形して形成してある。この電極体(捲回電極体)5は、図3に示すように、その捲回終端部が後述する缶本体3(または金属蓋4)の第1フランジ部分32a(同じく42a)と平行で且つ当該第1フランジ部分32aの近くに位置するようにした状態で電池缶2内に収容されている。電極体5を構成するシート状の正極51および負極52の捲回終端部には、それぞれリード体(導電タブともいう)54および55の一端側が接続されている。
【0051】
缶本体3は、一枚の金属板(アルミニウム合金)を浅絞り加工することにより皿状に形成されており、これの開口端の周縁部には、その全周にわたって平坦なフランジ部32が形成されている。このフランジ部32は、図2に示した状態で缶本体3の上端側に位置する第1短辺部3aにおけるフランジ部分(本発明でいう幅広フランジ部。以下、この幅広フランジ部を本実施例では第1フランジ部分という。)32aの幅(フランジ幅)L1が、缶本体3の下端側に位置する第2短辺部3bおよび両側に位置する各長辺部3cにおけるフランジ部分(第2フランジ部分)32bの幅(フランジ幅)L2よりも1mm以上幅広とされている。図示例では、L1=7.5mmであり、L2=2mmである。
【0052】
缶本体3の第1フランジ部分32aには、正極51および負極52のリード体54・55を電池缶2の外側に取り出すための2つの矩形の打ち抜き孔からなる取り出し口6・6が設けられている。これらのリード体用の取り出し口6・6は、第1フランジ部分32aにおける端面を除いたフランジ面部分にあって、その一端が金属蓋4との接合面側に位置し、他端が電池外側に臨む開口端とされている。
【0053】
金属蓋4には、上記のような打ち抜き孔、つまりリード体用の取り出し口6・6は設けられていないが、この点と、後述する凹部を形成している周面の傾斜角度が缶本体のそれとは若干異なっている点以外は、金属蓋4も缶本体3と同様に構成されている。すなわち、金属蓋4も、一枚の金属板(アルミニウム合金)を浅絞り加工することにより凹部41を有する皿状に形成されており、その開口端の周縁部には全周にわたって平坦なフランジ部42が形成されている。そして、このフランジ部42の一部が缶本体3の第1フランジ部分32aに対応する第1フランジ部分42aとされて、他のフランジ部分(第2フランジ部分)42bよりも幅広とされている。この金属蓋4のフランジ部42は、図3に示すように缶本体3のフランジ部32に接合一体化されており、この接合一体化された金属蓋4で缶本体3の凹部31の開口端が密封されることにより、当該凹部31内(電池缶2内)が気密および液密の状態に保たれるようになっている。
【0054】
金属蓋4と缶本体3との接合一体化を行う場合、少なくとも、リード体用の取り出し口6・6が設けられている缶本体3の第1フランジ部分32aと、これに対向位置する金属蓋4の第1フランジ部分42aとの合わせ部については、熱溶着樹脂を用いて接合一体化することにより封止するが、それ以外のフランジ部の合わせ部についての接合一体化は、レーザー溶接、超音波溶接、抵抗溶接、摩擦撹拌接合、圧接、カシメ等(適宜、レーザー溶接等という)により、あるいは樹脂を用いた熱接着により行うことができる。前者のレーザー溶接等の場合は、缶本体3のフランジ部32に金属蓋4のフランジ部42を合わせた状態で、これらの周縁の近傍あるいは当該合わせ面の外周部分をレーザー溶接等で接合することにより両者を一体化する。また、後者の樹脂よる熱接着の場合は、フランジ部32の表面あるいはこれと合わされる金属蓋4のフランジ部42に接着剤としての樹脂を塗り、この樹脂を熱で一時的に溶かして熱接着することにより、両者を接合一体化する。
【0055】
缶本体3および金属蓋4の内面は、ポリプロピレンフィルム(図示せず)により被覆されて、絶縁処理が施されている。この種の絶縁処理を行うに当たっては、金属との接合性が良く且つ水分透過性の小さな絶縁材料であれば、他の高分子フィルム等で被覆してもよく、例えばポリエチレンなどのポリオレフィンやポリエチレンテレフタレートなどからなる樹脂フィルム、あるいはブチルゴムなどの絶縁性のゴムからなるフィルム、シート、薄膜体等を用いることもできる。また、金属との接合が不可能もしくは困難なポリイミド、ポリフェニレンスルフィドなどの樹脂シートであれば接着剤を使用して缶本体3および金属蓋4の内面に貼り付けてもよい。このような絶縁処理により、電極体5やリード体54・55が缶本体3あるいは金属蓋4に接触して短絡が生じるのを防止することができる。
【0056】
缶本体3の凹部31の側面を形成している周面31cは、フランジ部32や凹部31の底面31dに対して直角となるように形成してもよいが、図1および図3に示すように、フランジ部32や凹部31の底面31dに対して所定の鈍角(90〜130度)となるように傾斜させた構成とすることもできる。また、金属蓋4の凹部41の側面を形成している周面41cは、当該金属蓋4のフランジ部42や凹部41の底面41dに対して所定の角度(90〜180度)となるように傾斜させた構成とすることもできる。このようにすれば、電池缶2内の隅部において缶内面と電極体5との間に生じる隙間Cが多少なりとも増えるので、その分だけ電解液の液溜めとして利用できるスペースが増大し、その結果、電池缶2内への電解液の注入量を増やすことができる。図示例では、缶本体3の周面31cは、その底面31dに対して120度の角度となるように、また金属蓋4の周面41cは、その底面41dに対して175度の角度となるように、それぞれ傾斜させて形成されている。
【0057】
さらに、図示していないが、金属蓋4には、安全弁となる切り込みがプレス成形時に形成されている。加えて、缶本体3の凹部31の底面31dと、これに対向位置する金属蓋4の凹部41の底面41dは、それぞれ電池内部に向かって僅かに凸状となるように形成されている。そして、これらの凸状部分の中心の突出方向における変形量が0.1mmに設定されていることにより、電極体5の膨張や電池内圧の上昇による電池缶2の厚み方向の膨れを抑制するようになっている。
【0058】
上記の電池1は、以下のようにして作製した。
〈正極の作製〉
比表面積が0.5m2 /gのLiCoO2 (正極材料)と、導電助剤としてのカーボンとを、重量比98:2の比率で混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合して正極合剤スラリーを調整した。この正極合剤スラリーをフィルターで濾過して相対的に粒径の大きなものを取り除いたのち、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極集電材の両面に均一に塗布して乾燥し、次いでローラプレス機により圧縮成形した後、所定のサイズに切断した。なお、捲回時に終端部となる部分には、正極合剤の塗布を行わないで、リード体を正極の長手方向と同一方向となるように溶接して、帯状の正極を作製した。
【0059】
〈負極の作製〉
N−メチルピロリドンにフッ化ビニリデンを溶解させてなる溶液に、黒鉛系炭素材料(ただし、(002)面の間隔d002 =0.335nm、平均粒径15μmという特性を持つ炭素材料)を添加・混合して負極合剤スラリーを調整した。この負極合剤スラリーをフィルターで濾過して相対的に粒径の大きなものを取り除いたのち、厚さ10μmの帯状の銅箔からなる負極集電材に均一に塗布して乾燥し、次いでローラプレス機により圧縮成形し、切断したのち、乾燥し、リード体を溶接して、帯状の負極を作製した。なお、捲回電極体を作製する際に、負極合剤塗布部が正極の塗布部より幅方向で1mm大きくなるようにようにあらかじめ負極合剤塗布部を設定し、かつ長手方向でも5mm程度大きくなるようにしたが、その以外の捲回時に正極と対応しない部分には塗布を行わなかった。捲回時に終端部となる部分に設けられた未塗布部には、上記正極と同様に、リード体を負極の長手方向と同一となるように溶接して、帯状の負極を作製した。
【0060】
〈電極体の作製〉
上記の帯状正極と帯状負極とを、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルム(東燃化学社製)を介して積層し、断面が長円形状となるように捲回し、テープ止めして捲回電極体とした。
【0061】
〈電解液の調整〉
エチレンカーボネートおよびメチルエチルカーボネートの体積比1:2の混合溶媒を作製し、この混合溶媒にLiPF6 を1.2モル/リットルの濃度で溶解させ、これにシクロヘキシルベンゼンおよび1,3−プロパンスルトンを、シクロヘキシルベンゼン2重量%、1,3−プロパンスルトン2重量%の含有量となるよう添加して非水電解液を調整した。
【0062】
〈電池の作製〉
上記捲回電極体を上記電解液とともに、電池缶2内に収容し、総厚み2.8mm、長辺部の長さが90mm、短辺部の長さが55mmの角型のリチウムイオン二次電池を作製した。電池缶2内に捲回電極体5を収容するに際しては、その捲回軸が缶本体3および金属蓋4の第1フランジ部分(幅広フランジ部)32a・42aに平行となるように収容し、正極51および負極52の捲回終端は、第1フランジ部分32a・42aの側に位置させ、正極51および負極52に接続された各リード体54・55は、第1フランジ部分32a・42aの側に導出して、缶本体3の第1フランジ部分32aに設けられた2つの矩形の打ち抜き孔6・6から電池缶外部に取り出した(図3参照)。なお、正極51に接続されたリード体54は、第1フランジ部分端部で折り返した後に、第1フランジ部分32a・42aに溶接して接合し、缶本体3および金属蓋4と導通させ、缶本体3を正極端子として利用した。負極52に接続されたリード体55は、打ち抜き孔6の切り口の絶縁処理がなされていない部分に接触して正極51との間で短絡が生じるのを防ぐために、打ち抜き孔6の近傍に位置する部分には、あらかじめ絶縁テープを巻いて絶縁処理を行っておいた。また、缶本体3と金属蓋4とは、フランジ部32・42において熱融着樹脂を用いた接着により接合一体化した。
【0063】
〈評価〉
上記のようにして作製した電池に、4.2Vを上限とする定電流定電圧充電を行い、定電流で3Vまで放電させて放電容量を測定したところ、1200mAhの容量を示し、3mm以下の薄型電池として十分に機能することが確認された。
【0064】
(比較例)
図4に示すように、上記実施例と同様に構成した捲回電極体5を、外寸厚み(T1)が3.4mm、幅(T2)が51mm、高さ(T3)が80mmの電池用アルミニウム合金缶(深絞り缶)105に挿入しようとしたところ、捲回電極体5の最外周部に存在するセパレータ53が、当該合金缶105の開口端部105aと接触し、挿入がうまくいかなかったり、セパレータ53が破れたりするなどの不具合が多発した。
【0065】
(他の実施例)
以下、本発明の他の実施例もしくは構造例について説明する。
【0066】
図5は、本発明の他の実施例に係る電池において、リード体用の取り出し口6の周辺部等の断面構造がわかるように、先の図3と同様の位置で切断した縦断面図である。先の実施例では、図2および図3に示したように、缶本体3の第1フランジ部分32aに設けられた取り出し口6から電池缶外部に取り出されたリード体(正極用)54の他端側を、第1フランジ部分32aの端部(エッジ部)で金属蓋4の凹部側に折り返して缶本体3および金属蓋4の両第1フランジ部分32a・42aに溶接接合し、これにより缶本体3および金属蓋4とを導通させるとともに缶本体3を正極端子として利用する構成を採用した。これに対して、図5に示した電池では、缶本体3の第1フランジ部分32aに設けられた取り出し口6から電池缶外部に取り出されたリード体(正極用)54の他端側を、缶本体3の凹部側に折り返して、その第1フランジ部分32aのフランジ面部分に導通接触させ、この部分、つまりリード体54の他端側の端部の表面に出力端子7を配置したうえで、これらを前記フランジ面部分に一体的に溶接して固着した構成である。このような点以外は、先に述べた実施例と略同様の構成であるので、図3と同様の符号を付してその説明を省略する。また、図5には、電池缶外部に取り出されたリード体54の他端側の端部に出力端子7を取り付けた構造を示したが、リード体54の他端側の端部を第1フランジ部分32aのフランジ面部分に配置した構造(出力端子7が取り付けられていない構造)としてもよいことは勿論である。
【0067】
このような構成によれば、例えば、第1フランジ部分32aのエッジ部でリード体54を引き回す構造(図3参照)に比べて、リード体54の固定が行いやすなる。また、リード体54の長さが短くなるのみならず、外部にタード体のはみ出しがないので、寸法ロスがなくなり、体積エネルギー密度が高くなる。
【0068】
図6は、リード体54・55の他の構成例を示したものである。この例では、捲回電極体5の正極51および負極54をそれぞれ構成している集電体としての各金属箔(同図では各々正極および負極と同じ符号を用いた)がリード体54・55を兼ねている。具体的には、正極51および負極52をそれぞれ構成している各金属箔には、その捲回終端部側にリード体54・55を兼ねた延長部が設けられている。この延長部(リード体54・55)は、その幅および位置が、図1および図2に示す第1フランジ部分32aにおけるリード体用の取り出し口6・6に対応するように形成されている。各リード54・55の他端側となる各延長部の先端側は、先の図3または図5に示したリード体54・55と同様、第1フランジ部分32aに設けられた取り出し口6・6から電池缶外部に取り出されて所定の部位に電気的に接続可能とされている。
【0069】
このような構成によれば、正極51および負極52の各金属箔(集電体)を作製(通常はプレスによる打ち抜き加工により作製)する際に、捲回終端部となるべき一方の端部に延長部(リード体54・55)を形成しておくことでリード体付きのものが得られるから、リード体を別途用意しておく必要がなく、そのようなリード体を金属箔の端部に溶接等により電気的に接続する工程も不要となる。したがって、工程数やコストの低減が図れる。
【0070】
図7〜図10は、缶本体3のフランジ部32と金属蓋4のフランジ部(周縁部)42との接合部分、すなわち接合フランジ部の他の構造例を示したものである。
【0071】
このうち、図7に示したものは、接合フランジ部のうち、先のリード体用の取り出し口6・6が設けられた第1フランジ部分32a・42aを除く他のフランジ部分、つまり第2フランジ部分32b・42b(図1および図2参照)の接合部の内面側をあからじめ樹脂101で封止し、この樹脂で封止された接合フランジ部(接合一体化された第2フランジ部分32b・42b)の外周部分Aをレーザー溶接により接合することで、この接合フランジ部を二重封止したものである。この場合、接合フランジ部の外周部分Aの接合は、レーザー溶接に限らず、後述するようなカシメ、もしくは圧接、あるいは超音波溶接、抵抗溶接、摩擦撹拌接合等、他の接合手段を用いて行ってもよい。いずれの手段を用いるにせよ、上記のような二重封止構造とすることで、接合フランジ部における封止性(シール性)を高めることができる。
【0072】
図8〜図10は、接合フランジ部のエッジ部側を内周側に折り曲げた例を示す。この場合、図8に示すように、缶本体3側のフランジ部32と金属蓋4側のフランジ部42とを合わせた状態で、これらのエッジ部32e・42e側を同時に内周側に折り曲げてもよいし、図9(a)・(b)および図10に示すように、缶本体3側のフランジ部32または金属蓋4側のフランジ部42のいずれか一方のエッジ部側のみを他方のエッジ部にさらに重ねるように内周側に折り曲げてもよい。図9の(a)は、金属蓋4におけるフランジ部42のエッジ部42e側を折り曲げた状態を示し、同図の(b)は、缶本体3におけるフランジ部32のエッジ部32e側を折り曲げた状態を示す。また、このように缶本体3側のフランジ部32または金属蓋4側のフランジ部42のいずれか一方のエッジ部側のみを折り曲げることとした場合には、さらに図10に示すように、折り曲げられたエッジ部(図示例では缶本体3側のフランジ部32のエッジ部32e)側の部分(折り曲げ部分)と相手側のフランジ部(図示例では金属蓋4側のフランジ部42)との間を樹脂102で接着してもよい。このようにすると、封止性が向上するので、この部分での漏液あるいは外部からの湿気の侵入等を確実に防止することができる。
【0073】
加えて、図7〜図10に例示した構造によれば、リード体用の取り出し口6・6が設けられている第1フランジ部分32a・42a側以外の接合フランジ部が、主として樹脂以外の溶接等の手段により接合・封止されるので、樹脂による封止を行う場合に比べて当該接合フランジ部のフランジ幅を狭くすることが可能となる。すなわち、接合フランジ部において樹脂による封止を行う場合は、接着強度を確保するために一定のフランジ幅を確保しておく必要があるが、上記のような溶接やカシメといった樹脂以外の接合・封止手段を用いた場合には、フランジ幅が比較的狭くても接合が可能である。したがって、樹脂封止の場合に比べてフランジ幅を狭くすることができから、その分だけ電池の体積エネルギー密度を増加させることが可能となる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、電池が搭載される機器への取り付け性に優れ、しかも保護回路も簡素な配線で装着しうる薄型電池を実現できる。すなわち、缶本体と金属蓋との接合一体化と同時プロセスによりリード体取り出し部(リード体用の取り出し口の周辺部)を封止することができので、生産性が向上する。また、樹脂による封止を行うことにより、リード体取り出し部の優れた封止信頼性および絶縁性を確保することができる。電池の薄型化は、缶本体および金属蓋の各凹部の深さを所定範囲内のものとすることで、容易に達成できる。
【0075】
本発明の電池に保護回路を設ける場合には、保護回路を設置する接合フランジ部と同じ接合フランジ部のフランジ面部分の一部にリード体用の取り出し口を設けることにより、ラミネートフィルムを用いた電池のように電池外形枠に飛び出したリード体の部位を折り曲げるといったことなく、非常に効率良く保護回路を収納することができるので、保護回路付きの電池としての体積エネルギー密度が増加し、同時に組み立て作業性も向上する。
【0076】
缶本体と金属蓋とをレーザー溶接等により接合する際にも、その他の部品材料から比較的離れた位置で当該溶接等を行えるから、絶縁パッキングや電極、セパレータなど、電池を構成している各種部品への熱影響を回避することができる。加えて、深絞り缶を用いた場合のような材料面の制約を受けることが少なく、様々な材料の中から必要とする特性を持った材料を比較的自由に選択することができるので、全体の厚さが3mm以下でありながら、耐突き刺し、耐折り曲げ、耐膨れなどの点で優れた電池を比較的容易に得ることができる。
【0077】
さらに、電極体として捲回電極体を使用し、その捲回軸が缶本体の幅広フランジ部に平行で且つ正極および負極の捲回終端が幅広フランジ部ないし幅広接合フランジ部の側に位置するようした状態で、捲回電極体を電池缶内に収容した場合には、正極および負極の捲回終端が缶本体の幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に接近するので、正極あるいは負極と外部の保護回路などとを接続する場合に、接続に必要となるリード体の長さを短くすることができ、電池缶内の容積を有効に利用することができる。また、電池缶内において捲回電極体を上記のように配置することにより、正極および/または負極に対するリード体の溶接しろを最小化でき、あるいは正極および/または負極に対するリード体の溶接それ自体を不要化できるから、その分だけ電極活物質の塗布面積を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る電池を示す外観斜視図である。
【図2】電池の平面図である。
【図3】図2のIII −III 線で切断した断面図である。
【図4】本発明の比較例において、電池用アルミニウム合金缶(深絞り缶)への捲回電極体の挿入操作を説明するために使用した図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る電池を示す縦断面図である。
【図6】電極体(捲回電極体)の他の構造例を示す斜視図である。
【図7】接合フランジ部の外周部分を溶接し、その内面側を樹脂であらかじめ封止で封止した構造例を示す部分断面図である。
【図8】接合フランジ部を構成する缶本体および金属蓋の両エッジ部側を折り曲げた構造例を示す部分断面図である。
【図9】接合フランジ部を構成する缶本体および金属蓋における一方のエッジ部側のみを折り曲げた構造例を示すもので、(a)は金属蓋のエッジ部側を折り曲げたもの、(b)は缶本体のエッジ部側を折り曲げたものをそれぞれ示す部分断面図である。
【図10】図9に示す場合において、缶本体の折り曲げ部分と金属蓋のフランジ部との対向面間を樹脂で接着した構造例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 電池
2 電池缶
3 缶本体
4 金属蓋
5 電極体
6 リード体用の取り出し口
7 出力端子(正極用)
31 凹部
31d 底面
32 フランジ部
32a 幅広フランジ部(第1フランジ部分)
32e・42e エッジ部
51 正極
52 負極
53 セパレータ
54・55 リード体
101・102 樹脂
Claims (14)
- 電極体の少なくとも一部が収容される凹部が形成されており且つその開口端の周縁部にフランジ部が設けられてなる缶本体と、
前記缶本体の凹部の開口端を密封する金属蓋とを備え、
前記缶本体と金属蓋とが前記フランジ部において接合一体化されていることにより電池缶が形成されており、
この電池缶の内部に、シート状の正極および負極がセパレータを介して積層された電極体と、電解液とが収容されている電池であって、
一端側が電池缶内にあって少なくとも正・負極の一方と電気的に接続されたリード体と、
前記接合一体化されたフランジ部(接合フランジ部)の表裏両面を含むフランジ面部分の一部に設けられたリード体用の取り出し口とを有し、
少なくともリード体用の取り出し口が設けられている側ないし周辺の接合フランジ部が樹脂を用いた接着により封止されており、
この樹脂による封止箇所を介して前記リード体の他端側が電池缶の外部に取り出されていることを特徴とする電池。 - 正極および/または負極は、集電体として金属箔を有しており、この金属箔の一部が延長されて、当該延長部がリード体を兼ねている、請求項1記載の電池。
- リード体の他端側の端部は、前記フランジ面部分もしくはこれと直交する空間内に位置している、請求項1または2記載の電池。
- 前記フランジ面部分もしくはこれと直交する空間内に出力端子が設けられており、この出力端子にリード体の他端側が電気的に接続されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の電池。
- リード体用の取り出し口が設けられている側ないし周辺の接合フランジ部以外の接合フランジ部は、レーザー溶接、超音波溶接、抵抗溶接、摩擦撹拌接合、圧接、カシメより選択される少なくとも一つの手段により封止されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の電池。
- 請求項5に記載された手段による封止箇所の電池内面側に、あらかじめ樹脂による接着が施されていることにより、この接着が施された接合フランジ部が二重封止されている、請求項5記載の電池。
- 接合フランジ部を形成している缶本体のフランジ部および金属蓋周縁部の少なくとも一方は、その周方向に沿った少なくとも一部の範囲において、接合相手側とさらに重なり合うように、そのエッジ部側が内周側に折り曲げられている、請求項1ないし6のいずれかに記載の電池。
- 前記接合フランジ部の折り曲げ部分において、缶本体と金属蓋との接合面の少なくとも一部が、樹脂により封止されている、請求項7記載の電池。
- 缶本体および/または金属蓋は、金属板を浅絞り加工することにより形成されたものである、請求項1ないし8のいずれかに記載の電池。
- 金属蓋と、これに対向位置する缶本体の一面が、それぞれ、電池内部に向かって凸状となるように形成されており、その中心の突出方向の変形量が0.05〜0.3mmである、請求項1ないし9のいずれかに記載の電池。
- 缶本体のフランジ部または接合フランジ部は、その一部分が他の部分のフランジ幅に比べて1mm以上幅広の幅広フランジ部または幅広接合フランジ部とされている、請求項1ないし10のいずれかに記載の電池。
- 電極体は、シート状の正極および負極がセパレータを介して積層された状態で捲回されて、その捲回軸と直交する方向の断面形状が長円形状である捲回電極体からなり、この捲回電極体の捲回軸が前記幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に対して平行となるようにし且つ正極および/または負極の捲回終端が前記幅広フランジ部の側に位置するようにした状態で、電池缶内に収容されている、請求項11記載の電池。
- リード体用の取り出し口が、前記幅広フランジ部または幅広接合フランジ部に設けられている、請求項11または12記載の電池。
- 缶本体の一部、またはこれに対向する金属蓋の一部には、電池内圧が所定圧以上に上昇したときに電池内圧を外部に開放する安全弁が設けられている、請求項1ないし13いずれかに記載の電池。
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